溶接中級者以上は知っている!?【溶接の10の基本知見】

2023-11-07

【5分でわかる】溶接記号の見方、書き方

溶接記号の見方、書き方について動画でも解説しています!噛み砕いて解説しているので、ぜひ参考にしてください!

Youtubeにて、金属加工Mitsuriチャンネルを運営中!こちらからご覧ください!

溶接の知見には様々なものがありますが、その中でも必須の知見を「10の必須知見」としてまとめました。未経験者からベテランまで、溶接に関する有意義な情報を質問形式でご紹介しています。

溶接の知見「10の必須知見」

溶接に関する必須知見として10個挙げます。いずれも溶接関係者にとっては必須の重要な知見です。

溶接の必須知見

Q1. 溶接とは?

Q2. 溶接工の平均給与はいくら?

Q3. 溶接機にはどんなものがあるのか?

Q4. アーク溶接とは?

Q5. 溶接記号とは?

Q6. 溶接面(マスク)を選ぶときのポイントは何?

Q7. 溶接に関する資格は何があるのか?

Q8. 溶接にはどんな種類があるのか?

Q9. 溶接ビードとは?

Q10. レーザー溶接のメリットとデメリットは?

必須知見Q1. 溶接とは?

溶接とは接合部が連続性を持つように、熱や圧力を加えて部材を接合することを言います。必要があれば溶加材を加えます。

コラム:溶接の歴史

金属接合(溶接)において、最も古い歴史を有しているのは「鍛接」です。

約3000年前の時点で、金属同士をハンマーでたたけば接合すると認知されていました。古代エジプト王のツタンカーメンの棺は紀元前1350年ごろに埋められたとされていますが、棺の中から鍛接された鉄製の装飾品が見つかっています。

必須知見Q2. 溶接工の平均給与はいくら?

溶接工の平均月収は約33万円程度で、日本人全体の平均給与のやや上です。

年代別に示すと、溶接工の平均給与未経験者の初任給15万円~

(20代25万円、30代35万円、40代40万円)

必須知見Q3. 溶接機にはどんなものがあるのか?

IMAX60(アイマックス60)

画像引用元:http://www.welder.co.jp/first/s1_3.html

初心者向け直流アーク溶接機でインバーター制御。手軽さは抜群、アークスタートも優良です。趣味で簡単な鉄製品を作ってみたい人向け。スキル次第ではフェンスや門扉も作成できます。専用溶接棒を使うことでステンレスも加工可能。薄物の板金加工には間違いのない製品です。

IMAX120(アイマックス120)

画像引用元:http://www.welder.co.jp/first/s1_3.html

中級者向け直流アーク溶接機でインバーター制御です。アークスタートはスムーズ、アークは安定しており使い勝手は抜群です。100V/200Vどちらでも使用可能です(入力電圧を感知して自動で切り替わります)。100V・15Aコンセントでも使用可、板金の厚さは0.8mm~3.0mmまで可能です。

VICTRON130(ヴィクトロン130)

画像引用元:http://www.welder.co.jp/first/s1_3.html

上級者向けバッテリー内臓のアーク溶接機でプロフェッショナル仕様です。重さはわずか34kgで、作業場での移動も楽にできます。

必須知見Q4. アーク溶接とは?

アーク溶接
図1:アーク溶接とは

アーク溶接は最もメジャーな溶接方式です。

①溶接機本体から伸びているトーチにアーク溶接棒を取り付け、②溶接したい箇所にコツコツと当てるとアークスタートするシンプルな手順です。

アークスタートの際、溶接棒が母材にくっついてしまうことがあり、初心者にはやや難しいです。溶接の際、母材だけでなく溶接棒も一緒に溶かして溶接する場合は、溶接棒が溶けるたびに交換しなければなりません。

アーク溶接のメリット・デメリット

メリット

①ガスを使わないので風の影響を受けない

②ケーブルを延長すれば動かしやすい

③屋外での作業にも強い

④鉄骨溶接や重機の修理にも良い

⑤ボルトとナットの永久接合(溶接止め)にも最適

⑥溶接機本体は安価で小型なものが多い

⑦ホームセンターなどでも溶接機が売ってる

デメリット

①厚板を溶接する際は家庭用100Vでは厳しい

②薄板を溶接するのは難易度が高く、穴が空いてしまうことも多々

③溶接後にはフラックス(黒い残りカスのようなもの)が付着しており、剥がさないといけない

④仕上がりが美しくない

参考:アーク溶接【基礎】種類と原理!電圧設定・温度分布まで詳細解説

必須知見Q5. 溶接記号とは?

溶接記号の一覧表
▲図2:溶接記号の一覧表例

溶接補助記号の一覧表
▲図3:溶接補助記号の一覧表

非破壊検査の記号一覧表
▲図4:非破壊検査の記号一覧表

上記の溶接記号は頻繁に用いられる重要項目です。基本知識としてすべて暗記しておくのが望ましいです。

参考記事:溶接記号の一覧【基礎講座】溶接指示を徹底理解!種類と書き方をマスターしよう

必須知見Q6. 溶接面(マスク)を選ぶときのポイントは何?

手持ち型溶接面

画像引用元:https://www.bildy.jp/mag/weldingmask/#3

昔ながらの溶接面です。手持ち溶接面は自動遮光面に比べると圧倒的に安いのですが、両手を使えないため不便です。装着が遅かったり溶接面を丁寧に顔に当てないと、光が目に入る危険性もあります。

通常は外側から、素ガラス・遮光ガラス・素ガラスと3枚並べて使用します。外側の素ガラスがスパッタで汚れたら捨てて、内側の素ガラスを外側に装着すれば安上りです。

かぶり型溶接面

画像引用元:https://www.bildy.jp/mag/weldingmask/#3

自動遮光面よりも遥かに低価格、両手を使えるのも便利です。初期コストを低くしたい人にオススメです。

デメリットは、スパッタによって素ガラスが汚れることです。素ガラスが汚れると交換しなければならず、そのたびにコストが発生します。

自動遮光面(ヘルメット取付型・キャップ型)

画像引用元:https://www.bildy.jp/mag/weldingmask/#3

主に自動遮光面に実装されているのは、

①明るさを変化させる液晶フィルター

②アークの点滅を検知する光センサー

になります。

液晶フィルターは、アーク点灯時に暗くなり、アーク消灯時に明るくなります。視界の明るさを自動的に調整してくれるのが特徴です。手持ち型の溶接面と異なり、作業中常に両手が空きます。

※自動遮光面には2種類あります。ヘルメットに取り付けるヘルメット型、直接被るキャップ型です。状況によって使い分けましょう。

溶接用ゴーグル

画像引用元:https://www.bildy.jp/mag/weldingmask/#3

自動遮光面よりも軽量で、種々のヘルメットと合わせて使用できます。メガネの上からも着用可です。欠点はやや高価なところが挙げられます。

革製遮光面

画像引用元:https://www.bildy.jp/mag/weldingmask/#3

革製の遮光面は、安価で折りたたんでコンパクトに収納できるメリットが人気です。その一方で、蒸れたり革独特の匂いがしたり、などのデメリットもあります。

必須知見Q7. 溶接に関する資格は何があるのか?

溶接に関する資格として有名なものは以下の8つです。

溶接の資格

①ガス溶接技能者易

ガスバーナーを用いて金属を接合するガス溶接を行う際に必要な国家資格です。この資格があることで、初めてガス溶接を行えます。

②ガス溶接作業主任者難

ガス溶接を行う際、主任として作業スケジュールを決定し、ワーカーに指示を出すための国家資格です。ガス溶接技能者の上位に位置づけされる資格で、実務経験3年以上で受験できます。

③アーク溶接作業者易

放電現象(アーク放電)を利用して金属をつなぎ合わせる「アーク溶接」を行うために必要な国家資格です。ガス溶接は3,000度ほどの炎を扱うのに対し、アーク溶接は約4,000度です。溶接する部材によって工法が異なります。

④アルミニウム溶接技能者普通

アルミニウム合金の溶接を行う専門的な知識と技能を認定する民間資格です。アルミニウム溶接は、ガス溶接やアーク溶接よりも難易度が高めです。アルミニウム溶接は自動車関連の現場などで需要が増えており、キャリアを安定させるという面でも有利な資格と言えます。

⑤PC工法溶接技能者

普通PC(プレキャスト鉄筋コンクリート)工法溶接の技能を認定する民間資格です。コンクリート組み立て建築の溶接現場で活かせます。

⑥ボイラー溶接士難

ボイラーの製造・改造・修理などの溶接が可能になる民間資格です。1年以上の溶接経験(ガス溶接など一部を除く)があれば受験できます。普通ボイラー溶接士、特別ボイラー溶接士の2種類あります。特別ボイラー溶接士は、普通ボイラー溶接士免許を受けた後、1年以上ボイラーなどの溶接実務があれば受験できます。

⑦溶接管理技術者難

溶接のスキルと知識だけでなく、施工計画や作業管理能力を有する技術者を認定する民間資格です。溶接技能者の上位資格とされており、官公庁からの工事受注に必要な資格です。特別級、1級、2級の3段階のレベルがあります。

⑧溶接作業指導者難

指導者的な役割を担う、溶接作業者を認定する民間資格です。溶接部門の班長、溶接工事の現場監督など、溶接作業者や溶接管理技術者に指示を出す重要ポジションを担います。

参考:【溶接の資格】種類一覧!費用と取り方&難易度別!プロの溶接工が取っておくべき資格

必須知見Q8. 溶接にはどんな種類があるのか?  

溶接は、融接・圧接・ろう接の大きく3種類に分かれます。

(1)融接融接は、母材の溶接したい部分を加熱して、母材のみもしくは母材と溶加材(溶接棒)を溶かして接合する溶接です。

参考:融接とは?代表的な種類とメリット・デメリットを解説

(2)圧接圧接は、機械的な圧力を接合部に加えて接合する溶接です。

参考:圧接とは?代表的な種類や特徴、メリット・デメリットを解説

(3)ろう接「ろう」と呼ばれる母材よりも融点の低い金属の溶かし、接合面のすきまに流し込んで接合する溶接です。

  • 硬ろう(融点高め)を用いる:ろう付
  • 軟ろう(融点低め)を用いる:はんだ付

の2種類があります。

参考:ろう付けとは?代表的な種類や特徴、メリット・デメリットを解説

必須知見Q9. 溶接ビードとは?

溶接ビード

「溶接ビード」とは、溶接後の接合部が波状の盛り上がりを持っている箇所を指します。ビードを適切にカット処理することで、製品の外観が向上します。

波の間隔が一定であるほど、溶接者の技術力が高いことがわかります。

必須知見Q10. レーザー溶接のメリットとデメリット

近年、脚光を浴びているレーザー溶接のメリットとデメリットを以下にまとめました。

レーザー溶接メリット

①歪(ひずみ)が少ない⇒他の工法よりもピンポイントで加熱できるため、短時間で接合可能

②光が熱源⇒電流、電圧、磁力などで、製品がダメージを受けにくい

③微細な加工⇒他の工法では困難な微細加工も可能

④異種材料間の溶接⇒融点の異なる異種材料の溶接が他工法と比較的容易にできる

⑤非接触加工ができて、電極をメンテナンスしなくてよい⇒TIG溶接や抵抗溶接ではメンテナンス必須

⑥分岐できる⇒レーザ溶接機が1台あれば、複数台の自動機に対応できる

デメリット

①溶接箇所の精度管理が必要⇒接合部の合金層にブローフォールやクラック等の溶接欠陥が発生しやすい

②安全対策を十分に行わないと危険⇒日本工業規格「レーザ製品の放射安全基準」JIS C 6802を推奨

メルマガ購読

Intuit Mailchimp

カテゴリ一覧