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限界を超える試作専門工場 クロダ精機株式会社

インタビュー | 2022年12月14日

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クロダ精機株式会社は、長野県下伊那郡にある試作専門の板金加工メーカーです。

その特性上、短納期を求められることが多く、工場は年間350日稼働をしています。

プレス加工品の試作を主に行っており、技術上、難しいものでもどうしたら製作できるかを常に考え、限界を超えていくことを目指しています。

今回は代表取締役社長の佐々木俊一(ささき しゅんいち)氏にお話を伺いました。佐々木氏には、2018年に一度、インタビューをしています。コロナ禍を経て今、思うこととは。


取材日: 2022年11月15日


2018年度のインタビュー記事はこちら:https://mitsu-ri.net/factories/kuroda

クロダ精機株式会社について

所在地:〒399-3202 長野県下伊那郡豊丘村神稲(クマシロ)9268-1

TEL:0265-35-1101

FAX:0265-35-1103

設立年:1970年(昭和45年)4月

代表取締役:佐々木 俊一

事業内容:精密プレス部品試作

ホームページ:https://kurodaseiki.co.jp/


試作専門会社として経営すること

今回も取材を快く受けていただきまして、ありがとうございます。2018年度のインタビュー時もお伺いしましたが、改めて御社の事業概要と強みを教えてください。

佐々木氏

プレス部品の試作を専門にやっています。
基本的には試作品のみの製作を行っていますので、珍しい業態かもしれません。

試作は利益的に美味しい、というのは一般的に言われており、良いところばかりと思われるかもしれませんが、悪い面もあります。
もちろん試作そのものの利益は出ます。
しかし、試作は生産計画が無く安定性がありません。
ですので、試作だけで経営を安定させるのはとても難しいことなのです。

試作だけで売上を立てていくことはとても難しいことなのですね。試作専門で経営を行うために何か意識していることはありますか。

佐々木氏

とにかく幅広く、全国のお客様と関わるようにしています。
そうしないと、一社の試作をメインに対応していたとして、その会社が「試作はやりません」となった場合に売上が立たなくなります。
お客様の会社方針で試作をやらないとなった場合や、業態転換をされた際にお仕事がなくなってしまいます。
ですので、展示会への出展を中心に、常に新しいお客さんと繋がることを大切にしています。

ありがとうございます。御社のHPを拝見すると、とても難しいものを製作されているように思います。

佐々木氏

近年は試作品自体が非常に難しくなってきていますし、お客様の要求も厳しくなってきたと感じています。
試作と言っても、以前は「それっぽい形ができていればいい」という風潮がありました。
しかし、近年は難易度が高い試作でも「試作品で評価するので、図面通りじゃないと困る」「設計が確かなものか確認するので、設計通りのものがないと試作として使えない」とよく言われます。
難易度が高い試作を作ることは難しいですが、品質的に良いものを求められているのでついていかなくては、と思っています。

佐々木氏

ただ、作り込みすぎると「無理に作るな」と怒られることもあります(笑)
試作はできたけど量産はできなかった、という状況になってしまうからです。
ですので、技術的に難しい部分は正直に伝えるようにしています。
同じ機能であれば簡単にした方が量産も簡単にできるので。
一時期は意地で図面通りのまま、試作品を作っていました。
しかし、難しい点はお客様に伝えて試作をやってかないと、ただものを作るだけの試作屋さんになってしまいます。
試作品は開発途中のため、自由度が高いです。
そのため、お客様と一緒にものを作り上げていくようにしています。
単純に出来上がったものだけでなく、「相談もできるし提案もしてくれるので、少し高くてもクロダ精機にお願いしたい」と仰っていただけます。

限界を超えすぎてもいけないのですね。他に強みがあれば教えてください。

佐々木氏

短納期に対応できる体制を整えています。
試作を専門にしていると、「設計はいつもギリギリまでかかるけど組み立ての日は決まっています」というように、短納期を求められることも多いです。
そのため、基本的に当番制にして土日も動かし、年間で350日稼働しています。
金曜日に図面をもらって月曜日に納品ということも可能な限り対応できるように体制を作っております。

コロナ禍の工場経営

コロナになって自動車の工場がストップしてしまったと聞きました。打撃は大丈夫だったのでしょうか。

佐々木氏

全然ダメでしたね。
去年の夏は東南アジアでかなりコロナが流行し、ロックダウンになりました。
日本の自動車は東南アジアで部品を作成しているものが多かったようで、これにより生産が止まってしまいました。
部品がないので車は製造できません、というわけにはいかないので、メーカーの方は国内に急遽ラインを作って製作していたようです。
この期間はメーカーが試作どころではなくなってしまい、一時期は試作の依頼が減りました。
試作自体がなくなってしまった、というのはなかったのですが、先送りにして車の製造を優先する、という感じになっていましたね。

ただ、リーマンショックを経験していたので、当時と比べると今回は気持ちの余裕がありました。
当時の方がより酷かったですね。
今回も全然楽ではありませんが、「リーマンショックを乗り越えたのでなんとかなる」という気持ちがあります。
終わりが全然見えないのは少し辛いですが。

以前のインタビュー時では、代表という立場になられてわずか半年でした。4年ほど経験されてきて何か、考え方や心境の変化はありましたか?

佐々木氏

自社製品を作れたらおもしろいと思っています。
自社製品だと、「こんなふうにすると可愛いよね」「こういう機能を持たせたらもっと便利だよね」「こうしたらうけるんじゃないか」という発想になると思います。
現在は、図面通りに作ってお客様に喜んでいただくということを行っており、「どうしたら図面通りに製作できるか」という考え方です。
このように、自社製品の製作は、図面通りの物を製作することとは全く違う思考回路だと思います。
この発想は、他のものづくりの場面で活きる気がしています。

普段とは違う発想をする機会を作ることにより、相乗効果が見込めるということですね。とても良さそうです。

佐々木氏

はい。昔は自社製品を作ることはできても販売ルートがありませんでしたが、今はECサイトなど方法がいくらでもあるので挑戦していきたいと思っています。

代表になって感じたことは、やはり人や会社の雰囲気作りが大事だと思っています。
言い方が適切かわかりませんが、社風を作ると「楽」だと思います。
例えば、「納期を守りましょう」という当たり前が昔からあります。
「納期を守りなさい」というのは誰も言いませんし、指導をする必要もありません。
入社した瞬間に「納期を守ることは当たり前」という雰囲気になっているので。
このようなものが自然に先輩から後輩に受け継がれていくことができれば、高い水準の「当たり前」な社風が自然とできて、良い環境になると思っています。



佐々木氏

また、コロナ禍になり、約一年間、展示会が無くなりました。
以前は、弊社は開催されている展示会へ積極的に出展していました。
コロナ騒動が落ちついてきて、久しぶりに出展した際に、「やはりこのような活動は大事だな」と思いました。
展示会へ参加できていない間に、かなり自分の視野が狭くなっていることに気づきました。
今では、ネットでなんでも情報が手に入りますが、結局自分が興味ある情報しか引っ張ってくることができていないんですよね。
視野を広げるためには、色々なところに出て様々な人と話さないと、気づかないうちに自分だけの世界になっているだろうなと感じました。

展示会では、新規のお客様と取引は生まれますか?

佐々木氏

弊社の場合、すぐにお取引が発生するということはあまりありません。
展示会でお会いしたときに、「丁度困っていることがある」というお客様もあまり見受けられません。
それよりは、「前に解決できなかったものを解決できる企業を探しておこう」というお客様が多いと感じます。
特に試作の場合は案件がある時とない時があるので、常に試作があるというお客様は滅多にいません。
展示会は種まきだと思っているので、とにかくたくさん種をまいておきます。
そうすると、1〜2年後に「当時の展示会でご挨拶させていただきました。こちら検討していただけませんか。」という連絡をいただくことがあります。
困った時に連絡いただければ嬉しい、という気持ちで活動しています。

日本一の試作屋になるために

今後の御社の目標についてお聞かせいただけますか?

佐々木氏

10年後に、日本一の試作屋さんになろうというビジョンを持っています。
日本一と言っても、規模や売上の日本一を目指すわけではありません。
お客様や社員さんにとっても、日本で弊社にしかない価値のある会社になろう、という意味です。
ナンバーワンではなくオンリーワンを目指しています。
例えば、「弊社に仕事をお願いしていてよかった」「弊社で働いていてよかった」など。
このような点で日本一というのを目指したいです。

何か目標に向けて取り組み始めていることはありますか?

佐々木氏

人事評価システムをきちんと作ろうと思っています。
ある社員さんが「会社がどのような方向に進んでいくかわからず、自分がどうしたらいいかわからない」という声を聞きました。
会社のビジョンはあるのですが、それが自分よりもはるか上の方にあって当事者意識が感じられないのかなと考えています。
その目標に向かって、自分がどのように関わっていけるかを明確にできるような人事評価システムを作りたいと思っています。
具体的な小さい目標を立ててもらい、それに対して評価します。
すでに人事評価の項目の定型ができていて、それに◯や×をつけるのではなく、個人の目標を評価する仕組みにしたいと考えています。
それだけでは評価できないその人の良さというのがあると思うんです。
例えば、「仕事はいまいちだけどムードメーカーを担ってくれている」など。
このような人も必要ですよね。


ありがとうございます。以前に製造業全体の課題について、お伺いしました。コロナ禍を経験されてきた今、改めて感じることをお聞かせください。

佐々木氏

コスト競争が激しいので、将来、日本の工場が生き残っていけるのか心配です。
特に機械加工よりも板金加工はこのような傾向が強いように感じます。
弊社はプレス加工部品を設計しているお客様が多いので、正直わからない点も多々ありますが、機械加工よりも板金加工では精度を出すことが難しくここまでしかできない、というものが多いのではないでしょうか。
「ここまでしかできない」というのも、限界を超えていかないと先が不安かなと。
弊社は小さいものに特化し、限界を超えていくことを心がけていますが、大きいものはどうなのかが気になりますね。
板金の技術を活かしたおもしろい自社製品を作っている会社はありますが、ここを見ているのはどのくらいの人たちがいるのか。
みんなで新しいものや技術を生み出して製造業を盛り上げていきたいです。

まとめ


目指すのは、オンリーワンな会社。


限界を超えることは、製造業を支えることにもなる。


クロダ精機株式会社は、お客様や社員の声を聴きながら、日本一の試作屋の道を歩む。


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この記事を書いた人
株式会社Catallaxy

株式会社Catallaxyは "未来の製造業をつくる" をミッションに掲げ、製造業における従来のサプライチェーン/バリューチェーンの刷新を目指しています。記事内容に関するお問い合わせはこちらへ。

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