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公差が厳しいと加工費が高くなる理由とは?金属加工の見積りで注意すべきポイント

作成日:

2026-06-09

最終更新日:

2026-06-10

この記事を監修した人

志民 直人

技術営業、カスタマーサクセス

切削加工歴29年の1級機械加工技能士(精密器具製作/フライス盤/数値制御フライス盤)。金型・部品加工経験を持ち、CAD・CAMや各種工作機械に精通。設計からカスタマーサービスまで幅広く対応。製造現場改善や治具設計も得意。趣味は日曜大工、ゲーム。

金属加工の見積りでは、部品の形状や材質だけでなく、公差も金額に大きく影響します。

公差とは、図面上で許される寸法のばらつきの範囲です。

たとえば「100±0.1」と書かれていれば、99.9mmから100.1mmまでが許容範囲になります。

一方で、「100±0.01」のように公差が厳しくなると、加工や検査の難易度が上がり、見積り金額も高くなりやすくなります。

この記事では、公差が厳しいと加工費が高くなる理由と、金属加工を依頼する際に注意したいポイントを解説します。

公差とは

公差とは、加工後の寸法に対して許される誤差の範囲のことです。

機械加工では、図面通りの寸法ぴったりに仕上げることは非常に難しく、実際にはわずかな寸法のばらつきが発生します。

そのため、図面では「どこまでの寸法差なら問題ないか」を公差として指定します。

公差には、主に以下のようなものがあります。

  • 長さ寸法の公差
  • 穴径や軸径の公差
  • 穴位置の公差
  • 平面度・直角度・平行度などの幾何公差
  • はめあい公差

公差は、部品の機能や組み立て精度に関わる重要な指示です。

ただし、必要以上に厳しい公差を指定すると、加工費が高くなる原因になります。

公差が厳しいと加工費が高くなる理由

1. 加工時間が長くなる

公差が厳しい部品は、一度の加工で仕上げるのが難しくなります。

通常の加工であれば問題ない寸法でも、厳しい公差がある場合は、荒加工、仕上げ加工、追加の調整加工などが必要になることがあります。

また、加工途中で寸法を確認しながら少しずつ仕上げる場合もあります。

その分、加工時間が長くなり、見積り金額が高くなります。

2. 測定や検査の工数が増える

公差が厳しい場合、加工後の測定にも時間がかかります。

ノギスで簡単に確認できる寸法であれば短時間で済みますが、厳しい公差や幾何公差がある場合は、マイクロメータ、シリンダーゲージ、3次元測定器などを使って確認することがあります。

測定箇所が多い場合や、検査成績書が必要な場合は、検査工数も見積りに反映されます。

加工費だけでなく、検査費用も増える点に注意が必要です。

3. 不良リスクが高くなる

公差が厳しいほど、少しの寸法ズレでも不良になる可能性があります。

加工中には、以下のような要因で寸法が変化することがあります。

  • 工具の摩耗
  • 加工熱による寸法変化
  • 材料の反り
  • クランプによる変形
  • 機械や測定環境の温度差

厳しい公差では、これらの影響を考慮しながら加工する必要があります。

不良リスクが高い部品では、加工側も慎重に見積りを行うため、金額が上がりやすくなります。

4. 加工できる工場が限られる

厳しい公差の加工には、設備、測定器、作業者の経験が必要です。

どの工場でも対応できるわけではなく、精密加工に対応できる工場に依頼する必要があります。

対応できる工場が限られると、見積りの選択肢も少なくなり、価格が高くなる場合があります。

特に、幾何公差や厳しい穴位置精度が必要な部品では、加工設備だけでなく、検査体制も重要です。

よくある注意点

すべての寸法に厳しい公差を入れない

図面全体に厳しい公差を入れると、加工費が高くなりやすくなります。

すべての寸法を高精度にする必要がある部品は多くありません。

コストを抑えるには、機能上重要な箇所だけに厳しい公差を指定することが大切です。

たとえば、厳しい公差が必要になりやすい箇所は以下です。

  • 相手部品とはめ合う穴
  • 位置決めに使う基準面
  • ベアリングやピンが入る穴
  • 摺動部
  • 組み立て精度に影響する箇所

反対に、外観や逃げ形状など、機能に大きく影響しない箇所は、一般公差で問題ない場合もあります。

「念のため厳しくする」は高くなりやすい

設計時に「念のため厳しくしておこう」と考えて、公差を厳しく入れることがあります。

しかし、加工側から見ると、公差が厳しい箇所はすべて守る必要があります。

そのため、本来は必要ない公差でも、加工費や検査費が上がる原因になります。

公差は、安全側に見て厳しくするのではなく、部品の機能に必要な範囲で指定することが重要です。

H7公差と特殊な公差

穴加工では、φ8H7のような公差が指定されることがあります。

H7は比較的一般的な穴公差で、リーマ加工などで対応されることが多いです。

工場によっては、よく使うサイズのH7リーマを保有している場合もあります。

一方で、F7などの特殊な公差が指定されると、その寸法に合う工具を新たに用意する必要がある場合があります。

工具を新規購入する場合、その費用が見積りに反映されることがあります。

穴公差を指定する際は、設計上その公差が本当に必要か確認しましょう。

一般的なはめあいであれば、H7など対応しやすい公差で問題ない場合もあります。

加工費を抑えるためのポイント

公差による加工費を抑えるには、図面の段階で必要な精度を整理することが大切です。

以下の点を確認するとよいでしょう。

  • 厳しい公差が本当に必要か確認する
  • 機能に関係する箇所だけ厳しく指定する
  • 一般公差でよい箇所は一般公差にする
  • 穴公差はH7など一般的な指定で済まないか確認する
  • 幾何公差を入れる場合は、基準面や測定方法も明確にする
  • 検査成績書が必要な寸法を事前に伝える

特に、見積り時には「どの寸法が重要なのか」を伝えることが大切です。

加工側も、重要な箇所が分かれば、加工方法や検査方法を検討しやすくなります。

見積り時に確認したいこと

公差が厳しい部品を依頼する場合は、見積り時に以下を確認しておくと安心です。

  • 指定公差に対応できるか
  • 必要な測定器があるか
  • 検査成績書の発行が必要か
  • どの寸法を重点的に検査するか
  • 量産前に試作や初回品確認が必要か
  • 公差を緩和できる箇所がないか

特に、3次元測定器や専用ゲージが必要な場合は、検査工数や納期にも影響します。

加工可否だけでなく、検査体制も含めて確認することが重要です。

まとめ

公差は、部品の品質や組み立て精度を決める重要な指示です。

しかし、必要以上に厳しい公差を指定すると、加工時間、検査工数、不良リスクが増え、見積りが高くなりやすくなります。

金属加工を依頼する際は、すべての寸法を厳しくするのではなく、機能上必要な箇所だけに適切な公差を指定することが大切です。

また、H7など一般的に対応しやすい公差で済む場合は、特殊な公差を避けることで、工具費や加工費を抑えられる可能性があります。

公差を正しく指定することで、品質を確保しながら、加工費や納期のバランスを取りやすくなります。

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