榛木金属工業株式会社

銅を加工して90年

榛木金属工業株式会社について
大阪府東大阪市に銅の加工に絶対的な強みをもつ金属加工メーカーがある。

榛木金属工業株式会社だ。

銅をメインに非鉄加工を大正5年から手がける。

材料が持つポテンシャルを追い求めて、業界横断的に仕事をする。

今回は代表の榛木博章(はりきひろあき)氏にお話を伺ってきました。
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快く取材を引き受けていただき、ありがとうございます。まずは、御社の事業内容や強みを教えてください。

榛木氏

弊社は、銅を専門的に扱っている金属加工メーカーです。
銅という材料は、鉄のように価格があんまり安定していません。
そのため、価格の上下に合わせて、受注を取るような形で事業を展開しています。
仮の売り上げ目標を立てて、一定程度の利益を絶対に確保するような形で動いています。
従業員の人数は、40名程です。
創業は、大正5年。
今のこの東大阪の工場ができたのが、昭和42年です。
ここもかなり古いのですが、それでも52年くらいですね。
お座りいただいている椅子も同い年ですね(笑)

創業の当時から、鉄をメインにではなく、非鉄をメインに扱ってきました。
主に、真鍮、銅などですね。
創業当時から、様々な苦労があったのですが、おかげさまで非鉄の加工技術をずっと積み上げてくることができました。
非鉄素材を使用した板金加工をする部門と切削加工をする部門。
その両方を、一つの工場で実現できるようになっています。

一番おつきあいをいただいているのは、蓄電池の会社さまです。
蓄電池といっても様々な業界があります。
弊社は、その中でも一番古いと言われている鉛蓄電池業界さん。
こことの結びつきが一番強いです。
売り上げの構成比率の割合も、そこが一番多いです。


ありがとうございます。電池メーカーさま以外ではどのような業界とのお取引が多いのでしょうか。

榛木氏

弊社は、銅に特化してしていますので、電気機器メーカーさまとのお取引も多いです。
銅は、電気をよく通しますので。
とはいえ、弊社が銅という金属の可能性を追究しきれているわけではありません。
例えば、水質を改善するために、銅素材を使用されているお客さまもいらっしゃいます。
そういう可能性もあるんですね。
あとは、医療産業や電車、リニアなどの車両もの。
それ以外でも、割とニッチな分野に商材を納めることもだんだんと増えてきました。

なるほど。冒頭のお話にあった、銅の価格の話についてお伺いさせてください。

榛木氏

銅の値段は、LMEというものがごさいまして、そこで価格が発表されます。
通常は、鉄と同じで需要と供給のバランスで、ある程度価格が決まります。
銅自身は、世界中でまだまだ枯渇していない金属の一つではあるのですが、様々な用途で使われているために、安定した需要があるんですね。
ただ、昨今は投機アイテムの一つにもなってきてしまっています。
金や銀と同じように、投機の動きに連動して、上がったり下がったりしています。
投機として、お金を入れている投資家が多いのが中国。
ですから、中国の景気に若干左右されやすい点もあります。
そういう意味で、銅に特化するのは若干リスキーな面もあります。
ただ、弊社には創業当時から積み上げてきたノウハウがあります。
リスキーな部分があるからこそ、強みにもできていると考えています。


ありがとうございます。どうして、創業当時から非鉄を扱われたのでしょうか。

榛木氏

お客さまから、そのような材料を使用した製品を供給して欲しいという要望があったようです。
創業者がお客さまのニーズに応えるという形で始めたんですね。
手がけ始めたら、仕事が徐々に増え始めて。
それが、ずっと続いてきているんです。
とはいえ、大正時代には今と比べて、価格がずっと高かったと聞いています。
資金繰りの面で苦労したようです。
そういう苦労を乗り越えてきて、今の会社があります。
こうやってきちんと残っているということは、結果としていい選択だったのでしょうね。
お客さまのニーズに真摯に向き合ってきたことが、良かったんだと思います。
今でも、創業当時からのお付き合いのあるお客さまがいらっしゃいます。
人間的な信頼関係の部分を大事にしてきたことが、こういう強いご縁につながっていると思います。

なるほど。今、お話に出たように、ものづくりには、人の部分も重要だと考えています。御社の人の部分についてお話を伺わせてください。

榛木氏

本当に様々な人がいますね。
採用しようとしても同じような人を採用できません。
弊社では、それぞれの個性を大事にするように意識しています。
ものづくりは、お客さまからいただいた図面を形にする仕事なんですけど、その人その人が持っている個性みたいなものが出るんですよ。
だから、人間的に良いものを持っているといいものができる。
逆に、ネガティブな考えのもとに仕事をすると、いいものはできません。
これは基本的なことですが、ポジティブな考えを持って仕事をしてもらうように心がけています。
もちろん、人間には良い部分と悪い部分があります。
その中で、できるだけ良い部分をだして仕事をしてもらいたい。
そういう意味で、能力と熱意のある方にポジティブな考えのもとで仕事をしてもらっていますね。

弊社は、経営理念に3つのことを掲げています。
1つ目が、「互いに感謝し、啓発し、皆の輝く未来のために挑戦します」。
これは単に仲良くしようということではありません。
お互いがいて、初めて自分の仕事が最後まで成就する。
だから、お互いの存在に感謝して欲しいんですね。
もちろん、正しいことは正しいし、間違ってることは間違っていると言えなければいけません。
お互いが切磋琢磨して、成長しあって欲しい。
そういう意味を込めて「感謝し、啓発し」ということを入れています。
何のためにそのように仕事をするのか。
それは「皆の輝く未来のために挑戦」するためです。
それが、1つ目の理念ですね。

2つ目は、シンプルなもので「お客様からありがとうと言っていただける優れた製品をつくります」です。
「お客さまからありがとうと言っていただける」というのは、皆がそれぞれの立場で具体的なイメージを持つことができますよね。
どうしたら、ありがとうと言ってもらえるのか。
個々人が日々考えながら、ものづくりをして欲しいと思っています。
自分だったら、こうしてもらった嬉しい。
そういうことを考え抜いて、お客さまに「優れた製品をつくります」。

3つ目が、「ものづくりの素晴らしさを伝え、社会に貢献します」です。
これは、従業員がものづくり集団の一員として、自分の仕事に誇りを持ってもらいたいと考えたんです。
ものづくりに、自信と誇りを持って取り組むことは、立派な社会貢献だと思っています。
もちろん、社会貢献には色んな形がありますよね。
その中で、我々はものづくりを通して社会貢献する。
我々が、製品を提供することで世の中が良くなっていくと考えています。
この3つを経営理念に入れています。



ありがとうございます。技術的な面もお伺いさせてください。これまで、手がけてきたお仕事の中で困難な加工であったり、難しかったお仕事などございましたら、お伺いさせてください。

榛木氏

数えきれないくらいありますね(笑)
ただ、弊社が提供するお仕事って、結局お客さまあってのものです。
ですから、自分たちがいくらいい仕事をしたと思っても、その先にいるお客さま、ユーザーさまに喜んでもらえなければいけません。
わかりやすいところでは、どんなに品質がよくても、コストが高くなっては意味がありません。

もちろん、ものづくりにはこだわります。
ただ、商品に関しては、我々の力だけでは、解決できない問題が含まれています。
非常に苦労して、その商品をつくるところまでもっていった。
ただ、実際には、それが1年も経ずに注文が終わってしまうこともよくあります。
市場に出ないまま、お仕事が終わってしまうこともあります。
そのような中で、重要なのはものづくりにかける情熱の部分。
難しいものに、果敢に挑戦していくマインド。
そういうものをきちんと持っていれば、上手くいかないことがあってもきちんと対応できます。

これに関連して、今年スローガンを3つ掲げています。
その1つ目が、「能力の可能性を信じよう」なんです。
今見えている能力だけではなくて、これから開花する可能性のようなもの。
たとえ、失敗したとしても、自分にはまだ可能性がある、この会社には可能性がある、この事業には可能性がある。
そう信じれば、必ず前に進んでいけると思っています。
ものづくりをする上で失敗を避けることはできません。
ただ、そこで立ち止まっていても仕方がありませんからね。

ありがとうございます。今新しい取り組みとか挑戦されていらっしゃることなどございましたら、お伺いさせてください。

榛木氏

できるだけ多くの従業員に、責任と権限の両方をもって、仕事をしていただきたと考えています。
責任は、立てた目標を遂行していく責任です。
権限は、それを成し遂げるために必要な予算を使う権限です。
弊社は、ちょっとしたものであれば、すぐに購入できるような仕組みをつくっています。
すぐにアクションを起こせる一方で、それだけ自発的に判断をしなければいけません。
もちろん、失敗することもあります。
でも、そこできちんと反省して学ぶ気持ちがあれば、それはポジティブな失敗になります。
そこから、再度チャレンジすることができます。
そのような仕組みをつくって、10年くらい経ちました。
徐々にですが、そのような仕組みの中心になってくれる人がでてきています。
そういう人をリーダーに、会社の核になっていけるようにしたいと考えています。

このような仕組みをつくったことで、会社全体で小回りが利くようになってきました。
例えば、ロボット一つ入れるにしても、既存のロボットをただ買ってくるようなことはしません。
こういうロボットの動きができないだろうか、と考えて自分たちである程度シミュレーションする、打ち合わせをする、そしてオリジナルのものをつくっていきます。
そういうことができるのも、弊社の強みだと思っていますね。
生産工程の管理も同じでして。
自分たちが、やりやすいような形に改善していけるように、自分たちでつくる。
そこから、何か課題がでてくれば、バージョンアップしていく。
どんどん更新していくことで、より使いやすくしていく。
こういう会社のマインドとか仕組みのようなものは、なかなか目には見えにくいものです。
ただ、こういう機械を入れましたっていうよりも、会社の強みになってきているように思っていますね。
ですから、何に挑戦しているかと言えば、弊社はそういうことに挑戦していますね。


ありがとうございます。最後に大きな質問になってしまうのですが、板金業界全体や金属加工業界全体の課題などございましたら、是非お伺いさせてください。もちろん、御社の課題でもかまいません。

榛木氏

一時大変な時期が、弊社にありました。
なんとか乗り越えはしたのですが、なぜそういうことが起きたのかよくよく考えてみたんです。
で、業界という括りで仕事していたことがよくなかったのではないか、と思いました。
よく何々業界って言いますよね。
業界って、どうしても業界全体が一気にダメになってしまう時期というものがあります。
そういう時に、弊社はこの業界でやっているのだからと変な括りを持っていると、そこから抜け出そうと思っても、抜け出すことができません。
当たり前のことですが、業界全体が悪い時期に、そこのお客様からいい条件でお仕事いただくことなんてできません。
そういう時期に話にでるのは、コストダウンばかり。

でも、この業界でやっていくと決めてしまっているのは、我々の勝手な考え方で。
別にある業界に限定して仕事をしなければいけないというルールはありません。
ですから、我々はこの業界という括りではなく、銅加工というところに特化して。
特化していくことで、業界を横断して仕事をしていきたい。
そのように考えたんです。
ただ、そのためには、もっと銅というものの可能性を勉強しなければいけません。
銅を使ってみようと考えているお客さまはどのような業界にいらっしゃるのか。
その中にどのような部門があるのか。
積極的に勉強していこうと思っています。
そういうことがわかってくると、我々の社会というものがどういうものであるのかもわかってくるような気がしています。
そして、どういうところにどのようなものが広がっていくのか。
鮮明に見えてくると思っていますね。
弊社のこれからの課題で、積極的にチャレンジしていきたいところですね。


まとめ

銅をメインとして非鉄素材を。


1つの工場で板金加工と切削加工で形にする。


材料が持つポテンシャルを追い求めて。


自分たちのポテンシャルをも解き放つ。


榛木金属工業株式会社は、「皆の輝く未来のために挑戦」する。

加工技術

  • 板金加工
  • 金属・切削加工

基本情報

代表者名
榛木 博章
担当者名
榛木 博章
従業員数
40名
創業年度
1916年
メールアドレス
mail@hariki-net.co.jp
電話番号
06-6744-2735

住所

〒544-0002 大阪府大阪市生野区小路1-19-1

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