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でんさい(電子記録債権)とは?仕組み・メリット・導入の流れを徹底解説

政府方針を受け、産業界・金融界では、2026年度末(2027年3月末)までに紙の手形・小切手を全面的に電子化する取り組みが進められています。その代替手段の一つとして注目されているのが「でんさい(電子記録債権)」です。取引先からでんさいへの切り替えを打診された、あるいは自社から取引先に提案したいと考えている経理担当者・経営者に向けて、でんさいの仕組み・メリット・デメリット・導入の流れをまとめました。
でんさいとは?仕組みをわかりやすく解説
「でんさい」は、2008年12月に施行された電子記録債権法に基づく電子記録債権のうち、株式会社全銀電子債権ネットワーク(でんさいネット)が取り扱うものを指します。手形のような紙の現物を発行・郵送する代わりに、発生・譲渡・支払といった一連の手続きをすべて電子データとして記録・管理する決済インフラです。
でんさいを利用するには、利用者が、でんさいネットに参加する金融機関(窓口金融機関)に決済用の預金口座を持ち、所定の利用契約を結ぶ必要があります。支払企業・受取企業の双方が、でんさいを利用できる環境を整えていることが必要なため、取引先がでんさいネットを利用していない場合は、まずその点を確認するところから始まります。
主な利用要件は次のとおりです。
- 日本国内の居住者・法人であること
- 窓口金融機関に決済用の預金口座を持っていること
- 暴力団員等の反社会的勢力に該当しないこと
- 行為能力に制限がないこと(未成年者等でないことなど)
- 支払企業として利用する場合は、債務の支払能力があること
でんさいのメリット
でんさいを利用する主なメリットは、次のとおりです。
- 印紙税が不要:手形1枚ごとにかかっていた印紙代が発生しません
- 紛失・盗難・改ざんリスクを抑えられる:紙の手形のように現物を紛失・盗難されるリスクがなく、紙媒体の改ざんリスクも抑えられます
- 支払期日に自動入金:支払期日になると、支払企業の口座から資金が自動的に引き落とされ、受取企業の口座に払い込まれます。受取企業は、原則として支払期日当日から資金を利用できます
- 分割譲渡が可能:債権の一部だけを譲渡・割引に回すなど、資金繰りに合わせた柔軟な使い方ができます
- 郵送・保管コストの削減:発行・郵送・金庫保管といった事務作業が不要になります
でんさいのデメリット・注意点
一方で、導入・運用にあたっては次の点に注意が必要です。
- 取引先もでんさいネットの利用者である必要がある:自社だけが導入していても、取引先が未参加であれば利用できません
- 導入に金融機関の審査・契約が必要:窓口金融機関との利用契約が前提となるため、導入までに一定の準備期間がかかります
- 期日前に資金化(割引)する場合は別途審査が必要:手形割引と同様、金融機関の審査を経る必要があります
- 記録内容の正確性が重要:でんさいには、一定の要件のもとで、手形と同様に「人的抗弁の切断」が認められる仕組みがあります。これは、債権を譲り受けた第三者に対して、元の当事者間にあった事情を理由として支払いを拒むことが原則としてできなくなる仕組みです。そのため、発生記録や譲渡記録の内容を正確に登録することが重要で、誤りがあった場合は訂正のための手続き(訂正記録など)が必要になります
でんさいの手数料はいくら?
でんさいの手数料は、利用する金融機関やサービスによって異なります。通常のでんさいサービスでは、窓口金融機関が発生記録・譲渡記録・決済などの手数料を設定しており、同一金融機関宛か他行宛かによっても金額が変わります。正確な金額は、必ず取引金融機関の手数料一覧で確認しましょう。
一方、後述する「でんさいライト」は、でんさいネットが手数料を設定しており、金融機関によらず共通です。2026年8月時点の主な料金は次のとおりです。
| 手数料の種類 | でんさいライトの料金(税込) |
|---|---|
| 基本手数料 | 無料 |
| 発生記録 | 264円 |
| 譲渡記録 | 132円 |
| 分割(譲渡)記録 | 264円 |
また、でんさいを支払期日前に資金化する「でんさい割引」を利用する場合は、金融機関による審査や所定の割引料が発生します。料率や利用条件は金融機関・企業の信用力・取引状況などによって異なるため、事前に取引金融機関へ確認しましょう。
でんさいライトという選択肢もある
2024年11月18日にでんさいネットが正式リリースした「でんさいライト」は、より手軽にでんさいを利用できる新しいチャネルです。中小企業にとっては、次のような特徴が導入のハードルを下げるポイントになります。
- インターネットバンキングの契約が不要
- 初期契約料・月額の基本手数料が無料
- パソコンだけでなく、スマホやタブレットからも利用可能(SMSを受信できる端末が必要です)
- 発生記録・譲渡記録・分割譲渡などの主要な操作に対応
なお、でんさいライトでは、債務者(支払側)として行う一定の記録請求について、1件当たり100万円が上限です(受取・譲渡側にはこの上限は適用されません)。少額・小口の取引が中心の場合や、まずは試験的に導入したい場合の選択肢として検討する価値があります。ただし、インターネットバンキングの契約が不要な点はあくまで手続きの簡略化であり、利用申込みや資金決済は窓口金融機関を通じて行う点は通常のでんさいと同じです。
でんさい導入の流れ
でんさいを導入する際の主な流れは、次のとおりです。金融機関によって申込方法や審査内容は異なるため、あくまで一般的な流れとして参考にしてください。
- 取引金融機関に相談する:まずは取引のある銀行・信用金庫など、でんさいネットに参加している金融機関に相談します
- 利用条件・手数料・必要書類を確認する:通常のでんさいサービスか、でんさいライトかによっても条件が異なるため、あわせて確認します
- 利用申込・必要な審査等:窓口金融機関に利用を申し込み、金融機関所定の手続き・審査等を受けます。内容や基準は金融機関によって異なります
- 利用開始に必要な初期設定を行う:利用契約の締結後、利用者番号の付番など、利用開始に必要な設定を行います
- 取引先と利用方法を確認する:支払企業・受取企業の双方がでんさいを利用できるよう、取引先と運用方法をすり合わせます
- でんさいの発生・譲渡を開始する:インターネットバンキングやでんさいライトを通じて、実際の取引を開始します
必要書類は金融機関によって異なります。法人では登記事項証明書や本人確認資料、個人事業主では本人確認資料などを求められる場合がありますが、具体的な要件は事前に取引金融機関へ確認しておくとスムーズです。
銀行(窓口金融機関)選びのポイント
でんさいはどの参加金融機関から申し込んでも仕組み自体は共通ですが、実務上は次のような観点で比較検討するとよいでしょう。
- 主要取引先が利用している金融機関と、自社の窓口金融機関との関係によって手数料体系が異なる場合がある
- 発生記録・譲渡記録・割引などの手数料体系
- 既存のインターネットバンキングとの連携のしやすさ
- でんさいライトを利用する場合は、取引金融機関がでんさいライトの取扱金融機関であるか
- 導入・審査にかかる期間の目安
すでに取引のある金融機関であれば、口座やインターネットバンキングなど既存サービスとの連携を確認しやすいため、まず相談先の候補にするとよいでしょう。
なお、2026年1月1日施行の取適法では、対象となる取引について手形による支払いが禁止されています。電子記録債権(でんさい)についても、中小受託事業者が取適法上の支払期日までに代金相当額を満額受領できず、受領のために自ら割引等を行う必要があるような条件での利用は認められません。また、でんさいの利用手数料を中小受託事業者が負担することで、支払期日に代金の満額を受領できなくなる場合にも注意が必要です。「手形をでんさいに変えれば対応完了」ではなく、でんさいへ切り替える際は、支払期日・満期日・手数料負担などの条件をあわせて確認しましょう(詳しくは「下請法→取適法改正の実務対応」の記事をご覧ください)。
手形からでんさいへの切り替えチェックリスト
- 主要取引先が、でんさいネットに参加している金融機関を利用しているか確認する
- 取引金融機関に、でんさいの導入可否・審査基準・手数料体系(通常のでんさいサービスか、でんさいライトか)を確認する
- 発生記録の入力担当者・承認フローなど、社内の運用体制を決めておく
- 期日前に資金化(割引)する可能性がある場合は、あわせて割引の審査基準も確認しておく
- 手形から切り替える場合は、取引先へ切り替え時期・方法を事前に案内する
まとめ
でんさいは、印紙税の削減や紛失・盗難リスクの軽減など、紙の手形にはないメリットを持つ決済手段です。一方で、取引先の参加状況や金融機関の審査など、導入前に確認しておくべきポイントもあります。「でんさいライト」のように、より手軽に導入できる選択肢も登場しているため、早めに検討を進め、取引金融機関に相談しておくことをおすすめします。手形廃止全体のスケジュールや他の代替手段(ファクタリング・銀行振込など)については、「約束手形廃止・資金繰り対応」の記事もあわせてご確認ください。
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