スリーナイン島野株式会社

ものをつくることは思いを伝えることだ

スリーナイン島野株式会社について
大阪市西区に陳列金物に強みをもつ板金加工メーカーがある。

スリーナイン島野株式会社だ。

多品種微量生産で、自社ブランドを展開。

硝子引戸レールに絶対の自信をもつ。

今回は代表の島野和弘氏にお話を伺ってきました。
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快く取材を引き受けていただき、ありがとうございます。まずは、御社の事業内容や強みを教えてください。

島野氏

弊社は、設立して70年ほどの企業です。
主に、建築金物と言われる分野で、特に陳列ものに強みを持っています。
というのも、家具金物を取り扱うところから事業をスタートしたという経緯があるからです。
家具・建築金物を生業としていたところに、陳列金物が加わってきて、今では硝子引戸レールまで。
硝子引戸レールに関していえば、自社で有している種類、特許の数は日本で一番ではないかと思っています。

技術的なところでいえば、かなり薄くて細いものを手がけています。
細く曲げれますし、また細いものを深く曲げることもできます。
なかなか他社さまにできない部分で、お客様にお喜びいただいています。
一般的に、ロールフォーミングで手がけるような部分、ここを弊社では手加工で曲げることができるように技術を追求しています。
金型も一般に販売されているような汎用の金型を使用せずに、弊社で自ら設計から手がけています。
協力工場さんと一緒に、弊社独自の金型をつくっているんです。
ですから、普通ではできないようなちょっと変わった曲げを実現できることも弊社の強みかなろ思っています。

小さい会社ではありますが、多品種微量生産をしながら、自社ブランドを展開しています。
ニッチマーケットを狙って、事業を展開しているんです。
もともと、陳列金物という市場の中でも、さらにコアな市場を狙っていますので、全国を視野にいれることで、ペイできるようにしています。

あとは、全面バリ取り。
陳列ものですから、見た目も綺麗に仕上げなければいけませんが安全面も気をつけなければいけません。
そのために、全面バリ取りができる機械を作りました。


ありがとうございます。協力工場さんと一緒に多品種微量生産を実現されてらっしゃる。

島野氏

はい、協力工場と一緒にやらせていただいています。
お付き合いの長いところはたくさんありまして、東大阪にもありますね。
技術的にコアになってくる部分は、できるだけ自社で手がけて。
汎用的なものは、協力工場の皆さまと協力しながらやっています。
汎用的なものは、どうしても競争が厳しくなっています。
弊社は、できるだけ薄利多売にならないように心がけています。
勝手に多利小売といっているのですが、そのような形で事業を展開しています。
とはいえ、簡単に大きな利益が出せる仕事が転がっているわけではありません。
そこは、知恵をだしながらやっていますね。

先ほど自社ブランドのお話しがありました。受託生産というより開発に力を入れていらっしゃるのでしょうか

島野氏

そうですね。
弊社のメインは、レールとか引き戸にかかわる金物です。
ホームページにも4000点弱の製品を載せていますが、このうちの7割以上は弊社のオリジナル製品です。
売上でいうと、それらがほぼ9割くらい。
単なる卸売りではなく、製造としてメーカーとして、やっていきたいと考えてやっています。
ただ、オリジナル製品というのは、どうしても営業の力が必要になってきます。
この部分で、大手さんとの競争するのは、どうしても厳しいところがある。
自社メーカーで、自社ブランドを作って、かつ販売もしているわけですが、販売をする力という部分では、難しい部分がありますね。
ただ、自社製品をきちんと作っていることの強みはやはりあります。
今は、お客さまからご注文いただく製品って本当に多様化してきています。
でも、ある程度まで手がけてあれば、あとは最後の枝別れのようなものでして。
製品の90%くらいは、もう既に自社で手がけてあって、後はお客様の仕様、要望に答えていくようなイメージです。
逆にいうと、そういう工夫をしないと、ブランドを作りあげていくことや、アイテム数を揃えていくことは難しいですね。


先ほど、ニッチ市場と仰っられていましたが、納入実績を拝見すると本当に多岐にわたっていらっしゃいますね。

島野氏

ありがとうございます。
ただ、最終的にどこに使われているのか、わからないこともあります。
というのも、酷いときには、弊社と使用される現場との間に業者が7、8件入るようなこともありますので。
弊社が、金物屋さんに納入して、それが施行屋さんに入って、その上には設計するところ、ゼネコン、最後に施主さんのところへ行くという流れのことを考えると、結構に間に業者が入ってしまっていることは稀ではないと思います。

ECサイトも手がけられていますよね。

島野氏

ECサイトに関していえば、販売チャンネルとしてどれだけ機能しているかというと、それほどでもありません。
弊社の製品は、DIYレベルで使用できるものは正直少なくて、基本的にプロ仕様ですから。
むしろ、今からどのように力を入れていくべきなのか、模索しているところですね。
弊社の扱っている製品でいうと、どうしても取り付けのところで技術が必要になります。
そういう技術を持っている職人さんが、使うことを想定して作っています。
ホームセンターのようなところでも、それほど販売していないです。


ありがとうございます。経営理念を拝見して、人への思いが強く入っているように見受けられました。この辺りについて、お伺いさせてください。

島野氏

人への思いということであれば、簡単に1時間くらいは喋ってしまいますよ(笑)
基本的なところだけお話すると、弊社は製造の会社と販売の会社とに分かれています。
ですが、併せて1つの会社だと思っています。
ここ、一二年は中途も採用してきましたが、基本的には新卒採用をずっとしてきました。
それは、一から考えて働いて欲しいからです。

昔から考えてきたことではあるのですが、お金で買えるような技術は技術ではないと思ってやってきています。
確かに、機械を買うことでできるようになることは沢山あります。
何も考えずに機械を買って、実現できることを増やしていくのは、簡単です。
でも、それでは資本が強いところ、資金力のあるところとの差別化ができません。
価格競争にも巻き込まれてしまいます。
じゃあ、どうしたらいいのか。
機械でできないこと、機械化できないことってなんなのか。
ここで、どれだけ自分たちがアイデアを出すことができるのか。
自分たちができること、自分たちにしかできないことを、全員でアイデアを出し合うように取り組んでいます。

そういう意味で、弊社は考え方ということを重要視しています。
社員一人一人がきちんと考えることですね。
社内でテキストを作成して、そういう勉強会もしています。
人格みたいなものが、まさにそうなのですが、学校や家庭で教えきれないものってあると思うんです。
仕事をすることの意味みたいなものもそうでして。
仕事することは、あくまで幸せに生きるための手段でしかない、と私は考えています。
仕事をやっていて楽しいなとか、新しくこういうことができるようになったとか、自分のつくったものが、あんなところでこういう風に使われているんだとか。
そういうものを全員で共有しながら、面白いね、頑張ろうねってやっていきたい。
そういうところがベースにあって、給料がついてくる。
そうでないと、なかなか仕事を続けていくのは難しいと思います。
仕事を通じて、どうしたら幸せに生きることができるのか、考えて欲しい。
あくまで幸せに生きるための手段として仕事があるので。


ただ仕事をすればいいということではない。

島野氏

そうですね。身を粉にして働くとか、お金のために自分の人生を無駄して欲しくないです。お金のために、弊社に来られているのなら、どうぞお引き取りください。ですから、基本的に残業も一切しないようにしています。残業って要は時間内に仕事が終わらないっていうことですから。じゃあ、どうしたら。時間内に仕事を終えることができるのか。それを考えるのが、まさに仕事で。仕事は、成果を出すことが全てのなのか。時間通りに働くことが全てなのか。例えば、事務をやっている人間と製造をやっている人間、どちらが生産性が高いとか、会社に貢献していることか、簡単にはかれないじゃないですか。会社があって、働く人間がいるのではなく、働く人間がいて、会社がある。ですから、みんなで助け合いながらやっていて、その中で時間的に決めていかなければいけない部分がある。その中でも、それぞれ自分の得意・不得意があって、それを助け合いながら、よりよくしていくところに会社がある。私は、そういう風に理解して経営をしています。


なるほど。アイデア出しはみなさん楽しまれて取り組んでらっしゃるのでしょうか。

島野氏

その辺は現場に聞いてみると、ノーっていいそうですね(笑)
出して出して、出し尽くしたうえで、更に出さないといけないみたいなところがありますので。
細かい話になってしまうのですが、去年の中旬からそのやり方を変更して新しいやり方を試しています。

積極的に、ITも使わないといけないよねっていう話もでて。
社内だけのプラットフォームを作って、そこにみんながアイデアをどんどん投稿できるように。
で、投稿をみんなで見ながら、そのアイデアいいねとか。
そのアイデアとこのアイデアをくっつけたら、こうなるよねとか。
そういうことが、どんどんできるような仕組みをつくっています。
1人がアイデアの全てを出さなくても、チームでアイデアが形になればいいわけですから。
いいアイデアを共有して、みんなでブラッシュアップできるように。
そういうやり方に変えました。

今、スマホって本当に便利ですよね。
こんな面白い商品あったぞって、その場で写真を撮って共有できてしまう。
仕事に近いところでは、お店の内装などを見て、こんなものをこういう風に使ってるんだって。
面白いものがあったら、積極的にみんなで共有して。
アイデアを膨らませることができるように心がけていますね。


ありがとうございます。開発に力を入れてらっしゃるのだと理解したのですが、これまに特に苦労した案件などございましたら、是非お伺いさせてください。

島野氏

いっぱいありますね(笑)
技術的な問題解決の苦労は、本当に沢山ありまして。
弊社は、基本的に金型を自分たちで設計して、金型屋さんの折衝します。
でも、その金型は実際にできるものなのかどうか。
自分たちでも金型屋さんでもわからないようなこともあるんですね。
そういう時は、弊社の責任だからとりあえずやってみようって。
それで、本当にワンショットで何十万の金型が飛んだこともあります。
ただ、そういうことをしても、どうしてそうなったのかきちんと考えて、自分たちの知識やノウハウにしていく。
そうやって、できることが少しづつ増えていく。

チャレンジしなければ、いつまでもわからないままですから。
他の人が、やったことがないことをやってみたいという部分と、何かにいかすためにやるという部分を切り分けて考えないといけません。
ただの自己満足でに終わっても仕方ないので。
もし、これができるなら、あれもできるはず。
そこから、お客さまからいただいていたニーズに応えるような技術転用の部分がでてきます。
これは、私の考えなのですが、単にニーズに応えているだけでは、必ず価格競争に陥っていくと考えています。
既に、顕在化されているニーズっていうのは、競争になるんですよ。
競争が始まると、次は納期、その次は価格となっていきます。
そういうループに陥いらないようにするためには、弊社しかできない技術を日頃から蓄積しておくことが重要になります。
商品を開発して、特許をとって、販売して、15年くらい経ってから実際に売れ始めるというようなこともあります。
顕在化しているニーズだけではなくて、潜在的なニーズ、いつ顕在化されるかわからないようなものにも、きちんと取り組んでいかないといけません。
そういう難しさが、開発にはいつもつきまとっていますね。


ありがとうございます。これまでお話いただいところ以外で、新しく会社で取り組んでいること、チャレンジされていることなどがあれば、ぜひお伺いさせてください。

島野氏

製造の方では、IT化、AI化を進めています。
ただ、人が人として仕事すべきことと、AI化していった方がいいところをきちんと切り分けた上で、如何にハイブリッドしていくことができるのか。
どちらか一方に固執してしまっては、日本の製造業がもたないように思います。
自分が携わっていることもあって、製造業に対して色々思うことがあります。
ものをつくることって、最終的に思いを伝えることだと思っています。

もっとこうなったら使いやすいとか便利だとか、そういう人の思いをきちんと拾い上げて、形にしていく。
安心とか安全とかも最初は人の思いから生まれているはずです。
よくいわれる大量生産大量消費の世界観って、それが本当に必要なものなのかわからないまま作って売っていたのではないでしょうか。
利益を中心にして、ものを作っていくという方向で。
その弊害が、環境汚染など社会問題になっている。
100年後の地球が、どうなっているのか。
ものをつくる人間たちが、本気で考えていかないといけないと思っています。
アルミにしろステンレスにしろ、レアメタルにしろ、環境資源を使っているわけですから。
環境から資源をいただいてものを作って、結果として環境を汚染して人に害を与えてしまっているというのは、おかしいと思います。

ものづくりをすることの本質は、特定の誰かまでとは言いませんが、思いを届けることだと思っています。
安く、早くの追求は否定しませんが、本質的な事柄ではありません。
一品ものや、小さいニーズに対しても、きちんと応えることができるように。
必要なものを、必要な時に、必要なところへ、必要なだけ届けるということをきちんとやっていかなければいけません。
そう考えたとき、ITは絶対に必要になりますよね。
ここは、製造業全体が、問題の本質を捉えて、変わっていかなければいけないところだと思います。

なるほど。板金業界や製造業全体の課題でもありますね。

島野氏

そうですね。
印刷業界に、ラクスルさんというものがあるそうですね。
すごくいい試みだと思っています。
板金業界もそうですし、製造業全体でもそういうところがもっと出てきていいと思うんですよね。
どうしたらこの技術できるのとか、お互いに出し合って勉強しながら、力をつけていくようなことがあってもいいと思っています。
例えばですけど、僕の工場が地域の工場になり、地域の工場が日本の工場になり、みんながみんなを支えていく仕組みがあってもいいと思います。
そういう形で、製造業を営んでいくという方向性があってもいいのではないでしょうか。
生意気ながら感じるところですね(笑)
みんなで、いいものづくりができればと、思ってはいるのですが。
話が前後して申し訳ないのですが、省力化省人化というところはチャレンジしているところでもありますが、一番大事なのはそれをやって誰が幸せになるのかっていうところですよね。
単なる問題解決ではなくて、みんながいきいきと働くことができるような、自分たちの仕事がこういう風に役に立ったんだよ、ということがもっと身近になる。
そういうところを意識して、弊社はメーカーをやっていますが、それでもお客さまとの遠さを感じることがあります。
もっと身近になって、お客さまの声を拾えるようになりたいです。
ここに、こういうものがあったら便利なのに、じゃあ、それ作りますねっていう世界が実現できればいいなと思っています。


まとめ

お客さまの声を形にするために。


多品種微量生産で自社ブランドを展開。


ものづくりの本質は思いを形にして届けること。


スリーナイン島野株式会社は、思いを伝えるため、今日も腕を磨く。

基本情報

代表者名
島野和弘
担当者名
営業チーム
創業年度
1956年
メールアドレス
info@999shimano.com
電話番号
06-6531-9423

住所

〒550-0015 大阪府大阪市西区南堀江3丁目2番17号

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