株式会社松田精工

「知恵の経営」を展開しています

株式会社松田精工について
京都府京丹後市に板金・製缶から機械加工、塗装、組立まで社内一貫生産する
板金加工メーカーがある。

株式会社松田精工だ。

3工場を駆使して、社内一貫生産。

様々な業界の仕事を受け持つ。

また、自社ブランド製品、農機具あけるンジャー、省エネ型薪ストーブも展開。

今回は代表の松田和弘氏にお話を伺ってきました。
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快く取材を引き受けていただき、ありがとうございます。まずは、御社の事業内容や強みを教えてください。

松田氏

弊社は、26才のときに私が板金業として立ち上げました。
以来、今に至るまで30年続けて事業をさせていただいています。
主な仕事内容としましては、液晶や半導体関係、それから産業機械、船舶関係ですね。
農業機械なども扱っています。
弊社の強みとしては、最新の機械をいち早く導入していることですね。
最新機械を用いて、安く早くお客さまに製品を提供できるようにしています。
弊社の従業員の平均年齢も31才くらいです。
これは、かなり若い方だと思っています。
板金業界で高齢化が進んでいる中で、弊社に若者が集ってもらっています。


ありがとうございます。最初に、起業されたときの思いなどをお伺いさせてください。

松田氏

修行とまではいかないのですが、3、4ヵ月ほど見習いさせてもらいました。
そこで、見よう見まねで勉強させてもらって。
そこから、起業しました。起業して最初に取り組んだのがエアフィルターの枠のようなものです。
これをつくっている会社が大阪から丹後に来られたのですね。
で、下請け企業を募集されたんです。
真っ先に手を挙げさせてもらいました(笑)
そこの会社さまとのおつきあいは20年ほどまでになくなってしまったのですが、そこが最初のスタートになります。
最初は、新品の機械を入れる余裕がありませんでした。
中古の曲げの機械、シャーリング機械、溶接機一台。
すべて、中古で購入して、事業をしていました。


なるほど。様々な業界のお仕事を引き受けられていますが、これは意図されてそのようにお仕事をされているのでしょうか。

松田氏

まだ、企業して間もないころに、がむしゃらに営業に回りました。
ただ、10件行ったら、9件門前払いをされるような状況でした。
逆に言えば、1社は話を聞いてくれます。
そういう形で営業をしていました。
そこで、お仕事をいただいたお客さまの仕事をさせていただいて。
今は、そのような営業は一切していません。
ただ、ホームページを見て連絡をくださる方が増えてきています。
今日も、この後お客さまがいらっしゃいます。
そのような形で、様々な業界の仕事を実現しているような形ですね。
ですから、戦略的に狙ったわけではありません(笑)


ありがとうございます。そうすると、関西以外からのお引き合いもあるのでしょうか。

松田氏

関西以外ですと、横持ちが大変なので、引き受けないようにしています。
横持ちというのは、運搬のことです。
以前は四国まで行くようなこともあったのですが、今はもうしていないですね。
どうしても、時間がかかりますし。
ガソリン代、高速代もかかります。
基本、近場です。
遠くても大阪近郊でやらせてもらっています。
それ以外では、発送させていただくような形でやっています。
大型の製缶機械加工もやっているので、なかなか大変なんです。
4トンのトラックで納品するような形ですね。

なるほど。御社で働かれている人の部分について伺わせてください。

松田氏

一つは、先ほど申し上げたように平均年齢が若いので活気があります。
もう一つは、できるだけ一人の人間が様々な工程を担当できるように意識しています。
例えば、曲げを担当している人が風邪をひいたら、それで曲げの工程がストップしてしまいますよね。
そういうやり方では、一人の人間にかかる負担が大きくなります。
そうではなく、一人の人間が曲げもできる、レーザ加工もできる、溶接もできる。
そのような形にできるように心がけています。
誰かが休んだとしても、他の誰かがフォローできるような仕組みですね。
弊社で、インフルエンザで休まなければいけない人間が出たんですけど、そのような仕組みをきちんとつくっていましたので、困りませんでした。

もちろん、日々の仕事に加えて、新たな仕事を覚えるのは大変だと思います。
ただ、人間の性でもありますが、同じことばかりやっていると、どうしても飽きますよね。
溶接の人間が、毎日溶接ばかりしていたら、やはり飽きます。
じゃあ、時々曲げもやってみよう。
塗装も面白そうだから、覚えてみよう。
そのような形で頑張ってもらっています。
もちろん、品質の部分はきちんと担保しながらですね。


メーカーさんからの品質が年々高くなっていると伺ったことがあります。

松田氏

そういう部分もあるかもしれませんね。
例えば、バリ傷。
我々も、車を買った時に、少しでも傷が入っていたら嫌ですよね。
塗装も同じで、一点でもぽちっと山があったらだめです。
ですから、弊社は外注さんに一切出しません。
社内での全部できるようにしています。
これは、外注さんを信頼していないのではなくて、そもそもできないだと思っています。
弊社以上の技術力を持っている業者がいなくなってきているんです。

ありがとうございます。そうすると、とても貴重な存在ですよね。今までで困難だった案件や、苦労されたお仕事などございましたら、お伺いさせてください。

松田氏

弊社は、手形での支払いもあるのですが、今までお客さまが倒産してあおりを被ったようなことってないんです。
本当にありがたいと思っていますね。

思い出深いものでいえば、自社製品に取り組んだことですね。
弊社は、90パーセントくらいがメーカーさんなり、企業さんなりからお仕事をいただいています。
ただ、若いころからメーカーになりたいという思いがありまして。
下請けではなしに、自分でものの金額をつけたいとずっと考えていました。
そういう中で色々なものをつくってきたんです。
農機具やストーブなど。
ストーブなんて、世界で弊社しか作っていないような薪ストーブなんですよ。
農機具なんかでいえば、弊社の周りには農業に従事されている方がたくさんいらっしいまして。
そうすると、農機具が壊れたので、修理してくれないかと依頼が来るんですね。
溶接得意でしょ、ここが折れたので直してほしい、とか。
ご近所さんなので、無償でやらせてもらっているのですが、そのようなところにヒントがあるんですよ。
話をしていたら、こういうものがあったら嬉しいなとか、こういうことで困っているとか。
ありそうでないものばかりなので、ちょっとやってみようか、でスタートするんです。
これがあれば、農家の人が楽になるのか、っていう思いを持ちながらつくったのが、農機具あけるンジャーという製品です。
マルチビニールに穴をあけるものです。
なかなか簡単じゃないんですよ、マルチビニールに穴をあけるのって。
何回も従業員が、畑に行ってはマルチをひいて、穴をあけてみたいなことを繰り返しました。
ただ、製造はできるのですが、なかなか営業や販売ができない。
そこは、課題として持っていますね。

表彰などもいただいてはいるのですが。
海外などにも、アルゼンチンに200台をいっぺんに納めたり、国内でも北は青森から南は鹿児島まで、ご注文いただいています。
でも、たかが知れた数です。
大手メーカーさんからも、オファーをいただいたのですが、販売価格をさげて欲しいとか、発送、納品まで手がけて欲しいという要望がありまして。
それだったら、できませんってお断りさせていただいて。
今は、直販でやっているのですが、やはり売れる数は知れていますので。


毎月注文があるのでしょうか。

松田氏

いや、ないですね。
やはり、宣伝が足りないんでしょうね。
一度、幕張メッセに出展したことがあったんですが、その時はすごい反響でした。
ただ、実際に継続して購入していただけるかというと、なかなか難しい。
やはり一つの製品をつくって、しかも販売しようと思うとなかなか大変ですね。
年のせいもあるのかもしれませんが、段々とメーカーになりたいという気持ちは薄れてきましたね。

薪ストーブは、大宮という高速を降りたところのお店に出しています。
この辺りは寒い地域でもあるので、こういうストーブが見直されてきているんです。
煙突が立っている家も決して少なくないですよ。

ありがとうございます。今、挑戦されていることなどございましたら、是非お伺いさせてください。

松田氏

今考えているのは、工場の統一ですね。
今、3つあるのですが、それぞれが離れていますので、それを一つにして、大きなところに出したいと思っています。
弊社の強みである一貫生産を前面に打ち出していきたいのですね。
やはり、板金から始まって、製缶、機械加工、組立てまで社内で一貫生産できることが、弊社の特徴ですからね。
メーカーさんは、板金屋さんに仕事を依頼したら、次に塗装屋さんに出さないといけないのは手間ですからね。
一回一回、指示書や注文書を出さないといけない。
それで一日が終わってしまうこともあるみたいですよ。
その辺りに関しては、担当者さまかた見たら、弊社は楽だと思いますよ。
横持ちもないので、納期を短くできますから。

なるほど。「知恵の経営」というものをホームページで拝見しました。

松田氏

これは京都府さんの後押しですね。
大分前の話にはなるのですが、この辺りで「知恵の経営」を取られる方が少なかったんです。
弊社は、率先して手を挙げさせていただいて。
ちょうどリーマンショックの頃だったと思うのですが。
時間がありましたので、みんなで勉強してみようかと、全員で取り組みました。
そのあとに京都府のモデル企業もいただきまして。


そのような自治体との連携のお話はよくあるのでしょうか。

松田氏

京都府って、昔は織物産業でとても有名だったんです。
丹後ちりめん、っていったら全国でも有名な地場産業でして。
ただ、ここ30年くらいで、コストの安い中国へシフトしていきました。
なおかつ、今は着物を着る人が本当に少なくなりましたから。
西陣織にしても、丹後ちりめんにしても、着物です。
昔は、結婚するときに、お嫁さんが箪笥いっぱいに織物を持って行ったものです。
でも、今はそのようなことってまずないですよね。
ですから、段々と低迷していきまして、多くの企業が金属加工系に変わっていきました。
110社くらい、今丹後にはあるのではないでしょうか。
近畿でも有名どころになりました。
この辺りの企業さんは、日本でも1、2を争うような機械が揃えています。
弊社は、板金なのでまた別なのですが、切削では東大阪を抜いているのではないでしょうか。
要は、地場産業が金属加工業に変わったんです。
ですから、自治体さんもそれを応援してくれているのですね。
補助金なども含めてですね。
この辺りの企業110社での協同組合というものがあるのですが、そこの理事を8年くらい務めています。
そういう関係もあって、色々お話をさせていただいています。

ありがとうございます。最後に大きな質問になってしまうのですが、板金業界全体や金属加工業界全体の課題などございましたら、是非お伺いさせてください。もちろん、御社の課題でもかまいません

松田氏

課題はたくさんあります。
例えば、人手不足。
ちょうど今、溶接用のロボットを導入しようとしているのですが。
4メーターものの溶接ができる大きなロボットを入れようと思っています。
ブレーキ、曲げの機械ですね。
これもロボット化しようと考えています。
これは、全部人手不足からそういう方向に舵を切っているんですね。
ハローワークにいくら問い合わせても、人がいないんです。
もう、産業機械はロボット化していかなければ、いけないだろうと考えています。
ただ、板金はどうでしょうね。
さすがに、人間の手が残るとは思いますが、今後どうなっていくかはわからない。
AIなどもどんどん出ていますよね。
金属加工自体が、全くなくなるということはないと思いますが、人がいない。
これは、弊社だけではなくて、業界全体の課題だと思っています。


まとめ

金属加工の街、丹後で板金加工メーカーとしての存在感を放ち。


身近な課題を拾って、自社ブランドに反映。


昔ながらの板金屋の精神持ちながら、機械化する時代の波にも対応。


株式会社松田精工は、今日も「知恵の経営」を展開する。

加工技術

  • 板金加工
  • 金属・切削加工

基本情報

代表者名
松田 和広
担当者名
松田 和広
従業員数
22名
創業年度
1986年
メールアドレス
info@matsudaseikou.jp
電話番号
0772-72-1701 

住所

〒629-3134 京都府京丹後市網野町生野内1122-1

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