ステンレスは、加工を施すことで、家庭用品や機械製品といった色々な製品に仕上がります。ステンレスの加工には、切断・曲げ・溶接・切削など様々な加工方法が存在しますが、中でも曲げ加工は、ステンレス加工の中でも高い技術が要求されます。
今回は、そんなステンレスの曲げ加工についてご紹介します。ステンレスに興味がある方や、曲げ加工を金属加工メーカーに依頼しようと考えている方はぜひご一読くだざい。
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ステンレスってどんな材料?
ステンレスとは、正式にはステンレス鋼といい、ステンレススチールとも呼ばれます。ステンレスの本来の意味は、「錆びない」という意味です。その名の通り、ステンレスは非常に耐食性が高く、さびにくい特性を持っています。その理由は、表面上に、不動態被膜という微細な被膜が形成されているからです。不動態とは、金属の表面に酸化被膜が形成され、腐食に対する抵抗力が向上する状態のことです。酸化皮膜は、酸や溶液に漬けてもなくならないため、内部の金属を保護することができます。
不動態被膜は化学的に安定しているため、ステンレスの表面が傷つき剥がれても、すぐに再生する特性があります。
また、ステンレスは合金鋼といわれており、クロムやニッケルを含む金属で、様々な種類が存在します。
ステンレスの種類は主に、①マルテンサイト系②フェライト系③オーステナイト系に区別されます。
ステンレスの種類
①マルテンサイト系
②フェライト系
③オーステナイト系
①マルテンサイト系
マルテンサイト系のステンレスは、マルテンサイトの組成をもつステンレスです。マルテンサイトとは、鉄鋼材料の組織の中で最も硬度が高く、脆い性質を持っている組織です。焼き入れという熱処理を施すことによってステンレスの中でも最硬度を持つことができます。
マルテンサイト系のステンレスは、刃物やブレード系の部品に加工されることが多いステンレスです。
②フェライト系
フェライト系のステンレスは、フェライトの組成をもつステンレスです。フェライト系には様々な鋼種があり、チタンや銅等の合金元素が添加されます。フェライト系は、熱膨張が少なく、加熱後の冷却でも表面スケールが剥がれにくい特徴があります。また、磁性があり、磁性の必要な部品などにも使用されます。マルテンサイト系ステンレスとは異なり、焼き入れなどの熱処理をしても硬化はしません。
③オーステナイト系
オーステナイト系のステンレスは、常温でオーステナイトの組成をもつステンレスです。特徴は、他のステンレスよりも耐食性が高いことです。また、温度差が激しい環境でも他のステンレス鋼よりも強度低下が少ない性質を持ってます。そのため、低温環境や高温環境で使用する機器などの部品に使用されます。しかし、焼き入れ等の熱処理による硬度強化はできないため、マルテンサイト系より強度は落ちます。
このように、ステンレスには、様々な種類があります。どのステンレスも特徴が違うため、曲げ加工を依頼する際は、仕上がる製品の用途を考えて選ぶことが大切です。また、素材によっては難加工のステンレスもあるため、注意が必要です。
ステンレス曲げ加工について
ステンレス曲げ加工は、特定の角度や形状に変化にさせる加工で、ベンダーと呼ばれる機械を用いてステンレスを曲げていきます。代表的な加工機械には、板専用のプレスブレーキや、U型など曲線に曲げるロールベンダー、ステンレス管を曲げるパイプベンダーなどがあります。
曲げ加工では、金属材を機械フレームに溝が掘られた金型を用意し、溝に合う凸型を押し込むようにして曲げていくやり方が一般的です。
曲げ加工には、次のような種類があります。
●L字曲げ:アルファベットのL字型に曲げる
引用元:板曲げ
●角度曲げ:90°以外の角度に曲げる方法で、度曲げとも呼ばれる
引用元:中本鉄工所
●コの字曲げ:カタカナのコの字型に曲げる加工
引用元:ミスミ
●Z型曲げ:アルファベットのZのような断面を作る加工
引用元:株式会社フカサワ
●ハット型曲げ:帽子の断面のような仕上がりになる曲げ加工
引用元:小寺工業株式会社
●チャンネル曲げ:C型チャンネルと同じ形状に曲げる
引用元:モノタロウ
●箱型曲げ:四方を箱の様に曲げる方法で四方曲げとも呼ばれる
引用元:NCネットワーク
参考:【ステンレス加工】加工方法や加工実績について徹底解説!!
ステンレス板の曲げ加工について
ステンレス鋼は、曲げ加工が難しい素材と言われています。その理由は、スプリングバックが大きいからです。
スプリングバックとは、加工素材をプレスしても、プレス後に素材の持つ弾性によって、素材の形状が元に戻ってしまう特性です。ステンレス鋼は引張強さが高く、かつ伸びが大きいため、加工に要する圧力は、炭素鋼などの金属に比べ、約1.5倍ほど必要になってきます。
スプリングバックが起きてしまうと、製品の寸法にずれが生じ、製品自体の質が落ちてしまう可能性があります。スプリングバックの原因は、加工素材に圧をかけることによって生まれる「ひずみ」です。そのため、金型製作時に精密な設計を行うことが重要です。また、スプリングバックは、ヤング率(縦弾性係数)で測ることが可能です。
ステンレスは、曲げ加工がしづらい金属ですか、その種類によってもヤング率が若干異なります。マルテンサイト系ステンレスとフェライト系ステンレスが、同じ数値(200kN/mm2)なのに対し、オーステナイト系のステンレスは197kN/mm2と、他の2種類に比べ若干低いです。
一般的に金属板の曲げ加工は、ベンダー曲げを行います。ベンダー曲げとは、金型とパンチに合わせて、加工素材をプレスする曲げ加工のことです。
ベンダー曲げには、V曲げ・L曲げ・Z曲げ等の他にも様々な種類があります。その中でも、代表的な曲げ加工であるV曲げ加工には、①エアーベンディング②ボトミング③コイニングの3種類があります。
①エアーベンディング
エアーベンディングとは、加工素材を軽く金型に押し込む曲げ加工です。加工素材を金型に押さえつけないため、力がかかる部分は、型とパンチを合わせた合計3か所のみになります。このことから、エアーベンディングは、パーシャル(部分的)ベンディングとも呼ばれています。
エアーベンディングでは、金型よりも鈍角な角度であれば全て曲げられます。そのため、使用する型によっては、様々な曲げ加工を行うことが可能です。しかし、エアーベンディングは、パンチの加減のみで加工するため、高い技術力が必要となります。
②コイニング
コイニングは、加工素材を型にしっかりと食い込ませ、プレスするベンダー曲げのことです。コイニングでは強い圧力が必要とされます。圧力は、他の曲げ加工と比較しても5倍ほどの力が必要とされており、高い技術力が必要です。コイニングは、大きな力が必要なため、加工できる板厚が薄く、加工限界は2㎜ほどになります。現在ではあまり使用されない方法です。
③ボトミング
ボトミングとは、型に合わせて底押しするプレスのことです。ボトミングは、型の両側に、大きな圧力を加えます。その為、型の角度が90°のものを使用していていれば、加工素材を85°~89°ほどの幅で曲げることができます。この方法は、素材を型に押しつけないため、コイニングと比べて少ない力で曲げ加工を行えることが特徴です。また、エアーベンディング程の高い技術力もいらないため、多くの加工で使用されています。
曲げ加工製品事例
引用元:有限会社案浦製作所
引用元:海内工業株式会社
引用元:井上商事株式会社
ステンレス曲げ加工のお見積りならお任せください!
今回はステンレスの曲げ加工についてご紹介しました。
ステンレスには様々な特徴があります。その特徴や性質を理解することで、依頼する際にも手間取らずに済みます。
金属加工メーカーの中には、ステンレスの曲げ加工を依頼できない会社もある為、依頼する際には十分に調べたうえで、依頼することをおすすめします。
この記事を読んで、今までステンレスの曲げ加工について知らなかった方や、知っていても疑問が残っていた方々のお役に立てれば幸いです。
また、ステンレスの曲げ加工についてお悩みの時は、ぜひMitsuriにご相談下さい。
Mitsuriは、日本全国に協力企業が250社ございます。そのため、お客様にとって最適な素材の選択に加えて、ステンレスの曲げ加工が得意な工場のご紹介も可能です。
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