飯島プレス有限会社

きめ細やかな仕上げで高品質に

飯島プレス有限会社について
茨城県水戸市に、繊細さに強みを持つ板金加工メーカーがある。

飯島プレス有限会社だ。

プレス会社として、1958年に東京都墨田区に創業。

女性の職人が多く、社内比率5割を超える。

飯島プレス有限会社はどんな社風なのか。

今回は、専務取締役の飯島弘一郎(いいじま こういちろう)氏にお話を伺ってきました。
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快く取材を引き受けていただき、ありがとうございます。まずは、御社の事業内容を教えてください。

飯島

弊社は、プレスという文字が社名に入っているのですが、仕事内容の99%くらいが精密板金、製缶板金です。
60年前に創業した当時はプレスから始まったので、プレスという文字が入っています。
私の祖父が、東京の墨田区に創業しまして、祖父と祖母の二人でやっていました。
東京の立地上、騒音や場所の問題がありまして、40年前に、祖父の地元である水戸に戻ってきました。
そこから、板金とプレスを合わせてやるようになりました。
40年前は、まだプレスの比重が高かったのですが、今も長くお付き合いいただいているお客様の方から、板金もやってみないかというお話をいただいて、プレスと板金を併行して始めました。
徐々に板金加工にシフトし、現状は、ほぼ板金加工しかやっていません。
プレス加工は、加工可能な範囲なものがあれば、社内でやりますし、社内でこなしきれないものであれば、協力会社にお願いしています。
あとは、以前からやっているプレスは、引き続きやっています。
板金に付随したプレスがあった場合、といった感じです。


御社の強みについて教えてください。

飯島氏

一貫した加工体制を整えています。
抜き、曲げ、溶接までは、だいたいどこもやっているんですよ。
弊社の特徴としては、塗装とシルク印刷、組み立てまで一貫して行います。
それが特徴ですね。特殊な曲げも行います。

配線までやっていらっしゃるんですね。

飯島氏

お客さんにご指導をいただいて、動いているんですけど。
組み立ての方も2社ほど引き合いがあって。
もともと板金加工のみ受けていたんですよ。
ところが、板金だけでは、ある程度力があるところだとできちゃうので。
組み立てや塗装ができちゃえば、手放しにくいので、やると。
実際、ここが一番特徴になっているところで。
よく言われるんです、「塗装までやっているんですね」と。
塗装までできるところは、数えきれるくらいしかないので。
塗装、シルクがあるということで、ホームページや展示会で声をかけていただく機会が多いですね。


インターネットでの広報活動を積極的にされているようですが。

飯島氏

ホームページをやりだしたのが4年前ですが、板金屋を調べるときに、大体インターネットを使うんですよね。
立派なのを作っている会社さんを見て、うちもしっかり作らないとダメだなと思って、作りました。
社名もプレスが付いているので、誤解のないように仕事内容をわかっていただかないと。
これまでは、お客さんのご紹介で新たな取引先と繋がっていくことが多かったのですが、もっと幅を広げられるように、外の壁をなくせるようにしたいなと。
今は、インターネットを使うことが当たり前ですので、ホームページを作れば、24時間営業マンがいるので作って良かったと思っています。

インターネット経由での、お引き合いはありますか。

飯島氏

実際くるんですけど、うまくいくかというと、かなり少ないですね。
コストが全然合わない案件もあります。
そのなかでも、新規に何社かは取引が今も続いています。
板金加工会社ごとに得意、不得意があるので、弊社の得意な部分がお客さんにマッチした時に、新たにお付き合い出来ることが多いです。
ですが、最近は不得意な部分も克服していく様にする為に、積極的に動いています。
弊社はもともと通信機関の精密板金加工から板金加工を始めた為、薄板の小物は非常に得意な分野ですが、逆に大きい製缶板金の場合、機械の問題や加工順番などに悩むことが多いです。
ですが、最近は大きな製缶品も積極的にこなしていく流れを作っています。
その為の設備投資もしています。
作らなければ声が掛かることはないので、ホームページ自体はやってよかったと思います。

御社の設備状況について、お聞かせいただけますか。

飯島氏

最新の設備とかは、あまり入っていないですね。
更新もしていますけど、それなりに古い設備が多いです。
板金の機械って、設備の更新をしなくても、ある程度できちゃうんですよね。
職人がいればの話ですが。
ただし、問題は人手不足で、昔の機械を使える人がいなくなっている。
そういう意味でも、新しい設備はデジタル化していて、使いやすくなっていますけどね。
ただし、できること自体はそんなに変わっていないんです。
段取りのしやすさ、加工機のスピードは非常に良くなっていますが、まったく新しいことができるようなものは少ないですね。
ですが、Co2のレーザーを2年前に入れ替えたんですけど、その時は限界を感じていましたね。
特に加工スピードの面で。
また、アルミ製品がやりづらいのと、銅が怖くて切れないといった問題がありました。
レーザーはすごく進歩しているじゃないですか。
伸びが期待できる分野なんですよね。
曲げは、もう進化しているので。
ものを安定してつくることに比重がいっているので、メーカーさんも自動化を推奨していますよね。
弊社としては、速さよりも、やれることを増やしていくために、機械を増やしています。



いろいろなご依頼がある中で、試作品の依頼が多いのでしょうか。

飯島氏

試作ももちろんありますが、少量のリピートが多いですね。
リピートは、30ロットくらいが月々流れるか、2ヶ月おきに流れるかです。
1品ものというのは、そこまで多くなくて。
試作が作れれば、10、20、30ごとのロットが流れます。

特定の業界で、お付き合いの多い業界があれば、教えてください。

飯島氏

板金業界は今忙しいので、全般的に伸びは大きいんです。
以前は、精密板金しかやってなかったんです。
通信機をメインにやっていて、精密板金の中では精度が厳しいこともあり、出せる会社が少ないので現在もお付き合いがあります。
エスカレーターもやっています。
主に一品モノに近いです。
今、注文が多いのが、分析装置ですね。
研究機関から、お引き合いがあります。
海外からのお客さんの引き合いもあるようです。
分析装置だと、カバー類や中の板金類を、組み立てもやらせてもらっています。
半導体関係は、検査装置なので、そこまで多くないんですが、今年頭くらいまで忙しかったです。
あとは、鉄道関係の製缶品、車両関係ですね。
車両関係をやっているから、溶接がうまいって認知度も多いですしね。
以前は通信系が9割でやっていたのですが、お客さんの内製化が年々多くなってきています。
このままでは仕事がなくなっていくのが目に見えていましたので、地元の企業さんにアプローチをしていったことで、現在では各分野の売上がそれぞれ2割くらいで推移しています。
会社の大きさと、持っている設備からして、あまり大きいのができないんですよね。
3m4mの配電盤を作れますかってお話がくるんですけど、ちょっと厳しいかなって。
筐体本体を外注さんにお願いして、中のパーツを作ると、値段が合わなくなるのが問題です。
仕事を広げるようにはしていますが、大きさの縛りは依然として出ていますね。
精密板金から始めたからこそ、そうなっているのですが。


御社の海外工場(ベトナム工場)の状況について、お伺いできますか。

飯島氏

仲間の製缶板金屋さんと切削屋さんと弊社で組んで出て行ったのが、はじまりです。
「精密、製缶、切削、全部持っていれば強いよね」と、6年前にベトナムに進出しました。
よくある話が、取引先が海外に工場を作るので、そこについていくパターンが多いのですが、私たちは単独での進出を選びました。
お客さんありきで行ったわけではないので、最初はすごく苦しんだし、今はよくなってきていますけど、これからです。
ベトナムの工場でも、量産加工を目的として行っておりません。小ロットで、ある程度の数をこなす製缶・精密・切削会社の認識で売り込んでいます。
そういう需要って、結構向こうにはあって。
なるべくニッチなところに焦点を当てて、仕事をもらっている感じですね。
基本的には製缶品が多いですね。
溶接のなり手って、日本は少なくなっていますが、向こうはいっぱいいますよね。
すぐ辞めることも多いですけど。
技術もかなりレベルが高いですし、物もよくなってきていますし、なにより、値段が全然違いますし。
人がかかるところは、値段の返りが大きいので、理にかなっていると思います。

入社される前は、どういうお仕事をされていたんですか。

飯島氏

自動車関係の会社の切削工場で働いていました。
4年勤めて、こっちに戻ってきた経緯があります。
そこでは板金を全然やっていなくて、削りしかやっていなかったので、こっちに入って、板金加工は一から覚えた形です。

御社の社風、雰囲気について、お聞かせいただけますか。

飯島氏

前の会社の切削加工屋は、ソロプレイという感じでした。
機械と一対一で向き合うような感じが多かったんですけど。
板金は、頭からお尻までつながっているんですよね。
やりとりが常にあるのがいいなって、見ていて思いますね。
例えば、スポットする部品がやりにくいから加工プログラムを変更して欲しい、といった現場間のやりとりがあるので、うまくコミュニケーションを取れているかなと思います。
衝突もありますけどね。
何もないほうがまずいので、意見を出し合っていいのかなって思います。
なかなか若手が入らない風潮の中で、何人か入ってきて、活気もよくなっています。

御社は女性社員の割合が高いようですが、どのような理由からでしょうか。

飯島氏

祖父の時代から、女性社員の割合が多いと聞いています。
その時から変わっていないと思うんですけど、祖父は「基本的には、重いものを扱う以外は男性と一緒」と。
板金が始まってからも、通信機関係が主だったので、製缶のように、重いものがなかったんです。
今も小物が多いので、女性の曲げ職人がいます。
現場を見ていて思うのは、女性は製品の取り扱いが非常に丁寧なんですよね。
箱の入れ方を見ていると一目瞭然で、女性の仕事は素晴らしいです。
最近は製缶の仕事も増えたので、時代の流れで仕事内容も以前と少し変わっちゃったんですが、女性でないとできないことも多いです。
塗装、シルク、組み立て、検査は女性の方が向いていると思います。
塗装は、塗るほうじゃなくて、準備する方とまとめる方なのですが、マスキングとかの処理は女の人がいいですね。
早い加工も重要なんですけど、女性は安定して丁寧な仕事をしてくれるので。
今社員数が44人、半分くらいが女性です。


製造業で人手不足が問題になっていますが、御社の抱えている問題はありますか。

飯島氏

人の問題は感じていますね。
高校生に配る冊子をお金をかけて作ったんですが、反応はなかったですし。
子供の絶対数も少なくなってきています。
最近は高校を卒業して就職という選択肢が少なくなってきており、とりあえず専門か大学にいくという人が増えています。
かといって、大学卒業後に町工場にくることは殆どないですよね。
大手ですら、高校生を確保しちゃったら、私たちはどうしたらいいのか。
技能実習生という選択肢もありますが、その場しのぎになってしまっていますね。
早い段階で抜けるぶんにはそんなに困らないんですよ。
いちばん困るのは、ある程度仕事を覚えて、できるようになってきた時に抜けられると、すごい痛手になります。
実習生をやっているところで、来月帰っちゃうから困っているんだよって話をよく聞きます。
国の方針もあるので、どう動いていくのかわかりませんが。
とはいえ、外国人雇用も、いずれはやらなくてはいけませんね。
日本人は少なくなっていくので。
機械の値段があがっているのも、懸念材料ですね。
老朽化している設備が多いですし、ある程度しか自動化していないですね。
やるとなると、億の投資になります。
この値段を叩き合いの時代に、億の仕事なんかあるのかって思います。
補助金を使って、なんとか対応していきますが。

設備の自動化については、どのようにお考えですか。

飯島氏

人がいない分、自動化できるところはしたいです。
代表的な話で言えば、弊社には複合機がないんです。
これだけ揃っていて、なんで複合機がないのって言われることもあります。
抜き終わった製品のバラシや仕分けなど、加工とはまた違ったところに人や時間を取られてしまいます。ですが、今後のことも見据えて自動化の検討もしていきます。


  (まとめ)

  通信機関係から、分析装置、半導体、車両関係まで幅広く


  塗装、シルク印刷、組立に至るまで一貫対応


  女性の熟練工の手による仕上げは、評判が高い


  飯島プレス有限会社は、製造業の明日を見据える

加工技術

  • 板金加工
  • 金属・切削加工

基本情報

代表者名
飯島 浩一
担当者名
飯島 浩一
従業員数
44名
創業年度
1958年
メールアドレス
iijima.kouichirou@mito-iijima.co.jp
電話番号
029-247-6221

住所

〒310-0844 茨城県水戸市住吉町297-1

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