有限会社樋口製作所

フットワークの軽さが魅力

有限会社樋口製作所について
川崎市宮前区に、実行力に強みを持つ加工メーカーがある。

有限会社樋口製作所だ。

公共の照明器具の部品を中心に板金、プレス、絞りを行う。

設計段階からの積極的なVA・VE提案を推進。

有限会社樋口製作所が抱える課題とは。

今回は、常務取締役の金子康子(かねこ やすこ)氏にお話を伺ってきました。
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快く取材を引き受けていただき、ありがとうございます。まずは、御社の沿革と事業内容を教えてください。 

金子氏

弊社は、父がたちあげた会社です。
創業は昭和40年で、5年ほど個人事業主をした後に、45年に会社として設立しました。
プレス加工が始まりです。
今駐車場になっている場所を板金にして、景気が良かったので綾瀬にも第二工場を作りました。
その後、綾瀬をたたんで、板金を集約しました。
父が亡くなったあとに、弟が会社を継いでやっています。
長女の私が先に入社し、最初は簡単な事務からはじめ、現場の仕事もやっていました。
今は、CADがメインの仕事になっています。
弟は35歳の時に社長に就き、15年くらいやっています。
継続的な案件は、金型がありますので、プレスが結構多いんです。
板金は、1回限りの単発が多いですね。
2万個とか2万5,000個の受注も、この間もあったのですが、板金だとやりきれないんですよね。
1回限りにしても、プレスと板金と、うちは両方できるので。
金型を起こして、金型代も2万5,000個という中で償却できるので、納期を間に合わすこともできます。
切り口が綺麗で、品物も綺麗に納めることに、今は徹底しています。
1個2個のものにしても、2万個というときにも、専用の段ボールをつくったりして、出荷までの綺麗に並べる梱包作業を、単価に反映させないでやっていますので。
丁寧で、安くて、フットワークが軽いのが強みです。
社長も何かあると飛んでいきますので。
今日もメッキ屋さんの方に出ています。

御社で、金型も自作されるんですか。

金子氏

金型は外注さんにお願いして、やっています。
弊社は協力会社さんが多く、そこの社長も二代目、三代目で、うちの社長と同じくらいの年の方が多いので、プライベートでもお付き合いして、仕事もスムーズにいっているところはありますね。
値段が抑えられるように、相談しつつやっています。
金型代が30万40万の場合、1個2個のものつくるのには向いていないんですけど、2万個の場合に、板金でやると、小さいものでも1個400円とかかかるものが、プレスでやったら10円20円になるので。
差額で、金型代を償却したりとか。続きものに関しても、板金も続きものであるんですけど、金型は得意先の資産になってるものなので、償却したら返す作業があるんですけど。
それとはまた別に、プレスでやった方が早いし、ずっと続くものに関しては、自分ところで負担して作りましょうかと。
相談してなんですけどね。
向こうは、単価さえ決まってしまえばというところがありますので。



金型は、御社内で保管されているんですか。

金子氏

大きなものでしたら、別のものにつくり変えたりとか、スクラップにいったりもします。
ずっと置いておくにしても、置き場も限られていますので。
終わる部品に関しては、返したいのですが、上の会社から、まだ出るかもしれないから置いておいてと言われます。
管理費をいただいてないのですが、そんな理由でたまってしまって。
あまりにもたまると、リストを出して、償却してくださいとお願いするんですけどね。廃棄したいと。
もともとは、新幹線や野球場などの公共の照明器具の部品を取り付ける金具をメインにやっていまして。
その手の仕事を多くいただいています。
その仕事をいただいている会社は、元々、横浜に本社があって。
父の代からのお付き合いで、もう何十年も続いています。
新規のお仕事は今の単価ですが、昔からやっているものに関しては、安価なものもあります。
計算するのが怖いから、減価償却はしないんですけど、他で償却すればいいと全体的に考えています。
その会社から、「こういう感じに変えたいんですが、どうですか」って、うちの社長に改造するのに一応相談があって、社長が設計の方と打ち合わせしてきて、つくっていく作業をしています。

提案も含めて、フットワークの軽さが御社の強みなんですね。

金子氏

フットワークは軽いと思います。
大手の設計に呼んでいただき、社長の知恵を貸して欲しいということもありますので、そういう知見はあるんじゃないかなとは思うんですけどね。

社長は入社される前は、別のお仕事をされていたのでしょうか。

金子氏

卒業してから、2、3年違う会社で修行していました。
入った先の社長も、次は営業の勉強させて、ゴルフとかそういうのを覚えさせてから帰しますって言われていたんです。
ところが、向こうに行ったら帰ってこないんじゃないかって、父が心配になったらしく。
無理やり呼び戻したのが、23か24の時でした。
もう25年くらいはやっていると思うんですけど。
社長になったのは、35歳くらいです。

入社されてからは、どのようにお仕事をされていたのでしょうか。

金子氏

現場主義で、見て覚えてっていう感じで仕事をしていましたね。
へら絞りの機械があるんですけど、へら絞りの方が高齢でお辞めになる時に、長年使ってきた機械を捨てるのは忍びない、持って行きなよと言われて。
ちょうど建て替えのタイミングだったので、いただきました。
へら絞りがないとつくれない仕事があるもので、親会社の仕事をするために、機械をうちに持ってきて、そのおじいちゃんがうちでやってたり。
うちの社長も2年くらいは通って、へら絞りを覚えて、そこの会社のものに関してはできるようになったので。
もう10年くらい経ちますけど。
新規のへら絞りをやってくれっていわれたら、分からないですけど、大したものでない限りは、いろんなことをやっています。
この間入った従業員にも一応教えて、並行してつくっていかなきゃいけないので大変ですけど。




従業員の方は、何人いらっしゃるんですか。

金子氏

今は2人ですね。
昔は10人20人いたんですけど、バブルがはじけ、ちょっとずつ減って。
今がベストです。
ちょっと前までは、入ったり出たりって感じで。
間に合っている状態なんですけど、突発的な受注が増えてますので、1人入れないと間に合わないんじゃないかなと。
社長もこうやって外に出ることも多いので、今年、1人入れたんですね。
技術的なところはまだ全然ですけど、今は覚えている最中です。
簡単な作業なので、1回教えたら、私でもできるような仕事も結構あるので。
例えば、ネジ切る作業とかだったら、ここの穴に間違えなければ。
ただ、単純な作業なので、例えば穴を5個あけなきゃいけないところを、流れ作業の中で1個忘れるとかいうことが、あってはいけないので。
今、有線がかかっていたと思うんですが、飽きないように、先代の社長が有線引いたんです。以前はカセットだったんですよ。
カセットを裏返したりとかの作業が、手間になるってことで有線を引いたんです。
単純作業なので、飽きないように工夫してやってはいます。
工場で、有線が流れているところは、あまりないと思うんですけど。
一見不真面目みたいに思えますが、半日ずっと同じ仕事しなきゃいけない時、少しでも気分転換になればっていうことで。
単純に同じことばかり、黙々とやる仕事が多いんですよ。
板金は、こっちに行って、あっちに行って、機械で抜いたやつをこっちやって、いろんなことをやれば、あっという間に時間が過ぎたって感じです。
今日の仕事は有線かけた方がいいかなって、使い分けてはいます。

板金とプレスのお仕事の比率は、どのような割合でしょうか。

金子氏

金額的な割合は半々くらいなのですが、量としては、板金の方が増えてきてますね。
なので、続きものがないですよね。
逆にいつくるか分からないし、来月あるのかどうかも分からないっていうものが多いですよね。



試作品のお引き合いもありますか。

金子氏

そうですね、試作はありますね。
リーマンショックよりも前、中国が今のような景気でない時に、プレスものは、大量に中国の方に持っていかれて、金額が変わってしまったんです。
ダイカストが増えてきちゃうと、部品をつくらなくても、形になっちゃう。
そういうものが主流になって、どんどん減ってきて、今はもう半分くらいですね。
新規の会社様と取引することができるようになってから、板金がすごい増えて。
ただ、1回つくったものってリピートがほとんどないですね。もったいないというか、データを1回しか使わないので。

CADを起こしたりといったお仕事が増えているんでしょうか。

金子氏

今はCADがメインで、ありがたいですね。
昔はCADがあっても、図面を自分で書くと間違えることもあるし、できてから図面見て、違うということもあったんですけど。
今はDXFデータがあるので、そういう間違いもほとんどないし、データづくりは早くなりましたね。
ただ、CAMになると、私がCADで展開したりとかするんですけど、一応自分なりに金型はこれで大丈夫と聞くと、社長がこれはだめだよっていうので。1回見てからじゃないと、機械に通せないというか。

御社の今抱えられている課題や取り組みについて、教えていただけますか。

金子氏

設備投資ですね。
結構案件はくるんですよ。
でも、うちで対応ができないものは、協力会社さんにお願いしている状態なので。
そうすると、これが自分のところで、できたらいいのになっていうのがあって。
でも、機械を買うとなると、例えば1個のレーザー機や複合機を買っても、それに伴うベンダーもセットで買わなきゃいけない。
億になってしまうので、ちょっと躊躇しちゃって。
最悪返せなくなったら、ここは自分の土地で、借りている土地じゃないんで、売っちゃえばいいよね、みたいな気持ちにならないと買えないのかと。
今年から、そういう仕事が増えてきたので、様子見て少しずつ貯金をしています。
あとは、補助金をコンサルさんに頼んでいます。
でも、100万とかかかるんですよね。
コンサルさんも使ってでないと、そういう補助金って通らないのかなって。
そういうところが課題ですかね。
今、外注にかかっているお金で買えるんじゃないかなっていう気もあるんですけど。
試作が多いので。
うちなんか、昔の試作の料金じゃないんですよね。
昔は1万、2万とかだったんですけど、材料費に加工賃を乗せたぐらいでやってるので、逆に仕事もくるんですけど。
でも、試作屋さんにしてみたら、そういうところが出てきたら、まずいんじゃないかなって業界的には思うんですけど。
うちは試作屋さんじゃなかったので、今仕事をいただいている会社さんは値段が決まってるんですよ。
今までは、図面がきて、見積もりして、それで通ったらうちにくるということだったんですけど、今は受注体系としては、大体金額が決まってるんですね。
それで、これでできるか、できないかっていう。
逆に、一から見積もりするのとは違って、材料費だけ計算して差額引いて、これはだめだなとか、例えば1,000円できたら2,000円以上じゃないとできませんよって、通ったらいいんですけど、通らないとそれで終わりで。
結局、安くてもやるところがあるんですよね。
なので、あんまり高い設定できないのかなって思います。
そこの会社さんは、案件はいっぱいあるんだけど、ひたすら安くやってくれる会社を探す方針らしくて。
うちも、値段が合うものに関しては、そこでやります。
だけど、そこの会社がずっと期待できるかって言うと。
そこの会社さんでやった分は、貯められればいいかなって。
来年から、また新しい仕事が決まりまして。
そこの会社さんは、昔からお付き合いがあったので、新規の部品が結構あるっていわれて。
板金なんですけど、継続的なものなので、少しは考えられるかなと思っています。

ファイバーレーザーなどの設備導入をお考えなのでしょうか。

金子氏

ファイバーレーザーだと、億になってしまいます。
ただ、将来的なことを考えたら、今更複合機だったりレーザーを入れるよりは、一歩先をいかないとだめなのかなって思います。
ファイバーレーザー機を入れるとなると、うちの敷地では入らないんですよね。
駐車場潰したりとか、売ってどこか別の場所に移るとか、そういうことをしないと間に合わない感じなので。
小型が出ればいいのに、と思っているんですけど。
うちに入るような複合機でも、それでも、7千万円とかです。
それに、ベンダーとかを入れたら、億になっちゃうのかなって。
ちょっと躊躇しますよね。
一桁違えば全然違うとは思いますが、大体10年くらいで返さなきゃいけないから、いくら払えばいいんだろうなって考えて。
そこが一番の課題ですよね。
倉庫を借りるにしても、家賃が何十万円ってかかるじゃないですか。
そこもネックですね。




  まとめ

  先代からの昔ながらの職人仕事を継承。


  確かな技術力とノウハウの蓄積により、案件が増加。


  さらには、値段と対応力により勝負をかける。


  有限会社樋口製作所は、より良い明日を目指す。


加工技術

  • 板金加工
  • 金属・切削加工

基本情報

代表者名
樋口鉄也
担当者名
樋口鉄也
従業員数
2名
創業年度
1970年
メールアドレス
info@higuchi-ss.co.jp
電話番号
044‐766‐0711

住所

〒216-0001 神奈川県川崎市宮前区野川2278

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