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【金属加工 Mitsuri】見積から発注までWEB完結!
今回はシルク印刷の基礎知識や活用例などについて解説します。 シルク印刷とは、布でできたスクリーンにインクを押し付けて、さまざまな製品に好みのデザインを印刷する手法のことです。 印刷という言葉を聞くと、紙や布などに対応したものというイメージがあるかもしれません。しかしシルク印刷は、耐久性に優れていることから、電子機器や看板などにも採用されています。 シルク印刷とは 引用元:タカチ電機工業 インクジェット印刷・デジタル印刷・レーザーマーキング・シルク印刷・文字彫刻 シルク印刷とは、スクリーンと呼ばれる板版の上からインクを押し付けて、下に配置している製品に文字やロゴマークなどを印刷する手法のことで、別名「シルクスクリーン印刷」とも呼ばれています。 スクリーンには化学繊維の糸で織られた布が用いられており、印刷したいデザインの部分だけをインクが通るように設計されています。スクリーンの素材にはもともと絹(シルク)を用いていたことから、シルク印刷と呼ばれています。 シルク印刷と似た手法として「オフセット印刷」がありますが、シルク印刷とオフセット印刷では方法や特徴が異なります。 シルク印刷は、スクリーンを通して直接製品に印刷するのに対して、オフセット印刷は製品に直接印刷せずに、ブランケット胴と呼ばれるゴム版に転写させてから製品に印刷する仕組みです。 オフセット印刷は、シルク印刷と比べて多彩な色の印刷に適している一方で、耐候性に劣ります。 シルク印刷の方法 シルク印刷の印刷工程は以下の通りです。 1.原稿:印刷したい文字やロゴマークを作成。 2.版下作成:原稿からスクリーン製作用のデータを作成。 3.製版:版下からスクリーンを作成。 4.インク調合:印刷に使うインクの色を調合。 5.印刷:色が複数ある場合は、色ごとに印刷を行う。 6.乾燥:インクを乾燥させて製品に定着させる。 製品に印刷するインクは、依頼者が希望する色に調合する必要があります。正確な色を出すには、PCで作成したデータだと、モニターの違いにより色の見え方が異なる場合があるので、色のサンプル品やPANTONEカラーの指定などが必要になる場合があります。 また、印刷に使うスクリーンは、色ごとに違うものを用いるため、使用する色が多いほど枚数が必要です。 引用元:日本電気化学株式会社 シール印刷・シルク印刷 シルク印刷の方法については、以下の手順で行われています。 1.始めに印刷したい箇所にスクリーンをセット 2.スクリーンにインクをのせる 3.スキージを使ってインクを押し込む 4.焼付窯で乾燥させて完成 シルク印刷では、スムーズかつ正確な位置に印刷できるように、手順1にて製品やスクリーンをセットする際に、治具を用いて位置を固定する場合があります。また、印刷に不良が発生しないように、セット時は製品の汚れやホコリを落とします。このとき汚れなどが残ると、印刷が途切れたり、ピンホールができてしまいます。 インクを押し込む際は、スキージと呼ばれるヘラを用います。スキージに与える力加減や、角度によって、製品へ落とし込むインクの量が変化するため、デザインなどによって細かな調整が必要になります。 製品に印刷したあとは、焼付窯で乾燥させることで、製品にインクが定着しやすくなります。 シルク印刷の特徴 シルク印刷は、スクリーン上にある隙間から、直接インクを落とし込んで印刷する手法のため、製品にしっかりとデザインを表現できます。インクは厚く塗れるだけでなく、乾燥させて定着させているので、耐久性や耐候性に優れています。 また、印刷は曲面や立体形状の製品にも対応できる場合があります。複雑な形状の製品にシルク印刷をしたい場合は、業者に問い合わせて対応してもらえるか確認してみましょう。 一方で、線の細かなデザインや、グラデーションのかかった多彩な印刷は、印刷の仕組み上適していません。 シルク印刷のメリット・デメリット メリット ●単色またはロット数が多いほどコストが安くなる シルク印刷は、単色またはロット数が多いほど、コストが安くなります。シルク印刷は、始めに製品ごとや色別にスクリーンを作る必要がありますが、カラーが少ないと製作するスクリーンの数を抑えられます。また、ロット数が多いと、同じスクリーンを使って複数の製品に印刷ができるため、その分の初期コストが抑えられます。 ●耐久性に優れる シルク印刷で使われているインクは耐久性に優れています。これは、製品にインクを染み込ませるのではなく、インクを乗せたあとに乾燥させ、製品に定着させているためです。定着したインクは色あせにくく、剥がれにくい特徴があります。シルク印刷は、衣類に採用される場合もありますが、数回の洗濯では劣化することも少ないです。 ●幅広い素材に対応が可能 シルク印刷は、紙・布・陶磁器・ガラス・看板・電子製品など、幅広い素材に対して印刷できます。スクリーンは柔軟性があるので、複雑な形状の製品にも印刷できる場合があります。 ●下地の色の影響を受けにくい シルク印刷は、インクを厚く塗れるため、下地の色の影響を受けにくいメリットがあります。インクの色調を損なわず、イメージ通りのデザインを表現できます。 デメリット ●少ロットの生産または色数が多いと割高になる シルク印刷は、一度スクリーンを製作すれば大量に印刷できるため、印刷するほどコストが割安になります。しかし逆を言えば、小ロットの場合に割高になってしまうので注意が必要です。また、色数が多いと、スクリーンも色数の分だけ用意しなければならないため、コストが多くかかります。 ●印刷に時間がかかる シルク印刷は、スクリーンの製作に時間がかかるほか、印刷後に乾燥する必要があるので、時間がかかってしまいます。コストメリットを得るために大量生産を依頼する場合、納期に余裕を持たせる必要があります。 シルク印刷の活用例 引用元:有限会社大石孔版 ステンレス板に印刷 シルク印刷は、紙・布・陶磁器・ガラス・看板・電子製品などの、さまざまな製品に対して印刷が可能です。また、スクリーンは柔軟性があるので、平たい製品だけでなく、緩い曲面などの製品に対しても対応できます。 インクは耐久性・耐候性が良好のため、屋外で使用する製品への印刷にも適しています。
表面処理と聞くとどんなものを思い浮かべますか?本や自動車、スマートフォンなど、手元にある製品の多くが、キレイな見た目で世に出ていて、何かしらの「キレイに見せる加工」が施されています。 金属製品についても例外ではなく、塗料を塗ったり特別な処理をしたり、さまざまな加工が施されています。そして、その目的はただ見た目をキレイにするというだけではありません。 今回は、表面処理について、どんな目的・用途で取り入れられているのか、その効果や処理方法などについて解説していきます。 表面処理とは 表面処理とは、表面に対して行われる加工のことです。見た目を整えるという役割もありますが、強度や耐久性を高めるなど、見た目以外の目的があります。 代表的な表面処理には、めっき加工や塗装などがあります。車のコーティングや外壁の塗装などもそのひとつで、光沢があって見た目がキレイになるということよりも、表面処理をすることで、劣化を防ぎ、耐久性を高めることを主な目的としています。 表面処理の種類と特徴 表面処理には、さまざまな手法や素材が用いられます。先ほど少し触れためっきや塗装以外にも、さまざまな方法があり、鉄や鋼、アルミニウムなどの素材によってもチョイスする処理方法が異なります。 では、実際にどのような金属処理があり、それぞれにどんな目的・用途で用いられるのでしょうか。1つひとつ解説していきます。 めっき めっきは固体の表面に金属を成膜させる技術のこと。自動車の外装をはじめ、さまざまな製品がめっきによって表面処理をされていますが、実はめっきは見た目以外の用途にも多く活用されています。 装飾性:装飾めっきと呼ばれ、見た目を美しくする目的で使用されます。 耐食性:防食めっきと呼ばれ、主に材料の錆を保護する目的に利用されます。 機能性:機能めっきと呼ばれ、電子機器の部品などに対して活用されます。 めっきは「メッキ」と書かれることもありますが、外来語ではなく日本語で、もともとはアマルガム法という金を水銀に溶かす手法が元で「滅金(めっきん)」と呼ばれていたことが始まりです。その後「鍍金(めっき)」と呼び方が変わりましたが、常用漢字ではないことからJISや表面技術協会などでは平仮名の表記で統一されています。 塗装 塗装は、めっきと同じように装飾や保護、防錆などを目的として用いられる表面処理です。めっきと違い、常温・大気下で塗布できるメリットがあり、鉄製品以外にもさまざまなものに活用されています。また、塗装は、薄い膜を生成するコーティングと、厚い膜を張るライニングに分かれます。 塗布する「塗料」にはさまざまな種類があり、色を塗るペンキや床のコーティングに用いられるワックスなど、普段の生活になじみ深いものも多くあります。その使いやすさから、多くの素材に用いられますが、めっきに比べると強固な被膜になりにくい点は注意が必要です。 塗装はその手軽さから、塗布にさまざまな方法が用いられます。その中でも、よく用いられる塗装方法についていくつかご紹介します。 ●ハケ・ローラー 建物の外装や床のワックスがけなどに使われる手法で、最も手軽な塗布方法です。 ●吹付塗装 塗料を霧状にして吹き付ける塗布方法です。最も手軽なものとしては缶のスプレーがあります。また、建築現場などの広範囲の塗布ではエアコンプレッサーが用いられます。 ●ロールコーター 大型のゴムロールで厚みのある塗膜を作る際に使用されます。合板をはじめとする平板の塗布によく用いられます。 ●焼付塗装 高温の環境で30分以上加熱し、塗料を硬化させる表面処理方法です。メラミン焼付、アクリル焼付、ウレタンや着付、フッ素焼付などがあります。 アルマイト(陽極酸化処理) アルマイトは、アルミニウムを電解処理し、酸化被膜を生成させる表面処理のことです。 アルミニウムは酸素と結びつきやすいため、もともと薄い酸化被膜が生成されます。これは、防錆性や耐食性が良く、そのままでもある程度の表面処理がされた状態となっています。しかし、アルミニウムの皮膜は非常に薄いため、環境によってはすぐに機能しなくなってしまいます。そこで、よりきちんとした表面処理の方法として用いられているのがアルマイトです。 アルマイトは、アルミ製品を取り付けた治具を電解液の中に入れ、電流を流すことで表面に酸化被膜を生成します。一般的な塗料などと違ってアルマイト皮膜は表面に無数の孔があきます。そのため、防錆性や耐久性の向上などに加え、耐摩耗性や撥水性に優れている上、電気絶縁性や高い硬度を持つ表面処理となっています。 表面硬化 鋼に対し、表面を硬化させる処理方法のことで、内部は鋼独特の靭性を持たせたまま、表面だけを硬化させます。手法としては、浸炭や窒化処理、高周波焼き入れなどが代表的です。表面硬化をすることで、鋼の耐摩耗性は疲労強度などを向上させることができるため、鉄鋼製品の多くに表面硬化が採用されています。 ただし、浸炭で727℃以上、窒化処理でも500℃程度に加熱するため、めっきに比べて処理温度が高く、製品が変形してしまうことが欠点です。そのため、加工後に修正を必要とすることも少なくありません。 表面熱処理 表面熱処理は、熱処理によって硬化した鋼の中でも、靭性を維持しつつ、耐摩耗性や疲労強度、潤滑特性などを要求される鉄鋼製品の表面に対してさらに熱処理を加えることで表面の強度を増す加工技術のことです。 表面熱処理は「表面焼入れ」と「熱拡散処理」の2種類に分類されています。表面焼入れは鋼の中でも必要なカ所に対して急速に加熱させ、硬化処理を施す表面処理方法です。 一方、熱拡散処理は金属・非金属によって処理方法が異なるほか、耐摩耗性や耐食性、摺動性など、処理によって付与される特性も異なります。そのため、加工する素材や目的・用途に応じて適切な表面処理方法を選択する必要があります。 溶射 溶射は、溶射剤と呼ばれる材料を吹き付けて皮膜を作り出す表面処理のことです。加工物に、加熱することで溶融、またはそれに近い状態にした金属やセラミックス、プラスチック、サーメットなどを吹き付け、粒子を凝固させ、密着することで皮膜を形成させます。 厚い膜を比較的簡単に作れる点と、現地での施工が可能な点から、橋梁や鉄塔をはじめとする大きな建築物の表面処理にも用いられています。 エッチング エッチングは化学薬品などの腐食作用を使った表面加工の方法です。銅や亜鉛だけでなく、腐食性のあるものであれば幅広く対応することができますが、銅板による版画や印刷の技術として発展してきた経緯があるため、銅や亜鉛の金属加工に用いられることが多いです。 液体を使う「ウェットエッチング」と、気体を使う「ドライエッチング」があり、金属加工だけでなく、半導体工学にも応用されています。また、芸術やインテリアから産業用の精密部品や電機部品、医療機器など、幅広い分野の製品に用いられている表面処理の技術です。 化成処理 化成処理とは、主に金属の表面に処理剤を塗布し、化学反応を起こすことで耐食性を強くしたり、塗料との親和性を向上させたりする表面処理のことです。 金属によって素材の作用が異なるため、皮膜を形成するために用いられる処理剤はそれぞれに異なっていて、亜鉛やめっき、カドミウムめっきに対してはクロメート処理、鉄を対象とする場合はリン酸皮膜処理や黒染めなどが用いられます。 清浄・研磨・ショットピーニング 表面処理というと、塗料や素材でコーティングしたり、特別な手法を用いて皮膜を生成することのように思われがちですが、洗浄や研磨、ブラストやショットピーニングによる表面の改質などもその一種です。 表面を覆う訳ではないため強度が上がるわけではありませんが、高い強度を必要としない場合に、錆の除去によって劣化具合を回復させたり、鏡面仕上げによって見た目を改善したりする表面処理が取り入れられています。
真空焼入れは、真空状態での熱処理が可能な真空炉を使用する真空熱処理の一種です。真空炉は、密閉性が高く、不活性ガスを利用する際にも無駄に漏れたりすることが少ないなど、加熱と冷却の双方で省エネ効果が高い設備です。また近年、熱処理に対しても、品質要求が高くなっていることから、真空熱処理は今後ますます採用されることが多くなると予想されます。この記事では、代表的な真空熱処理である真空焼入れの詳細、メリット・デメリット、主な鋼材に適用したときの硬度などについて解説していきます。参考:鋼の性質を変える【熱処理】とは?仕組みや種類について徹底解説!真空焼入れとは真空焼入れとは、真空炉を使用して鋼材を真空状態で加熱した後、ガス、油または水で急冷する熱処理のことです。酸素の排除によって鋼材表面の酸化や脱炭を防止すると同時に、焼入れの効果によって鋼材を硬くして、耐摩耗性や引張強さ、疲労強度などの強度を向上させることができます。真空焼入れの冷却には、主に窒素ガスが用いられており、ファンなどで炉内を撹拌して鋼材を冷やします。より急速な冷却が必要な場合には、高圧ガスが使われます。近年の真空炉では、冷却に10気圧もの高圧ガスを使用できるものがあり、3~6気圧もあれば油冷に近い冷却性能が得られます。なお、冷却性能は、高い順に水、油、ガスとなりますが、冷却が急なほど歪みが出やすいので注意が必要です。一方、通常の焼入れでは、鋼材を大気と同一の空気中で加熱して、急冷します。真空焼入れと違って、鋼材が空気中の酸素や二酸化炭素に触れるため、表面にサビが生じ、表面から鉄鋼の硬さの素となる炭素が二酸化炭素などとなって抜けてしまいます。そのため、大気下での焼入れの後には、鋼材表面を皮をむくように削り取る「ピーリング処理」が行われます。また、ピーリング処理によって寸法が変化するため、寸法変化に応じた寸法設定を行い、熱処理後には切削加工などで形状を整える必要があります。真空焼入れでは、焼入れを真空状態で行うことで、これらの焼入れの難点や焼入れに伴う手間がなくなります。なお、真空状態とは、大気圧(1.013×105Pa)よりも圧力が低い状態のことです。鋼材では、低真空(105Pa~102Pa)または中真空(102Pa~10-1Pa)程度の真空状態で熱処理が行われます。しかし、真空炉を減圧する真空ポンプの性能が不足している場合などでは、真空炉を減圧した後、窒素ガスなどの不活性ガスを流し込むことで残留空気を排出し、高真空状態の代わりとすることがあります。参考:焼入れとは?焼入れの種類ごとの特徴に分けて解説!真空焼入れのメリット真空焼入れは、大気中の焼入れと比べて、以下のメリットがあります。酸化や脱炭を防ぐことができる真空焼入れでは、真空状態で鋼材を加熱し、不活性な窒素ガスで冷却を行うため、鋼材表面の酸化や脱炭がほとんど起きません。そのため、大気下の焼入れでは必要となるピーリング処理や後加工などの工程が不要となります。耐摩耗性が高い真空焼入れでは、脱炭がほぼ起きないため、硬度が高く、耐摩耗性に優れます。これは、大気下の焼入れでは、ピーリング処理によって鋼材表面を削り取った場合でも、脱炭層が残留して表面硬度が低下することがあるからです。変色せず、金属光沢が保持される真空焼入れでは、鋼材表面の酸化がほぼ起きないため、熱処理前後で表面の色や光沢が保持されます。鋼材表面の光沢性が維持されることから、真空焼入れは光輝焼入れとも呼ばれます。変形が小さく、歪みが少ない真空焼入れは、真空状態で加熱を行うことから、鋼材の昇温が緩やかで表面と内部の温度差が小さい状態のまま進行するため、変形が起こりにくく、歪みが小さくなっています。なお、鋼材の昇温が緩やかであるのは、減圧下で昇温するため、空気を通した加熱ができず、ほぼ輻射熱のみによって加熱するからです。ただし、冷却時に変形や歪みが発生することもあり、冷却が急速であるほど変形や歪みが生じやすくなっています。真空焼入れのデメリット一方、真空焼入れは、大気中の焼入れと比べて、以下のデメリットがあります。炉が高価である真空焼入れで用いられる真空炉は、通常の焼入れに用いられる電気炉やガス炉などと比べて高価です。また、共に使用される真空ポンプは、高真空状態が得られるものほど価格が高くなっています。しかし、安価で低真空状態しか得られない真空ポンプでは、真空度が不足して、熱処理時に窒素ガスなどの不活性ガスが必要となることがあるため、ランニングコストが余計に掛かることもあります。炉の占有時間が長くなる傾向がある真空焼入れでは、加熱に続いて冷却も炉内で行う必要があるため、焼入れの作業を一度始めると炉の占有時間が長くなってしまいます。また、鋼材の昇温に時間が掛かることも、炉の占有時間を長くします。大気下の焼入れでは通常、冷却は炉外で行われます。一方、真空焼入れで冷却を炉外で実行すると、炉を開けた瞬間に酸化などが進んでしまいます。つまり、真空状態で焼入れを行ったことの意味がなくなってしまうのです。しかし、近年では、連続式真空炉と呼ばれる複数の炉室を持った真空炉が利用されるようになっています。連続式真空炉は、加熱・冷却の2室、予熱・加熱・冷却の3室など、役割の異なる複数の炉室を持っており、1室で加熱・冷却と炉内の状態を変えなくてはならない従来の真空炉と違い、炉内の状態を維持したまま、ライン作業のように焼入れを行うことが可能です。真空焼入れの硬度(HRC)代表的な焼入れ鋼の真空焼入れによる硬度は、下表の通りです。鋼種硬度 (HRC)炭素工具鋼SK358~63合金工具鋼SKS358~62SKD1155~62SKD6148~53高速度工具鋼(ハイス鋼)SKH5158~64マルテンサイト系ステンレス鋼SUS440C52~56SUS420J250~54 炭素鋼S45C14~28合金鋼SCM43527~35上表は、焼入れ後に焼戻しを行った場合の硬度で、炭素濃度や焼入れ温度、冷却方法、冷却速度、焼戻し温度などによって硬度の値は違ってきます。なお、大気下の焼入れと真空焼入れで硬度が異なるということは特にありません。しかし、真空焼入れは、脱炭がほぼ起きず、熱処理による欠陥が発生しにくいため、焼入れの後に予期せず硬度が低いなどといったことが起こりにくくなっています。参考:SKD11とは?硬度、成分、規格、処理、加工方法まとめ参考:マルテンサイト系ステンレス鋼の基礎知識まとめ適用可能な主な材質真空焼入れは、下表のような材質に適用可能です。材質の分類鋼種炭素工具鋼SK3, SK5合金工具鋼冷間ダイス鋼SKS3, SKD11, DC53, HPM31, KD11, SLD-MAGIC熱間ダイス鋼SKD61, DH32, SKT4高速度工具鋼(ハイス鋼)モリブデン系SKH51, SKH55バナジウム系SKH57マトリックス系DRM1, DRM2, DRM3, YXR3, YXR33, YXR7, MH85粉末系HAP10, HAP40, HAP70ステンレス鋼マルテンサイト系SUS440C, SUS420J2, HPM38, STAVAXオーステナイト系SUS303, SUS304, SUS316析出硬化系SUS630炭素鋼S45C, S50C, S55C合金鋼クロムモリブデン鋼SCM415, SCM420, SCM435, SCM440 ニッケルクロムモリブデン鋼SNCM415, SNCM420, SNCM439軸受鋼高炭素クロム軸受鋼SUJ2ばね鋼クロムバナジウム鋼SUP10上表から理解されるように、真空焼入れは、工具や金型、軸受などの高い品質が要求される鋼材に採用される熱処理です。しかし、近年では、真空炉のコストが低下してきたこともあり、ステンレス製の自動車部品や産業機械部品、家電部品などにも採用されるようになっています。ただし、クロムやマンガンなどの蒸気圧の高い元素は、真空度が高過ぎると高温下で蒸発することがあるため、ステンレス鋼などのクロム含有量が多い鋼材では、鋼材表面のクロム濃度が減少してしまうことがあります。そのため、マンガンやクロムの含有量が多い鋼材に真空焼入れを施す場合は、不活性ガスを利用するなどして対処する必要があります。なお、下図は、様々な真空度(101~103)で、SUS304に真空焼入れを適用した場合の表面クロム濃度です。真空度が高く(加熱時の圧力が小さく)、熱処理温度が高いほど、鋼材表面のクロム濃度が減少しています。引用元:工具の通販モノタロウ > 工具の熱処理・表面処理基礎講座 > 「3-6真空熱処理適用上の留意事項」株式会社MonotaRO(ものたろう)焼戻しや高周波焼入れ、ズブ焼きとの違いここでは、焼入れ後に再加熱する「焼戻し」、鋼材表面のみを硬くする「高周波焼入れ」、鋼材の内部まで加熱して鋼材全体を硬くする「ズブ焼入れ(全体焼入れ)」について触れていきます。そもそも、焼戻しは、焼入れの加熱温度の2分の1程度の温度まで加熱し、緩やかに冷却する熱処理です(下図参照)。焼入れの後に必ず実施される熱処理で、焼入れによって脆くなった鋼材の靭性や硬度の調整、内部応力の緩和を目的に行われます。真空焼入れ後の焼戻しは、必ずしも真空炉が使用されるわけではありません。しかし、その場合は、大気下の焼入れほどではありませんが、鋼材表面の酸化や脱炭、変色、金属光沢の消失が起こります。そのため、真空焼入れ後は、真空焼戻しを行うことが推奨されます。高周波焼入れは、電磁誘導によって鋼材内部に電流を誘起し、鋼材の表面のみを加熱して焼入れを行う熱処理ですが、一般的な真空炉で実施することはできません。真空炉を使用する熱処理は通常、鋼材を炉内に入れて密閉した後に、真空状態を作って、加熱します。そのため、鋼材全体に焼入れを施すズブ焼入れが標準的であり、高周波焼入れのように部分的に焼入れを施すことはできません。ただし、高周波焼入れに対応した真空炉も少ないながら存在します。
黒染め加工は化成処理の一種で、別名「フェロマイト処理」、「SOB処理」、「アルカリ処理」などとも呼ばれています。鋼材の表面に黒錆を設けることで赤錆を防止したり、外観を良くしたりするなどの目的で採用されている加工です。黒染め加工は、化学反応を利用した表面処理のため、めっきや塗装のように剥離することもありません。 参考:焼付塗装ならMitsuri!1コ〜お受けいたします! 参考:【メッキ処理とは?】目的・仕組み・種類・特徴について徹底解説! 参考:メッキ加工方法について!【専門家が語る】メッキされるまでの工程が丸わかり! 黒染め加工とは?特徴と効果 ※画像は黒染め処理前(左)と黒染め処理後(右) 引用元:株式会社伸和熱処理 黒染め加工とは、鉄鋼材を苛性ソーダを含んだアルカリ溶液に浸して、140~150℃の温度で処理し、表面を黒錆で覆うことを指します。この黒錆は、四酸化三鉄(Fe3O4)であり、安定した不働態酸化皮膜を形成しているため、鉄鋼材をある程度の腐食から保護します。また、黒染め加工は赤錆の防止に限らず、さまざまな効果も期待できます。 詳細な特徴や効果は下記の通りです。 黒染め加工の特徴や効果 外観性の向上 防錆効果の付与 皮膜が薄く、表面処理後の寸法変化が少ない 耐摩耗性および潤滑性の向上 価格が安い 黒染め加工の特徴①外観性の向上 黒染め加工は表面が深みのある黒色になり、光沢もでます。高級感のある外観になるため、工業製品に限らず、インテリア向けの製品にも多く採用されています。 黒染め加工の特徴②防錆効果の付与 黒染め加工を施した鉄鋼材は四酸化三鉄(Fe3O4)の不動態酸化皮膜で覆われた状態になり、錆が発生しにくくなります。めっきや塗装と違い、化学反応を利用しているので、剥離することがありません。しかし、黒染め処理の工程にある防錆油がきれると、腐食の進行が早くなる点には注意が必要です。 黒染め加工の特徴③皮膜が薄く、表面処理後の寸法変化が少ない 皮膜は1~2µm程度と非常に薄いので、寸法精度が求められる製品に適しています。めっきや塗装と違い、表面の性質を変化させた加工なので、寸法の変化を少なく抑えられます。製作工程における加熱の温度もあまり高くないため、被加工材の変形が少ないのも特徴です。 黒染め加工の特徴④耐摩耗性および潤滑性の向上 黒染め加工を施した鉄鋼材は耐摩耗性が向上するほか、防錆油の効果により潤滑性の向上も期待できます。 黒染め加工の特徴⑤価格が安い 黒染め加工はめっきや塗装に比べて価格が安い傾向にあります。 黒染めに向いている材料と向いてない材料 黒染め加工は、炭素鋼などの鉄系の素材に向いています。ただし、鋳物・熱処理・焼入れ・ワイヤーカットした鉄鋼材に関しては、仕上がりが茶色がかった色合いになる場合があります。 黒染めのメリット 黒染め加工は、材料が変質、または変形するほどまで加熱しないため、材料の強度や性質への変化が少ないメリットがあります。上記に加えて、皮膜も1~2µm程度と薄いので、寸法精度が要求される部品などに適しています。 また、めっきや塗装よりも比較的加工の費用が安い傾向にあるので、製作コストを抑えたい方にもおすすめです。 黒染めのデメリット 黒染め加工は、加工業者によって薬品の調合が異なるので若干の色の違いがありますが、黒以外の着色はできません。 また、耐食性を備えてはいるものの、黒染め加工した材料の表面は多孔質な皮膜であるため、防錆油を塗布していないと腐食の進行が早くなってしまいます。 黒染め加工の工程 図:黒染め加工の工程 黒染め加工の工程①脱脂 50~60℃の脱脂剤に2~5分ほど浸漬します。油が多く付着したものは、ウエスで軽く拭き上げましょう。長時間浸漬すると色ムラが発生するため、長くても10分程度に留めます。 黒染め加工の工程②すすぎ 1分程度、水をオーバーフローさせてすすぎます。錆や汚れがある場合は、脱脂後に酸洗いを行います。 黒染め加工の工程③黒染め 沸騰状態(140℃程度)の黒染液で15~20分煮沸します。鋳物などの超鋼に関しては40~45分ほど煮沸します。 黒染め加工の工程④すすぎ 素早くすすぎ水に移し、製品を冷却します。このとき、表面の水分が蒸発して酸素に触れてしまうと、黒錆が赤錆に変化してしまうので、素早くすすぎ水に移さなければなりません。 黒染め加工の工程⑤仕上げすすぎ 水をオーバーフローさせながら、キレイな水ですすぎます。黒染剤を含んだ水ですすいでしまうと、早期錆を起こす恐れがあるので注意が必要です。 黒染め加工の工程⑥防錆処理 水置換性もしくは水溶性防錆剤に浸漬させた後、充分に乾燥させます。乾燥時間が充分に取れない場合は、防錆剤の浸漬後に防錆油を含んだ布で軽く拭き上げます。
「タフトライド処理」とはどのような加工かご存知でしょうか?金属加工を生業とする方や、機械部品を扱う方以外は聞きなれない単語かもしれません。タフトライド処理は、主に表面硬化を目的とした処理ですが、一度の処理でさまざまなメリットがあります。耐摩耗性や耐かじり性が向上するため、摩擦の多い摺動部などの機械部品にタフトライド処理は重宝します。この記事では、タフトライド処理について知らない方に向け、基礎知識を解説します。また、「タフトライド処理の防錆効果は?」「硬度をどのくらい得られる?」「寸法変化は起きる?」といった疑問にもお答えします。タフトライド処理の知識を深めたい方は、ぜひ参考にしてみてください。タフトライド処理とはタフトライド処理とは、「塩浴軟窒化処理」とも呼ばれている窒化硬化処理のひとつです。タフトライド処理をすることで、材料の表面に窒素をしみ込ませて金属元素と結合し、薄い窒化層を形成します。この窒化層は硬度が高く、摺動性も良好。耐摩耗性と耐かじり性の向上が期待できます。用途としては、部品同士が互いに擦れ合うような、摩耗の激しい機械部品であるクランクシャフトやベアリングなどに多く採用されています。窒化硬化処理には、「窒化」と「軟窒化」の2種類があります。窒化は、厚みのある硬化層が得られ、表面硬さも軟窒化より硬いのが特徴。その反面、処理時間が20時間以上かかるというデメリットがあります。軟窒化は、硬化層が窒化に比べて薄いものの、処理時間が1~3時間程度で済む点はメリットです。今回ご紹介しているタフトライド処理は、軟窒化の部類に該当します。タフトライド処理は、500~600℃程度の塩浴(ソルトバス)に1~3時間ほど被加工材を浸け、表面に薄い窒化層を形成させます。タフトライド処理を行った製品は、ねずみ色や白灰色になる点が特徴です。タフトライド処理前タフトライド処理後引用元:ものづくり市場 引用元:ものづくり市場 上の1枚目の写真は、タフトライド処理前の製品。2枚目の写真は、タフトライド処理後の製品です。2枚目の写真を見ると、つや消しのねずみ色のように変化していることが分かります。処理後はそのまま使用されるのが一般的ですが、表面の滑らかさが必要な場合は、ラッピング研磨・バフ研磨などで磨く場合もあります。参考:研磨加工とは?種類と加工手順、除去加工まで専門家が解説!タフトライド処理の注意点として、塩浴に使用するシアン酸塩は毒性があるため、公害防止対策が必要です。しかし近年では、シアン酸塩が少ないタフトライド処理を開発している加工業者もあります。タフトライド処理の公害防止対策が難しい場合は、代替案としてガス軟窒化を採用している加工業者も存在します。ガス軟窒化は、公害防止対策が不要なほか、タフトライド処理と同等の効果が期待できます。焼入れとの違い焼入れは、金属材料を一定の温度に加熱・冷却し、硬度を上げる処理です。「硬度を上げる」という目的はタフトライド処理も同様ですが、焼入れの場合、ズブ焼入れなどの種類によっては、表面だけでなく材料の内部まで硬化が可能です。しかし、焼入れは、強引に金属の組織変化を起こしているため、歪みや寸法変化のリスクがあります。これにより、高い品質や精度が求められる製品は、焼入れをした後に仕上げ工程が必要です。一方、タフトライド処理は、変態点温度(鋼が組織変化する温度)よりも低い温度で処理を行うため、焼入れよりも歪みが少なく抑えられます。参考:焼入れとは?焼入れの種類ごとの特徴に分けて解説!硬度と膜厚タフトライド処理の膜厚は、0.01~0.3mm程度と非常に薄い特徴があります。膜厚が薄いため、寸法と重量の変化の影響が少ない点はメリットです。ただし、膜厚が薄いということは、硬化している層もその分薄いということ。高い寸法精度よりも、耐衝撃性を求められる場合は、焼入れでの表面硬化も検討してみましょう。材質タフトライド処理後の表面硬度(HV)※実用窒化深さ0.05~0.1mmタフトライド未処理の表面硬度(HV) SPCC400~500105以下 SS400400~500120~140 S45C450~600201~269 SCM440750~850285~352 SACM6451100~1300241~302 SUS3041100~1300200以下上表は、タフトライド処理後とタフトライド未処理のビッカース硬さの参考値を比較した表です。タフトライド処理後の表面硬度は、株式会社栗山熱処理の公式HPに掲載されている、各材料にタフトライド処理を行った際の硬度の値です。材質によりますが、一般的によく使われる炭素鋼(S45C)や合金鋼(SCM440)で、ビッカース硬さ450~850HV程度の硬度が得られ、アルミニウムクロムモリブデン鋼(SACM645)・ステンレス(SUS304)では、1100~1300HV程度の優れた硬度が得られます。 材質タフトライド処理は、炭素鋼・合金鋼・ステンレス・鋳鉄など、幅広い材質に対応しています。また、少量多品種の処理も対応しやすい特徴があります。タフトライド処理後の錆発生と防錆対策タフトライド処理は、炭素鋼などの不働態皮膜を形成しないものに対しては、亜鉛メッキや硬質クロムメッキ程度の防錆効果が期待できます。しかし、もともと防錆効果の高いステンレスに対して、タフトライド処理を行った場合は、防錆効果が低下するので注意してください。これは、タフトライド処理を行うことで、材料表面の不働態皮膜が破壊され、クロム窒化物が生成されるためです。不働態皮膜は防錆効果を生みますが、破壊されてしまうと錆びが発生しやすくなります。ステンレスにタフトライド処理を行った材料に対して錆びを防ぎたい場合は、防錆油を塗布する必要があります。また、別の対策として、ステンレスにタフトライド処理ではなく、硬度の高い硬質クロムメッキ処理を行うといった対策を行うのもひとつの方法です。参考:【メッキ処理とは?】目的・仕組み・種類・特徴について徹底解説!参考:錆びにくい金属について解説【錆びない金属はありません】タフトライド処理後の寸法変化タフトライド処理で形成する膜厚は、0.01~0.3mm程度のため、寸法変化が少なく済みます。また、変態点温度(鋼が組織変化する温度)よりも低い温度である、500~600℃程度で処理を行うので、製品の変形も抑えられます。しかし、残留応力がある材料に対してタフトライド処理を行うと、その温度により応力が開放し、変形する場合があります。例えば、より高い硬度や耐衝撃性を得ようとして、予め熱処理をした材料にタフトライド処理を行うと、残留応力が発生して、材料の変形が起きるケースもあるので注意が必要です。タフトライド処理とイソナイト処理との違い結論から述べると、タフトライド処理とイソナイト処理はどちらも商標で、処理方法は同じです。タフトライド処理は、ドイツのデグサ社と呼ばれる企業の商標。一方、イソナイト処理は、日本パーカライジング社の商標になります。これらは、JIS規格では「塩浴軟窒化」に該当する加工方法です。そのため、仮に図面で「タフトライド処理」や「イソナイト処理」と書かれていても、処理する方法は同じ「塩浴軟窒化処理」になります。
エッチング加工とは、腐食の作用を利用して行われる表面加工の一つです。中世ヨーロッパの時代から、銅版画などに多く利用されてきたという歴史がありますが、現在では銅以外の金属やガラスなど、幅広い材質の加工に用いられており、最近では半導体工学などの分野においてもその技術が活かされています。 今回は、エッチング加工について、その基本的な知識に加えて、その加工の工程から、エッチング加工のメリット・デメリット、そして加工の価格例まで幅広く解説していきます。エッチング加工についてさらに知識を深めたい方や、エッチング加工でお悩みの方は、ぜひご一読ください。エッチング加工とはエッチング加工とは、一般にエッチング液などの化学薬品を利用し、化学反応による腐食作用によって、被加工物を溶解加工する方法を指します。エッチング加工は、超精密な加工にも対応できるため、プレスによる打ち抜き加工では不可能である極小極薄・複雑形状を持つ製品の加工も行うことができます。このようなエッチング加工は、幅広い分野で使用されており、芸術・インテリア・意匠品などの製作の他にも、電子部品、電気部品、自動車部品、医療機器、光学関連、事務機器などの産業用精密部品にも活用されています。エッチング加工で加工可能な素材エッチング加工は、基本的に腐食性のある素材であれば、加工を施すことが可能です。金属のエッチング加工では、鉄やステンレス、銅や真鍮などの伸銅品が一般的で、特に、ステンレスや銅などの材質は精密加工に適していると言われています。以下に、エッチング加工で加工可能な素材について記載しましたが、工場によって対応できる材質は異なってきますので、注意しましょう。エッチング加工で加工可能な素材ステンレス、銅、鉄、銀、ニッケル、ニクロム、モリブデン、チタン、アルミニウム、タングステン などMitsuriは、エッチング加工を依頼できる多数のメーカーと提携しています。お気軽にお問い合わせください。エッチング加工の製造工程エッチング加工が何かということが分かったところで、次にエッチング加工の製造工程について見ていきましょう。主に以下の8つの工程に分けられます。① 原版作成まず、図面やデータをもとに、CAD(コンピュータ支援設計)などを用いて、原版を作成します。原版は、製品の寸法や品質を左右する重要な部分となります。②金属板材の脱脂洗浄金属板材料の表面に付着している汚れや油脂を除去する脱脂洗浄処理を施します。この洗浄工程は、次工程で行うレジストを材料表面へ塗布する際に、材料への密着性を向上させる目的で行われます。材料表面の洗浄が不完全であると、レジストの密着強度や最終製品の品質、仕上がりにも影響を与えるため、このような前処理が必要となります。③レジストのラミネートエッチング液による腐食加工から加工材料表面を保護するマスクとしての役割を持つ、レジスト(感光性を持った樹脂)を金属板材の両面に塗布し、貼り付けます。④露光でパターンを焼き付け原版をラミネートの上に被せて露光することで、原版に作画された形状をレジストコートされた材料に焼き付けます。より精密なパターンを再現するために、露光を行う際にはクリーンルーム内での作業が必要とされています。⑤現像処理エッチング原版のパターンが露光によって転写された金属材料に、現像処理を行います。この現像処理によって、不要なパターン部のレジストが除去され、その箇所の金属板表面が露出します。これによって、エッチングパターンのマスキングが完成となります。現像の出来映えは、次のエッチングの仕上がりに大きく影響します。⑥エッチングマスキングされた金属板材料にエッチング液を吹き付けます。現像作業で露出された金属部分だけがエッチング(腐食による溶解除去)されることによって、原板通りのパターンに金属板が加工されます。⑦レジスト剥離エッチング加工後に金属板表面に残っている、レジストによるマスキングを除去し、洗浄・乾燥を行います。⑧製品検査外観検査・寸法検査などを行い、製品の完成となります。エッチング加工のメリットそれでは、次にエッチング加工のメリットについて見ていきましょう。①初期費用を抑えられるエッチング加工では金型の設計や作成が必要ないため、イニシャルコストが抑えられるというメリットがあります。②加工時間の短縮による短納期の実現前述したとおり、エッチング加工では金型の作成が要らないため、時間が大幅に短縮でき、短納期で加工を行うことができます。さらに、パターンの変更などが必要な場合でも、金型の変更などを行う必要がないため、スピーディーに行えます。③繊細で精度を要求される加工が可能腐食による溶解加工を行うエッチング加工は、非接触加工であるため、プレス加工などで懸念されるバリ・カエリ・ひずみ・たわみなどが発生しません。そのため、エッチング加工は、薄板への加工や複雑な形状の製品への加工などに適しており、デザインなどが繊細で、精度が要求される加工も可能となっています。エッチング加工のデメリット次にエッチング加工のデメリットについても見ていきましょう。①大規模な大量生産だと不向きエッチング加工は、イニシャルコストが低い反面、工数が多く加工時にかかるコストが高くなるため、一般的に小ロット・多品種に向いており、大規模な大量生産には不向きであると言われています。これに対して、プレス加工では、金型の設計・作成に多くの時間・コストが必要となりますが、各工程に要する時間は短く、製造量が多くなると金型の占めるコストの割合は小さくなるため、大量生産に向いています。②厚板の加工法としては不向きな事もエッチング加工は化学的な腐食を利用しているため、加工を施す材料の板厚が薄ければ薄いほど、シャープで、より高精度な加工が可能となります。そのため、エッチング加工は薄板金属の精密加工により適しており、厚板の加工法としては不向きであると言えます。参考記事エッチング加工と同様、プレス加工も板金加工において非常にメジャーな加工方法です。以下の記事では、プレス加工について詳しく解説しています。ご興味のある方は、ぜひご覧ください。⇒プレス加工の基礎知識や種類について専門家が徹底解説!エッチング加工の価格例最後に、エッチング加工を利用した加工品の価格例をご紹介します。ただし、メーカーによって、また製品の寸法や材質などによって価格は異なってくるので注意が必要です。ステンレス看板(100,000円)犬のデザイン・文字部分のエッチング(価格にはブラケット代込み)引用元:ふしょく看板製作工房ステンレス看板(45,000円)ロゴ・縁・ライン・文字部分のエッチング引用元:ふしょく看板製作工房真鍮看板(12,000円)文字・ロゴ部分のエッチング引用元:ふしょく看板製作工房エッチング加工の一括見積りを依頼するなら【Mitsuri】エッチング加工をメーカーに依頼する際には、各メーカーによって対応できる素材などが異なってくるため、事前に確認してから依頼することが大切です。エッチング加工依頼できるメーカーをお探しの際には、ぜひMitsuriにご相談ください。日本全国で250社以上の企業と提携しているため、きっとご希望に沿うメーカーが見つかるでしょう。Mitsuriでのお見積りは複数社から可能です!ぜひお気軽にお問い合わせください。
自動車用の精密部品や金型用鋼材などに使用される素材は、硬度を上げて耐久性や靭性を上げて、壊れにくくする必要があります。素材の硬度を高めるためには、熱を加えて硬くする「焼き入れ」と呼ばれる熱処理方法が大切です。 実は焼き入れには、大きく分けて6種類ほど熱処理の種類があります。ただ、それぞれの熱処理方法の特徴や得られる効果など、わからない人は多いのではないでしょか。 この記事では、「焼き入れ」の6種類の熱処理方法について詳しく解説していきます。焼き入れによるメリットもご紹介するので、焼き入れ加工について知りたい人は、ぜひ参考にしてください。 焼き入れとは 「焼き入れ」とは、一定以上の温度に素材を加熱したあと、適切な方法で素材を冷やしていく方法です。焼き入れをすると、加熱した素材の強度を高められ、衝撃や曲げに強い素材になります。 焼き入れをしないままの素材は、耐久性がもろく、割れやヒビなどが入りやすいです。焼き入れをおこない強度をあげると、自動車の精密部品や金型用の鋼材として活用できます。焼き入れは、さまざまな部品や加工用素材を生み出すために重要な工程です。 焼き入れの種類 素材への焼き入れ作業は、大きく分けて6種類。焼き入れの方法によって、素材への影響や素材の硬度などが異なります。 では、6種類の焼き入れの方法や特徴について、それぞれ解説していきましょう。 焼き入れの種類①【ズブ焼き入れ】 「ズブ焼き入れ(別名:全体焼き入れ)」とは、内部まで熱を加えて素材全体を硬くする焼き入れ方法です。芯部まで焼き入れをすることで、素材全体が硬く、引っ張りや圧縮に強い特徴を持ちます。 ズブ焼き入れは、小さいサイズの素材なら短い時間で芯部まで熱が加わります。しかし、サイズが大きくなるほど内部までの焼き入れが難しく、時間もかかります。 大きいサイズのズブ焼き入れを依頼する場合には、高い技術力のある企業へ外注するように気をつけましょう。 焼き入れの種類②【表面焼き入れ】 「表面焼き入れ」とは、素材の表面のみを焼き入れする熱処理方法です。表面焼き入れすると、素材の表面は硬くなりますが、内部は素材本来の硬度のままになります。 また、表面焼き入れにも主に4つの焼き入れ方法があるので、注意しておきましょう。 高周波焼き入れ:高周波の電磁波で素材表面を加熱して焼き入れする 炎焼き入れ:バーナーなどの炎を吹き付けて焼き入れする レーザー焼き入れ:レーザー光を素材に当てて焼き入れする 電子ビーム焼き入れ:真空状態で電子ビームを照射して焼き入れする 焼き入れの種類③【浸炭焼き入れ】 「浸炭焼き入れ」とは、熱処理する素材の表面に炭素を浸透させてから、焼き入れする処理方法です。浸炭方法はいろいろありますが、現在一般的なのはガス浸炭と呼ばれる方法になります。ガス浸炭とは、浸炭用ガスを充満させた炉の中で、浸炭させる素材を加熱する方法です。 浸炭焼き入れの特徴は、炭素が浸透した部分だけが硬くなり強度を高められる点です。浸炭焼き入れをすると、素材の摩耗性や耐摩耗性と靭性の両立などの効果が得られます。 また、炭素を浸透させた部分だけを焼き入れできるので、焼き入れ部分の選択が比較的自由なのも特徴です。 素材の内部や炭素が浸透していない部分は、素材もともとの硬度のままになっています。浸炭焼き入れした素材は、主に自動車部品や機械部品に使用される場合が多いです。 焼き入れの種類④【高周波焼き入れ】 高周波焼き入れとは、高周波を使って起こした電磁誘導の熱をもちいて、焼き入れをする熱処理方法です。熱を加えた後には、急速冷却をおこないます。高周波焼き入れは、表面だけを硬くする「表面焼き入れ」に使用される場合が多いです。 また、高周波焼き入れは、自動化がしやすいため、製造業などでよく使用されています。複数の素材を同時に炉に入れて熱処理ができ、熱を加えてから冷やすまでの時間も比較的短いです。 高周波焼き入れを、製造ラインの一貫として組めば、全自動で焼き入れ作業ができます。そのため、自動車用部品や金型用鋼材などのいろいろな場面で、高周波焼き入れは使用されています。 焼き入れの種類⑤【真空焼き入れ】 「真空焼き入れ」とは、簡単にいうと真空状態で熱処理をおこなう焼き入れ方法です。素材を入れた炉の内部を、真空もしくは減圧した後に、製品を加熱して窒素ガスで冷却をします。 真空焼き入れをする真空炉の中は、酸素がない状態です。酸素がないため、素材表面と酸素が反応して発生する「酸化皮膜」と呼ばれる黒ずみのようなものができません。その結果。光沢のある品質が高い素材を生み出せます。 真空焼き入れ後の素材品質が高いため、仕上げ作業や研磨作業などの後工程を削減できるメリットがあります。金型用の鋼材やプレート、部品などいろいろな分野で、真空焼き入れをした素材は使用可能です。 焼き入れの種類⑥【窒化焼き入れ】 窒化焼き入れとは、素材の表面のみを熱処理して硬度を高める焼き入れ方法です。浸炭焼き入れと同じように、加熱炉内に「窒化用のガス」を充満させ、その中で素材を加熱させる方法が一般的になります。熱を加えると、窒素が染み込んだ部分のみ硬度が上がり硬くなります。 窒化焼き入れの特徴は、焼き入れ後の変形(ひずみ)が比較的少ないことです。そのため、精密部品をより硬く仕上げたい場合に、窒化焼き入れが使用されています。窒化焼き入れには、素材の耐摩耗性や耐熱性などの性質が向上する効果があります。 焼き入れ以外の熱処理 鋼材などの硬度を上げることを目的としているのが「焼き入れ」です。しかし、実は他にも大きく分けて3種類ほどの熱処理方法があります。 ご紹介する熱処理方法は、どれも素材に熱を加える作業は同じです。ただ、熱する温度や時間、冷却するまでの時間が異なります。 ここでは、それぞれの熱処理方法の名称と処理の目的を解説していきます。 ・焼きなまし 「焼きなまし」は、機械加工による切削や、プレス加工などを簡単にするために、材料を軟らかくすることが目的の熱処理方法です。素材を適切な温度で熱した後に、長時間かけてゆっくりと冷却するのが特徴になります。 ・焼きならし 「焼きならし」とは、素材を鍛造や鋳造する工程で発生した、素材の組織のムラなどを均一にするための熱処理方法です。焼きならしをすることで、素材本来の強度や靭性などの機械的性質を高められます。 また、焼きならしは、焼き入れの代替処理としても利用される場合が多いです。 ・焼き戻し 「焼き戻し」とは、一度焼き入れして冷やした素材を、そこからさらに加熱する熱処理方法です。「焼き入れ」の時よりも低い温度で再度加熱をすることで、より粘りや靭性を高められます。 焼き入れと焼き戻しは基本的にセット。焼き入れした素材にもよりますが、焼き入れ後は必ずと言っていいほど焼き戻しをおこないます。焼き戻しをすることで、鋼材にヒビ割れや破損が起きる可能性を減らせるからです。 参考記事 焼き入れ以外の熱処理方法について、さらに詳しく知りたい人は、以下の記事をご覧ください。 ⇒鋼の性質を変える【熱処理】とは?仕組みや種類について徹底解説! 焼き入れのメリット 焼き入れ作業は、多くの製造業などで用いられている作業工程になります。社内で対応できない場合には、外注をして焼き入れする企業も多いです。 そんな焼き入れ作業で得られるメリットには、以下のようなものがあります。 焼き入れ作業のメリット 鋼材を硬くできる ヒビ割れや破損を防げる 鋼材の品質を高められる 摩耗性や靭性、耐久性などを高められる 焼き入れ作業は、素材を硬くすることが目的です。ただ、硬度の変化は、素材に含まれる炭素量などによって変わります。 焼き入れを外注する場合には、素材の種類や含まれる炭素量、サイズなどのさまざまな項目をしっかりと確認してください。 焼き入れの一括見積りを依頼するなら【Mitsuri】 今回は、「焼き入れ」の熱処理方法について解説しました。焼き入れは、素材の硬度を高めて、破損やヒビ割れを起こしにくくするための大事な工程です。 焼き入れと言っても、大きく分けて6種類も熱処理方法があるので、加工する素材にあった熱処理を行うことが重要になるでしょう。 そのため、素材に合わせて焼き入れ方法を判断できる高い焼き入れ技術と、焼き入れができる設備のある企業に依頼を出すのがおすすめです。 Mitsuriは、日本全国に約250社以上の協力企業があります。ご依頼内容に合わせて、最適な焼き入れ加工ができる工場をすぐにご紹介可能です。焼き入れ加工にお悩みであれば、お見積もりが取れるMitsuriへぜひご相談ください。
今回はシルク印刷の基礎知識や活用例などについて解説します。 シルク印刷とは、布でできたスクリーンにインクを押し付けて、さまざまな製品に好みのデザインを印刷する手法のことです。 印刷という言葉を聞くと、紙や布などに対応したものというイメージがあるかもしれません。しかしシルク印刷は、耐久性に優れていることから、電子機器や看板などにも採用されています。 シルク印刷とは 引用元:タカチ電機工業 インクジェット印刷・デジタル印刷・レーザーマーキング・シルク印刷・文字彫刻 シルク印刷とは、スクリーンと呼ばれる板版の上からインクを押し付けて、下に配置している製品に文字やロゴマークなどを印刷する手法のことで、別名「シルクスクリーン印刷」とも呼ばれています。 スクリーンには化学繊維の糸で織られた布が用いられており、印刷したいデザインの部分だけをインクが通るように設計されています。スクリーンの素材にはもともと絹(シルク)を用いていたことから、シルク印刷と呼ばれています。 シルク印刷と似た手法として「オフセット印刷」がありますが、シルク印刷とオフセット印刷では方法や特徴が異なります。 シルク印刷は、スクリーンを通して直接製品に印刷するのに対して、オフセット印刷は製品に直接印刷せずに、ブランケット胴と呼ばれるゴム版に転写させてから製品に印刷する仕組みです。 オフセット印刷は、シルク印刷と比べて多彩な色の印刷に適している一方で、耐候性に劣ります。 シルク印刷の方法 シルク印刷の印刷工程は以下の通りです。 1.原稿:印刷したい文字やロゴマークを作成。 2.版下作成:原稿からスクリーン製作用のデータを作成。 3.製版:版下からスクリーンを作成。 4.インク調合:印刷に使うインクの色を調合。 5.印刷:色が複数ある場合は、色ごとに印刷を行う。 6.乾燥:インクを乾燥させて製品に定着させる。 製品に印刷するインクは、依頼者が希望する色に調合する必要があります。正確な色を出すには、PCで作成したデータだと、モニターの違いにより色の見え方が異なる場合があるので、色のサンプル品やPANTONEカラーの指定などが必要になる場合があります。 また、印刷に使うスクリーンは、色ごとに違うものを用いるため、使用する色が多いほど枚数が必要です。 引用元:日本電気化学株式会社 シール印刷・シルク印刷 シルク印刷の方法については、以下の手順で行われています。 1.始めに印刷したい箇所にスクリーンをセット 2.スクリーンにインクをのせる 3.スキージを使ってインクを押し込む 4.焼付窯で乾燥させて完成 シルク印刷では、スムーズかつ正確な位置に印刷できるように、手順1にて製品やスクリーンをセットする際に、治具を用いて位置を固定する場合があります。また、印刷に不良が発生しないように、セット時は製品の汚れやホコリを落とします。このとき汚れなどが残ると、印刷が途切れたり、ピンホールができてしまいます。 インクを押し込む際は、スキージと呼ばれるヘラを用います。スキージに与える力加減や、角度によって、製品へ落とし込むインクの量が変化するため、デザインなどによって細かな調整が必要になります。 製品に印刷したあとは、焼付窯で乾燥させることで、製品にインクが定着しやすくなります。 シルク印刷の特徴 シルク印刷は、スクリーン上にある隙間から、直接インクを落とし込んで印刷する手法のため、製品にしっかりとデザインを表現できます。インクは厚く塗れるだけでなく、乾燥させて定着させているので、耐久性や耐候性に優れています。 また、印刷は曲面や立体形状の製品にも対応できる場合があります。複雑な形状の製品にシルク印刷をしたい場合は、業者に問い合わせて対応してもらえるか確認してみましょう。 一方で、線の細かなデザインや、グラデーションのかかった多彩な印刷は、印刷の仕組み上適していません。 シルク印刷のメリット・デメリット メリット ●単色またはロット数が多いほどコストが安くなる シルク印刷は、単色またはロット数が多いほど、コストが安くなります。シルク印刷は、始めに製品ごとや色別にスクリーンを作る必要がありますが、カラーが少ないと製作するスクリーンの数を抑えられます。また、ロット数が多いと、同じスクリーンを使って複数の製品に印刷ができるため、その分の初期コストが抑えられます。 ●耐久性に優れる シルク印刷で使われているインクは耐久性に優れています。これは、製品にインクを染み込ませるのではなく、インクを乗せたあとに乾燥させ、製品に定着させているためです。定着したインクは色あせにくく、剥がれにくい特徴があります。シルク印刷は、衣類に採用される場合もありますが、数回の洗濯では劣化することも少ないです。 ●幅広い素材に対応が可能 シルク印刷は、紙・布・陶磁器・ガラス・看板・電子製品など、幅広い素材に対して印刷できます。スクリーンは柔軟性があるので、複雑な形状の製品にも印刷できる場合があります。 ●下地の色の影響を受けにくい シルク印刷は、インクを厚く塗れるため、下地の色の影響を受けにくいメリットがあります。インクの色調を損なわず、イメージ通りのデザインを表現できます。 デメリット ●少ロットの生産または色数が多いと割高になる シルク印刷は、一度スクリーンを製作すれば大量に印刷できるため、印刷するほどコストが割安になります。しかし逆を言えば、小ロットの場合に割高になってしまうので注意が必要です。また、色数が多いと、スクリーンも色数の分だけ用意しなければならないため、コストが多くかかります。 ●印刷に時間がかかる シルク印刷は、スクリーンの製作に時間がかかるほか、印刷後に乾燥する必要があるので、時間がかかってしまいます。コストメリットを得るために大量生産を依頼する場合、納期に余裕を持たせる必要があります。 シルク印刷の活用例 引用元:有限会社大石孔版 ステンレス板に印刷 シルク印刷は、紙・布・陶磁器・ガラス・看板・電子製品などの、さまざまな製品に対して印刷が可能です。また、スクリーンは柔軟性があるので、平たい製品だけでなく、緩い曲面などの製品に対しても対応できます。 インクは耐久性・耐候性が良好のため、屋外で使用する製品への印刷にも適しています。
表面処理と聞くとどんなものを思い浮かべますか?本や自動車、スマートフォンなど、手元にある製品の多くが、キレイな見た目で世に出ていて、何かしらの「キレイに見せる加工」が施されています。 金属製品についても例外ではなく、塗料を塗ったり特別な処理をしたり、さまざまな加工が施されています。そして、その目的はただ見た目をキレイにするというだけではありません。 今回は、表面処理について、どんな目的・用途で取り入れられているのか、その効果や処理方法などについて解説していきます。 表面処理とは 表面処理とは、表面に対して行われる加工のことです。見た目を整えるという役割もありますが、強度や耐久性を高めるなど、見た目以外の目的があります。 代表的な表面処理には、めっき加工や塗装などがあります。車のコーティングや外壁の塗装などもそのひとつで、光沢があって見た目がキレイになるということよりも、表面処理をすることで、劣化を防ぎ、耐久性を高めることを主な目的としています。 表面処理の種類と特徴 表面処理には、さまざまな手法や素材が用いられます。先ほど少し触れためっきや塗装以外にも、さまざまな方法があり、鉄や鋼、アルミニウムなどの素材によってもチョイスする処理方法が異なります。 では、実際にどのような金属処理があり、それぞれにどんな目的・用途で用いられるのでしょうか。1つひとつ解説していきます。 めっき めっきは固体の表面に金属を成膜させる技術のこと。自動車の外装をはじめ、さまざまな製品がめっきによって表面処理をされていますが、実はめっきは見た目以外の用途にも多く活用されています。 装飾性:装飾めっきと呼ばれ、見た目を美しくする目的で使用されます。 耐食性:防食めっきと呼ばれ、主に材料の錆を保護する目的に利用されます。 機能性:機能めっきと呼ばれ、電子機器の部品などに対して活用されます。 めっきは「メッキ」と書かれることもありますが、外来語ではなく日本語で、もともとはアマルガム法という金を水銀に溶かす手法が元で「滅金(めっきん)」と呼ばれていたことが始まりです。その後「鍍金(めっき)」と呼び方が変わりましたが、常用漢字ではないことからJISや表面技術協会などでは平仮名の表記で統一されています。 塗装 塗装は、めっきと同じように装飾や保護、防錆などを目的として用いられる表面処理です。めっきと違い、常温・大気下で塗布できるメリットがあり、鉄製品以外にもさまざまなものに活用されています。また、塗装は、薄い膜を生成するコーティングと、厚い膜を張るライニングに分かれます。 塗布する「塗料」にはさまざまな種類があり、色を塗るペンキや床のコーティングに用いられるワックスなど、普段の生活になじみ深いものも多くあります。その使いやすさから、多くの素材に用いられますが、めっきに比べると強固な被膜になりにくい点は注意が必要です。 塗装はその手軽さから、塗布にさまざまな方法が用いられます。その中でも、よく用いられる塗装方法についていくつかご紹介します。 ●ハケ・ローラー 建物の外装や床のワックスがけなどに使われる手法で、最も手軽な塗布方法です。 ●吹付塗装 塗料を霧状にして吹き付ける塗布方法です。最も手軽なものとしては缶のスプレーがあります。また、建築現場などの広範囲の塗布ではエアコンプレッサーが用いられます。 ●ロールコーター 大型のゴムロールで厚みのある塗膜を作る際に使用されます。合板をはじめとする平板の塗布によく用いられます。 ●焼付塗装 高温の環境で30分以上加熱し、塗料を硬化させる表面処理方法です。メラミン焼付、アクリル焼付、ウレタンや着付、フッ素焼付などがあります。 アルマイト(陽極酸化処理) アルマイトは、アルミニウムを電解処理し、酸化被膜を生成させる表面処理のことです。 アルミニウムは酸素と結びつきやすいため、もともと薄い酸化被膜が生成されます。これは、防錆性や耐食性が良く、そのままでもある程度の表面処理がされた状態となっています。しかし、アルミニウムの皮膜は非常に薄いため、環境によってはすぐに機能しなくなってしまいます。そこで、よりきちんとした表面処理の方法として用いられているのがアルマイトです。 アルマイトは、アルミ製品を取り付けた治具を電解液の中に入れ、電流を流すことで表面に酸化被膜を生成します。一般的な塗料などと違ってアルマイト皮膜は表面に無数の孔があきます。そのため、防錆性や耐久性の向上などに加え、耐摩耗性や撥水性に優れている上、電気絶縁性や高い硬度を持つ表面処理となっています。 表面硬化 鋼に対し、表面を硬化させる処理方法のことで、内部は鋼独特の靭性を持たせたまま、表面だけを硬化させます。手法としては、浸炭や窒化処理、高周波焼き入れなどが代表的です。表面硬化をすることで、鋼の耐摩耗性は疲労強度などを向上させることができるため、鉄鋼製品の多くに表面硬化が採用されています。 ただし、浸炭で727℃以上、窒化処理でも500℃程度に加熱するため、めっきに比べて処理温度が高く、製品が変形してしまうことが欠点です。そのため、加工後に修正を必要とすることも少なくありません。 表面熱処理 表面熱処理は、熱処理によって硬化した鋼の中でも、靭性を維持しつつ、耐摩耗性や疲労強度、潤滑特性などを要求される鉄鋼製品の表面に対してさらに熱処理を加えることで表面の強度を増す加工技術のことです。 表面熱処理は「表面焼入れ」と「熱拡散処理」の2種類に分類されています。表面焼入れは鋼の中でも必要なカ所に対して急速に加熱させ、硬化処理を施す表面処理方法です。 一方、熱拡散処理は金属・非金属によって処理方法が異なるほか、耐摩耗性や耐食性、摺動性など、処理によって付与される特性も異なります。そのため、加工する素材や目的・用途に応じて適切な表面処理方法を選択する必要があります。 溶射 溶射は、溶射剤と呼ばれる材料を吹き付けて皮膜を作り出す表面処理のことです。加工物に、加熱することで溶融、またはそれに近い状態にした金属やセラミックス、プラスチック、サーメットなどを吹き付け、粒子を凝固させ、密着することで皮膜を形成させます。 厚い膜を比較的簡単に作れる点と、現地での施工が可能な点から、橋梁や鉄塔をはじめとする大きな建築物の表面処理にも用いられています。 エッチング エッチングは化学薬品などの腐食作用を使った表面加工の方法です。銅や亜鉛だけでなく、腐食性のあるものであれば幅広く対応することができますが、銅板による版画や印刷の技術として発展してきた経緯があるため、銅や亜鉛の金属加工に用いられることが多いです。 液体を使う「ウェットエッチング」と、気体を使う「ドライエッチング」があり、金属加工だけでなく、半導体工学にも応用されています。また、芸術やインテリアから産業用の精密部品や電機部品、医療機器など、幅広い分野の製品に用いられている表面処理の技術です。 化成処理 化成処理とは、主に金属の表面に処理剤を塗布し、化学反応を起こすことで耐食性を強くしたり、塗料との親和性を向上させたりする表面処理のことです。 金属によって素材の作用が異なるため、皮膜を形成するために用いられる処理剤はそれぞれに異なっていて、亜鉛やめっき、カドミウムめっきに対してはクロメート処理、鉄を対象とする場合はリン酸皮膜処理や黒染めなどが用いられます。 清浄・研磨・ショットピーニング 表面処理というと、塗料や素材でコーティングしたり、特別な手法を用いて皮膜を生成することのように思われがちですが、洗浄や研磨、ブラストやショットピーニングによる表面の改質などもその一種です。 表面を覆う訳ではないため強度が上がるわけではありませんが、高い強度を必要としない場合に、錆の除去によって劣化具合を回復させたり、鏡面仕上げによって見た目を改善したりする表面処理が取り入れられています。
真空焼入れは、真空状態での熱処理が可能な真空炉を使用する真空熱処理の一種です。真空炉は、密閉性が高く、不活性ガスを利用する際にも無駄に漏れたりすることが少ないなど、加熱と冷却の双方で省エネ効果が高い設備です。また近年、熱処理に対しても、品質要求が高くなっていることから、真空熱処理は今後ますます採用されることが多くなると予想されます。この記事では、代表的な真空熱処理である真空焼入れの詳細、メリット・デメリット、主な鋼材に適用したときの硬度などについて解説していきます。参考:鋼の性質を変える【熱処理】とは?仕組みや種類について徹底解説!真空焼入れとは真空焼入れとは、真空炉を使用して鋼材を真空状態で加熱した後、ガス、油または水で急冷する熱処理のことです。酸素の排除によって鋼材表面の酸化や脱炭を防止すると同時に、焼入れの効果によって鋼材を硬くして、耐摩耗性や引張強さ、疲労強度などの強度を向上させることができます。真空焼入れの冷却には、主に窒素ガスが用いられており、ファンなどで炉内を撹拌して鋼材を冷やします。より急速な冷却が必要な場合には、高圧ガスが使われます。近年の真空炉では、冷却に10気圧もの高圧ガスを使用できるものがあり、3~6気圧もあれば油冷に近い冷却性能が得られます。なお、冷却性能は、高い順に水、油、ガスとなりますが、冷却が急なほど歪みが出やすいので注意が必要です。一方、通常の焼入れでは、鋼材を大気と同一の空気中で加熱して、急冷します。真空焼入れと違って、鋼材が空気中の酸素や二酸化炭素に触れるため、表面にサビが生じ、表面から鉄鋼の硬さの素となる炭素が二酸化炭素などとなって抜けてしまいます。そのため、大気下での焼入れの後には、鋼材表面を皮をむくように削り取る「ピーリング処理」が行われます。また、ピーリング処理によって寸法が変化するため、寸法変化に応じた寸法設定を行い、熱処理後には切削加工などで形状を整える必要があります。真空焼入れでは、焼入れを真空状態で行うことで、これらの焼入れの難点や焼入れに伴う手間がなくなります。なお、真空状態とは、大気圧(1.013×105Pa)よりも圧力が低い状態のことです。鋼材では、低真空(105Pa~102Pa)または中真空(102Pa~10-1Pa)程度の真空状態で熱処理が行われます。しかし、真空炉を減圧する真空ポンプの性能が不足している場合などでは、真空炉を減圧した後、窒素ガスなどの不活性ガスを流し込むことで残留空気を排出し、高真空状態の代わりとすることがあります。参考:焼入れとは?焼入れの種類ごとの特徴に分けて解説!真空焼入れのメリット真空焼入れは、大気中の焼入れと比べて、以下のメリットがあります。酸化や脱炭を防ぐことができる真空焼入れでは、真空状態で鋼材を加熱し、不活性な窒素ガスで冷却を行うため、鋼材表面の酸化や脱炭がほとんど起きません。そのため、大気下の焼入れでは必要となるピーリング処理や後加工などの工程が不要となります。耐摩耗性が高い真空焼入れでは、脱炭がほぼ起きないため、硬度が高く、耐摩耗性に優れます。これは、大気下の焼入れでは、ピーリング処理によって鋼材表面を削り取った場合でも、脱炭層が残留して表面硬度が低下することがあるからです。変色せず、金属光沢が保持される真空焼入れでは、鋼材表面の酸化がほぼ起きないため、熱処理前後で表面の色や光沢が保持されます。鋼材表面の光沢性が維持されることから、真空焼入れは光輝焼入れとも呼ばれます。変形が小さく、歪みが少ない真空焼入れは、真空状態で加熱を行うことから、鋼材の昇温が緩やかで表面と内部の温度差が小さい状態のまま進行するため、変形が起こりにくく、歪みが小さくなっています。なお、鋼材の昇温が緩やかであるのは、減圧下で昇温するため、空気を通した加熱ができず、ほぼ輻射熱のみによって加熱するからです。ただし、冷却時に変形や歪みが発生することもあり、冷却が急速であるほど変形や歪みが生じやすくなっています。真空焼入れのデメリット一方、真空焼入れは、大気中の焼入れと比べて、以下のデメリットがあります。炉が高価である真空焼入れで用いられる真空炉は、通常の焼入れに用いられる電気炉やガス炉などと比べて高価です。また、共に使用される真空ポンプは、高真空状態が得られるものほど価格が高くなっています。しかし、安価で低真空状態しか得られない真空ポンプでは、真空度が不足して、熱処理時に窒素ガスなどの不活性ガスが必要となることがあるため、ランニングコストが余計に掛かることもあります。炉の占有時間が長くなる傾向がある真空焼入れでは、加熱に続いて冷却も炉内で行う必要があるため、焼入れの作業を一度始めると炉の占有時間が長くなってしまいます。また、鋼材の昇温に時間が掛かることも、炉の占有時間を長くします。大気下の焼入れでは通常、冷却は炉外で行われます。一方、真空焼入れで冷却を炉外で実行すると、炉を開けた瞬間に酸化などが進んでしまいます。つまり、真空状態で焼入れを行ったことの意味がなくなってしまうのです。しかし、近年では、連続式真空炉と呼ばれる複数の炉室を持った真空炉が利用されるようになっています。連続式真空炉は、加熱・冷却の2室、予熱・加熱・冷却の3室など、役割の異なる複数の炉室を持っており、1室で加熱・冷却と炉内の状態を変えなくてはならない従来の真空炉と違い、炉内の状態を維持したまま、ライン作業のように焼入れを行うことが可能です。真空焼入れの硬度(HRC)代表的な焼入れ鋼の真空焼入れによる硬度は、下表の通りです。鋼種硬度 (HRC)炭素工具鋼SK358~63合金工具鋼SKS358~62SKD1155~62SKD6148~53高速度工具鋼(ハイス鋼)SKH5158~64マルテンサイト系ステンレス鋼SUS440C52~56SUS420J250~54 炭素鋼S45C14~28合金鋼SCM43527~35上表は、焼入れ後に焼戻しを行った場合の硬度で、炭素濃度や焼入れ温度、冷却方法、冷却速度、焼戻し温度などによって硬度の値は違ってきます。なお、大気下の焼入れと真空焼入れで硬度が異なるということは特にありません。しかし、真空焼入れは、脱炭がほぼ起きず、熱処理による欠陥が発生しにくいため、焼入れの後に予期せず硬度が低いなどといったことが起こりにくくなっています。参考:SKD11とは?硬度、成分、規格、処理、加工方法まとめ参考:マルテンサイト系ステンレス鋼の基礎知識まとめ適用可能な主な材質真空焼入れは、下表のような材質に適用可能です。材質の分類鋼種炭素工具鋼SK3, SK5合金工具鋼冷間ダイス鋼SKS3, SKD11, DC53, HPM31, KD11, SLD-MAGIC熱間ダイス鋼SKD61, DH32, SKT4高速度工具鋼(ハイス鋼)モリブデン系SKH51, SKH55バナジウム系SKH57マトリックス系DRM1, DRM2, DRM3, YXR3, YXR33, YXR7, MH85粉末系HAP10, HAP40, HAP70ステンレス鋼マルテンサイト系SUS440C, SUS420J2, HPM38, STAVAXオーステナイト系SUS303, SUS304, SUS316析出硬化系SUS630炭素鋼S45C, S50C, S55C合金鋼クロムモリブデン鋼SCM415, SCM420, SCM435, SCM440 ニッケルクロムモリブデン鋼SNCM415, SNCM420, SNCM439軸受鋼高炭素クロム軸受鋼SUJ2ばね鋼クロムバナジウム鋼SUP10上表から理解されるように、真空焼入れは、工具や金型、軸受などの高い品質が要求される鋼材に採用される熱処理です。しかし、近年では、真空炉のコストが低下してきたこともあり、ステンレス製の自動車部品や産業機械部品、家電部品などにも採用されるようになっています。ただし、クロムやマンガンなどの蒸気圧の高い元素は、真空度が高過ぎると高温下で蒸発することがあるため、ステンレス鋼などのクロム含有量が多い鋼材では、鋼材表面のクロム濃度が減少してしまうことがあります。そのため、マンガンやクロムの含有量が多い鋼材に真空焼入れを施す場合は、不活性ガスを利用するなどして対処する必要があります。なお、下図は、様々な真空度(101~103)で、SUS304に真空焼入れを適用した場合の表面クロム濃度です。真空度が高く(加熱時の圧力が小さく)、熱処理温度が高いほど、鋼材表面のクロム濃度が減少しています。引用元:工具の通販モノタロウ > 工具の熱処理・表面処理基礎講座 > 「3-6真空熱処理適用上の留意事項」株式会社MonotaRO(ものたろう)焼戻しや高周波焼入れ、ズブ焼きとの違いここでは、焼入れ後に再加熱する「焼戻し」、鋼材表面のみを硬くする「高周波焼入れ」、鋼材の内部まで加熱して鋼材全体を硬くする「ズブ焼入れ(全体焼入れ)」について触れていきます。そもそも、焼戻しは、焼入れの加熱温度の2分の1程度の温度まで加熱し、緩やかに冷却する熱処理です(下図参照)。焼入れの後に必ず実施される熱処理で、焼入れによって脆くなった鋼材の靭性や硬度の調整、内部応力の緩和を目的に行われます。真空焼入れ後の焼戻しは、必ずしも真空炉が使用されるわけではありません。しかし、その場合は、大気下の焼入れほどではありませんが、鋼材表面の酸化や脱炭、変色、金属光沢の消失が起こります。そのため、真空焼入れ後は、真空焼戻しを行うことが推奨されます。高周波焼入れは、電磁誘導によって鋼材内部に電流を誘起し、鋼材の表面のみを加熱して焼入れを行う熱処理ですが、一般的な真空炉で実施することはできません。真空炉を使用する熱処理は通常、鋼材を炉内に入れて密閉した後に、真空状態を作って、加熱します。そのため、鋼材全体に焼入れを施すズブ焼入れが標準的であり、高周波焼入れのように部分的に焼入れを施すことはできません。ただし、高周波焼入れに対応した真空炉も少ないながら存在します。
黒染め加工は化成処理の一種で、別名「フェロマイト処理」、「SOB処理」、「アルカリ処理」などとも呼ばれています。鋼材の表面に黒錆を設けることで赤錆を防止したり、外観を良くしたりするなどの目的で採用されている加工です。黒染め加工は、化学反応を利用した表面処理のため、めっきや塗装のように剥離することもありません。 参考:焼付塗装ならMitsuri!1コ〜お受けいたします! 参考:【メッキ処理とは?】目的・仕組み・種類・特徴について徹底解説! 参考:メッキ加工方法について!【専門家が語る】メッキされるまでの工程が丸わかり! 黒染め加工とは?特徴と効果 ※画像は黒染め処理前(左)と黒染め処理後(右) 引用元:株式会社伸和熱処理 黒染め加工とは、鉄鋼材を苛性ソーダを含んだアルカリ溶液に浸して、140~150℃の温度で処理し、表面を黒錆で覆うことを指します。この黒錆は、四酸化三鉄(Fe3O4)であり、安定した不働態酸化皮膜を形成しているため、鉄鋼材をある程度の腐食から保護します。また、黒染め加工は赤錆の防止に限らず、さまざまな効果も期待できます。 詳細な特徴や効果は下記の通りです。 黒染め加工の特徴や効果 外観性の向上 防錆効果の付与 皮膜が薄く、表面処理後の寸法変化が少ない 耐摩耗性および潤滑性の向上 価格が安い 黒染め加工の特徴①外観性の向上 黒染め加工は表面が深みのある黒色になり、光沢もでます。高級感のある外観になるため、工業製品に限らず、インテリア向けの製品にも多く採用されています。 黒染め加工の特徴②防錆効果の付与 黒染め加工を施した鉄鋼材は四酸化三鉄(Fe3O4)の不動態酸化皮膜で覆われた状態になり、錆が発生しにくくなります。めっきや塗装と違い、化学反応を利用しているので、剥離することがありません。しかし、黒染め処理の工程にある防錆油がきれると、腐食の進行が早くなる点には注意が必要です。 黒染め加工の特徴③皮膜が薄く、表面処理後の寸法変化が少ない 皮膜は1~2µm程度と非常に薄いので、寸法精度が求められる製品に適しています。めっきや塗装と違い、表面の性質を変化させた加工なので、寸法の変化を少なく抑えられます。製作工程における加熱の温度もあまり高くないため、被加工材の変形が少ないのも特徴です。 黒染め加工の特徴④耐摩耗性および潤滑性の向上 黒染め加工を施した鉄鋼材は耐摩耗性が向上するほか、防錆油の効果により潤滑性の向上も期待できます。 黒染め加工の特徴⑤価格が安い 黒染め加工はめっきや塗装に比べて価格が安い傾向にあります。 黒染めに向いている材料と向いてない材料 黒染め加工は、炭素鋼などの鉄系の素材に向いています。ただし、鋳物・熱処理・焼入れ・ワイヤーカットした鉄鋼材に関しては、仕上がりが茶色がかった色合いになる場合があります。 黒染めのメリット 黒染め加工は、材料が変質、または変形するほどまで加熱しないため、材料の強度や性質への変化が少ないメリットがあります。上記に加えて、皮膜も1~2µm程度と薄いので、寸法精度が要求される部品などに適しています。 また、めっきや塗装よりも比較的加工の費用が安い傾向にあるので、製作コストを抑えたい方にもおすすめです。 黒染めのデメリット 黒染め加工は、加工業者によって薬品の調合が異なるので若干の色の違いがありますが、黒以外の着色はできません。 また、耐食性を備えてはいるものの、黒染め加工した材料の表面は多孔質な皮膜であるため、防錆油を塗布していないと腐食の進行が早くなってしまいます。 黒染め加工の工程 図:黒染め加工の工程 黒染め加工の工程①脱脂 50~60℃の脱脂剤に2~5分ほど浸漬します。油が多く付着したものは、ウエスで軽く拭き上げましょう。長時間浸漬すると色ムラが発生するため、長くても10分程度に留めます。 黒染め加工の工程②すすぎ 1分程度、水をオーバーフローさせてすすぎます。錆や汚れがある場合は、脱脂後に酸洗いを行います。 黒染め加工の工程③黒染め 沸騰状態(140℃程度)の黒染液で15~20分煮沸します。鋳物などの超鋼に関しては40~45分ほど煮沸します。 黒染め加工の工程④すすぎ 素早くすすぎ水に移し、製品を冷却します。このとき、表面の水分が蒸発して酸素に触れてしまうと、黒錆が赤錆に変化してしまうので、素早くすすぎ水に移さなければなりません。 黒染め加工の工程⑤仕上げすすぎ 水をオーバーフローさせながら、キレイな水ですすぎます。黒染剤を含んだ水ですすいでしまうと、早期錆を起こす恐れがあるので注意が必要です。 黒染め加工の工程⑥防錆処理 水置換性もしくは水溶性防錆剤に浸漬させた後、充分に乾燥させます。乾燥時間が充分に取れない場合は、防錆剤の浸漬後に防錆油を含んだ布で軽く拭き上げます。
「タフトライド処理」とはどのような加工かご存知でしょうか?金属加工を生業とする方や、機械部品を扱う方以外は聞きなれない単語かもしれません。タフトライド処理は、主に表面硬化を目的とした処理ですが、一度の処理でさまざまなメリットがあります。耐摩耗性や耐かじり性が向上するため、摩擦の多い摺動部などの機械部品にタフトライド処理は重宝します。この記事では、タフトライド処理について知らない方に向け、基礎知識を解説します。また、「タフトライド処理の防錆効果は?」「硬度をどのくらい得られる?」「寸法変化は起きる?」といった疑問にもお答えします。タフトライド処理の知識を深めたい方は、ぜひ参考にしてみてください。タフトライド処理とはタフトライド処理とは、「塩浴軟窒化処理」とも呼ばれている窒化硬化処理のひとつです。タフトライド処理をすることで、材料の表面に窒素をしみ込ませて金属元素と結合し、薄い窒化層を形成します。この窒化層は硬度が高く、摺動性も良好。耐摩耗性と耐かじり性の向上が期待できます。用途としては、部品同士が互いに擦れ合うような、摩耗の激しい機械部品であるクランクシャフトやベアリングなどに多く採用されています。窒化硬化処理には、「窒化」と「軟窒化」の2種類があります。窒化は、厚みのある硬化層が得られ、表面硬さも軟窒化より硬いのが特徴。その反面、処理時間が20時間以上かかるというデメリットがあります。軟窒化は、硬化層が窒化に比べて薄いものの、処理時間が1~3時間程度で済む点はメリットです。今回ご紹介しているタフトライド処理は、軟窒化の部類に該当します。タフトライド処理は、500~600℃程度の塩浴(ソルトバス)に1~3時間ほど被加工材を浸け、表面に薄い窒化層を形成させます。タフトライド処理を行った製品は、ねずみ色や白灰色になる点が特徴です。タフトライド処理前タフトライド処理後引用元:ものづくり市場 引用元:ものづくり市場 上の1枚目の写真は、タフトライド処理前の製品。2枚目の写真は、タフトライド処理後の製品です。2枚目の写真を見ると、つや消しのねずみ色のように変化していることが分かります。処理後はそのまま使用されるのが一般的ですが、表面の滑らかさが必要な場合は、ラッピング研磨・バフ研磨などで磨く場合もあります。参考:研磨加工とは?種類と加工手順、除去加工まで専門家が解説!タフトライド処理の注意点として、塩浴に使用するシアン酸塩は毒性があるため、公害防止対策が必要です。しかし近年では、シアン酸塩が少ないタフトライド処理を開発している加工業者もあります。タフトライド処理の公害防止対策が難しい場合は、代替案としてガス軟窒化を採用している加工業者も存在します。ガス軟窒化は、公害防止対策が不要なほか、タフトライド処理と同等の効果が期待できます。焼入れとの違い焼入れは、金属材料を一定の温度に加熱・冷却し、硬度を上げる処理です。「硬度を上げる」という目的はタフトライド処理も同様ですが、焼入れの場合、ズブ焼入れなどの種類によっては、表面だけでなく材料の内部まで硬化が可能です。しかし、焼入れは、強引に金属の組織変化を起こしているため、歪みや寸法変化のリスクがあります。これにより、高い品質や精度が求められる製品は、焼入れをした後に仕上げ工程が必要です。一方、タフトライド処理は、変態点温度(鋼が組織変化する温度)よりも低い温度で処理を行うため、焼入れよりも歪みが少なく抑えられます。参考:焼入れとは?焼入れの種類ごとの特徴に分けて解説!硬度と膜厚タフトライド処理の膜厚は、0.01~0.3mm程度と非常に薄い特徴があります。膜厚が薄いため、寸法と重量の変化の影響が少ない点はメリットです。ただし、膜厚が薄いということは、硬化している層もその分薄いということ。高い寸法精度よりも、耐衝撃性を求められる場合は、焼入れでの表面硬化も検討してみましょう。材質タフトライド処理後の表面硬度(HV)※実用窒化深さ0.05~0.1mmタフトライド未処理の表面硬度(HV) SPCC400~500105以下 SS400400~500120~140 S45C450~600201~269 SCM440750~850285~352 SACM6451100~1300241~302 SUS3041100~1300200以下上表は、タフトライド処理後とタフトライド未処理のビッカース硬さの参考値を比較した表です。タフトライド処理後の表面硬度は、株式会社栗山熱処理の公式HPに掲載されている、各材料にタフトライド処理を行った際の硬度の値です。材質によりますが、一般的によく使われる炭素鋼(S45C)や合金鋼(SCM440)で、ビッカース硬さ450~850HV程度の硬度が得られ、アルミニウムクロムモリブデン鋼(SACM645)・ステンレス(SUS304)では、1100~1300HV程度の優れた硬度が得られます。 材質タフトライド処理は、炭素鋼・合金鋼・ステンレス・鋳鉄など、幅広い材質に対応しています。また、少量多品種の処理も対応しやすい特徴があります。タフトライド処理後の錆発生と防錆対策タフトライド処理は、炭素鋼などの不働態皮膜を形成しないものに対しては、亜鉛メッキや硬質クロムメッキ程度の防錆効果が期待できます。しかし、もともと防錆効果の高いステンレスに対して、タフトライド処理を行った場合は、防錆効果が低下するので注意してください。これは、タフトライド処理を行うことで、材料表面の不働態皮膜が破壊され、クロム窒化物が生成されるためです。不働態皮膜は防錆効果を生みますが、破壊されてしまうと錆びが発生しやすくなります。ステンレスにタフトライド処理を行った材料に対して錆びを防ぎたい場合は、防錆油を塗布する必要があります。また、別の対策として、ステンレスにタフトライド処理ではなく、硬度の高い硬質クロムメッキ処理を行うといった対策を行うのもひとつの方法です。参考:【メッキ処理とは?】目的・仕組み・種類・特徴について徹底解説!参考:錆びにくい金属について解説【錆びない金属はありません】タフトライド処理後の寸法変化タフトライド処理で形成する膜厚は、0.01~0.3mm程度のため、寸法変化が少なく済みます。また、変態点温度(鋼が組織変化する温度)よりも低い温度である、500~600℃程度で処理を行うので、製品の変形も抑えられます。しかし、残留応力がある材料に対してタフトライド処理を行うと、その温度により応力が開放し、変形する場合があります。例えば、より高い硬度や耐衝撃性を得ようとして、予め熱処理をした材料にタフトライド処理を行うと、残留応力が発生して、材料の変形が起きるケースもあるので注意が必要です。タフトライド処理とイソナイト処理との違い結論から述べると、タフトライド処理とイソナイト処理はどちらも商標で、処理方法は同じです。タフトライド処理は、ドイツのデグサ社と呼ばれる企業の商標。一方、イソナイト処理は、日本パーカライジング社の商標になります。これらは、JIS規格では「塩浴軟窒化」に該当する加工方法です。そのため、仮に図面で「タフトライド処理」や「イソナイト処理」と書かれていても、処理する方法は同じ「塩浴軟窒化処理」になります。
エッチング加工とは、腐食の作用を利用して行われる表面加工の一つです。中世ヨーロッパの時代から、銅版画などに多く利用されてきたという歴史がありますが、現在では銅以外の金属やガラスなど、幅広い材質の加工に用いられており、最近では半導体工学などの分野においてもその技術が活かされています。 今回は、エッチング加工について、その基本的な知識に加えて、その加工の工程から、エッチング加工のメリット・デメリット、そして加工の価格例まで幅広く解説していきます。エッチング加工についてさらに知識を深めたい方や、エッチング加工でお悩みの方は、ぜひご一読ください。エッチング加工とはエッチング加工とは、一般にエッチング液などの化学薬品を利用し、化学反応による腐食作用によって、被加工物を溶解加工する方法を指します。エッチング加工は、超精密な加工にも対応できるため、プレスによる打ち抜き加工では不可能である極小極薄・複雑形状を持つ製品の加工も行うことができます。このようなエッチング加工は、幅広い分野で使用されており、芸術・インテリア・意匠品などの製作の他にも、電子部品、電気部品、自動車部品、医療機器、光学関連、事務機器などの産業用精密部品にも活用されています。エッチング加工で加工可能な素材エッチング加工は、基本的に腐食性のある素材であれば、加工を施すことが可能です。金属のエッチング加工では、鉄やステンレス、銅や真鍮などの伸銅品が一般的で、特に、ステンレスや銅などの材質は精密加工に適していると言われています。以下に、エッチング加工で加工可能な素材について記載しましたが、工場によって対応できる材質は異なってきますので、注意しましょう。エッチング加工で加工可能な素材ステンレス、銅、鉄、銀、ニッケル、ニクロム、モリブデン、チタン、アルミニウム、タングステン などMitsuriは、エッチング加工を依頼できる多数のメーカーと提携しています。お気軽にお問い合わせください。エッチング加工の製造工程エッチング加工が何かということが分かったところで、次にエッチング加工の製造工程について見ていきましょう。主に以下の8つの工程に分けられます。① 原版作成まず、図面やデータをもとに、CAD(コンピュータ支援設計)などを用いて、原版を作成します。原版は、製品の寸法や品質を左右する重要な部分となります。②金属板材の脱脂洗浄金属板材料の表面に付着している汚れや油脂を除去する脱脂洗浄処理を施します。この洗浄工程は、次工程で行うレジストを材料表面へ塗布する際に、材料への密着性を向上させる目的で行われます。材料表面の洗浄が不完全であると、レジストの密着強度や最終製品の品質、仕上がりにも影響を与えるため、このような前処理が必要となります。③レジストのラミネートエッチング液による腐食加工から加工材料表面を保護するマスクとしての役割を持つ、レジスト(感光性を持った樹脂)を金属板材の両面に塗布し、貼り付けます。④露光でパターンを焼き付け原版をラミネートの上に被せて露光することで、原版に作画された形状をレジストコートされた材料に焼き付けます。より精密なパターンを再現するために、露光を行う際にはクリーンルーム内での作業が必要とされています。⑤現像処理エッチング原版のパターンが露光によって転写された金属材料に、現像処理を行います。この現像処理によって、不要なパターン部のレジストが除去され、その箇所の金属板表面が露出します。これによって、エッチングパターンのマスキングが完成となります。現像の出来映えは、次のエッチングの仕上がりに大きく影響します。⑥エッチングマスキングされた金属板材料にエッチング液を吹き付けます。現像作業で露出された金属部分だけがエッチング(腐食による溶解除去)されることによって、原板通りのパターンに金属板が加工されます。⑦レジスト剥離エッチング加工後に金属板表面に残っている、レジストによるマスキングを除去し、洗浄・乾燥を行います。⑧製品検査外観検査・寸法検査などを行い、製品の完成となります。エッチング加工のメリットそれでは、次にエッチング加工のメリットについて見ていきましょう。①初期費用を抑えられるエッチング加工では金型の設計や作成が必要ないため、イニシャルコストが抑えられるというメリットがあります。②加工時間の短縮による短納期の実現前述したとおり、エッチング加工では金型の作成が要らないため、時間が大幅に短縮でき、短納期で加工を行うことができます。さらに、パターンの変更などが必要な場合でも、金型の変更などを行う必要がないため、スピーディーに行えます。③繊細で精度を要求される加工が可能腐食による溶解加工を行うエッチング加工は、非接触加工であるため、プレス加工などで懸念されるバリ・カエリ・ひずみ・たわみなどが発生しません。そのため、エッチング加工は、薄板への加工や複雑な形状の製品への加工などに適しており、デザインなどが繊細で、精度が要求される加工も可能となっています。エッチング加工のデメリット次にエッチング加工のデメリットについても見ていきましょう。①大規模な大量生産だと不向きエッチング加工は、イニシャルコストが低い反面、工数が多く加工時にかかるコストが高くなるため、一般的に小ロット・多品種に向いており、大規模な大量生産には不向きであると言われています。これに対して、プレス加工では、金型の設計・作成に多くの時間・コストが必要となりますが、各工程に要する時間は短く、製造量が多くなると金型の占めるコストの割合は小さくなるため、大量生産に向いています。②厚板の加工法としては不向きな事もエッチング加工は化学的な腐食を利用しているため、加工を施す材料の板厚が薄ければ薄いほど、シャープで、より高精度な加工が可能となります。そのため、エッチング加工は薄板金属の精密加工により適しており、厚板の加工法としては不向きであると言えます。参考記事エッチング加工と同様、プレス加工も板金加工において非常にメジャーな加工方法です。以下の記事では、プレス加工について詳しく解説しています。ご興味のある方は、ぜひご覧ください。⇒プレス加工の基礎知識や種類について専門家が徹底解説!エッチング加工の価格例最後に、エッチング加工を利用した加工品の価格例をご紹介します。ただし、メーカーによって、また製品の寸法や材質などによって価格は異なってくるので注意が必要です。ステンレス看板(100,000円)犬のデザイン・文字部分のエッチング(価格にはブラケット代込み)引用元:ふしょく看板製作工房ステンレス看板(45,000円)ロゴ・縁・ライン・文字部分のエッチング引用元:ふしょく看板製作工房真鍮看板(12,000円)文字・ロゴ部分のエッチング引用元:ふしょく看板製作工房エッチング加工の一括見積りを依頼するなら【Mitsuri】エッチング加工をメーカーに依頼する際には、各メーカーによって対応できる素材などが異なってくるため、事前に確認してから依頼することが大切です。エッチング加工依頼できるメーカーをお探しの際には、ぜひMitsuriにご相談ください。日本全国で250社以上の企業と提携しているため、きっとご希望に沿うメーカーが見つかるでしょう。Mitsuriでのお見積りは複数社から可能です!ぜひお気軽にお問い合わせください。
自動車用の精密部品や金型用鋼材などに使用される素材は、硬度を上げて耐久性や靭性を上げて、壊れにくくする必要があります。素材の硬度を高めるためには、熱を加えて硬くする「焼き入れ」と呼ばれる熱処理方法が大切です。 実は焼き入れには、大きく分けて6種類ほど熱処理の種類があります。ただ、それぞれの熱処理方法の特徴や得られる効果など、わからない人は多いのではないでしょか。 この記事では、「焼き入れ」の6種類の熱処理方法について詳しく解説していきます。焼き入れによるメリットもご紹介するので、焼き入れ加工について知りたい人は、ぜひ参考にしてください。 焼き入れとは 「焼き入れ」とは、一定以上の温度に素材を加熱したあと、適切な方法で素材を冷やしていく方法です。焼き入れをすると、加熱した素材の強度を高められ、衝撃や曲げに強い素材になります。 焼き入れをしないままの素材は、耐久性がもろく、割れやヒビなどが入りやすいです。焼き入れをおこない強度をあげると、自動車の精密部品や金型用の鋼材として活用できます。焼き入れは、さまざまな部品や加工用素材を生み出すために重要な工程です。 焼き入れの種類 素材への焼き入れ作業は、大きく分けて6種類。焼き入れの方法によって、素材への影響や素材の硬度などが異なります。 では、6種類の焼き入れの方法や特徴について、それぞれ解説していきましょう。 焼き入れの種類①【ズブ焼き入れ】 「ズブ焼き入れ(別名:全体焼き入れ)」とは、内部まで熱を加えて素材全体を硬くする焼き入れ方法です。芯部まで焼き入れをすることで、素材全体が硬く、引っ張りや圧縮に強い特徴を持ちます。 ズブ焼き入れは、小さいサイズの素材なら短い時間で芯部まで熱が加わります。しかし、サイズが大きくなるほど内部までの焼き入れが難しく、時間もかかります。 大きいサイズのズブ焼き入れを依頼する場合には、高い技術力のある企業へ外注するように気をつけましょう。 焼き入れの種類②【表面焼き入れ】 「表面焼き入れ」とは、素材の表面のみを焼き入れする熱処理方法です。表面焼き入れすると、素材の表面は硬くなりますが、内部は素材本来の硬度のままになります。 また、表面焼き入れにも主に4つの焼き入れ方法があるので、注意しておきましょう。 高周波焼き入れ:高周波の電磁波で素材表面を加熱して焼き入れする 炎焼き入れ:バーナーなどの炎を吹き付けて焼き入れする レーザー焼き入れ:レーザー光を素材に当てて焼き入れする 電子ビーム焼き入れ:真空状態で電子ビームを照射して焼き入れする 焼き入れの種類③【浸炭焼き入れ】 「浸炭焼き入れ」とは、熱処理する素材の表面に炭素を浸透させてから、焼き入れする処理方法です。浸炭方法はいろいろありますが、現在一般的なのはガス浸炭と呼ばれる方法になります。ガス浸炭とは、浸炭用ガスを充満させた炉の中で、浸炭させる素材を加熱する方法です。 浸炭焼き入れの特徴は、炭素が浸透した部分だけが硬くなり強度を高められる点です。浸炭焼き入れをすると、素材の摩耗性や耐摩耗性と靭性の両立などの効果が得られます。 また、炭素を浸透させた部分だけを焼き入れできるので、焼き入れ部分の選択が比較的自由なのも特徴です。 素材の内部や炭素が浸透していない部分は、素材もともとの硬度のままになっています。浸炭焼き入れした素材は、主に自動車部品や機械部品に使用される場合が多いです。 焼き入れの種類④【高周波焼き入れ】 高周波焼き入れとは、高周波を使って起こした電磁誘導の熱をもちいて、焼き入れをする熱処理方法です。熱を加えた後には、急速冷却をおこないます。高周波焼き入れは、表面だけを硬くする「表面焼き入れ」に使用される場合が多いです。 また、高周波焼き入れは、自動化がしやすいため、製造業などでよく使用されています。複数の素材を同時に炉に入れて熱処理ができ、熱を加えてから冷やすまでの時間も比較的短いです。 高周波焼き入れを、製造ラインの一貫として組めば、全自動で焼き入れ作業ができます。そのため、自動車用部品や金型用鋼材などのいろいろな場面で、高周波焼き入れは使用されています。 焼き入れの種類⑤【真空焼き入れ】 「真空焼き入れ」とは、簡単にいうと真空状態で熱処理をおこなう焼き入れ方法です。素材を入れた炉の内部を、真空もしくは減圧した後に、製品を加熱して窒素ガスで冷却をします。 真空焼き入れをする真空炉の中は、酸素がない状態です。酸素がないため、素材表面と酸素が反応して発生する「酸化皮膜」と呼ばれる黒ずみのようなものができません。その結果。光沢のある品質が高い素材を生み出せます。 真空焼き入れ後の素材品質が高いため、仕上げ作業や研磨作業などの後工程を削減できるメリットがあります。金型用の鋼材やプレート、部品などいろいろな分野で、真空焼き入れをした素材は使用可能です。 焼き入れの種類⑥【窒化焼き入れ】 窒化焼き入れとは、素材の表面のみを熱処理して硬度を高める焼き入れ方法です。浸炭焼き入れと同じように、加熱炉内に「窒化用のガス」を充満させ、その中で素材を加熱させる方法が一般的になります。熱を加えると、窒素が染み込んだ部分のみ硬度が上がり硬くなります。 窒化焼き入れの特徴は、焼き入れ後の変形(ひずみ)が比較的少ないことです。そのため、精密部品をより硬く仕上げたい場合に、窒化焼き入れが使用されています。窒化焼き入れには、素材の耐摩耗性や耐熱性などの性質が向上する効果があります。 焼き入れ以外の熱処理 鋼材などの硬度を上げることを目的としているのが「焼き入れ」です。しかし、実は他にも大きく分けて3種類ほどの熱処理方法があります。 ご紹介する熱処理方法は、どれも素材に熱を加える作業は同じです。ただ、熱する温度や時間、冷却するまでの時間が異なります。 ここでは、それぞれの熱処理方法の名称と処理の目的を解説していきます。 ・焼きなまし 「焼きなまし」は、機械加工による切削や、プレス加工などを簡単にするために、材料を軟らかくすることが目的の熱処理方法です。素材を適切な温度で熱した後に、長時間かけてゆっくりと冷却するのが特徴になります。 ・焼きならし 「焼きならし」とは、素材を鍛造や鋳造する工程で発生した、素材の組織のムラなどを均一にするための熱処理方法です。焼きならしをすることで、素材本来の強度や靭性などの機械的性質を高められます。 また、焼きならしは、焼き入れの代替処理としても利用される場合が多いです。 ・焼き戻し 「焼き戻し」とは、一度焼き入れして冷やした素材を、そこからさらに加熱する熱処理方法です。「焼き入れ」の時よりも低い温度で再度加熱をすることで、より粘りや靭性を高められます。 焼き入れと焼き戻しは基本的にセット。焼き入れした素材にもよりますが、焼き入れ後は必ずと言っていいほど焼き戻しをおこないます。焼き戻しをすることで、鋼材にヒビ割れや破損が起きる可能性を減らせるからです。 参考記事 焼き入れ以外の熱処理方法について、さらに詳しく知りたい人は、以下の記事をご覧ください。 ⇒鋼の性質を変える【熱処理】とは?仕組みや種類について徹底解説! 焼き入れのメリット 焼き入れ作業は、多くの製造業などで用いられている作業工程になります。社内で対応できない場合には、外注をして焼き入れする企業も多いです。 そんな焼き入れ作業で得られるメリットには、以下のようなものがあります。 焼き入れ作業のメリット 鋼材を硬くできる ヒビ割れや破損を防げる 鋼材の品質を高められる 摩耗性や靭性、耐久性などを高められる 焼き入れ作業は、素材を硬くすることが目的です。ただ、硬度の変化は、素材に含まれる炭素量などによって変わります。 焼き入れを外注する場合には、素材の種類や含まれる炭素量、サイズなどのさまざまな項目をしっかりと確認してください。 焼き入れの一括見積りを依頼するなら【Mitsuri】 今回は、「焼き入れ」の熱処理方法について解説しました。焼き入れは、素材の硬度を高めて、破損やヒビ割れを起こしにくくするための大事な工程です。 焼き入れと言っても、大きく分けて6種類も熱処理方法があるので、加工する素材にあった熱処理を行うことが重要になるでしょう。 そのため、素材に合わせて焼き入れ方法を判断できる高い焼き入れ技術と、焼き入れができる設備のある企業に依頼を出すのがおすすめです。 Mitsuriは、日本全国に約250社以上の協力企業があります。ご依頼内容に合わせて、最適な焼き入れ加工ができる工場をすぐにご紹介可能です。焼き入れ加工にお悩みであれば、お見積もりが取れるMitsuriへぜひご相談ください。