ザグリの基礎!キリとの違いや関係性、深ザグリについて解説!

ザグリは、ボルトやネジのゆるみ防止・美観性の向上・ケガの防止のために必要な加工です。身近なところでは、ドアの蝶番や家具などに多く採用されています。

ザグリにはいくつか種類があり、使用するネジや用途によって、形状や図示の仕方が異なります。設計者は、これらを考慮して加工指示を変えなければなりません。しかし、あまり知識のない方は、ザグリがどのような加工なのか分からず、ザグリとキリを混同しているケースも多いと聞きます。

そこで今回の記事では、「ザグリとは何か」について解説するほか、キリとの違いや深ザグリ、皿ザグリの基礎知識、加工方法までをご紹介します。ザグリについて知識を付けたい方は、ぜひご一読ください。

ザグリとは、ネジ等の頭部飛び出しを防ぐ加工

ザグリとは、ネジやボルト頭部、座金などの飛び出しを防ぐための穴加工のことです。カナ表記だけでなく、「座ぐり」と記述されることもあります。ザグリは、鋳物のようなざらざらした表面や、傾斜面に対して平坦になるように加工し、締め付け力を均一化するための加工でもあります。

ボルトは、締め付けた際に、ボルト頭部と材料の接触面積を大きく設けるほど、均一に締結が可能。その結果、緩みにくくなる効果が期待できます。

また、ボルトは頭部に高さがあるため、ザグリを設けていないと大きく出っ張った状態になり、ケガなどのトラブルを起こすことも。これを避けるためにも、ザグリ加工を施す必要があります。

ザグリとキリの違い

キリは、ドリルでの穴開けのことをいいます。例えば、「10キリ」と図面に指示されていた場合、「ドリルで直径10mmの穴を開ける」という意味を表します。

引用元:機械製図 JIS B 0001:2009

上図は機械製図のJIS規格「JIS B 0001:2009」から抜粋したものです。

キリ穴の深さに指示がある場合は、上図162のように、穴寸法の後ろに深さを示す記号を記入します。

また、上図163では、深さの記号が図示されていませんが、この場合は貫通穴であることを意味します。

そのほかにも、上図164のように、ドリル先端で形成される円錐部分は、高さ(H)に含まないことも覚えておきましょう。

また、上図の図162・図163に表示されている「φ」の記号は、「ファイ」と呼ばれ、直径〇mmの穴であることを意味します。これは穴が開いていることのみが条件で、「キリ=ドリル加工」のような加工方法の指示はありません。

引用元:機械製図 JIS B 0001:2009

プレス抜きやリーマ仕上げでの加工指示がある場合も、「キリ」のように簡略表示を使います。加工方法と簡略表示の一覧については上表を参考にしてください。

引用元:ものづくりウェブ

一方、ザグリは上図右の引出線のように図示します。旧JIS規格では、浅いザグリの深さは表記を省略していましたが、2020年現在の機械製図JIS規格「JIS B 0001:2009」では、ザグリの深さを指示する必要があります。

引用元:機械製図 JIS B 0001:2009

ただし、浅いザグリの図内の形状については、上図のように省略しても問題ありません。

ザグリ加工の方法

ザグリの加工方法は、ドリルでボルト用の穴を開けたあとに、エンドミルで加工するのが一般的です。


参考:フライス加工について専門家が解説!加工の種類・加工機の種類がこの1記事でわかります!

引用元:モノタロウ

また、加工業者によっては、ザグリを開けるための専用工具である「ザグリドリル(段付きドリル、ドリル付沈めフライス)」を用いることもあります。上の画像は、ザグリドリルの参考写真です。

引用元:モノタロウ

ザグリドリルは、上図④~⑦を見ていただければ分かるように、穴あけとザグリ加工を一度に行えます。そのため、工具の切り替えが少なく、作業工程も抑えて加工できる点がメリットです。

ただし、ドリル部分とフライス部分が一体化されている分、ザグリの加工寸法に融通が効かないといったデメリットもあります。


「深ザグリ」でザグリの深さを指定!

座金だけでなく、ボルトの頭までを隠すようにザグリを深く設けることを「深ザグリ」といいます。一般的にザグリは、1mm前後の深さになりますが、深ザグリはそれよりも深い加工となります。

深ザグリは、ボルトの頭部が材料の表面と面一になるため、美観性の向上や、引っかかりによるケガの防止といった効果があります。

引用元:ものづくりウェブ

深ザグリの寸法の示し方については、ザグリと同じく、上図の引出線のような書き方になります。しかし、深ザグリの形状については、ザグリと違い、省略せずに図を描かなければなりません。

上図左および中央は、2020年現在の機械製図JIS規格「JIS B 0001:2009」での図示方法ですが、製図者によっては、上図右の枠内のように表記をしている場合もあります。こちらは旧JIS規格での図示方法になるので、JIS規格の通りに製図する場合は注意してください。


皿ザグリとは

皿ザグリは、皿ネジや皿ボルト用に、円錐状に角度が付いたザグリのこと。現場によっては「皿モミ」と呼ばれる場合もあります。

引用元:機械製図 JIS B 0001:2009

皿ザグリの図示の仕方は、上図のように、穴の直径を示す寸法の次に皿ザグリの記号を示し、その後ろに皿ザグリの入口の大きさを記入します。

引出線の矢印の位置については、上図aとbのように、皿ザグリの入口内径と外径どちらに表示しても問題はありません。

また、皿ザグリの開き角を指示する場合は、上図cのように、皿穴の入口外径の後ろに「×」の記号と角度を表記します。

皿ザグリの記号を使わずに加工指示する場合は、上図dのように図示します。

引用元:モノタロウ

皿ザグリの加工方法は、ドリルで穴を開けたあとに面取りカッターを使います。上の写真は、面取りカッターの参考画像です。

また、刃物メーカーによっては、ザグリと同じく穴あけと皿ザグリを同時に行える、専用のドリルもラインナップされています。

そのほかにも、プレス加工にて皿ザグリの形状をした金型を用い、皿ザグリを設けることも可能です。プレス加工は、作業工程が少なく済むため、量産時のコストダウンが期待できます。

参考:プレス加工の基礎知識や種類について専門家が徹底解説!


まとめ

今回は、ザグリの基礎知識について解説しましたが、いかがでしたでしょうか。

ザグリは、ネジやボルト頭部、座金などの飛び出しを防ぐための穴加工のこと。主に六角穴付きボルトを使用した際に、設けられます。また、ザグリの加工方法は、ドリルで穴を開けてから、エンドミルで加工するのが一般的です。

ザグリには、深めに段付き加工をする「深ザグリ」や、皿ボルト用に面取りされた「皿ザグリ」があります。設計者は、用途や使用するボルトに合わせて、ザグリの加工を使い分けましょう。

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