株式会社栄和産業

ものづくりから社会を変える

株式会社栄和産業について
神奈川県綾瀬市に大物加工に強みを持つ鈑金加工メーカーがある。

株式会社栄和産業だ。

顧客のみならず、従業員、社会に対して誠実に向かい合う。

その試みから数々の表彰を受ける。

今回は代表取締役の伊藤正貴氏にお話を伺ってきました。
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快く取材を引き受けていただき、ありがとうございます。まずは、御社の事業内容や強みを教えてください。

伊藤氏

弊社は、1974年に私の父が創業しました。
40期目で私にバトンタッチをして、現在5期目を務めさせていただいています。
従業員が全部で152名。
今年初旬に工場物件を購入し間もなく稼動します。
工場機能は、全部で11工場を持っているような会社になりますね。

その中でも、主な拠点が3つございます。
綾瀬市に2つ、静岡県の沼津市に1つですね。
沼津工場では、型製作、検査ゲージ。
綾瀬市土棚工場では、深絞り成形、3次元レーザやNC旋盤など。
綾瀬市吉岡本社工場で、溶接、鈑金、仕上げをするような形になっています。
このように工場が点在しているのですが、主要な工作機械はモニタリングをして、本社の方で常時管理をしています。
夜間や休日の無人運転も、スマホのアプリでモニタリングをしています。
遠隔地の沼津工場とは、毎週月曜日の朝礼の際にテレビ会議を行ってコミュニケーションを取っており、綾瀬市内の工場では定期勉強会の実施による社員教育や毎朝のミーティングを実施する事で意思の疎通を徹底しております。
それ以外でも、何かあればテレビ会議で議論が行えるようにしています。

手がけてきた、代表的な製品としては、トンネル掘削車のリアカバー。
今我々が座っている会議用テーブル4台分ほどの大きさがあり、かなり大きいものです。
他にも、鉱山で活躍する大型のショベルカーのエンジンフード。
車で言うとボンネットに当たる部分を、得意とする深絞りプレス加工で製作しております。
基本的に、弊社は大きな製品を得意としていますね。

一年前に、神奈川県から優良工場の表彰を。
綾瀬市からは綾瀬市CSR経営表彰。
経済産業省からは、地域未来牽引企業の表彰をいただいています。


ありがとうございます。大きな製品が得意であるとのことですが、建機以外ではどのようなものをてがけているのでしょうか。

伊藤氏

例えば、バスの行き先が表示される部分ってありますよね。
その周りのカバー部分などを手がけています。
深絞りの技術を使って実現していますね。
大手のメーカーさんのバス部門から依頼をいただいているような形ですね。
都営バス、市営バスなどにも納品させていただいています。
農業機械関係でいうと、トラクターのアタッチメントも手がけていました。
泥除けに使うものですね。
ご依頼いただいたお客さまから、数が少ないので鈑金工法で手がけて欲しいと言われたので、型ではなく、鈑金で手がけました。
型をつくって、プレスでやってしまえば早いのですが、どうしてもコストがかかりますので。
板厚的には2.6ミリあるようなものだったのですが、バーナーであぶってトンテン叩いて製作しました。
その他の製品で415ミリの超深絞りまで手がけたこともありますね。

現在は、やはりショベルカー関連がメインになってきていますね。弊社の全体で見ると、ショベルが7割くらいで、車両関係が3割くらいですね。
弊社でつくったものは、日本のみならず世界中に輸出して使われています。
ショベルカーなら、完成車両を使って世界中でお仕事をして、お給料をもらっているオペレーターさんがいらっしゃる。
オペレーターさんには、当然家族もいらっしゃるでしょう。
ですから、弊社では、世界中の方々が幸せに暮らすためのお手伝いをしてるという気概を持って、ものづくりをさせていただいています。

なるほど。ものづくりには人が欠かせないと感じています。御社の人に対する思いみたいなところをお伺いさせてください。

伊藤氏

平成31年度の求人は、売り手市場と言われていましたよね。
弊社でも、厳しいのではないかと思っていました。
7名の求人を出したのですが、おかげ様で13名の方に内定を出すことができました。
本当に嬉しい限りで、大事に育てていきたいと考えています。

基本的には、高校新卒の方がほとんどですね。
未成年の方を預かるわけですから、立派な成人に成長するように、大事に教育させていただきます。
大卒や養護学校の実習生も受け入れています。
今、お見せしている写真の右側の方は、弊社に最初に来てくださった知的障碍を持っている方でした。
現在は、弊社とは別のところでございますが、無事に就職されました。

左側の方は、同時期に支援センターから実習生として受け入れました。
今は、弊社に就職していただいて、働いてくださっています。
弊社では、中度の知的障碍者までは、問題なく製造スタッフとして一人前に育てることができます。
重度の知的障碍者の方の受け入れも試みています。
実習生を受け入れることにより、我々も気付かせて頂くことが沢山ありまして。
みなさん得手不得手があるわけですが、それは我々もそうですよね。
きちんと得意な場所や強みをだせるところで働いていただくと、高い生産性を発揮します。
意欲の高い人は、やはり伸びていきます。
彼らが十分に力を発揮できるように、作業環境を整えることも大事ですね。


障碍を持たれた方も、戦力として積極的に受け入れていらっしゃる。

伊藤氏

そうですね。
本人たちは勤労の機会を求めて、小さい頃からご家族の方や先生方と大変な努力をされています。
ただ、なかなかチャンスに恵まれない環境であるのも現実です。
私どもにどのような支援ができるのか。
企業ができることは、徹底して門を開き続けることです。
私もかつては、彼らに怪我をさせてしまうのではないか。
どのような仕事であれば、力を発揮できるのか。
そのような懸念から、なかなか一歩踏み切れないままでした。
でも、それではいけないと、今は徹底して門を開いています。
単に実習生を受け入れるだけではなく、弊社のスタッフが障碍をお持ちの方のロールモデルになって欲しい。
そのような気持ちから、一人でも多くの方に彼らが働いている姿を見ていただきたいと思っています。

ありがとうございます。少し話が戻るのですが、他社さまでは、人手不足が深刻だと伺っています。御社が、これだけ新卒採用できるの秘訣のようなものがあるのでしょうか。

伊藤氏

なぜ弊社に入社しようと思ったのか、入社後の新入社員に聞くようにしています。
工場見学をして、働いてみたいと思ったという声が圧倒的に多いですね。
弊社のスタッフの生き方や仕事に取り組む姿勢が、上手く伝わっているのかもしれません。

あと、弊社は定着率も比較的い高い方です。
先ほどの申し上げたように、基本的に高卒の方が多いので保護者の方や、先生方に安心していただけている感じはしていますね。

それから新卒に対してはこだわりがありまして。
弊社は、不景気の時期にハローワークに求人を出したんですね。
というか、出してほしいと頼まれたのです。
平成22年のことですね。
それまでは、即戦力になるような中途の方しか採用していなかったんです。
新卒採用なんて来るわけないっていう気持ちもあって。
いわゆる3Kといわれるようなイメージのある業界ですから。
でも、栄和産業さんなら来るからって言われて。
で、実際に来てくださいました。

その時に来てくれた人間が、ぐっと伸びて、今中堅社員になって、弊社を支えてくださっています。
その時に学んだのですが、景気が悪いときに求人を出すと、結構来ていただける。
ただ、新卒の人間は、翌日からすぐに仕事ができるわけではない。
なおかつ不景気だから仕事も減っているような状況ですよね。
そういう状況で、そういう人たちに給料を支払わなければいけない。
そういう覚悟があれば、新卒採用はできますね。
景気がいいとき、人が欲しいときだけ、新卒採用の募集を出すのではなく、コンスタントに募集する。
そういうことを続けた結果、安定して採用できるような形になっています。


なるほど。これまで手がけられた中で難しかった案件や印象に残っている仕事などございましたら、お伺いさせてください。

伊藤氏

先ほど重度の知的障碍者の方の受け入れをするようにした、と申し上げました。
その際は、本当に思考を巡らしましたね。
この荷札には、製品に付ける品番というものが載っています。
お客さまの希望する塗装色に応じて、品番情報の載っているシールを貼り、最後にホッチキスがしてあります。
このような試みを始めた当初は、一日に10個くらいの作業量だったのですが、その内に200個ほどの作業をしなければならなくなりました。

どうしようかな、と考えたときにこの仕事であれば、障碍が重い方でもできるのではないかと考えて、受け入れを決めたんですね。
A2判定の方だったのですが、受け入れ以来、1日あたり4時間の勤務をしてくれています。
現在では、毎日200個問題なく仕事していただいています。
彼自身もすごいのですが、保護者のお母さまもすごい方で。
絶対社会で活躍できるはずだって、信じられてずっと努力されてきたんです。

彼は入社以後も、ご家庭のホッチキスで練習をしたり、努力を欠かしませんでした。
こうした積み重ねの後に、私たちの全ての名刺を作成してくれるまでになりました。
今では、パソコンも使えるようになりまして、今はブラインドタッチの練習をしていますね。

なぜ製造ではなく、名刺づくりになったかというと、右手にも障碍があったんです。
どうしたら、県の最低賃金分の仕事をしてもらえるのか。
もし、できなければボランティアになってしまいます。
民間企業ですから、ボランティアで働いてもらうというわけにはいきません。
色々彼と試しながら、やってきたのですがテプラってありますよね、シールを貼る機械。
彼は、それを扱うことができたんです。
テプラを扱うことができるなら、パソコンも扱えるんじゃないかと考えまして。
実際に、彼にやらせてみたら扱えるようになりました。

弊社には、市の職員の方が頻繁に訪れてくださるのですが、名刺の話をしたら、是非市の職員の名刺をやってみないかとお声がけいただきました。
定款に印刷業と入れ、市と購買契約を結ばせていただきました。
現在は、綾瀬市役所の多くの職員の皆さま、社会福祉協議会の皆さまから、名刺の購入をしていただいています。
彼自身もそのように注文をいただけたことで、モチベーション高く仕事していただいています。
現在では、箱詰め作業にもチャレンジしています。
もうすぐ全部自分でできるようになるんじゃないかと思います。
彼のような方を通して、様々なことを教えていただいていますね。

今、新しい取り組みとか挑戦されていらっしゃることなどございましたら、お伺いさせてください。

伊藤氏

弊社では、中度知的障碍の子までなら一人前に育てることができます。
障碍者雇用という概念を、中度知的障碍者の程度までは払拭できたのではないかと思います。
これらの方々を、一人前の技術者に育てていきたい。
弊社のこのような取り組みを幅広く社会に届けていきたいという思いを持っています。
かつては、ものづくりの企業には障碍をもつ方でも扱えるような簡単な仕事がたくさんありました。
しかし、今はほとんどありません。
そのような仕事は、海外に流失してしまったんですね。

それはそれで、海外から安価な製品が輸入されて国民はその恩恵を受けられます。
でも、是非皆さんと議論していきたい点があります。
それは、少しでも利益が日本に還元されたら嬉しいですよね、ということです。
例えば1台500万円の高級車に乗るような人は、505万円でもその車を買われますよね。
その5万円分を、簡易労働として日本で行えるように、できないだろうか。
我々の国としても、障碍者の雇用に繋がっていくはずです。



最後に大きな質問になってしまうのですが、鈑金業界全体や金属加工業界全体の課題などございましたら、是非お伺いさせてください。もちろん、御社の課題でもかまいません。

伊藤氏

課題はやはり、技術の伝承ですね。
ローコストな国々に、どんどん生産拠点が移ってしまっていますから。
それからよく聞くのが、この職人さんがいるうちは問題なく仕事ができる。
でも、この人が辞めてしまったら、同じ仕事を受けることができなくなる。
そうおっしゃる会社さんが結構いらっしゃいますね。
弊社では、現場にベテラン、中堅、若手という三者をバランスよく配置できるようにしています。
そのような配置を取ることで、技術の伝承もスムーズにできているという感触を持っています。
お客さまにも安心いただいていますね。
とはいえ、弊社だけ良い流れができていても業界が育ちません。
業界全体で、技術の伝承の方法を考えていく必要があると思います。
そうしなければ、自ずと日本の技術力が衰退していってしまうと思います。
そういう意味では、一社一社がメイド・イン・ジャパンというブランドを死守する覚悟を持ちながら、経営する必要があると思います。
ちょうど、弊社は今年で45周年を迎えます。
50周年に向けて中期計画も立てていますね。
世の中のお役に立てる企業として立ち位置を確立したい。
そのように考えています。
主力の製造部を堅持しながらも、栄和産業という企業を通じていかにCSR、社会的な責任を果たしていけるのか。
これからも、縦横無尽にチャレンジして、外部の皆さまからの評価をいただきたいと思っています。
我々が先頭を切って「チャレンジする文化」というものを創り上げていきたいと考えています。


まとめ

ものづくりを通して、ひとづくりを実現。


それは、企業の持つ社会への責任を果たすため。


そして、ひとづくりから新たなものづくりへ。


株式会社栄和産業は「チャレンジする文化」で、ものづくり企業のあるべき姿を創り上げる。

加工技術

  • 板金加工
  • 金属・切削加工

基本情報

代表者名
伊藤正貴
担当者名
村山英隆
従業員数
152名
創業年度
1974年
メールアドレス
h-murayama@eiwa-sangyou.co.jp

住所

〒252-1125 神奈川県綾瀬市吉岡東4-15-5

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