今回はお時間を割いていただいてありがとうございます。まず、はじめに御社の強みや得意な加工分野についてお伺いさせてください。
三輪氏
はい。
一般的な精密板金をやっていますが、その中でも比較的小物・薄物に特化できるような設備を揃えています。
大きいものですと、どうしても人手もかかりますし、設備勝負になってしまうところがあります。
それだと収益的に難しい。
それで、弊社は、小物・薄物、それに溶接をからめてやっています。
他社さんを見ても、絞りや成形まではできても溶接となると、苦手としているところが少なくありません。
設備の追及には限界があるので、足りないところは溶接で補って形にできるように事業を進めています。
形状が複雑になると、それを曲げ、プレスだとかで形を作っていくのはとてもコストがかかってしまいます。
もし、溶接することで形ができるのであれば、そちらの方が簡単です。
コストダウンも図れます。
それで機能が果たせるなら、問題はないわけですから。
ただ、もちろん量産ものは別になりますけどもね。
一般板金に関しても溶接は強みにしています。溶接ものだけの依頼も多く、お客様から高い評価を頂いています。
今現在のお仕事について教えてください。どこから、または、どのような案件が多いのでしょうか。
三輪氏
今は半導体の製造装置などの関連ものが多いです。
通常は省力化機械部品、生産ライン部品等が多いと思います。
...思うというのは、最終的にどのようなものに使われているのか、あまり詳しくはわからないためです。
後は、工作機械のカバーや部品類も継続していただいています。
半導体関連の品質や精度が厳しいと伺っていますが。
三輪氏
機械で出せる精度に関しては、問題はないです。
ただ、弊社の場合、溶接がからみますから。
そこの精度が少し難しいですね。
溶接による反りや歪みを予想してプログラムの段階から調整しなければないので。
新規の案件が多いと伺っています。新規の難しさについて教えてください。
三輪氏
弊社の場合、実際に7割くらいが新規の案件です。
とはいえ、新規だから全く読めないというわけではないです。
経験上、これくらいだろうと見積金額の概算をだすことはできます。
もちろん危険がないわけではないです。
だから常に利益があるとは限らない。
今回は勉強だな、というケースはあります。
難しい加工のものでも、初期費用がかかり過ぎるものはあまりお受けしていませんが、やり方次第でできるものに関しては、トライするようにしています。
技術的に難しいものでもできるだけチャレンジしたいという前向きな姿勢は基本的な考えとしてありますね。
アマダの優秀板金技能製品フェアでも多数受賞されています。異種金属の溶接やどのように作成したのか想像できない一風変わった作品でした。どのようなきっかけで製作をされたのでしょうか?
三輪氏
異種金属の溶接を行なった「かみふうせん」は、元々展示会で一般の方に興味を持ってもらえる作品を作ろうと思い製作を始めました。
製品の形を作った後、仕上げのために表面処理をしてもらうのですが、非鉄金属ということもあって表面処理を行う前に変質しやすく、何度か作りなおしを行いました(笑)
業界の方に評判がよかったのは、「クォーター・メビウス・ループ」ですね。
どうやって作ったのかよく質問を受けます。
4枚の板を溶接で繋ぎあわせています。
完成品の形から、どのような板を切って曲げればいいか、当時のCADでは自動展開ができなかったので、こちらの展開に時間がかかりました。
溶接の繋ぎ目がわからないこともポイントです。
溶接技術の集大成が、こちらの「かざぐるま」になります。
薄い金属や部品を溶接で繋ぎ合わせました。
微細加工で金属を何枚も切り出し、竹細工と同じように織り込んだりもしています。
私自身、設計に携わることがあり、今でも「こういったものはできないだろうか?」と考えています。
社内の備品や設備にも設計したものが多くあります。
工夫次第でできるかもしれないものについては、お客様の注文・社内発案のものに関わらず積極的に挑戦するスタンスです。

溶接に強みを持っているのが伝わってきます。社内環境や社員教育などで何か取り組みなど行なっていますか。
三輪氏
ISOの関係で、社員に定期的に試験を受けてもらって技術のいい意味での均質化を計っています。
それ以外のところでは、作業スペースを充分に確保するようにしています。
平面出しなどもしやすいような環境を整えています。
また、常日頃から清掃を徹底しています。
近隣の掃除や美観活動を行なっています。
それが、製品を加工する上での美意識向上につながっていると思います。

三輪氏
当時は、紙での管理が主流だったので、紙の管理を減らすように取り組みました。
パソコンを使える方も少なかったので、注目していただいた面もあります。
自前で作ったシステムなので、全体的に簡素化されていて、入力等も少ないのですが、その分管理できることも少ないため、新システム導入を考えています。
今後のデジタル化について取り組みたいことなどございましたら、教えてください。
三輪氏
工程管理です。多品種少量かつ、溶接を含めた手加工が多いというところで、読めない部分が多いです。
人の稼働時間の部分について、原価管理やリソース調整の部分で把握しておかなければならないというところで課題があります。
加工図面の保管においてもデジタル化をすすめています。多品種なので、図面でいえば月あたりで1,500枚ほどあります。
そこは、少人数でもこなせるようにデジタル管理しなければと思っています。
その他に、課題を感じていることはありますか。
三輪氏
微細加工と溶接を特長にしていますが、現状ではまだインパクトが弱いと感じています。
そういうのって展示会に行くとわかるんですよ(笑)
特徴のある設備と溶接のさらなるスキルアップ。
これで今後どれだけ特長を強化していけるかが課題ですね。
まとめ
微細加工と高度な溶接で、板金に付加価値を与える。
「かみふうせん」、「クォーター・メビウス・ループ」、「かざぐるま」。
異種金属の溶接や一風変わった作品を作り出す。
さらに技術を高めるために。