有限会社川﨑製作所

確かな技術と自由な発想は引き継がれる

有限会社川﨑製作所について
武蔵野の面影を残す東京の三鷹市。

町の工場という名にふさわしい板金屋さんがある。

有限会社川﨑製作所だ。

特殊板金と24時間出張サービスをうたっている。

特殊板金とは何か。

今回は、代表の川﨑武夫氏とご子息の雄一朗氏に話を伺ってきました。
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特殊板金加工と溶接を専門にした会社とうたわれています。この点について、お話を伺わせてください。

雄一朗氏

一般的な精密板金もやっています。
その中で特殊な板金加工もやっています。
例えば、車のパーツ関係。
カーゴトレーラーなどを製作したりします。


雄一朗氏

基本的には個人向けで、知人の紹介やインターネット経由で依頼が来ます。
ほとんどが特注品のものになりますね。
そういう普通の板金屋さんがやらないものをやっているという意味で特殊板金。
建築会社さんともつながりがあります。
ただ加工して納品ではなくて、製品を取り付けるところまで対応しています。
そこまでやる板金屋さんは少ないのではないでしょうか。


共通の趣味の友達から依頼をいただいたのがきっかけですね。
趣味でつながった友達から仕事をもらって、その中で信頼をいただいて。
どんどん自分自身の幅を広げていきました。

24時間の出張サービスをされていますが、この点について教えてください。

雄一朗氏

基本的には溶接を含めた修理に行くことが多いです。
現場でアルミやステンレスなどの工事、修理、特に溶接をからめると、それができる業者は少ないです。
ネットで検索してもほぼ出てこないですよ。
どうしてかっていうと、溶接は電気がないとできないから。
うちは電気も含めた道具を車に積んでいます。
現場まで行って、200ボルトで工事ができる。
そこに強みがありますね。
夜中に茨城の食品工場まで行ったこともあります。

その流れで学校にも行きます。
学校の校庭には電源がありませんからね。
壊れたサッカーゴールを直したり。
新品で買ったり、工場にまで持って帰って修理をするとなると、色々コストがかかります。
うちは現場でできちゃうので、安く済む。
それで呼ばれることが多くなりましたね。

学校の門扉とか非常階段の非常口などの修理・修繕もします。
プールなどもやったことがあります。
金属関係に手を入れていく感じですね。

地元の三鷹市だけでなくて、横浜辺りまで出張工事に行く。
横浜は学校がとても多いんですよ。
だから、3月はほぼ毎日横浜に出張に行っていますね。
そういうニーズは結構あります。



これまでやってきた中で難しい仕事などあったら、是非教えてください。

雄一朗氏

やはり図面がないところは難しいですね。
図面がないとイメージが共有できないので、トラブルの種になります。
図面はコミュニケーションツールですから。

そもそも図面がないというのは、図面が書く時間がないんですよ。
だから危険な場合が多いんです。
そういう現場では、トラブルが起きてもいいように余裕を持つようにしています。
でも、いつもそれができるわけではない。
だから、図面のない現場はあんまりやりたくないです。

図面のない難しさについて伺いました。もう少し図面と板金加工との関係について踏み込んで伺ってもいいでしょうか。

雄一朗氏

それは、親父に聞いた方がいいかもしれませんね。

武夫氏

そうですね。
図面には、設計した人それぞれの癖があります。
だから、その癖をくみ取る努力をしなければいけませんね。
とはいえ、場合によりけりですね。
板金の公差では考えられないような、厳しい数字を入れてこられることもあります。
そういうのは、大体経験のない設計屋さん。
ベテランの設計屋さんは、加工者の意図を汲んで設計してくれる。
長年一緒にやっている設計屋さんのものは、余計な神経を使わなくていいですね。

ほとんどの業者さんは2次元で図面を送ってきます。
3次元で設計が来ることはほぼないですね。
とはいえ、若い人は3次元の設計を習っているかもしれません。
立川の教育訓練校に行くと、みんな3次元で設計作業を習っていますね。


なるほど。先ほど、特殊板金のお話がありました。川﨑製作所全体ではどのような仕事が多いのでしょうか。

武夫氏

毎日行っている仕事は、ベルトコンベアーのラインに関わるもの。
架台を中心にして、それに関係する部品の製作の仕事を請け負っています。それが基本の仕事。
それにプラスして特殊なものもやります。
今日でいえば、海上技術研究所で使うものの注文が来ました。
図面を見たのですが、かなりめんどくさそうですね(笑)
どういう製品なのかもわからないですね。
図面上で全体像は見れるんだけど、何に使うんでしょうね。
かなり大きいものであるのはわかるけど。
こういう大きいものができるところって少ないんですね。

それで仕事が回ってくる。
何に使うのかがわかならくても、その製品がどこで使われるのかは見極めないといけない。
精度とか後工程のことも考えないといけませんからね。
例えば、表面の研磨。
研磨をしなければいけない製品の場合は、研磨を想定して厚みを持たせておかなければいけない。
そういうのは、お互いの仲間内で最初に相談しておきます。
次は、こういう製品をやりますよって。
仲間内のすり合わせはとても重要です。
後は面倒な仕事はおよそ試作をしますから。
そこで、問題があったら実際にものを作るときに直す。
そうやって、徐々に図面を完成させていきます。


なるほど。試作の難しさについて伺ってもよろしいでしょうか。

武夫氏

試作はある程度持ち出さなければいけないこともあります。それはもう投資だと思ってやります。
ただ、量産になったときに、その分を上乗せして単価をもらうようにしています。
損はしたくないですからね。
最終的に回収できるように。
試作はこっち側の気持ちを分かってもらえるような人としかやりたくないですね。
数字上のやりとりだけではあまりやりたくないですね。

信頼関係が重要になってくる。

武夫氏

そうですね。
うちに注文を出す方も、うちから注文を出す方も、お互いに信頼関係がないといけない。
あそこに出しておけば間違いないよ、って。
そこで冒険してしまうと危険なことがありますよ
ネットなんか見ると、大げさに書いているところが多々ありますよね。

もちろん、初めておつきあいをしなければいけないこともあります。
そういう場合は、かなり慎重に仕事します。
顔を合わせてみることくらいはしないといけませんね。

実際、適当な仕事をする業者もいますから。
例えば溶接。
図面には、密閉度が要求されている。
そういう密閉度が要求されるような仕事で、密閉性を出さない。
とりあえずつけてみた程度の仕事をする。

なんでそんな仕事をしてしまうのか、理解に苦しみますけど。
そういうクレームがついた仕事がうちに回ってきたりする。
これどうしたらいいんですかって。
そういう業者に出す方も出す方という感じもありますけど。
ちゃんと見極めないといけない。
付き合いのある所から流れてくる。
クレームついちゃったんだけど、どうすればいいんですかって。
出す方も出す方という感じがありますけどね。

それでうちにその仕事が回ってきたり。
どこかで失敗しちゃったようなものが、うちによく流れてきますよ。
うちはちゃんとした仕事をしますからね。
そうすると、その仕事が次からはダイレクトに回ってきたりします。

溶接に限らずですけど、全体的に色んな所を良く知っていないといけない。
とはいえ、私もようやく少しわかってきたというところかもしれません(笑)

信頼関係に関して言うと、お金の支払いはとても大事です。
これは信頼の基礎です。
自分の給料がとれなくても支払いはしなくてはいけない。
お願いした仕事にきちんとお金を払えないところとは、信頼関係を結べませんね。


『東京町工場』(中経出版)を拝見しました。武夫さまはなぜ板金で創業されたのでしょうか。

武夫氏

最初は板金ではなかったんですね。
細かいことはその本を読んでいただくとして(笑)

20歳くらいのときにゴーカートをやっていたんです。
そこでエンジンのチューニングなどをやっていました。
結果的にそれが生きたんですね。

アメリカから帰ってきて、長崎で働いて。
その後、東京に戻ってきて、30歳くらいで独立しました。
実家の物置を借りて、工場のようにして。
溶接の仕事ばっかりしていました。

それだけやっていても仕方ないっていうことで、バイクのマフラーを作ったりしました。
そこで板金が絡むようになってきましたね。
鈴鹿の耐久レースにでるようなレース用のバイクのマフラー。
後、集合マフラーが当時流行っていて。
ただ流行りものはいつかピタッと終わりますからね。

だから、いろいろ仕事を探しましたよ。
そういう中で、三鷹市内の業者を紹介してもらったり。
ここまでやってこれたのも色んな仲間やつきあってきた人のおかげ。
ついていたのかもしれないですね。
自分の努力もありますけど(笑)

ありがとうございます。最後に、板金業界全体の課題やあるべき姿について、自由にお話しください。

武夫氏

難しいですね。
二分化していくかもしれないですね。
数もの(量産)をやる方と、極端に職人的な仕事をするところ。

会社の安定のことを考えたら、数ものをしなけれならない。
でも、今の世の中、誰でもできるような仕事は少しでも安い方に流れていってしまいます。
発注側のメーカーさんが相見積りをして、少しでも安いところに仕事を流すようなこともあります。
しかも、それがグローバルに。

ITの世の中だっていうけど、根本には技術がなければだめだと思います。
日本がつくりあげてきた「ものづくり」の伝統はとても大事だと思う。
確かに機械があればものができてしまうという部分はある。
でも、人間の感性なしにいいものが本当にできるのか。
もっと日本人の感性が前面に出たもの、メイド・イン・ジャパンと胸を張れるもの。
そういうものがなければならないし、仕事をしないといけない。
日本人の持つ勤勉さと細かい気配りを前面に出して。
いいものは世界にいっぱいありますけど、その中でも脚光を浴びることができるような。

うちでも挑戦的なこともしたいですね。
日常的な仕事に追われてしまって、なかなか取り組めないですけど(笑)
ヨーロッパに行くと、手すりにしろ扉にしろ、あっと驚くようなものが普通にあったりする。
100年以上残っていくようなすごい仕事。
ああいうものに自分も挑戦してみたいですね。

雄一朗氏

そうですね。
ただ工場で加工しているだけではなくて、積極的に外に出ていきたい。
取り付けるところまで踏み込んで仕事したいですね。
板金に限らず、門とか扉を取り付けに行く。
自分の中でもあまりはっきりとはしていませんが(笑)

武夫氏

弱々しい後継者が多い中で、うちは安心で。
たとえ、板金業界がなくなっても一人で十分食っていけるだけの力を持っている。
そういう意味では、期待していますね(笑)


まとめ

板金屋だからできることを、自由な発想で具現化。


工場内でとどまるのではなく、積極的に現場におもむく。


確かな技術は、現場でこそ活きるから。


小さな町工場、町の板金屋さん。


引き継がれるDNAがそこにある。


加工技術

  • 板金加工
  • 金属・切削加工

基本情報

代表者名
川﨑 武夫
担当者名
川﨑 雄一朗
従業員数
5名
創業年度
1982年
メールアドレス
info@kawasaki-works.com
電話番号
0422-32-1059

住所

〒181-0015 東京都三鷹市大沢3-3-23

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