快く取材を引き受けていただき、ありがとうございます。まずは、御社の事業内容について、教えてください。
岩鼻氏
弊社の従業員は、70人くらいいまして。
抜き、曲げ、レーザーと、一通りの加工ができます。
ほかと違うのは、ある程度の金型まで作れるところです。
溶接までの加工の受注が多いので、そういう加工をやっています。
筐体というより、カバー関係ですね。
制御関係のカバーなど、薄物の溶接を強みにしています。
塗装処理に関しては外注さんになるんですけど、以降に関しても、アセンブリーまで、お客様によっては対応しています。
基本的には、多品種小ロットです。
御社の強みについて、お教えください。
岩鼻氏
ものづくりというのは、最後組み立てをして、製品になるじゃないですか。
最後の塗装仕上げまで、一貫生産をやらせてもらっているで、お客様に安心してもらえます。
途中で、気づいたことがあれば、お客さんに、こちらから逆に提案もします。
図面通りに作るのではなく、提案型にしていますね。
お客様と直接やりとりすることで、安くなる方法や、納期を早くする方法を、提案ができるので。
話しながら、場合によっては、工場で立ち会ってもらって。
ある程度近場であれば、飛んでいって、お客様と直接打ち合わせができます。
関東近辺であれば、どこでも飛んでいきますので。
遠いからってお客様に言わせることはないので。
また、お客様によって求めるものが違うので、納期なのか、コストなのか、話し合って合わせています。
コストが一番安くなればといえば、全てがそうでもないので。
御社の設備では、ファイバーレーザー加工機を推していらっしゃいますか。
岩鼻氏
国内で持っているところは少ないですね。
溶接までできるところは、特に。
ただ、今、どこも導入するようになってきたので。
30人規模の会社であれば、1台は入れていると思います。
それがないと、仕事にならないので、逆に入れていかないといけません。
ファイバーといえども、溶接と抜きがあるので、どっちを入れているかという話になれば、また別です。
とくにつながりの強い業界は、ありますか。
岩鼻氏
お客様の業界は、全部違います。
同じ業界は、景気の波が一緒なので、同じ業界で崩れてしまう不安があります。
波が違う業界と、分けてお付き合いいただいています。
理化学機器、医療機器、半導体の一部、たまにゲーム機とか。
一年を通して、ずっと注文が出るかというと出ないので、臨機応変にしていますね。
業界が重ならないように、狙ってずらしています。
10年前、ゲーム機は、年2回くらいご祝儀がきましたね。
業界の流れが変わってきているので、それによって、全部変わってきています。
お客様が、在庫を持たないようにされていたり。
受注発注という形で、お客様からもらった注文をまとめて作ることもしています。
例えば、ゲーム業界なら一社か二社というように、同じ業界は一社二社ですね。
コントロールされる上で、営業の力が大事になってくると思いますが、そのあたりはどのようにされていますか。
岩鼻氏
そうですね。
受けではなく、常に攻めの営業なので、穴が調整ができるんです。
今は年間を通して、110社くらいですね。
毎月動いていても、35社くらいですね。
トータルして毎月やっているんですけど、毎月注文が出ているお客様は、18社くらいですね。
後の半分は波があるので、逆に再来月の注文を始めたりとかしています。
攻めの営業とのお話ですが、新規の営業は、どのようにされているのでしょうか。
岩鼻氏
全部電話ですね。
電話でアポ取って、行きます。
ここ3年くらいで、650件くらいは営業をかけていますね。
リスト上は850件くらいはあります。
インターネットのサイト、新聞、情報、いろいろ見て、使えそうなものを拾って。
全然関係ないところに行っちゃうことも、昔はありましたけど。
今は、ネットを検索して、使っているのだったら、営業をかけられますし。
昔は行かないことには、わからないことがありましたけど、今はわかるので。
行ってみないことには、仕方がないので、行って勝負をかけていますね。
新規は前向きに。
ニーズに合ったものを社内に取り入れればいいんでしょうけど、そういうわけにはいかないので。
板金なら、取り入れていくのかなと。
前にいくしかないので。
採算が合わないと、会社もやっていけないので。
お客様は、どのような点にメリットを感じて、注文までつながっていくのでしょうか。
岩鼻氏
タイミングですね。
既存の外注さんがあるわけじゃないですか。
高齢化で辞めて行く方もいますので。
今すぐに取引して下さいといわずに、1年に1回、半年に1回、3ヶ月に1回とか、うまく時期をずらして、アプローチしていますね。
まめに、連絡しながら。
加工メーカーを探しているところもあれば、探していないところもあります。
うちは、探している探していないに関係なく、アピールさせてもらって、なにかのお役に立ったら加工させて下さいとお伝えして、帰っていますね。
業者はいっぱいいますので、今無理をしてやることではないです。
積極的に受けていきたい案件は、どのようなものでしょうか。
岩鼻氏
選んでいるような状態ではないので、採算ベースで合って、断る必要がなければやります。
ある程度値段が折り合いがつけば、見ながら受け取ればいいのかなと。
やってみて、取り入れていますね。
今までで、難しかった加工や案件のエピソードがあれば、お聞かせください。
岩鼻氏
少量多品種なので、毎回本番です。
材質的には、ステンレスは得意ではないので、最近苦手な部分を取り入れていますね。
ステンレスは、傷とか表面処理などの、最後の仕上げの面で難しいですね。
サビとかの問題が出てきますので、気遣いが必要ですよね。
あとは、扱う物が大きくなってきているので、大きいのにチャレンジしていますね。
大きいものをつくるのは、単純に物理的に大変なので、難しいです。
一人で作業はできませんし、二人、三人でやらなくちゃいけないとコストの面が絡んでくので。
コストが合わなければ、申し訳ないですけど、お断りしている状況ですね。
板金業界全体で、機械産業化が進んできていますが、その流れについて、御社はどのようにお考えですか。
岩鼻氏
コストの面では、仕方がないですよね。
それでも、最終的には、人間の手が必要になりますよね。
仕上げは、人間じゃないとできないわけじゃないですか。
溶接は、ロボットがやったとしても、最後の仕上げはやはり人間かなと。
ロボットといいますけど、それは量産の分野であって。
少量品には、絶対に人間の手が必要になります。
いかに仕上げの人間が多くいるかによって、ものづくりのベースができていくと思っています。
機械で自動化したとしても、後加工ができなければ、製品が完成しないので。
小さい会社だと、スポット溶接までできないし、溶接の職人は、大抵一人しかいないですよ。
仕事が立て込んだ時には、逆にテンパって仕事ができないよね。
人間の瞬発力が必要だよね。
ものづくり業界で、後継者不足の問題がありますが、これについては、どのようにお考えでしょうか。
岩鼻氏
たしかに人手不足だと思います。
弊社では人の募集は随時行い、福島工場では新卒を採っています。
5年、10年は見えてこないので、1年1年が勝負かなって思います。
今は、一次産業が難しいのかな。
やりたい人は、ゼロじゃないとは思いますけど。
若い人で、農業や水産業をやる人も、中にはいるわけじゃないですか。
いると思いますけど、やっても100人のうち、1人2人でしょう。
魅力のあるイメージ作りが大切ですね。
産業自体が弱っていれば、だんだんと人も減りますよね。
あとは、どうしても、汚いとかイメージがあるとか、いろいろ理由があると思いますけど。
昔は、学校で木工でいろいろなものを作ったりしました。
今は、パソコンとか英会話とかの方にいっているので、教育の場面からも、変えていかないと。
中学生の体験受け入れとかやっていますけど、体験でいろいろなところに行くのは、いいと思いますね。
従業員の方の年齢分布は、どのような状況ですか。
岩鼻氏
今若い人が多くて、10代は2人。
20代が4、5人ですね。
30代は結構います。
50代が2人、60代が6人。
若い人が多く、良い状況ですね。
福島工場は、地元で仕事したい新卒の高校の人を入れて。
その中で、性格を見て、何をやりたいかって話をして。
自分の性格ってあるので、嫌々やっても仕方がないので、合う仕事をやらせています。
御社の公式ホームページを拝見したところ、きれいに作られていると思いました。インターネット上の広報に力を入れているのでしょうか。
岩鼻氏
弊社は、会社案内を作っていないんですよ。
ホームページを見て欲しいとご案内していますので、その分ホームページに力を入れて、予算をかけています。
ホームページに工場の映像を載せているのは、工場が福島にあるんですよ。
取引前に、工場を見てもらえるように。
行かなくても、設備はどれくらいか、広いか狭いかもわかるので。
そういった理由で、ホームページに力を入れています。
若い人は携帯で見れるので、QRコードをつけています。
お仕事をする上で、大事にされていることはありますか。
岩鼻氏
基本的には、健康管理をしながら仕事をしっかり。
健康管理が一番なので。
健康で安定した収入を得なければいけないので、それを大事にしています。
もちろん技術はレベルを高めていきながら。
なかなか、今の若い子は、見て覚えてというのがわからないので、見せながらやっていかないと。
無理にやらせても仕方がないし。
仕事内容よりも、若い従業員のモチベーションを維持させるが難しいのかと思います。
気持ちの問題ですね。
昔の人だったら、仕事に対して、きれいな仕事だねとかいえば、満足して採算度外視してやりますけど。
今はそうじゃないですものね。
世の中が変わってきているので、求めるものが変わってきていますので。
若い人と会話しながら、せっかく入ったんだから、一つでも自分にあった仕事をやれるように、見極めています。
昔はとにかく言わないでやれや、っていったんだけど、今はそれは通用しないよね。
功を奏しているのか、中途でも辞めないですね。
意外に安定しています。一人一人に個性があるので、本人の気持ちを大事にしていますね。
まとめ
近場であれば、ユーザーのところに飛んでいき。
設計段階からの打ち合わせにより、逆提案も行う。
自社サイトの充実も、お客様本位であればこそ。
株式会社相馬製作所は、配慮あるものづくりを追及する。