髙橋鉸工業株式会社

ものづくりが面白くて仕方ない

髙橋鉸工業株式会社について
東京都江戸川区に、ヘラ絞りに強みを持つ金属加工メーカーがある。

髙橋鉸工業株式会社だ。

創業以来、一貫してヘラ絞り加工に専念。

ヘラ絞りは技術のみならず、感覚が必要という。

独自の感覚は、どのように習得され、活かされるのか。

今回は、代表取締役の高橋雅泰(たかはし まさやす)氏にお話を伺ってきました。
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御社の事業概要、取扱製品、技術·企業の強みを教えてください。

髙橋氏

へら絞りというのは、1人前になるのに10年近くかかります。
金属といっても、鉄、アルミ、ステンレス、銅、真鍮など、さまざまな素材があります。
材質・板厚・形状全てを把握した上で、1人の職人に図面を渡します。
木型でやるか金型でやるか、板取はいくつだとか、全てをできるようになるには10年近くを要するんです。
不器用な人は、20年経っても、1人前になりません。
へら絞りは独特の世界。
技術だけでなく、感覚の世界です。
溶接や板金加工も、うちでできますので、トータルできるところがうちの強み。
創立から70年近く経とうとしている会社なので、一声かければ、1つの製品が出来上がるほどの協力会社も多数あります。
江戸川区内でも、たくさんありますね。
強みの一つとして、特定の業界に特化してないことですかね。
特定の業界や大手1社に依存すると、身動きが取りづらくなるので。
うちでできることなら、可能な限り、来るもの拒まずやっています。
製品は、大きいものから小さいものまで、なんでもやっています。
材料に関しても、ほぼ何でも対応させていただいています。
鉄やアルミといっても、何種類もあり、そういうことを知らないお客さまもいらっしゃいます。
目的や用途に合わせて、最適な材料を提案し、お客さまと一緒にものづくりをしますと謳わせていただいております。

感覚は、習得が難しい分野ではないでしょうか。どのように職人の育成をされているのでしょうか。

髙橋

もちろん、いきなりへら絞りをさせられるわけではありません。
最初は、ただの板を切ったり丸くしたりといった下積みからはじめます。
私も、当然経験しています。
職人の世界ですから、いちいち手取り足取り教えるものではなく、先輩職人を見て覚えていかないといけないです。
いわれたことをやっていればいい人と、自分から仕事を覚えたいという気持ちを少しでも持っている人とでは、成長や技術の習得に雲泥の差が生まれると思うんです。
仕事を覚えたい気持ちを持っている人は、例えば、スクラップを持っていくときでも、ほかの職人の背中をチラチラ盗み見て、学ぼうとしてますね。
職人にとって重要なのは、やる気をもっていること。
仕事の楽しみ、喜びを感じることができる人が向いていると思います。
そういう人がメキメキと成長していきます。
ただ、最近の若い人は、そういった気概の人ばかりではないので、育てるのが難しいですね。
やる気のない人に、やる気を持てと言って、持てるものでもないですし。
しかし、うちに来たいといって来た人には、こちらも受け入れる責任があると思っています。
職人やものづくりの面白さを理解してもらうために、江戸川の産業展に連れて行き、作ったものを、作品として販売してみたりするんです。
目の前で自分が作ったものが売れるところを見てもらって、自分の仕事に対するモチベーションを高めてもらったりしてます。
まあ、なかなか難しいんですが(笑)

御社では、どのような年齢の方が働かれていますか。

髙橋

うちは若い人が多いんです。下は20代前半から、上は80歳に近いですね。
定年制は設けていますが、自分が体が動いて仕事ができるんだったら、残ってくれと言ってます。
そういうわけで、大ベテランの職人さんもいます。
若い人を育ててもくれますし。
若い人が多いことが、お客さまとの関係で良い影響を生んでます。
60代、70代、80代のベテランしかいない会社だと、お客さまにとって、先が見えないですね。
これで、あと何年先も続くのかと。
やはり、若い人が多い会社だと、「若くて活気があって、足を運びたくなる」と、お客さまも言ってくれます。

御社は、なぜ若い人が多いのでしょうか。

髙橋

さまざまな地道な活動が、実を結んだ結果ですね。
まずは、工業高校のインターンシップ。
この辺りの葛西工業高校、墨田工業高校、蔵前工業高校の学生を、毎年インターンシップ生として何人も受け入れています。
地道な活動を続け、若い人に興味をもってもらえるようになりました。
過去にインターンシップを経験した人が、実際に入社をしてくれています。
今月も、墨田工業高校でインターンシップの募集を始めていただいて、うちは人気があるらしいです。
2〜3人までしか、受け入れられないと言ってるんですが。
担当の先生の方から「すでに、6人の募集が来てるんですけど。何人まで受け入れられますか」なんて言われたり(笑)
非常に嬉しいのですが、「どう考えても、2〜3人を受け入れるのが限界なんです」とお断りしています。
へら絞りは興味を持ちやすい分野ですが、入社となると、なかなか上手くいかないの。
少しずつでも、こういった活動を続けていこうと思っています。

担い手不足が課題になる中で、大変参考になるお話です。ところで、苦労した案件や、お断りした案件などのエピソードがあれば、お聞かせください。

高橋

いっぱいありすぎて、どれか一つというと、難しいですね。
例えば、技術的な部分でいうと、まず深さのあるもの。
1枚の板から寝かして曲げて絞っていくので、限界の伸びがあります。
材料によっては、絞る段階で硬くなったり。
溶接で、一部伸ばしたりする加工法もあるんですけど。
深さを必要とするものは、苦労する案件の一つです。
あとは、板厚のめちゃめちゃ薄いもの。
これは本当に苦労させられますね。
紙みたいな0.2mmや0.3mmっていったものは、すぐにシワになってしまうんです。
大学の研究室からは、こういった難しい仕事の依頼が多いですね。

大学や研究機関との連携もされているんですか。

髙橋

結構ありますよ。直接来てくださったりもします。
今まで色んな大学とやりましたね。

実際に製品化に繋がったこともあるんですか。

髙橋

製品というよりは、研究材料がほとんどです。
せっかく何時間、何日もかかって作ったものを、一瞬で潰されたりすることもありますね。
あくまで研究材料なので。

現在、挑戦されていることや、新しい取り組みはありますか。

髙橋

今は若い人を育てるのに必死で、新しいことの挑戦にそれほど力を入れられないのが実情ですね。
私より若い人で、仕事ができる人が2〜3人。
5人、6人に増やして、万全の体制にすることが、他のことに挑戦することより、優先順位が高いです。
弊社は、けっして暇な会社ではないので、今いるお客さまへの対応に追われ、なかなか新しいことに踏み出せずにいますね。
まずは職人づくりが先決です。
職人として、腕を上げてもらい、技術・スピードを向上させることです。
それができた上で、余った時間ができたときに、初めて新しいことへ挑戦できます。
とはいえ、種まきは必要です。
インタスグラムを運用したり、デザイナーの意匠系案件を受けたり。
これまでの受注とは違うところを目指し、少しずつ動き出しています。

手加工の部分以外に、自動機も見せていただきました。

髙橋

ここ10年くらい、職人を育てるためと、効率よく数もの対応するのに、自動機を4台入れました。
教えるときは、結構つきっきりになってしまって。
その間、教えている人の作業が止まってしまうんです。
なので、お客さまの要望に応えつつ、職人育成の時間をもつため、設備投資しました。

板金や金属加工業業界の課題について、どのようにお考えですか。

髙橋

お客さまが求めているのは、一貫生産でゴールに近い物を提供することができる会社だと思っています。
色んなところから部品だけを調達して、組み立てるのはやはり大変なので、一貫でできることが理想です。
例えば、色んな会社がA、B、C、Dという部品を製造して、組み上げたときに不具合が生じたとします。
どこが悪くて、誰が責任を取るのかということが、問題になります。
それを、自分とのころだけでできるようになれば、「どこを修正して、どう組み立てれば、上手くいきますよ」と問題を解決することができます。
なかなか、それを実現するのは難しいんですが。
弊社は、溶接や板金などのへら絞りに付随することは、だいぶできるようになってきています。
ですが、まだまだ自分たちでできないところも多いです。
そこを自分たちでできるようになる必要があると思っています。
例えば、金型専門業者さんに難しい金型を発注しているところを、自分たちで対応できるようにするとか。
あとは、へら絞りは3次元加工なので、3次元レーザー加工機を導入したい気持ちはあります。
都内だと、なかなか場所がなくて、難しいですよね。

営業的な面では、われわれ技術には自信があって、お客さまの作りたいものを何とか形にすることはできます。
しかし、自分たちから、情報発信して、お客さまを掴みにいくのが、苦手です。
今はたくさん引き合いがあり、受注に繋がっています。
これが、今後も続くかどうかはわかりません。
幅広く色々な人の目に止まり、積極的にアピールしたい気持ちがあります。
そういうことは、私たちだけではできないので。
カタラクシーさんにはそういうところの手助けをしてくれると有難いですね。
期待しています。


まとめ
創業70年以来、ヘラ絞り加工に特化。

多様な素材に対応し、難しい仕事に応えつづけてきた。

なによりも、若手職人の育成に力を注ぐ。

職人を育てることが、品質の向上へとつながるゆえ。

髙橋鉸工業株式会社は、世界に誇る製品をつくりつづける。

加工技術

  • 板金加工
  • 金属・切削加工

基本情報

代表者名
高橋 雅泰
担当者名
高橋 雅泰
従業員数
16名
創業年度
1954年
メールアドレス
info@shibori-takahashi.com
電話番号
03-3681-5519

住所

〒132-0035 東京都江戸川区平井2-9-16

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