布施金属工業株式会社

アルミ職人工房FUSEKIN

布施金属工業株式会社について
大阪府東大阪市にアルミのたたき板金に強みをもつ板金加工メーカーがある。

布施金属工業株式会社だ。

一品もの、試作ものに強みをもって50年。

昔ながらのたたき加工でアルミを加工する。

レディー・ガガの衣装も手がけた実績。

今回は代表取締役の西堀広希氏にお話を伺ってきました。
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快く取材を引き受けていただき、ありがとうございます。まずは、御社の事業内容や強みを教えてください。

西堀氏

弊社は、アルミに特化した板金・製缶業を手がけています。
製品としては、主に変圧器メーカーさまのシールド関係、保護カバー。
箱物もよく依頼していただきますね。
その中でも、浮き輪のような形をしたコロナリングと呼ばれるもの。
それを、昔ながらのやり方で叩いて板金をしています。
自動車板金の叩きによく似ています。
金型を使用しなくて済みますので、単品ものにはとても有利なものづくりをさせていただいていますね。

弊社が手がけている、変圧器メーカーからの依頼されているものは、高圧電流をかける製品のパーツになります。
一般的に、板金屋さんは、鉄とかステンレスのような材料を、抜いて、切って、曲げて、溶接する直角ものを手がけることが多い。
変圧器メーカーでそれをやってしまうと、直角の先からパルスが出てしまいます。
ですから、製品は必ず丸く、角はRにするものが多いです。
そうなってくると、叩いてものを曲げる方が溶接個所も少なくて済んで、効率もいい。
そのような加工方法を続けていたら、別の観点からの仕事が舞い込むようになってきて、今に至ります。

ありがとうございます。今、いただいたお話を伺う限り、絞り加工に近いように感じるのですが。

西堀氏

絞り加工とほぼほぼ一緒ですね。
へら絞り加工ってあるじゃないですか。
あれとプレス加工。
あの2つは必ず金型が必要になってきます。
それつくるだけで2、30万。
大きくなれば、100万、200万かかってしまいます。
毎月100個、200個の納品ができるようなものであれば、そういう金型を使用した方が、単価が安くなります。
でも、1個しかいりませんという場合には、金型でつくるわけにはいかない。
そういうところで、お客さまが検索かけて弊社の「金型不要」っていうホームページに依頼が来るような形ですね。

今、手がけているものでいえば、北海道の農協さんからりんごようなオブジェの依頼が来ています。
つくれますよ、って言って見積りを出している状況ですね。
そういうオブジェ系の注文も多いです。
遊び心あるお客さんでしたら、アルミでポストを作ってみたいとか。建築士やデザイナーさんからの依頼もありますね。

なるほど。人間が叩くというところで精度のようなものはどうやって出すのでしょうか。

西堀氏

慣れのようなところがありますね。
同じ道具、同じ汎用金型を使用しても、叩く人の癖とか力の入れ具合で、同じものはできないんですよ。
とはいえ、きちんとしたゲージはあります。
そのゲージ通りに1回でできる人もいれば、2回、3回とやらなければいけないような人もいます。
だいたい3年でちょっと仕事を任せることができるようなイメージです。
そこから、どんどん積み上げていって、5年、10年でやっと一人前のような業界ですね。

ありがとうございます。ものづくりには人が欠かせないと感じています。御社の人に対する思いみたいなところをお伺いさせてください。

西堀氏

そうですね。
なかなか人が継続していくのが難しい世界でもあって。
僕より若い方もやめていますが、次の世代を任せられる人間をきちんと育てないとだめですからね。
意識しているのは、会社が楽しい仕事をしていることです。
仕事を通して、自分の腕が上達したって思えるような案件も含めて。
弊社の場合、ロット数の多い仕事はまずきませんので、機械的な作業というものはありません。
ですから、仕事を任せると、「これを任せてもらえた」とか「こういうことができるようになった」とかそういう声を聞くことができます。
一人一人が成長を感じることができるような会社にしていかなければいけないと思っています。
その延長線上で、次世代を任せられる人間が出てくればいいなと思っています。

弊社でいえば、去年代が代わったばかりです。
ですから、後継者の問題よりも技術継承の方が課題として大きいと考えています。
どうやったら、若い人間に技術を継承していくことができるのか。

なるほど。今までで困難だった案件や、苦労されたお仕事などございましたら、お伺いさせてください。

西堀氏

これは加工の仕事ではないのですが。
たまにテレビ取材の依頼などがあるんです。
でも、弊社のつくっているものって、なかなか視聴者の方に理解してもらいにくいものばかりで。
設備関係の製品が多いものですから。
で、面白くないのでボツをくらいまして。
それは本当に悔しかったです。 

実際に取材に来られたのでしょうか。

西堀氏

電話での取材でした。
ただ、「何を作ってますか」って言われたときに、「電圧機の機械の一部です」としか言えなかったんです。
じゃあ、つくっている工程をVTRで見せても、なかなか何をつくっているかわからないだろうな、ということになって。
ただ、それが一つのきっかけになったというか、自分の中でスイッチが入ったんです。
もっと、みんなにわかるようなものづくりをしたい。
幸い板金屋だったということもあって、先ほど述べたオブジェも含めてかかわることができるようになりました。

ありがとうございます。個人のお客さまというのはリピートにつながりにくかったり、単価もけっしてよくないと伺っているのですが。

西堀氏

そうですね。
ただ、わらをもすがる思いで、仕事が欲しかった時期などもありまして。
最近は減ってきたのですが、自転車の修理なんかも「これで商売ができるのではないか」っていうくらい、頻繁にお声がけいただいていた時期もありました。
でも、自転車って言ったら、かさも大きいし、修理もちょっと溶接するくらいのことで。
知り合いからも「効率がよくないのではないか」とよく言われていました。
ただ、お客さまにとても感謝してもらえるんです。
中には、自分が見たことがないような年代ものの自転車を持ち込む方もいて。
アルミ製のロードバイクがあって、「どの自転車屋さんでも修理してもらえなくて、泣く泣くここにたどり着いて」って。
それで、「直せますよ」って言って直したら、本当に喜んでいただけたんです。
ご自身で組まれて、その組んだものを写真で送ってくれたり。
そういうのって嬉しいですよね、やりがいがあって。
自分も嬉しいし、自分ができるようになったら、別の職人さんに任せると、その職人さんも同じような喜びを感じてもらえて。
アルミ加工の駆け込み寺になったのかな、っていうくらいの時期がありまして。
仕事の主力にはできないのですが、そういうポジションというか仕事を引き受けてもいいのかなって思いました。
で、ブログとかインスタとかにアップしていたら、それを見てくださったお客さまから連絡が来るようになりました。

レディー・ガガさんの衣装をつくったことがあると伺いました。

西堀氏

直接レディー・ガガから依頼がきたのではなくて、私が取引してたデザイナーさん経由でお話が来ました。
そのデザイナーさん自体が奇抜な衣装を作っていらっしゃいまして。
その衣装を見て、依頼が来たみたいです。
そこから、「こんなん作ってほしいねん」ってお話をいただきました。
そのデザイナーさんとの縁も、ホームページを見て、問い合わせをいただいたことから始まりました。
8年くらい前のことですね。

その時、デザイナーさんの事務所で言われたことがとても印象的で。
「製造業者のホームページ見て、問い合わせフォームのところにいったら、何でもやりますって書いてあるのに、全然会ってくれへん。デザイナーっていうだけで全然会ってくれへん」って。
「でも、布施金属さんは、メールして電話したら、事務所に来てくれた」って。
実際に打ち合わせをさせていただいて、私どもは図面を見て、つくれる、つくれないを判断するのですが、デザイナーさんなので出てきたものがイラストでして。
どうしようか迷ったのですが、せっかくお話までしましたので、「考えて実現できるか、検証してみます」とお答えしました。
色々苦労はあったのですが。
打ち合わせを繰り返しながら実現させました。
そこから、お付き合いが始まりまして。
「こんなんはできますか、あんなんはできますかって」(笑)
デザイナーさんが出されている、春・秋のコレクションがありまして、それに出させてもらっていました。
皮とアルミを使った衣装をつくってらっしゃたりして。
その胸の部分やお尻の部分を板金で手がけさせてもらいました。
その延長線上で、レディー・ガガさんのお話が来たんですね。

芸術性の高いものを製作する場合、加工や強度の問題など実際の現場では、難しいことがありそうです。

西堀氏

そうですね。
でも、それって裏を返せば正解がないってことなんですよ。
だから、実際にものをつくってみて、それをデザイナーさんに見せる。
そうすると、「ここはこうしてほしい」って注文があったりする。
じゃあ、どうしたら実現できるかって考えて。
そういう臨機応変さとか柔軟さは求められますよね。
ただ、それはゴールがない楽しさみたいなものがあると思ってやっています。

ありがとうございます。今、挑戦されていることなどございましたら、是非お伺いさせてください。

西堀氏

今までは、製造業者の大きな製品の部品作りを手がけることが多かったです。
その関係で、お客さまも決まっていました。
決まっていたというか、自分でそう思い込んでしまっていたんですね。
でも、ホームページを作ったことで、建築関係の方とか、造船関係の方とか、お客さまからの引き合いが出てきました。
具体的に、こういうことをしようという目標みたいものを立てるというよりも、自分自身の常識の枠を外したいと考えています。
もっと、自分が思いもよらないような常識の範囲外からのお仕事をいただけたら面白いだろうな、と思っていますね。

それと関連しますが、自分たちのもっているものを積極的に発信していきたいと考えています。
例えば、溶接の技術。
機械加工屋さんの場合、機械加工しかできなかったりするけど、板金屋さんの場合は溶接もできるんだ、っていう声を聞いたことを聞きます。
そうすると、溶接が入っている仕事も依頼してもらえるようになります。
溶接だけの依頼も来るようになりました。
情報を上手に発信することで、上手く売り上げを伸ばしていきたいと考えています。

なるほど。最後に大きな質問になってしまうのですが、板金業界全体や金属加工業界全体の課題などございましたら、是非お伺いさせてください。もちろん、御社の課題でもかまいません。

西堀氏

あまりいい言い方ではありませんが、ここ2、3年で勝ち組と負け組がはっきりとでてきているように思います。
勝ち組というのは、自社でオリジナル商品を実現できるような会社。
あるいは、メーカーになろうとしていたり、事業を拡大していいものを安く納めることができるような会社ですね。
そういう会社さんが大口の仕事を取っていらっしゃいますね。
他方で、負け組というのは、今あるお客さまで手いっぱいで「忙しい、忙しい」と言って何もしないような会社。
ふと、ふたを開けてみたら、暇になっているみたいな会社さんはいくらでもあります。
弊社は、どっちかというと中間より勝ち組の方なのかな、と考えています。
でも、経営は下りのエスカレーターに乗っているようなものだと思っているので、もっと頑張らなければいけないと考えています。
時代の流れをきちんと読みながら、かつ回転数を上げていかないといけない、目立たないといけないと考えています。

先ほどの繰り返しになりますが、弊社の課題は発信力ですね。
我々のような規模の会社であれば、不景気になったからといって、仕事が全くなくなるわけではありません。
品質やサービスの部分で向上していかなければいけないので当然ですが、新規開拓や自社のポテンシャルを発揮するには、やはり発信力かなと思っています。
後は時代の流れにどれだけ乗れるのか。
私にはできませんでしたが、IoTとかそういう方向は気になっています。
電気自動車の時代がいつ来るのかわかりませんが、電気自動車が普及したら従来の車のクラッチなどを作っていた加工屋さんは厳しくなるでしょうね。
昔、CDばかり作っていた人がいますが、もうCDは売れない時代になっていますよね。
どんなにスペシャルな技術を持っていても、時代の波に乗らないと行き詰ってしまうということは本当に痛感しています。
その意味では、今ある常識を疑わないといけないと思っています。
自分たちがきちんとエネルギーを持っていれば、できるはずですから。


まとめ

アルミを叩いて50年。


昔ながらのたたき加工で、何でも対応。


自転車の修理から世界的なアーティストの衣装まで。


試作・単品ものなら。


布施金属工業株式会社へ。

加工技術

  • 板金加工
  • 金属・切削加工

基本情報

代表者名
西堀 広希
担当者名
西堀 広希
従業員数
6名
創業年度
1956年
メールアドレス
info@fusekin.jp
電話番号
06-6783-2225

住所

〒577-0062 大阪府東大阪市森河内東2-7-27

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