株式会社野口製作所

俺たちはプロなんだから

株式会社野口製作所について
神奈川県綾瀬市に「精密板金・精密製缶加工」を掲げる板金加工メーカーがある。

株式会社野口製作所だ。

プレス加工から創業し、技術者集団として板金技術を磨き続ける。

他の追随を許さない品質と精度を実現する。

「精密板金・精密製缶加工」とは何か。

今回は、代表取締役の野口裕氏にお話しを伺ってきました。
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快く取材を引き受けていただき、ありがとうございます。まずは、御社の事業内容や強みを教えてください。

野口氏

はい。
弊社はもともと通信機器、電気関係の中量産の品物が多いところからスタートしました。
板金屋さんは、プレスの方からシフトしてきている会社が多いように感じています。
私が生まれる前のことですが、弊社も、元々プレスを主に手がけていました。
当時のプレス機というものは、安全性がきちんと確保されていませんでした。
やはり怪我や事故は防ぎたい。
受注数が少なければ、油断することも減り、事故を防げるのではないか。
会長が様々な思いの中で決断して、弊社も板金の方に移行してきました。
当時、労力は、手や足という時代。
その中で板金の機械化も進んできていました。
弊社もその波にのることができまして。
タレパンを導入し、レーザー加工機は、県内で三軒目という早さで導入しました。
当時のプログラムには相当苦労しましたが(笑)
その自動プログラムも進化してきましたね。

30年くらい前のことでしょうか。
全部自動プログラムで、というわけにはいかなくて。
細かい計算はできないので。
当時、私が入った頃には、手計算を結構していました。
それから、CAD/CAMになって。
20年前くらいには、自動機械が流行りましたね。
その導入も早かったんですよ。
綾瀬の工場地帯の中にあったので、夜も稼働ができる。
いち早く導入したのはよいのですが、一晩中機械を動かすことはできませんでした。

それはなぜですか。

野口氏

数をこなすのに20個。
多くても100個ほどで終わってしまう。
1000個のような大量の数を扱うことはありませんでした。
当時は、まだまだ段取りが悪く、金型の交換とデータを組むのに非常に苦労しました。
せいぜい一緒に加工するのに、3製品くらいしかできない。
当時私が入った時には、一日中材料を手で乗せておろして、一時間おきに金型を交換している状態。
そんな経験をずっとしてきました。


金型交換などの単純作業に面白く取り組む秘訣はありますか。辛い作業と感じる方が多いと聞きます。定着率の低さにもつながってしまいますので、お聞きできれば。

野口氏

誰かに言われて「この作業だけやっていなさい」と、単純作業をやらされているのであれば、面白くないと思います。
弊社では、作業者に、機械の動かし方を全部教えます。
製品の仕組みも全部教えます。
あとは、「勝手に自分でやってね」といいます。
もちろん、最後の責任は自分がとりますが。

自分で考えろと。

野口氏

はい。
弊社には、いろいろな機械と金型があります。
どういう使い方、組み合わせ方をしてもよいので、効率を考えながら、同じ品質、精度を保てるようにやりなさいと言います。
工夫を重ねていれば、同じような作業でも飽きることはありません。
月一回の勉強会で発表してもらうようにしています。
その中で「(作業時間が)30分が20分に短縮された」「効率化が計れた」という声があがります。

タレパンが導入されてから、試作に移っていく流れをお伺いできますか。

野口氏

弊社では、大手通信機器メーカーの仕事を多くてがけてきました。
ちょうどITバブルが終わったころ、受注が目に見えて減ってきました。
今後、なにをするべきかと思いました。
そんな状況下で、関東エリアに、大きな製品を作れる工場がない
じゃあ、他社ができない大きなものに挑戦してみよう。
大きなものをやれば、それに付随する小さいものもついてきますから。
大型板金に狙いを定めて、工場を大きくしようと、ここに引っ越してきたんです。
それが、平成19年のことです。

大型板金とは、どのくらいのものを指すのですか。

野口氏

これといった基準があるわけではないです。
ただ、当社の感覚でいうと、関東エリアでいえば2mを超える製品ができるかどうか。
それが一つの目安ですね。
このあたりでは、2m以下の加工機が多く、3mを超えると、対応できない会社がほとんどです。
弊社では4mの加工までできます。
溶接の加工をして、くっつけていけば、5m程度以上の加工も可能。
そのため、工場内の通路の幅を4mで確保してあります。
通路にも幅がないと、製品を置くことができませんよね。

御社が掲げている「精密板金・精密製缶加工」について、教えていただけますか。

野口氏

これは弊社の造語なんですが(笑
弊社は、プレスから始まって、板金屋としてやってきました。
公差表を出した時に、プレスに比べて、板金の精度って、少しゆるいんですね。
しかし、あえてプレスと同じ公差でやってきました。
うちの公差表は、JISのプレスの公差表と同じにしてあります。
製缶も同じことでして。
通常の製缶の精度で、満足するようなことはありません。
板金の精度で、お客様に届けることを目標にしています。
このような観点から、精密製缶加工と名付けているんですね。

とはいえ、クライアントによって、求める品質や精度は異なると思うのですが。

野口氏

やはり、その部分の難しさはあります。
お客様の方で、「そこまで精度を求めなくていい。品質もある程度でいい。その代わり安くして欲しい」と、言われることもあります。
弊社では、その手のお仕事は、お断りしています。
そのような仕事をやるのは簡単です。
要は手を抜けばいいわけですから。
しかし、一度でも、そういう仕事を許してしまえば、本当に精度が必要な仕事の時に、できなくなってしまいます。
一回手を抜いてしまうと、そこから戻すのはとても大変です。
弊社は、「野口の品質」に自信を持っていますし、これを守っていきたい。
ですから、他社さんでできることは、他社さんにお願いしてくださいと言っています。
この製品だけと思って質の低い仕事をすると、他の製品の質もかならず落ちる。
ですから、営業にはあえて難しい仕事を取ってこいと言っています。

良いものを作り、納めることでよい評価を得る、信頼を得る。そのような理解でよろしいでしょうか。

野口氏

はい。
リーマンショック後は、なんでもやらなければならない状況になりました。
こだわらずに仕事を受けたために、残念ながら、品質が落ちたことがあります。
人の質も落ちた時期がありました。
これは本当に残念でした。

それにこのような仕事は利益が出づらい。
というのも、他に競争相手もいるわけで。
1円でも安く出さなければいけない。
そういうことはやっていっても未来がないと学びました。

お仕事をいただいていた大手メーカーさんの影響も大きいですね。

このあたりにたくさんの工場がありました。

それが、土地代、人件費の安いところへと。

地方に移り、中国、タイなどの海外へと移っていきました。

そういうところと見積もりを合わせても、割に合いません。

同じ土俵で戦っても仕方がないと思います。

我々は、技術屋という誇りがあります。

だから技術の部分を見ていただきたいし、そこで勝負していきたい。

先ほど、営業の話がございましたが、どのようなルートから発注が来るのでしょうか。

野口氏

我々が目指しているのは、図面を書いているところに直接いくこと。
メーカーさんに直接行くように、社員にお願いしています。
間に人が入ってしまうと伝わらないことがありますから。
図面を書いている人に、何を作りたいのか、どんな機能を求めているのか。
その意図を直接聞くことがとても大事です。
実現したいことを徹底的に聞いてきてもらう。
穴のピッチを忠実に守りたいとか。

できるだけ、難しい仕事をとってきて欲しいとお願いしています。
弊社は、技術に自信をもって仕事をしています。
他社さんと同じことはやらない。
難しい仕事を実現する。
現場の人間には、そういうところで喜びを感じて欲しいです。
自分たちにしかこれはできない、って。

難しいことができるようになることで、喜びを感じる。

野口氏

求人の面接でも、ものづくりが好きですか?と聞きます。
作ることに対して、喜びを感じることが必要。
厳しい基準で仕事をしていますから、大変なこともあると思います。
でも、我々の仕事に共感を持てる人と仕事がしたい。
難しい仕事でも、できないと簡単にはいいませんし、いいたくないです。
「俺たちはプロなんだから」と現場にいっています。
そういう中で、現場の人間が頑張って仕事をしてくれている。
難しいものも実現してくれている。
ありがたいことです。

難しかった加工について聞かせてください。

野口氏

4年前から、展示会に出るようにしています。
その1年目に「ピアノの鍵盤を作るために、木を切りたい」と要望がありました。
他社さんであれば断るような依頼ですね。
板金屋の範疇から外れていますから。
しかし、面白いので、やってみたいと思いました。
通例、鋸で作るらしいのですが、レーザーで切ってみました。
燃えずに、きれいに切ることができて、お客さんに喜ばれました。
その経験が活きて、大学とコラボして、楽器の生産開発をするようになりました。

最近では、超微細加工をやりました。
0.5mmの穴をあける話があって、やってみました。
肉眼で見て、できたと思ったんですが、顕微鏡で見たらまだ歪みがあって。
今は高性能な顕微鏡があるので(笑)
それを、真円になるように(笑)

今年の展示会では、深絞りで、鉄のラグビーボールを2個作ってみました。
「野口のところは、面白いことをやっているね」。
そう言われるようになってきました。

ラグビーボールを作るのはどれくらい難しいものなのでしょうか。

野口氏

難しさでいえば、設備さえ整っていれば作ることができるかもしれません。
ただ、今弊社にある設備でどこまでできるのか。
そういう挑戦ですね。
新しい機械を導入して作っても、面白くないですからね。

ありがとうございます。今後の事業展開と課題について聞かせてください。

野口氏

野口ならではの、付加価値の高い仕事を売りたい気持ちがあります。
しかし、実際の数字がなかなか出せていないのが課題です。
我々は、もっと誇りをもっていいのではないかと思います。
それを、お客様にも認めていただく。
繰り返しになりますが、弊社は技術者集団でいたい。
私は、プレス屋、板金屋として、子供の頃から親父の背中を見てきました。
だから、ものづくりから離れられない。
子供時代には、家にあるものを解体して、直したり。
思うようにいくこともあれば、そうではないこともある。
ものづくりをする人間、誰もが通る経験を私もしてきました。

ものづくりに喜びを感じる人と一緒に仕事を続けたいですね。
日本は資源がない国ですから、ものづくりで勝負していかなければいけない。
綾瀬を離れるつもりはありませんし、海外に出るつもりもありません。
この場所で、日本のものづくりを支え、新しいものに携わっていく。
そんな仕事をこれからも続けていきたいですね。


まとめ

「精密板金・精密製缶加工」を掲げるのは、妥協しないプロとしての矜持。


他社にできない仕事に積極的に挑戦。


ものづくりの喜びはそこにあるのだから。


技術者集団として板金技術を磨き続ける。


株式会社野口製作所。

加工技術

  • 板金加工
  • 金属・切削加工

基本情報

代表者名
野口 裕
担当者名
野口 裕
従業員数
28名
創業年度
1964年
メールアドレス
info@noguchi-mfg.jp
電話番号
0467-78-7355 

住所

〒252-1106 神奈川県綾瀬市深谷南5-14-3

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