【インタビュー】板金加工業界の問題について!小渡邦昭氏に伺いました(前編)

コラム

【インタビュー】板金加工業界の問題について!小渡邦昭氏に伺いました(前編)


快く取材を引き受けていただき、ありがとうございます。まず、板金設計の観点から、小渡さまにお話を伺いたく考えています。板金加工業界の課題に一つに、設計者(エンジニア)と作業者(ワーカー)でコミュニケーションが上手く取れていないと伺ったことがあります。この辺りから、お話を聞かせてください。

小渡氏

はい、コミュニケーションの問題ですね。
確かに、いきなり技術的な話を両者の間で問題なくできるかというと、それは難しいと思います。
ただ、私の個人的な感覚では、設計者と加工者の間でミスマッチが頻発しているとは思いません。
今、板金設計を行なっているような企業は、ほぼ20年、30年前には自社工場を持っていたようなところばかりです。
ですから、設計側から見れば、板金加工のことはある程度わかっているという感じがしています。
他方、加工業者から見たら、どうなのか。
ここは、私自身の立場からは何とも言えません。
ただ、製造業全体を俯瞰するような視点に立つと、板金加工がアウトソーシング化されている傾向にあるのは間違いありません。
アウトソーシングされることによって、図面上のコミュニケーション以外の課題が生じてきています。
それは、個々の工場にどのような機械があって、どのような加工を強みにしているのかが見えにくくなってきてているということです。
この部分をきちんと見える化することが、とても大事です。
というのも、そのことによって単なる価格競争とは異なった、付加価値の部分を出しやすくなるからです。
その第一歩として、加工業者が設計者に提案型営業をできるようにしなければいけません。

ありがとうございます。弊社も取材をする中で、必ず「御社の強みはなんですか」と聞くようにしています。ただ、自社の強みが何であるのか、はっきりと認識していないケースが散見されます。

小渡氏

私の理解では、自社の強みを理解するだけでは足りません。
それを、売り出せなければいけないと考えています。
今の時代、とことん安くするといっても、そのために犠牲にするものがあまりに多いですから。
海外との価格競争の問題もあります。
一時、上手くいったとしても、長続きするのは難しいだろうと考えています。
安く製品をつくり上げるためには、最新の機械ではなくて、古い機械を使うということも考えられます。
例えば、曲げのベンダーですが、技術的な部分で言えば、最新の機械では1回の加工で実現できてしまうことがたくさんあります。
これに対して、従来の機械では、2回、3回とトライしながら曲げていかなければいけない。
そうすると、材料にダメージを多く与えてしまうことがあります。
ですから、製品としての機能は、見えない部分ですが、既に劣ってしまっています。
板金製品は意外に外観の方を重視していて、目に見えない機能の部分をあまり気にしない傾向があります。
ですから、実際に物ができていて、外から見て問題がなければいいという人もいます。
私が、板金屋さんとお話をする際には、板金もそうではなく時期が必ず来る、その時に今のような感覚でやっていてはまずいよ、と言うようにしています。
わかりやすいのが、精密機器とか、自動車とかの部品として使用される場合です。
これらの製品に関しては、強度、振動試験に対する要求が上がってきていますので、目に見えにくい機能の部分もきちんと担保しなければいけません。

なるほど。強度についてなのですが、我々のような素人からすると外観を見ただけではどうしてもわかりません、また、加工業者さまの立場に立ったとしても、引張試験を毎回するわけにはいかないように思います。

小渡氏

それは、加工業者の技術力をどのように評価するかの問題だと思います。
まず前提として、技術力はある程度設備で決まってしまう部分があります。
そこは、きちんと把握しておかなければいけない。
先ほど述べた見える化の部分ですね。
発注者はそこをきちんと把握した上で、依頼する案件がどういうものであるのか、きちんと理解して、加工業者を探さないといけません。
長さの問題、厚さの問題、色々ありますが、無理なく仕事ができる加工業者に依頼しないと、長い付き合いは難しいでしょう。

あとは、図面の問題で言えば、3Dなのか2Dなのかは結構大きいと考えています。
というのも、2Dの図面にはどうしても限界があるからです。
2Dの図面では、部品が単体で表示されています。
もし、加工業者が、逆提案を発注業者にしたいのであれば、それらの部品が最終的にどのように組み込まれて、組み立てられるのかということが分かっていた方がいい。
例えば、この部品をこの製品に組み込むのなら、この長さは必要ないとか、ジョイントで上手くいくのではないかとか提案できるんです。
確かに、全体を考えずに単品だけで仕事をすると、図面通りにはできます。
ただ、一生懸命につくった割に、ラフに使われていることもしばしばあります。
そういうミスマッチが起こると、加工業者の方はどうしてもモチベーションが下がってしまいます。
同じ仕事をするなら、モチベーション高く仕事ができた方がいい。
結果、できあがった製品もいいものに仕上がっていることが往々にあると思います。

設備のお話について、もう少しお話を伺わせて下さい。板金加工の面白さは、他の金属加工と比べてある種の柔軟さがあるところにあると考えています。他方で、機械さえあればできてしまうとすると、機械をどんどんと導入しなければいけなくなる。そうすると、板金の持っていた柔軟さが弱くなってきてしまうように思われるのですが。

小渡氏

その点は、仰るとおりです。
私が設備と言うとき、単に機械ということだけではなくて、会社ごとに持っているノウハウのことも含めています。
例えば、曲げる機械を曲げること以外にも使用していることもよくあります。
機械を上手に使用することで、独自のやり方、価値を出している会社はたくさんあります。
直線のもの、湾曲のものを両方ともベンダーでつくってしまう。
よくもわるくも、そういう創意工夫みたいなものは、目に見えにくい部分です。
しかしながら、きちんと光を当てる必要があると思います。
こういう創意工夫が生まれてくるのは、機械の限界費用の問題があるからです。
さまざまな工作機械メーカーがある中で、どうしてもフロントメーカーというものがでてきてしまいます。
そして、フロントメーカーが出てくると、そこの値段が一つの基準になる。
各ユーザーの必要な機能に絞ることで、価格を抑えるという考え方もあるかとは思いますが。
ただ、この問題は競合がしっかりと出てくれば、解決する問題でもあります。

ありがとうございます。これは、私自身が取材した企業さまの話なのですが。そこの企業さまでは、様々な工作機械メーカーのものを積極的に導入していました。同じような能力を持っている工作機械でも、できることや癖のようなものがある。だから、それらの組み合わせで他社にできないような加工を実現できる、とのことでした。

小渡氏

面白いですね。
そのような企業さんは、自社の強みをどこに持っていくのか、社長がポリシーをはっきりと持っているのでしょう。
そのためには、どのような機械を導入するのが一番いいのか、考えながら経営をされているんだと思います。
ある業界、分野で強みを発揮しようと思うと、当然機械の選び方は変わってきます。
ただ、海外の工作機械を購入するとメンテナンスも含めて、どうしても費用がかさんでくることがるかと思います。
マニュアルとかも含めて、その企業さんが背負う負担というのは、決して少なくないはずです。
にもかかわらず、海外のものも含めて、あえて様々な工作機械を導入するのは、それによって実現できること、自社の特徴を前面に出すことができると考えているからだと思います。
第三者から見て、一見違和感のあるような機械を積極的に導入しているというのは、その機械を単独ではなく、工場全体のことを考えて使い込んでいるのでしょう。
自社でどのような強みをもって、仕事を進めていくかと考えたときに、そのような選択をされることは、大いに評価されるべきことです。

CADについてはいかがでしょうか。

小渡氏

これも正直申し上げて高いと考えています。
特に板金用のCADですね。
これは、本当にシェアの問題だと思います。
ある有力なCADベンダーが出している、ソフトがかなり安くなりました。
10分の1くらいの値段まで下がったのではないでしょうか。
これはひとえに競争原理が働いたからなんです。
ただ、板金となるとちょっと信じられないような価格だったりします。
これは、やはり競争原理が働いていないからなんですね。

CADに関してもう一つ質問させてください。川崎市にある板金加工業者さんが3DCADを使用してデザイナーと一緒に美術工芸品を製作されています。ただ、なかなかご苦労もあるようです。デザイナーさんと協業していく際に、どのようなことが板金加工業者に求められるでしょうか。

小渡氏

このような特化型の企業というものは、非常に魅力的に感じますね。
ただ、全ての板金加工業者がこのような業界に参入できるかというとかなり難しいと思います。
例えば、大物の場合、東京でつくって海外に持っていくとなるどうしても分解しないといけません。
どういう形で分解して、また再構築できるように設計するのか、ということが重要になってきます。
そうすると、この場合にはここで切っておいて、向こうでつなげるということを製造の段階で盛り込んでおかなければいけません。
そのようなノウハウは、仕事をしていく上で初めて蓄積されていくものです。
ですから、かなりチャレンジングです。
一般的な板金加工業者が異業種との交流を図りたいと考えるときには、自社でつくっているものの形状のみならず、実現してきた製品の機能をきちんと認識できているかどうかが重要です。
なかなか部品産業的なところもありますが、自分のつくったものがどのような製品に組み込まれているのか、そこでどのような機能を果たしているのか。
個々の板金加工業者が、そこまできちんと把握していくと、自社が狙っていく業界や分野、製品などが見えてくるはずです。

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Mitsuri編集部

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Mitsuriは、お客様に寄り添い、製造プロセスに関わる課題をトータルに解決する「お客様の最適な生産活動を達成するコーディネーター」です。

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