「板金」は、板状の金属という名前から想像できる以上に奥深いものです。私たちの日常生活の中で使う家電製品や家具など、ほとんどのアイテムは板金なしでは成立しないほど、あらゆる製品や場所などに板金が使用されています。
今回は、幅広いシーンで使われている板金について、主な製造工程から使用される材質の種類、代表的な加工方法やジャンルまでをまとめてご説明します。板金加工を依頼する上で欠かせない基礎知識を、記事を読むことで5分で知ることができるよう、わかりやすく解説していますので、最後まで読んでみてください。
「板金」とは何か?
そもそも「板金」とは、金属の板を加工したもの全般を意味しています。一言で板金と言っても幅広いシーンで使われており、冷蔵庫や洗濯機のボディ、テレビやパソコンの部品、鍋をはじめとするキッチンアイテムなど、自動車や建築物の設備などにも板金は欠かせません。ほとんどの場合、板金は板状から必要な加工が施されて、各製品に組み込まれていきます。
板金の製造方法について
続いて、板金の製造工程について見ていきましょう。主な製造工程を手順を追って、詳しくご説明していきます。
①図面展開・プログラミング:お客様と営業担当との打ち合わせ内容を引き継ぎ、反映された図面をもとに、板金加工用のプログラムを作成します。データの多くはCAD、CAMなどの図面作成ソフトで作成され、加工用のデータもこの段階で作られます。
②切断加工:データをもとに、本体を展開した状態で板金を切り出し、パンチプレス加工またはレーザー加工によって切断します。
③バリ取り:加工した端の部分にできたひげのような部分=バリをきれいに削り取ることを、バリ取りと読んでいます。通常は、バリ取り機やエンドレス、サンダーなどの道具を使って作業が行われます。
④曲げ加工:切断された板金に、プレス機やベンダー機を使って曲げ加工を施し立体化していきます。100種類以上の型を用いています。詳しくは後ほどご説明します。
⑤溶接加工:立体的になった部品を固定するために、溶接して接着します。溶接についても、後ほどご説明します。
⑥穴加工・ネジ山加工:ケーブルを通す、あるいはスイッチなどを埋め込むための穴を開ける作業や、ネジを固定するためのネジ山加工が行われます。
⑦研磨・洗浄:仕上げ工程として、表面を磨き上げる研磨や、溶接、穴加工などによるバリ、金属粉などをきれいに洗浄して落とします。
⑧二次加工:塗装やメッキ、鏡面仕上げなどの表面処理加工に入ります。この工程の多くは、他社に移動して行われます。
⑨最終チェック・検査後出荷:各工程ごとの確認の他に、全体を改めて最終確認してから出荷されます。
板金の加工方法について
板金の加工方法には、大きく分けて次の4つの方法があります。
●切断
●曲げ
●絞り
●溶接
それぞれの方法について具体的に解説していきます。
切断
切断加工は、金属を切断する加工方法で、色々な機械が用いられます。シャーリングマシンと呼ばれる機械によるシャーリング加工のほかには、レーザーのエネルギーを利用して、切断面を溶かしながら切断するレーザーカットなどの方法があります。
曲げ
曲げ加工は、板金を曲げて形状を作っていく作業で、さまざまな方法があります。
例えば以下のような方法です。
●突き曲げ(V曲げ):曲げる部分の線沿って力を加えて曲げる
●押さえ曲げ(L曲げ):台上の材料を押さえて曲げる
●逆押さえ曲げ(U曲げ):台の中に逆押さえを組み入れ、パンチと逆押さえによって加工する
折り曲げるのに使われる金型は、100種類以上と言われており、幅広い形状に加工できます。
参考記事
曲げ加工については、別の記事でも詳しく解説しています。下記記事をご覧ください。
絞り
絞り加工は、一枚の板金に圧力をかけ、継ぎ目を作らずにくぼみを作成する方法で、下記のように円錐、円筒、角筒などさまざまな形状に加工できます。
引用元:絞り加工の基礎知識
絞り加工では、板金本体に傷や継ぎ目を作ることなく、複雑な形状も成形できるというメリットがあります。
参考記事
絞り加工についてのさらに詳しい情報は、下記記事を参照してください。
溶接
溶接は板金同士、あるいは板金と他の金属材料をつなぐ加工で、接合部分に熱あるいは圧力、または両方を加えて接合します。主な加工として、アーク溶接、スポット溶接、半自動溶接、アルゴン溶接の4種類があります。
●アーク溶接:金属材料と溶接棒の間にアークを発生させる方法で、鉄材料に多く使用
●スポット溶接:点状で材料同士を接着する方法で、薄い板金向き
●半自動溶接:溶接ワイヤー送給が自動で行われ、人の手で溶接トーチが操作される加工方法で、効率が良い
●アルゴン溶接:アルゴンガスを放出するタングステン電極を使う加工、薄い板金加工に適している
板金材質について
板金材質は、鉄鋼、非鉄金属、非金属の3種類に大きく分けられますが、ここでは金属板金についてのみ見ていきます。
鉄鋼
鉄鋼には、軟鋼板や表面処理鋼板、ステンレス鋼板などが含まれます。
軟鋼板は、板金加工で最も多く利用される冷間圧延鋼板(SPCC)や熱間圧延鋼板(SPHC)が代表的です。
表面処理鋼板は、軟鋼材の表面にメッキ加工、あるいはメッキの上から塗装したものです。
ステンレス鋼板は、低炭素鋼にクロムまたはクロムとニッケルを12%以上添加した板を指し、Steel(鋼)、Special Use(特別用途)、Stainless(さびない)のイニシャルをとってSUS(サス)とも呼ばれます。
非鉄
非鉄材料は、アルミニウム板、銅合金板などが含まれています。
アルミニウム板は、軽量で加工しやすく、熱伝導性や導電性が高いのがメリットです。装置などのカバーとして使うために加工するケースも増えています。
銅も熱伝導性や導電性が高いものの、高額なので構造部品にはめったに使われていません。
板金加工のジャンル
板金加工のジャンルには、大きく次の3つがあります。
●自動車板金
●建築板金
●工場板金
各ジャンルの加工について、詳しくご説明していきます。
自動車板金
自動車板金は、自動車のボディや内部部品などに使われている板金です。自動車製造の際には、機械を使って流れ作業的に切断や絞り、溶接といった加工が施されてボディが完成します。しかし、事故や老朽化に対する修理の場合は、ボディには非常に局面が多いので高い修理技術が求められます。
建築板金
建築板金は、住宅の屋根や外壁、ダクトなどの設備を含めた建築物に関する板金です。建物の外側にある屋根や外壁、雨樋などの施工と、内部にある天井裏配管やキッチン設備、ユニットバスなどの2タイプに分けられます。
使用される材料には、トタン屋根にはトタン板とも呼ばれる亜鉛メッキ鋼板や、ステンレス鋼板やアルミニウム合板などがあります。外観デザインとの兼ね合いも考慮しなければならず、高い加工技術やセンスが要求されるジャンルです。
工場板金
工場板金は、板金で作られた幅広い工業製品に使われる製品や部品です。家電やスマートフォンといった日常的に使用している製品の部品の多くを指しています。
プレス加工と精密板金加工という2つの種類がメインで、大量生産する場合は金型を用いたプレス加工、生産量が少ない、またはプレスでは加工できない形状の場合は精密板金加工ます。
まとめ
板金は、私たちの生活の中で欠かすことのできない身近なアイテムであることがおわかりになったでしょうか。板金を加工する際には、板金を使用する用途や環境条件に合わせて、適切な材質や加工方法を選ぶことが、板金加工を成功させる秘訣と言えるでしょう。
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