快く取材を引き受けていただき、ありがとうございます。御社の事業概要や取扱製品、強みを教えてください。
羽根木氏
当社は2019年2月から始めた汎用旋盤の専門会社ということで 、NCにはない強みを前面に押し出しており、お客様のお困りの特級品であったりとか、小ロット、短納期でお困りのものに対して、汎用旋盤という機械を用いて最小径25パイから最大径1600パイという大口径のものまで取扱っています。切削面仕上がりにも自信があって、それも弊社の強みなのかなと思っています。
汎用旋盤の強みは、スピード感を持って対応できるところでしょうか?
羽根木氏
そうですね。柔軟に対応できるのが一弘の汎用旋盤加工なのかなと思っています。数物であれば3人でやっているので50個ぐらいが限界だと思うんですけど、ある程度数があっても、お客様の方で金額のご承認がいただけるのであれば、お引き受けさせていただくという背景もあります。

お客様より相当好評をいただいてると思うんですが、お客様の満足って何だと思いますか?
羽根木氏
納期ですね。この業界では納期、コスト、リードタイムという言い方もあると思うんですけど、そこを厳守すること。弊社は代表が父親になるのですが、「納期が合わないものは受けない」という代表のモットーがあり、綺麗な仕上がりは当然で、お客様との約束事を一つ一つ守るということが、顧客満足に繋がると考えています。
ありがとうございます。HPでは切粉の出方にこだわるとありますが、どういった理由なのでしょうか?
羽根木氏
これも代表の教えですが、会社のこだわりとしてはバイトですね。バイトと言うのは旋盤に刃物を固定して物を回転して削っていくんですけど、弊社は基本的にチップというものを使いません。チップを使う時もありますが、原則として全てバイトは手研ぎでやります。よく切れる切粉の出方があり、施作物によって出てくる色もあります。出方が良くなかったらバイトを研ぎ直せと言われます。また、ドリル研磨機を使わず、全て手で研いでおり、均等に切粉が出なければ穴を空けさせてもらえないです。

技術の共有はどのようにされているんですか?
羽根木氏
これは数値化ができなくて、ガイドラインにはできないんですけど、それこそ一弘の強みで、アナログなんですけど、見て学ぶ。体得するということですね。ちゃんと手で研いで熱い思いをして、出た切粉を触って体得する。両方兼ね備えて行っています。
現状は皆さんで体得しながら広げていこうということですね。採用活動はされているんですか?
羽根木氏
採用活動はしています。ただ、なかなか難しいですね。最低何年かでも数多くの施作物を体験してもらって、自分で体得してもらうまでは、ある程度日にちが必要になるので。一度やって楽しくなってもらったら、すごい良い仕事だと思います。
やってみないとわからないですよね。
羽根木氏
「3K」っていう言葉があるじゃないですか。「汚い・危険・キツイ」。そのイメージがすごいあって。でも実際は、そうではない面もたくさんあって。スタッフの距離も近いですし、いろんな話も相談もしやすいです。ブルーカラーにはブルーカラーの楽しい部分があって、若い子にはその辺も分かってもらえたらなと思います。今だったら、スタバでスマホやMacを開いたり、僕もそういうことをやっていた人間なんですけど、そこにはそこの良さがあって、一方で、町工場には町工場の使命とか楽しさが存分にあるので、是非一回、機械を触ってみて欲しいなと思いますね。

基本的に新卒を採用しているんですか?
羽根木氏
新卒でなくてもいいですね。むしろ、うちみたいな町工場に1回目で来てしまうと、ほぼ100%僕は辞めると思います。まずはいろんな仕事をされた方で、一回加工もやってみようかなということであれば、風通しはすごい良い会社なので、一度来てもらいたいなと思います。大卒、中卒という線引きは全くないですね。
実際に体験したいという方はいらっしゃいましたか?
羽根木氏
まだないですね。ただ、鋳物屋さんの社長さんとかは、汎用旋盤がどんなものか触ってみたいという声はあります。一度旋盤を触ってみてもらって、物が削れて綺麗な形になったものを見る楽しさはいつでも体験できるように整えています。
今までのお話でもあったように、ものづくりでは「人」がコアな部分になってくると思うのですが、「人」に対する想いについて伺えますか。
羽根木氏
「あなたがいるから私がいて、私がいるからあなたがいる」という考え方は、仕事をもらう側と出す側で一緒なのかな、と最近は今まで以上に思うようになりました。自分一人でできることって何もないですよね。製造業の場合は特にそうだと思いますが、物を作ってくれる人がいて、仕事を出していただけるお客様がいて、それを受ける窓口の人がいて。みんなが主役だと思っています。

会社設立の経緯について伺えますか?
羽根木氏
父親が、悪性リンパ腫というガンになって。今は復活して機械を回しているんですけど。僕も20代のうちに色々していて、7~8回転職しているんです。プラプラしていた中でも僕の中で目標はあって。色々体得してきたつもりではあるんですけど、父親はずっと機械職人なので、対人もあまり上手ではないですし、作り方ではプロなんですけど、一人で何かこんなことしようかなって言った時に、僕は猛反対したんですね。僕としてできることを考えた時に、就職してしまったらサラリーマンとしてもらえる給料があって、家族を養っていくということはできるかもしれないですけど、父親を助けたいなという気持ちは一番強くありました。最後に一番できる親孝行を思った時に、父親が病気が治って、この地球にいるので、その手助けをするために僕は一緒に会社をしようかなと思ったわけなんです。汎用旋盤が美味しいとかっていうのは一切抜きでしたね。父親を助けたい、親子で最後は仲良く会社をやろうかなと思ってやっていますね。
「最終的に起業したい」と言う人はたくさんいらっしゃると思うんですけど、「起業したい」じゃダメなんですよね、きっと。
羽根木氏
ふわふわしてますからね。一つこれに骨を埋める、この道を志すっていうくらいの気持ちは必要ですね。もう僕は機械加工屋で骨を埋めようと思っていて、それくらい熱い思いがないとできないと思いますね。
IT系で働かれていたとのことで、HPを拝見するとHP作成の代行であったりとか、マッチングもやられていますね。これはもともとIT系にいたからでしょうか?
羽根木氏
そうですね。そういう発想があったんですけど、会社としてビジネスをするのはなかなか大変で。機械加工屋さんがメインなので、逆にうちも紹介して欲しいですね。そういう立場なので、そういうサービスも展開していけたらなというビジョンを持っていますけど、今はとにかく汎用旋盤機械加工一本でやっています。事業目的には入っているんですけど、やはり父親と一緒に汎用旋盤機械をやるんだというのが一番の仕事です。
今力を入れて挑戦しているところはどういうところでしょうか?
羽根木氏
一度一弘で加工してもらって、仕上がりを見てもらって、お付き合いさせて欲しいというのがビジョンですね。うちも汎用旋盤を受け継いでいくためには、人を育てないといけないので。お仕事を頂戴してスタッフを入れる状態を3人で作って、みんなで汎用旋盤をいっぱい回してやっていきたいないというのが端的なビジョンですね。
最後に、金属加工業界の課題について教えてください。
羽根木氏
やはり若い職人の育成ですかね。職人さんって機械と呼吸を合わせて今までやってこられて、機械との調和はすごいですけど、対人の面でいろんな課題を抱えているのかなと思います。一人親方みたいな感じじゃなくて、会社として職人を頑張って育てているから、その中で一緒に頑張っていこうという雰囲気作りをする必要があります。機械加工職人という括りをなくすことが必要ですよね。旋盤する人もエンジニアなんですよ。そういう気持ちで仕事を見てもらったら、離職率も減ったり、自分の仕事に誇りを持ってもらえると思っていて、そういう見方のチェンジをしていきたいなと思います。一弘で働いてるけど、一弘の誰々ではなくて汎用旋盤職人の誰々がいる一弘になってもらえたらと本当に思っています。

まずは一度、一弘で加工した仕上がりを見てもらいたい。
洗練された技術の裏には妥協しないこだわりと羽根木氏の強い思いがあった。
受け継がれた技術を残しながらも常に新しいものを求めている。
今後も進化し続ける一弘に注目したい。