タングステン加工について、タングステンの特徴を踏まえて解説!

タングステンという金属をご存知でしょうか。原子番号74の元素で、元素記号はドイツ語のWOLFRAM(ウォルフラム)にちなんで、Wとなっています。タングステンは遷移金属に分類され、レアメタル(地殻中の存在量が比較的少なかったり、採掘と精錬のコストが高いなどの理由で流通・使用量が少ない非鉄金属)の一つとなっています。鉄やアルミニウムのように、普段の生活でよく耳にするような金属ではないのですが、実は、私たちの身の回りの様々なところで利用されているのです。

今回は、タングステンについて、その特徴や、どんなところで使用されているのか、またタングステンを加工する上での注意点、加工事例など幅広く解説していきます。タングステンについてさらに知識を深めたい方や、タングステンの加工でお悩みの方は、ぜひご一読ください。

タングステンとは

まずは、タングステンの特徴について見ていきましょう。主に、タングステンの特徴は①高い耐熱性、②高金属密度の2点となります。それでは、詳しく解説していきます。

①高い耐熱性

タングステンの融点は、3422℃と、金属の中で最も融点が高いと言われています。その高い耐熱性から、熱処理炉など超高温下で使用される材料として広く活用されています。また、熱膨張率が低く、超高温での形状安定性が極めて高いという点も、タングステンの特徴の一つと言えます。

②高密度で加工が難しい

タングステンの金属密度(比重)は19.3g/cm3と、金とほぼ同じであり、鉄の約2.5倍、鉛と比べても、1.7倍となります。タングステンという言葉は、スウェーデン語で「重い石」という意を持つのですが、その名の通り、非常に重い金属となっています。

また、金属密度が高いことから、放射線遮へい能力に優れているという特徴を持ちます。鉛も同様に、X線やガンマ線などの放射線の遮へい材にもなるのですが、環境負荷が大きく、人体への影響も大きいというデメリットがあります。

一方で、タングステンは環境負荷が小さく、さらに放射線遮へい能力においても、鉛より高いため、X線CTなどの医療分野で活躍しています。このように、普段身近に感じない金属ですが、工業用、医療用として私達の生活に密接に関係があります。

また、タングステンは硬度が高いという特徴も持っています。炭素などと結びつくことで、さらに硬度が高くなり、モース硬度ではダイヤモンドの10に次ぐ、9にランクされます。タングステンの炭化物であるWC(タングステンカーバイド)はそのように、非常に硬度が高いことから、ドリルや旋盤など、金属の切削工具として広く利用されています。

身近に使われているタングステン

タングステンの特徴について理解したところで、次は、それらの特徴を踏まえて、実際に私たちの身の回りで、どういったところにタングステンが使用されているか見ていきましょう。

高い耐熱性を活用した使用用途

タングステンの一つ目の性質である、高い耐熱性を利用して、白熱電球のフィラメントや電子レンジのマイクロ波を発生する、マグネトロンに使用されています。なお、以前はフィラメントによく使用されていましたが、近年はLEDが多用されるようになったために、フィラメントとしての需要は減っています。

高い密度を活用した使用用途

また、金属密度(比重)が高いという性質を活かして、釣りの重りやゴルフ道具のウエイト、さらには腕時計の重りなど、比較的狭いスペースにもかかわらず、しっかりした重量が必要な場所において使用されています。

タングステンは、私たちの身近なところで活用されているということが分かりますね。

タングステンの加工の仕方

これまで、タングステンの特徴を見てきましたが、硬度が高く、融点が高いという特徴から、加工が非常に難しい金属として知られています。また、切削加工の被削性の観点から見ても難削材にあたるため、加工にあたってはいくつか注意するべきポイントがあります。ここでは、そのような難加工材であるタングステンを加工する方法について説明していきます。

タングステンの旋盤加工

タングステンに旋盤加工を施す場合、チップ素材の選び方で面粗度に差が現れます。

例えば、超硬合金(タングステンカーバイドとコバルトを焼結した材料)のチップを用いると、チップの先端形状のすくい角が小さくなり、切りくずの厚さも厚く、切削抵抗が大きくなるため、結果、面粗度が荒くなってしまいます。

<超硬度のチップを用いた場合>

一方、サーメット(チタン化合物とニッケルやコバルトを焼結した材料)のチップを用いることで、すくい角が大きくなり、切りくずの厚さも薄く、切削抵抗が小さくなるため、面粗度を上げることが可能となります。

<サーメットのチップを用いた場合>

引用元:株式会社イプロス

タングステンのフライス加工

タングステンのフライス加工においては、荒加工を湿式(水や切削油剤などのクーラントを使いながら加工する方法)で、回転数を落として行い、仕上げ加工を乾式(水や切削油剤などのクーラントを使わずに加工する方法)で行うことにより、安定した仕上がりになります。仕上げ加工を湿式で行うと、刃物が逃げる傾向があり、仕上がりが安定しないので注意が必要です。

フライス加工では、加工条件の設定が不適切な場合、特に硬い材料ではワークが熱を持ち、加工硬化を起こすので、適切な加工条件に設定することが重要となります。

<切削熱の発生因子>

引用元:難削材加工コストダウン.COM

タングステンのタップ加工

タングステンのような難削材をタップ加工する際には、大きな負荷が掛かるため、タップが折れやすく、さらに送り速度も制限されるので、加工に非常に長い時間がかかります。そのため、荒加工で穴を空けた後に、通常のタップではなく、プラネットカッタを使用することで、劇的に加工時間を短縮することが可能となります。

<プラネットカッタ>

引用元:株式会社MonotaRO

参考記事切削加工に関する基礎知識については、以下の記事で詳しく解説していますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。⇒【切削加工とは?】特徴・種類・注意点を動画と一緒にご紹介します!

タングステンの加工事例

最後に、タングステンの加工事例についてご紹介いたします。

〈イモネジ(NC施盤加工、長ネジ加工))

引用元:株式会社トップ精工

<タングステン加工品(マシニングセンタ加工、左半分:R溝加工、 右半分:貫通穴とネジ加工)>

引用元:株式会社トップ精工

<タングステンボート(マシニングセンタ加工、ザグリ加工)>

引用元:株式会社トップ精工

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加工が非常に難しいと言われているタングステンでは、加工メーカーを選ぶのも難しくなるでしょう。

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