お時間を割いていただきありがとうございます。御社の強みや得意としている加工を教えてください。
丹羽氏
大きく分けて3つあります。
①広幅というか大板のタレパン加工。
②長尺の折り曲げ。これは細長いものに限りますね。さっきのとちょっと矛盾するんですが。母材が大きいものだとキャパ的に仲間にお願いしちゃいます。
クレーンで吊れば、曲げられるんですが、お客様にとってもコストがかかってしまうし時間がかかってしまうので。
③最後にパンチングメタルまではいかないけど、穴が沢山空いているプレートですね。
これは別にプレートじゃなくてもいいですよ。折り曲げ加工が入っていたりしても。これらの複合のものもよくしますね。穴がたくさんあって、細長いものを曲げたりとか。得意というよりも、お客様に喜んでいただいているものですね。
どうして喜んでもらえるのでしょうか。
丹羽氏
まず、やってるところが少ないというところでしょうか。大板のタレパン加工をやる業者って減ってきているんですよ。元々数が少ないことに加え、レーザーの普及が進んできたためです。
折り曲げも同じような理由です。
3mまで曲げられるところは多いんですけど、3mを超えてくると極端に数が少なくなります。折り曲げだけ、打ち抜きだけを引き受ける業者は少ない。
要は、ニッチなところに焦点を絞っているからでしょうね。
逆説的ですが、レーザーが普及することで仕事があるという理解でよろしいでしょうか。
丹羽氏
そうですね。
例えば、これまでタレパンでやっていた業者さんがレーザーに換えてしまった。それで、うちに依頼してきたというケースがあります。どうしてもレーザーに向かないものっていうのがあるんですね。レーザーで切断すると、両面がピン角になってしまう。そのピン角がダメなもの。
あるいは、表と裏の両面を面取りしなければならない。そういうものは、打ち抜きが向いているんですよ。ただ最近は、ファイバーレーザーとタレパンの複合機も出てきているので、それには脅威を感じています。ウチが得意だったというか、ウチに出してもらっていた仕事がそういう機械によってやりやすくなっていますので。

穴の多い加工を行うときのポイントはなんですか?
丹羽氏
それはもう開孔率ですね。
パンチング加工によって打ち抜いた開孔部分の占める割合のことです。
穴の部分が多いとひずみがでやすくなります。
板厚や素材によってもひずみの出方は変わってきます。抜くときの順番や抜き方が重要で、金型も上手く使い分けながらひずみが極力でないように調整します。
「タレパン工房」と銘を打ってらっしゃいます。工場ではなくて工房とされているのはなぜなのでしょうか。
丹羽氏
声をかけてもらいやすいことを目指しているからです。
工場って声がかけにくいところがありませんか。
小さい所は職人気質で気がむずかしそうじゃないですか。
逆に大きいところは工場というか、企業に近い。
訪ねたら、受付の人がいて、事務の人がいて。
工場の中でも営業の人とか生産技術の人とかで分かれている。
確かに、小さい工場さんよりも、柔和な方が多いかもしれません。
ただ、今度は逆に入るのに緊張するというか、窓口がいっぱいありすぎて迷うというか。
小規模でかつパッと声をかけることができる。
そういう加工業者を目指して、工房と名乗っています。
確かにコミュニケーションが取りやすい印象を受けます。
丹羽氏
ありがとうございます。
同じようなことを仰ってくださる方が何人かいらっしゃいました。
自分ではなかなか気づけないことだったので嬉しいです。
それならそこを売りにしてみようと思って、「工房」(笑)
私の先代も喋るのが好きというか、喜んでお客さんを迎えるタイプの人だったんです。ずーっと喋ってるんで、大丈夫かなって見ていましたけど。
だから、色んな人が立ち寄りやすかったんだと思います。で、いつのまにか私もそれを継承しちゃった(笑)同世代の製造業の方や個人のお客さんからも「話しやすい」と仰っていただいています。それって実はとても大事なことかもしれないと思っています。
結局、全部お客さんから教えてもらっているんですよ。
何をすると喜んでもらえるのかとか、大手がやらないことは何かとか。
単加工とか部分加工だけでやっていけることも。
後はお客さんというか仲間に助けてもらったり。

仲間に助けてもらうというのは具体的にどういう感じなのでしょうか。
丹羽氏
自社だけででできない仕事を依頼されることもあります。
そういう時は仲間に頼んだりします。
設備的なところでウチではできなくても、仲間でできそうなところっていうのはあるんですよ。
例えばレーザー加工とか。
そういう場合は、お客さんに提案します。
「ウチではできないけど、仲間でできそうなところはありますよ」って。
それでも「いいよ」って言われたら、時間をもらって仲間に聞いてみます。
そういう風に助けてもらっていますね。
外注の際に、責任の所在などでトラブルが起きることがあると聞いたことがあります。その辺りはどのように対応されているのでしょうか。
丹羽氏
トラブルが起きることはまずないですね。仲間とは完全に信頼関係できていますから。
先代から教えてもらったことの一つに「後工程はお客さんだと思って作れ」っていうものがあります。
自分が後工程をやるとしても、お客さんに渡さなければいけないものとして作ります。
そうするとよくわかるんです。
適当にやったものは、後工程で大変な思いをしなければいけないこととか。
きちんとやったものは、もう断然楽です。だから、手を抜かない。
適当っていっても使用上問題ない範囲で流れていくので、それでいいんだよっていう人もいます。
でも、作ってる方としてはスッキリしないんですよね。
もうちょっといいもの作れなかったんかな、って残ってしまうんです。
仲間はみんなそういう人たちばかりで。だから、信頼していますよ。
今までクレームやトラブルが起きたことはありません。
でも、コストはあがりますよね。
丹羽氏
やっぱり信頼の部分が大事ですから。
ウチは部分工程が多いんですけど、よくお客さんから「組みやすかった」って言われるんです。
大きな企業では、発注者と現場で組立作業をする人が違うところが多いです。
そうすると、現場の作業者の方から「前に作ったところに発注して欲しい」って名指ししてもらえることもあります。
後工程がやりやすいように加工しておくと、向こうではトータルでコストが下がりますからね。
で、またリピートの発注をもらえる。
だから、コストがあがるっていう感覚はないです。
信頼の部分で仕事して、信頼の部分で仕事が回ってくる。
そういう循環ですね。
なるほど、勉強になります。コミニュケーションというところでYouTubeとか、Webサイトの部分でもフランクな印象受けたのですが、始めたきっかけは何だったのでしょうか。
丹羽氏
ありがとうございます。
それもお客さんが教えてくれました。
Webの勉強会に出て学んだことも沢山あります。
例えば、電話したらどんな人が出るのか。
「~できます」って書いてあるけど、本当にできるのか。
機械のスペック載せておけばわかるだろう、とずっと思っていたんですけど、実は違くて。
ウチと同じ機械があっても、ウチに外注したり、お客さんの話を聞いてみるとできる加工とできない加工の差がある。
スペックだけじゃわからない部分があって、それをどうしたらお客さんにわかってもらえるか。
結局、動画がいいというところに落ち着いてそうなりました。
動画はハードルが高いとずっと思っていたんですけど、スマホでできるよって友人に教えてもらって。やり始めたら色々面白いことが出てきて。
ネットで対応すると遠方のお客さんから連絡が来たりします。
それがいきなり「動画に出ている人ですか?」ってかかってくるんですよ(笑)
すぐフレンドリーに打ち合わせができて、気持ちよく仕事ができます。
今後の取り組みや、やりたいと思っていることを教えてください。
丹羽氏
極論をいうと人を信じるしかないのか、って思っています。
人でものが決まっていく部分ってあって、そこを狙いたいしそこで仕事をしたい。
やりたいことは結構はっきりとあります。
動画満載のホームページを作りたいんですよ。
動画だけ見れば、工場に来てもらわなくても大丈夫。Q&Aもどんどん充実させて。
お客さんから問い合わせや質問は、動画を見てもらえれば対応できるようにする。
対応できないものがあれば、新しく動画を作る。
お客さんと究極まで距離を近づけてみたいです。
そういう工場というか工房を作りたいんですよ。
最後に、板金加工業界全体が抱えている問題を教えてください。
丹羽氏
業界全体で言えば、人手不足が問題なのは間違いがないでしょうね。
できる人というか、引っ張ってくれるような熟練の人がいなくなっている。
先代の世代と自分達の世代にはいたとしても、間の世代に人がいないんですよ。
中小企業だと毎年人をいれられるわけではなくて。
だから、65~75歳の世代、40〜55歳世代しかいないという感じがあります、20年くらい間が空いてしまっている。
そこをどうするか。
もちろん機械もよくなってきているし、AIで埋めようという話もありますよね。
大量生産でやるところは、ロボットを入れればいいかもしれません。
でも、多品種少量品で勝負しているところは難しいと思います。人がやるものと機械がやるものが分かれるのか分かれないのか。
分かれるとしたら事業継承をどうするのか。
単純な縦のつながりだけでは難しいと思います。
まとめ
単加工や部分加工を積極的に引き受ける株式会社丹羽シートメタル。
信頼と気さくさを武器に動画で営業。
どこよりも声をかけやすい板金加工業者を目指して。
これが「タレパン工房」。