有限会社佐藤工作所

熟練技で実直にものづくり

有限会社佐藤工作所について
京都府綴喜郡に、ベテラン技に強みを持つ板金加工メーカーがある。

有限会社佐藤工作所だ。

溶接から始まり、製缶から板金へとシフト。

特殊車両の扉枠部品や電飾看板、内装の加工を主にする。

現在にいたるまでの想いや抱えている問題について。

今回は、代表取締役の佐藤太哉(さとう たかや)氏にお話を伺ってきました。
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快く取材を引き受けていただき、ありがとうございます。まずは、御社の事業内容と強みを教えてください。 

佐藤氏

板金加工で、タレパンで加工して曲げて納品することと、曲げたものを溶接して品物にすることも今ではやっています。
分野としては、特殊車両の箱の扉枠部分や電飾の看板を手がけています。
今メインなのは、コインパーキング。
『空』とか『満』とかの表示がありますよね。
その看板の中身の骨組みを作っているんです。

板金の中でも、大物の部類を得意にされているんですか。

佐藤氏

そうですね。精密板金じゃなくて、元々は製缶をやっていたんですよ。
大きな会社の作ってる生産ラインのフレームをやっていて。
ほぼ溶接がメインやったんですよ。
機械の部品を一式で出されるようになったんですよ。
簡単なもんやったら組み立てたりもしてたんやけど。
カバーを曲げるのにブレーキをまず買ったんですよ。
ところが、製缶はどうしても売上に波があるんですよ。
製品を手掛けていこうっていう思いがあって、たまたまある会社さんがうちに訪ねてきてくれはって。
製缶の新工場を作りはって、その中で棚を作れる業者さんを探してはったんですよ。
うちに来はったときに、「実は看板作ってる会社なんよ」っていう話になって。
ちょっとずつは外注さんに出して切ってもらってたりしてたんですよ。
やけど、どうしてももうけにならないから、中古のタレパンを買ってやり始めたのがきっかけなんですよ。

今はもう製缶はされていないんでしょうか。

佐藤氏

ちょこちょことはやっているよ。
前やったらこの工場にいっぱいのもの、公園に架かる橋とか、橋の骨組みを作ってたんやけど。
今はもう1メートル角ぐらいのもんですね。

今は安定受注にある板金に特化されてるのでしょうか。

佐藤氏

毎日出るんでね。
製缶をできる職人が、僕と先代の親父だけなんですよ。
時間の問題もあって積極的には取りにいっていません。
既存のお客さんがいはって、お客さんの仕事が出てきたらやる感じですね。


創業が1993年とのお話で、会社として若いと思いますが、創業の経緯を教えていただけますか。

佐藤氏

親父は職人として働いていて、そこを辞めて独立しました。
溶接機一個で「何か付けることはございませんか」という感じで始めたんですよ。
3年か4年くらい続けて、お得意様からうまいこと仕事が出てくるようになったさかいに、法人に変えたんやけど。
そこから、しばらくは製缶の仕事をやってたんです。
板金メインはここ10年ぐらいかな。

製造業で人手不足が問題になっていますが、後継者など人に対する思いについて教えていただけますか。

佐藤氏

みんな同じぐらいの年代なんですよ。
3、4人しかいいひんから。
僕が年いって仕事できんようなったら終わりかな。
実際の話もうからないんですよね。単価が安いんですわ。

発注メーカーさんとの価格交渉が難しいのでしょうか。

佐藤氏

結局は値段ありきの仕事なんですよ。
売値が決まっているから、その中でどれだけ自分のところに割合があるかっていうことになってくると、僕ら末端になるから、予算的にはほぼ残ってない状態なんですよ。
自分らのやっている仕事の値打ちっていうのが分かってくれないんですよ。
僕らなんかでも、仕事は取ろうと思えばなんぼでも取れるんですよ。
取れるけど、もうかれへんから取らない。
今のこのバランスでやっていけるさかいにいけるかなっていう感じ。
親父もいろんなことはしとったよ。
「自分とこの製品作るんや」言うて、特許までとってやっとったけど。
これはどない待っててもしゃあない。
仕事が切れたときがあったんでね。
バブルがはじけた後ってちょっと不景気になったでしょ。
そんときに仕事がない。
僕らもそんとき働いてたけど、「今日何しようか。自分とこの棚でも作ろうか」って。
そういう時もあったし、「何か作ろう。製品として出そうや」って、しばらくはやってたんやけど、結局売れへんかって。
宣伝力なんやろうね。
それなりにええもんではあったんやけど。
それで「板金の方に身入れてやろうか」っていう話になった。

自社製品を作っても、販売に結びつける宣伝が難しいですか。

佐藤氏

今みたいにインターネットとか、YouTubeもなかったしね。
SNSもそんなにない時代やったから、発信していけへん。
「こんな便利なもんがあるで」っていうことになると、商社に任してみたりせなあかんかったから。
商社に任したら任したで、商社がいちばんもうけを取るでしょ。
自分のところで売るにしてもたかが知れてる。
猫の脱臭機みたいな作ってやって、そんなんでも一時期は結構は売れたけど。

機械はご自身でメンテナンスしながら日々仕事をされているのでしょうか。

佐藤氏

ドキドキしながらやっている。
サラの方はええねん。
3年か4年ぐらい前に買ったやつやから。
20年選手の機械の方は、うまいこと動いてくれてることを祈りながら。


古い型の機械だと修理自体が難しくなりますか。

佐藤氏

直してくれるんやけど、部品がなかったりとかするな。
この業界の機械っていうのは20年、30年使わはる人多いんですよ。
直してはくれるんですけど、他社に勝てへんようになってくるね。
今時の板金屋さんって、すごい機械が付いてたりとか機能が付いてたりとかするでしょ。
機械が鉄板を折るだけの機械にしても、ブレーキ一つにしても、すごい機械や機能が付いてたりとか。
僕も最近驚いたんやけど。
直角に曲げるための機械で、直角になる角度を調整してくれるような機械があって。
センサーが付いているやつがあるんですよ。
鉄板て同じように見えるけど硬さ違うんですよ。
個体差があるんですよ。
同じ鉄の種類でも個体差があって、これぐらいの鉄板ありますよね。
ずらっと並んでいても、買う時期とかによって、鉄板を曲げるときは折れ方が全然違うんですよ。
「前は90度に曲がったのに今回同じように合わしても90度で曲がらへんかったよ」とか、全部手で調整せなあかんねんけど。
今の機械はセンサーが出てて、絶対どんなんでも直角になるようになってるんですよ。

オリジナル製品を作られたり、いろいろな案件を手がけられたと思いますが、中でも困難な案件や、思い入れ深い案件などのエピソードはこざいますか。

佐藤氏

先代の話なんやけど、開発のときにいろんなことやってんねん。
なんやかんや言うて特許まで取れたから。
いろんな面白いことがあったのはあったけどね。
うちの先代が考えるのがすごい好きな人なんですよ。
自分でものを考えて、やっていこうかっていうようなんが好きな人やって。

現在、御社で挑戦していることや新しい取り組みがあれば、お教えください。

佐藤氏

どないしたら今の仕事がうまいこと早い時間でできるか。
そういうことしか考えてない。
どうやったら、うまいこと工場って回っていくのかとか。
答えは出てないけど、ちょっとずつでも。
組み立てるんやったら治具とかいりますよね。
そういうふうなんをやったりはしてるけど。
どこでもそうやとは思うけど、今ようけ単価を上げることができひんさかいに。
採算が取れる取れへんところまでの話になるぐらいまではやっていきたいなとは思うさかいに。


ここ1、2年ぐらいにホームページを製作されたとかお聞きしたんですけど、どのような経緯で作られたんですか。

佐藤氏

ちょっと前の話なんやけど、人間が足らんさかい、募集しようと思ってハローワークに行ったときに「ホームページありますか」って聞かれたんですよ。
「今時の求職者の人は、まずホームページ見はりますよ。そっからが入り口ですよ」って言わはったん。
一応出したんやけど結局何もなかったんです。
今んとこ募集はしてなかったんやけど、「ホームページ作ったら紹介にはなるやろ」って。
お客さんがホームページ作ってはって。
「大体2、3件ぐらいは問い合わせあるで」って言うさかいに、「それぐらいやったら別にええかな」って、作ったんやけど。
結構長いことやってんのよ。
2、3年はやってると思うんやけど。

現在、実感されている板金業界の課題について、お聞かせいただけますか。

佐藤氏

板金業界でのものづくりは、もうほぼ機械なんよ。
機械にどれだけお金かけられるのか。
僕らみたいな結構年食ってる部類の方になってくると、借りるのに勇気が要ったり、簡単にはできないんですよ。
銀行さんに行っても、事業計画書は絵に描いた餅よ。
書いて出して、初めて貸してくれる。
貸してくれるわけやから返さなあかん。
それを考えると費用対効果って、なかなか出てこない。
そこまで労力をかけて、結局、莫大な借金抱えてやっていく。
もうちょっと簡単にできればとは思うんな。
そういうシステムが構築できれば。
問題は設備投資に尽きるね。
金かけて買った機械はすごい便利。
今休憩時間に入ってきたからわかれへんやろうけど、機械に板を載っけるねんな、それ人がやってんねん。
金さえかけたら自動でかけてくれんねん。
今時そんな時代やから。
僕らみたいな感じでやっていたら到底太刀打ちなんかできへん。
どんなところに値打ちを持たしていくのかが一番の課題やわ。


  まとめ

  とりまく環境と時代の変化に応じて、仕事をシフト

  溶接をルーツとし、製缶、板金へ

  付加価値のある仕事を探求し

  有限会社佐藤工作所は、誠実にものづくりを続ける

加工技術

  • 板金加工
  • 金属・切削加工

基本情報

代表者名
佐藤 太哉
担当者名
佐藤 太哉
従業員数
4名
創業年度
1993年
メールアドレス
satoukousakusyo1@kxe.biglobe.ne.jp
電話番号
0774-88-5432

住所

〒610-0255 京都府綴喜郡宇治田原町郷之口小字東谷1-2

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