株式会社中野屋ステンレス

先ず工場へ見学に来てください

株式会社中野屋ステンレスについて
長野県上伊那郡に大物板金加工を得意とする板金加工メーカーがある。

株式会社中野屋ステンレスだ。

ブリキ屋さんとして明治35年に創業。

それ以来、地域に密着しながらも大物のクーラントろ過装置を手がける。

中野屋ステンレスはどうして大物板金加工を得意とするようになったのか。

今回は、取締役の小坂賢一(おさかけんいち)氏にお話を伺ってきました。
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快く取材を引き受けていただき、ありがとうございます。まずは、御社の事業内容や強みを教えてください。

小坂氏

はい。
弊社は、基本的に大物板金加工を得意としています。
曲げ加工機でいえば、4メートルの機械をもっています。
抜き加工機もあらゆる仕様のものを揃えています。
定盤も7メートルとかもできるサイズのものもっています。
製品1台がトレーラーに載るかどうかくらいの大物もあります。
もちろんそのような大物に対応するために、塗装でいえば10メートル以上のものに対応できるような塗装屋さんともおつきあいしています。

これが、弊社の強みの1つ目ですね。
もう一つは、このような大物ってリピートではなくて、設計が毎回変わるんですね。
どういうことかというと、弊社ではクーラントろ過装置というものを手がけています。
これは、切削機械で車のエンジンなどを削る際に流すクーラント液というものがございます。
要は、切りくずの混ざった潤滑液を過する装置なんですが。
これの設計が毎回違うんですね。
このような設計の変化に、きちんと対応できる。
そのような対応力にも強みを持っています。
このクーラントろ過装置が、全体の4割くらいを占めているのですが、後は何でも手がけます。
例えば、ここら辺の地域でおじいさんがこんなものを作りたいんだけど、っていらっしゃったら、手がけさせていただきます。
個人のお客さまですね。

個人のお客さまの依頼も手がけていらっしゃる。

小坂氏

本当に個人のお客さまです。
これは、弊社の沿革にもかかわってくるのですが。
弊社は、もともと創業がブリキ屋でして。明治35年に創業したのですが。
当時は、配給のミルクが入っているブリキの缶などを扱っていました。
だんだんブリキから、家庭にある流し台を手がけるようになりました。
時代の流れとともに、それらをブリキではなくステンレスで作るようになっていきました。
そのような流れで板金屋になったので、昔の人は中野屋ステンレスと聞くと、流し台を作っている会社だと思っているようです(笑)
それで、個人のお客さまが家庭の流しを変えたいとか、作りたいとか言ってこられる。
それは、先ほど述べたルーツがあるからなんですね。

そこからクーラントろ過装置のような大物を手がけるようになったのはなぜなのでしょうか。

小坂氏

20年前くらいからだと思います。
今の社長が4代目になった時のことでして。
先ほど申し上げた流し台などをメーカーさんも手がけるようになってきまして。
その中で、他社さまではできないクーラントろ過装置を手がけるようになりました。
経緯としては、確か材料屋さんからお話をいただいたかと思います。
大物を手がけることができませんかって。
もともと大物を手がけてはなかったのですが、たまたま敷地もあって、天井クレーンもありまして。
じゃあ、挑戦してみようということに。

その頃は、電気配管もやっていませんでしたし、もちろん塗装もやっていませんでした。
ですから、このお仕事を受けてからどうやって実現させてようかって、一つ一つノウハウを積み重ねながらやっていったそうです。
こういうチャレンジができたのは、やはり人数が少なかったことが大きかったと思います。
小回りがきいたんですね。
自分たちで絵を描いて、プログラムを作って、抜いて、その形で曲げて。
それから、溶接して、塗装して、組立まで。


先ほど、敷地があったからというお話もありましたが、技術の面ではどうだったのでしょうか。

小坂氏

溶接ですね。
こういう大きなものは、どうしても溶接してつないでいかないといけない。
で、つなぐと当然ひずみがでたり、寸法がでなかったり、対角がずれたり。
どうしたら解決できるのか。
その辺りは、試行錯誤しながら覚えていきました。
技術的なことを言えば、本当に色々なノウハウが入っています。
弊社の社長は、中野屋ステンレスに戻ってくるまでに、建築関係で3年ほど修行していたんですね。
そこで、意匠もの、特に寸法が厳しいもの。
それを溶接で難しい形状を作ることをかなりやってきていました。
そういう中で、技術を蓄えていましたので。
こっちをこういう風に削ると、ここにひずみがでてしまうとか。
逆に、こういう風にすれば、ひずみが取れるとか。
そういう技術を持ち帰ってきていたんですね。
いわゆる職人タイプで、現場が好きな人間なんですね。
今でも、現場で働いていないとストレスが溜まってしまうようで(笑)

社長さまが持ち帰ってこられた技術が大きかったんですね。

小坂氏

そうです。
弊社の、平均年齢って大体31歳くらいなのですが。
そういう若い人たちもうちの社長にこれはこうしないとだめだって指導を受けて。
その方たちがさらに若い20代の社員たちに教えてっていう好循環がありまして。
やはり、社長が持ち帰ってきた技術が今に生きているんですね。



ありがとうございます。少し話が戻ってしまうのですが、板金屋さんの中で電気系ができるというのは、珍しいと思うのですが、その辺りについてお伺いさせてください。

小坂氏

これも挑戦していく中で、お客さまに教わってきたということがあります。
もちろん、難しいものは地元の電気屋さんに工場まで来ていただいて、やっていただいています。
基本的なものについては、自社でできるのですが、どうしても難しい部分もありまして。
電気でトラブルになった時のことを考えると、どうしてもプロに頼みたくなります。
それに、何しろものがリピートではないので、その都度そのつど配線図を見ながら。
やらなければいけない。
そうなると、プロにやってもらった方が早いし、確かですから。
そういった部分で、常時朝の7時から夕方の5時までずっと業者さんにきてやってもらっています。

なるほど。配電や塗装は提携企業さまにお願いしながら。

小坂氏

そうですね。
ただ、ウレタン塗装に関しては、弊社で行ってます。
うちのメインであるクーラントろ過装置に関しては、全てこの工場でうちの社員ができるような体制になっています。
どうしても忙しいときは、塗装業者さんに来ていただいてって感じですけども。
うちの社員でも塗装は出来ます。

塗装業者さんの数が減ってきているという印象はあります。
その分、仕事が集中しているなっていう印象もありまして。
ただ塗装業者さんにも色々あるようです。
それぞれにやはりノウハウがあると思うんですよ。
例えば、大きいものだったら、この部屋いっぱいくらいのものを全て均一にしなきゃいけないわけで。
それに対して、小さいものだったら、どんなロット数でも色を揃えなきゃいけない。
小物をやってらっしゃるところは、自動化などもしたりされてるでしょうね。
大きいものは本当に腕がないと、ここ薄いよねとかお客様に言われたりするようです。
そこら辺は、板金業者さまと一緒で、それぞれ特徴がございますね。


先ほど平均年齢のお話がありました。御社に入社される方はどのような形でいらっしゃるのかお伺いさせてください。

小坂氏

はい。
弊社に新卒で入ってくる方というのはほとんどおりませんね。
みんな中途採用です。
弊社の近くに、南信工科短大というものが3年くらい前にできました。
そこでは、確か半年コースと2年コースのがありまして。
そこの半年コースをでられた方が、うちに来てくださっています。
ただ、年齢は本当にバラバラでして。
板金を経験してきた人というのも、ほぼいませんね。
ものづくりに携わっていた人もいれば、町工場で働いていたという方もいます。
大工をやっていた方もいれば、建設会社に勤めていらっしゃった方もいます。
基本的には、入社されてゼロから勉強するような形ですね。
弊社の仕事が合うって感じてくれる方は、大体同じことの繰り返しをしたくないという方が多いですね。
工場のラインで1つの作業を任せられて、一日中ずっとそれをやりなさいっていうのは合わないって方。
毎日違うものがやりたいと。
ちょっと難しいこととかも含めてチャレンジしたいようなタイプの方。
そういう人たちに来てもらって本当に楽しんでやってもらっています。

ホームページを見て来られる方などもいらっしゃるのでしょうか。

小坂氏

いや、いないですね。
地元で、ハローワークを見て来てくださった方が多いです。
弊社も、ホームページできちんと仕事内容を打ち出せているかどうかは自信がないです。
ただ、弊社に来ていただく方には、必ず工場を見学していただくようにしています。
ただ、面接をしてもどんな仕事内容なのか、職場なのかピンときませんから。
そこで、工場を見ていただく。
そうすると、目の色変わるんですよね、本当に。
これがやりたかったんです、って言ってくれた方もいました。
ですから、先ず工場を見ていただくようにしています。
応募していただく前に、先ず見学へ来てみてくださいって。
見学してから、応募するかどうかを考えてくださいって言う風にしてます。


ありがとうございます。今後の事業展開と御社の課題についてお伺いさせてください。

小坂氏

弊社は、今30人ちょっとでやってるんですけど、なるべく人数を30人から40人くらいで続けたいと考えています。
というのも、それ以上の人数になってしまうと。
小回りが利かなくなってしまうんですね。
これが、50人、60人となっていくと今やっているような仕事の仕方では、会社が回らなくなってしまうと思います。

弊社としては、一品もの、単品もの。
大きいけど、一個しか注文が来ないようなものをしっかりと手をかけて作っていきたい。
手をかけて作っているところで、弊社は価値を売っていますので。
今後の展開と課題感で言うと、如何にこの人数で生産性をあげていくか。
今よりも製品を作っていけるようになるか。
量産にはならないように、規模も広げすぎないように。
今いただいているお話を、どれだけきちんと対応できるかというところですかね。

生産性のお話について、もう少しお話を伺いさせてください。どのようにすれば、生産性があがるのでしょうか。

小坂氏

なかなか難しいですね(笑)例えば、溶接。弊社は、溶接をする人間が6人います。その中でも、ある製品に関しては、どうしてもこの人じゃないとできない、というものがあります。溶接ってどうしても、数値にできなかったり、感覚的なところがあるんですね。よく言えば、人間の技能が残っている部分でして。ですから、やってみせてもすぐわからないし、一緒にやっても、本人が感覚をつかむまでは、どうしたって身につかない。溶接には、どうしてもそういう見えない部分がありまして。人数としては投入できる体制には、なっているんだけど、人数を入れたからといってこなせるわけではない。そういうところがどうしてもボトルネックになってしまう。これは、溶接に限らず展開の部分でもあります。逆に、抜きだとか機械化できているところは、誰が入ってもできるようなところがあります。プログラムと展開。それから溶接。この辺りは、合格ラインというものが明確ではないでの、難しいところです。


ありがとうございます。最後に、大きな話になってしまうのですが、板金業界全体の課題について、お伺いさせてください。

小坂氏

この質問を事前にいただいていたので、考えていたのですが、なかなか難しいですね。
ただ、弊社のお客さまのことを考えると、調達先の板金業者さまの選択肢が少ないです。
例えば、板金業者30社知っていますって言っても、本当にこの製品がどこの会社なら出来るかっていうのは、やはり図面を送ってみないと分かりません。
しかも、その製品を加工できる業者の手が空いているかどうか。
そういうのは、もう図面も含めて直接メールしてみなければわかりませんよね。
ホームページを見たら、わかるというものではありませんし。
お客さまから見て、そういう選択肢の少なさ。
そこが一つ目の課題でしょうか。

もう一つは、それぞれの会社さまの強みとか得意にする加工っていうものがあります。
しかしながら、それもホームページ上でどんなに写真や文章にしても伝わりませんよね。
保有している設備を載せても難しいところがあります。
強み、得意とする加工が異なることで、価格も会社ごとに異なってきます。
そこら辺の価格設定に関しては、なかなか説明しても伝わらないところがあります。
弊社でも、実際に会ってお話を聞いて後で、図面を見せてもらったら、全然弊社で受けるような案件でなかったことがあります。
ロットも同じです。
そういうところを出来るだけ透明化、標準化していくことが、この業界の持っている課題だと思っています。


まとめ

社名に残ったステンレスは、地域密着で事業を行ってきた証。


現代表の修行の成果を今に引き継ぎ。


大物板金を社内で一貫加工。


中野屋ステンレスの魅力は工場にある。


先ず工場へ見学に来てみてください。

加工技術

  • 板金加工
  • 金属・切削加工

基本情報

代表者名
小坂 博志
担当者名
小坂 賢一
従業員数
30名
創業年度
1902年
メールアドレス
kenichi@nakanoyasus.co.jp
電話番号
0265-72-4413

住所

〒399-4501 長野県伊那市西箕輪2701-5

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