杉元産業株式会社

協業により社会に貢献

杉元産業株式会社について
神奈川県横浜市に、ファブレスに強みを持つ板金加工メーカーがある。

杉元産業株式会社だ。

ねじ類全般、機械加工、板金・製缶加工を中心に。

100社以上の協力会社と提携して幅広く対応。

ネットワークの開拓と自社商品開発、OEM生産・開発について。

今回は、代表取締役社長の多田昇(ただ のぼる)氏にお話を伺ってきました。
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快く取材を引き受けていただき、ありがとうございます。まずは、御社の事業内容と強みを教えてください。 

多田氏

弊社は、基本的にはファブレスなんです。
もともと、ねじ屋から始まって、いろいろなお客さんから求められ、協力会社を見つけて、製作依頼をして納品することを繰り返してきました。
設立して31年ですね。
お客さんも分散してるし、協力会社もたくさんあります。
そのため、多くのことが対応可能になりました。
ファブレスを生かした動きとネットワークが一番強みでしょうかね。

ねじから始まったとのお話しですが、ねじの卸販売をされていたんですか。

多田氏

ねじは、メーカーが限られていますから。
大手企業はもう既存の業者が大体決まっているし、そこを覆していくっていうのは難しいです。
ある程度の規模だと、数も多くなるし、コストも安くなります。
安く出せるという利点があるので。
力がないと、どうしても高くなっちゃう。
すると、勝負できないので、お客さんの欲しいものをつくる形でやるようになりました。

お客様の課題を聞いていく中で、協力会社、受注側の協力会社、発注側のネットワークができ、ご自分で創業されたのでしょうか。

多田氏

前の関連とは全く別にしたんです。
結局ねじでいくと、どうしてもぶつかるし、勝負にならない。
ねじじゃないところで、製作、板金に入っていきました。

最初は、どのようにネットワークを作られたんですか。

多田氏

いろいろな会社を手あたり次第回りました。
「こんなものを作ってこい」と言われれば、受けて、見積もりをして注文をもらって。
そうすると、協力会社ができますよね。
今度は営業できます。
その繰り返しで、お客さんを増やしながら、協力会社を増やしていきましたね。


受注側のネットワークっていうと、近隣の神奈川県一帯とかが多いですか。

多田氏

横浜、川崎、鶴見などの近辺が多いですね。
もちろん協力会社もそうだし、蒲田とか、東京の大田区とかも関わってきますけど。
仕入れは地方が多いです。
場合によっては、発送することもやっていますね。

大きな企業、メーカー様とお取引されていますが、お客様のご紹介で関係を築かれたのでしょうか。

多田氏

直接飛び込みで行ったところもあります。
大手さんが相手にしてくれない場合は、何度も行って。
始終行っても、うるさがられるだけだから、間をおいて行くとか工夫をしています。
仕事っていうのはタイミングで、お客さんが「これが欲しい」って言ったときは、どこか探すわけですよ。
そのときにタイミングよく、「お前こんなのできねえか」って言われりゃ、「ああ、できますよ」と、つながっちゃうっていうことですね。
1回つながれば、また次はとなるわけです。

代表者様が、昔から中心で営業をされているのでしょうか。

多田氏

最近は、あまり表に出ないんですけどね。
私が大半やってきたことですね。
もちろん営業がやったものもだいぶありますけどね。

今、御社は従業員は何名で、どういった体制をとられているんですか。

多田氏

小さな会社で、今全員で6名いるだけですけどね。
営業兼技術みたいなものもあります。
例えば、今やってるのは、何千℃の高温に対応できる監視カメラ。
溶鉱炉で鉄を溶かすところを監視するカメラですね。
溶鉱炉から出てきた鉄骨、いろいろな材料を検査する傷検査装置。
スクラップとかで使う、その傷を検査するのを今まで肉眼で見ていたんですが、暑いわけですよ。
だから、カメラで見て、映像を見て感知するという装置を作りました。
OEM生産・開発で、お客さん、親会社と協業していることなんですけどね。
他には、束になった材料を横から画像で撮って、画像処理で数値を出す機械をやっていますね。

違う分野に入っていく中で、躊躇されることや課題はありましたか。

多田氏

うちの強みは、お客さんが欲しいものを作ったり、探したりしながら納入するっていうことですから。
どんな仕事がきても、そういう風に対応していくっていうことです。
うちの社員の中に技術を持っている人間がいたので、やってみようということになりましたね。
ある意味では、営業だけど技術営業ができるスタッフも必要なんですよね。

従業員に対する思い、人材に対してのお考えをお聞かせください。

多田氏

私がよく言うんですけど、指示されて、はじめて動く人間じゃ疲れるわけです、使う方はね。
うちは、ほとんど自分で担当して、自分で注文をもらってきて、自分で図面を書いたり。
必要ないときは、そのまま図面をいただいて発注して。
見積もりしたりもするし。
そうしながら仕入れて納入するという。全部1人でやるわけですよ。

自主的な人間でないとやっていけないということですね。

多田氏

それが当たり前だということですね。
その方がやってる人間だって面白みがあるんだろうと私は思うんです。
自分もそうだったからね。
一部分だけ任されて、あとはこっちで任せろとかって、そんなのはつまらないですよね。
どうやって作るのか見ながら、コストまで見て。
子どもを育てるんじゃないけど、やっぱり育てて、納めて、そうすると製品に対して愛情がわくじゃないですか。
そういう人間になってほしい。
最初は大変だよねと言われるけど、覚えてくると面白いだろうと私は思っています。
お金を得るためにやる仕事だけじゃつまらないじゃない。
人生、仕事がほとんどなんだから。
そこに生きがいを求めていかないと。
面白みがあると当然進んでいくし、そこにまたお金がついてくるということですからね。

今までで困難だった案件や、苦労されたエピソードはございますか。

多田氏

いろいろありますよね。
すぐ思い出すのは、やっぱり不良問題ですね。
製品っていうのは、不良品がどうしてもついてくるじゃないですか。
今は比較的機械もよくなっているし、精度もよくなっているから、そんなに悪いものはないですけど。
昔は、安かろう悪かろうで。仕入れて納めて不良だと怒られるし、場合によっては、弁償しろなんて言われて。
大手さんだと、原因と対処を書いて提出しろと言われますよね。
提出するんだけど、簡単に機械を入れて新しいもの、いいものを作るってわけにはいかないし、同じことが何度もあったりしてね。
ところが、うちの場合は、それで切られたことはほとんどないんですよ。
それはそれとして、丁寧に対応する。
そうすると、お客さんも「苦労させた」と、また別のものを出してくれたりということもあるし。
製品もよくなってくれば、またつながります。昔そうやって不良したもので、今も続いているとかいうこともありますよね。
不良問題は悪いんだけど、やっぱりピンチがチャンスでね。
やり方によっては相手に対するアピールになるんですよ。
やはり、そういう問題が起きたときはどう対処するかっていうことが重要なんですね。

御社でオリジナル商品の開発をされている中で、苦心されたことをお聞かせください。

多田氏

ものを開発して作ったから、利益につながってくるかというと、なかなか難しいですね。
いいものをつくったって、売れなきゃしょうがないんですよね。
特許取ったって、特許料を払わなくちゃいけない。
だけど、開発したからには特許も取っていかないと、相手に取られちゃう。
だから商品が本当に、本物になるには時間もかかるでしょうし。
タイミングの問題ね。
そんなに苦労しないで、ポンと成功したりということもあるわけですよ。
努力もしなくちゃいけませんが、タイミングが重要です。

市場投入のタイミングと販路開拓に苦労されたということでしょうか。

多田氏

販路開拓は、作る前、開発する前に市場調査するっていうことでしょうね。
作ったら売れるんだろうかと、お客さんが必要とするのだろうかということが一番重要じゃないでしょうかね。
これまでにないから、みんな買ってくれるんじゃないかって思い込みでやっちゃう。
そこまで苦労して作って、「ああ、できた」って喜んでいたけど、売れませんでは何もならない。
今までの苦労というか、また、お金がもったいないですね。苦労は無駄とは言わないけど。
大手さんは、市場調査だって人もいっぱいいるし、お金があるからそういったことが全部できるわけですよ。
だけど、われわれ小さな業者は、お金がない、人もいない、だから頭で考えてやらないといけない。
なかなか難しいんじゃないでしょうか。

オリジナル商品の販売ルートはどのように開拓し、委託されてるんですか。

多田氏

アスファルト用ねじアンカーは、市場にないものですから、おかげさまでホームページからインターネットで問い合わせがきて、買ってくれます。
よく出ていますね。


補助金を受けられていますが、動機やきっかけについて、教えてください。

多田氏

アンカーに詳しい者がいたものですから。
アンカーボルトは、穴を開けて、突っ込んで広げて取れなくする。
ただ、ドリルで穴を開けると、ストレートの穴しかもちろん開かないわけですね。
すると、先端部だけくっついてるだけなんですよ。
上の方は、隙間が空いてる。一部でしか支えてないわけですよ。
例えば、土管の中に人が入って、途中で足で支えてるのと一緒。
線で支えてるわけですよ。
振動で外れる、取れる可能性があるんです。
昔から欠点だと言われていて。
だけど、なかなかいいものができない。
穴を開けるのに大変苦労しているんですよね。
アンカーも結構高くなるので、安く簡単にできないかとツールを考えて補助金をもらって、ある程度までいったんですけどね。
メーカーも研究はしてるんですけど、どこも、うまくいっていないっていうことじゃないですかね。
手間暇かけて、穴を丁寧に開けて、突っ込んで、そういうものはあることはある。
安くて簡単にっていうところがないですね。
会社を伸ばしていくためには、自社ブランドを作るということですからね。
いいものができれば、一つの社会貢献になるんじゃないですか。

御社での新しい取り組みや挑戦についてお教えください。

多田氏

例えば、マイナスイオン発生機の販売ですね。
業種は別にして、健康的ということで。
私の親戚の会社が持っているブランドなんですね。
うちは、公共施設や事業所に販売しています。
たばこの煙なんか、一瞬にして消しちゃう、匂いを取る装置です。
ほこりも分解して、取っちゃうし、インフルエンザの予防にもなる。
院内感染予防に効果的なんですよ。
マイナスイオンは、滝に発生して体にいい。
自律神経も安定する。環境を汚さない。
ハウス栽培の農作物の生育がよくなるんですよ。
細菌も除去してくれるから農薬も少なくて済む。
このように、多方面に広げて、いろいろやっているのが特徴なんですけどね。事業部別にして、立ち上げようとして頑張っています。


多田様が実感されている金属加工業界の課題はございますか。

多田氏

今後どうなるのかがわからないですね。
一時、みんな海外に行っちゃったわけですね。
空洞化が起きて、製造業がだいぶ淘汰されて。
加工業者も減っちゃったからね、そういう意味で、忙しくなってきた。
中国とか東南アジアが発展していますね。
競争していかなきゃいけない中で、日本は勝ち抜いていけるのか。
中国が世界の工場となって、今度はベトナムだって。
国内の製造業が持続していけるのか。
われわれ、そう簡単に海外っていうわけにいかないですからね。

今までお客様だったところが発注先を変えて、海外とか、海外に協力会社があるところに変わっていったりされてるのでしょうか。

多田氏

あると思いますよ。
幸いにして、そんなに影響はないんですけど。
うちのいいところは、大量のものではなく、あまり人がやらない隙間的なところでやっているから。
要するに、数量1個、2個のものを作ったりですから、海外に持っていきようがないので。
そういう意味では、影響がないです。
お客さんが1カ所じゃなくて、分散しているので、何件か含めてありますね。例えば、そこが1回なくなったにしても、また作ればいい話です。
小回り利くというか、対応力がありますね。

多くの協力会社様と提携されている中で、社内工程では、どの部分を担当されているのでしょうか。

多田氏

設備があっても、主力ではやっていないんですよ。
主力は、もうほとんど協力会社ということですね。

補助金は、書類の準備やデータの用意が大変かと思いますが、最初から自社で申請されたのでしょうか。

多田氏

自社でやったんです。
社員の中で前職でそういった経験があった者がいたので。最初は大変だけど、慣れるとそんなに難しいものでもない。

町工場にとって、補助金のニーズは高いと感じられますか。

多田氏

町工場は、いくら小さくても、自分のブランドを作るっていう意欲は持っていますんでね。
だけど、お金がないということもあるんじゃないでしょうかね。
例えば、下町ロケットっていうのありますね。
その手の可能性もあるから、補助金的なものもいいんじゃないでしょうか。


  まとめ

  地道な営業を重ね、受発注のネットワークを形成。


  100社以上の協力会社と提携し、様々な金属加工を手がける。


  市場のニーズに応えて、OEM開発、生産に転換。


  杉元産業株式会社は、時代の変化を見極める。

加工技術

  • 板金加工
  • 金属・切削加工

基本情報

代表者名
多田 昇
担当者名
多田 昇
従業員数
6名
創業年度
1988年
電話番号
045-929-5911 

住所

〒224-0053 神奈川県横浜市都筑区池辺町4706

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