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    タッチプローブとは?原理や種類を解説

    今回はタッチプローブの原理や種類について解説します。 タッチプローブは、マシニングセンタなどの工作機械に搭載するセンサーのことで、原点出しや寸法の自動測定が可能になります。 タッチプローブはモデルによって対応する工作機械が異なり、適切なタイプを選ばなくてはなりません。ここでは、タッチプローブがどのような原理で信号を伝達しているのか、どのような種類があるのかをを見てみましょう。 参考:マシニングセンタの基礎知識と導入メリットを解説 タッチプローブとは タッチプローブとは、NC工作機械で用いる接触式のセンサーのことを指します。 タッチプローブをマシニングセンタなどの主軸に搭載し、ワークに接触させることで、原点出しや、加工後の寸法を高精度で自動計測できるようになります。 ワークの寸法を正しく計測することで、精度の高い加工が実現し、加工不良を防止できるようになります。また、加工ワークの測定が正確かつ、手作業によるワークの位置決めが無くなることで、作業者の技術レベルによる違いも無くなり、ヒューマンエラーや段取り時間の削減も期待できます。 タッチプローブの原理 引用元:NKワークス株式会社 工作機械用 タッチプローブ タッチプローブは、本体から出ている棒部分「スタイラス」の先端をワークやテーブルに接触させることで、精度の高い信号を出力し、数値制御装置(NC)やPC装置に伝達します。 タッチプローブは通常、自動工具交換装置(ATC)に格納されており、計測の際に使用します。 参考:自動工具交換装置(ATC)とは?ATCの種類と構造 引用元:はじめの工作機械 タッチプローブとは|ワーク計測用タッチプローブの種類と原理 伝達方式としては、有線方式のほかに、ワイヤレスで伝達する、赤外線方式・無線方式・誘電方式があります。 赤外線方式は、赤外線を用いて測定信号を受信器に送る仕組みで、タッチプローブの通信方法のなかでもオーソドックスなタイプです。反射によりアクセスしにくい位置でも信号を受信しやすい特徴があります。 無線方式は、無線通信を用いて測定信号を受信機に発信します。無線通信は2.4GHzのISM帯(商用周波数帯)を使用しており、通信範囲が広く、複雑な動きの5軸加工機でも安定した通信が可能です。 誘電方式は、誘導コイルを用いて測定信号を受信機に発信します。誘電方式は、タッチプローブ本体と受信機を至近距離まで近づける必要があるので、レイアウトが限定されます。しかし、受信機からプローブへ電力供給するため、プローブ本体の電源が不要というメリットがあります。 タッチプローブの種類 タッチプローブは、マシニングセンタ以外にも、さまざまな工作機械に採用されています。タッチプローブは、モデルによって適した工作機械が異なります。 研削盤用タッチプローブ 引用元:株式会社メトロール CNC工作機械用 有線式 小型タッチプローブ[K3Sシリーズ] 研削盤用タッチプローブは、研削盤で用いるタッチプローブです。円筒研削盤の砥石の摩耗検出や、NC平面研削盤のワーク高さ計測にも使われます。 研削盤や旋盤などの手動で工具交換を行う工作機械は、ケーブル通信式のタッチプローブが採用されています。 参考:研削盤とは?研削盤と研削加工の種類や切削加工との違い NC旋盤用タッチプローブ 引用元:RENISHAW OLP40 旋盤用タッチプローブ NC旋盤用タッチプローブは、NC旋盤に搭載されるタッチプローブです。主にワークの内径、外径、端面計測を行います。タレット(旋回する刃物台)に取り付けるため、ワイヤレス式のタッチプローブが主流です。 ロボット用タッチプローブ 引用元:株式会社メトロール CNCロボット用 有線式タッチプローブ[K3Mシリーズ] ロボット用タッチプローブは、ロボットアームや溶接ロボットで使われているタッチプローブです。主にワークの寸法計測、芯出し、位置決めを行います。 簡易型タッチプローブ 簡易型タッチプローブは、主に汎用工作機械で用いたり、ワークの段取り補助として使われたりする、アナログ式のタッチプローブを指します。種類としては、ダイヤルゲージで数値を読み取るものや、LEDで接触を知らせるものなどがあります。   「どの加工で依頼したらいいのかわからなくて困っている」 「図面で指定されている加工が自社でできなくて困っている」 そのような方に向けてMitsuriでは、見積から発注までWEB上で行えるサービスを提供しております。お手持ちの図面を登録すると、加工可能な工場から見積が届きます。金属部品の調達でお困りの方は下のボタンから図面をご登録ください。

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    ガンドリル加工とは?特徴や適した材質を解説

    小さく深い止まり穴や細く長い貫通穴をあけるガンドリル加工と呼ばれる加工法があります。元は銃の穴をあけるために開発された方法ですが、他の穴あけ加工ではあけることができない深い穴を精度良くあけることができるため、近年多様な用途に採用されています。 また、ガンドリル加工は、他の穴あけ加工に比べて、切り屑の排出性が良く、加工面も滑らかで、高速に深穴をあけることができるという利点があります。マシニングセンタなどの汎用性の高い工作機械でも、工具を用意すれば実施することができるため、通常の穴あけ加工の代わりに採用するケースも増えています。 この記事では、ガンドリル加工の詳細や特徴、加工可能な材質、類似した加工法であるBTA加工との違いについて解説していきます。 ガンドリル加工とは ガンドリル加工とは、ガンドリルと呼ばれる小径・深穴加工用のドリルを用いた穴あけ加工のことです。小径の深い穴を高精度かつ高速度であけることができる加工法です。 ガンドリルは、主にガンドリルマシンと呼ばれる専用の加工機に装着して用いられますが、最近はマシニングセンタなどに装着して使用できるものもあります。 ガンドリルの名称の通り、元々は、ピストルやライフルといった銃の銃身の穴をあけるための加工法でした。しかし、現代では、高い精度が求められるシリンダーやシャフト、スピンドルといった機械部品などの加工にも採用されています。 深穴は、JIS規格(JIS B 0106:2016)にて、長さと直径の比が4倍以上の穴と定義されています。しかし、近年、一般的なドリルでも比較的高い精度の深穴加工が可能となっていることから、穴の長さと直径の比が10倍以上の穴あけ加工を深穴加工とすることも多くなっています。 ガンドリル加工は、深穴加工の中でも、穴径が1mmから30mm程度までの小径穴が対象です。加工可能な深さは、一般的に穴径の50倍から100倍程度までとなっています。なお、穴径が30mm以上の深穴はBTA(Boring & Trepanning Association)加工、穴径が1mm以下の深穴は微細深穴加工と呼ばれる加工法が採用されます。 参考:マシニングセンタの基礎知識と導入メリットを解説 ガンドリルの構造 引用元:Q&A・技術情報「小径・深穴ガンドリルマシン「ガンフィーダ」についてのQ&A」株式会社スギノマシン ガンドリルは、上図に見られるように、超硬刃部とシャンク、ドライバという3つの部位から構成されます。先端に切れ刃のある超硬刃部、続いてドリルの柄となるシャンク、後端にシャンクを保持して加工機と接続するドライバがあります。そして、ガンドリルの内部には切削油の流路、先端には切削油を噴射する油穴があり、超硬刃部とシャンクの側面には切り屑を排出するV字溝が刻まれています。 ガンドリルは、先端の油穴から切削油を高圧噴射しながら高速回転することで、切り屑をV字溝を通して外部へ排出しながら穴を削り出します。 参考:穴開け加工とは【専門家が解説】タップ加工、リーマー加工との違いを説明! ガンドリルマシンの構造 引用元:加工について「ガンドリル加工とBTA加工の違い」株式会社不二新製作所 ガンドリルマシンは、大まかに、横向きに取り付けられたガンドリル、ガンドリルを高速回転させる駆動装置、ドリルブッシュ、切削油(クーラント)の循環機構から構成されます(上図参照)。 ガンドリルマシンでは、ドリルブッシュは、ガンドリルをガイドして中心軸を安定させ、ガンドリルが加工穴の中心軸からずれることを防止します。切削油は、ポンプの働きによってガンドリルの先端から噴射され、切り屑と一緒に回収されてタンクに溜め置かれ、浄化されて再利用されます。 これらの機構によって、ガンドリルマシンは、高精度かつ高速度な深穴加工を実現しています。 参考:切削油(クーラント液)の種類、成分、メリット・デメリット マシニングセンタ用ガンドリル 最近では、マシニングセンタ用のガンドリルとして、マシニングセンタのほか、NC旋盤やタレット旋盤、ボール盤などでも使用できるガンドリルを入手できるようになっています。 ただし、マシニングセンタ用ガンドリルと言っても、その構造自体に異なる点はなく、先端から切削油を噴射しながら深穴を削り出す工具であることに違いはありません。しかし、ガンドリルマシンに存在するドリルブッシュがないため、深穴加工の際には、その代替として予めワークにガイド穴をあけておく必要があります。 また、ガンドリルマシンを用いた場合ほどの精度は出ないため、加工可能な穴深さも小さくなっています。 参考:ボール盤とは?構造、種類、フライス盤との違い ガンドリル加工の用途 ガンドリル加工は、自動車・家電などの薄型化・軽量化が進展し、電気機器・電子機器などの高精度化が強く求められるようになったことから、様々な分野の幅広い用途で採用されるようになっています。 ガンドリル加工の用途例としては、例えば、以下が挙げられます。 ・食品…液体充填機、冷却器部品、酪農用搾乳機、食品製造機械部品 ・輸送機器…自動車部品、鉄道車両部品、航空機部品 ・機械…スピンドル、シャフト、シリンダー、噴射機のノズル、油圧機器部品、減速機部品 ・電気…電機・電子機器部品、半導体関連熱版、液晶製造装置部品 ・建築…重機部品 ・金属加工…各種金型 ガンドリル加工の特徴 ガンドリル加工は、上述したように、一般的なドリル加工と様々な点で異なります。ここでは、ガンドリル加工の特徴について解説します。 小径穴の深穴加工に特化している ガンドリル加工は、小径穴の深穴加工に特化した加工法です。対応している穴径は、メーカーによって異なりますが、1mm~32mmが標準的です。つまり、ガンドリルの刃径は、だいたい、この範囲内となっています。 深い止まり穴や長い貫通穴をあけることが可能 ガンドリル加工は、通常のドリルでは穴あけが不可能な、深い止まり穴や長い貫通穴をあけることができる加工法です。 加工可能な深さはガンドリルによって違い、マシニングセンタ用ガンドリルよりも、ガンドリルマシン用ガンドリルの方が加工可能な深さの大きいものが揃っています。また、ガンドリルは、刃径が大きいものほど、加工可能な穴の深さも大きい傾向があります。 下表は、マシニングセンタ用とガンドリルマシン用の既製品として入手できるガンドリルのサイズデータです。ただし、特注のガンドリル製作を受け付けているメーカーもあるので、ガンドリルが下表に記載されているサイズに限られているわけではありません。 マシニングセンタ用 刃径 最大加工深さ 加工深さ/刃径 2 80 40 4 160 40 6 240 40 8 280 35 12 410 35 14 420 30 18 480 30 24 480 20 30 600 20 ガンドリルマシン用 刃径 最大加工深さ 加工深さ/刃径 1 300 300 2 350 175 3 450 150 4 550 137 6 1000 166 8 1500 187 12 1500 125 24 1700 70 32 1700 53 切り屑の排出性に優れる ガンドリル加工は、切り屑の排出性が高いという特徴があります。 深穴加工は、通常のドリルを単に長くしたツイストロングドリルでもできないわけではありません。しかし、ツイストロングドリルでは、切り屑はドリルのねじれ溝を通ってのみ排出されるため、排出効率が低くなっています。また、切削油も外部から供給するのみで、ドリルの先端に浸透しにくく、切り屑排出にもほとんど役立ちません。そのため、ツイストロングドリルで深穴をあける場合は、ドリルの送りを進行させては後退させるステップフィードで、後退させる度に切り屑を排出して、切り屑の詰まりを防ぐ必要があります。 一方、ガンドリル加工では、切り屑は、ドリルの先端から高圧噴射される切削油と一緒に、ドリルのV字溝を通って流れ出ていきます。そのため、ガンドリル加工は、切り屑の詰まりや切り屑と加工面の干渉などが非常に少ない加工法となっています。また、切削油の循環性が高いことから、切削温度の上昇や工具摩耗の抑制効果も期待することができます。 高精度の深穴加工が可能 ガンドリル加工は、曲がりが小さく、高精度の深穴をあけることができる加工法です。 加工穴の芯ズレの精度は、加工機・工具・加工条件・加工材料などによりますが、100mmの長さで0.1mm以下、ガンドリルマシンを用いれば100mmの長さで0.01mm以下を実現することも可能です。 穴径の精度も高く、径公差は、下表のような許容誤差となるH7~H9程度となっています。 穴径 (mm) 公差等級 (μm) H7 H8 H9 3以下 10 14 25 3~6 12 18 30 6~10 15 22 36 10~18 18 27 43 18~30 21 33 52 穴の表面粗さが良好 ガンドリル加工は、ツイストドリルによる穴あけ加工に比べ、表面粗さが良好な穴を成形することができます。 ガンドリルは、超硬刃部の側面に滑らかな表面を持つガイドパッドを備えています。ガイドパッドは、ガンドリル加工の穴あけ加工中、穴内面に押し当てられて塑性変形と加工硬化を起こし、穴内面を滑らかに仕上げます。これをバニシング効果と呼びますが、この効果によって、穴内面の強度が向上するとともに、面粗度が良くなります。 その面粗度は、通常の穴あけ加工の仕上げに用いられるリーマと同等以上のRa0.2~Ra3.2(0.2μm~3.2μm)程度です。なお、Raは、算術平均粗さと呼ばれる表面にある凹凸の高さの平均値で、小さいほど表面は滑らかとなります。ちなみに、リーマはRa0.8~Ra3.2程度、ツイストドリルはRa3.2~Ra12.5程度となっています。 高速な深穴加工が可能 ガンドリル加工は、上述したようにステップフィードすることなく、一度の送りだけで加工できるため、通常のドリルで深穴加工を行う場合に比べて、およそ3倍~5倍の速度で深穴加工を行うことが可能です。 ただし、ガンドリルマシンではなく、マシニングセンタなどでガンドリル加工を行う場合は、深穴加工の前にガイド穴の穴あけ加工が必要であるため、その分の時間が掛かります。 工具の再研削が可能 ガンドリルは、再研磨が可能です。メーカーが再研磨を受け付けているので、切れ味が悪くなったり、加工回数が多くなったりしたら再研磨を依頼しましょう。 また、ガンドリル専用の研磨機や汎用の研磨機に取り付けられるガンドリルの再研磨用アタッチメントを販売しているメーカーがあります。ガンドリルの使用回数が多く、ランニングコストが高くなっている場合は、再研磨機器の導入を検討してみると良いでしょう。 ガンドリル加工に適した材質 ガンドリル加工は、様々な材質の加工に対応しています。炭素鋼やステンレス鋼などの鉄鋼をはじめ、アルミや銅などの非鉄金属、耐熱鋼であるチタンやインコネルなどの難削材、焼入れした後の材料も加工可能です。その高い精度から、樹脂に対する深穴加工の引き合いも多くなっています。 下表は、いくつかのガンドリルのメーカーサイトにて、対応可能な材質として記載されているものを纏めたものです。 材質の分類 材質名 炭素鋼 一般構造用圧延鋼材 SS400 低炭素鋼 S10C~S28C 中炭素鋼 S30C~S55C 高炭素鋼 S55C~S75C 合金鋼 クロムモリブデン鋼 SCM415, SCM420, SCM435, SCM440 ニッケルクロムモリブデン鋼 SNCM240, SNCM439 クロム鋼 SCr440 軸受鋼 高炭素クロム軸受鋼 SUJ2 工具鋼 冷間ダイス鋼 SKD11 熱間ダイス鋼 SKD62 高速度工具鋼(ハイス鋼) モリブデン系 SKH51 ステンレス鋼 マルテンサイト系 SUS416, SUS420J2 フェライト系 SUS405, SUS430 オーステナイト系 SUS304, SUS316, SUS316L, SUS321, SUS630 鋳鉄 ねずみ鋳鉄 FC250 ダクタイル鋳鉄 FCD400 アルミ合金 鍛造用 A2017, A2024, A5052, A5056, A6061, A7075 鋳物用 AC2B, AC4C 耐熱鋼 チタン 純チタン, チタン合金 インコネル インコネル600 ハステロイ ハステロイC276  銅 純銅 C1020 (無酸素銅), C1100 (タフピッチ銅) 黄銅 C2801 プラスチック アクリル, 塩ビ, PEEK樹脂, エポキシ樹脂, ポリカーボネート, MCナイロン, PTFE, POM BTA加工との違い ガンドリル加工とBTA加工は共に深穴加工の加工法ですが、小径の深穴加工はガンドリル加工、中・大径の深穴加工はBTA加工が適用されるのが標準的です。ガンドリル加工は穴径が1mm~30mmの場合、BTA加工は穴径が30mm以上の場合に採用されますが、特に決まっているわけではなく、メーカーによっては穴径50mmの深穴加工に対応したガンドリルやガンドリルマシンを販売しています。 ガンドリル加工とBTA加工は、工具と加工機も異なります。BTA加工では、ボーリングバーと呼ばれる中空の工具とその先端に付いた刃物であるボーリングヘッド、専用の加工機であるBTAマシンを使用します。 ボーリングバーが中空なのは、ガンドリル同様、切削油を流すためです。しかし、ボーリングバーは、ガンドリルとは逆に、先端のボーリングヘッドから切削油と一緒に切り屑を回収します。 ガンドリルマシンとBTAマシンは類似した構造を持つ加工機ですが、BTAマシンは、切削油の循環がガンドリルマシンとは逆向きであり、オイルプレッシャーヘッドと呼ばれるガンドリルマシンにない装置を搭載しています(下図参照)。BTAマシンでは、切削油を穴あけ途中の穴とボーリングバーの隙間から高圧を掛けて注入し、ボーリングバーの先端のボーリングヘッドから切り屑と一緒に回収して循環させます。その切削油に圧力を掛ける装置がオイルプレッシャーヘッドです。 引用元:BTA加工「BTA加工とは」日本高速削孔株式会社   「どの加工で依頼したらいいのかわからなくて困っている」 「図面で指定されている加工が自社でできなくて困っている」 そのような方に向けてMitsuriでは、見積から発注までWEB上で行えるサービスを提供しております。お手持ちの図面を登録すると、加工可能な工場から見積が届きます。金属部品の調達でお困りの方は下のボタンから図面をご登録ください。

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    リーディングドリルとは?用途、種類、切削条件

    今回は、リーディングドリルについての用途や種類などについて解説します。 リーディングドリルは、穴あけ加工で使う一般的なツイストドリルとは異なる形状です。主な用途は、穴あけのセンタリング(もみつけ)加工の前加工です。また、ツイストドリルよりも剛性に優れた設計のため、センタリング以外に面取りやV溝加工にも対応しています。 リーディングドリルとは 引用元:部品加工センター愛知.com リーディングドリル リーディングドリルとは、ツイストドリルなどで穴加工をする際の、位置決めや精度を高めるための工具のことで、別名「スターティングドリル」と呼ばれることもあります。 リーディングドリルとツイストドリルとの違いは溝の長さで、リーディングドリルのほうが溝が短く、ねじれ角を小さくすることで剛性を高めています。 ツイストドリルは、切り屑の排出性を重視しているため、ウェブ(刃の中心から溝底までの太さ)の厚みが薄く、剛性に乏しい性能です。また、溝も長いことから、ホルダに取り付けた際の突き出し量も長くなります。突き出し量が長いと工具が倒れやすくなるので、剛性に乏しいドリルは穴加工を行うと位置ずれしてしまう傾向にあります。 位置精度が求められる穴加工では、このような位置ずれを無くすために、リーディングドリルを使って前加工を行います。 引用元:旋盤市場 センタードリル リーディングドリルと似たものに、センタードリルがあります。基本的にセンタードリルは、旋盤加工などで材料の芯位置を示すセンター穴を設けるために使います。ただし、リーディングドリルのように、穴加工の位置決め用途としてセンタードリルを使う場合もあります。 リーディングドリルの用途 リーディングドリルは主に以下の用途で使われています。 ●穴あけ加工の位置決め リーディングドリルは、穴あけ加工の位置決めが最も主流な使い方です。リーディングドリルにて被削材を前加工しておくことで、ツイストドリルで穴あけをする際に、ツイストドリルの先端がブレずに被削材へと食い付かせられるようになります。リーディングドリルは、基本的に高い精度の穴あけが求められる場合に活用されます。 ●面取り リーディングドリルは優れた剛性を持つことから、穴あけの前加工として使えるだけでなく、面取り加工にも対応します。穴の周辺に対して面取りができるほか、ドリルを横送りさせて被削材の端部を面取りすることも可能です。 ●V溝加工 リーディングドリルは、面取りと同じ要領で横送りさせることで、V溝加工にも使えます。 先端角の違いによる種類 引用元:MiSUMi-VONA AG スターティングドリルロングシャンク AGSTDLS ドリルを横から見たときの先端の角度を「先端角」と呼びます。主にリーディングドリルの先端角は、60°・90°・120°・140°があり、用途によって使い分けられています。基本的にツイストドリルの先端角に対して、センタリングの面取角は同じ角度かそれ以上の角度にする必要があります。もしツイストドリルの先端角よりもセンタリングの面取角が小さい場合、位置ずれが発生しやすくなるので注意が必要です。 60° 先端角が60°のタイプは、溝なしタップのねじ立て時の穴面取りに便利です。 溝なしタップは、めねじを設ける際に穴の端面にカエリが生じやすいものですが、先端角60°のリーディングドリルを用いることで、カエリを防止することができます。 ただし鋭角に作られている分、他の大きな角度に比べて剛性には劣るため、刃が欠損しやすくなります。製品によっては先端部分だけが大きな角度に設定され、刃が欠損しにくいように設計されているものもあります。 90° 先端角が90°のタイプは、穴あけのセンタリング用としてだけでなく、C面取りを兼ねて使用したい場合に便利です。 ただし、穴面取りとセンタリング加工を兼用した場合、後工程のドリル肩部が欠けてしまう恐れがあるため、穴面取りとセンタリング加工は別工程で行うようにしましょう。 また、先端角が90°のリーディングドリルでも、刃が欠損しないように二段先端形状を採用しているものがあります。 120°・140° 先端角が120°や140°のような鈍角のリーディングドリルは、ツイストドリルを使用する際のセンタリング加工に適しています。一般的なツイストドリルの角度は118°のため、それよりも大きい角度のリーディングドリルは、穴あけの際に位置ずれが起こりにくくなります。 鈍角のリーディングドリルは、剛性に優れているので欠損がしにくい点も特徴です。 リーディングドリルの切削条件 リーディングドリルは、各製品の仕様によって切削条件が異なります。主な切削条件の内容は、軟鋼・炭素鋼・合金鋼・調質鋼といった被削材とドリルのサイズ・先端角ごとに、メーカーが推奨する切削速度・回転速度・送り量が定められています。 センタリング加工と面取り加工で条件が異なる場合もあるので、リーディングドリルを使う前に製品仕様をよく確認しておくようにしましょう。   「どの加工で依頼したらいいのかわからなくて困っている」 「図面で指定されている加工が自社でできなくて困っている」 そのような方に向けてMitsuriでは、見積から発注までWEB上で行えるサービスを提供しております。お手持ちの図面を登録すると、加工可能な工場から見積が届きます。金属部品の調達でお困りの方は下のボタンから図面をご登録ください。

  • 治具の種類【基礎】使い方と事例、考え方

    治具(じぐ)(治工具(じこうぐ))は、製品の品質・精度の向上や均質化、製造の効率化などを図るために用いられており、製造業において必要不可欠なものです。 金属製品は、材料に成形加工や熱処理、表面処理などを施し、さらに場合によっては組立や検査等を行って生産します。各工程では、工作機械や刃物、メッキ設備などを使用して加工等を行っていきますが、そのほとんどの場面において治工具・治具が用いられます。 治具・治工具とは【わかりやすく】工具とどう違う? 治具(治工具)とは、加工や組立、検査などの各工程において、製造をサポートするために用いられる器具です。加工工程において工具の位置決めや案内、材料の固定などを行ったり、組立工程において部品を所定の位置へ正確に挿入したり、多様な役割があります。 図1:治具とボール盤  例えば、単にボール盤で穴を空ける場合でも、治具に材料を取り付ければ、ドリルを垂直に下ろすだけで、材料の同一位置へ正確に穴を空けることが可能です。治具を使用すれば、大量生産品の作業が容易になり、穴の位置がばらつくことも防止できます。 図2:傾斜が可能な治具   汎用的に使用できるものとして、材料を傾斜・回転させて固定する治具が挙げられます。この治工具を利用すれば、角度をつけた穴を空けるなど、4軸以上の加工機がないと加工が難しい形状を成形することが可能です。 参考:5軸加工機についてご紹介!3軸加工機との違いについても解説 治工具と工具の違い 治工具は「工具」という言葉を含みますが、工具とは異なります。 工具 治工具(治具) 切削工具研削工具 場椅子(万力)クランプブッシュ 加工を直接行う道具加工に不可欠なもの 加工をサポートする道具なくても一応加工はできる 工具の例には、フライスやドリル等の切削工具、砥石等の研削工具などが挙げられます。これらは金属を削るなど、加工を直接的に実行する道具であり、加工に不可欠なものです。 治工具の例には、バイス(万力)やクランプ、穴加工のガイドに用いるブッシュが挙げられます。これらはあくまで加工をサポートするものであり、加工そのものは治工具がなくても可能です。 工具は加工そのものに使われる道具で、治工具は工具による加工をサポートする道具です。 治具のメリット 治工具を利用することによって、加工の簡易化や均質化、保有している設備や工作機械では加工困難な形状の実現など、様々なメリットが期待できます。 治具のメリットとして、以下が挙げられます。 治具のメリット 品質・精度の向上 品質・精度の均質化 難しい加工の簡易化 作業の簡易化 人的ミスの減少 不良の発生軽減 生産速度の向上 治具を導入することによって、コストダウンや生産性の向上、製品価値の向上が可能になります。ただし、治具は多くの場合、部品・製品毎に用意しなくてはなりません。そのためロット数が少ない製品では、治具の製作費用自体が負担となり、コスト増に繋がる場合もあるので注意が必要です。 治工具と治具の違い 治具(じぐ)は、治工具とほぼ同じ意味で使われている言葉ですが、元々は工具の位置決めや案内を行う器具のみを示していました。しかし、現在では治工具と同様に、材料の位置決めや固定を行う取付具・固定具なども示し、加工や組立、検査等を補助する器具の総称として用いられており、治具と治工具は同義です。   治具の種類 治具には以下の種類があります。 固定治具 切断治具 挿入治具・引抜治具 溶着治具 塗装治具 カシメ治具(かしめて接合する治具) 検査治具 治具の種類 説明 例など 固定治具 材料を固定して加工を補助する治具 バイス、クランプ(万力) 切断治具 材料を決まったサイズに切断するための治具 裁断機 挿入治具引抜治具 材料を決まった位置に挿入(決まった位置から引抜く)ための治具 プーラー 溶着治具 材料同士を接着するための治具 シーラー 塗装治具 材料の塗装を補助する治具(塗装しない部分を保護する治具) ステンシル カシメ治具 材料同士の接合部分を固定する治具 ― 検査治具 完成品を検査するための治具 ― 治具の使い方と加工の例 (1)治具を使った穴あけ加工 治具を使用した例 治具を使用しない例 右図は、専用の治工具を使用しない方法です。汎用クランプで材料を固定し、穴を空ける位置にケガキ及びポンチ穴加工を実施します。その後ドリルを水平方向に送って位置を合わせ、垂直に下ろして加工します。 専用の治工具を用いる左図では、位置決めピンで材料の水平位置を固定すると共に、ブッシュでドリルを垂直に下ろした際のドリルチャックと材料との距離を一定にしています。 この方法では、材料にあらかじめ位置決めピンをはめる穴が空いている必要がありますが、材料にケガキやポンチ穴加工を行うことなく、材料の水平位置を決めることが可能です。また、穴の深さもブッシュの厚さで決まるため、ドリルの垂直方向の送りを調整することなく、一定深さの穴を空けることができます。 (2)治具を使った薄板の旋盤加工 治工具を使用して、旋盤で薄板を加工する方法です。図中の左上図の板材から右下図のような部品を成形するケースです。旋盤のチャックでは板材の固定ができないため、このままでは板材から部品を成形できません。 引用元:株式会社南信精機製作所 板材の雌ネジ穴と締結できる雄ネジを備えた治工具を用いることで、旋盤による加工が可能になります。板材を治工具と締結して治工具を旋盤にチャックします。これによって板材の外面の加工が可能になり、部品の成形ができます。 治工具・治具設計の考え方と製作の流れ 図5:治具設計の流れ  治具製作は「設計」→「部品調達・製作」→「組立」の流れで行われます。 (1)設計 治工具は、部品や製品の加工の補助に使用するものです。そのため治工具を設計する際には、加工対象の図面検討とともに、冶具と一緒に用いる工具・工作機械についても調べておく必要があります。 治工具の精度は「加工品の精度が治工具の精度よりも高くなることはない」ことを考慮して検討します。治工具が製品に触れるケースでは、製品に傷をつけないために、治工具に対する表面仕上げの必要性も考えます。 治工具の設計段階で考えること 治具と一緒に用いる工具 治具と一緒に用いる工作機械 治具の精度 治具の表面仕上げの必要性 これらを考慮した上で、求める効率性や精度、品質が実現できる治工具を設計します。 (2)部品の調達・製作 設計と要求仕様の整合性が確認できたら、治工具の製作に移ります。治工具は、材料を固定するだけの単純なものから、複数の部品を組み合わせたもの、加工を自動化するためのロボットと組み合わせたものまで、複雑さは様々です。 ケースバイケースで、自社で部品を製作したり外部から部品や装置を調達したりするなどして、治工具の全ての構成要素を揃えます。 (3)組立 a. 組立作業 構成要素がそろったら、組立に移ります。設計書を確認しながら、完成品をイメージして組み立てます。ものによっては、電気機器を含む場合があり、配線作業が必要になることがあります。 b. 検査・寸法チェックなど 組立作業が完了したら、寸法をチェックします。電気的なチェックを行うこともあります。 c. 試運転と納品 組立及び検査が完了したら、納品します。治工具は製品ではなく製造を補助する器具であるため、要求仕様通り動作するかを確認するために試運転を行うことがあります。問題があれば修正し、要求仕様とのズレがあれば調整します。 治工具・治具は、導入することでコストダウンや生産性の向上が期待できるため、金属加工を行う際に広く用いられている器具です。また、大量生産において、特に有用となるものでもあります。 しかし、工作機械や工具と同様、高い品質や精度が要求されるものであり、その製作には高度な技術が必要となります。   「どの加工で依頼したらいいのかわからなくて困っている」 「治具の製作を自社でできなくて困っている」 そのような方に向けてMitsuriでは、見積から発注までWEB上で行えるサービスを提供しております。お手持ちの図面を登録すると、加工可能な工場から見積が届きます。金属部品の調達でお困りの方は下のボタンから図面をご登録ください。

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    ボールエンドミルの特徴、使い方を解説!

    エンドミルとは、フライス盤やフライス加工が可能なマシニングセンタなどに取り付けて用いられる切削工具の一つです。ドリルと同様、高速に回転させながら材料に当て、削り取ることで成形を行います。先端と側面に刃を備え、主に水平方向に動かして切削加工を進めます。 エンドミルは、その形状の違いによりいくつかの種類が存在します。その中でも、先端が球状のボールエンドミルは、R面や球面、より複雑な三次元曲面の切削加工に不可欠な工具と言われています。 しかし、他の種類のエンドミルとはどんな違いがあるのか、どのような使い方があり、使用時にはどのような点に注意すべきか、知識がない方もいらっしゃるのではないでしょうか。 そこで、今回の記事では、ボールエンドミルの特徴を説明すると共に、使い方についても解説していきます。ぜひ、ボールエンドミルを使用する際の参考にしてください。 参考記事 フライス加工については、以下の記事で解説していますので、ご参照ください。 ⇒フライス加工について専門家が解説!加工の種類・加工機の種類がこの1記事でわかります! ボールエンドミルの特徴 エンドミルは、先端の形状の違いによっていくつかの種類に分けられますが、以下のものが代表的です。 代表的なエンドミル ●スクエアエンドミル…先端の形状が平坦なエンドミル。主に水平面や垂直面の加工に使用される。 ●ボールエンドミル…先端の形状が球状のエンドミル。主に曲面の加工に使用される。 ●ラジアスエンドミル…先端の形状が平坦であるものの、先端と側面の間のコーナーがR形状になっているエンドミル主に平面加工やR加工(凹の底の角部に丸みを残した加工)に使用される。 ここでは、特にボールエンドミルを取り上げ、他のエンドミルと比較した際の特徴を説明します。 曲面の加工に適している ボールエンドミルは、他のエンドミルに比べて曲面加工に適した工具です。 例えば、凹球形状の加工は、ラジアスエンドミルでも可能ですが、5軸加工機などでエンドミルを傾け、エンドミルのコーナー部を当てて切削するなどの工夫が必要となります。 しかし、ボールエンドミルであれば、その球の曲率半径よりも工具の半径が小さくなくてはなりませんが、3軸加工機でも問題なく凹球形状の成形が可能です。 幅広い形状の加工が可能 引用元:株式会社MOLDINO 曲面の加工に適したボールエンドミルですが、平面の加工ができないわけではありません。工具経路を塗り潰すように取ることで平面の成形が可能です。 ただし、上図のようなカスプ(尖った凹凸形状)が残り、面粗度に影響します。この面粗度を良好にするには、工具経路の重ね合わせを多くとる必要があります。 平面部分の成形もボールエンドミルで行うことで、工具交換時間の短縮に繋がります。しかし、切削時間が長くなると共に、面粗度の悪化も招きますので、これらを考慮した工具選びが必要です。 凹の底の角部に対するR無し加工ができない ラジアスエンドミルにも共通しますが、ボールエンドミルで凹形状を加工する場合、工具のコーナーの丸みを反映して、凹の底の角や側面の隅が円弧状になります。底の円弧は、スクエアエンドミルで除去することができますが、下図の左のような凹形状の場合は、どのエンドミルを使用しても、下図の中央のように側面の隅に丸みが残ってしまいます。 しかし、このような凹部にシャープな角を持った部品をはめ込むため、円弧を除去する必要があるケースもあります。その場合には、本来の壁面からさらに外側に抉るニガシ形状を設け(側面の隅のニガシは下図の右参照)、角に丸みがあることの不備を回避することがあります。 引用元:アイティメディア株式会社 切削速度が切削点によって異なる 引用元:三菱マテリアル株式会社 ボールエンドミルでは、工具の先に向かうほど切削速度が小さくなり、先端ではゼロになります。 切削速度は、切削点(工具の材料との接触部)における刃物の動く速度です。その速度は、以下の式で表されるため、工具径が大きい切削点ほど小さくなり、工具径がゼロになる切削点では切削速度もゼロとなります。 引用元:ユニオンツール株式会社 VC:切削速度 n:回転速度 D:工具径 もちろん、他の種類のエンドミルも中心の切削速度はゼロとなりますが、先端の工具径がゼロというわけではありませんので、ドリルのように加工面に垂直に送って加工を行わない限り、特に問題は生じません、 しかし、ボールエンドミルでは、工具の先に向かうほど工具径が小さくなるため、切削点に注意しながら加工を行わないと、切削速度が足りないことによる問題が生じることがあります。 加工面の品質がバラツキやすい ボールエンドミルを使用する場合、切削点に注意しながら加工を行わないと、加工面の品質がバラツキやすくなります。 切削加工においては、切削速度が大きいほど生じる切りくずが薄くなるため、切削抵抗が軽減されて加工面の品質が向上します。 従って、切削点によって切削速度が異なるボールエンドミルでは、工具のどこを接触させて切削するかにより、加工面の品質が変わります。特に、曲面を加工する場合などでは、曲面との接触角度によって工具の接触位置が変化するため、 加工面の品質にバラツキが発生しやすくなります。 このバラツキを抑える方法として、切削点が先端に集中し過ぎないように工具経路を工夫したり送り速度を小さくしたりする方法があります。また、5軸加工機などの使用が可能な場合は、ボールエンドミルに傾斜を付け、工具の一定の位置を接触させて切削することも有効です。この場合、推奨される切削点の位置は、例えば、下図で「有効加工切れ刃部」とされている部位です。 引用元:社団法人精密工学会北海道支部 刃こぼれが生じやすい ボールエンドミルは、刃こぼれが生じやすいという特徴があります。 上述したように、ボールエンドミルでは、その工具径が先端付近で大きく変わるため、切削点による切削速度の変動が大きく、工具にかかる切削抵抗も位置によって変化します。そのため、切削抵抗が大きい先端に切削点を集中させると、刃こぼれが発生しやすくなっています。 切りくずの排出性が悪い エンドミルによる加工では、切りくずは、刃と刃の間のチップポケットと呼ばれる隙間を通って排出されます。その点、ボールエンドミルでは、先端に向かうほど工具自体が細くなっているため、先端付近のチップポケットが小さく、切りくずの排出性が良くありません。それにより、刃が切りくずをかみ込んで加工面の品質を悪化させたり、切りくずが詰まって刃の損傷の原因となることがあります。 ボールエンドミルの使い方 ボールエンドミルは、他のエンドミル同様、以下のような形状の加工も行うことができる万能性の高いエンドミルです。 ポールエンドミルで可能な加工 ●平面加工…工具経路を塗り潰すように取ることで平面を成形。 ●側面加工…エンドミルの側面に備えた刃を当て、材料の側面を切削。 ●段差加工…エンドミルの先端と側面の刃で、段差を成形。 ●溝加工…溝を成形。主にエンドミルの側面を当てて切削。(下図左) ●ポケット加工…凹を成形。ドリルで下穴を空け、穴を広げていく形で切削。(下図中央) ●ヘリカル加工…円状の凹を成形。エンドミルをらせん状に動かして穴を広げていく。(下図右) 引用元: 株式会社モノト しかし、やはりボールエンドミルに適しているのは、曲面加工です。ここでは、曲面加工を行う場合のボールエンドミルの使い方について説明します。 曲面加工におけるボールエンドミルの使い方 引用元:三菱マテリアル株式会社 ボールエンドミルを使用した曲面の加工方法には、走査線加工や等高線加工などがあります。 走査線加工は、上図の左にあるように、エンドミルを一定方向に動かしながら目的の形状に沿って上下させて加工する方法です。引き上げ加工と押し下げ加工を繰り返すことで加工を進めますが、押し下げ加工時に切削速度の遅い工具の先端中心付近で切削するため、工具の損傷が生じやすいという欠点があります(下図参照)。 引用元:三菱マテリアル株式会社 一方、等高線加工は、見出し下の右図にあるように、エンドミルを水平面内で目的の形状に沿って動かして加工。これを、順次高さを変えながら行っていく方法です。切削点を工具の一定位置に保持しやすく、切削速度が遅く刃が損傷しやすい先端付近での切削を回避しやすいという特徴があります。ただし、刃の一定の位置を酷使することになるため、その部分の摩耗の進行が早くなります。 それぞれの方法に短所がありますが、工具の損傷に繋がらない等高線加工を選択することが妥当です。 なお、5軸加工機などでエンドミルを傾斜させることができる場合、双方の方法における短所を補う事が可能です。しかし、切削する曲面の角度に合わせて順次傾斜角も変化させる必要があり、プログラムが複雑化します。そのため、関連した技術や経験が必要となると共に、工数が増加してしまうことがあります。 ボールエンドミルを使用する場合の注意点 ボールエンドミルで加工を行う場合、平面や曲面に限らず、加工面にカスプ(尖った凹凸形状)が残ります。このカスプの高さが大きいほど、面粗度が悪化するので、良好な加工面を得たい場合は、ピックフィード(下図のae)を小さくする必要があります。しかし、そのためには、工具経路を長く取る必要があるため、加工時間は長くなってしまいます。 引用元:株式会社MOLDINO そこで有効なのが、工具の回転数を高めると同時に、工具の送り速度を上げることです。これにより、加工時間の延長を抑えながら、面粗度を向上させることができます。さらに、切削速度が上昇して切削抵抗も小さくなるため、加工面の品質も向上します。 また、工具径の小さいボールエンドミルを使用する場合、切削点によっては工具がたわみ、加工精度を悪化させることがあります。 曲面を加工する場合、曲面の形状によっては、下図の左のように、軸の垂直方向に大きな力がかかることがあります。この力の大きさによっては、エンドミルがたわみ、形状がたわんだ分だけずれる可能性があります。 たわみを防ぐ方法として、上述したボールエンドミルに傾斜を付ける方法があります。5軸加工機などが必要となりますが、切削点を一定の位置とすることにより、軸の垂直方向に生じる力を低減することが可能です(下図の右)。 引用元:国立大学法人熊本大学 曲面加工に有用なボールエンドミル ボールエンドミルの特徴や使い方、使用時の注意点について解説しましたが、いかがでしたでしょうか。 ボールエンドミルは、平面や凹凸、曲面など、多様な形状を成形できる多機能万能工具です。特に、複雑な曲面を対象とする場合の有用性が高く、ボールエンドミルでは加工できても、他の形状のエンドミルでは加工できないというケースもあります。また、4軸以上の多軸加工機に取り付けて使用することで、さらなる高い精度や品質、工具寿命の延長が期待できます。 ボールエンドミルは、今や金型や航空機部品など、三次元曲面を有する輪郭形状の切削に不可欠な工具となっています。その重要性は、今後も持続すると考えられますので、ぜひこの機会に覚えておいてください。   「どの加工で依頼したらいいのかわからなくて困っている」 「図面で指定されている加工が自社でできなくて困っている」 そのような方に向けてMitsuriでは、見積から発注までWEB上で行えるサービスを提供しております。お手持ちの図面を登録すると、加工可能な工場から見積が届きます。金属部品の調達でお困りの方は下のボタンから図面をご登録ください。

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    タッチプローブとは?原理や種類を解説

    今回はタッチプローブの原理や種類について解説します。 タッチプローブは、マシニングセンタなどの工作機械に搭載するセンサーのことで、原点出しや寸法の自動測定が可能になります。 タッチプローブはモデルによって対応する工作機械が異なり、適切なタイプを選ばなくてはなりません。ここでは、タッチプローブがどのような原理で信号を伝達しているのか、どのような種類があるのかをを見てみましょう。 参考:マシニングセンタの基礎知識と導入メリットを解説 タッチプローブとは タッチプローブとは、NC工作機械で用いる接触式のセンサーのことを指します。 タッチプローブをマシニングセンタなどの主軸に搭載し、ワークに接触させることで、原点出しや、加工後の寸法を高精度で自動計測できるようになります。 ワークの寸法を正しく計測することで、精度の高い加工が実現し、加工不良を防止できるようになります。また、加工ワークの測定が正確かつ、手作業によるワークの位置決めが無くなることで、作業者の技術レベルによる違いも無くなり、ヒューマンエラーや段取り時間の削減も期待できます。 タッチプローブの原理 引用元:NKワークス株式会社 工作機械用 タッチプローブ タッチプローブは、本体から出ている棒部分「スタイラス」の先端をワークやテーブルに接触させることで、精度の高い信号を出力し、数値制御装置(NC)やPC装置に伝達します。 タッチプローブは通常、自動工具交換装置(ATC)に格納されており、計測の際に使用します。 参考:自動工具交換装置(ATC)とは?ATCの種類と構造 引用元:はじめの工作機械 タッチプローブとは|ワーク計測用タッチプローブの種類と原理 伝達方式としては、有線方式のほかに、ワイヤレスで伝達する、赤外線方式・無線方式・誘電方式があります。 赤外線方式は、赤外線を用いて測定信号を受信器に送る仕組みで、タッチプローブの通信方法のなかでもオーソドックスなタイプです。反射によりアクセスしにくい位置でも信号を受信しやすい特徴があります。 無線方式は、無線通信を用いて測定信号を受信機に発信します。無線通信は2.4GHzのISM帯(商用周波数帯)を使用しており、通信範囲が広く、複雑な動きの5軸加工機でも安定した通信が可能です。 誘電方式は、誘導コイルを用いて測定信号を受信機に発信します。誘電方式は、タッチプローブ本体と受信機を至近距離まで近づける必要があるので、レイアウトが限定されます。しかし、受信機からプローブへ電力供給するため、プローブ本体の電源が不要というメリットがあります。 タッチプローブの種類 タッチプローブは、マシニングセンタ以外にも、さまざまな工作機械に採用されています。タッチプローブは、モデルによって適した工作機械が異なります。 研削盤用タッチプローブ 引用元:株式会社メトロール CNC工作機械用 有線式 小型タッチプローブ[K3Sシリーズ] 研削盤用タッチプローブは、研削盤で用いるタッチプローブです。円筒研削盤の砥石の摩耗検出や、NC平面研削盤のワーク高さ計測にも使われます。 研削盤や旋盤などの手動で工具交換を行う工作機械は、ケーブル通信式のタッチプローブが採用されています。 参考:研削盤とは?研削盤と研削加工の種類や切削加工との違い NC旋盤用タッチプローブ 引用元:RENISHAW OLP40 旋盤用タッチプローブ NC旋盤用タッチプローブは、NC旋盤に搭載されるタッチプローブです。主にワークの内径、外径、端面計測を行います。タレット(旋回する刃物台)に取り付けるため、ワイヤレス式のタッチプローブが主流です。 ロボット用タッチプローブ 引用元:株式会社メトロール CNCロボット用 有線式タッチプローブ[K3Mシリーズ] ロボット用タッチプローブは、ロボットアームや溶接ロボットで使われているタッチプローブです。主にワークの寸法計測、芯出し、位置決めを行います。 簡易型タッチプローブ 簡易型タッチプローブは、主に汎用工作機械で用いたり、ワークの段取り補助として使われたりする、アナログ式のタッチプローブを指します。種類としては、ダイヤルゲージで数値を読み取るものや、LEDで接触を知らせるものなどがあります。   「どの加工で依頼したらいいのかわからなくて困っている」 「図面で指定されている加工が自社でできなくて困っている」 そのような方に向けてMitsuriでは、見積から発注までWEB上で行えるサービスを提供しております。お手持ちの図面を登録すると、加工可能な工場から見積が届きます。金属部品の調達でお困りの方は下のボタンから図面をご登録ください。

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    ガンドリル加工とは?特徴や適した材質を解説

    小さく深い止まり穴や細く長い貫通穴をあけるガンドリル加工と呼ばれる加工法があります。元は銃の穴をあけるために開発された方法ですが、他の穴あけ加工ではあけることができない深い穴を精度良くあけることができるため、近年多様な用途に採用されています。 また、ガンドリル加工は、他の穴あけ加工に比べて、切り屑の排出性が良く、加工面も滑らかで、高速に深穴をあけることができるという利点があります。マシニングセンタなどの汎用性の高い工作機械でも、工具を用意すれば実施することができるため、通常の穴あけ加工の代わりに採用するケースも増えています。 この記事では、ガンドリル加工の詳細や特徴、加工可能な材質、類似した加工法であるBTA加工との違いについて解説していきます。 ガンドリル加工とは ガンドリル加工とは、ガンドリルと呼ばれる小径・深穴加工用のドリルを用いた穴あけ加工のことです。小径の深い穴を高精度かつ高速度であけることができる加工法です。 ガンドリルは、主にガンドリルマシンと呼ばれる専用の加工機に装着して用いられますが、最近はマシニングセンタなどに装着して使用できるものもあります。 ガンドリルの名称の通り、元々は、ピストルやライフルといった銃の銃身の穴をあけるための加工法でした。しかし、現代では、高い精度が求められるシリンダーやシャフト、スピンドルといった機械部品などの加工にも採用されています。 深穴は、JIS規格(JIS B 0106:2016)にて、長さと直径の比が4倍以上の穴と定義されています。しかし、近年、一般的なドリルでも比較的高い精度の深穴加工が可能となっていることから、穴の長さと直径の比が10倍以上の穴あけ加工を深穴加工とすることも多くなっています。 ガンドリル加工は、深穴加工の中でも、穴径が1mmから30mm程度までの小径穴が対象です。加工可能な深さは、一般的に穴径の50倍から100倍程度までとなっています。なお、穴径が30mm以上の深穴はBTA(Boring & Trepanning Association)加工、穴径が1mm以下の深穴は微細深穴加工と呼ばれる加工法が採用されます。 参考:マシニングセンタの基礎知識と導入メリットを解説 ガンドリルの構造 引用元:Q&A・技術情報「小径・深穴ガンドリルマシン「ガンフィーダ」についてのQ&A」株式会社スギノマシン ガンドリルは、上図に見られるように、超硬刃部とシャンク、ドライバという3つの部位から構成されます。先端に切れ刃のある超硬刃部、続いてドリルの柄となるシャンク、後端にシャンクを保持して加工機と接続するドライバがあります。そして、ガンドリルの内部には切削油の流路、先端には切削油を噴射する油穴があり、超硬刃部とシャンクの側面には切り屑を排出するV字溝が刻まれています。 ガンドリルは、先端の油穴から切削油を高圧噴射しながら高速回転することで、切り屑をV字溝を通して外部へ排出しながら穴を削り出します。 参考:穴開け加工とは【専門家が解説】タップ加工、リーマー加工との違いを説明! ガンドリルマシンの構造 引用元:加工について「ガンドリル加工とBTA加工の違い」株式会社不二新製作所 ガンドリルマシンは、大まかに、横向きに取り付けられたガンドリル、ガンドリルを高速回転させる駆動装置、ドリルブッシュ、切削油(クーラント)の循環機構から構成されます(上図参照)。 ガンドリルマシンでは、ドリルブッシュは、ガンドリルをガイドして中心軸を安定させ、ガンドリルが加工穴の中心軸からずれることを防止します。切削油は、ポンプの働きによってガンドリルの先端から噴射され、切り屑と一緒に回収されてタンクに溜め置かれ、浄化されて再利用されます。 これらの機構によって、ガンドリルマシンは、高精度かつ高速度な深穴加工を実現しています。 参考:切削油(クーラント液)の種類、成分、メリット・デメリット マシニングセンタ用ガンドリル 最近では、マシニングセンタ用のガンドリルとして、マシニングセンタのほか、NC旋盤やタレット旋盤、ボール盤などでも使用できるガンドリルを入手できるようになっています。 ただし、マシニングセンタ用ガンドリルと言っても、その構造自体に異なる点はなく、先端から切削油を噴射しながら深穴を削り出す工具であることに違いはありません。しかし、ガンドリルマシンに存在するドリルブッシュがないため、深穴加工の際には、その代替として予めワークにガイド穴をあけておく必要があります。 また、ガンドリルマシンを用いた場合ほどの精度は出ないため、加工可能な穴深さも小さくなっています。 参考:ボール盤とは?構造、種類、フライス盤との違い ガンドリル加工の用途 ガンドリル加工は、自動車・家電などの薄型化・軽量化が進展し、電気機器・電子機器などの高精度化が強く求められるようになったことから、様々な分野の幅広い用途で採用されるようになっています。 ガンドリル加工の用途例としては、例えば、以下が挙げられます。 ・食品…液体充填機、冷却器部品、酪農用搾乳機、食品製造機械部品 ・輸送機器…自動車部品、鉄道車両部品、航空機部品 ・機械…スピンドル、シャフト、シリンダー、噴射機のノズル、油圧機器部品、減速機部品 ・電気…電機・電子機器部品、半導体関連熱版、液晶製造装置部品 ・建築…重機部品 ・金属加工…各種金型 ガンドリル加工の特徴 ガンドリル加工は、上述したように、一般的なドリル加工と様々な点で異なります。ここでは、ガンドリル加工の特徴について解説します。 小径穴の深穴加工に特化している ガンドリル加工は、小径穴の深穴加工に特化した加工法です。対応している穴径は、メーカーによって異なりますが、1mm~32mmが標準的です。つまり、ガンドリルの刃径は、だいたい、この範囲内となっています。 深い止まり穴や長い貫通穴をあけることが可能 ガンドリル加工は、通常のドリルでは穴あけが不可能な、深い止まり穴や長い貫通穴をあけることができる加工法です。 加工可能な深さはガンドリルによって違い、マシニングセンタ用ガンドリルよりも、ガンドリルマシン用ガンドリルの方が加工可能な深さの大きいものが揃っています。また、ガンドリルは、刃径が大きいものほど、加工可能な穴の深さも大きい傾向があります。 下表は、マシニングセンタ用とガンドリルマシン用の既製品として入手できるガンドリルのサイズデータです。ただし、特注のガンドリル製作を受け付けているメーカーもあるので、ガンドリルが下表に記載されているサイズに限られているわけではありません。 マシニングセンタ用 刃径 最大加工深さ 加工深さ/刃径 2 80 40 4 160 40 6 240 40 8 280 35 12 410 35 14 420 30 18 480 30 24 480 20 30 600 20 ガンドリルマシン用 刃径 最大加工深さ 加工深さ/刃径 1 300 300 2 350 175 3 450 150 4 550 137 6 1000 166 8 1500 187 12 1500 125 24 1700 70 32 1700 53 切り屑の排出性に優れる ガンドリル加工は、切り屑の排出性が高いという特徴があります。 深穴加工は、通常のドリルを単に長くしたツイストロングドリルでもできないわけではありません。しかし、ツイストロングドリルでは、切り屑はドリルのねじれ溝を通ってのみ排出されるため、排出効率が低くなっています。また、切削油も外部から供給するのみで、ドリルの先端に浸透しにくく、切り屑排出にもほとんど役立ちません。そのため、ツイストロングドリルで深穴をあける場合は、ドリルの送りを進行させては後退させるステップフィードで、後退させる度に切り屑を排出して、切り屑の詰まりを防ぐ必要があります。 一方、ガンドリル加工では、切り屑は、ドリルの先端から高圧噴射される切削油と一緒に、ドリルのV字溝を通って流れ出ていきます。そのため、ガンドリル加工は、切り屑の詰まりや切り屑と加工面の干渉などが非常に少ない加工法となっています。また、切削油の循環性が高いことから、切削温度の上昇や工具摩耗の抑制効果も期待することができます。 高精度の深穴加工が可能 ガンドリル加工は、曲がりが小さく、高精度の深穴をあけることができる加工法です。 加工穴の芯ズレの精度は、加工機・工具・加工条件・加工材料などによりますが、100mmの長さで0.1mm以下、ガンドリルマシンを用いれば100mmの長さで0.01mm以下を実現することも可能です。 穴径の精度も高く、径公差は、下表のような許容誤差となるH7~H9程度となっています。 穴径 (mm) 公差等級 (μm) H7 H8 H9 3以下 10 14 25 3~6 12 18 30 6~10 15 22 36 10~18 18 27 43 18~30 21 33 52 穴の表面粗さが良好 ガンドリル加工は、ツイストドリルによる穴あけ加工に比べ、表面粗さが良好な穴を成形することができます。 ガンドリルは、超硬刃部の側面に滑らかな表面を持つガイドパッドを備えています。ガイドパッドは、ガンドリル加工の穴あけ加工中、穴内面に押し当てられて塑性変形と加工硬化を起こし、穴内面を滑らかに仕上げます。これをバニシング効果と呼びますが、この効果によって、穴内面の強度が向上するとともに、面粗度が良くなります。 その面粗度は、通常の穴あけ加工の仕上げに用いられるリーマと同等以上のRa0.2~Ra3.2(0.2μm~3.2μm)程度です。なお、Raは、算術平均粗さと呼ばれる表面にある凹凸の高さの平均値で、小さいほど表面は滑らかとなります。ちなみに、リーマはRa0.8~Ra3.2程度、ツイストドリルはRa3.2~Ra12.5程度となっています。 高速な深穴加工が可能 ガンドリル加工は、上述したようにステップフィードすることなく、一度の送りだけで加工できるため、通常のドリルで深穴加工を行う場合に比べて、およそ3倍~5倍の速度で深穴加工を行うことが可能です。 ただし、ガンドリルマシンではなく、マシニングセンタなどでガンドリル加工を行う場合は、深穴加工の前にガイド穴の穴あけ加工が必要であるため、その分の時間が掛かります。 工具の再研削が可能 ガンドリルは、再研磨が可能です。メーカーが再研磨を受け付けているので、切れ味が悪くなったり、加工回数が多くなったりしたら再研磨を依頼しましょう。 また、ガンドリル専用の研磨機や汎用の研磨機に取り付けられるガンドリルの再研磨用アタッチメントを販売しているメーカーがあります。ガンドリルの使用回数が多く、ランニングコストが高くなっている場合は、再研磨機器の導入を検討してみると良いでしょう。 ガンドリル加工に適した材質 ガンドリル加工は、様々な材質の加工に対応しています。炭素鋼やステンレス鋼などの鉄鋼をはじめ、アルミや銅などの非鉄金属、耐熱鋼であるチタンやインコネルなどの難削材、焼入れした後の材料も加工可能です。その高い精度から、樹脂に対する深穴加工の引き合いも多くなっています。 下表は、いくつかのガンドリルのメーカーサイトにて、対応可能な材質として記載されているものを纏めたものです。 材質の分類 材質名 炭素鋼 一般構造用圧延鋼材 SS400 低炭素鋼 S10C~S28C 中炭素鋼 S30C~S55C 高炭素鋼 S55C~S75C 合金鋼 クロムモリブデン鋼 SCM415, SCM420, SCM435, SCM440 ニッケルクロムモリブデン鋼 SNCM240, SNCM439 クロム鋼 SCr440 軸受鋼 高炭素クロム軸受鋼 SUJ2 工具鋼 冷間ダイス鋼 SKD11 熱間ダイス鋼 SKD62 高速度工具鋼(ハイス鋼) モリブデン系 SKH51 ステンレス鋼 マルテンサイト系 SUS416, SUS420J2 フェライト系 SUS405, SUS430 オーステナイト系 SUS304, SUS316, SUS316L, SUS321, SUS630 鋳鉄 ねずみ鋳鉄 FC250 ダクタイル鋳鉄 FCD400 アルミ合金 鍛造用 A2017, A2024, A5052, A5056, A6061, A7075 鋳物用 AC2B, AC4C 耐熱鋼 チタン 純チタン, チタン合金 インコネル インコネル600 ハステロイ ハステロイC276  銅 純銅 C1020 (無酸素銅), C1100 (タフピッチ銅) 黄銅 C2801 プラスチック アクリル, 塩ビ, PEEK樹脂, エポキシ樹脂, ポリカーボネート, MCナイロン, PTFE, POM BTA加工との違い ガンドリル加工とBTA加工は共に深穴加工の加工法ですが、小径の深穴加工はガンドリル加工、中・大径の深穴加工はBTA加工が適用されるのが標準的です。ガンドリル加工は穴径が1mm~30mmの場合、BTA加工は穴径が30mm以上の場合に採用されますが、特に決まっているわけではなく、メーカーによっては穴径50mmの深穴加工に対応したガンドリルやガンドリルマシンを販売しています。 ガンドリル加工とBTA加工は、工具と加工機も異なります。BTA加工では、ボーリングバーと呼ばれる中空の工具とその先端に付いた刃物であるボーリングヘッド、専用の加工機であるBTAマシンを使用します。 ボーリングバーが中空なのは、ガンドリル同様、切削油を流すためです。しかし、ボーリングバーは、ガンドリルとは逆に、先端のボーリングヘッドから切削油と一緒に切り屑を回収します。 ガンドリルマシンとBTAマシンは類似した構造を持つ加工機ですが、BTAマシンは、切削油の循環がガンドリルマシンとは逆向きであり、オイルプレッシャーヘッドと呼ばれるガンドリルマシンにない装置を搭載しています(下図参照)。BTAマシンでは、切削油を穴あけ途中の穴とボーリングバーの隙間から高圧を掛けて注入し、ボーリングバーの先端のボーリングヘッドから切り屑と一緒に回収して循環させます。その切削油に圧力を掛ける装置がオイルプレッシャーヘッドです。 引用元:BTA加工「BTA加工とは」日本高速削孔株式会社   「どの加工で依頼したらいいのかわからなくて困っている」 「図面で指定されている加工が自社でできなくて困っている」 そのような方に向けてMitsuriでは、見積から発注までWEB上で行えるサービスを提供しております。お手持ちの図面を登録すると、加工可能な工場から見積が届きます。金属部品の調達でお困りの方は下のボタンから図面をご登録ください。

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    リーディングドリルとは?用途、種類、切削条件

    今回は、リーディングドリルについての用途や種類などについて解説します。 リーディングドリルは、穴あけ加工で使う一般的なツイストドリルとは異なる形状です。主な用途は、穴あけのセンタリング(もみつけ)加工の前加工です。また、ツイストドリルよりも剛性に優れた設計のため、センタリング以外に面取りやV溝加工にも対応しています。 リーディングドリルとは 引用元:部品加工センター愛知.com リーディングドリル リーディングドリルとは、ツイストドリルなどで穴加工をする際の、位置決めや精度を高めるための工具のことで、別名「スターティングドリル」と呼ばれることもあります。 リーディングドリルとツイストドリルとの違いは溝の長さで、リーディングドリルのほうが溝が短く、ねじれ角を小さくすることで剛性を高めています。 ツイストドリルは、切り屑の排出性を重視しているため、ウェブ(刃の中心から溝底までの太さ)の厚みが薄く、剛性に乏しい性能です。また、溝も長いことから、ホルダに取り付けた際の突き出し量も長くなります。突き出し量が長いと工具が倒れやすくなるので、剛性に乏しいドリルは穴加工を行うと位置ずれしてしまう傾向にあります。 位置精度が求められる穴加工では、このような位置ずれを無くすために、リーディングドリルを使って前加工を行います。 引用元:旋盤市場 センタードリル リーディングドリルと似たものに、センタードリルがあります。基本的にセンタードリルは、旋盤加工などで材料の芯位置を示すセンター穴を設けるために使います。ただし、リーディングドリルのように、穴加工の位置決め用途としてセンタードリルを使う場合もあります。 リーディングドリルの用途 リーディングドリルは主に以下の用途で使われています。 ●穴あけ加工の位置決め リーディングドリルは、穴あけ加工の位置決めが最も主流な使い方です。リーディングドリルにて被削材を前加工しておくことで、ツイストドリルで穴あけをする際に、ツイストドリルの先端がブレずに被削材へと食い付かせられるようになります。リーディングドリルは、基本的に高い精度の穴あけが求められる場合に活用されます。 ●面取り リーディングドリルは優れた剛性を持つことから、穴あけの前加工として使えるだけでなく、面取り加工にも対応します。穴の周辺に対して面取りができるほか、ドリルを横送りさせて被削材の端部を面取りすることも可能です。 ●V溝加工 リーディングドリルは、面取りと同じ要領で横送りさせることで、V溝加工にも使えます。 先端角の違いによる種類 引用元:MiSUMi-VONA AG スターティングドリルロングシャンク AGSTDLS ドリルを横から見たときの先端の角度を「先端角」と呼びます。主にリーディングドリルの先端角は、60°・90°・120°・140°があり、用途によって使い分けられています。基本的にツイストドリルの先端角に対して、センタリングの面取角は同じ角度かそれ以上の角度にする必要があります。もしツイストドリルの先端角よりもセンタリングの面取角が小さい場合、位置ずれが発生しやすくなるので注意が必要です。 60° 先端角が60°のタイプは、溝なしタップのねじ立て時の穴面取りに便利です。 溝なしタップは、めねじを設ける際に穴の端面にカエリが生じやすいものですが、先端角60°のリーディングドリルを用いることで、カエリを防止することができます。 ただし鋭角に作られている分、他の大きな角度に比べて剛性には劣るため、刃が欠損しやすくなります。製品によっては先端部分だけが大きな角度に設定され、刃が欠損しにくいように設計されているものもあります。 90° 先端角が90°のタイプは、穴あけのセンタリング用としてだけでなく、C面取りを兼ねて使用したい場合に便利です。 ただし、穴面取りとセンタリング加工を兼用した場合、後工程のドリル肩部が欠けてしまう恐れがあるため、穴面取りとセンタリング加工は別工程で行うようにしましょう。 また、先端角が90°のリーディングドリルでも、刃が欠損しないように二段先端形状を採用しているものがあります。 120°・140° 先端角が120°や140°のような鈍角のリーディングドリルは、ツイストドリルを使用する際のセンタリング加工に適しています。一般的なツイストドリルの角度は118°のため、それよりも大きい角度のリーディングドリルは、穴あけの際に位置ずれが起こりにくくなります。 鈍角のリーディングドリルは、剛性に優れているので欠損がしにくい点も特徴です。 リーディングドリルの切削条件 リーディングドリルは、各製品の仕様によって切削条件が異なります。主な切削条件の内容は、軟鋼・炭素鋼・合金鋼・調質鋼といった被削材とドリルのサイズ・先端角ごとに、メーカーが推奨する切削速度・回転速度・送り量が定められています。 センタリング加工と面取り加工で条件が異なる場合もあるので、リーディングドリルを使う前に製品仕様をよく確認しておくようにしましょう。   「どの加工で依頼したらいいのかわからなくて困っている」 「図面で指定されている加工が自社でできなくて困っている」 そのような方に向けてMitsuriでは、見積から発注までWEB上で行えるサービスを提供しております。お手持ちの図面を登録すると、加工可能な工場から見積が届きます。金属部品の調達でお困りの方は下のボタンから図面をご登録ください。

  • 治具の種類【基礎】使い方と事例、考え方

    治具(じぐ)(治工具(じこうぐ))は、製品の品質・精度の向上や均質化、製造の効率化などを図るために用いられており、製造業において必要不可欠なものです。 金属製品は、材料に成形加工や熱処理、表面処理などを施し、さらに場合によっては組立や検査等を行って生産します。各工程では、工作機械や刃物、メッキ設備などを使用して加工等を行っていきますが、そのほとんどの場面において治工具・治具が用いられます。 治具・治工具とは【わかりやすく】工具とどう違う? 治具(治工具)とは、加工や組立、検査などの各工程において、製造をサポートするために用いられる器具です。加工工程において工具の位置決めや案内、材料の固定などを行ったり、組立工程において部品を所定の位置へ正確に挿入したり、多様な役割があります。 図1:治具とボール盤  例えば、単にボール盤で穴を空ける場合でも、治具に材料を取り付ければ、ドリルを垂直に下ろすだけで、材料の同一位置へ正確に穴を空けることが可能です。治具を使用すれば、大量生産品の作業が容易になり、穴の位置がばらつくことも防止できます。 図2:傾斜が可能な治具   汎用的に使用できるものとして、材料を傾斜・回転させて固定する治具が挙げられます。この治工具を利用すれば、角度をつけた穴を空けるなど、4軸以上の加工機がないと加工が難しい形状を成形することが可能です。 参考:5軸加工機についてご紹介!3軸加工機との違いについても解説 治工具と工具の違い 治工具は「工具」という言葉を含みますが、工具とは異なります。 工具 治工具(治具) 切削工具研削工具 場椅子(万力)クランプブッシュ 加工を直接行う道具加工に不可欠なもの 加工をサポートする道具なくても一応加工はできる 工具の例には、フライスやドリル等の切削工具、砥石等の研削工具などが挙げられます。これらは金属を削るなど、加工を直接的に実行する道具であり、加工に不可欠なものです。 治工具の例には、バイス(万力)やクランプ、穴加工のガイドに用いるブッシュが挙げられます。これらはあくまで加工をサポートするものであり、加工そのものは治工具がなくても可能です。 工具は加工そのものに使われる道具で、治工具は工具による加工をサポートする道具です。 治具のメリット 治工具を利用することによって、加工の簡易化や均質化、保有している設備や工作機械では加工困難な形状の実現など、様々なメリットが期待できます。 治具のメリットとして、以下が挙げられます。 治具のメリット 品質・精度の向上 品質・精度の均質化 難しい加工の簡易化 作業の簡易化 人的ミスの減少 不良の発生軽減 生産速度の向上 治具を導入することによって、コストダウンや生産性の向上、製品価値の向上が可能になります。ただし、治具は多くの場合、部品・製品毎に用意しなくてはなりません。そのためロット数が少ない製品では、治具の製作費用自体が負担となり、コスト増に繋がる場合もあるので注意が必要です。 治工具と治具の違い 治具(じぐ)は、治工具とほぼ同じ意味で使われている言葉ですが、元々は工具の位置決めや案内を行う器具のみを示していました。しかし、現在では治工具と同様に、材料の位置決めや固定を行う取付具・固定具なども示し、加工や組立、検査等を補助する器具の総称として用いられており、治具と治工具は同義です。   治具の種類 治具には以下の種類があります。 固定治具 切断治具 挿入治具・引抜治具 溶着治具 塗装治具 カシメ治具(かしめて接合する治具) 検査治具 治具の種類 説明 例など 固定治具 材料を固定して加工を補助する治具 バイス、クランプ(万力) 切断治具 材料を決まったサイズに切断するための治具 裁断機 挿入治具引抜治具 材料を決まった位置に挿入(決まった位置から引抜く)ための治具 プーラー 溶着治具 材料同士を接着するための治具 シーラー 塗装治具 材料の塗装を補助する治具(塗装しない部分を保護する治具) ステンシル カシメ治具 材料同士の接合部分を固定する治具 ― 検査治具 完成品を検査するための治具 ― 治具の使い方と加工の例 (1)治具を使った穴あけ加工 治具を使用した例 治具を使用しない例 右図は、専用の治工具を使用しない方法です。汎用クランプで材料を固定し、穴を空ける位置にケガキ及びポンチ穴加工を実施します。その後ドリルを水平方向に送って位置を合わせ、垂直に下ろして加工します。 専用の治工具を用いる左図では、位置決めピンで材料の水平位置を固定すると共に、ブッシュでドリルを垂直に下ろした際のドリルチャックと材料との距離を一定にしています。 この方法では、材料にあらかじめ位置決めピンをはめる穴が空いている必要がありますが、材料にケガキやポンチ穴加工を行うことなく、材料の水平位置を決めることが可能です。また、穴の深さもブッシュの厚さで決まるため、ドリルの垂直方向の送りを調整することなく、一定深さの穴を空けることができます。 (2)治具を使った薄板の旋盤加工 治工具を使用して、旋盤で薄板を加工する方法です。図中の左上図の板材から右下図のような部品を成形するケースです。旋盤のチャックでは板材の固定ができないため、このままでは板材から部品を成形できません。 引用元:株式会社南信精機製作所 板材の雌ネジ穴と締結できる雄ネジを備えた治工具を用いることで、旋盤による加工が可能になります。板材を治工具と締結して治工具を旋盤にチャックします。これによって板材の外面の加工が可能になり、部品の成形ができます。 治工具・治具設計の考え方と製作の流れ 図5:治具設計の流れ  治具製作は「設計」→「部品調達・製作」→「組立」の流れで行われます。 (1)設計 治工具は、部品や製品の加工の補助に使用するものです。そのため治工具を設計する際には、加工対象の図面検討とともに、冶具と一緒に用いる工具・工作機械についても調べておく必要があります。 治工具の精度は「加工品の精度が治工具の精度よりも高くなることはない」ことを考慮して検討します。治工具が製品に触れるケースでは、製品に傷をつけないために、治工具に対する表面仕上げの必要性も考えます。 治工具の設計段階で考えること 治具と一緒に用いる工具 治具と一緒に用いる工作機械 治具の精度 治具の表面仕上げの必要性 これらを考慮した上で、求める効率性や精度、品質が実現できる治工具を設計します。 (2)部品の調達・製作 設計と要求仕様の整合性が確認できたら、治工具の製作に移ります。治工具は、材料を固定するだけの単純なものから、複数の部品を組み合わせたもの、加工を自動化するためのロボットと組み合わせたものまで、複雑さは様々です。 ケースバイケースで、自社で部品を製作したり外部から部品や装置を調達したりするなどして、治工具の全ての構成要素を揃えます。 (3)組立 a. 組立作業 構成要素がそろったら、組立に移ります。設計書を確認しながら、完成品をイメージして組み立てます。ものによっては、電気機器を含む場合があり、配線作業が必要になることがあります。 b. 検査・寸法チェックなど 組立作業が完了したら、寸法をチェックします。電気的なチェックを行うこともあります。 c. 試運転と納品 組立及び検査が完了したら、納品します。治工具は製品ではなく製造を補助する器具であるため、要求仕様通り動作するかを確認するために試運転を行うことがあります。問題があれば修正し、要求仕様とのズレがあれば調整します。 治工具・治具は、導入することでコストダウンや生産性の向上が期待できるため、金属加工を行う際に広く用いられている器具です。また、大量生産において、特に有用となるものでもあります。 しかし、工作機械や工具と同様、高い品質や精度が要求されるものであり、その製作には高度な技術が必要となります。   「どの加工で依頼したらいいのかわからなくて困っている」 「治具の製作を自社でできなくて困っている」 そのような方に向けてMitsuriでは、見積から発注までWEB上で行えるサービスを提供しております。お手持ちの図面を登録すると、加工可能な工場から見積が届きます。金属部品の調達でお困りの方は下のボタンから図面をご登録ください。

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    ボールエンドミルの特徴、使い方を解説!

    エンドミルとは、フライス盤やフライス加工が可能なマシニングセンタなどに取り付けて用いられる切削工具の一つです。ドリルと同様、高速に回転させながら材料に当て、削り取ることで成形を行います。先端と側面に刃を備え、主に水平方向に動かして切削加工を進めます。 エンドミルは、その形状の違いによりいくつかの種類が存在します。その中でも、先端が球状のボールエンドミルは、R面や球面、より複雑な三次元曲面の切削加工に不可欠な工具と言われています。 しかし、他の種類のエンドミルとはどんな違いがあるのか、どのような使い方があり、使用時にはどのような点に注意すべきか、知識がない方もいらっしゃるのではないでしょうか。 そこで、今回の記事では、ボールエンドミルの特徴を説明すると共に、使い方についても解説していきます。ぜひ、ボールエンドミルを使用する際の参考にしてください。 参考記事 フライス加工については、以下の記事で解説していますので、ご参照ください。 ⇒フライス加工について専門家が解説!加工の種類・加工機の種類がこの1記事でわかります! ボールエンドミルの特徴 エンドミルは、先端の形状の違いによっていくつかの種類に分けられますが、以下のものが代表的です。 代表的なエンドミル ●スクエアエンドミル…先端の形状が平坦なエンドミル。主に水平面や垂直面の加工に使用される。 ●ボールエンドミル…先端の形状が球状のエンドミル。主に曲面の加工に使用される。 ●ラジアスエンドミル…先端の形状が平坦であるものの、先端と側面の間のコーナーがR形状になっているエンドミル主に平面加工やR加工(凹の底の角部に丸みを残した加工)に使用される。 ここでは、特にボールエンドミルを取り上げ、他のエンドミルと比較した際の特徴を説明します。 曲面の加工に適している ボールエンドミルは、他のエンドミルに比べて曲面加工に適した工具です。 例えば、凹球形状の加工は、ラジアスエンドミルでも可能ですが、5軸加工機などでエンドミルを傾け、エンドミルのコーナー部を当てて切削するなどの工夫が必要となります。 しかし、ボールエンドミルであれば、その球の曲率半径よりも工具の半径が小さくなくてはなりませんが、3軸加工機でも問題なく凹球形状の成形が可能です。 幅広い形状の加工が可能 引用元:株式会社MOLDINO 曲面の加工に適したボールエンドミルですが、平面の加工ができないわけではありません。工具経路を塗り潰すように取ることで平面の成形が可能です。 ただし、上図のようなカスプ(尖った凹凸形状)が残り、面粗度に影響します。この面粗度を良好にするには、工具経路の重ね合わせを多くとる必要があります。 平面部分の成形もボールエンドミルで行うことで、工具交換時間の短縮に繋がります。しかし、切削時間が長くなると共に、面粗度の悪化も招きますので、これらを考慮した工具選びが必要です。 凹の底の角部に対するR無し加工ができない ラジアスエンドミルにも共通しますが、ボールエンドミルで凹形状を加工する場合、工具のコーナーの丸みを反映して、凹の底の角や側面の隅が円弧状になります。底の円弧は、スクエアエンドミルで除去することができますが、下図の左のような凹形状の場合は、どのエンドミルを使用しても、下図の中央のように側面の隅に丸みが残ってしまいます。 しかし、このような凹部にシャープな角を持った部品をはめ込むため、円弧を除去する必要があるケースもあります。その場合には、本来の壁面からさらに外側に抉るニガシ形状を設け(側面の隅のニガシは下図の右参照)、角に丸みがあることの不備を回避することがあります。 引用元:アイティメディア株式会社 切削速度が切削点によって異なる 引用元:三菱マテリアル株式会社 ボールエンドミルでは、工具の先に向かうほど切削速度が小さくなり、先端ではゼロになります。 切削速度は、切削点(工具の材料との接触部)における刃物の動く速度です。その速度は、以下の式で表されるため、工具径が大きい切削点ほど小さくなり、工具径がゼロになる切削点では切削速度もゼロとなります。 引用元:ユニオンツール株式会社 VC:切削速度 n:回転速度 D:工具径 もちろん、他の種類のエンドミルも中心の切削速度はゼロとなりますが、先端の工具径がゼロというわけではありませんので、ドリルのように加工面に垂直に送って加工を行わない限り、特に問題は生じません、 しかし、ボールエンドミルでは、工具の先に向かうほど工具径が小さくなるため、切削点に注意しながら加工を行わないと、切削速度が足りないことによる問題が生じることがあります。 加工面の品質がバラツキやすい ボールエンドミルを使用する場合、切削点に注意しながら加工を行わないと、加工面の品質がバラツキやすくなります。 切削加工においては、切削速度が大きいほど生じる切りくずが薄くなるため、切削抵抗が軽減されて加工面の品質が向上します。 従って、切削点によって切削速度が異なるボールエンドミルでは、工具のどこを接触させて切削するかにより、加工面の品質が変わります。特に、曲面を加工する場合などでは、曲面との接触角度によって工具の接触位置が変化するため、 加工面の品質にバラツキが発生しやすくなります。 このバラツキを抑える方法として、切削点が先端に集中し過ぎないように工具経路を工夫したり送り速度を小さくしたりする方法があります。また、5軸加工機などの使用が可能な場合は、ボールエンドミルに傾斜を付け、工具の一定の位置を接触させて切削することも有効です。この場合、推奨される切削点の位置は、例えば、下図で「有効加工切れ刃部」とされている部位です。 引用元:社団法人精密工学会北海道支部 刃こぼれが生じやすい ボールエンドミルは、刃こぼれが生じやすいという特徴があります。 上述したように、ボールエンドミルでは、その工具径が先端付近で大きく変わるため、切削点による切削速度の変動が大きく、工具にかかる切削抵抗も位置によって変化します。そのため、切削抵抗が大きい先端に切削点を集中させると、刃こぼれが発生しやすくなっています。 切りくずの排出性が悪い エンドミルによる加工では、切りくずは、刃と刃の間のチップポケットと呼ばれる隙間を通って排出されます。その点、ボールエンドミルでは、先端に向かうほど工具自体が細くなっているため、先端付近のチップポケットが小さく、切りくずの排出性が良くありません。それにより、刃が切りくずをかみ込んで加工面の品質を悪化させたり、切りくずが詰まって刃の損傷の原因となることがあります。 ボールエンドミルの使い方 ボールエンドミルは、他のエンドミル同様、以下のような形状の加工も行うことができる万能性の高いエンドミルです。 ポールエンドミルで可能な加工 ●平面加工…工具経路を塗り潰すように取ることで平面を成形。 ●側面加工…エンドミルの側面に備えた刃を当て、材料の側面を切削。 ●段差加工…エンドミルの先端と側面の刃で、段差を成形。 ●溝加工…溝を成形。主にエンドミルの側面を当てて切削。(下図左) ●ポケット加工…凹を成形。ドリルで下穴を空け、穴を広げていく形で切削。(下図中央) ●ヘリカル加工…円状の凹を成形。エンドミルをらせん状に動かして穴を広げていく。(下図右) 引用元: 株式会社モノト しかし、やはりボールエンドミルに適しているのは、曲面加工です。ここでは、曲面加工を行う場合のボールエンドミルの使い方について説明します。 曲面加工におけるボールエンドミルの使い方 引用元:三菱マテリアル株式会社 ボールエンドミルを使用した曲面の加工方法には、走査線加工や等高線加工などがあります。 走査線加工は、上図の左にあるように、エンドミルを一定方向に動かしながら目的の形状に沿って上下させて加工する方法です。引き上げ加工と押し下げ加工を繰り返すことで加工を進めますが、押し下げ加工時に切削速度の遅い工具の先端中心付近で切削するため、工具の損傷が生じやすいという欠点があります(下図参照)。 引用元:三菱マテリアル株式会社 一方、等高線加工は、見出し下の右図にあるように、エンドミルを水平面内で目的の形状に沿って動かして加工。これを、順次高さを変えながら行っていく方法です。切削点を工具の一定位置に保持しやすく、切削速度が遅く刃が損傷しやすい先端付近での切削を回避しやすいという特徴があります。ただし、刃の一定の位置を酷使することになるため、その部分の摩耗の進行が早くなります。 それぞれの方法に短所がありますが、工具の損傷に繋がらない等高線加工を選択することが妥当です。 なお、5軸加工機などでエンドミルを傾斜させることができる場合、双方の方法における短所を補う事が可能です。しかし、切削する曲面の角度に合わせて順次傾斜角も変化させる必要があり、プログラムが複雑化します。そのため、関連した技術や経験が必要となると共に、工数が増加してしまうことがあります。 ボールエンドミルを使用する場合の注意点 ボールエンドミルで加工を行う場合、平面や曲面に限らず、加工面にカスプ(尖った凹凸形状)が残ります。このカスプの高さが大きいほど、面粗度が悪化するので、良好な加工面を得たい場合は、ピックフィード(下図のae)を小さくする必要があります。しかし、そのためには、工具経路を長く取る必要があるため、加工時間は長くなってしまいます。 引用元:株式会社MOLDINO そこで有効なのが、工具の回転数を高めると同時に、工具の送り速度を上げることです。これにより、加工時間の延長を抑えながら、面粗度を向上させることができます。さらに、切削速度が上昇して切削抵抗も小さくなるため、加工面の品質も向上します。 また、工具径の小さいボールエンドミルを使用する場合、切削点によっては工具がたわみ、加工精度を悪化させることがあります。 曲面を加工する場合、曲面の形状によっては、下図の左のように、軸の垂直方向に大きな力がかかることがあります。この力の大きさによっては、エンドミルがたわみ、形状がたわんだ分だけずれる可能性があります。 たわみを防ぐ方法として、上述したボールエンドミルに傾斜を付ける方法があります。5軸加工機などが必要となりますが、切削点を一定の位置とすることにより、軸の垂直方向に生じる力を低減することが可能です(下図の右)。 引用元:国立大学法人熊本大学 曲面加工に有用なボールエンドミル ボールエンドミルの特徴や使い方、使用時の注意点について解説しましたが、いかがでしたでしょうか。 ボールエンドミルは、平面や凹凸、曲面など、多様な形状を成形できる多機能万能工具です。特に、複雑な曲面を対象とする場合の有用性が高く、ボールエンドミルでは加工できても、他の形状のエンドミルでは加工できないというケースもあります。また、4軸以上の多軸加工機に取り付けて使用することで、さらなる高い精度や品質、工具寿命の延長が期待できます。 ボールエンドミルは、今や金型や航空機部品など、三次元曲面を有する輪郭形状の切削に不可欠な工具となっています。その重要性は、今後も持続すると考えられますので、ぜひこの機会に覚えておいてください。   「どの加工で依頼したらいいのかわからなくて困っている」 「図面で指定されている加工が自社でできなくて困っている」 そのような方に向けてMitsuriでは、見積から発注までWEB上で行えるサービスを提供しております。お手持ちの図面を登録すると、加工可能な工場から見積が届きます。金属部品の調達でお困りの方は下のボタンから図面をご登録ください。