株式会社山田製作所

世界各国から年間200社が見学に

株式会社山田製作所について
大阪府大東市に世界各国から年間200社が見学に来る板金加工メーカーがある。

株式会社山田製作所だ。

整理・整頓・清掃の徹底が「最高のセールスマン」に。

豊かなオリジナル商品も3Sの徹底から生みだされる。

今回は代表の山田茂氏にお話を伺ってきました。
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快く取材を引き受けていただき、ありがとうございます。まずは、御社の事業内容や強みを教えてください。

山田氏

一言で言えば、製缶板金業です。
特色としては量産ものではなく、一品のものに特化しているところですね。
産業用機械の単なる部品を作るのではなく、産業用機械に関わるアイテムを受注してつくります。
カタログに載っているようなものではなくですね。
産業用機械メーカーさんの協力企業として、製品をつくっていて、時には自社で設計して丸ごと一式納品することもあります。

業界的にいえば、一番多いのがリチウムイオン電池です。
車のバッテリーですね。
バッテリーの中には、正極・負極・セパレーターっていうフィルムがぐるぐると丸まって収まっているのですが、そのフィルムをつくる装置を手がけています。
次に多いのが、半導体関係。
弊社は半導体そのものをつくる装置ではなく、半導体工場に付帯する集塵フィルターケースをつくっています。
昨年はとても忙しくさせていただきましたね。
次の柱は食品関係で、食品を加工する機械です。
例えば、コンビニにいくとチャーハンとか販売していますよね。
あれは、セントラルキッチンで大きな窯でガーっと炒めているんです。
そういうものをつくっています。
次が化粧品。化粧品を製造する過程で、パーッと液体をかき混ぜる装置。
同じような装置として、医薬品関係も手がけています。
事業内容としては、このような感じですね。


ありがとうございます。一品ものというのは、月でいうとどれくらい出るようなものなのでしょうか。

山田氏

その都度その都度ですね。
例えば、今つくっているもので言うと、先ほど述べたリチウムイオン電池向けのフィルムを作る装置。
メーカーさんから、その装置に関わるもので、金庫の扉のようなもの注文をいただいています。
機械としては、一台なのですが、それに扉が20枚付く。
ですから、注文としては20枚。
ただ、その大きさのものはもう来ないですね。
次に注文が来るときは全く別のものになっている。
そのようなイメージですね。

なるほど。ものづくりにおいて、人の部分が重要だと伺っています。御社は、優良企業として、表彰もされています。どのような取り組みをされているのでしょうか。

山田氏

雇用に関しては、基本的に新卒採用をしています。
高校を卒業された方を多く採用していますね。
人はもちろん大切にしているのですが、いい子いい子と頭を撫でるように大切にするわけではありません。
そうではなくて、その人その人が持っている潜在能力をきちんと引き出すことを大事にしています。
正直に言って、弊社のような零細企業に入社してくれるような若者は、自分がどんな潜在能力をもっているのか気づいていません。
ですから、その能力を十分に発揮することもできないわけです。

私のような経営者や先輩社員が一緒になって、その潜在能力を見つけてあげる。
そして、その能力を徹底的に引き出してもらって、その人の強みを出してもらう。
これは、言葉では綺麗にかっこよく聞こえるかもしれませんが、結構厳しいと思っています。
ある意味では、学校みたいなところもあって、きちんと社員教育をしています。
とはいえ、人格否定をするようなことは絶対にしません。
私自身のことで言えば、人間的な成長のところでさぼっていたら叱ります。
でも、日常のルーティンワークに関しては一切口を出しませんね。


そのような考え方は経営方針にも反映されていらっしゃる。

山田氏

そうですね。
色々手がけていますが、根本的なところでは、「経営指針書」というものを毎年見直し成文化しています。
要は、経営理念です。
次に「10年ビジョン」。
それから、「経営方針」、「経営計画」。
この4つを総称して「経営指針」って言ってます。
経営理念や10年ビジョンは、簡単に変わるものではありません。
経営方針は、3カ年の中期の戦略的方針。
経営計画は、この1年に何をどこまでしなければいけないのかを明示する行動計画と予算計画です。
これは、全社員で毎年一緒につくっています。
経営指針書は、60、70ページにもわたるようなもので、今もちょうど来季のものをつくっています。
ただつくるのではなくきちんとPDCAサイクルを回して、達成できるように努力する。
そのための行動計画ですからね。
誰と誰がチームを組むとか、進捗報告とかをきちんとやってチェックする。
で、具体的にアクションの形にする。そうやって、毎月、毎週、毎日をぐるぐると回していく。ただ、上から管理するのではなく、みんなで一緒に決めて行動に移していく。そういう意味でも、人を大切にしていますね。

ありがとうございます。日々の仕事と並行してこのような取り組みをされていることは、なかなか大変なことでもあるように思います。この辺り従業員の皆さまからはどのような反応があるのか、お伺いさせてください。

山田氏

10年ビジョンも私が勝手に書いたのではありません。
みんなの意見を書類にまとめているんです。
ですから、そこには10年後の自分とかそのようなものも含まれています。
年収まで入っていますよ。
10年後には、ここまで平均年収をあげるとか。
じゃあ、それを達成するためには、どうしなければいけないのか。
今日から毎日やらなければいけない。

これはみんなによく言うことなのですが、会社のためとか経営者の私のために頑張るとか、そういうことをする必要は一切ない。
でも、一緒に働く仲間のために手を抜いて、その分誰かの時間を奪ってしまうようなことはいけません。
例えば、自分が手を抜いてしまったせいで、日曜に大事な用事があった先輩が、日曜出勤をしなければならなくなるとしたら、どうなのか。


利他の精神が浸透している。

山田氏

浸透まではいっていません。
でも、そのようなことはよく言います。
自分のためには諦めちゃうようなことでも、人のためなら頑張れますからね。

なるほど。これまで手がけられた中で難しかった案件や印象に残っている仕事などございましたら、お伺いさせてください。

山田氏

ここ最近で言えば、ジェネリック薬品関係ですね。
今は大分落ち着きましたが、2、3年ほど前はジェネリック薬品特需があったんです。
政府が社会保障費を抑えるために、ジェネリック薬品の割合を引き上げようと音頭をとったんですね。
そういう背景もあったので、ジェネリック薬品メーカーが、積極的に設備投資をしたんです。
弊社にも、メーカーさんからお声がけをいただいて、仕事が舞い込んできました。
ただ、なかなか難しい仕事でした。
失敗したというようなことはなかったのですが、製作過程で何度もつくり直しをしなければいけないことがありました。
溶接がコアな技術になるのですが、小さなピンホールがひとつあってもダメ。
そしてピカピカに磨き上げないといけない。
薬品関係ですから、絶対に菌とかが溜まってはいけませんから。
納期への対応の部分で、徹夜しないといけない日も続きました。
そういうことも含めて難しい仕事でした。

そのときに誠実に仕事に取り組まれたことで、今の事業の柱にまで成長されたのでしょうか。

山田氏

そうですね。
私たちは、技術職じゃないんです、技能職なんです。
加工プロセスの中で、機械で切って、穴あけて、折り曲げるなんていうのは、全体の5パーセント程度。
あとの95%は、本当に手加工です。
技能っていうのは、なかなかデータや文書で残しにくいものです。
そういう意味では、どれだけ経験を積んだかが大事になります。
それなしには、スキルがあがりません。
そういう面では、いい経験になっているなと思いますね。


ありがとうございます。ITの導入でも評価を得ていると伺っています。

山田氏

ITと言っても会社として使用しているのは、文書管理ソフトですね。
これは、とても親しくさせていただいている金型業者さんが開発したんです。
フォルダー毎の管理ではなくて、大きな箱のようなところに情報を全部入れてしまうんです。
検索かければ、情報を取り出すことができて、しかも全員で共有することもできる。
それを駆使していますね。
もう一つは、生産管理、原価管理のもの。
これも自分で開発したのではないのですが(笑)

もう一つはちょくレポというもので、リアルタイムで生産現場の進捗状況を見える化するものです。
これは、弊社がつくって販売もしています。
ホームページにワイデクル事業部というバナーがございますので、是非見てください。

弊社の仕事って、基本的にリードタイムが長いものが多いんです。
注文をいただいてから、完成するまでに1ヵ月かかるような仕事。
そうなると、お客さまから1週間毎でいいので、進捗状況を写真で送って欲しいって言われたんです。
当時は、デジカメで撮って、エクセルに貼り付けて送ったり、生データを送ったりしていたのですが、正直面倒で。
でも、よくよく考えたら、他のお客さまも求めていることだろうなと思いまして。
他のお客さまにも、勝手にやってみたんです。
そしてら、めちゃくちゃ反応がよくて。
そらそうですよね、立ち合いに来る必要なくなるんですから。
山田製作所は、勝手に週一回の頻度で進捗状況を写真で送ってくる。
プロなんで、お客さまが今どの辺りを見たいのか、気にされているのかもわかる。
それを送るわけです。
ときには、写真を見て、もっとこうして欲しいとか、反対に設計が間違っていました、止めてくださいとか。
そうなってくると、手戻りが少なくなってきますよね。

じゃあ、それを進捗報告サービスとしてきちんとやっていこうと。
それを続けていたら、弊社のホームページをつくってくれていた会社が、声をかけてくれて。
そういう経緯で、製品化しました。
スマホで撮ったものを直接相手先に送れるようなソフトを作って、売り出しています。

なるほど。ちょくレポだけではなくて、様々なオリジナル商品をつくられていると伺っています。オリジナル商品のアイデアというものは、どのようなところから湧いてくるのでしょうか。

山田氏

ワイデクル管理ボードというものも作りました。
これは、説明も営業なしでも月に3台くらいは注文が来ます。
これのオリジナルのものは、もっとでかいのですが、弊社はもともと徹底した整理・整頓・清掃で有名な会社でもありまして。
年間で200社くらいは、見学に来ていただいています。
海外からも見学に来られる方もいて、全部で57ヵ国から来ていただきました。

来月も海外から27人いらっしゃいます。
整理・整頓・清掃って何のためにやっているかというと、単にものを片付けることとか、工場を綺麗にすることではありません。
生産性をあげるためにやっているんです。そういう考え方の中で、工程管理や着手日の管理、納期の管理ではなくてですね、使用したいたのが管理ボード。
そういうことをしていたら、見学者の方からこれを売ってくれないかという話とか要望がありまして。
最初は、いわゆる3Sで商売するつもりはなくて、あまり相手にしていなかったんです。
そうしたら、先ほど申し上げたホームページをつくってくださっている会社が、極端に言うと勝手に作ってカタログを持ってきて(笑)
それならやりましょうか、とスタートしたのがきっかけですね。


見学されている方の中にニーズが眠っていた。

山田氏

そうですね。
パソコンの中で、生産管理や工程管理はきちんとできている。
でも、それを例えば10人とか20人で見える化したい。
パソコン一台では、みんなで見れませんから。
最初は、大きな液晶テレビでも買ってきて映し出せばいいかなとも思ったんです。
でも、モニターって基本的にぼーっと見てしまうもののようで。
確かにテレビとか見ていても、ぼーっと見ていますよね。
これはある大企業の工場長さんが教えてくださったんですけど、見える化はアナログでないとダメだそうです。
で、修正もみんなで一緒にしないといけない。
それを弊社では、毎日朝礼でやっています。
だから、弊社の従業員はちゃんと頭に入っています。

ありがとうございます。今新しい取り組みとか挑戦されていらっしゃることなどございましたら、お伺いさせてください。

山田氏

やはりちょくレポを含めたワイデクル事業部を軌道に乗せたいですね。
現状で、弊社全体の売り上げの1パーセントくらいです。
これを5%くらいにしたいというのが一つの目標です。
もう一つは、また人の話になってしまうのですが、ベトナムのエンジニアの方に入社していただきたいと思っています。
実習生ではなく、向こうの大学を卒業されて、就労ビザを持っている方を社員として迎えたいと思っています。
ちょうどこないだそのような方と面接をしてきました。
5月から来てくださることになっています。
ベトナムの方と一緒にものづくりをしていく、今年のテーマの一つです。
ベトナムの人って、結構日本人のような気質を持っていると考えていまして。
とても楽しみにしています。


なるほど。最後に大きな質問になってしまうのですが、板金業界全体や金属加工業界全体の課題などございましたら、是非お伺いさせてください。もちろん、御社の課題でもかまいません。

山田氏

あまりこういうことを言わない方がいいのかもしれませんが。
弊社は、意外と売値が高いんです。
先ほど申し上げたように、年間200社見学に来てただけるので、新規の受注を取る自信はとてもあります。
例えば、お客さまが新しい協力工場を探していらっしゃる。
その中で、A社、B社、山田製作所という3社を見つけたとします。
で、案件の見積りをすると山田製作所が一番高い。
でも、工場とそこで働く社員のすがたを見たとたんに、是非頼みたい。
こうなる自信が、90パーセントありますね。

現に、毎年の売り上げの10%以上、多いときは16%は、新規開拓や新しくお取引をするようなお客さまからの注文です。
でも、全てが継続しているのかというとそうではありません。
やはり値段が高いんですね。
ただ、私は決して高いとは思っていません。
適正な値段でやらせてもらっていると思っています。
先ほど申し上げたような進捗管理などのサービス。
これは、品質の問題でもありますし、付加価値の問題でもあります。
そういうところで、きちんとした値段をいただけるように努力をしています。

これは、弊社だけではなく、他社さまにも言えることだと思いますが、各社がそのようなところで頑張らないといけないと思っています。
あまりいい言い方になりませんが、我々はメーカーさまの便利屋ではありませんから。
きちんと対等な関係を結べるようにしなければいけません。
その辺りが、まさに私の仕事です。
そのためには、社員がきちんと定着していないといけない。
社員と一緒に経営計画書をつくって、それをお客さんに見せて説明するくらいでないと。
そうすれば、どうしてその売値なのかきちんと主張できますから。

ただ、一方でグローバル価格というものもあります。
中国、ベトナム、タイなどの価格を全く無視することもできません。
付加価値をつけて、適正な値段をもらえる努力をする一方で、コストパフォーマンスにも強い会社にもならなければいけません。
ある意味では矛盾していますが、そういう矛盾を乗り越えていかなければいけないと思っていますね。


まとめ

社員の潜在能力を引き出すために。


教育に力を入れて。


社員一丸で経営計画をつくる。


3Sの徹底も、工場の潜在能力を引き出すため。


株式会社山田製作所には、今日も見学者が訪れる。

加工技術

  • 板金加工
  • 金属・切削加工

基本情報

代表者名
山田 茂
担当者名
山田 茂
従業員数
18名
創業年度
1959年
メールアドレス
info@yamada-ss.co.jp
電話番号
072-871-0095 

住所

〒574-0056 大阪府大東市新田中町2-41

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