有限会社志村プレス工業所

板金×技術×デザイン

有限会社志村プレス工業所について
愛知県小牧市に遊び心を大事にする板金加工メーカーがある。

有限会社志村プレス工業所だ。

苦しい時期にあえてデザイナー、技術者をリクルート。

それは遊び心を忘れないため。

志村プレスの遊び心とは何か。

今回は、代表の志村正廣氏にお話を伺ってきました。
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今回はお時間をいただきましてありがとうございます。最初に御社の事業の概要や強みについて教えてください。

志村氏

弊社、創業して55年の会社になります。
元々はプレス加工を行なっていましたが、現在では板金加工を主力としています。
板金加工に本格参入したのはやはり中国の問題がございまして。
一週間ほど中国へと工場を見学しに行ったのですね。
話しには聞いていたのですが、現地で直に見たところ量産ものは中国に流れると確信しました。
そこで、板金、その中でも試作に舵を切ることに。
ベンディングマシンを購入して、板金加工の分野に参入しました。
ベンディングロボットも導入して曲げ加工を省力化しました。
その後、前工程・後工程の自動化も計り、一部の業務を無人で行えるところまで設備を整えました。
以上が板金加工を始めるに至った経緯ですね。

弊社の強みは色々あります。
1つの例をあげれば、デザインとチタン加工ができることですね。
リーマンショックの際に、他社さまが人を削減するなかで、あえて技術力がある方やデザイナーの方を雇用しました。
デザイナーの方が入ったことで、意匠性のある製品づくりに取り組むことができる。
代表的な製品は、チタン製のボタン。
チタンは加工が難しいからと取り扱わない加工業者の方も多いです。
ただ、軽量、錆びない、強度も高いと魅力のある金属。
宇宙航空分野や医療分野への事業展開が見込めるものです。
一歩一歩着実に取り組んで、今では問題なくチタンを加工することができるようになりました。

元々は、弊社にいる営業の方から、ボタンが割れるという話がありまして。
じゃあ、チタン製のボタンなら割れないだろう、と製作に取り組みました。
さらにデザイン面でも工夫をこらして。
おかげさまで好評を得ています。
チタンだけではなく、他社さまで実現しにくいような加工を積極的に取り組んでいます。
それが弊社の強みになっていますね。
現在では、メーカーの方から直接仕事の相談を受け開発を行うようになりました。
単なる下請け企業ではないと自負していますよ。

前向きに取り組む姿勢が、技術につながっているんですね。どのようにしたら、従業員の方にも、仕事に対して前向きに取り組んでもらえるのでしょうか。

志村氏

ものづくりはおわりがありません。
今できることで満足していては進歩しませんね。
会社自体が新しい挑戦を積極的に行うことで、従業員も前向きな姿勢を身につけてもらえればと考えています。
展示会や交流会にも積極的に参加しています。
そこでの反応は、普段工場で作業しているだけでは得られないものがあります。
また、展示会に出展する際には、展示品を製作するために準備しなければいけません。
だから、普段より早く仕事を終わらせなければいけません。
しかも、展示品を製作しなければいけない。
この時間を作るために工夫をしなければいけない。
その後の仕事に対する姿勢につながりますね。


リーマン・ショックの際は積極的に雇用を進めていったとのことでした。現在でも、人材採用部分で積極的に取り組まれていることがございましたら、お伺いさせてください。

志村氏

例えば、シングルマザーや外国人の採用ですね。
これは積極的に行なっています。
それから、人材育成のために資格取得の補助、取得後の賃金の上昇、これらに取り組んでいます。
お子さまがいらっしゃる方に、工場で働いてもらうことで、ものづくりを身近に感じて欲しい。
最終的には、志村プレスで働きたいと思ってもらえれば嬉しいですよね。
また、工場見学はいつでもできるようにしてます。

外国人の採用でいえば、いち早く研修生の受け入れを始めました。
3年すると帰国されてしまうのですが、3年間の記録をDVDにまとめて、帰国後の就職活動に役立ててもらえるようにしています。
現地の企業側は、DVDを見るだけで何を行なってきて何ができるかわかりますよね。
研修生は、技術が身についていることをアピールしやすい。
日本語検定の合格でも、賃金を上げるようにしています。
みんな朝から積極的に勉強してくれていますよ。

DVDまで作成して、バックアップするんですね…

志村氏

ここまでやるところは、なかなかないと思いますね。
研修生が帰国されたあとも、交流をしています。
感謝の言葉をいただくこともあって、その部分でこちらもきちんと取り組んでよかったなと思っています。

最新設備を積極的に導入されて活用されているとのお話でした。機械を導入する際に意識していることなどあれば。

志村氏

顧客満足度を上げることを重要視していますね。
それから設備導入の際に、変に安く買おうとしないことを心がけています。
導入した機械をきちんと使いこなせるように。
導入後のアフターフォローなどもいただきながら。

これはIoTという言葉が出始めたころのことなのですが。
省エネ対策の助成金を活用して、ファイバーレーザーを導入しました。
じゃあ、せっかくだからと工場内の電力設備の省エネにも取り組みました。
コンプレッサーを使用して工場の電気代を抑えました。
ファイバーレーザーの省エネと合わせて、3分の1ぐらいにまで抑えることができました。
その際、電力消費量などを外部から計測できるようにしました。
計測したデータを見れば、どのような状況でエネルギーが使われているか見ることができます。

新しい設備による技術が出てくる一方で、職人の技術が失われるという議論をも耳にします。

志村氏

職人の技術は、確かに大切です。
ただ、その技術をどのように継承していくのか。
これはとても難しい問題です。

これは実際にあったことなのですが、職人の方が工場見学で弊社の設備を見る。
例えば、ファイバーレーザーでの溶接を見たりすると、「自分のやってきたことはなんだったんだろう」って仰ったことがありました。
技術を伝えることが難しい状況の中で、スイッチを押せば誰でもできる設備がでてきたというのも事実だと思います。

とはいえ、技術の承継の問題でいうと、先ほど申し上げたように元はプレス屋でした。
プレスをやっていたときは量産加工。
金型も板金加工で使われる金型とは違います。
ですから、技術やノウハウも異なる。
その部分はちゃんと伝えることができるようにしたいと思っています。


ITへの取り組みも重視されていると伺っています。いつごろから取り組まれているのでしょうか。

志村氏

はい、ITは前々から重要視していまして。
バブル期に買ったベンディングロボットがきっかけです。
まずは、それに対応できるようにと、CAD用のパソコンを買うといったところから始めました。

弊社は20人ぐらいの規模の会社。
現場で仕事をしているのは15、6人です。
それで、1日の出荷が180〜300点くらいです。
これらの図面の数は膨大です。
1点の製品で、2000〜3000個の出荷になることもあります。
それぞれで、ロット数もバラバラです。
多品種のものを管理するには、どうしてもITの活用が不可欠になります。

弊社は、現場に端末をセットすることで、どこに何があるか、進捗はどうなっているのか。
きちんと把握できるようになっています。
少人数で管理するためには、ITの技術が欠かせませんね。

ありがとうございます。少し大きな話しになってしまうのですが、板金加工業界全体のの課題についてお伺いさせてください。

志村氏

教育の仕方に問題があると思います。
山本五十六は、「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」といいました。
上役の人間が、そのような教育をされていないんですね。
リーマンショックで大量に人が解雇されました。
それまで、現場で仕事を担っていた人がいなくなり、教育する人もいなくなってしまいました。
「やってみせ」をできる人がいなくなってしまったんですね。
言葉だけいいことはいっても、実際にやってみさせないから進歩しない、成長しない。
これが一番の問題です。
結果だけでなく、ちゃんと過程も見てあげること。
そして、いい仕事に対してきちんとほめること。
ごくごく基本的なことです。

弊社でも、働き方を改革しようと取り組みました。
以前は、難しい仕事を工場長が、一人で抱えていました。
「むずかしいことだから、自分がやらなければ」という意識だったんですね。
そこを、一人一人の人間に仕事を任せてみせる方向に変えてみました。
仕事の担当を自由にしたことにより、ひとりひとりに自分がやらなければいけないという意識が芽生えました。
わからないことがあれば、きちんと上司に聞くという流れに変わりました。
結果、社内の残業時間も減りましたね。

ものづくりに携わる仕事をされている中で、大切にしていることなどございましたら、是非教えてください。

志村氏

ものづくりには、遊び心が重要だと感じています。
だから、板金屋なのに、板金屋ではやらないようなこともおこなっているんですね。
ものづくりには、終わりがありません。
新しい加工や挑戦をこれからもどんどん続けていきたいです。
そのためには、研究して勉強して。
社会の基本にものづくりがあって、さまざまなものが動いている。
そういう意味でも面白い業界、新しい動きの発信元に繋がる業界、だと考えていますね。


まとめ

ものづくりの本質は遊び心にある。


チタンボタンは、遊び心から生まれたもの。


板金×技術×デザインで自社製品を発信。


他社にはできないことを実現するために。


志村プレス工業所は真剣に遊ぶ。

加工技術

  • 板金加工
  • 金属・切削加工

基本情報

代表者名
志村 正廣
担当者名
志村 正廣
創業年度
1980年
メールアドレス
info@shimura-press.co.jp
電話番号
0568-77-0135 

住所

〒485-0076 愛知県小牧市三ツ渕原新田368-1

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