技術を追い求める 株式会社 セイコー

インタビュー | 2020年06月09日

株式会社 セイコー」の記事で、設備を導入しても技術で差が出ると伺いました。技術を高める上で重要なことを教えてください。

村下氏

溶接がいい例ですね。
弊社では、ファイバーレーザー溶接を導入しています。
ちょっとお待ちくださいね。サンプルをお持ちします。

村下

SUS430です。曲げたのではなく、2枚の板を溶接してつけています。TIG溶接ではつきませんし、YAGレーザー溶接でもつきづらいものです。

村下氏

こちらはSUS304。フィラーを使って、隅肉溶接を行なったものです。これは溶接してすぐの状態を見て頂くためにあえて酸洗いしていないんですよ。

溶接すると、表面が汚れてしまうというイメージがあるのですが。

村下氏

そうなんです。
これだけ綺麗に溶接するのはファイバーレーザでなければ不可能です。

(※)フィラー…より強度が欲しい溶接をする際はフィラーワイヤーと呼ばれる金属線を用い金属を流し込むことがある。
https://www.youtube.com/watch?v=18JCszLVcDQ
(※)酸洗い…溶接すると溶接部が酸化して黒くなったり、焼けがでるので薬品を用いて除去することが一般的だが、溶接の技術できれいな仕上がりになっている。酸洗いしていない証拠が裏面に残った溶接焼け跡。http://www-it.jwes.or.jp/qa/details.jsp?pg_no=0050020720

ロボットやファイバーレーザー溶接機を導入されても技術の差というものが出るのでしょうか。

村下氏

単に溶接するだけなら誰でもできますが、綺麗に溶接するのは難しいです。ただ溶接するだけときれいに溶接することは違いますよね。
職人の知識や腕があるからきれいに溶接することができるんです。

こちらはアルミの溶接です。

村下

アルミというのは、裏ビードがないと強度がでないんです。
溶けた部分が完全に溶けこむことで、強度がでるんですね。
基本的に裏ビードがでないと、バリッと割れちゃいます。
だから、今まではアルミの溶接は盛った方がいいといわれていました。
ファイバーレーザー溶接機を導入したので、アルミの溶接を綺麗に仕上げてみました。
でも、綺麗すぎたんでしょうね。
「強度大丈夫?盛りが少ないから心配だ」っていう意見を頂戴しました。
実際にファイバーレーザー溶接での溶接、特にアルミに関してはデータが少なく、お客様に安心して頂ける様、強度を裏付ける資料を作成することにしました。

そこで、産業技術センターに持って行って引張試験(強度試験)したんです。
結論だけいえば、従来のTIG溶接よりも強度がでたんですよ(笑)

このような技術を会得するのにどれくらいかかったのでしょうか。

村下

一年かかりました。
ファイバーレーザー溶接機を入れてから、アルミを安定的に綺麗な溶接ができるようになるまでに。
それぐらい難しいんですよ。裏ビードを出して、かつ綺麗なビードに仕上げることができる人は多くないでしょうね。

技術を身につける上で大切にしていることはありますか。

村下氏

「いいものを知らなければ、いいものはわからない」。
この業界に限らず、他の業界でも「いいもの」を知らない人が増えてきている。
どうも安ければいいという考えが広まってきてしまっているように思います。
でも、「いいもの」はそれなりの値段がします。
例えば、服や音楽。
ファストファッションが流行ってきているけど、それでいいのでしょうか。

この業界でいえば、材料なんかがいい例ですね。
輸入物の材料は確かに安い。
それに対して、国産のミルシート付きのものはそれなりの値段がする。でも、どこに持って行っても通用する。
ただ安いものと、どこへ出しても恥ずかしくないもの。
どっちがいいのでしょうか。製品にも同じ議論が当てはまると思いますよ。

なるほど。他の業者さまの製品を見て、いいなと思うことはありますか。

村下

もちろんあります。
街を歩いているときにもいつも感じています。
最近でいえば、ホテルに泊まったとき。
手すりが綺麗で、いい仕事をしているなぁと思いました。
その逆もあります。こんなに雑な仕事して恥ずかしくないのかなとか(笑)

本当に技術を追い求められていますね。そのような姿勢はどこから生まれてきたのでしょうか。

村下

もともとは、板金加工とは全く違う仕事をしていたんです。アメリカに留学して、現地でミュージシャン、エンジニアとして活動していました。
ジャンルとしては、ヘビーメタル。
僕の師匠はRyan Greene(ライアン・グリーン)という方で、Hi-STANDARD(ハイ・スタンダード)のプロデュースも行なっています。

ずっとスタジオにこもって、仕事をしているような感じでした。僕の師匠は、本当に凄いヒトだったのでその背中をずっと見ていました。もっといい音を録りたい、っていう一心で。

言ってみれば、もう超一流と呼ばれる方。
そんな人が目の前でどんどんレベルアップしていく。
それを見ていたら、現状に満足なんてしていられないですよね。
もっと勉強しなきゃって必死になりますよ。

そこで学んだことが今に生きていますね。
現状に満足しない。
常に進化する。
だから、僕は今でも「もっとよいものを」って思いながら仕事してます。「もっとよいものを」。
それが、お客様に求められていることだと思うからです。技術者に一番必要なマインドだと思います。

音楽業界を経験してから製造業に従事されたのですね。共通点や相違点など、何か感じるものはございますでしょうか。

村下

音楽業界と製造業界は似ているところが多いです。
先ほど言ったように、「いいもの」を知らないお客さんが増えてきています。
理由はシンプルで、予算がないから。
昔は音楽にも、何千万・億といった予算がありました。
そして、経験のあるプロデューサーや作詞・作曲スタッフがいました。
それに対して今はどうでしょう。誰でもホームレコーディングできるようになりました。
俺レコーディングやってるぜ、って簡単に言える時代です。
でも、実際にその人達の中に、第一線で、本物の現場でどれだけ経験を積んできた人がいるんですか。
そういう疑問を持っちゃいますね。

今メインストリームで流れている音楽と70年代・80年代のレコーディング・エンジニアが録った音はまるっきり違いますよ。
40年前の方が音がいいっていうのは、どういうことなのかみんなちゃんと考えていますかね。

製造業も一緒です。タンスひとつとっても、昔の職人が作ったものをは長持ちします。
それに対して、今作られている多くのものや安い品物は全然長持ちしませんね。
昔は「いいもの」にお金を出していたんですね。
そこにお金を払わないようになってきた。

音楽でいえば、同じようなサンプルを使って、ミュージシャンを使わない。
ただ、音源のコード進行を変えたりアレンジしただけとか。全然面白くない。
聞けたような歌ではないものも多いですよね。

なるほど。日本とアメリカで仕事の仕方に違いを感じますか。

村下

そうですね。
日本に戻ってきて、カルチャーショックだったのは、日本人の段取りの悪さ。
とても無駄が多い。きっと危機感がないからなんでしょうね。
日本のサラリーマンは普通に仕事していたら、クビはなることないですよね。
アメリカは、仕事は自分で勝ち取るものというスタンス。
準備ができておらず、段取りがまずかったらクビです。

どうやったら、早く終わるか。
どうやったら、作りやすいのか。
そいうことを常に考えておくことが大事です。
今まで通りにやることは、美徳でもなんでもありません。

「いいもの」を知ることの重要性については理解しました。製造業における「いいもの」をどのように知ればいいのでしょうか。なかなか知る機会がないようにも思うのですが。

村下

難しいですね。
そもそも、製造業に対してあんまりいいイメージがないかもしれませんし。
製造業は、3K(きつい、汚い、危険)に加えて、賃金などが安い。
そういうイメージがついてしまっているかもしれない。
確かに、夏場はしんどいですけど(笑)

ただ、この仕事には、この仕事ならではの楽しさがあります。
「あれ作ったの俺だぜ」と言える仕事は、デザイナーなどを除けばそうはないですよね。
歴史に残るものを作れる。そういう楽しさがありますよ。

もちろんフィジカルな部分も多い。
でも、創意工夫って要は、クリエイティブな部分。
このクリエィティブな部分を大事にしたい。
それが、技術を追い求める姿勢につながっているのかもしれませんね。
今は、B to Bの仕事がメイン。
でも、今後は個人のお客様に対しても、喜んでもらえる製品を作れるようにしたいですね。
この記事を書いた人
Mitsuri編集部
Mitsuri編集部

Mitsuriは、お客様に寄り添い、製造プロセスに関わる課題をトータルに解決する「お客様の最適な生産活動を達成するコーディネーター」です。記事内容に関するお問い合わせはこちらへ。

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