ticker
【金属加工 Mitsuri】見積から発注までWEB完結!
過去の記事で、各塗装方法の特徴、メリット・デメリットを解説してきました。 ※気になる方は、こちらの記事をご覧ください。 こちらの記事では、実際に工場へ塗装を依頼する方法と、NG例を紹介します。 【6分でわかる】塗装の依頼方法 工場さんに塗装をお願いするときのコツを簡単に動画で解説しています! 6分程度でサクッと見れるので、お時間が無い方はぜひご覧ください! YouTubeにて、金属加工Mitsuriチャンネル運営中!こちらからご覧ください! 一言で「塗装」と依頼するだけでは見積がつきません。 下記の項目を埋めて、初めて見積や加工ができるようになります。 ①どの製品に塗装するのか図面を用意する ②個数 ③色を指定 ④艶の具合 ⑤塗装方法 ※指定なしでもOK ⑥用途 ①製品の図面を用意する サイズ・形状・材質がしっかり記載された図面を用意しましょう。 サイズ・形状により、用意する塗料の量が変わります。 材質により、塗装金額が変わる場合もございます。 また、塗装する際は吊り下げて塗装をすることが大半です。必ず吊り穴となる穴があるように設計しましょう。穴のない製品で塗装を依頼すると、工場から吊り穴の追加をお願いされることが大半です。必ずチェックしましょう! ②個数 個数が多ければ多いほど製品1個あたりの塗装費は安くなります。 さらに、用意するべき塗料の量も左右されるため、必ず記載しましょう。 ③色の指定 塗装できる色は様々で、原色のものもあれば調色してご希望の色に合わせることもあります。 「黒」や「白」というオーダーであればわかりやすいのですが、「緑」というオーダーであれば、工場も困ってしまいます。 例えば「緑」という色でもこのように様々な「緑」があります。どの「緑」かわかるように、予め色を細かく指定しましょう。 色の指定方法は大きく4つあります。 マンセル値で指定 マンセル値は、数字とアルファベットで色を表しています。 R(赤)、Y(黄)、G(緑)、B(青)、P(紫)、と基本の5色相とその中間色で計10色相をアルファベットで表します。中間色とはYRの場合はR(赤)とY(黄)の中間になるので、オレンジになります。 各色相は、主に2.5、5、7.5、10と数字を刻みます。 5Bあたりにつきましては、青緑色になっており、一般的に青と想像できる色とずれていますのでご注意ください。 また、明度と彩度も数字で表します。 明度は黒を0、白を10として11段階に分割しています。しかしながら、完璧な黒、完璧な白は再現できないため、0や10はなく、最も暗い黒で1.0、最も明るい白で9.5になります。 彩度は鮮やかさを0から14程度までの数値で表します。 白や黒といった無彩色に近い、色味の薄い色ほど0に近く、鮮やかな色ほど数値が大きくなります。最も鮮やかな色の数値は色相によって異なり、赤は14〜16程度ありますが、青は8程度になります。 ご希望の色の数値を確認したい場合は、マンセル値測定器を使うか、色見本から選択してみてください。 通称:「日塗工」の色見本帳から色を選択する 「日塗工」とは、一般社団法人日本塗料工業会の通称です。 色見本帳を見ながら色を選択できます。「色票番号」という各色をアルファベットと数字で組み合わせた番号で色を指定します。 1995年を境に色票番号の表記ルールが変わっています。現行の番号と表記が違う場合はご注意ください。 色見本帳は2年毎に最新版が発行されています。 こちらのページを書いた2022年4月ですと、最新版は2021年版になります。 また、色見本帳の有効期限は3年と設定されています。塗料の色にも色見本帳の色にも経年劣化があり、数年経てば原色を保っていることがありませんので、色の打ち合わせは最新版でのお話をおすすめします。 参考:一般社団法人 日本塗料工業会 色見本サンプルを工場に送る すでに塗装されたものを塗装工場に送り、同じような色に調色してもらえるよう塗装を依頼できます。 サンプルは見積依頼をする際に同意を得る前に送るのではなく、必ず工場の同意を得てから小さいサイズのものを送りましょう。 色にこだわりがない場合は… こだわりがない場合は、こだわりがない旨を伝えましょう。 ある程度色の希望を伝えつつ、下記のように伝えてみましょう。 例) 「白に近い色であれば大丈夫です。」 「鮮やかな青でお願いします。塗料はあり合わせのもので大丈夫です。ない場合は原色の青でお願いします。」 色の希望もない場合は、白・黒・ベージュから選択してみましょう。 この3色は、よく塗装される色です。そのため、塗料を在庫している可能性が非常に高いです。都度塗料を調達する必要がなくなる可能性が高いため、塗装費が他の色と比べて安価になる可能性が高いです。 どの色の指定方法も厳密にいえば、色の差が発生してしまいます。 複数の部品を塗装し、組付けして、色のわずかな差が気になるようでしたら、塗装のみ同じ塗装工場へ出せるように手配するのがオススメです。 ④艶の具合 色を選択したら次は艶です。 艶の具合は、艶あり・艶なし・半艶(五分艶)・〇分艶と指定します。 艶の有無は塗料に艶消し剤を入れて作っていきます。 そのため、艶ありより艶なしの方が艶消し剤を入れる段取り分高価になります。 艶の有無でも単価に差が生じますので、必ず指定しましょう。 ⑤塗装方法(指定なしでもOK) 様々な塗装方法があります。 各塗装方法やメリットデメリットはこちらの記事で解説しています。 吹付塗装、焼付塗装、粉体塗装、電着塗装など様々な塗装方法があります。 特に指定がない場合は一般的に吹付塗装か焼付塗装になります。 もし、シボ加工のように表面に凹凸を出すような特殊な塗装をご希望の場合は必ず記載しましょう。 対応可能な工場が限られてくる上に、通常の塗装より高価になります。 ⑥用途 簡単で構いませんので記載しましょう。 塗料にも屋内用と屋外用があります。それ以外にも用途別で塗料がラインナップされています。 屋内用か屋外用かだけでも記載しましょう。 塗装の依頼は、図面、個数、色、艶、塗装方法、用途の項目を揃えることでスムーズに依頼ができるようになります。 一つでも欠けてしまうと見積がつかなくなる可能性が高くなりますので、必ず依頼前に確認しましょう。 図番:ABC-333 個数:30個 色:2.5Y8/1.5 艶:艶あり 塗装方法:焼付塗装 用途:屋内用 図面に記載する箇所がない場合は、上記のように記載するとわかりやすくなります。 いかがでしたか? Mitsuriでは塗装も含めた金属加工を依頼できます。 見積依頼はこちらから!
塗装と聞くと、金属をはじめとするさまざまな物に色を塗り、見た目をキレイにするイメージがありますが、それ以外にも金属をコーティングすることで保護する役割を持っています。そのため、めっきと比較されることも少なくありません。 今回の記事では、塗装の特徴や種類、メリット・デメリットやめっきとの違いなどをご紹介します。金属製品を装飾したり、保護・防錆をしたりすることを目的に塗装を考えている方は、どういった種類の塗装をするのが適しているのかも含め、ぜひ参考にしてください。 塗装とは 塗装とは、物体に塗料を塗って塗膜を形成させることを言います。とりわけ、金属製品への塗装は、装飾に加え、コーティングによる保護を目的に用いられます。 特に、錆による劣化は金属の天敵となるため、水からの保護が欠かせません。他にも、汚れや油など、さまざまなものから守るための役割を持っています。 塗装の多くは常温・大気下で皮膜となる塗料を塗布することができます。一般的にはハケやローラーなどを用いて塗布する印象が強いですが、金属部品の加工にはさまざまな種類の塗装が存在しています。 塗装の種類 金属加工における塗装は、ただ単純に金属に色を塗れば良いというわけではありません。なぜなら、金属によって相性の良い塗装と相性の悪い塗装があるからです。 もし、適切な塗装方法を選択しなかった場合、せっかく塗った塗料がすぐに剝がれてしまい、見た目が悪くなるだけでなく、目的の「保護」の役割を果たせなくなってしまう可能性があります。そのため、製品をキレイに保つためには目的に合った塗装方法を選択肢することが重要と言えます。 下記は、金属加工における一般的な塗装の種類です。 溶剤塗装 溶剤塗装は、シンナーなどの有機溶剤に樹脂や顔料を混ぜた塗料を塗布する方法のこと。塗装の中で最もスタンダードな方法で、ハケやスプレー、ペイントローラーを使って物体に塗料を塗っていきます。 溶剤塗装は他に比べて塗料が安く、製品単価を下げられるメリットがあります。ただし、有機溶剤には中毒性があり、大気汚染などの危険性があるため取り扱い方法に注意が必要です。 ⇒溶剤塗装とは?特徴や粉体塗装との違いについて専門家が解説! 焼付塗装 焼付塗装は、塗料に熱を加え揮発させることで、乾いたときに硬化し、強度を高める塗装方法のことです。皮膜を硬化させるにあたって100度~200度を超える高温にする必要があります。 焼付塗装は製品と塗膜の密着性が高く、温度や湿度、風雨などに晒される屋外の環境下で高い効果を発揮できるため、自動車などのボディの下塗りにも用いられます。 メラミン、フッ素、アクリルと、焼付塗装にも大きく分けて3つの種類があり、それぞれに塗装温度や硬化、安全性などに違いがあるので、目的に応じて選択が必要です。 電着塗装 電着塗装は、塗料が入った液体の中に加工物を入れ電気を流すことで、塗料を加工物に付着させ、塗膜を形成させる方法です。 ハケやローラー、スプレーなどではムラができてしまいやすい、複雑な形状の素材にも均一な塗膜を形成させることができるほか、膜厚をはじめとする処理条件も管理しやすいため、大量生産に向いている塗装方法です。一方で、塗装をするために設備をはじめさまざまな準備が必要となるため、小ロットの生産には不向きと言えます。 静電塗装 静電塗装は、帯電した塗料を利用することで、静電気によって塗料が加工物に引き寄せられ、塗膜を形成する方法です。塗料を効率よく付着させることができ、均一で美しい仕上がりの塗膜になる特徴があります。 一方で、高電圧の作業が必要となるため、感電や火災などの事故が発生しないよう、十分に注意しながら作業を進める必要があります。基本的には手作業よりも産業用ロボットなどを用いたライン生産方式が適しており、自動車の車体や家電、OA機器などの塗装に用いられます。 粉体塗装 粉体塗装は、粉末状の塗料を静電気によって付着させた後、加熱溶解することで塗膜を形成する方法です。 他の塗装は一般的に液状の塗料が用いられますが、それに比べてより厚い塗膜を形成しやすい特徴があります。さらに、塗料の入れ替えがしやすく、吹き付けた後、飛散した塗料を回収・再利用しやすいため、高い塗料を無駄なく活用することができます。自動車や家電製品などのライン生産に多く用いられます。 塗装処理の工程 塗装は主に、前処理、調合、塗布、乾燥の4ステップに分かれています。これは、溶剤塗装から粉体塗装まで、まったく異なる塗料を用いても基本的に変わることはありません。 各工程において、どのような作業が発生しているのか、詳しく解説していきます。 1.前処理 前処理は、加工物に塗料をしっかりと密着させるための処理のこと。具体的には、材料表面の油や錆、異物などを取り除いてキレイにする作業のことです。 例えば、過去に塗られていた塗装や錆をやすりなどで削っていったんキレイにする作業も前処理のひとつです。もし、前処理をしないまま作業を進めてしまうと、せっかく塗った塗料が塗装後に剥がれやすくなるなど、不具合が発生しやすくなるため、塗装後の製品をキレイなまま長持ちさせるためにも重要な工程と言えます。 前処理は、研磨による機械的処理と、表面を皮膜で覆う科学的処理の2種類があります。目的や用途、加工物の状態などによってどちらをチョイスすれば良いかも変わります。 2.調合 調合は、塗料の準備の工程です。機能性を高めるために複数の塗料を混合したり、目的に合わせて色を調整したりするために、異なる塗料を調合することも少なくありません。また、塗装方法や作業環境に応じてシンナーの希釈剤を入れて塗料を調整することもあります。 エナメルをはじめとする顔料を含んだ塗料は沈殿している場合があるため、色むらをなくすためにしっかり撹拌して使用する必要があります。また、手作業で塗料を混合する場合、比率を間違えると乾燥不良や塗膜の欠陥が出る可能性があるため、正確な作業が求められます。 3.塗布 塗布は、製品に塗料を付着させる工程のことです。材料に応じて塗ったり吹き付けたり、上述した塗装方法を用いて加工物に塗膜を形成させます。また、目的に応じて下塗り、中塗り、上塗りなど、複数回に分けて塗料を塗布することもあります。 塗布工程は、仕上がりの見た目の美しさや均一性など、製品の品質に大きく影響するため、最も重要な工程と言えます。製品をキレイな状態で長持ちさせるためには、相性の良い塗装方法を選択し、適切に作業を進めることが大切です。 4.乾燥 塗料は乾燥することで塗膜の役割を果たす、いわゆるコーティングへと変化します。そのためには、常温乾燥、または加熱乾燥が必要です。 常温乾燥にも、何もせずに一定期間置いておく自然乾燥と、紫外線や電子線を照射して乾燥させる方法の2種類があります。また、加熱乾燥では熱風や赤外線、電磁誘導など、複数の乾燥方法が用いられています。 乾燥方法も、塗装の種類に適したカタチで行わなければ、穴があいてしまったり、硬化状態が悪かったりと、塗膜に欠陥が発生してしまう可能性があります。 塗装のメリット・デメリット 塗装には、めっきをはじめとする他の表面処理に比べたメリット・デメリットが存在します。 ●塗装のメリット 常温・大気下で塗布することができるため、汎用性が高い 塗装方法によっては現地で作業ができる 大きさに影響されにくく、大小さまざまなものに表面処理を施すことができる 金属だけでなく、ガラスやセラミック、木材などにも塗布できる 方法や塗料の種類が多いため、選択肢が多い 塗装の膜厚を薄いものから厚いものまである程度調整できる 塗り直しができる めっきに比べてコストが安い ●塗装のデメリット 製品と塗膜の密着性が他の表面加工に比べて高くない 作業者のスキルによって表面にムラが発生しやすい めっきに比べると強度が低く、損傷しやすい めっきに比べて剥がれやすい 塗装とめっきの違い メリット・デメリットから見ても分かるように、塗装は処理方法や効果の関係上、めっきと比較されがちです。これは、塗装とめっきがいずれも表面に膜を形成し、装飾性を高めつつ、加工品を保護する役割を持っているからです。 塗装に比べてめっきの方が高価な分、保護効果が高く長持ちします。一方、塗装はめっきに比べて剥がれやすい、損傷しやすいなどのデメリットはあるものの、塗り直しによって保護効果を再度高めることができるため、メンテナンスを加えることで長持ちさせることが可能です。また、めっきは取り扱う金属の種類やサイズ、環境などによって対応できない場合があり、塗装ほど汎用性に優れていません。 それぞれの特徴を詳しく理解した上で、どちらをチョイスした方が良いか判断したい場合は、下記記事でより詳しい情報をチェックしておきましょう。 ⇒めっきと塗装の違いは?それぞれの特徴、めっき塗装に関しても解説!
粉体塗装とは、パウダー状の塗料を金属に直接付着させて加熱し、乾燥させて固めることで塗膜とする塗装法です。 一般的な塗装に用いられる有機溶剤を全く使用しないため、環境や人体への影響が小さく、環境保全や健康増進への取り組みが強化されている現在、注目が集まっています。また、省資源性にも優れるほか、自動化しやすいという特徴もあります。これらの理由から、溶剤塗装からの転換が進んでおり、その市場は拡大しています。 この記事では、粉体塗装とは何かというところから、その方法や種類、特徴、メリット・デメリットまで、詳しく解説していきます。 粉体塗装とは 粉体塗装とは、パウダーコーティングとも呼ばれる、粉末状の塗料を用いる塗装のことです。細かく粉砕して粉状にした塗料(粉体塗料)を、塗装対象物に直接付着させ、高温で溶かしてから、乾燥させて固めることで塗膜を形成します。加熱して固化させることで塗膜を形成することから、焼付塗装の一種でもあります。 参考:焼付塗装ならMitsuri!1コ〜お受けいたします! 粉体塗料には、エポキシやポリエステルなどを含む熱硬化性のものと、ポリエチレンやナイロンなどを含む熱可塑性のものがあります。粉体塗料は、これら樹脂のほか、顔料、添加剤をパウダー状にしたものから構成されており、溶剤塗料や水性塗料の成分である有機溶剤や水などの溶媒は含みません。なお、ここでの添加剤とは、硬化剤や乾燥剤、消泡剤、フィラー(充填剤)などで、塗料の流動性・湿潤性の調整や塗料の脱気(空気を除去すること)などの機能を持ちます。 粉体塗装は、他の種類の塗装と同じく、塗装対象物の防錆や着色、耐候性向上、美観向上、機能性付与などが目的です。また、溶剤塗装に比べて、環境汚染や健康被害、火災などのリスクが低いため、溶剤塗装からの転換が進んでいます。 参考:溶剤塗装とは?特徴や粉体塗装との違いについて専門家が解説! 粉体塗装の方法 粉体塗装の方法には、静電粉体塗装法と流動浸漬塗装法があります。 ●静電粉体塗装法 参照元:粉体塗装とは? > 粉体塗装の紹介「塗装工程と塗装法」日本パウダーコーティング協同組合 静電粉体塗装法は、アースに繋げてプラスに帯電させた塗装対象物へ、スプレーガンにてマイナスに帯電させた粉体塗料を噴射することで、塗料を静電的に対象物へ付着させる方法です。 この塗装法では、一般的に熱硬化性粉体塗料を使用し、加熱によって架橋と呼ばれる化学反応を誘起することで硬い塗膜を形成します。一度硬化した塗料は、再度加熱しても硬いままで、軟化・流動することはありません。 この塗装法では、以下の工程に従って塗装を行います。 1. 前処理…油脂成分を除去するアルカリ脱脂処理や錆を落とす酸洗処理、薬液などを洗い流す水洗処理を実施する処理工程。塗装の密着性向上を目的としており、素材によっては、塗膜のさらなる品質向上のために化成処理なども行う。 2. 水切り乾燥…乾燥炉で塗装対象物に付着した水分を完全に除去する処理工程。ブリスター(塗装膜下に残存した水分によって生じる気泡)と呼ばれる外観不良の発生を防止する。 3. 粉体塗装…粉体塗料を静電引力によって対象物に付着させる処理工程。 4. 焼付乾燥…塗装対象物に付着した塗料を180~200℃の高温に加熱した焼付炉で焼き付け乾燥させる処理工程。 5. 冷却…冷却して塗膜を形成する処理工程。 静電粉体塗装法は、流動浸漬塗装法と比較すると、以下のような特徴を持ちます。 ・塗装対象物の形状やサイズに対してあまり制約がない。 ・均一な膜厚が得やすい。 ・膜厚の調節が可能(30〜150μm)。 ・電気を通さない素材には塗装できない。 参考:塗装前処理とは?目的や工程の流れについて専門家が解説! ●流動浸漬塗装法 参照元:粉体塗装とは? > 粉体塗装の紹介「塗装工程と塗装法」日本パウダーコーティング協同組合 流動浸漬塗装法は、事前に加熱した塗装対象物を、粉体塗料を圧縮空気によって流動させた流動浸漬槽と呼ばれる容器に入れることで、塗料を対象物の熱で溶かして付着させる方法です。 この塗装法では、一般的に熱可塑性粉体塗料が使用されます。熱可塑性粉体塗料は、加熱によって軟化・溶融して形状を変えることができ、冷却によって固化して塗膜とすることができる塗料です。化学変化を伴わないため、再度加熱して冷却すると、再び軟化・溶融して固化します。 この塗装の工程は、以下の通りです。 1. 前処理…塗装の密着性向上を目的に、脱脂処理や酸洗処理、化成処理、水洗処理などを行う処理工程。 2. 予備加熱…塗装対象物を塗料の融点以上の温度に予熱する処理工程。 3. 流動浸漬…予熱した対象物を流動浸漬槽に入れることで、粉体塗料を対象物に接触させて溶かし付着させる処理工程。 4. 後加熱…塗膜の平滑性向上を目的に、塗装対象物に付着した塗料を融点以上の温度に加熱する処理工程。 5. 冷却…冷却して塗膜を形成する処理工程。 流動浸漬塗装法は、静電粉体塗装法と比べて、以下のような特徴を持ちます。 ・塗装対象物のサイズが流動浸漬槽のサイズ以下に制限される ・塗装対象物が複雑な形状である場合、膜厚が不均一になりやすい。 ・厚膜が一度の塗装で得られる(200〜1500μm)。 ・厚膜の塗装が容易。 ・粉体塗料の回収装置が不要。 ・予熱を必要とする。 ・膜厚の調節が難しい。 ・電気を通さない素材にも塗装できる。 粉体塗装の用途 粉体塗装は、金属素材の製品を中心に、様々な分野で採用されています。 その使用分野は、下図に見られるように、金属家具や電気機器、建設・産業機械、機械・器具の割合が大きくなっています。 粉体塗装の具体的な使用例は、下表の通りとなっており、特に工業塗装に多く採用されています。 <粉体塗装の分野別使用例> 使用分野 使用例 金属家具 机, 椅子, 陳列棚, 書架, ロッカー, 業務用ワゴン, ベッド 電気機器 分電盤, 配電盤, ラジエーター, 柱上トランス, 電力計, 発電機, モーター, ガス給湯器 建設・産業機械 パワーショベル, フォークリフト, FA機器, 工作機械, 包装機, ボンベ, 農業機械 機械・器具 医療用品, 現像機, 精密機器, IT機器, 事務機 家電製品 レンジ, レンジフード, エアコン, 冷蔵庫, 洗濯機, 暖房機, ミシン, 照明器具, 電話機 道路資材 ガードレール, ガードパイプ, 橋梁手摺り, 欄干, 標識用ポール, 信号機, 照明柱 水道資材 鋼管, 鋳鉄管, 異形管, ニップル, 仕切弁, 継ぎ手, 水栓金具, メーター 建築資材 フェンス, 門扉, 手摺り, 面格子, 住宅鉄骨, シャッター, カーテン, ウォール, パーテーション, 雨樋金具, 鉄筋バー 自動車部品 ボディー, ワイパー, バンパー, スプリング, ホイール, ブレーキドラム, ブレーキパッド, オイルフィルター, エンジンブロック, ルーフレール, ドライブシャフト, トラック荷台部分, その他 農業資材, 家庭用品, 消火器, ガーデニング用品 粉体塗装の特徴 粉体塗装には、様々な特徴があります。ここでは、溶剤塗装や水性塗装と比較したときの粉体塗装の特徴について説明します。 参考:金属加工の板金塗装の見積りについて解説!塗装の種類ごとについてもご紹介! 塗膜の強度と耐久性が高い 粉体塗装は、塗膜の強度および耐久性が高いという特徴があります。 粉体塗装では、一度の塗装で厚膜の塗膜を形成することができます。その膜厚は、静電粉体塗装法で最大150μm、流動浸漬塗装法では最大1500μmにも達します。それは、一度の溶剤塗装による塗膜の厚さ約20μmと比較すると、数倍から数十倍の厚みに相当します。また、焼付塗装の一種であることから、塗膜自体の強度が高く、柔軟性にも優れます。 つまり、粉体塗装では、高強度で柔軟な分厚い塗膜が得られるのです。 従って、粉体塗装の塗膜は、傷が付きにくい上、温度・湿度変化が激しい環境でも、伸縮しやすいことにより、ヒビ割れや剥離などが発生しにくくなっています。それは、耐久性に優れ、寿命も長くなることを意味します。 塗膜の性能が高い 粉体塗装の塗膜は、耐食性や耐候性、耐薬品性などの性能にも優れます。 粉体塗装では、その塗装方法から、塗装ムラが起きにくく、ピンホール(塗装面に生じる小穴)も発生しにくい塗膜となります。さらに、塗膜が分厚く、高い強度と耐久性を持つことも相まって、塗膜下の金属が空気に触れにくく、降雨なども塗膜下に浸透しにくくなっています。 そのため、粉体塗装の塗膜は、防錆性能をはじめとする塗装対象物の保護機能を高いレベルで発揮するのです。 塗料に溶媒を含まない 参照元:粉体塗装について「粉体塗装(パウダーコーティング)とは?」有限会社シリウス 粉体塗料は、溶媒を含まないという特徴があります。 溶剤塗装や水性塗装の塗料は、顔料・樹脂・添加剤といった塗膜を形成する成分以外に、これらの成分を溶解または分散させるシンナーなどの有機溶剤や水分を含んでいます。これらの溶媒は、塗料を塗装対象物に接着する役割を持っており、焼き付けや乾燥などの過程で揮発します(上右図参照)。 一方、粉体塗料は、塗膜を形成する成分のみから構成されています。そして、塗装の際には、溶媒の代わりに電気や熱の効果を利用することで、塗装対象物に付着させているのです(上左図参照)。 塗料の回収・再利用が可能 粉体塗装では、塗装時に塗装対象物に付着しなかった塗料を回収して再利用することが可能です。 粉体塗料は、溶剤塗料の有機溶剤や水性塗料の水のような揮発成分を含まないため、熱影響を受けなければ、変質することはほとんどありません。そのため、静電粉体塗装で噴射した塗料も、流動浸漬塗装法で流動させた塗料も回収すれば、再度使用することができます。 その点、溶剤塗料や水性塗料は、溶媒が揮発すると塗料が変質してしまうことがあり、多くの場合、変質してしまった塗料は再度使用することはできません。しかし、塗料を調整して揮発性を低下させても、乾燥して硬化するまでの時間が長くなり、作業性が下がってしまいます。 塗料に揮発性有機化合物(VOC)を含まない 引用元:低VOC塗料の現状と今後「塗料からの溶剤(VOC)の蒸発」経済産業省 近畿経済産業局 粉体塗料は、大気汚染や健康被害の原因となる揮発性有機化合物(VOC)を全く含みません。 VOCは、揮発性を有し、大気中で気体状となる有機化合物のことで、溶剤塗料には20~60%、水性塗料には0~10%含まれている物質です。溶剤塗料には、塗料に対して5~50%がさらに投入され、希釈溶剤(シンナー)として使用されます(上図参照)。 その種類は、下表のように多様で、溶解する樹脂や用途に応じて塗料に混合されています。 <溶剤塗料や水性塗料に含まれる代表的なVOCの種類と性質・用途> VOCの分類 VOCの種類 性質・用途 アルコール系 メタノール, エタノール, イソプロピルアルコール(IPA), イソブタノール ラッカー塗料や添加剤などの溶解 ケトン系 アセトン, メチルエチルケトン(MEK), メチルイソブチルケトン(MIBK), シクロヘキサノン 樹脂を強力に溶解 エステル系 酢酸エチル, 酢酸ブチル 樹脂を比較的強く溶解 エーテル系 ブチルセロソルブ, ブチルカルビトール 焼付塗料の仕上り向上・水性塗料にも使用 炭化水素系 脂肪族系 ミネラルスピリット 樹脂を比較的弱く溶解 芳香族系 トルエン, エチルベンゼン, キシレン 多種類の樹脂を溶解、溶解性と乾燥性のバランスが良い 混合系 ソルベントナフサ 焼付塗料用 しかし、VOCは、以下のように大気汚染の原因となり、人体にも有害です。 ●大気環境への影響 VOCは、大気中に拡散されると、光化学反応などを起こして変質します。変質したVOCは、光化学スモッグの原因となるほか、浮遊粒子状物質(SPM)を生成して、目や呼吸器などに悪影響を及ぼし、喘息やアレルギー疾患のリスクを増大させることが知られています。 ●室内環境における人体への影響 VOCは、住宅の建材などから発生して、室内の空気を汚染し、シックハウス症候群や化学物質過敏症を引き起こすことがあります。 ●作業環境における人体への影響 VOCは、塗装に従事する作業者に下表のような様々な症状を引き起こすことが報告されています。ただし、近年においては、毒性の高いVOCの使用が制限されており、以前よりも塗料の安全性は確保されています。 <毒性の高いVOCによって引き起こされる症状> VOCの種類 急性毒性 慢性毒性 メタノール 粘膜刺激, 麻酔作用 咳, めまい, 頭痛, 嘔吐, 脱力感, 眠気, 不眠, 視力障害, 神経系障害 IPA 皮膚刺激, 粘膜刺激 眠気, 頭痛, 協調運動不能, 皮膚炎, 神経系障害, 腎臓障害, 血管障害, 肝臓障害, 脾臓障害 MEK 皮膚刺激, 粘膜刺激, 麻酔作用 呼吸器刺激, 咳, 息切れ, 頭痛, めまい, 視野狭窄, 嘔吐, 下痢, 意識喪失, 神経系障害, 腎臓障害 酢酸エチル 粘膜刺激 呼吸器刺激, 眠気, めまい, 咽頭痛, 咳, 頭痛, 意識混濁 トルエン 皮膚刺激, 粘膜刺激, 麻酔作用 咳, 咽頭痛, めまい, 意識混濁, 頭痛, 嘔吐, 意識喪失, 神経系障害, 腎臓障害, 肝臓障害 エチルベンゼン 皮膚刺激, 粘膜刺激 咳, めまい, 意識混濁, 頭痛呼吸器障害, 神経系障害 キシレン 皮膚刺激, 粘膜刺激, 麻酔作用 めまい, 意識混濁, 頭痛, 嘔吐, 呼吸器障害, 神経系障害 塗装に器具・設備が必要 粉体塗装は、静電粉体塗装法と流動浸漬塗装法の双方について、いくつかの器具・設備が必要です。 <静電粉体塗装法の器具・設備> ・浸漬方式の洗浄設備(洗浄槽など) ・粉体塗装ブース ・静電粉体塗装機(静電ガン、静電コントローラー、ホース類など) ・粉体塗料回収装置 ・焼付乾燥炉 ・防塵マスクや防塵ゴーグル、静電服、静電靴などの保護具 ・換気装置(塗装ブース用と建屋全体用の装置設置を推奨) <流動浸漬塗装法の器具・設備> ・浸漬方式の洗浄設備(洗浄槽など) ・流動浸漬槽 ・加熱炉 ・防塵マスクや防塵ゴーグル、静電服、静電靴などの保護具 ・換気装置(建屋全体用の装置設置を推奨) なお、静電服と静電靴は、静電気による粉体塗料の着火によって発生する粉塵爆発の防止に必要な保護具です。粉塵爆発を防止するため、機器類の接地が必須であり、静電気対策床の設置なども推奨されます。 現場施工が困難 粉体塗装は、以下の理由から、工場などで施工しなくてはならず、現場での施工は現状の方法ではできません。 ・据え置き型の設備が必要 ・前処理に確実な洗浄や乾燥が必要 ・塗装処理時に粉塵対策が必須 ・焼き付け温度が高く、炉での加熱や乾燥が必要 塗装作業の機械化・自動化に適している 粉体塗装は、工場での施工が標準的であることもあり、機械化や自動化に向いた塗装法です。 粉体塗装は、浸漬洗浄、炉での乾燥・加熱、静電引力や空気流動を利用した静電粉体塗装や流動浸漬塗装など、主要な処理工程の人手を排することが可能です。そのため、塗装対象物をフックに吊り下げるなどして、順番に洗浄槽、乾燥炉、塗装ブース、焼付乾燥炉と流していくことで、主要工程を完了させることができます。 粉体塗料の種類 粉体塗装では、様々な塗料が用いられますが、その塗料は、含有樹脂の熱に対する反応性から、熱硬化性粉体塗料と熱可塑性粉体塗料の2種類に分類されます。 熱硬化性粉体塗料 熱硬化性粉体塗料は、加熱によって架橋反応を誘起することで、硬化する塗料です。一度硬化した塗料は、再度加熱しても硬いままで、軟化・流動しないという特徴があります。主に静電粉体塗装法で用いられる粉体塗料です。 熱硬化性粉体塗料は、含有する樹脂の系統によって特徴や塗装条件が異なるため、用途に応じた塗料を選ぶことができます。 下表は、代表的な樹脂系ごとの塗装条件や特徴、用途をまとめたものです。 <代表的な熱硬化性粉体塗料の樹脂系ごとの塗装条件・特徴・用途> 樹脂系 焼付温度 焼付時間 特徴 用途 エポキシ系 130~200℃ 5~50分 高耐食性, 高耐薬品性, 高密着性, 高耐水性, 高硬度, 絶縁性 低耐候性 家電, 自動車部品, 上下水道管, 電気部品, 重電機器, 船舶, エポキシポリエステル系 150~200℃ 10~50分 高耐食性, 高作業性, 高加工性, 高経済性 低耐候性 鋼製家具, 家電, 自動車部品, 建築資材, 事務機器, 家庭用品, 電気部品 ポリエステル系 140~230℃ 5~60分 高耐候性, 高耐水性, 高作業性, 高加工性, 高経済性 家電, 自動車部品, 道路資材, 建築資材, 鋼製家具, 重電機器, 建設機械, 農機具, 家庭用品 アクリル系 150~200℃ 8~50分 高耐候性, 高耐汚染性, 高鮮映性, 低温硬化性 家電, 自動車部品, 道路資材, 建築資材 フッ素系 160~360℃ 15~30分 高耐候性、高耐光性、高耐薬品性, 高耐摩耗性、高耐熱性 高層建築外装, 工業用部品, 家電, 厨房器具 熱可塑性粉体塗料 熱可塑性粉体塗料は、加熱によって軟化・溶融して変形し、冷却によって固化する塗料です。化学変化を伴わないため、再度加熱して冷却すれば、再び軟化・溶融して固化するという特徴があります。主に流動浸漬塗装法で用いられる粉体塗料です。 熱可塑性粉体塗料もまた、下表のように、いくつかの樹脂系があります。 <代表的な熱可塑性樹脂の樹脂系ごとの塗装条件・特徴・用途> 樹脂系 予熱温度 後加熱温度 特徴 用途 塩化ビニル系 230~290℃ 200~320℃ 高耐候性, 高耐薬品性, 高耐食性, 高耐水性, 被覆性, 厚膜美装性 道路資材, 建築資材 ポリエチレン系 260〜320℃ 200〜320℃ 高耐食性, 高耐候性, 高耐水性, 高耐久性, 高耐摩耗性, 被覆性 家電, 上水道管, 建築資材, 道路資材, 重電機器, 家庭用品 ナイロン系 340〜430℃ 340〜370℃ 高耐油性, 高密着性, 耐摩耗性, 高耐衝撃性, 耐熱性, 絶縁性, 被覆性 家電部品, 自動車部品, 配管, 機械部品, 鉄道部材, 家庭用品, 医療機器, 飲料水容器 粉体塗装のメリット 上述したように、粉体塗装には他の塗装法とは異なる多様な特徴がありますが、ここではその中でもメリットとなる特徴について紹介します。 <塗膜について> ・塗膜の強度が高い ・塗膜の耐久性が高い ・塗膜の性能が優れる ・厚い塗膜の形成が可能 ・錆が発生しにくい <方法について> ・一度の塗装で厚い塗膜を形成可能 ・塗料の回収・再利用が可能 ・塗装環境(温度・湿度など)の影響を受けにくい ・塗料の焼付処理が短時間で済む ・塗装の機械化・自動化が容易 <塗料について> ・塗料に有機溶剤(VOC)を含有しない ・臭気がない(有機溶剤は臭気を放つ) <経済性について> ・塗料を無駄なく使用できる ・耐用年数が長い(15~20年) <安全性について> ・VOCによる大気汚染や健康被害については考慮不要 ・VOCによる火災の発生リスクがない 粉体塗装のデメリット 一方、粉体塗装には、以下のようなデメリットがあります。 <方法について> ・薄い塗膜の形成が困難(一般に30μm以上) ・焼付温度や予熱・加熱温度が高い ・塗装後に色の調整ができない ・色の微調整が難しい ・現場施工が困難 ・塗り替えが困難 <経済性について> ・塗装設備が必要であるため、初期投資が掛かる <安全性について> ・粉塵による健康被害のリスクがある ・粉塵爆発の発生リスクがある
ステンレス鋼は耐食性が高いですが、主に屋外で使用される場合は汚れ・水分・塩分の付着やもらい錆びで錆びることがあります。しかし、塗装することで耐食性の向上が図れるため、ステンレス鋼の表面処理として塗装が近年注目されています。需要を伸ばしているのは、メッキや化学発色に比べ塗装のコストが安いためです。ステンレス塗装は、耐食性などの機能性に加えて着色などによる意匠性もアップできるため、用途も多様化しています。 塗装が剥離しやすいステンレスに、耐久性のある塗装をするには、塗膜の密着性が必要で、塗装工程が重要です。 本記事では、剥離しにくいステンレス塗装を施すための工程からその効果、製品事例までをご紹介します。 ステンレスに塗装はできるのか 結論を言うと、ステンレスに塗装することは可能です。しかし、ステンレスにただ塗装を施すだけでは、剥離しやすい塗装になってしまいます。そのため、ステンレスは、塗装をする前に下処理をしなければならないのです。 それでは、ステンレスの塗装が剥離しやすい理由や下処理が必要な理由に加え、ステンレスに塗装は本当に必要なのかを紐解いてみましょう。 ステンレス塗装はなぜ剥離しやすいのか ステンレスは、鉄にクロム、種類によりニッケル・マンガンなどが含まれています。 例えば、一般的に金属加工によく用いられるステンレスのSUS304には、鉄の他にクロム18%、ニッケル8%が含まれています。SUS304のように、ほとんどが錆びやすい鉄でできているにも関わらず錆びにくいのは、ステンレスに含まれているクロムに秘密があります。 ステンレスに含まれるクロムは、酸素と結合して酸化クロムになり、ステンレス表面にnm(ナノメートル:1/1,000,000mm)という極薄い緻密な酸化被膜を形成して金属表面を覆っています。この表面を覆う酸化被膜が、周囲の気体や液体を金属から遮断して保護するため、防食性・耐食性が高くなり錆びにくいのです。 耐食性を高めるというメリットがある酸化被膜は、塗装する時には逆に付着性能を下げ、剥離しやすくするというデメリットになります。 そのため、ステンレスを塗装するためには、表面の酸化被膜を取り除く下処理が必要になってくるのです。詳しくは「ステンレス塗装の工程」で後述します。 ステンレスに塗装は必要なのか ステンレス表面を覆う酸化被膜は非常に薄い膜なので、強い酸やハロゲン系イオン、500℃を超える熱にさらされたり、電解質中で他の金属と接触したり、亀裂や傷が付いたりすることで、ステンレスも腐食することがあります。 そのため、ステンレス表面の被膜を厚くし、防食性・耐食性などを高める方法の一つとして、ステンレスに塗装する必要があるのです。 ステンレス塗装の工程 引用元:株式会社ケミコ―ト ステンレス塗装の一般的な表面処理であるリン酸亜鉛処理の工程は、上図の流れになります。これは、ステンレス塗装の一例ですが、素材加工したものを表面処理してから塗装します。剥がれにくい塗装を施すには、前処理の工程が欠かせません。 ステンレスの塗料は、焼付塗料と常乾塗料があり、それぞれ下塗り(プライマー)と上塗りをします。下塗り後に上塗りをすることで、塗料膜を厚く強固にし、耐久性アップが可能です。 上塗り用塗料には、メラミン樹脂塗料やアクリル塗料他、用途や機能性に合わせて色々選択できます。 参考記事 塗装前処理については、下記記事もご覧ください。 ⇒「塗装前処理とは?目的や工程の流れについて専門家が解説!」 前処理が必要な理由 ステンレスは、50%以上が鉄でクロムを10.5%以上含む錆びにくい合金です。ステンレスが錆びにくいのは、ステンレスに含まれるクロムが、金属表面に酸化物の皮膜を作り、空気や液体を防ぐ保護膜となり化学反応を妨げているからです。 この酸化物の皮膜のことを「酸化皮膜」、または「不働態皮膜」といいます。 一方、酸化皮膜はメリットもありますが、塗装にはデメリットをもたらすこともあります。塗装の付着を悪くし、塗装剥離の原因を作ることがあるからです。 剥離しにくい塗装をステンレスにするには、塗膜とステンレス表面の高い密着性が必要です。そのため、均一に覆っていない酸化皮膜や錆(酸化物)は、塗装の前処理で完全に除去しなければなりません。 これが、耐食性の高いステンレス塗装のために、前処理が必要な理由です。 塗装の表面処理 表面処理は、 塗装のために欠かせない前処理工程になります。塗装前の主な表面処理には、脱脂・水洗・表面調整・化成皮膜があります。それぞれの工程の種類や方法を解説します。 ●脱脂 脱脂は、防錆や加工のために金属表面に付いた油分やゴミを、きれいに除去するために行われます。金属の表面が塗装を弾き、塗装不良を起こさないようにするための処理です。 脱脂には、物理的方法と科学的方法があります。物理的な脱脂方法には、研磨剤を吹き付けるショットブラスト法と高温の蒸気を吹き付ける水蒸気法があります。 科学的な脱脂方法は、溶剤やアルカリ液、酸性液を使う方法です。ロットが少ない場合は溶剤脱脂、大ロットの場合は、アルカリ脱脂がおすすめです。 ●水洗 各工程の合間にある水洗は、前行程で使用した薬品等の残留物を十分除去してから、次の工程に移るための大切な工程です。水洗することで、次の工程の処理精度や薬品の処理効果を高めたり、加工時間を短縮したりします。 ●表面調整 加工によってできる金属表面のスケール(焼け)やキズは、ステンレスの耐食性や塗装剥離の要因になりやすいため、表面調整が必要です。表面調整は、皮膜化成(後述)の性能をアップし、処理時間の短縮をするための工程になります。特に電着塗装をする場合は、薄い均一性の高い化成皮膜を作ることが、耐食性を向上させる鍵になりますので重要です。 ●皮膜化成 引用元:有限会社ブレイヴオート 化成処理とは、金属の表面に化学反応を起こして皮膜を形成し、耐食性や塗装の密着性、意匠性などを高めるための処理です。素材の金属に、足りない性質を加えるための前処理になります。上画像は、右側のみ化成処理し、素材の表面にアンカーが立ったため、撥水性が無くなった状態です。化成皮膜処理は、このように液体を弾かなくすることができるため、ステンレス鋼の塗装に密着性を加え、剥離を防ぐことができます。化成処理には、クロメート処理・リン酸塩皮膜処理・黒染処理があります。 塗布型クロメートの場合は、処理液を塗布して乾燥し、金属表面にクロム酸クロムを主体とした皮膜を形成します。塗布型クロメート処理は、塗布して乾燥するだけで 水洗が必要ないため、重金属の排水が出ず、環境にも良い化成処理法です。 ステンレス塗装 ステンレス塗装には3種類ありますが、その中の焼付塗装を例に挙げます。ステンレスを焼付け塗装する工程は、1回の焼き付け塗装の場合、まず溶剤脱脂の前処理をした後、塗布型クロメート処理します。次に、下塗りプライマー、上塗り指定色を順にコートしていき、焼付けて乾燥させれば2Coat1Bake(ツーコートワンベイク)の完成です。 ステンレス塗装の種類について詳しくは、後述します。 ●下塗りプライマー 下塗りプライマーは、水性と油性があります。ステンレスの場合、下地の強化や密着力を求めるため、油性の下塗り剤が適しています。塗料の乾きが早いため作業効率は良いですが、においは強烈です。 表面強化に適した浸透性プライマーや防錆機能のあるプライマーもあります。 ●上塗り ステンレスの塗料には、焼付塗料と常乾塗料があります。それぞれ下塗りプライマーを塗布した後上塗りすることで、塗料膜を厚く強固にして耐久性をアップします。常乾塗料は、建材などの大きな制作物によく使われ、焼付け塗料は眼鏡やアクセサリーなどの宝飾品から工業製品まで対応できます。 焼付け塗装の上塗り塗料は、メラミン樹脂塗料、アミノアルキド樹脂塗料、ポリウレタン樹脂塗料、エポキシ樹脂塗料、アクリル樹脂塗料などがあります。 製品の大きさや用途に合わせ、最適な塗料を選ぶことが大事です。 ステンレス塗装の効果 ステンレス塗装の主な役割は、耐傷付き性・耐水性や耐紫外線性などの耐候性・耐食性・意匠性・機能性を与えることです。 耐摩耗性 塗装をすることで、ステンレスの表面に丈夫な皮膜を作り、傷がつくのを防いで保護します。 耐候性 耐候性とは、屋外の自然環境において、太陽光・温度・湿度・雨などに耐えられる性質を持っていることをいいます。劣化の要因となる光・水・熱を塗装で防ぐことで、製品の寿命を伸ばせるのです。耐水性や耐紫外線性なども、耐候性に含まれます。 耐食性 耐食性とは、腐食しにくい、さびにくい、酸化しにくいことです。塗装することで耐食性をアップし、さらに腐食に強いステンレスにすることができます。 意匠性 塗装による彩色で、美観やデザイン性を与えたり、ステンレスに暖かみなどの表情を与えたりします。これにより、ステンレス製品の用途を広げることが可能です。 機能性 ステンレス塗装の機能性には、光触媒・蓄光・遮熱・抗菌・防カビから、耐指紋性(指紋が付きにくい、取れやすい)など、多種多様な機能を持つ機能性塗料があります。 ステンレス塗装の種類 引用元:富士電装株式会社 ステンレス塗装の方法は大きく分けて、①樹脂塗装、②焼付塗装(上画像)、③電着塗装の3種類があります。 ①樹脂塗装 樹脂塗装は、自然乾燥で硬化する塗装法です。主な樹脂塗装に、常温~80℃ほどの低温で硬化するウレタン塗装がありますが、 樹脂の分子同士がウレタン結合するため密着性が良く、硬く耐酸性・耐アルカリ性に優れた膜が形成できます。 樹脂塗装は、主に焼付塗装できない製品に用いられ、プラスチック製品やアルミダイキャストなど、高温にすると不具合や変形、そりが起きる材料などの塗装に用いられます。 また、通常焼付塗装できる材料でも、焼付炉に入らない大物などを塗装する場合は、自然乾燥で硬化できる樹脂塗装をします。 ②焼付塗装 焼付塗装は、樹脂の塗膜に熱をかけて硬化させる塗装法です。焼き付ける温度は、100~200℃以上まで、塗料の種類により様々あります。アクリル樹脂塗料で、通常160~180℃で20~30分ほど焼き付けます。 ③電着塗装 焼付塗装の他に電着塗装がありますが、主流はカチオンになっています。「カチオン」とはプラス電荷をもった陽イオンのことで、マイナス電荷をもった陰イオンである「アニオン」と、磁石のようにプラスマイナスで引き合い、強く密着します。 この強い密着性を利用し、水溶性の塗料の中に塗装したい金属を浸け、電気を流すことで陽極にした塗膜成分(カチオン)を陰極にした金属表面(アニオン)に密着させるのが、カチオン電着塗装です。 ステンレス塗装の製品事例 ステンレス塗装の製品事例を5つご紹介します。 上水道のステンレス製配水池・受水槽の製品事例です。ステンレスは、耐久性・耐震性にも優れた性質を持つため、安全な飲料水の確保や緊急時のライフラインの確保に役立ちます。内部は塗装していませんが、屋外設置のため外回りに耐候性のある塗装をしています。 引用元:株式会社UACJ金属加工 厨房施設用のステンレスのパンチングかごの製品事例。材質はSUS304板厚t1.0mmです。 引用元:株式会社都留 屋外仕様ステンレス電源機器ケースの製品事例です。屋外設置のため、SUS304板厚t1.0mmに塗装とシルク処理(銘版印刷)を施しています。 引用元:株式会社都留 電力機器ケースの塗装の製品事例です。SUS304板厚t1.2mmにタレパン、ベンダー、溶接、スポット溶接し、塗装しています。屋外仕様のため、塗装を施しました。 引用元:株式会社 都留 ステンレスに粉体塗装を施した3つの製品事例。粉体塗装は、塗装膜が厚いことで、耐食性に強く劣化・変質しにくく、コスト削減および低公害塗装としておすすめの塗装法です。 引用元:ユニオン電装 ご紹介した製品事例のような剥離しにくいステンレス塗装を施すためには、前処理などの工程が大切です。塗装の効果にも様々あり、意匠性や機能性の進歩や技術開発で、さらに色々なニーズの多様化が見込めます。塗装で表面仕上げをすることで、数種の色調にできる上、安いコストでステンレスの制作物に意匠性や機能性をプラスすることができるからです。 ステンレスの塗装見積もりならMitsuriにおまかせを ステンレスは100%リサイクル可能なので、環境にも優しい金属として社会的にも注目度が高く、塗装の需要もさらに伸びていくことでしょう。 塗装のステンレス鋼板は、建築物の屋根用としてよく使われますが、デザイン性の高いステンレス製品への塗装も、日本全国に提携工場が140社以上あるMitsuriなら対応可能です!ぜひご相談ください。
本記事では、フッ素樹脂塗装について詳しく紹介していきます。メリットやデメリットのほか、意外と知らない耐用年数や塗装の色なども説明していくので、初めてフッ素樹脂加工に挑戦する人はぜひチェックしておきましょう。 フッ素樹脂塗装とは フッ素樹脂は、もともと1930年代にアメリカのデュポン社によって発見されました。「テフロン加工」という言葉を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか?フッ素樹脂はポリマー性の物質で、熱や化学薬品、日光に強いという特性を持っています。 炭素-炭素間結合の重合物を基幹として、周りをフッ素原子が取り囲む構造となっており、非常に安定しているのが特徴です。現在では20種類以上の品種が開発されており、非粘着性、低摩擦性などに特化した性質が付加されています。 フッ素樹脂加工は、一般的にはフライパンなどのテフロン加工で有名な加工技術です。具材がフライパンにくっつきづらくなるため、オムレツや肉料理などが簡単にできると人気です。フッ素樹脂塗装をした表面は油や水を弾き、汚れが付いても簡単に取れます。そのため、工業的機械の表面を塗装するのにも使用されています。 そして、フッ素樹脂は一般の塗料と同じようにスプレーで吹き付けることが可能です。そのため、フライパンなどの家庭用品から宇宙技術まで、幅広い分野で活用されているのです。 フッ素樹脂塗装のメリット 耐候性 屋外環境は、太陽光や紫外線、雨水、酸化、温度変化などが起こるため、さびや劣化が起こりやすいのが一般的です。しかし、フッ素樹脂で加工することにより、そういった環境から素材を守る効果が期待できます。 フッ素樹脂は日光に当たっても変質が少ないため、屋外で使用するものをコーティングするのによく使われます。また、アクリル樹脂やシリコン樹脂などと比べても格段に性能が良いのが特徴です。一度塗装すれば何年も持つため、高層ビルなどの大型の建築物にも役立っています。 美観の保持 フッ素樹脂加工は、建物や製品の美観を保つのに役立ちます。建物が経年劣化すると緑や茶色のカビ・藻が発生することがあり、外観を損ねてしまいます。しかし、フッ素樹脂には防カビ性が備わっているので、日の当たらない壁面なども美しく保つことができるのです。ただし、殺菌までの効果は期待できないため、定期的にメンテナンスする必要はあります。 現在では20年以上の耐用年数をもつ塗料も開発されており、外壁や屋根の美観を長く保つことができます。高層ビルなどの大型建築物で使われることが多いですが、一般の住宅にも徐々に使われはじめている手法です。 耐汚染性能 フッ素樹脂には、水と密着しやすい「親水性」という性質があります。建物の屋根にフッ素樹脂加工を施しておけば、表面に付いた汚れが自然に取れると人気です。外壁にフッ素樹脂加工がされていると、表面に親水性の塗膜が張っている状態になります。そのため、汚れとフッ素樹脂の間に自然に雨水が入り込み、何もしなくても美観が保たれるという仕組みになっています。 外壁のメンテナンス時には足場を組む必要があるため、費用が高額になったり工期が長かったりと面倒です。しかし、フッ素樹脂加工をしておくだけで外壁がきれいに保たれるので、省エネ・節約の観点からもおすすめです。 フッ素樹脂塗料のデメリット コストは高い フッ素樹脂は耐候性、防汚性などに優れ、建物や製品を長く使用する場合には欠かせない素材です。しかし、価格が高額になりがちな点がデメリットと言えるでしょう。一般的に、似たような性質の塗料における1㎡あたりの価格相場は、アクリル樹脂塗料1,500~1,800円、シリコン樹脂塗料 2,500~3,200円程度となっています。それに比べてフッ素樹脂塗料は4,000~4,500円と、かなりの差が付いています。そのため、現在では高級マンションやオフィスビルなどの施設で使われることが一般的です。 現在主流で使われているシリコン樹脂塗料も、最初の頃は非常に高額でした。後に企業努力やシェアの拡大により、価格が下がっていったという経緯があります。そのため、将来的にフッ素樹脂塗料のコストも下がる可能性が十分に考えられるでしょう。 参考記事 フッ素樹脂と性質の似ているアクリル樹脂の加工については以下の記事で詳しく解説していますのでご覧ください。 ⇒アクリル樹脂焼付塗装について【専門家が解説】製品事例も! フッ素樹脂塗装耐用年数について フッ素樹脂加工は、15~20年の耐用年数があります。ほかの塗料と比較してもかなり長く、大手メーカーもその品質を保証しています。何も問題が起きない場合、メンテナンス不要で建物や製品を保護してくれます。そのため、建物の外壁メンテナンスの頻度が減り節約につながります。 ここで、注意したいのがフッ素塗料を使用する箇所による耐久性の違いです。建物の屋根は最も紫外線を浴びる部分で、風雨にさらされることも多いです。そのため、外壁よりも早く劣化が進んでしまいます。同じフッ素樹脂塗料を使った場合、外壁が20年持っても屋根はそれよりも早く寿命になることがあるので、点検をこまめに行うなどで対応しましょう。 また、フッ素樹脂加工をすることで、建物や製品自体の耐用年数が上がるというわけではありません。もともと劣化が進んでいる建物にフッ素を塗ったからと言って、寿命が20年延びる効果は期待できません。フッ素樹脂はコストが高めなので、それよりも早く寿命がくる建物などに使用することは避けるべきです。 フッ素樹脂塗装の色 フッ素樹脂自体は、もともと乳白色の色味となっています。こちらの素材はフッ素原子を含むプラスチック原料で、PCTFE素材と呼ばれています。フッ素をコーティングする際には無色透明となるので、建物や製品の見た目を損なうことがありません。 また、製品によっては、黒、緑、茶色などさまざまなカラーがあります。フッ素樹脂塗料には非粘着性、耐腐食性などの特性を付加したタイプが開発されており、種類ごとに色味が異なります。自由に色調を変えることは難しいので、塗布する製品との相性を見て選びましょう。 フッ素樹脂塗装の業者選びはMitsuriにご相談を フッ素樹脂塗装は他の塗料に比べて耐用年数が長く、メンテナンスの頻度も抑えられることが大きな特長です。ただ、コストはそのぶん高くなりがち。メーカー選びもよく比較して選定する必要がありそうです。 メーカーを選ぶ際には、ぜひMitsuriにご相談ください。日本全国で100社以上のメーカーと提携しているため、きっとご希望に沿うメーカーが見つかるでしょう。ぜひお気軽にお問い合わせください。
皆さんは「エポキシ塗装」についてご存知でしょうか? あまり聞きなれない塗装方法だと思う方もいらっしゃるかと思います。しかし、これは金属加工においてはメジャーな塗装方法のひとつで、私たちの普段の生活にとても関わりの深い塗装方法のひとつです。 「エポキシ塗装って何?」 「エポキシ塗装ってどんな特徴があるの?」 「エポキシ塗装した製品ってどんなものがあるの?」 本記事ではこのようなお悩みを解決します! 今回は、エポキシ塗装について、その特徴や製品例を詳しくご紹介します。エポキシ塗装についてご存知でない方も、本記事を読み終わる頃にはきっと理解していただけるかと思います。 これからエポキシ塗装の依頼を頼もうと考えている方は、是非ご一読下さい。 エポキシ塗装とは? エポキシ塗装とは、「エポキシ樹脂塗装」とも呼ばれており、文字通りエポキシ樹脂塗料を使用して行われる塗装方法のことです。 エポキシ塗装を説明するために、まずはエポキシ樹脂について詳しく説明します。 エポキシ樹脂とは、簡単に説明すると「プラスチック素材」のことです。プラスチック素材の代表的な例には、洋服等に使われる「ポリエステル」やスーパーのポリ袋に使われる「ポリエチレン」などが挙げられます。エポキシ樹脂もプラスチック素材の一種です。 プラスチック素材と一言で言っても、それぞれの素材により特徴は異なります。まず、プラスチック素材には、大きく分けて2つの種類があります。 ①加熱して溶かした後、冷却して形にする熱可塑性(ねつかそせい)プラスチック ②液体状の樹脂を加熱して硬化させる熱硬化性(ねつこうかせい)プラスチック エポキシ樹脂は、「②熱硬化性プラスチック」に分類されます。 熱硬化性樹脂の特徴は、塗料や接着剤としての用途が中心であることです。特にエポキシ樹脂は、その優れた耐水性や耐溶剤性、耐腐食性を生かした場所への塗装剤、または接着剤として使用されています。また、エポキシ樹脂は優れた絶縁性(電気を通さない性質)がありパソコンやプリンターなどの電子部品にも使用されています。 このようなエポキシ樹脂の特性を活かしたものが「エポキシ塗装」です。 エポキシ塗装は身近なところであれば、飲料用の缶の内側、自動車の防食用として用いられています。また、接着性が強いため、金属だけでなくガラス、木材など様々な素材への塗装が可能です。 ちなみに エポキシ樹脂の歴史は比較的浅く、エポキシ樹脂は、1938年スイスのピエール博士によって発見されました。そこから、スイスのチバ社によって特許が買い取られ、1948年に工業用として使用が開始されたという歴史があります。それ以来、工業用材料として日本だけでなく、世界中で使用されています。 エポキシ塗装の特徴 エポキシ塗装には以下4つの特徴があります。 耐食性 耐溶剤性 耐光性 価格 それぞれの特徴について詳しく説明します。 1.耐食性 耐食性とは簡単に言うと「錆びにくい特性」のことです。エポキシ塗装は、水分を通さないのはもちろんのこと、同時に酸素を通さない性質があるため錆などの腐食予防に優れています。 身近なところであれば、この性質を活かし、海水にさらされる船や釣り竿などに使用されます。 2.耐溶剤性 耐溶剤性とは、物質が溶剤に浸っている状態でも、変形・変化がしにくい性質のことをいいます。つまり、エポキシ塗装は物を溶かす薬剤(硫酸や塩酸など)に強いということです。 その性質を利用して、濃硫酸など溶かす力の強い薬品を入れるタンクの内側の塗装として用いられます。 3.耐光性 耐光性とは、紫外線耐性のことで、唯一のエポキシ塗装の短所ともいえる点です。塗装面に紫外線が当たると短期間で劣化してしまうので、太陽光などが照射される場所に利用する場合は紫外線を防止する塗装をトップコートとして併用する等で防止しなければなりません。これがコスト加算にも繋がるので利用する場所をよく確認してから塗装施工すべきです。 4.価格 エポキシ塗装は、他の塗料(樹脂)を使用する塗装方法よりも高価になりがちです。その理由は、耐食性・耐溶剤性など他の塗料(樹脂)よりもかなり優れた性質を持っているためです。 一方エポキシ塗装は単価は高いものの、費用対効果は高いため、維持費や管理費がかかりづらく、トータルコストを下げることが可能です。そのため、エポキシ塗装の需要は高いです。 エポキシ塗装の製品事例 エポキシ塗装の製品事例を、実際の製品の写真と併せて紹介していきます。 エポキシ塗装の作業風景 引用元:株式会社新免鉄工所 エポキシ樹脂を使用した塗床・床塗装(物だけでなく床にもエポキシ塗装は施されます) 引用元:株式会社愛知レジン エポキシ塗装を依頼する前に エポキシ塗装に限らず、塗装の依頼をスムーズに行うためのポイントを説明しています。是非動画を見ながら依頼をしてみてください! https://youtu.be/z4mbQJKqutA 【6分でわかる】塗装の依頼方法【金属加工】 まとめ 今回はエポキシ塗装についてご紹介しました。 エポキシ塗装は金属加工メーカーによって仕上げや価格が違うこともあるため、依頼する際は十分に調べてから依頼することをおすすめします。また、エポキシ塗装の依頼ができないメーカーもあるため、注意が必要です。 この記事を読んで、今までエポキシ塗装について知らなかった方や、知っていても疑問が残っていた方のお役に立てれば幸いです。 また、エポキシ塗装についてお悩みの時は、ぜひMitsuriをお使いください! MitsuriではWEB上で見積依頼から加工依頼まで完結できるサービスを提供しております。図面を登録すれば、加工できる業者から見積が届きます。
自動車、鉄道、飛行機など乗り物や、建造物には何故塗装が施されているのでしょうか。それは、錆を防ぎ美観を守るためです。塗装は、ものの外観、外見を整えるだけでなく、サビなど素材の変質を防ぐ役割をしています。そのため、屋外で使う塗装は、対候性が高く、屋内で使用する塗装は美観に重点を置いています。 私たちの身の回りにあるもの、机、整理棚、パソコンなどのOA機器は、メラミン塗装と呼ばれる焼付樹脂塗装を施されています。 今回は、主に屋内で使用する機材に使われるメラミン塗装と他の焼付塗装の違い、メラミンの歴史、メラミン塗装の事例について詳しく説明させて頂きます。 メラミン塗装とは? メラミン塗装は焼付塗装の一種で、二つの樹脂を合成するした塗料を使うことから、合成樹脂焼付塗装と呼ばれています。塗料は熱で硬化するアミノ系メラニン樹脂と、ポリエステル系樹脂アルキド樹脂を合成したものです。メラミンは、アミノ系樹脂の名前です。 100℃以上の高温で焼き付ける樹脂塗装の中でも、比較的安価で、耐水性、耐酸性がある上、色が長持ちするので、事務機器、パソコン、整理棚など屋内で使うものの塗装として利用されます。ツヤ加減の種類も、ツヤなし、3分ツヤ、5分ツヤ、全ツヤがあります。市場に出回るメラミン塗装製品の多くは5分ツヤです。 メラミン樹脂の歴史 メラミンというと、私たちの生活に全く馴染みがないと思いますが、”プラスチック容器”、というと、皆さんの生活に馴染みがあるでしょう。これらはメラミンから出来ているのです。 メラミンを開発したのは、米国の科学者で、デュポンの研究員の、ウィリアム・タルボットでした。タルボットが、デュポンに在籍していた1930年代は、社内でポリマー商品開発が 進んでおり、軽くて丈夫な食器の材料としてメラミン樹脂を開発されたのです。 腕を買われたタルボットは、デュポンからインク会社サン・ケミカルカンパニーのディレクターにヘッドハンティングされ、’45年にOSS(現在のCIA)に移籍しました。 OSSのディレクター時代の1947年(昭和22年)、当時デュポンが買収していたGMのアルキド樹脂を使い、メラミン樹脂塗装の元となる、アミノアルキド樹脂を開発しました。 焼付塗装とは メラミン塗装を含む焼付塗装は、熱で硬化する塗料を使い、120℃~200℃の熱を塗布面に20~30分間あて、塗料を硬化、蒸着させる塗装法です。鉄、ステンレス、真鍮、鉛、アルミダイキャストなど、熱に強い素材に、日光や雨風、サビに弱い金属の美観を整える目的で塗装されます。粗熱がとれるとすぐ、次の作業工程に移れるのが焼付塗装の長所です。 参考 焼付塗装については、以下で詳しく説明していますので、こちらを御覧ください。 ⇒焼付塗装ならMitsuri!1コ〜お受けいたします! 焼付塗装は、自動車をはじめとする工業用塗装として世間に知られています。 100℃を越える高温で塗料を素材に蒸着させるので、樹脂系の素材には使用できません。ABC樹脂、ナイロン、ポリカーボネイト、塩化ビニール、パテづけで形を整えた電車にはウレタン塗装を施します。 屋外で主に使用される焼付塗装 信号機や建造物など屋外で使用される焼付塗装には、以下の3つの塗装方法があります。 ①アクリル塗装 無色透明のアクリル樹脂を使い、140℃~180℃の高温で焼き付け、20分加熱乾燥します。 透明の樹脂に色付けするので用途は広いですが、非常に高温なので、どこの業者でも扱っているとは限りません。瞬間湯沸かし器、ガスレンジ、自販機、空調、電車内装、自動車部品、ブラインドなど、幅広い用途で使用される上、メラミン塗装よりワンランク上の耐久性を誇ります。 ②フッ素焼付塗装 フッ素焼付塗装は、超対候性があり、特に紫外線や雨風に強いので、家の外壁、消化器に使用されます。 建造物のLCC(ライフサイクルコスト)を削減出来る長所がありますが、価格が高く、 色のバリエーションが少ない点がネックになっています。 色のバリエーションの少なさをカバーするために、塗装会社では、木目・石目・テラコッタ壁専用の高温焼付け形フッ素樹脂塗料・PVDF樹脂(カイナー500)など、コーティング目的の焼付塗装を開発しています。 最近では住宅にガルバリウム鋼板を使いフッ素コーティングで仕上げる平屋もあります。 住宅に利用される様になった鋼板については、こちらで詳しく説明していますのでご覧下さい。 ⇒住宅にも使用されている!建築板金の特徴と活用部材6種を特集 ③粉体塗装 粉体塗装では、高分子ポリマーを原料とし、静電ガンで塗料を素材に直接電着させ焼き付けます。 有機溶剤を使わず、エコ塗料として近年浮上してきた方法で注目されています。 素材表面の静電処理を入念にしておかないと、塗布する作業員に塗料が付着するなど、 まだまだ課題が残る焼付塗装法ですが、用途も幅広く各塗装工場に広まりつつあります。 メラミン塗装が焼付塗装の中でも比較的安価であるのに対し、他の3つの焼付塗装は、歴史が浅かったり、塗装価格が高かったり、様々な障壁を生じることもあります。 焼付塗装は価格だけで決めることもできませんし、場所に応じたクオリティで選ぶ必要があります。 メラミン塗装の事例 引用元:アスクル メラミン塗装は、主に屋内で使うものや、OA機器に施されます。身近なものですと、オフィスの事務机の鋼メラミン塗装が挙げられます。 引用元:Panasonic Business こちらは、パナソニックの遠隔セキュリティシステム「みえますネット」で使われている、屋外カメラです。パソコンやスマホと連動して店舗やクリニック、駐車場のセキュリティを守るのに使われるものです。素材はアルミダイキャストで、シルバーのメラミン塗装が施されてます。 メラニン塗装ならMitsuri!1コ~お受けいたします! 焼付塗装が発明されて以来、塗装は防錆効果と対候性を持つ様になりました。 焼付塗装の市場では、有機溶剤を使用せず静電気で塗料を蒸着させる粉体塗料や、建物の美観とライフサイクルコストを両立させる木目フッ素焼付塗装も売り出されています。 他の焼付塗装が屋外使用を強みとする中で、メラミン塗装は屋内使用を強みとしています。メラミンそのものは、耐久性、耐酸性があり材料費が安く、幅広い分野で半世紀以上使用されています。 メラミン塗装は、長年愛用してきた書庫、学習机のリペイントに最適です。しかし、小ロットで工場に頼むのは気が引けるという方もいらっしゃるのではないでしょうか。 全国に協力会社250社以上持つMitsuriなら、リペイントやお客様のご依頼に添ったメラミン塗装が出来る塗装工場をお選び致します。この機会にどうぞご相談くださいませ。
過去の記事で、各塗装方法の特徴、メリット・デメリットを解説してきました。 ※気になる方は、こちらの記事をご覧ください。 こちらの記事では、実際に工場へ塗装を依頼する方法と、NG例を紹介します。 【6分でわかる】塗装の依頼方法 工場さんに塗装をお願いするときのコツを簡単に動画で解説しています! 6分程度でサクッと見れるので、お時間が無い方はぜひご覧ください! YouTubeにて、金属加工Mitsuriチャンネル運営中!こちらからご覧ください! 一言で「塗装」と依頼するだけでは見積がつきません。 下記の項目を埋めて、初めて見積や加工ができるようになります。 ①どの製品に塗装するのか図面を用意する ②個数 ③色を指定 ④艶の具合 ⑤塗装方法 ※指定なしでもOK ⑥用途 ①製品の図面を用意する サイズ・形状・材質がしっかり記載された図面を用意しましょう。 サイズ・形状により、用意する塗料の量が変わります。 材質により、塗装金額が変わる場合もございます。 また、塗装する際は吊り下げて塗装をすることが大半です。必ず吊り穴となる穴があるように設計しましょう。穴のない製品で塗装を依頼すると、工場から吊り穴の追加をお願いされることが大半です。必ずチェックしましょう! ②個数 個数が多ければ多いほど製品1個あたりの塗装費は安くなります。 さらに、用意するべき塗料の量も左右されるため、必ず記載しましょう。 ③色の指定 塗装できる色は様々で、原色のものもあれば調色してご希望の色に合わせることもあります。 「黒」や「白」というオーダーであればわかりやすいのですが、「緑」というオーダーであれば、工場も困ってしまいます。 例えば「緑」という色でもこのように様々な「緑」があります。どの「緑」かわかるように、予め色を細かく指定しましょう。 色の指定方法は大きく4つあります。 マンセル値で指定 マンセル値は、数字とアルファベットで色を表しています。 R(赤)、Y(黄)、G(緑)、B(青)、P(紫)、と基本の5色相とその中間色で計10色相をアルファベットで表します。中間色とはYRの場合はR(赤)とY(黄)の中間になるので、オレンジになります。 各色相は、主に2.5、5、7.5、10と数字を刻みます。 5Bあたりにつきましては、青緑色になっており、一般的に青と想像できる色とずれていますのでご注意ください。 また、明度と彩度も数字で表します。 明度は黒を0、白を10として11段階に分割しています。しかしながら、完璧な黒、完璧な白は再現できないため、0や10はなく、最も暗い黒で1.0、最も明るい白で9.5になります。 彩度は鮮やかさを0から14程度までの数値で表します。 白や黒といった無彩色に近い、色味の薄い色ほど0に近く、鮮やかな色ほど数値が大きくなります。最も鮮やかな色の数値は色相によって異なり、赤は14〜16程度ありますが、青は8程度になります。 ご希望の色の数値を確認したい場合は、マンセル値測定器を使うか、色見本から選択してみてください。 通称:「日塗工」の色見本帳から色を選択する 「日塗工」とは、一般社団法人日本塗料工業会の通称です。 色見本帳を見ながら色を選択できます。「色票番号」という各色をアルファベットと数字で組み合わせた番号で色を指定します。 1995年を境に色票番号の表記ルールが変わっています。現行の番号と表記が違う場合はご注意ください。 色見本帳は2年毎に最新版が発行されています。 こちらのページを書いた2022年4月ですと、最新版は2021年版になります。 また、色見本帳の有効期限は3年と設定されています。塗料の色にも色見本帳の色にも経年劣化があり、数年経てば原色を保っていることがありませんので、色の打ち合わせは最新版でのお話をおすすめします。 参考:一般社団法人 日本塗料工業会 色見本サンプルを工場に送る すでに塗装されたものを塗装工場に送り、同じような色に調色してもらえるよう塗装を依頼できます。 サンプルは見積依頼をする際に同意を得る前に送るのではなく、必ず工場の同意を得てから小さいサイズのものを送りましょう。 色にこだわりがない場合は… こだわりがない場合は、こだわりがない旨を伝えましょう。 ある程度色の希望を伝えつつ、下記のように伝えてみましょう。 例) 「白に近い色であれば大丈夫です。」 「鮮やかな青でお願いします。塗料はあり合わせのもので大丈夫です。ない場合は原色の青でお願いします。」 色の希望もない場合は、白・黒・ベージュから選択してみましょう。 この3色は、よく塗装される色です。そのため、塗料を在庫している可能性が非常に高いです。都度塗料を調達する必要がなくなる可能性が高いため、塗装費が他の色と比べて安価になる可能性が高いです。 どの色の指定方法も厳密にいえば、色の差が発生してしまいます。 複数の部品を塗装し、組付けして、色のわずかな差が気になるようでしたら、塗装のみ同じ塗装工場へ出せるように手配するのがオススメです。 ④艶の具合 色を選択したら次は艶です。 艶の具合は、艶あり・艶なし・半艶(五分艶)・〇分艶と指定します。 艶の有無は塗料に艶消し剤を入れて作っていきます。 そのため、艶ありより艶なしの方が艶消し剤を入れる段取り分高価になります。 艶の有無でも単価に差が生じますので、必ず指定しましょう。 ⑤塗装方法(指定なしでもOK) 様々な塗装方法があります。 各塗装方法やメリットデメリットはこちらの記事で解説しています。 吹付塗装、焼付塗装、粉体塗装、電着塗装など様々な塗装方法があります。 特に指定がない場合は一般的に吹付塗装か焼付塗装になります。 もし、シボ加工のように表面に凹凸を出すような特殊な塗装をご希望の場合は必ず記載しましょう。 対応可能な工場が限られてくる上に、通常の塗装より高価になります。 ⑥用途 簡単で構いませんので記載しましょう。 塗料にも屋内用と屋外用があります。それ以外にも用途別で塗料がラインナップされています。 屋内用か屋外用かだけでも記載しましょう。 塗装の依頼は、図面、個数、色、艶、塗装方法、用途の項目を揃えることでスムーズに依頼ができるようになります。 一つでも欠けてしまうと見積がつかなくなる可能性が高くなりますので、必ず依頼前に確認しましょう。 図番:ABC-333 個数:30個 色:2.5Y8/1.5 艶:艶あり 塗装方法:焼付塗装 用途:屋内用 図面に記載する箇所がない場合は、上記のように記載するとわかりやすくなります。 いかがでしたか? Mitsuriでは塗装も含めた金属加工を依頼できます。 見積依頼はこちらから!
塗装と聞くと、金属をはじめとするさまざまな物に色を塗り、見た目をキレイにするイメージがありますが、それ以外にも金属をコーティングすることで保護する役割を持っています。そのため、めっきと比較されることも少なくありません。 今回の記事では、塗装の特徴や種類、メリット・デメリットやめっきとの違いなどをご紹介します。金属製品を装飾したり、保護・防錆をしたりすることを目的に塗装を考えている方は、どういった種類の塗装をするのが適しているのかも含め、ぜひ参考にしてください。 塗装とは 塗装とは、物体に塗料を塗って塗膜を形成させることを言います。とりわけ、金属製品への塗装は、装飾に加え、コーティングによる保護を目的に用いられます。 特に、錆による劣化は金属の天敵となるため、水からの保護が欠かせません。他にも、汚れや油など、さまざまなものから守るための役割を持っています。 塗装の多くは常温・大気下で皮膜となる塗料を塗布することができます。一般的にはハケやローラーなどを用いて塗布する印象が強いですが、金属部品の加工にはさまざまな種類の塗装が存在しています。 塗装の種類 金属加工における塗装は、ただ単純に金属に色を塗れば良いというわけではありません。なぜなら、金属によって相性の良い塗装と相性の悪い塗装があるからです。 もし、適切な塗装方法を選択しなかった場合、せっかく塗った塗料がすぐに剝がれてしまい、見た目が悪くなるだけでなく、目的の「保護」の役割を果たせなくなってしまう可能性があります。そのため、製品をキレイに保つためには目的に合った塗装方法を選択肢することが重要と言えます。 下記は、金属加工における一般的な塗装の種類です。 溶剤塗装 溶剤塗装は、シンナーなどの有機溶剤に樹脂や顔料を混ぜた塗料を塗布する方法のこと。塗装の中で最もスタンダードな方法で、ハケやスプレー、ペイントローラーを使って物体に塗料を塗っていきます。 溶剤塗装は他に比べて塗料が安く、製品単価を下げられるメリットがあります。ただし、有機溶剤には中毒性があり、大気汚染などの危険性があるため取り扱い方法に注意が必要です。 ⇒溶剤塗装とは?特徴や粉体塗装との違いについて専門家が解説! 焼付塗装 焼付塗装は、塗料に熱を加え揮発させることで、乾いたときに硬化し、強度を高める塗装方法のことです。皮膜を硬化させるにあたって100度~200度を超える高温にする必要があります。 焼付塗装は製品と塗膜の密着性が高く、温度や湿度、風雨などに晒される屋外の環境下で高い効果を発揮できるため、自動車などのボディの下塗りにも用いられます。 メラミン、フッ素、アクリルと、焼付塗装にも大きく分けて3つの種類があり、それぞれに塗装温度や硬化、安全性などに違いがあるので、目的に応じて選択が必要です。 電着塗装 電着塗装は、塗料が入った液体の中に加工物を入れ電気を流すことで、塗料を加工物に付着させ、塗膜を形成させる方法です。 ハケやローラー、スプレーなどではムラができてしまいやすい、複雑な形状の素材にも均一な塗膜を形成させることができるほか、膜厚をはじめとする処理条件も管理しやすいため、大量生産に向いている塗装方法です。一方で、塗装をするために設備をはじめさまざまな準備が必要となるため、小ロットの生産には不向きと言えます。 静電塗装 静電塗装は、帯電した塗料を利用することで、静電気によって塗料が加工物に引き寄せられ、塗膜を形成する方法です。塗料を効率よく付着させることができ、均一で美しい仕上がりの塗膜になる特徴があります。 一方で、高電圧の作業が必要となるため、感電や火災などの事故が発生しないよう、十分に注意しながら作業を進める必要があります。基本的には手作業よりも産業用ロボットなどを用いたライン生産方式が適しており、自動車の車体や家電、OA機器などの塗装に用いられます。 粉体塗装 粉体塗装は、粉末状の塗料を静電気によって付着させた後、加熱溶解することで塗膜を形成する方法です。 他の塗装は一般的に液状の塗料が用いられますが、それに比べてより厚い塗膜を形成しやすい特徴があります。さらに、塗料の入れ替えがしやすく、吹き付けた後、飛散した塗料を回収・再利用しやすいため、高い塗料を無駄なく活用することができます。自動車や家電製品などのライン生産に多く用いられます。 塗装処理の工程 塗装は主に、前処理、調合、塗布、乾燥の4ステップに分かれています。これは、溶剤塗装から粉体塗装まで、まったく異なる塗料を用いても基本的に変わることはありません。 各工程において、どのような作業が発生しているのか、詳しく解説していきます。 1.前処理 前処理は、加工物に塗料をしっかりと密着させるための処理のこと。具体的には、材料表面の油や錆、異物などを取り除いてキレイにする作業のことです。 例えば、過去に塗られていた塗装や錆をやすりなどで削っていったんキレイにする作業も前処理のひとつです。もし、前処理をしないまま作業を進めてしまうと、せっかく塗った塗料が塗装後に剥がれやすくなるなど、不具合が発生しやすくなるため、塗装後の製品をキレイなまま長持ちさせるためにも重要な工程と言えます。 前処理は、研磨による機械的処理と、表面を皮膜で覆う科学的処理の2種類があります。目的や用途、加工物の状態などによってどちらをチョイスすれば良いかも変わります。 2.調合 調合は、塗料の準備の工程です。機能性を高めるために複数の塗料を混合したり、目的に合わせて色を調整したりするために、異なる塗料を調合することも少なくありません。また、塗装方法や作業環境に応じてシンナーの希釈剤を入れて塗料を調整することもあります。 エナメルをはじめとする顔料を含んだ塗料は沈殿している場合があるため、色むらをなくすためにしっかり撹拌して使用する必要があります。また、手作業で塗料を混合する場合、比率を間違えると乾燥不良や塗膜の欠陥が出る可能性があるため、正確な作業が求められます。 3.塗布 塗布は、製品に塗料を付着させる工程のことです。材料に応じて塗ったり吹き付けたり、上述した塗装方法を用いて加工物に塗膜を形成させます。また、目的に応じて下塗り、中塗り、上塗りなど、複数回に分けて塗料を塗布することもあります。 塗布工程は、仕上がりの見た目の美しさや均一性など、製品の品質に大きく影響するため、最も重要な工程と言えます。製品をキレイな状態で長持ちさせるためには、相性の良い塗装方法を選択し、適切に作業を進めることが大切です。 4.乾燥 塗料は乾燥することで塗膜の役割を果たす、いわゆるコーティングへと変化します。そのためには、常温乾燥、または加熱乾燥が必要です。 常温乾燥にも、何もせずに一定期間置いておく自然乾燥と、紫外線や電子線を照射して乾燥させる方法の2種類があります。また、加熱乾燥では熱風や赤外線、電磁誘導など、複数の乾燥方法が用いられています。 乾燥方法も、塗装の種類に適したカタチで行わなければ、穴があいてしまったり、硬化状態が悪かったりと、塗膜に欠陥が発生してしまう可能性があります。 塗装のメリット・デメリット 塗装には、めっきをはじめとする他の表面処理に比べたメリット・デメリットが存在します。 ●塗装のメリット 常温・大気下で塗布することができるため、汎用性が高い 塗装方法によっては現地で作業ができる 大きさに影響されにくく、大小さまざまなものに表面処理を施すことができる 金属だけでなく、ガラスやセラミック、木材などにも塗布できる 方法や塗料の種類が多いため、選択肢が多い 塗装の膜厚を薄いものから厚いものまである程度調整できる 塗り直しができる めっきに比べてコストが安い ●塗装のデメリット 製品と塗膜の密着性が他の表面加工に比べて高くない 作業者のスキルによって表面にムラが発生しやすい めっきに比べると強度が低く、損傷しやすい めっきに比べて剥がれやすい 塗装とめっきの違い メリット・デメリットから見ても分かるように、塗装は処理方法や効果の関係上、めっきと比較されがちです。これは、塗装とめっきがいずれも表面に膜を形成し、装飾性を高めつつ、加工品を保護する役割を持っているからです。 塗装に比べてめっきの方が高価な分、保護効果が高く長持ちします。一方、塗装はめっきに比べて剥がれやすい、損傷しやすいなどのデメリットはあるものの、塗り直しによって保護効果を再度高めることができるため、メンテナンスを加えることで長持ちさせることが可能です。また、めっきは取り扱う金属の種類やサイズ、環境などによって対応できない場合があり、塗装ほど汎用性に優れていません。 それぞれの特徴を詳しく理解した上で、どちらをチョイスした方が良いか判断したい場合は、下記記事でより詳しい情報をチェックしておきましょう。 ⇒めっきと塗装の違いは?それぞれの特徴、めっき塗装に関しても解説!
粉体塗装とは、パウダー状の塗料を金属に直接付着させて加熱し、乾燥させて固めることで塗膜とする塗装法です。 一般的な塗装に用いられる有機溶剤を全く使用しないため、環境や人体への影響が小さく、環境保全や健康増進への取り組みが強化されている現在、注目が集まっています。また、省資源性にも優れるほか、自動化しやすいという特徴もあります。これらの理由から、溶剤塗装からの転換が進んでおり、その市場は拡大しています。 この記事では、粉体塗装とは何かというところから、その方法や種類、特徴、メリット・デメリットまで、詳しく解説していきます。 粉体塗装とは 粉体塗装とは、パウダーコーティングとも呼ばれる、粉末状の塗料を用いる塗装のことです。細かく粉砕して粉状にした塗料(粉体塗料)を、塗装対象物に直接付着させ、高温で溶かしてから、乾燥させて固めることで塗膜を形成します。加熱して固化させることで塗膜を形成することから、焼付塗装の一種でもあります。 参考:焼付塗装ならMitsuri!1コ〜お受けいたします! 粉体塗料には、エポキシやポリエステルなどを含む熱硬化性のものと、ポリエチレンやナイロンなどを含む熱可塑性のものがあります。粉体塗料は、これら樹脂のほか、顔料、添加剤をパウダー状にしたものから構成されており、溶剤塗料や水性塗料の成分である有機溶剤や水などの溶媒は含みません。なお、ここでの添加剤とは、硬化剤や乾燥剤、消泡剤、フィラー(充填剤)などで、塗料の流動性・湿潤性の調整や塗料の脱気(空気を除去すること)などの機能を持ちます。 粉体塗装は、他の種類の塗装と同じく、塗装対象物の防錆や着色、耐候性向上、美観向上、機能性付与などが目的です。また、溶剤塗装に比べて、環境汚染や健康被害、火災などのリスクが低いため、溶剤塗装からの転換が進んでいます。 参考:溶剤塗装とは?特徴や粉体塗装との違いについて専門家が解説! 粉体塗装の方法 粉体塗装の方法には、静電粉体塗装法と流動浸漬塗装法があります。 ●静電粉体塗装法 参照元:粉体塗装とは? > 粉体塗装の紹介「塗装工程と塗装法」日本パウダーコーティング協同組合 静電粉体塗装法は、アースに繋げてプラスに帯電させた塗装対象物へ、スプレーガンにてマイナスに帯電させた粉体塗料を噴射することで、塗料を静電的に対象物へ付着させる方法です。 この塗装法では、一般的に熱硬化性粉体塗料を使用し、加熱によって架橋と呼ばれる化学反応を誘起することで硬い塗膜を形成します。一度硬化した塗料は、再度加熱しても硬いままで、軟化・流動することはありません。 この塗装法では、以下の工程に従って塗装を行います。 1. 前処理…油脂成分を除去するアルカリ脱脂処理や錆を落とす酸洗処理、薬液などを洗い流す水洗処理を実施する処理工程。塗装の密着性向上を目的としており、素材によっては、塗膜のさらなる品質向上のために化成処理なども行う。 2. 水切り乾燥…乾燥炉で塗装対象物に付着した水分を完全に除去する処理工程。ブリスター(塗装膜下に残存した水分によって生じる気泡)と呼ばれる外観不良の発生を防止する。 3. 粉体塗装…粉体塗料を静電引力によって対象物に付着させる処理工程。 4. 焼付乾燥…塗装対象物に付着した塗料を180~200℃の高温に加熱した焼付炉で焼き付け乾燥させる処理工程。 5. 冷却…冷却して塗膜を形成する処理工程。 静電粉体塗装法は、流動浸漬塗装法と比較すると、以下のような特徴を持ちます。 ・塗装対象物の形状やサイズに対してあまり制約がない。 ・均一な膜厚が得やすい。 ・膜厚の調節が可能(30〜150μm)。 ・電気を通さない素材には塗装できない。 参考:塗装前処理とは?目的や工程の流れについて専門家が解説! ●流動浸漬塗装法 参照元:粉体塗装とは? > 粉体塗装の紹介「塗装工程と塗装法」日本パウダーコーティング協同組合 流動浸漬塗装法は、事前に加熱した塗装対象物を、粉体塗料を圧縮空気によって流動させた流動浸漬槽と呼ばれる容器に入れることで、塗料を対象物の熱で溶かして付着させる方法です。 この塗装法では、一般的に熱可塑性粉体塗料が使用されます。熱可塑性粉体塗料は、加熱によって軟化・溶融して形状を変えることができ、冷却によって固化して塗膜とすることができる塗料です。化学変化を伴わないため、再度加熱して冷却すると、再び軟化・溶融して固化します。 この塗装の工程は、以下の通りです。 1. 前処理…塗装の密着性向上を目的に、脱脂処理や酸洗処理、化成処理、水洗処理などを行う処理工程。 2. 予備加熱…塗装対象物を塗料の融点以上の温度に予熱する処理工程。 3. 流動浸漬…予熱した対象物を流動浸漬槽に入れることで、粉体塗料を対象物に接触させて溶かし付着させる処理工程。 4. 後加熱…塗膜の平滑性向上を目的に、塗装対象物に付着した塗料を融点以上の温度に加熱する処理工程。 5. 冷却…冷却して塗膜を形成する処理工程。 流動浸漬塗装法は、静電粉体塗装法と比べて、以下のような特徴を持ちます。 ・塗装対象物のサイズが流動浸漬槽のサイズ以下に制限される ・塗装対象物が複雑な形状である場合、膜厚が不均一になりやすい。 ・厚膜が一度の塗装で得られる(200〜1500μm)。 ・厚膜の塗装が容易。 ・粉体塗料の回収装置が不要。 ・予熱を必要とする。 ・膜厚の調節が難しい。 ・電気を通さない素材にも塗装できる。 粉体塗装の用途 粉体塗装は、金属素材の製品を中心に、様々な分野で採用されています。 その使用分野は、下図に見られるように、金属家具や電気機器、建設・産業機械、機械・器具の割合が大きくなっています。 粉体塗装の具体的な使用例は、下表の通りとなっており、特に工業塗装に多く採用されています。 <粉体塗装の分野別使用例> 使用分野 使用例 金属家具 机, 椅子, 陳列棚, 書架, ロッカー, 業務用ワゴン, ベッド 電気機器 分電盤, 配電盤, ラジエーター, 柱上トランス, 電力計, 発電機, モーター, ガス給湯器 建設・産業機械 パワーショベル, フォークリフト, FA機器, 工作機械, 包装機, ボンベ, 農業機械 機械・器具 医療用品, 現像機, 精密機器, IT機器, 事務機 家電製品 レンジ, レンジフード, エアコン, 冷蔵庫, 洗濯機, 暖房機, ミシン, 照明器具, 電話機 道路資材 ガードレール, ガードパイプ, 橋梁手摺り, 欄干, 標識用ポール, 信号機, 照明柱 水道資材 鋼管, 鋳鉄管, 異形管, ニップル, 仕切弁, 継ぎ手, 水栓金具, メーター 建築資材 フェンス, 門扉, 手摺り, 面格子, 住宅鉄骨, シャッター, カーテン, ウォール, パーテーション, 雨樋金具, 鉄筋バー 自動車部品 ボディー, ワイパー, バンパー, スプリング, ホイール, ブレーキドラム, ブレーキパッド, オイルフィルター, エンジンブロック, ルーフレール, ドライブシャフト, トラック荷台部分, その他 農業資材, 家庭用品, 消火器, ガーデニング用品 粉体塗装の特徴 粉体塗装には、様々な特徴があります。ここでは、溶剤塗装や水性塗装と比較したときの粉体塗装の特徴について説明します。 参考:金属加工の板金塗装の見積りについて解説!塗装の種類ごとについてもご紹介! 塗膜の強度と耐久性が高い 粉体塗装は、塗膜の強度および耐久性が高いという特徴があります。 粉体塗装では、一度の塗装で厚膜の塗膜を形成することができます。その膜厚は、静電粉体塗装法で最大150μm、流動浸漬塗装法では最大1500μmにも達します。それは、一度の溶剤塗装による塗膜の厚さ約20μmと比較すると、数倍から数十倍の厚みに相当します。また、焼付塗装の一種であることから、塗膜自体の強度が高く、柔軟性にも優れます。 つまり、粉体塗装では、高強度で柔軟な分厚い塗膜が得られるのです。 従って、粉体塗装の塗膜は、傷が付きにくい上、温度・湿度変化が激しい環境でも、伸縮しやすいことにより、ヒビ割れや剥離などが発生しにくくなっています。それは、耐久性に優れ、寿命も長くなることを意味します。 塗膜の性能が高い 粉体塗装の塗膜は、耐食性や耐候性、耐薬品性などの性能にも優れます。 粉体塗装では、その塗装方法から、塗装ムラが起きにくく、ピンホール(塗装面に生じる小穴)も発生しにくい塗膜となります。さらに、塗膜が分厚く、高い強度と耐久性を持つことも相まって、塗膜下の金属が空気に触れにくく、降雨なども塗膜下に浸透しにくくなっています。 そのため、粉体塗装の塗膜は、防錆性能をはじめとする塗装対象物の保護機能を高いレベルで発揮するのです。 塗料に溶媒を含まない 参照元:粉体塗装について「粉体塗装(パウダーコーティング)とは?」有限会社シリウス 粉体塗料は、溶媒を含まないという特徴があります。 溶剤塗装や水性塗装の塗料は、顔料・樹脂・添加剤といった塗膜を形成する成分以外に、これらの成分を溶解または分散させるシンナーなどの有機溶剤や水分を含んでいます。これらの溶媒は、塗料を塗装対象物に接着する役割を持っており、焼き付けや乾燥などの過程で揮発します(上右図参照)。 一方、粉体塗料は、塗膜を形成する成分のみから構成されています。そして、塗装の際には、溶媒の代わりに電気や熱の効果を利用することで、塗装対象物に付着させているのです(上左図参照)。 塗料の回収・再利用が可能 粉体塗装では、塗装時に塗装対象物に付着しなかった塗料を回収して再利用することが可能です。 粉体塗料は、溶剤塗料の有機溶剤や水性塗料の水のような揮発成分を含まないため、熱影響を受けなければ、変質することはほとんどありません。そのため、静電粉体塗装で噴射した塗料も、流動浸漬塗装法で流動させた塗料も回収すれば、再度使用することができます。 その点、溶剤塗料や水性塗料は、溶媒が揮発すると塗料が変質してしまうことがあり、多くの場合、変質してしまった塗料は再度使用することはできません。しかし、塗料を調整して揮発性を低下させても、乾燥して硬化するまでの時間が長くなり、作業性が下がってしまいます。 塗料に揮発性有機化合物(VOC)を含まない 引用元:低VOC塗料の現状と今後「塗料からの溶剤(VOC)の蒸発」経済産業省 近畿経済産業局 粉体塗料は、大気汚染や健康被害の原因となる揮発性有機化合物(VOC)を全く含みません。 VOCは、揮発性を有し、大気中で気体状となる有機化合物のことで、溶剤塗料には20~60%、水性塗料には0~10%含まれている物質です。溶剤塗料には、塗料に対して5~50%がさらに投入され、希釈溶剤(シンナー)として使用されます(上図参照)。 その種類は、下表のように多様で、溶解する樹脂や用途に応じて塗料に混合されています。 <溶剤塗料や水性塗料に含まれる代表的なVOCの種類と性質・用途> VOCの分類 VOCの種類 性質・用途 アルコール系 メタノール, エタノール, イソプロピルアルコール(IPA), イソブタノール ラッカー塗料や添加剤などの溶解 ケトン系 アセトン, メチルエチルケトン(MEK), メチルイソブチルケトン(MIBK), シクロヘキサノン 樹脂を強力に溶解 エステル系 酢酸エチル, 酢酸ブチル 樹脂を比較的強く溶解 エーテル系 ブチルセロソルブ, ブチルカルビトール 焼付塗料の仕上り向上・水性塗料にも使用 炭化水素系 脂肪族系 ミネラルスピリット 樹脂を比較的弱く溶解 芳香族系 トルエン, エチルベンゼン, キシレン 多種類の樹脂を溶解、溶解性と乾燥性のバランスが良い 混合系 ソルベントナフサ 焼付塗料用 しかし、VOCは、以下のように大気汚染の原因となり、人体にも有害です。 ●大気環境への影響 VOCは、大気中に拡散されると、光化学反応などを起こして変質します。変質したVOCは、光化学スモッグの原因となるほか、浮遊粒子状物質(SPM)を生成して、目や呼吸器などに悪影響を及ぼし、喘息やアレルギー疾患のリスクを増大させることが知られています。 ●室内環境における人体への影響 VOCは、住宅の建材などから発生して、室内の空気を汚染し、シックハウス症候群や化学物質過敏症を引き起こすことがあります。 ●作業環境における人体への影響 VOCは、塗装に従事する作業者に下表のような様々な症状を引き起こすことが報告されています。ただし、近年においては、毒性の高いVOCの使用が制限されており、以前よりも塗料の安全性は確保されています。 <毒性の高いVOCによって引き起こされる症状> VOCの種類 急性毒性 慢性毒性 メタノール 粘膜刺激, 麻酔作用 咳, めまい, 頭痛, 嘔吐, 脱力感, 眠気, 不眠, 視力障害, 神経系障害 IPA 皮膚刺激, 粘膜刺激 眠気, 頭痛, 協調運動不能, 皮膚炎, 神経系障害, 腎臓障害, 血管障害, 肝臓障害, 脾臓障害 MEK 皮膚刺激, 粘膜刺激, 麻酔作用 呼吸器刺激, 咳, 息切れ, 頭痛, めまい, 視野狭窄, 嘔吐, 下痢, 意識喪失, 神経系障害, 腎臓障害 酢酸エチル 粘膜刺激 呼吸器刺激, 眠気, めまい, 咽頭痛, 咳, 頭痛, 意識混濁 トルエン 皮膚刺激, 粘膜刺激, 麻酔作用 咳, 咽頭痛, めまい, 意識混濁, 頭痛, 嘔吐, 意識喪失, 神経系障害, 腎臓障害, 肝臓障害 エチルベンゼン 皮膚刺激, 粘膜刺激 咳, めまい, 意識混濁, 頭痛呼吸器障害, 神経系障害 キシレン 皮膚刺激, 粘膜刺激, 麻酔作用 めまい, 意識混濁, 頭痛, 嘔吐, 呼吸器障害, 神経系障害 塗装に器具・設備が必要 粉体塗装は、静電粉体塗装法と流動浸漬塗装法の双方について、いくつかの器具・設備が必要です。 <静電粉体塗装法の器具・設備> ・浸漬方式の洗浄設備(洗浄槽など) ・粉体塗装ブース ・静電粉体塗装機(静電ガン、静電コントローラー、ホース類など) ・粉体塗料回収装置 ・焼付乾燥炉 ・防塵マスクや防塵ゴーグル、静電服、静電靴などの保護具 ・換気装置(塗装ブース用と建屋全体用の装置設置を推奨) <流動浸漬塗装法の器具・設備> ・浸漬方式の洗浄設備(洗浄槽など) ・流動浸漬槽 ・加熱炉 ・防塵マスクや防塵ゴーグル、静電服、静電靴などの保護具 ・換気装置(建屋全体用の装置設置を推奨) なお、静電服と静電靴は、静電気による粉体塗料の着火によって発生する粉塵爆発の防止に必要な保護具です。粉塵爆発を防止するため、機器類の接地が必須であり、静電気対策床の設置なども推奨されます。 現場施工が困難 粉体塗装は、以下の理由から、工場などで施工しなくてはならず、現場での施工は現状の方法ではできません。 ・据え置き型の設備が必要 ・前処理に確実な洗浄や乾燥が必要 ・塗装処理時に粉塵対策が必須 ・焼き付け温度が高く、炉での加熱や乾燥が必要 塗装作業の機械化・自動化に適している 粉体塗装は、工場での施工が標準的であることもあり、機械化や自動化に向いた塗装法です。 粉体塗装は、浸漬洗浄、炉での乾燥・加熱、静電引力や空気流動を利用した静電粉体塗装や流動浸漬塗装など、主要な処理工程の人手を排することが可能です。そのため、塗装対象物をフックに吊り下げるなどして、順番に洗浄槽、乾燥炉、塗装ブース、焼付乾燥炉と流していくことで、主要工程を完了させることができます。 粉体塗料の種類 粉体塗装では、様々な塗料が用いられますが、その塗料は、含有樹脂の熱に対する反応性から、熱硬化性粉体塗料と熱可塑性粉体塗料の2種類に分類されます。 熱硬化性粉体塗料 熱硬化性粉体塗料は、加熱によって架橋反応を誘起することで、硬化する塗料です。一度硬化した塗料は、再度加熱しても硬いままで、軟化・流動しないという特徴があります。主に静電粉体塗装法で用いられる粉体塗料です。 熱硬化性粉体塗料は、含有する樹脂の系統によって特徴や塗装条件が異なるため、用途に応じた塗料を選ぶことができます。 下表は、代表的な樹脂系ごとの塗装条件や特徴、用途をまとめたものです。 <代表的な熱硬化性粉体塗料の樹脂系ごとの塗装条件・特徴・用途> 樹脂系 焼付温度 焼付時間 特徴 用途 エポキシ系 130~200℃ 5~50分 高耐食性, 高耐薬品性, 高密着性, 高耐水性, 高硬度, 絶縁性 低耐候性 家電, 自動車部品, 上下水道管, 電気部品, 重電機器, 船舶, エポキシポリエステル系 150~200℃ 10~50分 高耐食性, 高作業性, 高加工性, 高経済性 低耐候性 鋼製家具, 家電, 自動車部品, 建築資材, 事務機器, 家庭用品, 電気部品 ポリエステル系 140~230℃ 5~60分 高耐候性, 高耐水性, 高作業性, 高加工性, 高経済性 家電, 自動車部品, 道路資材, 建築資材, 鋼製家具, 重電機器, 建設機械, 農機具, 家庭用品 アクリル系 150~200℃ 8~50分 高耐候性, 高耐汚染性, 高鮮映性, 低温硬化性 家電, 自動車部品, 道路資材, 建築資材 フッ素系 160~360℃ 15~30分 高耐候性、高耐光性、高耐薬品性, 高耐摩耗性、高耐熱性 高層建築外装, 工業用部品, 家電, 厨房器具 熱可塑性粉体塗料 熱可塑性粉体塗料は、加熱によって軟化・溶融して変形し、冷却によって固化する塗料です。化学変化を伴わないため、再度加熱して冷却すれば、再び軟化・溶融して固化するという特徴があります。主に流動浸漬塗装法で用いられる粉体塗料です。 熱可塑性粉体塗料もまた、下表のように、いくつかの樹脂系があります。 <代表的な熱可塑性樹脂の樹脂系ごとの塗装条件・特徴・用途> 樹脂系 予熱温度 後加熱温度 特徴 用途 塩化ビニル系 230~290℃ 200~320℃ 高耐候性, 高耐薬品性, 高耐食性, 高耐水性, 被覆性, 厚膜美装性 道路資材, 建築資材 ポリエチレン系 260〜320℃ 200〜320℃ 高耐食性, 高耐候性, 高耐水性, 高耐久性, 高耐摩耗性, 被覆性 家電, 上水道管, 建築資材, 道路資材, 重電機器, 家庭用品 ナイロン系 340〜430℃ 340〜370℃ 高耐油性, 高密着性, 耐摩耗性, 高耐衝撃性, 耐熱性, 絶縁性, 被覆性 家電部品, 自動車部品, 配管, 機械部品, 鉄道部材, 家庭用品, 医療機器, 飲料水容器 粉体塗装のメリット 上述したように、粉体塗装には他の塗装法とは異なる多様な特徴がありますが、ここではその中でもメリットとなる特徴について紹介します。 <塗膜について> ・塗膜の強度が高い ・塗膜の耐久性が高い ・塗膜の性能が優れる ・厚い塗膜の形成が可能 ・錆が発生しにくい <方法について> ・一度の塗装で厚い塗膜を形成可能 ・塗料の回収・再利用が可能 ・塗装環境(温度・湿度など)の影響を受けにくい ・塗料の焼付処理が短時間で済む ・塗装の機械化・自動化が容易 <塗料について> ・塗料に有機溶剤(VOC)を含有しない ・臭気がない(有機溶剤は臭気を放つ) <経済性について> ・塗料を無駄なく使用できる ・耐用年数が長い(15~20年) <安全性について> ・VOCによる大気汚染や健康被害については考慮不要 ・VOCによる火災の発生リスクがない 粉体塗装のデメリット 一方、粉体塗装には、以下のようなデメリットがあります。 <方法について> ・薄い塗膜の形成が困難(一般に30μm以上) ・焼付温度や予熱・加熱温度が高い ・塗装後に色の調整ができない ・色の微調整が難しい ・現場施工が困難 ・塗り替えが困難 <経済性について> ・塗装設備が必要であるため、初期投資が掛かる <安全性について> ・粉塵による健康被害のリスクがある ・粉塵爆発の発生リスクがある
ステンレス鋼は耐食性が高いですが、主に屋外で使用される場合は汚れ・水分・塩分の付着やもらい錆びで錆びることがあります。しかし、塗装することで耐食性の向上が図れるため、ステンレス鋼の表面処理として塗装が近年注目されています。需要を伸ばしているのは、メッキや化学発色に比べ塗装のコストが安いためです。ステンレス塗装は、耐食性などの機能性に加えて着色などによる意匠性もアップできるため、用途も多様化しています。 塗装が剥離しやすいステンレスに、耐久性のある塗装をするには、塗膜の密着性が必要で、塗装工程が重要です。 本記事では、剥離しにくいステンレス塗装を施すための工程からその効果、製品事例までをご紹介します。 ステンレスに塗装はできるのか 結論を言うと、ステンレスに塗装することは可能です。しかし、ステンレスにただ塗装を施すだけでは、剥離しやすい塗装になってしまいます。そのため、ステンレスは、塗装をする前に下処理をしなければならないのです。 それでは、ステンレスの塗装が剥離しやすい理由や下処理が必要な理由に加え、ステンレスに塗装は本当に必要なのかを紐解いてみましょう。 ステンレス塗装はなぜ剥離しやすいのか ステンレスは、鉄にクロム、種類によりニッケル・マンガンなどが含まれています。 例えば、一般的に金属加工によく用いられるステンレスのSUS304には、鉄の他にクロム18%、ニッケル8%が含まれています。SUS304のように、ほとんどが錆びやすい鉄でできているにも関わらず錆びにくいのは、ステンレスに含まれているクロムに秘密があります。 ステンレスに含まれるクロムは、酸素と結合して酸化クロムになり、ステンレス表面にnm(ナノメートル:1/1,000,000mm)という極薄い緻密な酸化被膜を形成して金属表面を覆っています。この表面を覆う酸化被膜が、周囲の気体や液体を金属から遮断して保護するため、防食性・耐食性が高くなり錆びにくいのです。 耐食性を高めるというメリットがある酸化被膜は、塗装する時には逆に付着性能を下げ、剥離しやすくするというデメリットになります。 そのため、ステンレスを塗装するためには、表面の酸化被膜を取り除く下処理が必要になってくるのです。詳しくは「ステンレス塗装の工程」で後述します。 ステンレスに塗装は必要なのか ステンレス表面を覆う酸化被膜は非常に薄い膜なので、強い酸やハロゲン系イオン、500℃を超える熱にさらされたり、電解質中で他の金属と接触したり、亀裂や傷が付いたりすることで、ステンレスも腐食することがあります。 そのため、ステンレス表面の被膜を厚くし、防食性・耐食性などを高める方法の一つとして、ステンレスに塗装する必要があるのです。 ステンレス塗装の工程 引用元:株式会社ケミコ―ト ステンレス塗装の一般的な表面処理であるリン酸亜鉛処理の工程は、上図の流れになります。これは、ステンレス塗装の一例ですが、素材加工したものを表面処理してから塗装します。剥がれにくい塗装を施すには、前処理の工程が欠かせません。 ステンレスの塗料は、焼付塗料と常乾塗料があり、それぞれ下塗り(プライマー)と上塗りをします。下塗り後に上塗りをすることで、塗料膜を厚く強固にし、耐久性アップが可能です。 上塗り用塗料には、メラミン樹脂塗料やアクリル塗料他、用途や機能性に合わせて色々選択できます。 参考記事 塗装前処理については、下記記事もご覧ください。 ⇒「塗装前処理とは?目的や工程の流れについて専門家が解説!」 前処理が必要な理由 ステンレスは、50%以上が鉄でクロムを10.5%以上含む錆びにくい合金です。ステンレスが錆びにくいのは、ステンレスに含まれるクロムが、金属表面に酸化物の皮膜を作り、空気や液体を防ぐ保護膜となり化学反応を妨げているからです。 この酸化物の皮膜のことを「酸化皮膜」、または「不働態皮膜」といいます。 一方、酸化皮膜はメリットもありますが、塗装にはデメリットをもたらすこともあります。塗装の付着を悪くし、塗装剥離の原因を作ることがあるからです。 剥離しにくい塗装をステンレスにするには、塗膜とステンレス表面の高い密着性が必要です。そのため、均一に覆っていない酸化皮膜や錆(酸化物)は、塗装の前処理で完全に除去しなければなりません。 これが、耐食性の高いステンレス塗装のために、前処理が必要な理由です。 塗装の表面処理 表面処理は、 塗装のために欠かせない前処理工程になります。塗装前の主な表面処理には、脱脂・水洗・表面調整・化成皮膜があります。それぞれの工程の種類や方法を解説します。 ●脱脂 脱脂は、防錆や加工のために金属表面に付いた油分やゴミを、きれいに除去するために行われます。金属の表面が塗装を弾き、塗装不良を起こさないようにするための処理です。 脱脂には、物理的方法と科学的方法があります。物理的な脱脂方法には、研磨剤を吹き付けるショットブラスト法と高温の蒸気を吹き付ける水蒸気法があります。 科学的な脱脂方法は、溶剤やアルカリ液、酸性液を使う方法です。ロットが少ない場合は溶剤脱脂、大ロットの場合は、アルカリ脱脂がおすすめです。 ●水洗 各工程の合間にある水洗は、前行程で使用した薬品等の残留物を十分除去してから、次の工程に移るための大切な工程です。水洗することで、次の工程の処理精度や薬品の処理効果を高めたり、加工時間を短縮したりします。 ●表面調整 加工によってできる金属表面のスケール(焼け)やキズは、ステンレスの耐食性や塗装剥離の要因になりやすいため、表面調整が必要です。表面調整は、皮膜化成(後述)の性能をアップし、処理時間の短縮をするための工程になります。特に電着塗装をする場合は、薄い均一性の高い化成皮膜を作ることが、耐食性を向上させる鍵になりますので重要です。 ●皮膜化成 引用元:有限会社ブレイヴオート 化成処理とは、金属の表面に化学反応を起こして皮膜を形成し、耐食性や塗装の密着性、意匠性などを高めるための処理です。素材の金属に、足りない性質を加えるための前処理になります。上画像は、右側のみ化成処理し、素材の表面にアンカーが立ったため、撥水性が無くなった状態です。化成皮膜処理は、このように液体を弾かなくすることができるため、ステンレス鋼の塗装に密着性を加え、剥離を防ぐことができます。化成処理には、クロメート処理・リン酸塩皮膜処理・黒染処理があります。 塗布型クロメートの場合は、処理液を塗布して乾燥し、金属表面にクロム酸クロムを主体とした皮膜を形成します。塗布型クロメート処理は、塗布して乾燥するだけで 水洗が必要ないため、重金属の排水が出ず、環境にも良い化成処理法です。 ステンレス塗装 ステンレス塗装には3種類ありますが、その中の焼付塗装を例に挙げます。ステンレスを焼付け塗装する工程は、1回の焼き付け塗装の場合、まず溶剤脱脂の前処理をした後、塗布型クロメート処理します。次に、下塗りプライマー、上塗り指定色を順にコートしていき、焼付けて乾燥させれば2Coat1Bake(ツーコートワンベイク)の完成です。 ステンレス塗装の種類について詳しくは、後述します。 ●下塗りプライマー 下塗りプライマーは、水性と油性があります。ステンレスの場合、下地の強化や密着力を求めるため、油性の下塗り剤が適しています。塗料の乾きが早いため作業効率は良いですが、においは強烈です。 表面強化に適した浸透性プライマーや防錆機能のあるプライマーもあります。 ●上塗り ステンレスの塗料には、焼付塗料と常乾塗料があります。それぞれ下塗りプライマーを塗布した後上塗りすることで、塗料膜を厚く強固にして耐久性をアップします。常乾塗料は、建材などの大きな制作物によく使われ、焼付け塗料は眼鏡やアクセサリーなどの宝飾品から工業製品まで対応できます。 焼付け塗装の上塗り塗料は、メラミン樹脂塗料、アミノアルキド樹脂塗料、ポリウレタン樹脂塗料、エポキシ樹脂塗料、アクリル樹脂塗料などがあります。 製品の大きさや用途に合わせ、最適な塗料を選ぶことが大事です。 ステンレス塗装の効果 ステンレス塗装の主な役割は、耐傷付き性・耐水性や耐紫外線性などの耐候性・耐食性・意匠性・機能性を与えることです。 耐摩耗性 塗装をすることで、ステンレスの表面に丈夫な皮膜を作り、傷がつくのを防いで保護します。 耐候性 耐候性とは、屋外の自然環境において、太陽光・温度・湿度・雨などに耐えられる性質を持っていることをいいます。劣化の要因となる光・水・熱を塗装で防ぐことで、製品の寿命を伸ばせるのです。耐水性や耐紫外線性なども、耐候性に含まれます。 耐食性 耐食性とは、腐食しにくい、さびにくい、酸化しにくいことです。塗装することで耐食性をアップし、さらに腐食に強いステンレスにすることができます。 意匠性 塗装による彩色で、美観やデザイン性を与えたり、ステンレスに暖かみなどの表情を与えたりします。これにより、ステンレス製品の用途を広げることが可能です。 機能性 ステンレス塗装の機能性には、光触媒・蓄光・遮熱・抗菌・防カビから、耐指紋性(指紋が付きにくい、取れやすい)など、多種多様な機能を持つ機能性塗料があります。 ステンレス塗装の種類 引用元:富士電装株式会社 ステンレス塗装の方法は大きく分けて、①樹脂塗装、②焼付塗装(上画像)、③電着塗装の3種類があります。 ①樹脂塗装 樹脂塗装は、自然乾燥で硬化する塗装法です。主な樹脂塗装に、常温~80℃ほどの低温で硬化するウレタン塗装がありますが、 樹脂の分子同士がウレタン結合するため密着性が良く、硬く耐酸性・耐アルカリ性に優れた膜が形成できます。 樹脂塗装は、主に焼付塗装できない製品に用いられ、プラスチック製品やアルミダイキャストなど、高温にすると不具合や変形、そりが起きる材料などの塗装に用いられます。 また、通常焼付塗装できる材料でも、焼付炉に入らない大物などを塗装する場合は、自然乾燥で硬化できる樹脂塗装をします。 ②焼付塗装 焼付塗装は、樹脂の塗膜に熱をかけて硬化させる塗装法です。焼き付ける温度は、100~200℃以上まで、塗料の種類により様々あります。アクリル樹脂塗料で、通常160~180℃で20~30分ほど焼き付けます。 ③電着塗装 焼付塗装の他に電着塗装がありますが、主流はカチオンになっています。「カチオン」とはプラス電荷をもった陽イオンのことで、マイナス電荷をもった陰イオンである「アニオン」と、磁石のようにプラスマイナスで引き合い、強く密着します。 この強い密着性を利用し、水溶性の塗料の中に塗装したい金属を浸け、電気を流すことで陽極にした塗膜成分(カチオン)を陰極にした金属表面(アニオン)に密着させるのが、カチオン電着塗装です。 ステンレス塗装の製品事例 ステンレス塗装の製品事例を5つご紹介します。 上水道のステンレス製配水池・受水槽の製品事例です。ステンレスは、耐久性・耐震性にも優れた性質を持つため、安全な飲料水の確保や緊急時のライフラインの確保に役立ちます。内部は塗装していませんが、屋外設置のため外回りに耐候性のある塗装をしています。 引用元:株式会社UACJ金属加工 厨房施設用のステンレスのパンチングかごの製品事例。材質はSUS304板厚t1.0mmです。 引用元:株式会社都留 屋外仕様ステンレス電源機器ケースの製品事例です。屋外設置のため、SUS304板厚t1.0mmに塗装とシルク処理(銘版印刷)を施しています。 引用元:株式会社都留 電力機器ケースの塗装の製品事例です。SUS304板厚t1.2mmにタレパン、ベンダー、溶接、スポット溶接し、塗装しています。屋外仕様のため、塗装を施しました。 引用元:株式会社 都留 ステンレスに粉体塗装を施した3つの製品事例。粉体塗装は、塗装膜が厚いことで、耐食性に強く劣化・変質しにくく、コスト削減および低公害塗装としておすすめの塗装法です。 引用元:ユニオン電装 ご紹介した製品事例のような剥離しにくいステンレス塗装を施すためには、前処理などの工程が大切です。塗装の効果にも様々あり、意匠性や機能性の進歩や技術開発で、さらに色々なニーズの多様化が見込めます。塗装で表面仕上げをすることで、数種の色調にできる上、安いコストでステンレスの制作物に意匠性や機能性をプラスすることができるからです。 ステンレスの塗装見積もりならMitsuriにおまかせを ステンレスは100%リサイクル可能なので、環境にも優しい金属として社会的にも注目度が高く、塗装の需要もさらに伸びていくことでしょう。 塗装のステンレス鋼板は、建築物の屋根用としてよく使われますが、デザイン性の高いステンレス製品への塗装も、日本全国に提携工場が140社以上あるMitsuriなら対応可能です!ぜひご相談ください。
本記事では、フッ素樹脂塗装について詳しく紹介していきます。メリットやデメリットのほか、意外と知らない耐用年数や塗装の色なども説明していくので、初めてフッ素樹脂加工に挑戦する人はぜひチェックしておきましょう。 フッ素樹脂塗装とは フッ素樹脂は、もともと1930年代にアメリカのデュポン社によって発見されました。「テフロン加工」という言葉を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか?フッ素樹脂はポリマー性の物質で、熱や化学薬品、日光に強いという特性を持っています。 炭素-炭素間結合の重合物を基幹として、周りをフッ素原子が取り囲む構造となっており、非常に安定しているのが特徴です。現在では20種類以上の品種が開発されており、非粘着性、低摩擦性などに特化した性質が付加されています。 フッ素樹脂加工は、一般的にはフライパンなどのテフロン加工で有名な加工技術です。具材がフライパンにくっつきづらくなるため、オムレツや肉料理などが簡単にできると人気です。フッ素樹脂塗装をした表面は油や水を弾き、汚れが付いても簡単に取れます。そのため、工業的機械の表面を塗装するのにも使用されています。 そして、フッ素樹脂は一般の塗料と同じようにスプレーで吹き付けることが可能です。そのため、フライパンなどの家庭用品から宇宙技術まで、幅広い分野で活用されているのです。 フッ素樹脂塗装のメリット 耐候性 屋外環境は、太陽光や紫外線、雨水、酸化、温度変化などが起こるため、さびや劣化が起こりやすいのが一般的です。しかし、フッ素樹脂で加工することにより、そういった環境から素材を守る効果が期待できます。 フッ素樹脂は日光に当たっても変質が少ないため、屋外で使用するものをコーティングするのによく使われます。また、アクリル樹脂やシリコン樹脂などと比べても格段に性能が良いのが特徴です。一度塗装すれば何年も持つため、高層ビルなどの大型の建築物にも役立っています。 美観の保持 フッ素樹脂加工は、建物や製品の美観を保つのに役立ちます。建物が経年劣化すると緑や茶色のカビ・藻が発生することがあり、外観を損ねてしまいます。しかし、フッ素樹脂には防カビ性が備わっているので、日の当たらない壁面なども美しく保つことができるのです。ただし、殺菌までの効果は期待できないため、定期的にメンテナンスする必要はあります。 現在では20年以上の耐用年数をもつ塗料も開発されており、外壁や屋根の美観を長く保つことができます。高層ビルなどの大型建築物で使われることが多いですが、一般の住宅にも徐々に使われはじめている手法です。 耐汚染性能 フッ素樹脂には、水と密着しやすい「親水性」という性質があります。建物の屋根にフッ素樹脂加工を施しておけば、表面に付いた汚れが自然に取れると人気です。外壁にフッ素樹脂加工がされていると、表面に親水性の塗膜が張っている状態になります。そのため、汚れとフッ素樹脂の間に自然に雨水が入り込み、何もしなくても美観が保たれるという仕組みになっています。 外壁のメンテナンス時には足場を組む必要があるため、費用が高額になったり工期が長かったりと面倒です。しかし、フッ素樹脂加工をしておくだけで外壁がきれいに保たれるので、省エネ・節約の観点からもおすすめです。 フッ素樹脂塗料のデメリット コストは高い フッ素樹脂は耐候性、防汚性などに優れ、建物や製品を長く使用する場合には欠かせない素材です。しかし、価格が高額になりがちな点がデメリットと言えるでしょう。一般的に、似たような性質の塗料における1㎡あたりの価格相場は、アクリル樹脂塗料1,500~1,800円、シリコン樹脂塗料 2,500~3,200円程度となっています。それに比べてフッ素樹脂塗料は4,000~4,500円と、かなりの差が付いています。そのため、現在では高級マンションやオフィスビルなどの施設で使われることが一般的です。 現在主流で使われているシリコン樹脂塗料も、最初の頃は非常に高額でした。後に企業努力やシェアの拡大により、価格が下がっていったという経緯があります。そのため、将来的にフッ素樹脂塗料のコストも下がる可能性が十分に考えられるでしょう。 参考記事 フッ素樹脂と性質の似ているアクリル樹脂の加工については以下の記事で詳しく解説していますのでご覧ください。 ⇒アクリル樹脂焼付塗装について【専門家が解説】製品事例も! フッ素樹脂塗装耐用年数について フッ素樹脂加工は、15~20年の耐用年数があります。ほかの塗料と比較してもかなり長く、大手メーカーもその品質を保証しています。何も問題が起きない場合、メンテナンス不要で建物や製品を保護してくれます。そのため、建物の外壁メンテナンスの頻度が減り節約につながります。 ここで、注意したいのがフッ素塗料を使用する箇所による耐久性の違いです。建物の屋根は最も紫外線を浴びる部分で、風雨にさらされることも多いです。そのため、外壁よりも早く劣化が進んでしまいます。同じフッ素樹脂塗料を使った場合、外壁が20年持っても屋根はそれよりも早く寿命になることがあるので、点検をこまめに行うなどで対応しましょう。 また、フッ素樹脂加工をすることで、建物や製品自体の耐用年数が上がるというわけではありません。もともと劣化が進んでいる建物にフッ素を塗ったからと言って、寿命が20年延びる効果は期待できません。フッ素樹脂はコストが高めなので、それよりも早く寿命がくる建物などに使用することは避けるべきです。 フッ素樹脂塗装の色 フッ素樹脂自体は、もともと乳白色の色味となっています。こちらの素材はフッ素原子を含むプラスチック原料で、PCTFE素材と呼ばれています。フッ素をコーティングする際には無色透明となるので、建物や製品の見た目を損なうことがありません。 また、製品によっては、黒、緑、茶色などさまざまなカラーがあります。フッ素樹脂塗料には非粘着性、耐腐食性などの特性を付加したタイプが開発されており、種類ごとに色味が異なります。自由に色調を変えることは難しいので、塗布する製品との相性を見て選びましょう。 フッ素樹脂塗装の業者選びはMitsuriにご相談を フッ素樹脂塗装は他の塗料に比べて耐用年数が長く、メンテナンスの頻度も抑えられることが大きな特長です。ただ、コストはそのぶん高くなりがち。メーカー選びもよく比較して選定する必要がありそうです。 メーカーを選ぶ際には、ぜひMitsuriにご相談ください。日本全国で100社以上のメーカーと提携しているため、きっとご希望に沿うメーカーが見つかるでしょう。ぜひお気軽にお問い合わせください。
皆さんは「エポキシ塗装」についてご存知でしょうか? あまり聞きなれない塗装方法だと思う方もいらっしゃるかと思います。しかし、これは金属加工においてはメジャーな塗装方法のひとつで、私たちの普段の生活にとても関わりの深い塗装方法のひとつです。 「エポキシ塗装って何?」 「エポキシ塗装ってどんな特徴があるの?」 「エポキシ塗装した製品ってどんなものがあるの?」 本記事ではこのようなお悩みを解決します! 今回は、エポキシ塗装について、その特徴や製品例を詳しくご紹介します。エポキシ塗装についてご存知でない方も、本記事を読み終わる頃にはきっと理解していただけるかと思います。 これからエポキシ塗装の依頼を頼もうと考えている方は、是非ご一読下さい。 エポキシ塗装とは? エポキシ塗装とは、「エポキシ樹脂塗装」とも呼ばれており、文字通りエポキシ樹脂塗料を使用して行われる塗装方法のことです。 エポキシ塗装を説明するために、まずはエポキシ樹脂について詳しく説明します。 エポキシ樹脂とは、簡単に説明すると「プラスチック素材」のことです。プラスチック素材の代表的な例には、洋服等に使われる「ポリエステル」やスーパーのポリ袋に使われる「ポリエチレン」などが挙げられます。エポキシ樹脂もプラスチック素材の一種です。 プラスチック素材と一言で言っても、それぞれの素材により特徴は異なります。まず、プラスチック素材には、大きく分けて2つの種類があります。 ①加熱して溶かした後、冷却して形にする熱可塑性(ねつかそせい)プラスチック ②液体状の樹脂を加熱して硬化させる熱硬化性(ねつこうかせい)プラスチック エポキシ樹脂は、「②熱硬化性プラスチック」に分類されます。 熱硬化性樹脂の特徴は、塗料や接着剤としての用途が中心であることです。特にエポキシ樹脂は、その優れた耐水性や耐溶剤性、耐腐食性を生かした場所への塗装剤、または接着剤として使用されています。また、エポキシ樹脂は優れた絶縁性(電気を通さない性質)がありパソコンやプリンターなどの電子部品にも使用されています。 このようなエポキシ樹脂の特性を活かしたものが「エポキシ塗装」です。 エポキシ塗装は身近なところであれば、飲料用の缶の内側、自動車の防食用として用いられています。また、接着性が強いため、金属だけでなくガラス、木材など様々な素材への塗装が可能です。 ちなみに エポキシ樹脂の歴史は比較的浅く、エポキシ樹脂は、1938年スイスのピエール博士によって発見されました。そこから、スイスのチバ社によって特許が買い取られ、1948年に工業用として使用が開始されたという歴史があります。それ以来、工業用材料として日本だけでなく、世界中で使用されています。 エポキシ塗装の特徴 エポキシ塗装には以下4つの特徴があります。 耐食性 耐溶剤性 耐光性 価格 それぞれの特徴について詳しく説明します。 1.耐食性 耐食性とは簡単に言うと「錆びにくい特性」のことです。エポキシ塗装は、水分を通さないのはもちろんのこと、同時に酸素を通さない性質があるため錆などの腐食予防に優れています。 身近なところであれば、この性質を活かし、海水にさらされる船や釣り竿などに使用されます。 2.耐溶剤性 耐溶剤性とは、物質が溶剤に浸っている状態でも、変形・変化がしにくい性質のことをいいます。つまり、エポキシ塗装は物を溶かす薬剤(硫酸や塩酸など)に強いということです。 その性質を利用して、濃硫酸など溶かす力の強い薬品を入れるタンクの内側の塗装として用いられます。 3.耐光性 耐光性とは、紫外線耐性のことで、唯一のエポキシ塗装の短所ともいえる点です。塗装面に紫外線が当たると短期間で劣化してしまうので、太陽光などが照射される場所に利用する場合は紫外線を防止する塗装をトップコートとして併用する等で防止しなければなりません。これがコスト加算にも繋がるので利用する場所をよく確認してから塗装施工すべきです。 4.価格 エポキシ塗装は、他の塗料(樹脂)を使用する塗装方法よりも高価になりがちです。その理由は、耐食性・耐溶剤性など他の塗料(樹脂)よりもかなり優れた性質を持っているためです。 一方エポキシ塗装は単価は高いものの、費用対効果は高いため、維持費や管理費がかかりづらく、トータルコストを下げることが可能です。そのため、エポキシ塗装の需要は高いです。 エポキシ塗装の製品事例 エポキシ塗装の製品事例を、実際の製品の写真と併せて紹介していきます。 エポキシ塗装の作業風景 引用元:株式会社新免鉄工所 エポキシ樹脂を使用した塗床・床塗装(物だけでなく床にもエポキシ塗装は施されます) 引用元:株式会社愛知レジン エポキシ塗装を依頼する前に エポキシ塗装に限らず、塗装の依頼をスムーズに行うためのポイントを説明しています。是非動画を見ながら依頼をしてみてください! https://youtu.be/z4mbQJKqutA 【6分でわかる】塗装の依頼方法【金属加工】 まとめ 今回はエポキシ塗装についてご紹介しました。 エポキシ塗装は金属加工メーカーによって仕上げや価格が違うこともあるため、依頼する際は十分に調べてから依頼することをおすすめします。また、エポキシ塗装の依頼ができないメーカーもあるため、注意が必要です。 この記事を読んで、今までエポキシ塗装について知らなかった方や、知っていても疑問が残っていた方のお役に立てれば幸いです。 また、エポキシ塗装についてお悩みの時は、ぜひMitsuriをお使いください! MitsuriではWEB上で見積依頼から加工依頼まで完結できるサービスを提供しております。図面を登録すれば、加工できる業者から見積が届きます。
自動車、鉄道、飛行機など乗り物や、建造物には何故塗装が施されているのでしょうか。それは、錆を防ぎ美観を守るためです。塗装は、ものの外観、外見を整えるだけでなく、サビなど素材の変質を防ぐ役割をしています。そのため、屋外で使う塗装は、対候性が高く、屋内で使用する塗装は美観に重点を置いています。 私たちの身の回りにあるもの、机、整理棚、パソコンなどのOA機器は、メラミン塗装と呼ばれる焼付樹脂塗装を施されています。 今回は、主に屋内で使用する機材に使われるメラミン塗装と他の焼付塗装の違い、メラミンの歴史、メラミン塗装の事例について詳しく説明させて頂きます。 メラミン塗装とは? メラミン塗装は焼付塗装の一種で、二つの樹脂を合成するした塗料を使うことから、合成樹脂焼付塗装と呼ばれています。塗料は熱で硬化するアミノ系メラニン樹脂と、ポリエステル系樹脂アルキド樹脂を合成したものです。メラミンは、アミノ系樹脂の名前です。 100℃以上の高温で焼き付ける樹脂塗装の中でも、比較的安価で、耐水性、耐酸性がある上、色が長持ちするので、事務機器、パソコン、整理棚など屋内で使うものの塗装として利用されます。ツヤ加減の種類も、ツヤなし、3分ツヤ、5分ツヤ、全ツヤがあります。市場に出回るメラミン塗装製品の多くは5分ツヤです。 メラミン樹脂の歴史 メラミンというと、私たちの生活に全く馴染みがないと思いますが、”プラスチック容器”、というと、皆さんの生活に馴染みがあるでしょう。これらはメラミンから出来ているのです。 メラミンを開発したのは、米国の科学者で、デュポンの研究員の、ウィリアム・タルボットでした。タルボットが、デュポンに在籍していた1930年代は、社内でポリマー商品開発が 進んでおり、軽くて丈夫な食器の材料としてメラミン樹脂を開発されたのです。 腕を買われたタルボットは、デュポンからインク会社サン・ケミカルカンパニーのディレクターにヘッドハンティングされ、’45年にOSS(現在のCIA)に移籍しました。 OSSのディレクター時代の1947年(昭和22年)、当時デュポンが買収していたGMのアルキド樹脂を使い、メラミン樹脂塗装の元となる、アミノアルキド樹脂を開発しました。 焼付塗装とは メラミン塗装を含む焼付塗装は、熱で硬化する塗料を使い、120℃~200℃の熱を塗布面に20~30分間あて、塗料を硬化、蒸着させる塗装法です。鉄、ステンレス、真鍮、鉛、アルミダイキャストなど、熱に強い素材に、日光や雨風、サビに弱い金属の美観を整える目的で塗装されます。粗熱がとれるとすぐ、次の作業工程に移れるのが焼付塗装の長所です。 参考 焼付塗装については、以下で詳しく説明していますので、こちらを御覧ください。 ⇒焼付塗装ならMitsuri!1コ〜お受けいたします! 焼付塗装は、自動車をはじめとする工業用塗装として世間に知られています。 100℃を越える高温で塗料を素材に蒸着させるので、樹脂系の素材には使用できません。ABC樹脂、ナイロン、ポリカーボネイト、塩化ビニール、パテづけで形を整えた電車にはウレタン塗装を施します。 屋外で主に使用される焼付塗装 信号機や建造物など屋外で使用される焼付塗装には、以下の3つの塗装方法があります。 ①アクリル塗装 無色透明のアクリル樹脂を使い、140℃~180℃の高温で焼き付け、20分加熱乾燥します。 透明の樹脂に色付けするので用途は広いですが、非常に高温なので、どこの業者でも扱っているとは限りません。瞬間湯沸かし器、ガスレンジ、自販機、空調、電車内装、自動車部品、ブラインドなど、幅広い用途で使用される上、メラミン塗装よりワンランク上の耐久性を誇ります。 ②フッ素焼付塗装 フッ素焼付塗装は、超対候性があり、特に紫外線や雨風に強いので、家の外壁、消化器に使用されます。 建造物のLCC(ライフサイクルコスト)を削減出来る長所がありますが、価格が高く、 色のバリエーションが少ない点がネックになっています。 色のバリエーションの少なさをカバーするために、塗装会社では、木目・石目・テラコッタ壁専用の高温焼付け形フッ素樹脂塗料・PVDF樹脂(カイナー500)など、コーティング目的の焼付塗装を開発しています。 最近では住宅にガルバリウム鋼板を使いフッ素コーティングで仕上げる平屋もあります。 住宅に利用される様になった鋼板については、こちらで詳しく説明していますのでご覧下さい。 ⇒住宅にも使用されている!建築板金の特徴と活用部材6種を特集 ③粉体塗装 粉体塗装では、高分子ポリマーを原料とし、静電ガンで塗料を素材に直接電着させ焼き付けます。 有機溶剤を使わず、エコ塗料として近年浮上してきた方法で注目されています。 素材表面の静電処理を入念にしておかないと、塗布する作業員に塗料が付着するなど、 まだまだ課題が残る焼付塗装法ですが、用途も幅広く各塗装工場に広まりつつあります。 メラミン塗装が焼付塗装の中でも比較的安価であるのに対し、他の3つの焼付塗装は、歴史が浅かったり、塗装価格が高かったり、様々な障壁を生じることもあります。 焼付塗装は価格だけで決めることもできませんし、場所に応じたクオリティで選ぶ必要があります。 メラミン塗装の事例 引用元:アスクル メラミン塗装は、主に屋内で使うものや、OA機器に施されます。身近なものですと、オフィスの事務机の鋼メラミン塗装が挙げられます。 引用元:Panasonic Business こちらは、パナソニックの遠隔セキュリティシステム「みえますネット」で使われている、屋外カメラです。パソコンやスマホと連動して店舗やクリニック、駐車場のセキュリティを守るのに使われるものです。素材はアルミダイキャストで、シルバーのメラミン塗装が施されてます。 メラニン塗装ならMitsuri!1コ~お受けいたします! 焼付塗装が発明されて以来、塗装は防錆効果と対候性を持つ様になりました。 焼付塗装の市場では、有機溶剤を使用せず静電気で塗料を蒸着させる粉体塗料や、建物の美観とライフサイクルコストを両立させる木目フッ素焼付塗装も売り出されています。 他の焼付塗装が屋外使用を強みとする中で、メラミン塗装は屋内使用を強みとしています。メラミンそのものは、耐久性、耐酸性があり材料費が安く、幅広い分野で半世紀以上使用されています。 メラミン塗装は、長年愛用してきた書庫、学習机のリペイントに最適です。しかし、小ロットで工場に頼むのは気が引けるという方もいらっしゃるのではないでしょうか。 全国に協力会社250社以上持つMitsuriなら、リペイントやお客様のご依頼に添ったメラミン塗装が出来る塗装工場をお選び致します。この機会にどうぞご相談くださいませ。