株式会社歌製作所

付加価値の高い大物加工を超特急で

株式会社歌製作所について
和歌山県岩出市に大物加工に強みを持つ板金加工メーカーがある。

株式会社歌製作所だ。

ボリュームのある製品を全国各地から依頼される。

ベルトコンベアから産業化機械まで。

手間ひまかけて、超特急で納品。

今回は代表取締役の歌圭造氏にお話を伺ってきました。
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快く取材を引き受けていただき、ありがとうございます。まずは、御社の事業内容や強みを教えてください。

歌氏

弊社は、精密部品加工も手がけているのですが、基本的には大物に強みを持っています。
現在、コンベアをたくさん受注させていただいています。
全国の空港で新しいベルトコンベアシステムを導入しているようです。
その関係で、多くの依頼をいただいていますね。
アスクルさんやアマゾンさんのような企業からも同様のお仕事の依頼をいただいています。
物流の自動倉庫に関係するようなものですね。
これも、全国各地に拠点ができてきています。
こちらも大きなコンベアシステムですので、ボリュームのある仕事をさせていただいているような状況です。


ありがとうございます。大物というと、どれくらいのものなのでしょうか。

歌氏

弊社で、大きいものといえば、アーム型のものになりますね。
大体、3メートル以上あるようなもの。
バブルがはじける前は、金属関係でボリュームのあるものを多く手がけさせていただいていました。
横浜ランドマークタワーの空調機の裏側にあるシュートボックスのようなダクト。
各フロアごとにあるのですが、それを加工させていただきました。
全部で300トンくらい加工させてもらったと思います。

その次に手がけさせていただいてのは、京都の駅ビルですね。
結構、大型のプロジェクトを手がけさせていただいていたんです。
そういうプロジェクトのお話が決まると、1年以上はそのプロジェクトにつきっきりでしたね。
東京にマンションブームが来たときは、基礎になるような部材の加工をさせていただきました。
そこから、産業機械ブームがきました。
産業機械では、色んな用途のものを手がけさせていただきました。
その頃は、主に厚物に特化して仕事をいただいていましたね。
厚物の方が、いい値段がつくことが多かったんです。

今も厚物に強みを持ってらっしゃるのでしょうか。

歌氏

いや、今は逆に中厚になってきていますね。
ただ、業界によって呼び方が色々あるのですが。
6ミリや9ミリのものが増えてきているという印象ですね。
材質も、様々なものを手がけさせていただいています。
例えば、鉄の中にも硬めの鉄とか、ハイマンガンといったとても硬い板などがあります。
本当に幅広く、聞いたこともないような材料もたまに扱います。
和歌山県で、弊社ほど様々な種類の材料を扱っているところはないと思いますよ。


ありがとうございます。空港のお話がありましたが、全国から依頼が来ているのでしょうか。

歌氏

全国から来ていますね。
結構、地域ごとに特色があります。
弊社のある関西地域は、どうしても価格が安いものを好みますね。
お世話になっているお客さまに言われたら、喜んでお仕事させていただきますが。
ただ、とてもじゃないけど値段が合わないような場合にはお断りをさせていただきます。

これに対して、愛知のお客さまは結構スピードを求めるような印象を持っています。
受注したら、1週間ほどである程度の形をまでつくって欲しいというような要望をよくいただきます。
ただ、価格でそれほど厳しいようなものは少ないですね。
反対に、受注してすぐに対応できるのであれば、それなりの金額で依頼していただけます。
スピードが早いからと言って、品質を落とさないように、きちんと価値の高いものを提供させていただいています。
溶接の工程も、きちんと手間ひまをかけるようにしています。
手間をかけた分だけ、きちんと評価していただけるように心がけて仕事していますよ。

なるほど。御社が、ものづくりをする上で、特に大事にされていることなどございましたらお伺いさせてください。

歌氏

これは、そのものづくり業界でも同じことだと思いますが。
相手のニーズをきちんと汲みとることですね。
単にいただいた図面通りに仕事をするのではなく、どうしたらより喜んでもらえるのか。
その意図をきちんと汲みとって、ひと手間加えるようにしています。
他社さまよりも、強度がいい、品質がいいと言ってもらえるように。
また、現場で加工するときに、どうやったら作業性能、効率アップにつながるのか。
こちらから提案させていただきます。

お客さまが喜んでもらえるもの、いいものをつくること。
それによって、お客さまから注文をたくさんいただけるようになります。
いくらまでに下げて欲しい、というような価格交渉も減っていきますしね。

初めてのお客さまからの注文には、価格的にある程度無理をしなければいけないこともあります。
ただ、きちんといいものを納めさせてもらう。
価格も、本当はこれくらい欲しいということをお伝えする。
そうすると、少しくらい高くても、いいものを納めてくれるからということで、リピートの注文をいただけるようになります。
そのような、仕事の仕方を大事にしていますね。


つくったものが、営業をしてくれるような。

歌氏

そうですね。
こういうこともありましたよ。
「歌さんのところは、高い。だから、他社に仕事を回す」って言われたんです。
じゃあ、弊社はどのような製品を得意にしているのか。
逆に、そのお客さまに直接伺ってみたんですね。
そうすると、「組みものはとても上手だ」って仰ってくださったんです。
じゃあ、ということで、それから組みものに特化できるように設備も整えて。
それまでは、切断だけのような仕事も引き受けたのですが、辞めました。

そうしてみたら、組みもの関係の加工がたくさん舞い込むようになりました。
しまいには、大型の農機具の依頼が来ました。
地方に出荷するような特殊な農機具なのですが、量産もので。
毎年すごい数の注文をいただけるようになりました。
去年も、農機具関係で運転席のようなものの試作の依頼。
この中にクーラーも入るようなものだったのですが。
他社さまよりも高い価格を提示したのですが、実際に受注させていただきました。

試作ものは、何度もトライして、工夫して、完成度を高めていきます。
時間も手間もかけるのですが、いいものを安定して納期通りに納めさせていただいています。
そういう部分でも、信頼をいただいているのかもしれませんね。

ありがとうございます。正直、厳しい納期の依頼などもあったりするのではないでしょうか。

歌氏

それは、しょっちゅうですね(笑)
例えば、東京の街中の総システムに関係するような製品を手がけたことがありました。
総システムを入れ替えるので、この部品をこの時間にこの場所に届けて欲しいという指定がありました。
要は、夜にシステムを止めて、その間に入れ替えなければいけないんです。
指定通りにできるように、現場から何分以内というような場所に、トラックを待機させておきました。
それで、時間通りに行けるようにしました。

弊社で、早いものと言うと、2、3日で塗装まで仕上げて納品。
他業種から転職してきた人間に聞いたら、こんなに出荷が速いのは初めてだ、って言っていましたね(笑)
そのような特急案件に対応できるように、弊社では生産管理システムを入れています。
今どこに何がどのように待機しているのか。
そういうものを見つけることができるように。

早い段階で組み上げなければいけないもの、何時までに届けて欲しいという要望をよくいただきますね。
そういう形で、毎日忙しくさせていただいています。

ありがとうございます。今までで困難だった案件や、苦労されたお仕事などございましたら、お伺いさせてください。

歌氏

よく覚えているのは、かなり大きなトン数の案件。
弊社で、これまで手がけたことがないような量でした。
怖くなるようなトン数でして(笑)
製油所に入れるタンクの基礎工事をする。
そのための板材を加工して欲しい、という依頼で350トンの量が一気に入るようなものでした。
トレーラー6台を、弊社の倉庫に入れられるかって相談されました。
一旦キャンセルしようと思ったくらいで。

ただ、2、3日考えさせていただいて、他所さまの倉庫も借りて、手がけさせていただきました。
当時は、リーマンショックの時期でもあったので、弊社も決して景気がよかったわけではないのですが。
ただ、そこの仕事は、他のどんな仕事でも同じくらいの量があるだろうと考えたんです。
案の定そこから、今手がけている物流関係につながりました。
常に、大きな仕事量を持っていらっしゃいました。
リーマン以降は、弊社の中で一番の売り上げになっていますね。


なるほど。今、挑戦されていることなどございましたら、是非お伺いさせてください。

歌氏

いっぱいありますね。
その中でも、教育に力を入れています。
コミュニケーションと技術の力を上げることができるように、講師の方をお呼びしています。

仕事をする上で、コミュニケーションはとても重要になりますよね。
協力会社さまやお客さまと様々な打ち合わせをしなければいけない。
そういう場合に、どのような言葉遣いをしたらいいのか。
どのようにお声がけをしたらいいのか。
言い回し一つで、先方の機嫌を損ねることってありますよね。
逆に、喜んでもらえるようなこともある。
長々とお話をしたら、お互いの時間を奪ってしまう。
そのような考えのもとで、講師の方に来ていただいています。

技術系の先生に来ていただいているのは、図面を読み切れるようにするためです。
どのような加工機で、どのような加工をすれば、上手くいくのか。
あるいはいかないのか。

昔は、機械にも不完全なところがたくさんありました。
ですから、人間が知恵を使いながら、ものづくりをしていたんですね。
今では、ほとんどのものがコンピューター化されている。
図面に関しても、CADの中で完結してしまいます。
ただ、これは個人的な考え方になりますが、CADの中の世界で満足してはいけないと思っています。
加工とか機械の持っている本質的な部分まで、きちんと捉えてなければいけない。
そうしないと、付加価値のあるいいものをつくり上げることができない。

CADデータを見ながら、もしかしたら、こういう方法で加工した方がいいのではないか。
こういう工夫をすることで、お客さまに喜んでもらえるのではないか。
先ほどの話の繰り返しになりますが、お客さまの求めているものに対して、どのようなひと手間を加えることができるのか。
そういうところをくみ取れるような人材に育って欲しい。
弊社には、今そういうことができる人間が3人います。
他所さまではできない言われたと仰って、依頼に来てくださるお客さまも多いです。

ありがとうございます。日々の生産で忙しい中、教育のコストをかけるのは、なかなか大変かと思います。目に見える効果など、実感されていらっしゃいますか。

歌氏

なかなか難しいですね。
生産の効率や、品質、5Sの効果をあげるようなもの。
これらは、ずっとやっていると必ず成果がでてきます。
ただ、弊社の場合は、一品一様のものが多い。
加えて、短納期。
まったく同じような仕事が毎回あるわけではないです。
ですから、知識やノウハウをすぐに次に生かせるということが少ない。
そういうことができるというのは、当然強みにもなるのですが。

教育の効果は、やり続けないとどうなるかわからない。
目に見えて効果が出ないからといって、やめてしまったらそこまで積み重ねてきたものがダメになってしまいます。
そういう意味では、辛抱強くやり続けたいと思っています。


最後に大きな質問になってしまうのですが、板金業界全体や金属加工業界全体の課題などございましたら、是非お伺いさせてください。もちろん、御社の課題でもかまいません。

歌氏

今、一番悩んでいるのは、どんな金属加工が残っていくのか。
最近では、樹脂やプラスチックへとどんどん変わっていっていますよね。
3Dプリンターで射出成型すれば、すぐにものができてしまう。
じゃあ、金属ではなくて、強化プラスチックでいいじゃん、ファイバーでいいじゃんっていう流れが加速しています。
そういう中でどのような金属加工が残っていくのか。
ここは、本当に悩んでいます。

もう一つ悩んでいるのは、仕事と人の関係です。
人手不足もあって、製造業全体が自動化の流れにあります。
でも、全部自動になってしまったら、まったく人がいらなくなりますよね。
そうしたら、誰が何のためにものをつくるのか。
人が働く場所を失えば、お金を使うこともなくなっていくように思います。
そうなれば、お金というものが自然と動かなくなる。
極論ですけどね。
でも、本当に自動で人の要らないシステム目指した先に、どのような社会が待ち受けているのか。
その社会の中で、どうやって生きていったらいいのか。
一生懸命に働く人がいて、一方でお金も使う人がいて、それで世の中が回ってる。
人手不足だから自動化する、価格の安い地域でものをつくる。
でも、海外でものづくりをするようになって、日本の持っていた技術的な優位性みたいなもんが、どんどんと失われていっている。
生産拠点が日本だからといって、海外人材で日本のものづくりを続けていくことができるのか。
ものづくりは、お客さまがいて、さらにそのお客さまから必要とされて、はじめて成り立つようなところがあります。
そのような視点をぶれずに堅持していなければ、いけないと思っています。
これは、弊社だけではなくて、ものづくり業界全体に言えることだと思います。
お客さまに必要とされるような企業でありたいし、業界全体もそうであって欲しいと願いますね。


まとめ

お客さまのニーズを汲みとって。


付加価値の高い大物加工を超特急で実現する。


仕事が仕事を呼び込んで。


株式会社歌製作所には、全国各地から引き合いが殺到する。

加工技術

  • 板金加工
  • 金属・切削加工

基本情報

代表者名
歌 圭造
担当者名
歌 圭造
従業員数
34名
創業年度
1977年
メールアドレス
uta@uta-s.co.jp

住所

〒649-6213 和歌山県岩出市西国分76-1

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