株式会社小泉製作所

「やってみる」が未来を切り拓く

株式会社小泉製作所について
大阪府堺市にものづくりの面白さを積極的に発信する板金加工メーカーがある。

株式会社小泉製作所だ。

特にパイプ曲げ加工に強みを持ち、アルミからマグネシウムまで。

難加工、世界に一つしかないような製品に積極的に取り組む。

「やってみる」の精神でものづくりに取り組む。

今回は代表の小泉達哉氏にお話を伺ってきました。
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快く取材を引き受けていただき、ありがとうございます。まずは、御社の事業内容や強みを教えてください。

小泉氏

創業して、85年くらいになります。
ハンドルの曲げから始めているのですが、ずっとパイプ曲げ一本でやってきました。
パイプ曲げってできる業者が少ないニッチな産業なんです。
自転車のハンドルから始まって、オートバイまで手がけるようになりました。
バイクのアッセンブリですね。
海外とも取引するところまでやっていました。
それが、リーマンショック以降に、ガタっときて、5年ほど前に私が社長になりました。

弊社の強みに関してですが、なかなか自社の強みを把握するのは簡単ではありません。
そこで、できるだけ展示会に出展するようにしました。
その中で、外部の方々に弊社の強みが何であるかを教えていただくような形でやりました。
そうすると、面白い仕事していますねって。
そのような評価をどのように活かしていくか。
かなりの方と、名刺交換をしてマッチングしました。
結果、会社の状況も良くなって、面白い会社になりました。
それこそ「パイプ曲げと言えば、小泉さんだ」というくらいの。
大手さんともほぼ直でやれるくらいの会社になりました。
この前も、3台で1000万のような自転車を手がけました。
そういうものをまとめて受け入れられるようになりました。

弊社の強みは、アルミのパイプを一から全部設計できます。
市場になりパイプをすぐにつくることができます。
それを加工して、溶接もできる。
弊社の強みでもあり、面白いところでもありますよね。


ありがとうございます。パイプ曲げをやっている会社は少ないという印象を持っています。

小泉氏

正直レスポンスが、とても悪いんですよね。
以前自社でできないものがあって、全国のパイプ曲げ加工屋さんに電話しまくったことがあります。
でも、納品されてきたものがどれもこれも雑でした。
「パイプ曲げなんだから、このレベルで」っていうところが多くて、後でもめたりすることが多い。
弊社の強みのひとつにもなりますが、そういうものがあれば修正します。
そのような仕事も引き受けていますね。
やはり自社でパイプ曲げができるというのが、一番の強みかもしれません。
パイプ曲げのことを良く知っている、職人もたくさんいます。

なるほど。ハンドル曲げから創業されたとのことですが、現在はどのような製品をつくられているのでしょうか。

小泉氏

主に、オートバイの部品、ハンドルも手がけています。
でも、「やってみる」の精神で、特定の業界にとどまらないようにしています。
業界を横断して仕事をしています。
もともと、手がけていたものとしても、医療機器や建築金物などもあります。
先ほど述べた、自転車のような特殊な案件も積極的に引き受けています。
そのような流れの中で、オリンピックで自転車の競技があったら、弊社のメカニックが1人行きます。
工場の中で完結するような仕事だけではなく、積極的にお客さまに関わっていけるような仕事もしていますね。

弊社は、1本だけのものとかが、とても多いです。
自転車も1台作っただけです。
でも、その1台が日本の自転車を変えるんです。

実際、大手メーカーさんの試作もので、パワースーツもつくっています。
素材的にはアルミなのですが、板金展開から曲げたものを、フレームにアッセンブリしていく。
加工方法としては、全部パイプ曲げの範疇になるんです。
アルミの溶接ができるということもあって、そのようなお仕事の依頼をいただけていますね。


ありがとうございます。不躾な質問になるのですが、パイプ曲げは単価が高いのでしょうか。

小泉氏

様々ですね。
ただ、その中で単価が高いものがあるのは事実です。
どうして、単価が高いかと言ったら、大変だからなんです(笑)
普通では考えられないような薄いものを曲げたりするんです。
これは、それ専用の金型をつくらなければいけません。
普通の金型にはないようなものがたくさん付随もしてきます。
ですから、大変ですし、みんなやりたがらないんです。

このパイプ曲げの金型は切削で実現させました。
実際に見てもらえればわかるんですけど、ものすごく手間ひまがかかっています。
もちろんお金もかかっています。
たくさんの部材も使用していますし。
これなんかは、普通のアルミをプレス加工して、さらに強度を上げるために熱処理しました。
熱処理のろうを抑えるだけでも、かなりの金額がかかっています。
ですから、普通の企業さんではやりたがらないし、ここまでやる企業さんってほとんどいないのではないでしょうか。
弊社は、このようなものをつくったら勉強会のようなものを開くんです。
それで、みんなで検討しながら、かつ楽しむんですね。
「これ一つの単体では費用がかかったけど、とても勉強になったよね」って。
そうすると、更に高い技術、次のステージに挑戦できる。
結果、会社全体の力が底上げされている。
そのように考えて、日々仕事をしていますね。

なるほど。勉強会では技術の共有などもされているのでしょうか。

小泉氏

もちろんしています。
これは、私の個人的な考え方も入っているのですが、どんどん新規事業や開発のお手伝いをしていきたいと考えているんです。
ある意味では、種まきです。
とにかくたくさん種をまく。
そうしないと花は咲きませんから。
仕事って、続いていくといは続いていきますし、なくなるときはなくなるんですよ。
ですから、なくなったときにどうしようかって考えても遅い。
それまでに手を打てるならどんどん打っておきたい。

新規事業で成功するのなんて、正直数パーセントですよ。
でも、そこで挑戦することで人脈もできる。
会社に対する信頼もいただける。
でも、何より新しいことって面白いんです。
できたら、本当に嬉しい。
やったーって思います(笑)
そういう人間なんで、どこの会社にもまねができないような勢いでもやります。
解析からお客さまと一緒にやるのですが、とにかく短納期でやる。
設計も溶接も、一気にやってしまう。
面白いから短納期でやってしまいたいし、やってしまう。
そうすると、また面白い話をご相談いただける。
そういう好循環が生まれています。

ただ、つくってものを売るということだけでは物足りないんです。
自分の持っている技術で何ができるのか。
そういうことを、積極的に外で話すことで、色んな人から引き合いをいただける。
その中には、全国的に有名な設計士さんとかもいらっしゃいます。
そこでまた、ご紹介いただいて新しい人脈ができたりもする。
そうすると自分のモチベーションも高まる。
ただ、仕事が欲しいとか、くださいとかじゃないんです。
面白い仕事がしたい。
結局、ものづくりが好きなんですよ(笑)



ありがとうございます。製造業全体で技術の継承が難しいという課題があると伺っています。この点に関して、お話を伺わせてください。

小泉氏

技能の継承ってやろうと思ったらできるようなものではありません。
結局、難しい仕事を引き受けていると、頭を絞らないといけない。
頭を絞って、また絞っても壁にぶつかるときは、どうしてもぶつかります。
その壁を個々人がどのように乗り越えていくのか。
その時に、技能の継承は、乱暴な言い方になりますけど、勝手に行なわれます。
逆に言えば、そのように壁にぶつかって、乗り越えようとしなければ、技能の継承はできません。

弊社では、「やってみる」という言葉を大事にしています。
やってみることで、できることがどんどん増えていきます。
知らなければ、調べてみる。
知識を増やして、今まで知らなかったことを知ることで可能性が広がります。
できないことにも積極的に挑戦する姿勢を持ちたい。
調べて、相談して、きちんと形にするところまで持っていく。
そうすることで、自分の経験値があがっていく、成長していく。
一人一人が成長すれば、会社も成長する。
得意なこと、強みも増えていく。
もちろん、そのような中で技能の継承も自然に行われていきます。
そうやって、会社の価値が上がっていきますし、上げていきたいと考えています。

なるほど。これまで手がけられた中で難しかった案件や印象に残っている仕事などございましたら、お伺いさせてください。

小泉氏

全部ですね(笑)
その中で、あえて言えば挑戦してきたもの。
例えば、パワーアシストスーツ。
マグネシウムでつくって欲しいという依頼があったんです。
でも、これまでマグネシウムを扱ったことなんてない。
できるかどうか、以前の問題としてそもそも材料がどこにあるかわからない。
色んな商社に聞いたのですが、入手経路がないんです。

でも、「小泉さんお願いします」って言われてしまったんです。
困ったなと思ったんですけど、できないと言ったらそこでもうおしまいですよね。
お願いされたんだから、できるところまではやりたい、やりとげたい。
「やってみる」の精神で、もう本気で探し回りましたよ。
で、材料の入手経路も含めたルートやパイプつくりも全部自分で見つけだしました(笑)
最終的に、きちんと完成させて喜んでいただきました。
本当にやるか、やらないかだなと痛感しました。
自分に「やってみる」の精神を植え付けてくれたのは、このパワーアシストスーツとご依頼してくださったメーカーさまです。
ですから、この仕事は自分にとって、とても思い出深いです。

別の大手メーカーさまから、2ヵ月弱で「近未来のいろんな乗り物に対してできるコクピットをつくって欲しい」って言われたこともありましたね。
図面も絵もなにもなし(笑)
とにかく「近未来のいろんな乗り物に対してできるコックピット作ってくれて」って。
シュミレーターのフレームの寸法取りからして、そこに合うコクピットをつくらなければいけない。
でも、逆に言えば、全部任せてもらえている。
もう「やってみる」の精神が身についていますから。
むしろ、めっちゃ面白い、やってみようです(笑)

私は元々、川崎重工のエンジニアだったんです。
結局、ものをつくるのが楽しくて、楽しくて。
こういうお仕事の依頼は、ときめいてしまうようなところもあるんです。


そのような熱量って小泉さま特有のものでもあるように思います。現場の従業員の方からは、どのようなリアクションをいただいているのでしょうか。

小泉氏

確かに、みんな忙しいとは言っています。
でも、「絶対にうちでやるべきだと思った」って素直に言うようにしています。
そうすると、みんなも「そうですね」って素直に答えてくれますね。
5年前に、自分が社長になったときは、なんでもやってみるということばかりでした。
他社さまができない、というようなこともやってみようと。
結局、できるできないって決めているのは、それぞれの自分自身の気持ちなんですよ。
できないできない、って言うけど実際にやってみたら、できることがほとんどです。
確かに、難しいことは難しい。
でも、全くできないようなことではない。
むしろ、やってみたら、意外にこんなもんかということもあります。
自分自身だけでなくて、会社のみんなでそのようにやってきました。
ですから、大変だとは思いますが、みんな理解して一生懸命やってくれています。

ありがとうございます。常に挑戦されているとは思うのですが、とりわけ今、挑戦されていることなどございましたら、是非お伺いさせてください。

小泉氏

先ほどのマグネシウムの話に関係するのですが、弊社はマグネシウムの溶接ロボットを導入しました。
この溶接ロボットを導入している会社は、まず関西ではないと思います。
日本全国でも入っていないかもしれません。
それくらいの最高スペックををもった溶接ロボットです。

このロボットを使ったものづくりを展開していきたいと考えています。
今、ちょうど日本の電車車両がマグネシウムに変わろうとしている時期なんです。
これまでは、マグネシウムは今まで材料も高いし、色々なハードルがあったんです。
それがマグネシウムの協会もできたり、JIS規格もできてきました。
全国的にマグネシウムができることが集まって、何かものをつくろうという機運もあります。
それに取り組むというか、やってくださいとお願いもされています。

そこで新しい市場を手に入れる。

小泉氏

いえ、別に自分たちが車両業界の新市場を手に入れたいわけではありません。
ただ、知見が欲しいんです。
そこで得た知見は、絶対他の金属を使う際に生きてくる。
それだけではなくて、今後お客さまに提案する際の一つのエッセンスになるとも思っています。

私が何年か前に、マグネシウムを手がけたときには、まだマグネシウムを加工できるところってほとんどなかったんです。
全国のマグネシウムを手がけている会社に電話をかけましたが、実はできない。
ご存知かもしれませんが、アルミ加工を得意とする会社って結構少ないんです。
その中でもマグネシウムの溶接ができる会社というのは、ほとんどない。
ですから、マグネシウムを手がけることによって、弊社の会社の価値を上げたい。
マグネシウムの業界が、ニッチな業界であることはよくわかったので、そこの方々と一緒に面白いことがしたい。
そのような形で他の仕事にもつながったり、相談されて最新トレンドの情報なども入ってくればいいなと思っています。

おかげさまで、「地域未来牽引企業」という賞を経産省からいただきました。
昨年は、そのような賞をたくさんいただくことができました。
より「やってみる」の精神で仕事に取り組んでいきたいと思っています。


なるほど。最後に大きな質問になってしまうのですが、板金業界全体や金属加工業界全体の課題などございましたら、是非お伺いさせてください。もちろん、御社の課題でもかまいません。

小泉氏

少し先代の話になって恐縮なのですが、お山の大将だったのかなと思ってきました。
会社って、経営者のもっている世界観次第でどうにもなるようなところがあります。
弊社で言うと、外とのつながりが弱かったんです。
でも、外とのつながりが弱い会社は、どんどんと小さくなっていかざるを得ない。
会社を大きくしようと思ったら、M&Aのいい話なども結構転がっている。
そのような情報に対する嗅覚をきちんともっていなければいけませんし、そのような話があった時に判断できるようにしておかなければいけないと思います。

そういうところができなくなっていくと、世の中から取り残されていくような会社になってしまいます。
そうすると選択の余地なく、会社を畳んでいく方向にならざるを得ない。
業界全体の中にそういう会社がたくさん出てきてしまっているように思います。
そういう課題を感じていますね。

弊社の話に戻るのですが、協力工場もたくさんあります。
そういう人たちにも楽しんで仕事をしていただきたい。
安心して仕事をしてもらいたい。
そういう思いを持って経営しています。

仕事がないなら取ってくればいい。
取ってこれないなら、つくればいい。
それくらいの気持ちでやらないと、自分たちの会社も盛り上がらないし、協力工場も盛り上がらない。
業界全体も盛り上がらない。

これは個人的な考え方なのかもしれませんが、やはりみなさんに元気を届けたい。
こういう商品ありますよとか、こういう加工できますよとか。
ものづくりは、単なるやらされ仕事ではないですよ、とても楽しい仕事なんですよ。
そういうことを、かけ声だけではなくて具体的な形で届けられように頑張っています。


まとめ

パイプ曲げ加工で、世界で活躍する競技用自転車、パワーアシストスーツを実現。


未来の乗り物のコクピットまで手がける。


「やってみる」の精神が、「地域未来牽引企業」に結実。


小泉製作所は、ものづくりの面白さを形にして届ける。

加工技術

  • 板金加工
  • 金属・切削加工

基本情報

代表者名
小泉達哉
担当者名
小泉達哉
創業年度
1933年
メールアドレス
tatsuya@koizumi-ss.co.jp
電話番号
072-229-2332

住所

〒590-0905 大阪府堺市堺区鉄砲町18

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