快く取材を引き受けていただき、ありがとうございます。まずは、御社の事業内容や強みを教えてください。
荒井氏
弊社は、板金加工の分野では精密板金といわれる部分と得意としております。
その中でも、防水・防滴に対応した筐体ものの一貫加工を強みとしています。
具体的には、室外につけるような操作パネル、カバー。
そういったものの設計から板金加工、配線、組立まで一貫加工が可能です。
全て社内で一貫対応できる体制を取っています。
もちろん、筐体の設計から加工までのというお客さま、あるいは中の配線、組立のみを依頼されることもございます。
ウェブを経由しての新規のお問い合わせでもございます。
その中の6割近くは防水・防滴の筐体設計からのお話をいただくことが多いです。
ありがとうございます。防水という言葉はよく耳にするのですが、防水と防滴の違いについて、お話を伺わせてください。
荒井氏
わかりました。
防水に関しまして、IP規格というものがございます。
これに従って、防水・防滴というお話でして。
具体例を挙げて申し上げると、IP67というものは浴槽に落としても、中に水滴が入らない。
IP55のものはシャワーのようなノズルで水をかけても、中に水滴が入らないという仕様になっています。
ここら辺はグレードの問題でもありますので、製品の用途によって使い分けながら、設計の段階で提案させていただいております。
防滴は防水よりもグレードが低いんですね。
防滴レベルであれば、ある程度他社さまでも対応しているかもしれません。
ただ、先ほど申し上げたレベルの防水ものとなると、相応の設計のノウハウが必要になってきます。
そのような防水ものを得意としてやってらっしゃる業者さまが少ない関係で、お問い合わせを多くいただいている状況にあります。
なるほど。御社の会社名に通信機器と入っていますが、その辺りについて沿革も含めてお伺いさせてください。
荒井氏
先ほど申し上げたように、弊社は防水・防滴の筐体設計を得意としております。
そのような意味では、現状名前と強みに少しミスマッチなところがあるかもしれません。
ご指摘いただいたように、弊社はもともと通信機器を手がける会社でございました。
主に計測機器関係です。
計測機器関係の精密板金に当たる部分の板金加工、筐体設計をつくっていました。
さらに遡ると通信機器の組立や配線に特化した会社でした。
そのような沿革もありまして、現在電気関係の組立配線とメカの部分のものづくりが弊社の事業の柱になっています。
10年位前でしょうか。
通信機器のケース自体は、正直どこの業者さまでもできてしまうようなところがございます。
他社さまとどのように差別化をはかればいいのか。
繰り返しになってしまいますが、そこで防水関係をきちんと実現できるようにしようと。
そのような経緯で実績を積み上げてきて、現在多くのお問い合わせをいただいている、という経緯ですね。
具体的には、どのようなお客さまから防水対応を求められるのでしょうか。
荒井氏
今メインでいただいているお客さまですと、トンネルの中の監視カメラを手がけているお客さまがいらっしゃいます。
トンネルですので、普段は雨などは関係ないのですが。
ただ、年に数回、かなり大規模な掃除をされるみたいでして。
その際に、結構な水量で中を掃除されるようです。
そうすると、カメラのレンズだったり、筐体をIP67の仕様で防水にした方がいいですよね、っていおうお話に。
トンネルの中には、大体50m間隔で監視カメラ入っているようです。
そうすると、かなりの台数を手がけさせていただくことができますよね。
そのような関係から、監視カメラ用のカバーの筐体を手がけています。
それがメインのお客さまでして。
それ以外でも、船や電車など外部に搭載されるような制御盤のカバー。
そのようなものも手がけさせていただいています。
ありがとうございます。御社のホームページで、電磁バレル研磨機というもの販売されているのを拝見しました。
荒井氏
電磁バレル研磨機は、元々はお客さまからご依頼があって作ったものです。
弊社の方で、設計からものづくりまで一貫対応させていただきました。
その際に、お客さまとお話し合いをさせていただいて、私どもに権利をいただきました。
私ども独自で販売しても構わない形にですね。
このお客さまは、宝飾関係を手がける会社さまでして。
そのお客様の先には、大手のブランドさまにもつながっているようです。
電磁バレル研磨機は、ネックレスや指輪などを中に入れて、電磁のコイルでもって研磨をする製品です。
金や銀といったものをきれいにしていくんですね。
構造自体は、ブラストのようなものです。
その宝飾屋さまには、70台以上納めさせていただきました。
海外に輸出もされたようです。
それを弊社では、他の宝飾屋さんにも、独自で販売できるようにさせていただいております。
ありがとうございます。コーナーフォーマー加工についてもお伺いさせてください。
荒井氏
要は、R部分の加工なのですが。
一般的に、こういうものを実現するには溶接でやるか、金型をつくってプレスで打ち抜くかのどちらかということになります。
プレスですとどうしても、金型費用がかかってしまいます。
溶接ですと技術が必要になってきます。
コーナーフォーマーというのですが、絞ることでRをつける機械を持っています。
一台からでも対応できますので、金型費用もかかりません。
このような綺麗なRを出すのに、溶接する必要もございません。
コーナーフォーマーを使用することで、高級感をもった仕上げを実現することができます。
板金というと、どうしても少し角ばったようなイメージを持たれる方がいらっしゃいます。
コーナーフォーマーであれば、綺麗にRを出せる。
例えば、一回製作したものをリニューアルする際に、この加工をしませんか、と。
そのような形で、ご提案させていただいております。
なるほど。電磁バレル研磨機も含めて、様々なご苦労があったのでしょうか。
荒井氏
そうですね。
実は、私はこの8月から弊社の責任者になったので、直接は関係していないんです。
ただ、やはり前職の方は結構苦労されたみたいです。
このような製品を実現するには、すべての取りまとめをしなければいけない。
取りまとめするには、どうしても製品にかかわる全部の知識をわかっていないといけません。
この辺りに関しては。
協力先にもお願いしながら実現させた、と聞いております。
これは、電磁のコイル自体が大きくて。
購入のルート辺りからご苦労があったようです。
ありがとうございます。御社は、樹脂設計も担っているとのことですが、板金加工以外の対応もされているのでしょうか。
荒井氏
弊社は、基本的に板金加工に特化しています。
弊社は、フジプリグループというグループ企業の中の1社になります。
他には、回路・基盤設計のアポロ技研という会社、プリント基板を担当しているフジプリント工業という会社がございます。
その中で、双明は板金加工を主に担当しています。
双明自身は、板金加工と組立、配線まで。
ただ、先ほど申し上げたように、弊社はグループで基盤の開発、開発のための設計、レイアウト。
また、回路の設計までできる。
お客さまからすれば、丸投げできるわけです。
そのようなところで、お客さまにお喜びいただいている。
お客さまから依頼があった際に、弊社も含めて、グループの中で完成品に近いところまでできる。
そのような体制を取っています。
なるほど。御社がフジプリグループさまの一員になった経緯などをお伺いしてもよろしいでしょうか。
荒井氏
弊社の創業自体は1959年です。
ですから、60年ほどの歴史があります。
これに対して、フジプリグループ自体は50年経つかどうか。
弊社は、もともとフジプリグループのお客さまという位置づけでした。
M&Aのきっかけとなったのは、もともとの経営者の方がご高齢になったことです。
双明は、高度経済成長期に伸びた会社だったのですが。
主な取引先は、2社で80%を占めるような会社でもありまして。
売上げもその2社に依存するような形でしたので、その辺りの難しさもでてきたようでして。
そこで、フジプリに会社を買ってくれないか、という話があったんです。
ちょっと畑違いではあるのですが、プリント基板と関係している部分もございましたので。
それで、お話を受けさせていただいたというような経緯ですね。
ありがとうございます。先ほど、荒井さまは8月に責任者になられたというお話でしたが。
荒井氏
そうです。
畑違いな部分があって、色々勉強しなければいけないことがあります。
とはいえ、双明もフジプリグループの一員ですから。
グループ全体でシナジーを出すために、双明自身のあり方というか、色を変えていかなければいけない部分もございます。
もちろん、これまでに実績を重ねてきた板金加工も単独できちんと対応できるように。
ものづくりの業界というのは、自分たちが実現する内容、技術面をきちんと知らないと、お客さまから注文を取ることが難しいんですね。
お客さまと話をしていても、どうしても技術面の話がでてきますから。
そこを、きちんとコミュニケーションできなければいけないので、苦労があります。
もともと、弊社に来る前は海外の方にいまして。
香港にも支社があるのですが、そちらにいました。
海外支社は、一言で言えば商社でして。
基盤に使用する材料の調達と供給をメインにやっております。
プリント基板、生基盤を仕入れているんですね。
基盤は、ものづくり的にはプリント基板と呼ばれています。
それにプラスして、日系企業さまに、現地での外注先の指導などもさせていただいています。
なるほど。今、双明さまとして抱えている課題などございましたら、是非お伺いさせてください。
荒井氏
弊社の課題ということでしたら、今ある第一工場と第二工場のコミュニケーションをよくしたいと考えています。
第一工場は板金加工に対応していまして、これに対して第二工場は電気と組立をおこなっています。
距離的に、両工場はそれほど離れていないのですが、もっと連携を図っていけるようにしていきたいです。
弊社の強みは、ものづくりの一連の流れがスムーズであることですから。
スムーズにすることで、効率性、生産性をあげていきたいと考えています。
そのためには、生産管ソフトの見直しもしなければいけません。
そのような課題をもっています。
もう一つは、グループ全体の標準化の問題。
これは、なかなか難しい面がありまして。
ただ、グループの若手の営業を集めて、勉強会をしたり、材料面も統一していこうという流れにあります。
現状、その辺りに関する打ち合わせを定期的にしています。
ありがとうございます。新井さまは海外にいらっしゃったとのことですが、海外と日本のものづくりの違いについて、お伺いできれば。
荒井氏
一般論になってしまいますが、海外の方は職人ではなく、設備をドンといれて、製品を作っていきますね。それに対して、日本の場合はどうしても、職人っぽさがある。50、60の人が現役で現場に立っていらっしゃいますよね。どちらがいいのかはわかりませんが、そうすると日本の場合は、いいものはできても、数では負けてしまいますよね。それに対して、海外は数量を出せる。その結果、どうしても色分けというか棲み分けができてしまうように思います。技術に長けたもので、どれだけビジネスとして伸びていくことができるのか。そこには、何らかの工夫が必要になってくるのではないでしょうか。
まとめ
防水・防滴の筐体のみならず、電磁バレル研磨機、コーナーフォーマー加工まで実現。
それは、創業60年にまで至る技術の積み重ねがあるからできること。
電気関係の組立配線とメカの部分のものづくりを事業の柱として。
双明通信機器製作所は、フジプリグループの中で存在感を放つ。