快く取材を引き受けていただき、ありがとうございます。まずは、御社の沿革や事業内容を教えてください。
河本氏
前身は株式会社アートウインズで、設立は、1995年の7月です。
私と小林(アートウインズ代表取締役)の2人で立ち上げた会社です。
当初は、そこで樹脂部品の試作切削加工をしていました。
事業をおこなう中でお客さまから、樹脂だけではなくて、金属加工、板金はできないのか、塗装はできないのか、という話をいただくようになりました。
私自身は、もともと板金試作を前職時代にやっていた経験もあって、じゃあ実際に現場をつくってやってみようとなったのが、板金を手がけるようになったきっかけです。
それが、2000年で、創業から5年後のことです。
最初は、レーザ加工機とブレーキプレスを1台ずつ入れて、当初現場に私一人だけで営業活動はフォローをいれてもらいました。
その後、おかげさまで板金案件が増えてきた中で、徐々に人員を増やし、現在では正社員が21名、パート・アルバイトを含めると27人になります。
もともと家電関係の試作を多く手がけていました。
その中でも、複写機であったり、カメラ部品など、どちらかというと精密な部品を手がけることが多かったですね。
板金と樹脂のような複合的な依頼があった際に、グループで連携して完成品まで持っていくこともできます。
そのような複合品を実現できるのが、弊社の強みですね。

ありがとうございます。創業されるに至った経緯をお伺いさせてください。
河本氏
もともと起業に興味があったんです。
私自身、板金の業界で独立したいという思いがありました。
ただ、レーザー加工機を一つとってみてもとても高価で、一人で板金で起業するには無理があるな、と。
樹脂加工の方なら比較的安価にできるのではないかと思いまして、樹脂関係の試作に飛び込んだんですね。
あとで、見込みが甘かったことがわかったのですが(笑)
そこで、知り合ったのが現アートウインズの小林社長で意気投合しまして。
2年後に一緒に立ち上げようということになりました。
なるほど。社名の由来をお伺いしてもよろしいでしょうか。
河本氏
大っぴらにはしていないのですが(笑)
1995年創業なんで、当時Windows95が巷で話題になっていました。
ちょうど社名をどうしようかと考えていた時に、ラジオから聞こえてきたのが、Windows95の発売で。
「Windows95のWindowsっていいよね」という話で、ちょっともじってウインズに。
「ウインズだけだったらちょっとさみしいので、アートという名前つけようか」ということで。
今は、どちらかというと後づけで「風のように自由な発想で」という意味で。
そのように社名をつけたことにしています(笑)

ありがとうございます。試作にこだわられている理由や思いをお伺いさせてください。
河本氏
ものづくりが好きなんですね。
もともとは、試作業界にずっといまして、最初に勤めた会社が試作もするんですけど、どちらかといえば量産がメインだったんです。
毎日同じことばかりしている仕事が嫌で、一回辞めてしまったんです。
そのあとに入った会社が偶然なんですけれど、試作をする会社だったんです。
そこで、こんな面白い仕事があるんだ、と夢中になりました。
それで試作を中心に事業を展開しているんです。
少し細かい話になって恐縮なのですが、レーザ加工機に澁谷工業さんのものが入ってらっしゃいます。
河本氏
澁谷工業さんのレーザ加工機は、薄板とか微細加工に特化しているんです。
他社さんとの大きな違いは、ビーム径が非常に細かいので、微細加工に適しているんです。
弊社が手がける仕事として、微細なもの薄板のものが多いので、導入しているんですね。
橘氏
アマダさんや三菱さんの場合は、出力の大きいレーザをラインナップとして揃えています。
小中ロットの量産のために、材料を自動的に供給するところまでやる機械がメインですね。
澁谷工業さんのものは、微細、精密というところをうち出されているので、弊社にあったものではないかな、と考えています。

なるほど。御社で働かれている人の部分について伺わせてください。
河本氏
昔は、板金屋さんって職人さんがメインでやっていましたよね。
ただ、今は工作機械も発展してきていまして、ほとんどがNCがついているものが多い。
そうすると若い人間を入れると、やはり覚えが早い。
そういう点で、若い人間を意識して入れるようにしています。
あと、比較的若いメンバーがたくさんいる方が活気がでます。
従業員同士でも、同年代の人間がたくさんいる方がコミュニケーションも取りやすいだろうと考えています。
層としては、20代から30代前半くらいが一番多いですね。
ありがとうございます。今までで困難だった案件や、苦労されたお仕事などございましたら、お伺いさせてください。
河本氏
具体的なエピソードというとなかなか難しいのですが。
基本的に、精度に厳しい製品を手がけていることが多いんです。
その中で、試作品だからこの程度の出来栄えでいいよ、と仰るお客さまがいる一方で、本当に図面通りで100分の1ミリでも外すとNGというお客さまもいます。
そういう難しさがあります。
ただ、高い精度を要求されて、きちんと実現することで従業員の技術が上がっていくという部分もあります。
ですから、そこは損得勘定なしに頑張るようにしていますね。

なるほど。今、挑戦されていることなどございましたら、是非お伺いさせてください。
河本氏
まず一つは去年ものづくり補助金を通じて、ファイバー溶接機の導入をしました。
操作が非常に難しい機械ですが、今までできなかった加工ができるようにしたいと思っています。
銅板の厚板の溶接、異材の溶接、薄板の溶接、精密な溶接などにチャレンジしたいと思っています。
それから、新工場(2019年3月完成予定)ができましたら、簡易金型の方にも力を入れたいと思っています。
今までも手がけてはきたのですが、レーザカットであったりワイヤーカットでブランクをおこなってました。
それを量産と同じように打抜きで対応して欲しいというニーズが結構あるんです。
そのニーズに対応できるように、ブランク形状を金型で打ち抜き加工ができるようににしようと考えています。
量産も見据えながらということでしょうか。
河本氏
量産もそうですね。
ただ、どちらかといえば小ロットの量産です。
多品種小ロットを狙っていきたいと基本的に考えています。
その辺りの仕事に取りくむにあたって、営業の橘に今年は頑張ってもらっています。
展示会に積極的に出展することに力を入れて、日本全国を飛び回ってもらっています。

なるほど。展示会での反響はいかがでしょうか。
橘氏
名刺は集まるのですが、具体的な案件となるとなかなか難しいですね。
河本氏
十分に申し分ない技術があるつもりなんで、展示会への出展の仕方、見せ方ですね。
その辺りを工夫しすれば、もっとお客さまから引き合いがくると思っています。

ありがとうございます。見せ方の部分なのですが、ホームページがとても綺麗でして。ホームページからの依頼などもあるのでしょうか。
橘氏
SEO対策もしっかり専門の業者にお願いしています。
試作板金とかで
検索してもらうと、上位3番目か4番目に出てくるはずです。
ブログなども続けて、
ホームページからも集客できるように努力しています。
Twitterもやっていますよ。

なるほど。昨年、分社化されたと伺っています。分社化された理由や、メリットなお伺いさせてください。
河本氏
ご指摘の通り、もともとは、アートウインズとして一本でやっていました。
社内で徐々にではありますが、板金から樹脂、塗装に至るまで、色々できるようにしていました。
ただ、お客さまになかなかそれが浸透しなくて。
なんでもできますよ、と言うと商社のように見えてしまうようで。
本当に社内で全部やっているのですか、と疑問を感じるお客さまが、結構いらっしゃった。
あと、第一印象でアートウインズは切削関係の試作をやっている会社だと思われてることが多くて。
そのようなお客さまに板金もやっています、と言ってもなかなか伝わらないんですね。
反対に、板金関係の試作で印象を持たれている方は、切削関係もやっていますよ、といってもなかなか伝わらないんです。
ですから、分社化して、外から見てわかりやすくしようと。
こっちは板金加工メーカー、あっちは切削加工メーカー。
そういう形ですね。
橘氏
お客さまから、3次元データで樹脂と板金がアッセンブリーになっているデータを送っていただければ、営業担当が樹脂と板金を分けます。
例えば、板金の方が「これどんな感じかな?」って見積もりを持ってきます。
それを最後に、まとめてお客さまに提出させていただく形ですね。
切削加工も同じグループ会社なので、納品まで一貫して行なえるところが強みですね。

ありがとうございます。最後に大きな質問になってしまうのですが、板金業界全体や金属加工業界全体の課題などございましたら、是非お伺いさせてください。もちろん、御社の課題でもかまいません。
河本氏
課題というか、年々要求される加工精度が高くなってきて、しかも短納期になってきているように感じています。
加工側からすると大変ではあるのですが、設計者の方も知識を持って図面を書いてらっしゃるわけですから、時代がそういう流れになってきているのかもしれません。
きちんと対応していかなければいけないと思っています。
短納期に関して言えば、メーカーさんは開発期間を一日でも短縮したいのでしょうね。
納期は切ってくるんですけど、一日でも早く品物を見たいし、検証してみたいという気持ちがあるんでしょうね。
短納期のものはどのように実現されていくのでしょうか。
河本氏
日々そういう仕事ばっかりですので(笑)
基本的に納期があるとかないとかではなく、どんどん製作していくイメージですね。
橘氏
弊社は、あまり生産計画を立てずに、その日にやれるものをやってしまうというスタンスですね。
そこに、もし突発的な案件が入ってきたら、間に挟んでしまうようにしています。
樹脂製作ですと、運転時間が長くなってしまうので、段取り以外の手順というものは難しいのですが。
板金に関して言えば、そこまで段取り以外に関しては加工時間が短い場合が多い。
ですから、簡単な案件の場合は間に挟んでしまう。
新しい案件を段取りに挟んでしまうパターンが多いですね。

試作の場合は見積りが難しいと伺っています。
橘氏
切削加工などは、ある程度工具や設備、材質や形状で加工時間が読みやすい。
でも、板金加工に関しては、工程が本当に多岐にわたります。
ですので、見積もりを出すのは、なかなか難しいですね。
それが板金加工の面白みでもありますが。
同業者さんでも、設備が違うと作り方も変わってきますので、どうしても価格差がでてきます。
河本氏
試作の場合は、さらにやり方が色々あります。
やり方一つで、見積りがガラリと変わってしまうので、標準価格を出すのはとても難しいですね。
今は、よくお客さまから、見積りをだして欲しいと言われるのですが、昔はこんな感じじゃなかったんです。
試作屋の場合は、依頼されて製品を作ってみて、後からいくらかかりましたというのが多かった。
正直やってみないと、時間がどれだけかかるかわからないものって非常に多いんです。
それでも先に金額を出してほしいと言われるようになってきています。
試作をメインでやっている立場からすると、なかなか難しいところですね。
まとめ
試作板金に特化して。
グループで連携して複合的な製品を実現する。
試作の面白さはものづくりの面白さ。
アートウインズ・シートメタル株式会社は、「世界ではじめてのひとつ」を創る。