株式会社 山星製作所

弊社の強みは「優しさ」です

株式会社 山星製作所について
横浜市都筑区に「優しさ」を強みにした精密板金加工メーカーがある。

株式会社山星製作所だ。

1964年の創業以来、高い技術と温かい人柄が引き継がれている。

指先に乗るような小さなものから、2人がかりで運ぶほどの大きなものまで丁寧に。

「優しさ」が強みとはどういうことか。

今回は代表の真野謙太郎氏とご子息の貴光氏に、お話を伺ってきました。
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品質は「美しい」がキーワード

今回はお時間をいただきましてありがとうございます。具体的な内容に入る前に少しお伺いしたいことがあります。パンフレットやウェブサイトが充実している印象を受けました。

貴光氏

ウェブサイトやパンフレットは私が作っていて、写真も私が撮っています。
印刷は外注ですが、それ以外は「イラストレーター(ベクター編集ソフト)」を使って自分で作っています。
パンフレットもQRコードから YouTube上の加工映像 に飛べるようになっているんです。
昔は印刷屋さんに頼むしかなく、とても費用がかかることでした。
今は、パソコンで何でも作れてしまう時代ですから、費用もすごく安くなって。
ただ、仕事の方が忙しくて、最近はなかなか手を入れられていないんです。

そういう板金加工メーカーは珍しいのでは。

貴光氏

若い頃からカメラが趣味だったんです。
それが今の仕事につながっているというところもありますね 。
前職は、家電量販店でカメラの販売をしていました。
その時期に色々知識を学びまして。
その知識が今活きているのかなと感じています。ただの趣味だったんですけどね(笑)
でも、実は板金屋が「イラストレーター」を使えるのはとてもいいんです。例えば、シルク印刷。
メーカーさんでも「イラストレーター」を使えるところは少なく、印刷指示から実際の製版に至るまで、確認や校正のため間に何社も介することになります。

でも、「イラストレーター」が使えれば、客先の印刷指示を元に自分でデータを作って見せることができる。
そこで、既に校正OKとなった版下データを、印刷屋さんに渡すだけです。そうするとかなり時間と手間を短縮できるので、うちもお客さんも有難い。

いいことはそれだけじゃない。

「イラストレーター」だと、CADで描けないようなものも作れます。
 結局、CAD は図形の組み合わせなので、絵を描くには限界があります。写真を元にソフトで描いた絵を、図形データに変換してレーザーで切断。

そうすれば、こういう虫の形をした板金の製品もできちゃうんですね。
他の板金屋さんでは、なかなか作れないものを作れるということになります。

なるほど。少し話は変わりますが、家業を継がれるというのはどういう経緯だったのでしょうか。

貴光氏

小さい頃は全然継ぐつもりはありませんでした。学生時代に何度かアルバイトをしたんですけど、楽しいものではありませんでした。
親父も自分が苦労してきたので、継げとは絶対言いませんでした。
自分も継ぐつもりは全くなかったです。
前職もそれはそれで楽しかったんです。
でも、そこから10、20年後っていうことを考えた時に、 将来的な面白味があるだろうかって。
そんなことを考えていた時に辞めた人が出たんですよね。
29歳のころだったと思います。
それで、親父に相談して、自分を雇ってくれないか、って。それが大体6年前のことですね。

謙太郎氏

継がせる気は全くなかったんだよ、こっちも。
自分はそういう考えはなかった。
だから、私の方は65歳までにどうやって会社を終息させるか、或いはM&Aでの存続を模索するかを考えていました。
なかなかこういう業界だと血縁関係のない人にお願いするのは難しい。色々な障害がありますから。
社員の将来も考えた上でどうやったら円満な方向に持って行けるか、そういうことを考えていました。
それが、頭を下げて働かせて欲しいって言ってきたから。
嬉しかったですけど、同時に今までのままじゃいけないなって。
今までは65歳までと思っていましたけど、彼が入ったことで会社を永続させていかなければいけないなって。
会社にきちんと力をつけさせた上で、バトンタッチしなきゃかわいそうですから。
設備投資もきちんとして、最新のものを入れていけるように頑張りました。

設備投資が進んでいるという印象をうけていたのですが、その裏には今のような話があったんですね。

謙太郎氏

そうですね。
私は2代目で、会社は今期で55期です。東京オリンピックの時に法人にしているんですが、その前は個人創業で何年か私の父がやっていました。
今の精密板金の走りって言うんでしょうか、精密板金っていう言葉がない頃から父が溶接も含めて高い技術で仕事をしていました。
例えば、アルミの0.6mmとか、普通は穴が開いてしまうようなものを溶接してしまう。
そういう技術を、集まってきた人たちにどんどん教えてしまう。
東京オリンピックの頃だったので、「いけいけドンドン」で仕事はたくさんある。
育った人たちは覚えた先から独立していって。
お客さんに、肝心なところを教えちゃうからダメなんだって、指摘も受けたりしていたみたいですね。
でも、親父はそれでいいんだって譲らずに、職人気質で。私はそういう親父の背中見ながら、わからないながらに継ぐって宣言していて。小学生くらいからですかね。
ずっとその気持ちは変わらずにやってきました。

今、お二方の人柄の部分についてお話を伺えてとてもありがたく思っています。事業の部分についてもお話を伺いたく思っています。取り扱い製品や技術、御社の強みなどを教えていただければ。

貴光氏

板金の中でも精密板金という分野になります。
1 mm ~2mmぐらいの板厚のものが中心になります。
薄いものは、0.2 mm ものもありますし、厚いものでは5 mm とか9mmのものをやることもあります。
1 mm 、2mmの寸法で、曲げの寸法とか角度とか精度が厳しいものを得意にしていますね。
設備的にも、量産してもブレなく同じ精度で均一な製品が作れることに特化することを目指して揃えています。
取り扱っているものとしては、指先に乗るような小さなものから、片手に乗るようなもの、電子機器のカバーなども多いですね。
今うちで一番多く作っているのが、大手メーカー向けの、駐車場の精算機や発券機の中の部品。

無人で24時間動きっぱなしですから、精度の高いものを納めなければならない。
そういう機構部品などが中心になります。
品物としては、きれいで美しいものにこだわっています。
最終的には、エンドユーザーさんの目にはつかないものかもしれませんが、納品した時に板金“製品”として、傷のないきれいな品物だと思ってもらえるところを目指して、丁寧に仕事をしています。

謙太郎氏

逆にいうと、技術自体は他社さんと変わらないかもしれません。
どこで差別化するかというと、図面通りの公差内できれいに作る。
他社さんと比べた時に同じ値段でも、裏側、見えないところもきれいに作る。
同じ品物であれば、きれいな方がお客さんは喜んでもらえますから。
基本的にきれいに製品を扱うっていうことは、寸法なども含めて技術者が高い意識を持って仕事をしていることになりますから。
汚くてもいいっていう態度で仕事をすると、ミスが多くなる。
うちはそういう考え方でやっています。

貴光氏

きちんと丁寧にやるとお客様から喜ばれることがあります。
山星さんのものは、きちんと組み立てができる。
最後まで考えて作ってくれているから安心して仕事を頼める。
そう言ってもらえています。
というのも、提示された図面の公差内には入っていたとしても、少しずつのズレで組み立てられないことがあります。
お客さんの設計の時点でミスがあるところを指摘せずに作ってしまった結果、組み立てることができないという話を聞いたりもします。うちの場合、箱物であれば組んだ状態を想定して作っています。
場合によっては3次元のソフトできちんと確認して、問題があればお客さんに提案をするようにしています。

単発ものでも引き受けることがあるのでしょうか。

謙太郎氏

ありますね。
量産でできるものに関して言えば、作り方がわかってくると安い所に流れていってしまいます。
地方で、場所が広くて材料をまとめて買っておいておけるところ、24時間稼動しても周りに迷惑がかからないところ、そういうところでやった方が絶対安い。
そうするとあるところで、ポンと仕事が向こうに行ってしまう。
若いころにそういう経験がありました。
結局、数の少ないもので生き残っていくしかないんだろうなと思っています。
多品種少量、変種変量生産っていうのかな。
とにかく数が多かろうが少なかろうが、利益が出る仕事ならなんでもやっていくというところでしょうね。

貴光氏

後は、性格的にあまり断ることができないんですね。

謙太郎氏

もちろん、うちも基本的にはリピートを狙いたいです。というのも、一回作っておけば色々工夫できますからね。
それは次があるからできることです。
それで、同じ注文がまた入った時にそこの提案をする。
ここの溶接なくても大丈夫ですよ、その分コスト下げることができますよ、って。
うちにとっても、お客さんにとってもメリットがあるところですから。
そこがリピート品のメリット。
ところが、単発ものだとそれをしにくい。
限りある予算の中で、次につながらないものに工夫をするのは難しい。
だから、単発ものはある程度費用をいただかないといけない。
個人の趣味だったらいいんですけど、社員に給料を払わなければいけないので。

貴光氏

そういう試作をメインにやっている企業さんは、もっと値段を取っていると思いますよ。
うちはリピート品をメインにやっているので、その値段を要求できない。
例えば、この製品だったら感覚的に、5000円は取れない、3000円だよなって。
もちろん、そういう風に3000円でやってしまうと、1個作るのにかかるコストを考えると割にあわないのは確かで。

謙太郎氏

でも、普段からリピート品を発注いただいているお客様から来た単発ものっていうのは、嫌がらずにやらなきゃいけません。
いい仕事ばっかり選んでいたら、長いお付き合いはできませんから。
信頼関係っていうのは、そういうところから生まれてくる。
うちは一番長いところでは、創業以来54年やらせて頂いているお客様がいます。
30年、20年っていうお付き合いをしているところもあります。上位8割のお客様は、20年30年以上の付き合いのあるお客様です。
今の時代、付き合いが長いだけでお仕事が頂けるほど甘くない。
それでも、長くお付き合いしていただいている。
何かしらのメリットを感じていただいている。そういう風に理解しています。

貴光氏

板金だけではなくて、研磨や塗装、メッキなど、処理業者さんとのお付き合いも沢山あります。
ですから、製品を最後まで面倒を見てお届けすることができます。
そういう所も特色かもしれませんね。
お客さんから見れば、仕事を投げやすいですから。

それと、基本的に、依頼を断らないようにしています。
聞いたことのない材料の案件が来ても、もちろん加工機に悪い影響が無いかの確認はしますが、
インターネットでも何でも使って情報を集め、どうにか加工できないかと考えます。

お話を伺っていると、単に技術だけではなくてお人柄の部分がすごく重要なんだなっていうのを感じています。

貴光氏

御社の強みはってよく聞かれるんです。
そういう時は、「優しさ」って答えています。
個人の方がスケッチ画を持ってきても作りますし、図面どおりに作れば良いものでも、「こうすればもっと良い」など、半ばお節介な提案をする訳です。

謙太郎氏

優しくなんてないですよ。
うちがいろいろ提案したり、お客さんのミスを指摘するのは、後で作り直すのが面倒だからなんですよ。
作り辛い思いをして、後から高いって言われるのは嫌じゃないですか。
このままだと高くなっちゃいますよ、こうやれば安くなりますよ。
そういう提案は、お客さんのことを考えてっていうよりは、そのまま作るとたいへんだからです。
だから、全然優しくないですよ。

貴光氏

また、マイナスなことを言って。
うちの社長はマイナスなことばかり言うんです(笑)
見積りも、ここをこうして、こうしたらこうでとか、2人ともつらつらと書くんですよ。
だからめちゃくちゃ時間がかかります。でも、お客さんには喜んでもらえる。
他の板金屋さんがただ「加工不可」で返してくるところを、山星さんはその理由を説明してくれるから(直しようがあって)助かる、と言われます。


謙太郎氏

お客さまに加工不可だけで送り返すのは、失礼だっていう気持ちがあって。どうやって断ったらいいかって文章を考えますね。

貴光氏

こうしたらできるけど、この図面だとちょっと厳しい。
このままでは曲がらないんだけど、何故曲がらないのかを、なるべく設計の方が気を悪くしないように…と。。

謙太郎氏

やっぱりお前もそうだよな、俺ばっかりじゃないよな(笑)

お断りするにはできるところまでやって。
山星さんに断られちゃったなら、しょうがないなって思ってもらえるまでやる。
本当は効率が悪いのかもしれないですけどね。

他のところは、そんなに真剣にやってないかもしれないですね。これは先代が言っていたんですけど、
現場をよく知らない人間に見積りをやらせた方が、かえって儲かるんじゃないかって。
我々だと加工方法とか商品の値段感とかも分かってしまっている。
そうすると、こんなに高い値段もらえないなとか迷っちゃうじゃないですか。
そこが別にわかってなければ儲かるために、じゃあ8000円で、とか。
案外それがそのまま通ったりとかすることもあるみたい。
我々は板金屋としてのプライドがありますから、その値段ではできないなって。

貴光氏

例えば、1個8000円で作るとするじゃないですか。
作っているうちに、これはもらいすぎだなって。それで、お客さんに電話して、値段下げてもいいですかって言ったことがあります。
だから、あまり儲からないんですね(笑)

謙太郎氏

お前よくそういうのやっちゃうよな。

貴光氏

安全を見て、見積り出すじゃないですか。
実際にやってみて、もっと安くできるとなるとこれは貰いすぎ。

謙太郎氏

お客さんとしては悪い気はしないからね。

それがリピートにつながって、長いつきあいになっているのでは。

謙太郎氏

そうだったらいいんですけどね。
できるだけ断らない。
作ったことがないものでも、できる範囲でやってみようと。無償でサンプル作ってみたりして。

貴光氏

無駄なようだけど、それが次に活きるときがあります。
新しい案件が来た時に、どのように工夫したらできるか、知識がたまっている。
上手くいきそうにないな、とダメ元でやってみたら、上手くいってお客さまに喜ばれたり。頭だけで考えてお断りはしない。
たとえ、上手くいかなくても、今後につながると思えばそれでいいと思うんです。

なるほど、頭が下がります。最後に板金業界の課題を伺いたいのですが。

謙太郎氏

難しいですね。
今後、機械化は進むと思います。
ただ、いくら機械化しても、どこかで人間の技術でまとめあげなければならない。
だから、ベテラン技術者の技術をいかに下の世代に継承させていくか、という問題は残る。
うちはさっき言ったみたいに小ロットでやっていきます。
そこに高度な技術をいかに取り入れていくか。
数が少なくても自動化ができるのか。
そういう設備がでてくれば、積極的に取り入れていきたい。
ただそうはいっても、この業界は機械設備が割と高いので、経営陣はそこのバランスを考えていかなければいけない。
ほかに板金業界の課題として何かありますか。

貴光氏

うーん、仕事が手いっぱいでなかなかそこまで考える余裕がありません。
目の前の仕事でいっぱいいっぱいで。

謙太郎氏

やっぱり人なのかな。
人がいないから、なかなか先を見据えることができない。
そこをなんとかしないといけませんね。
日々の仕事に追われないように人を入れながら、色々考えていく。
余裕を持って仕事が回るようにしないとダメですね。
どういう形であれこの会社で働いてよかったって思ってもらえるように。
自分の会社の課題になってしまいますけど、魅力のある会社にしないといけない。
そこはちゃんとやります。

貴光氏

板金業界の課題だけでなく、ものづくり業界の課題でもあるんですけど、もっと魅力のある仕事だと思ってもらえるものにしなければいけない。
多分、多くの方が板金屋に油の付いた手で、カンカンたたいているアナログなイメージを持っていると思います。
でも、今の板金屋の工場って、コンピューターが入った機械だらけ。
工場も綺麗なものです。
ものづくり全体のイメージを変えなければならない。
ものづくりは、面白くてかっこいい仕事だよっていうのをきちんと発信して。
それが当たり前になる風潮を作っていかなければいけないかなって思いますね。


まとめ
お客さまのことを第一に考えて。


設計まで遡って提案する。


そこに板金屋としてのプライドがあるから。


山星製作所の強みは「優しさ」です。

加工技術

  • 板金加工
  • 金属・切削加工

基本情報

代表者名
真野 謙太郎
担当者名
真野 貴光
従業員数
18名
創業年度
1964年
メールアドレス
yokohama@kk-yamaboshi.co.jp
電話番号
045-932-8661

住所

〒224-0057 神奈川県横浜市都筑区川和町186番地7

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