株式会社 三洋製作所

創業から航空事業を手がける技術力

株式会社 三洋製作所について
栃木県宇都宮市に創業から航空事業をてがける板金加工メーカーがある。

株式会社三洋製作所だ。

設計からユニットまで一貫生産。

60年以上培ったものづくりのノウハウや技術に自信を持って。

航空事業で求められる板金の技術とは何か。

今回は、事業部長の山崎吉規(よしのり)氏と営業担当の大金由季央(ゆきお)氏にお話を伺いました。
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今回はお時間をいただきましてありがとうございます。まず、御社の事業内容や強みをお伺いしてもよろしいでしょうか。

山崎氏

はい。
弊社は元々プレス業からスタートしました。
今年で創業66年になります。
金型を作ってプレスをしていたのですが、ここ20年くらいでプレスの仕事が中国に行くようになりました。
生き残る為に中国に行くことも考えました。
でも、今いる社員のことを考えると、国内で生き残るべきだ、と経営陣は判断しました。
じゃあ、国内で生き残って行く為にはどういう仕事があるか、
それを考えたときに、少量多品種、量変動が大きい、高精度、
これらが国内で求められていることに気がつきまして。
弊社は、元々コピー機のユニットを作っていました。
大体月産1〜2万台の規模だったのですが、
国内に残っていたのは、月産100~200台とかの規模になってしまっていました。
そこで、金型を使わない板金、ソフト板金にターゲットをシフトして、
昔100台程あったプレス機を20台まで減らし、板金の設備に投資しました。
板金業に特化して今にいたります。
元々弊社は、プレス業でスタートしたということもあり、板金をベースにした構造体を作って、そこに部品を組み付けて、ユニットとしてお客様に納品するということを得意にしています。

ユニットというのは塗装や配線もされているということでよろしいでしょうか。

山崎氏

そうですね、やります。
ユニットというのは、板金の技術で部品をどんどんと組み付けていって、最終的に形にする。
部品は樹脂だったりローラーだったり。
弊社で作っていないものは購入しますね。
それらを全て組み付けて、ユニットが全て正常にワークするか、
検査、機能保証までやりますよ。
弊社には、そこまでの技術力がありますから。
ただ、お客様が製品の機能を求めたときに、その機能を保証するまでの知見があるわけではないです。
あくまで板金屋として、板金の構造体としての機能保証。
そこは、弊社の方が知見を持っていますので。
ですから、設計から任せていただければ、結果的に原価を安く抑えることができますよ。

メーカー様で板金に知見のある人が少なくなってきたのでしょうか。

山崎氏

そうですね。
国内に仕事があった時には、そういう知見のある方がたくさんいました。
ただ、近年ではそういう方は少なくなってきまして。
そういうところからお客様をサポートする技術も必要になってきています。
強みというところで言えば、他社ができないような精度のもの、大きいもの、面倒なもの。この辺りを積極的に扱うことで差別化するようにしています。

板金業界は、設備産業になってきていると伺っています。具体的に技術の差別化はどのようにして実現が可能なのでしょうか。

山崎氏

2つありますね。
1つは、機械の選定。
もう1つは機械の使いこなし。
ニッチなところを狙っていくのであれば、ニッチな機械を買わないといけない。
ニッチな機械でそれだけのことができるのか。
そこで機械の選定が重要になります。
会社の肝になってきますので、慎重に選定しています。
弊社は、もともとプレスの会社だったので、金型が作れるんですね。
汎用機械といわれてるタレパンでも、自分たちで金型を作ります。
精度を出すために機械を使いこなせるように努力しています。
ただ、マニュアル的に仕事をするだけでは、海外の企業には勝てませんからね。
機械上、精度が0.1mmまでしかでないものであっても、使いこなしの部分で0.05、 0.01までだせるように、努力しています。
そのために、機械に手を入れることもします。


金型以外の面でも、プレスをやっていたことがいきていることはございますでしょうか。

山崎氏

金属の加工特性を理解しているというのが大きいかもしれませんね。
あとは、お客様がどのくらいの精度を求めているか
ここら辺も頭に入っているので、そこも大きいです。
基本的にプレスも板金も金型を使うかどうかの違いだけです。
ですから、板金にシフトするときもかなりスムーズにできたと思っています。

それから、タレパンやレーザーだけではできないような加工。
そういうものをやってみることが、日常的にあります。
他には、構造提案のところで強みがありますね。
お客様は、自分たちが作りやすいように設計しているんですよ。
ただ、弊社で作りやすくて、かつ安くなる構造体を提案できます。
そこで一番お客様に喜んでもらっていると思いますね。

構造提案のお話がとても興味深いです。具体的なエピソードを教えてもらえませんか。

山崎氏

そうですね、最近ですと、消火栓のケースを作って欲しいという依頼がありました。
すでに設計されていたのですが、もう一度お客様に機能まで全て聞きまして。
「この部品はどういう役割ですか」。
「扉を止める為です」。
「それだったら板金の曲げを1つ追加してここの部品を無くせないですか」。
このような提案を1つ1つしていきます。
設計から仕事をさせていただくことで、想定していた原価よりも10%も20%も安くなったというケースがありました。

ありがとうございます。品質や生産管理について教えていただけますか。

山崎氏

品質に関しては、ISO9001とJISQ9100を持っています。
JISQ9100は航空機事業に特化した規格。
これはトレーサビリティが非常に厳しく、記録を細く残し、保守していく必要があります。航空機は全数検査なので、材料にどのような加工や熱を加えたかを詳細に記録しなければなりません。
さらに、その過程を誰がやって、その人がちゃんと教育を受けているのかどうか。
その人がお客さんから承認を受けたか、などこういう細かなところまで記録します。
規格を統一しないのは、オーバースペックになってしまうと、価格が抑えられないなどの問題を解決するためなんです。
ダブルスタンダードにすることで、お客様の細かなニーズにも答えられるようにしています。
他にはNadcapという結構特殊な認証プログラムも、取得しています。

※編集部注 Nadcap・・・https://jp.p-r-i.org/nadcap/

生産管理に関しても、弊社かなり自信を持っています。
生産管理システムは、全て自社開発をしています。
弊社の生産管理システムは、勤怠管理、原価管理、工数管理、経理、受発注システムまでオールインワン。
弊社にはエンジニアがいますので、お客様に合わせてシステムをカスタマイズすることも可能です。
この生産管理システムは、長年改善を続けて使いやすいものにしてきました。
これが、弊社の技術の結晶でもあるということに最近気がつきました(笑)


航空事業をされている板金加工業者は、あまり多くないように理解しています。

山崎氏

航空機業界は狭くて、障壁が高いんですよ。
一般的な板金と航空機の板金は、全くの別物と考えてもらって構わないです。
板金の考え方や加工の仕方が、全然違うので設備や人のあり方も全然別物になってきます。
例えば、航空機は規定された熱以外はかけてはいけないんですね。
熱を発生させると、材料が変質してしまうので。
変質してしまうと硬度も変わるし、耐久年数も変わってしまう。
ですから、熱をかける作業をするときは認証資格が必要になってくるんです。
ここで、専用の人がやらなければいけない必要がでてくるんですよ。
抜きという作業を1つ取っても、普通の板金であればレーザーカッターで切れるところを、切削で抜く必要があります。
あとは主材も変わりますね。

そうすると、溶接の部分でもだいぶ変わってくるのではないでしょうか。

山崎氏

はい、そこはもう特殊です。
航空機の溶接には、技能検定の資格が必要です。
航空機のお客様に溶接したサンプルを提出して、お客様はそれを分析します。
そこで合否の判定をしていただいて。
合格しないと、仕事として担うことができません。
そういうところから特殊になっています。

精度の点はいかがでしょうか。

山崎氏

航空機は精度だけではなく、加工過程の記録を残しなさいという側面が強い。
従事していい人、使用していい手順などに制約があるので。
ですから、加工する前に認証試験が必要になってくる。
そういうプロセスのところできちんと配慮をしていくことが重要ですね。

ありがとうございます。今、三洋さまが力を入れて取り組んでいることなどございましたら、教えてください。

山崎氏

はい。
やはり新規のお客様を開拓することですね。
新規のお客様の開拓には、10年単位で営業をさせていただいています。
これだけ時間がかかる理由には、発注権限を持っている担当者さまとつながるのに非常に時間がかかるからなんです。
その後で、発注者さまのニーズと自社の強みが本当に一致しているのか。
ここの確認作業にもとても時間がかかります。
発注側の裏に隠れた思惑は、付き合ってみてはじめてわかる、というようなところがあります。
結果、新規のお客さまが、弊社の事業の柱になるまでに10年。
なかなか気の長い話ですよね。
ビジネス的にボリュームがあって、弊社のやりたいことともマッチしていたとしても、3年くらいやってみたら、上手くいかなくなったという仕事もけっこうありますよ(笑)

なるほど。少し大きな話になってしまうのですが、板金業界全体の課題についてお話を伺ってもよろしいでしょうか。

山崎氏

これは、板金業界に限った話ではないかもしれませんが、世代交代の問題は大きいですよね。
若い人が製造業になかなか来てくれない。
一言でいえばおいしくないんですね。
事業を始めるのに多額の投資が必要で、かつ投資に見合った収入をなかなか得られない。
学生にとって製造業が魅力的に見えないんですよ。
小さい会社の技術者をやっと一人前に育てたと思ったら、大手に引き抜かれてしまう。
これもよくある話です。
小さい会社の技術者って分業がされていない分、オールマイティに何でもできる人が多い。
そういう人材は大手から見るととても魅力的に見えるんでしょうね。
そういう問題にどう立ち向かっていったらいいのか。
これも一言でいえば。我々が儲からないといけない。
利益をあげていくしかいないんです。


このような問題で、仕事の単価を上げるのは難しいのでしょうか。例えば、発注者さまにお願いするなどして。

山崎氏

発注者さまには選択肢が沢山あります。
国内がダメだったら、安い海外にお願いすればいい。
それによって、むしろ単価はどんどん下がっていきました。
ただ、ここ数年で海外に発注して利益が出てるのか疑問に思ったお客さんが日本に戻ってきています。
品質や精度の面に問題があるのかもしれません。
いずれにせよ、国内に仕事が戻ってきたことで、加工業者側は仕事を選べるようになってきました。
私が入社してからずっと単価が右肩下がりだったんですが、去年やっと風向きが変わったんですよね。
仕事が選べるようになることで、少しずつ単価が上がってきています。

ものづくりの担い手不足というお話をいただきました。三洋製作所さまが具体的に取り組んでいることはございますか。

山崎氏

2つあります。
1つは、魅力的な会社にしていくことですね。
労働環境を多様化させるように努力しています。
その人ごとにあった働き方を認めるようにしています。
そこを上手く、仕組みに落とし込めるようにしているところです。
もう1つは自動化です。
機械で全てをおこなうということではありません。
前提として、人に付加価値のあることをやってもらう。
その上での自動化。

人間による付加価値というのは具体的にはどういったことなのでしょう。

山崎氏

判断のところですね。
確かに、ロボットは単一作業は早くて正確です。
でも、日本の製造業は、高いレベルでの判断があって成り立っていると考えています。
この品質で本当にいいのか。
お客様に喜んでもらうために何をすべきなのか。
そういう意味での判断ですね。
この判断をロボットが担うのは難しいでしょうから。
逆にいうと、そこが人の持っている強みですし、その強みを磨いていかなけれないけませんね。


まとめ

一般的な板金とは異なる、航空機業界の板金に対応。


それは60年以上培ったものづくりのノウハウや技術を継承してきたから。


一貫生産体制。検査に機能保証まで行なう。


それは国内で勝ち残っていくため。


株式会社三洋製作所は、貪欲に技術を磨き続ける。

加工技術

  • 板金加工
  • 金属・切削加工

基本情報

代表者名
吉村 憲光
担当者名
山崎吉規
従業員数
220名
創業年度
1952年
メールアドレス
y_yamazaki@sanyoh.co.jp
電話番号
028-658-0422

住所

〒321-0151 栃木県宇都宮市西川田町703番地1

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