製品の仕様図や設計図などに見られる、±の横に書かれた数字。図面を扱ったことがある方は、一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。この数字は、「公差」と呼ばれるもの。製品の仕上がり・精度を左右する、重要な数字といえます。また、これと似た言葉に、「許容差」というものもあります。どんな違いがあるのでしょうか。
本記事では、公差とはどのようなものなのか、また、許容差との違い、板金加工における公差について、分かりやすく解説します!
板金加工における公差を設定するコツ!
公差とは?
「公差」は、英語では tolerance と記載します。公差とは、簡単に言うと、工学において「許容される差」のことを言います。
具体的には、できあがった製品・部品についての「許容される、誤差を含んだ寸法幅」を意味します。
例えば、作りたい製品の寸法が10mm(基準寸法)の場合。その図面に、「公差+0.5」と書かれている場合、もちろん加工段階では10mmを目指して作るのですが、結果として出来上がったものが、「10.5mm」でも、許容範囲内にある、と判断するのです。
公差には、片側公差や両側公差、部材を穴に通す場合は穴公差(嵌め合い公差)と呼ばれるものがあります。
板金加工や機械加工など、製品製作の際には、どうしても誤差が生じてしまうものです。これは、材のゆがみやひずみ、また加工時のずれ、塑性変形などが原因とされています。
一方で、それら誤差をなくすよう限りなく精度を上げることによって、コスト・手間がかかってしまうことも事実。そのため、製品として支障のない範囲の誤差を許容する「公差」があるのです。
許容差とは?
一方、「許容差」は、「公差」が指定した許容幅に、方向指定を加えることで、より具体的に定めたものといえます。
例えば、公差で取り上げた同様の例で説明すると、「基準寸法10mm、公差+0.5、許容差+0.3/-0.2」と設定されている場合、寸法の許容される誤差幅は全体として0.5mmですが、許容差「+0.3/-0.2」が指定されることで、その公差0.5mmのうち、基準軸から上方向には0.3mm以内、下方向には0.2mm以内しか、誤差は許されません、という指示になります。
このように、許容差は、公差をより具体化し、ある基準軸から上下方向に対しての誤差の数字を指定するものといえます。
公差の数値指定
とはいえ、公差の数字に関しては、自由に指定できるものではありません。製品において、「許される誤差」として、適切な範囲で数値を設定する必要があるからです。
日本には、工業規格である「JIS」があり、様々な製造物は、このJIS規格に準拠して作られています。そしてまた公差も、このJIS規格によって適正な値に定められています。
JIS規格の公差にも、様々な定義方法があり、その中でも最も一般的といわれているのが、「普通公差」です。もし図面に、「JIS B 0405」と書かれていたら、普通公差の規格を採用していると判断することができます。
引用元:マイナビニュース テクノロジー
板金加工の公差(許容差)
板金加工における公差もJIS規格で定められていますが、加工方法によって値が異なります。
せん断加工品については、「JIS B 0410」を、その他打ち抜き、曲げ、絞り加工については、「JIS B 0408」を用います。
以下、各加工における普通寸法許容差をご紹介します。
打ち抜き加工
引用元:共栄プレス工業株式会社
曲げ加工・絞り加工
引用元:共栄プレス工業株式会社
せん断加工
各表を見てわかるように、許容差には等級があり、数値の厳しさが異なります。
公差まとめ
ユーザーや購入者としては、精度の高い製品を望むものですが、実際は加工する上での誤差は避けられないもの。それをどこまで許容範囲と捉えるかを示したものが「公差」です。
とはいえ、公差内に収めるにも、加工側の技術力が伴います。ぜひこの機会に、板金加工製品の細部にも、意識を向けてみてくださいね。