フランジ加工の方法を製品事例を用いて解説!

フランジは、突縁や出縁、鍔(つば)を意味しますが、工業用語では2つの配管を接続する継ぎ手部分などを指す言葉として使われています。フランジは、機械部品や電子部品、建築部材など、様々なところに広く用いられている構造ですが、実際にはどのように成形しているのか知らない方が多いと思います。

そこで今回の記事では、フランジの加工方法について詳しく解説していきます。また、加工事例も多数ご紹介していきますので、フランジ加工をご依頼するときの参考にしてください。

フランジとは

フランジとは、物の端からはみ出すように出っ張った部分のことです。フランジは主に、円筒形状の管や軸の端に円盤の形状で成形され、管や軸同士をつなぎ合わせる際に使用されます。例えば、配管では、パイプの端に円盤状のフランジがあり、そのフランジ同士を合わせ、ボルトなどで固定して配管同士を接続します。

またフランジは、回転する2つの軸を接続し、一方の軸のトルクをもう一方の軸に伝達する継ぎ手としても利用されています。そのほか、管部の内側にねじ山を成形したねじ込みフランジは、2つの製品を接続するジョイントとして使用されています。

フランジ加工の方法

フランジの成形方法には、NC旋盤やマシニングセンタなどによって削り出す加工方法と、板金をプレス機によって絞る、または曲げることで成形する加工方法があります。なお、フランジだけを別に製造し、溶接することでフランジを成形することも多いです。

旋盤加工

旋盤加工は、NC旋盤などを使用し、回転させた工作物に工具を当てることで外丸削り、面削り、中ぐり、穴あけ、突切り、ねじ切りなどの加工を行う方法です。主に、棒状の素材から円盤状のフランジを削り出す場合に採用されます。

ただし、旋盤加工による加工形状は、連続的な回転対称である必要があります。そのため、複雑な形状のフランジでは、旋盤加工の後、マシニングセンタなどによる追加工が必要となる場合があります。

切削加工

切削加工は、マシニングセンタなどを使用し、固定した工作物に回転または直線運動する工具を当てることで穴あけ、中ぐり、フライス削り、ねじ立て、リーマ仕上げなどの加工を行う方法です。主に、旋盤では加工できない角型のフランジや、旋盤加工では難しい複雑形状の追加工を必要とする場合などに採用されます。

板金加工

板金からフランジを成形する方法には、プレス機を使用する絞り加工と曲げ加工があります。絞り加工は容器や管などの形状のものに、曲げ加工は板などの形状のものにフランジを成形する場合に採用されます。

・絞り加工

絞り加工では、下図のように、下側の金型(ダイ)に素材(ブランク)を置き、フランジとなる部分をブランクホルダーで抑えます。そして、上側の金型(パンチ)でブランクに圧を加え、容器部とフランジ部を同時に成形します。

引用元:通販モノタロウ

・曲げ加工

一方、曲げ加工では、多様な角度で曲げることが可能なV曲げ、1箇所を90度の角度で曲げるL曲げ、2箇所を90度の角度で曲げるU曲げといった加工方法でフランジを成形します。

この3種類の曲げ加工の特徴を述べると、まずV曲げでは、ダイとパンチ間のクリアランスを調整することで、曲げの角度を変えることができる自由曲げと、パンチ・ダイの形状を転写、またはパンチを押し込んでブランクを圧縮する突き曲げが可能なことが挙げられます。一方、L曲げやU曲げでは、クリアランスは常に一定に保たれます。しかし、パッドの押さえる力が弱いと、L曲げではパンチ方向にブランクが引かれることがあり、U曲げでは容器形状の底部の平面度が不安定になることがあります。

参考記事曲げ加工の基礎からV曲げ、L曲げなどの詳細については、以下の記事をご覧ください。⇒【曲げ加工】の基礎やV曲げ/L曲げ加工について徹底解説!!

・フランジの種類

板金加工によって成形されたフランジは、材料の流動状態という観点から、直線フランジ、縮みフランジ、伸びフランジの3種類に分けられます。

直線フランジは、加工線が直線となる場合のフランジを指します。絞り加工では、下図のような角筒絞りでフランジ部の加工線が直線となり、このフランジ部は曲げ方向に引張応力を受けます。一方、曲げ加工では、板などを単純に曲げて成形する際のフランジが直線フランジとなり、このフランジ部には応力は働きません。

引用元:MiSUMi-VONA

縮みフランジは、加工線が外側に湾曲する場合のフランジのことです。絞り加工では、曲げ方向には引っ張り応力を、曲げ方向と直角方向には圧縮をフランジ部に受けます。

一方、曲げ加工では、曲げ方向と直角方向の圧縮をフランジ部に受けます。

縮みフランジとなる場合、曲げ加工では、圧縮の効果をあらかじめ考慮し、フランジとなる部分の形状を開いた扇型にしておく必要があります。なお、絞り加工では、主に円盤状の板金をプレスしてフランジを成形しますが、この場合は考慮以前にフランジ部分は扇形です。

また、縮みフランジでは、フランジ部に圧縮する力が加えられるため、フランジ部を厚くする作用が生じます。その結果、フランジ部にたるみやシワが発生しやすいため、注意が必要です。

伸びフランジは、加工線が内側に湾曲する場合のフランジのことです。絞り加工では、曲げ方向には圧縮応力を、曲げ方向と直角方向には引張応力をフランジ部に受けます。一方、曲げ加工では、曲げ方向と直角方向の引張応力をフランジ部に受けます。

伸びフランジとなる場合、曲げ加工の縮みフランジと同様、引張応力の効果を考え、フランジとなる部分の形状は閉じた扇型にしておく必要があります。また、縮みフランジと反対に、フランジ部を薄くする作用が生じるので、割れの発生に注意する必要があります。

フランジ加工の工程

フランジ加工の工程は、旋盤加工や切削加工、板金加工の絞り加工や曲げ加工、それぞれで異なります。ここでは、下図のようなフランジ付き円筒を例に、絞り加工によるフランジ加工の工程を説明していきます。

引用元:MiSUMi-VONA

①寸法の決定

フランジ付き円筒を成形するにあたり、まず製品の完成形状を展開してブランクの寸法を決定します。ただし、絞り加工では、成形後にフランジの縁が変形するので、トリミング代を決めることが必要です。

ブランクの寸法は、トリミング代を加えたフランジ径を用い、以下の計算式で算出できます。

ブランクの寸法計算式D=x2+4yhD:ブランク直径、x:フランジ直径、y:絞り部分の直径、h:絞り部分の高さ

この計算式は、成形後に板厚が変化しないこと、曲線部が小さいことを前提としています。また、絞り部分の直径は、内径、外径、もしくは板厚中心が考えられますが、外径としておくと、フランジ径が大きくなるのでトリミング代に余裕ができるでしょう。

②絞り回数の決定

このブランクを加工していきますが、絞り加工は通常、1回で完成形状まで成形できることはありません。それは、絞ることが可能な深さに限界があることを理由とします。そのため、完成形状より大きな絞り径と浅い絞り深さで絞り、絞り径と絞り深さを完成形状に近づけながら、繰り返し絞り加工を行います。

絞り径の算出

その絞り径ですが、絞りやすさを表す相対板厚を参考に、材料の加工硬化を考慮した絞り率の式と値から算出します。

算出方法

絞り率 = 絞り後の径 ÷ 絞り前の径相対板厚 = 板厚 ÷ ブランク直径 ✕ 100(%)絞り率

  • 初絞り・・・0.5~0.6
  • 2絞り・・・0.75~0.8
  • 3絞り以降・・・0.8~0.9

相対板厚は、値が小さいほど絞りにくく、大きいほど絞りやすいことを表現しています。そのため、相対板厚が小さい場合は絞り率は大きい数値を、相対板厚が大きい場合は絞り率は小さい数値を採用し、絞り後の径を算出します。

絞り回数の算出

絞り径が求められると絞り回数も算出できます。各絞り加工時の絞り径は以下のようになります。

各絞り加工時の絞り径初絞り後の絞り径…ブランク直径 ✕ 初絞りの絞り率2絞り後の絞り径…初絞り後の絞り径 ✕ 2絞りの絞り率3絞り後の絞り径…2絞り後の絞り径 ✕ 3絞りの絞り率

求める絞り回数は、この絞り径が絞り部分の内径より小さくなったときの絞り回数に当たります。

絞り高さの算出

絞りの各工程の絞り高さは、上述したブランク直径の計算式から以下のように求められます。

各工程の絞り高さh=(D2-x2)÷(4y)h:絞り部分の高さ、D:ブランク直径、x:フランジ直径、y:各工程の絞り部分の直径

この絞り高さを参考に、各工程においてどの程度の深さまでブランクにパンチを押し込むかを決定します。ただし、あくまで参考であり、絞り状態を見て調整することを前提としています。

③金型設計

次に、絞りにおける各工程毎の金型、つまりパンチとダイを設計します。

パンチの設計

パンチの設計では、パンチの直径と肩半径を決めます。

パンチの直径は、成形形状の内径となることを考慮し、絞り径から決定します。

例としたフランジ付き円筒の寸法で、相対板厚が大きいとした場合には、各工程のパンチの直径は下図のようになります。

引用元:MiSUMi-VONA

パンチの肩半径は、完成形状の肩半径から最終の一つ前の工程の肩半径を算出、というように初絞りの肩半径まで順番に決定していきます。

まず、下図のように、完成形状の肩半径の中心を最終一つ前工程の肩半径の中心とします。次に、その肩半径の中心から最終二つ前工程のパンチの端までの距離を3~4等分し、パンチの端側に少しずらした位置を最終二つ前工程の肩半径の中心とします。これを繰り返し、初絞りの肩半径まで決定します。

また、パンチの肩半径は加工時、小さすぎると割れが生じ、大きすぎるとシワが生じるので注意が必要です。

ダイの設計

ダイの設計では、ダイの穴径と肩半径を決めます。

ダイの穴径は、単純にパンチの直径に板厚を加えた値とすることはできません。それは、絞り加工に伴い、円筒の縁部分が収縮して板厚が増加するからです。そのため、初絞りのダイの穴径は、クリアランスが板厚よりも大きくなるように設定されます。しかし、板厚増加は寸法精度を悪化させるので、絞りの工程が進むごとにクリアランスを本来の板厚に近づけていきます。さらに、最終工程近くの絞り加工では、クリアランスを本来の板厚よりも小さくし、材料をしごいて厚さを均一にすることもあります。

例としたフランジ付き円筒の寸法では、各工程のダイの内径は下図のようになります。

引用元:MiSUMi-VONA

ダイの肩半径は、各工程のパンチの肩半径と同じか少し大きい値とします。

ただし、フランジと円筒の境界部分は適切な寸法にならないことがよくあります。それは、ダイの肩に置かれたブランクは、ブランクホルダーで押さえつけているだけでパンチが行われないからです。そのため、この部分の形状などを整えるリストライクという工程を行うことがあります。

④プレス機械の選定

プレス機械の選定では、選んだ材料に対する絞り加工力を計算し、その力を発揮できるものを選ぶ必要があります。

円筒絞りの絞り加工力の計算には、以下の式がよく用いられています。

円筒絞りの絞り加工力の求め方P = K ✕ π ✕ d ✕ t ✕ TsP:絞り加工力(Kgf)、K:係数、π:円周率、d:絞り径(mm)、t:板厚(mm)、Ts:引張強さ(Kgf)

ここで、係数Kは、計算式では考慮されていない絞り率や相対板厚の効果を、絞り加工力Pに反映するために設定する値です。係数Kは、絞り率や相対板厚が大きいほど小さく、小さいほど大きく設定され、1.0を上限としています。

プレス機械は、フランジ部を適切な圧力で押さえることが可能なものを選ぶ必要があります。絞り加工時、フランジ部は、プレス機のブランクホルダー(シワ抑え板)でホールドされていますが、この圧力が弱すぎればシワが、強すぎれば割れが生じます。フランジ部の成形に重要なこの圧力ですが、圧力の強さは材料の材質や板厚などにも依存するため、圧力を調節可能なプレス機械を選ぶとよいでしょう。

そのほかプレス機械の選定には、金型を取り付けられる寸法があること、パンチに張り付いた成形品を引き剥がせる機構が備わっていること、絞り加工完了後に成形品を取り出せるパンチとダイ間の間隔があることなどに気をつける必要があります。

⑤実加工前の注意点

以上の工程を経て、実加工に進みますが、その前にいくつか注意しておくべき点があります。

まず、注文により指定された、もしくは選定した材料は、設計通りの絞り加工が可能かどうかを確認しておく必要があります。絞り加工に関係する材料の特性には、引張り強さ、降伏点、伸び、硬さがありますが、絞り加工性を考えるときは、材料の加工硬化係数(n値)とランフォード値(r値)がよく参考にされます。なお、r値は、板材を長手方向に引き伸ばしたとき、板厚方向よりも短手方向に収縮しやすいことを示す値です。

また、絞り加工時、潤滑油を使うかどうか、どの潤滑油を使うかも問題となります。潤滑油は、ブランクをパンチで押し込むとき、ブランクとダイとの接地面を滑りやすくしてくれます。そのため、潤滑油を使用しないと、ブランクとダイの摩擦により、破断や焼付き、かじりなどを生じることがあります。

参考記事絞り加工については、以下の記事に詳細がありますので、ご覧ください。⇒絞り加工の基礎知識と工程9ステップを徹底解説!

フランジの加工事例

それでは、上述した加工方法で成形したフランジの事例を紹介していきます。

下の写真は、材料記号A5056のアルミ合金をNC旋盤で加工したものです。

引用元:株式会社エージェンシーアシスト

次の写真は、旋盤加工によってフランジ部を成形した後、マシニングセンタにより円筒内側部にキー溝を成形したものです。

引用元:特殊フランジ・継手加工.com

次もNC旋盤とマシニングセンタの両方を使用した製品です。通電箇所に用いられるため、銅を材質としているそうです。

引用元:特殊フランジ・継手加工.com

次の2つの写真は、プレス機による絞り加工でフランジを成形した事例です。

引用元:岐阜精器工業株式会社

引用元:ミカドテクノス株式会社

続く写真は、プレス機による曲げ加工によってフランジを成形しています。

引用元:TECH-JOURNEY

フランジ加工ならMitsuri!

以上、フランジの加工方法や工程について解説し、加工事例を紹介しました。

フランジの加工方法には、材料から削り出す旋盤加工や切削加工、板金から成形する絞り加工や曲げ加工があります。特に絞り加工は、大量生産を行う際に採用されますが、絞りの方法や金型の設計などに多様なノウハウや技術が詰め込まれています。

そのため、メーカーによって加工可能な材質・形状は異なり、また精度や品質も変わってきます。

Mitsuriでしたら、日本全国に協力工場が140社以上あるため、お客様の要求に合わせたメーカーをご紹介できます。

フランジ加工でお困りの際は、ぜひMitsuriにお申し付け下さい。

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