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【金属加工 Mitsuri】見積から発注までWEB完結!
今回は、亜鉛めっきの特徴や種類について解説します。亜鉛めっきは、鋼材の表面に亜鉛の皮膜を形成し、耐食性を得ることを指します。しかし、一口に亜鉛めっきと言っても、大きく分けて「電気亜鉛めっき」と「溶融亜鉛めっき」の2種類があり、それぞれで特性に違いがあります。亜鉛めっきとは亜鉛めっきとは、電気の作用で亜鉛をめっきしたり、溶融させた亜鉛に浸漬させて、鋼材をめっきしたりする手法のことです。亜鉛めっきを施した鋼材は、表面が銀白色の外観になり、錆びや腐食を防止できるようになります。亜鉛めっきの特徴亜鉛めっきは、主に鉄製品に対して処理を行います。亜鉛めっきを施すと、めっきの表面に不働態皮膜が形成されます。不働態皮膜とは、めっき層と鉄の素地に空気や水が侵入を防止し、錆びを生じにくくする皮膜のことです。引用元:日本溶融亜鉛鍍金協会 溶融亜鉛めっきとは不働態皮膜があると、犠牲防食作用と呼ばれる反応が得られます。犠牲防食は、表面に傷が付いて素地の鉄が露出した場合でも、周囲の亜鉛が鉄より先に溶け出して電気科学的に保護し、鉄の腐食を保護します。亜鉛めっきの種類亜鉛めっきは大きく分けて「電気亜鉛めっき」と「溶融亜鉛めっき」の2種類があります。電気亜鉛めっき引用元:三和メッキ工業株式会社 亜鉛めっき電気亜鉛めっきは、鉄素地を亜鉛めっき液に浸してから、電気を通すことで亜鉛めっきを施す手法です。亜鉛めっき液中でプラス極にある亜鉛が電気の作用で溶解し、マイナス極である鉄に亜鉛皮膜を析出します。ただし、電気亜鉛めっきだけでは、亜鉛めっき皮膜が酸化し、腐食してしまう恐れがあります。そのため、一般的に亜鉛めっき皮膜の上にクロメート処理を施して、より亜鉛めっき皮膜の耐食性を向上させる場合が多いです。また、クロメート処理を施した場合は、導電性も高くなる傾向にあります。クロメート処理は、光沢クロメート(ユニクロ)・有色クロメート・黒色クロメート・三価クロメートなどがあり、種類によって異なる外観と特性が得られます。電気亜鉛めっきは、溶融亜鉛めっきに比べて膜厚が薄いため、自動車部品やコンピュータ部品のような精密機器に採用されることが多いです。参考:ユニクロめっきとは!?亜鉛めっき/クロメートとの違い参考:電気亜鉛めっきとは【3分でわかる】専門家がわかりやすく解説します!溶融亜鉛めっき引用元:マルコ工業株式会社 溶融亜鉛メッキ溶融亜鉛めっきは、高温で溶かした亜鉛の槽に鋼材を浸漬させた後、冷却することで亜鉛めっきを施す手法です。その手法の様子から、別名「ドブ漬けめっき」とも呼ばれています。溶融亜鉛めっきは、塗装や電気めっきと異なり、亜鉛と鉄素地から形成される合金層が、亜鉛と鉄素地を強く結合するため、めっきが剝がれにくく、長期間耐食性が持続します。このことから、建築物やガードレールなどの幅広い用途で活用されています。また、溶融亜鉛めっきは、電気亜鉛めっきのようにクロメート処理を必要としません。溶融亜鉛めっきは、大きな製品の処理に適していますが、高温のめっき液に浸漬させるので、材料が反りやすくなります。加えて、膜厚が電気めっきよりも厚くなるので、精密部品への処理には適していません。参考:溶融亜鉛メッキとは?特徴、規格、加工工程を解説
今回は、無電解ニッケルめっきの原理、用途、特性、メリット・デメリットについて解説します。無電解ニッケルめっきは、電気を使わずに化学的還元作用を利用してニッケル金属の皮膜を形成する手法を指します。似たものに電気ニッケルめっきがありますが、無電解ニッケルめっきと、処理の方法だけでなく、成分や特性についても違いがあります。参考:ニッケルめっきとは?種類や特徴、メリット・デメリット無電解ニッケルめっきとは?引用元:株式会社センショー 無電解ニッケル無電解ニッケルめっきとは、電気ではなく、化学的還元作用にて材料にニッケル金属の皮膜を形成する手法のことで、別名「カニゼンめっき」や「化学ニッケル(化学Ni)」とも呼ばれています。無電解ニッケルめっきは、一般的にリンを含有しています。膜厚を均一にしやすい特徴があり、複雑な形状や寸法精度を要する製品に適しています。無電解ニッケルめっきの原理引用元:アルファメック株式会社 無電解ニッケルめっきとは無電解ニッケルめっきにおける、ニッケルの析出には、めっき液中のニッケルイオンと電子が必要です。無電解ニッケルめっきは、主に還元剤である次亜リン酸塩が添加されており、分解された次亜リン酸から発する電子が、ニッケルの析出に利用されています。還元されて析出したニッケルは、還元剤の分解触媒として作用し、めっき表面で連続的に分解反応とニッケルの析出を行います。この仕組みを「自己触媒還元めっき」と呼びます。無電解ニッケルめっきの用途無電解ニッケルめっきは、以下のような用途で使用されています。<無電解ニッケルめっきの用途>使用目的製品耐食性、耐摩耗性反応槽、輸送管、パイプ、ポンプ、金型自動車部品、船舶部品、航空部品はんだ付け、耐食性、導電性付与接点、シャフト、抵抗体サーミスタ、ディスク耐食性、硬さ、精密性、耐摩耗性ピストン、軸、シリンダー測定装置、変速機耐食性、非磁性、硬さ時計、カメラ、電子顕微鏡等の部品耐食性、耐摩耗性、硬さ金型、事務機、船舶航空、原子力等の部品無電解ニッケルめっきの分類無電解ニッケルめっきは、還元剤の種類により、ニッケル-リン系とニッケル-ホウ素系があります。ニッケル-リン系は細かく分けると「低リンタイプ」「中リンタイプ」「高リンタイプ」の3種類があります。低リンタイプ低リンタイプは、1~4%程度のリンを含有する無電解ニッケルめっきです。他の種類に比べて700Hvと硬度が高く、耐摩耗性と耐アルカリ性に優れていますが、耐食性は劣ります。中リンタイプ中リンタイプは、5~10%程度のリンを含有する無電解ニッケルめっきです。一般的に採用されることの多い種類で、無電解ニッケルめっきと言えば中リンタイプを示す場合が多くあります。通常は非磁性ですが、熱により磁性を示します。また、耐食性・耐摩耗性や各物性のバランスも他の無電解ニッケルめっきと比べて良好で、汎用性に優れています。高リンタイプ高リンタイプは、11~13%程度のリンを含有する無電解ニッケルめっきです。耐食性に優れているものの、はんだ付け性に劣ります。また、結晶構造が非晶質で、通常時および比較的高温で熱処理した状態でも非磁性を示します。他のめっき種類に比べて光沢が少ないのも特徴です。無電解ニッケル-ホウ素めっき無電解ニッケル-ホウ素めっきは、ホウ素を0.2~1.0%程度含有する無電解ニッケルめっきです。はんだ付け性や硬度に優れています。また、400℃程度の熱処理では、変色しない特徴があります。ただし、めっき液が高価のため、他の種類に比べて処理コストがかかります。無電解ニッケルめっきのメリット●耐食性の向上無電解ニッケルめっきは、一般的に電気ニッケルめっきよりも耐食性に優れています。数%のリンを含有し、リンの含有率が多いほどピンホールが少なくなり、耐食性が向上します。●均一な膜厚が得られやすい電気ニッケルめっきは、めっきする製品に対して、電気が弱くかかる部分と強くかかる部分に分かれてしまうので、均一な膜厚になりにくい特徴があります。一方で、無電解ニッケルめっきは、電気を使わずに化学的還元作用にて材料をめっきする手法のため、膜厚が均一になりやすいメリットがあります。●非金属材料にも対応可能無電解ニッケルめっきは、電気を使わないめっきなので、樹脂やセラミックなどの不導体に対しても対応が可能です。●電気ニッケルめっきと比べて耐摩耗性に優れる電気ニッケルめっきの硬度は、ビッカース硬さで200Hv程度、熱処理で500Hv程度の値です。一方で無電解ニッケルめっきの硬度は500Hv程度あり、熱処理を行うと最高1000Hv程度までの硬さが得られます。無電解ニッケルめっきのデメリット●電気ニッケルめっきに比べてコストが高い無電解ニッケルめっきは、電気ニッケルめっきに比べて材料費が高いほか、めっきの析出速度も遅いので、コストが高くなる傾向にあります。●めっき液の管理が難しい無電解ニッケルめっきは、電気ニッケルめっきに比べて浴組成の変動が大きく、扱いが難しいので、技術や知識を要します。無電解ニッケルめっきの特性機械的特性無電解ニッケルめっきは、硬度が高く、耐摩耗性に優れています。また、ねじを締め付ける際に摩擦の熱で溶着してしまう「かじり」についても防止する効果が期待できます。無電解ニッケルめっきの種類ごとの硬度については以下の通りです。<無電解ニッケルめっきの種類別硬度>めっき種類低リン中リン高リンホウ素硬度Hv熱処理前700550500780400℃,2h10009509501000引用元:ヱビナ電化工業株式会社 無電解ニッケルめっきには、どの様な種類がありますか?化学的特性無電解ニッケルめっきは、種類によって良好な耐食性、耐酸性、耐アルカリ性の特性を有しています。以下の表は、リン含有量による化学的特性の違いを示したものです。<めっきのリン含有別化学的特性>めっき種類低リン中リン高リン耐食性(塩水噴霧)やや劣る良好普通~良好耐酸性劣る普通良好耐アルカリ性良好普通劣る引用元:アルファメック株式会社 無電解ニッケルめっきとは電磁気的特性無電解ニッケルめっきは、導電率(比抵抗)、接触抵抗、磁性(非磁性)、電磁波防止の特性を有しています。めっきの種類による磁性の有無と、比抵抗の値については以下の通りです。<めっきの種類別比抵抗(導電率)と磁気特性>めっき種類低リン中リン高リンホウ素比抵抗 μΩ・cm30~6060~75150~2005~6磁気特性熱処理前磁性非磁性非磁性磁性280℃,2h磁性磁性非磁性磁性引用元:ヱビナ電化工業株式会社 無電解ニッケルめっきには、どの様な種類がありますか?光学的特性無電解ニッケルめっきは、めっきの処理液の違いにより、光沢が出るタイプと出ないタイプがあります。光を反射させたくない医療機器や光学機器などでは、光の反射率が低い黒色無電解ニッケルめっきが採用されることもあります。熱的特性無電解ニッケルめっきは、良好な耐熱性、熱伝導性、はんだ付け性の特性を有しています。以下の表は、無電解ニッケルめっきの中リンタイプの融点、熱伝導度、膨張係数を示したものです。融点熱伝導度膨張係数890℃0.0105cal/cm/s/℃13×10-6cm/cm/℃引用元:アルファメック株式会社 無電解ニッケルめっきとは電気ニッケルめっきとの違い無電解ニッケルめっきと電気ニッケルめっきは、めっき方法、皮膜成分、物性に違いがあります。●めっき方法の違い電気ニッケルめっきは、名前の通り電気を使ってめっき皮膜を形成する手法です。浴管理は無電解ニッケルめっきに比べて比較的容易のため、金額も安価な傾向にあります。しかし、電流分布によりめっきの厚みが変わるので、無電解ニッケルめっきと違って均一にめっきを付けるのが困難です。無電解ニッケルめっきは、化学反応にてめっきを施すため、均一にめっきを付けることが可能です。複雑な形状の製品に対してもめっきしやすい特徴があります。ただし、めっきの析出速度が遅い、浴管理が難しいなどの難点もあり、コスト面で電気ニッケルめっきに劣ります。●皮膜成分の違い電気ニッケルめっきは、およそ99.5%以上がニッケルでできているので、純ニッケルめっきとも呼べます。一方で無電解ニッケルめっきは、ニッケル90~95%、リン5~10%程度の割合でできた合金めっきになります。そのため「ニッケル-リン合金めっき」と呼ばれることもあります。●物性の違い無電解ニッケルめっきと電気ニッケルめっきの物性の違いは以下の通りです。<無電解ニッケルと電気ニッケルの物性の違い>性質無電解ニッケル(Ni-P 中リンタイプ)電気ニッケル組織非結晶性(熱で結晶)微結晶性融点890℃(P;9%)1450℃電気抵抗60μΩ/cm(熱処理400℃で1/3に低下)約8.5μΩ/cm比重7.9(P;9%)7.7-8.7硬さHv500±50(析出状態)Hv900±100(400℃ 1Hr)Hv150-250(普通浴)Hv400-500(光沢浴)磁気特性非磁性強磁性耐食性電気ニッケルより優れるNi-Pより劣る引用元:アルファメック株式会社 無電解ニッケルメッキと電気ニッケルメッキの違い
三価クロメートは、ヨーロッパなどで使用禁止となっているクロメート処理の代替として採用されている表面処理です。主に亜鉛めっきの防錆性能の向上や外観の色調変化などが目的で、通常は亜鉛めっきとセットで行われています。自動車や電気・電子、建築など、幅広い分野で使用されており、身近な例では、青銀色や黄金色、黒色のネジ・ボルト・ナット類が挙げられます。この記事では、三価クロメートとは何かというところから、種類や特徴、類似の加工方法であるクロメート処理(六価クロメート)やクロムめっきとの違いについて解説していきます。三価クロメートとは三価クロメートとは、三価クロムを含むものの六価クロムは含まない溶液に金属を浸すことによって、金属表面で化学反応を起こし、金属表面に防食効果などを発揮する皮膜を形成する化成処理のことです。「三価クロム化成処理」や「クロメートフリー処理」「とも呼ばれます。詳しくは後述しますが、単にクロメート処理と言う場合、六価クロムで皮膜を形成する化成処理を指します。しかし、この六価クロムは、生体に有害で、欧州などで規制されていることから、現在はクロメート処理から六価クロムを含まないクロメートフリー処理へと移行が進んでいます。そのため、最近では、クロメート処理を「六価クロメート処理」と六価クロムを用いることを明示して呼称したり、記述したりすることが多くなっています。三価クロメートの適用対象は、主に亜鉛めっきや亜鉛合金めっきが施された鋼材や金属製品で、めっきの後処理として施されるのが三価クロメートです(上図参照)。具体的には、溶融亜鉛めっきや電気亜鉛めっきが施されたもの、ガルバリウム鋼、ガルタイト鋼(ガルファン鋼)が素材のものなどが挙げられ、これらのめっき製品には、六価クロメート処理と三価クロメートのどちらかが適用されています。なお、ガルバリウム鋼とガルタイト鋼は、下表のめっき浴成分によってめっき処理された鋼です。<ガルバリウム鋼(溶融55%アルミニウム-亜鉛合金めっき鋼)のめっき浴>構成成分AlSiAl, Si, Zn以外の元素Zn成分量 (%)50.0~60.01.0~3.05.0以下残部<ガルタイト鋼(溶融亜鉛-5%アルミニウム合金めっき鋼)のめっき浴>構成成分AlAl, Zn以外の元素Zn成分量 (%)4.0~5.51.0以下残部三価クロメートの用途は、亜鉛めっきや亜鉛合金めっきの用途とほとんど同じで、自動車や輸送機器、電気機器、建築部材、事務機などと幅広い分野に及んでいます。特に、自動車や電機などの輸出企業が取り扱う製品は、欧州市場などを考慮して、三価クロメートへの切り替えが進んでいます。しかし、建材・建築などの市場が国内中心の企業は、未だ六価クロメートが適用された製品を使用しています。三価クロメートの効果三価クロメートの主な効果は、耐食性の向上と外観の色調変化です。そもそも、その下地である亜鉛めっきには、以下のような優れた効果があります。▼鉄の表面を物理的に被覆して、腐食原因となる水と酸素を鉄の表面から遮断する。▼中性環境で酸化皮膜を形成し、良好な耐食性を発揮する。▼鉄の身代わりとなって錆びる犠牲的防食作用が働くため、亜鉛めっき皮膜にキズが生じて鉄素地が一部露出しても、防錆効果を発揮する。▼めっき処理の直後は、銀色(光沢のある灰色)を呈する。▼複雑な形状でも、均一な厚さでめっき皮膜を形成することができる。▼コストが低い。▼量産加工が容易。しかし、亜鉛めっきは、大気中で使用していると、時間経過とともに酸化皮膜が厚くなって光沢を失います。さらに、大気が汚染されていたり、湿度が高かったりするような腐食環境下では、亜鉛自身の腐食によって白錆を生成します。その点、亜鉛めっきの上に三価クロメートを施すと、その化成皮膜が空気に対して反応性のないバリヤー層として亜鉛めっきを保護する上、亜鉛の白錆発生も長期間防止するため、高い防錆効果が期待できます。また、三価クロメートの処理液や処理時間などを制御することによって、外観の色調をある程度変化させることが可能です。亜鉛めっき直後の銀色そのままの色調から、青白い色、淡い黄色、黒色というように、いくつかの色調を付与することができます。そのほか、三価クロメートには、以下のような効果もあります。▼塗料などの密着性向上。▼耐指紋性や防汚性が向上。▼亜鉛めっきのみよりも電気抵抗は高いが、導通性は維持される。三価クロメートの表記六価クロメートの表記がJIS規格(JIS H 8625:1993)にて定められているのに対し、三価クロメートの表記は、規定されていません。そのため、現状は六価クロメートのJIS規格に従って表記し、注釈として「三価クロメート」や「TC(Trivalent Chromate)」などと追記することが標準的となっています。例えば、電気めっきで鉄生地に8μm厚の亜鉛をめっきした後、淡黄色の三価クロメートを施す場合は、下記のように記述します。Ep-Fe/Zn 8/CM1B(三価クロメート)なお、「Ep」は電気めっきを表す記号で、クロメート処理(六価クロメート)の記号「CM」は色調によって下表のような種類があります。<クロメート皮膜の種類と表記・色合い>クロメート皮膜の種類記号代表的色合い光沢CM1A透明, 青味のある透明淡黄色CM1B淡黄色の干渉模様黄色CM2C黄色の干渉模様緑色CM2Dオリーブ, グリーン, ブロンズ, 褐色なお、三価クロメートと六価クロメートの双方に黒色のクロメート処理がありますが、これもJIS規格に規定されていないので、下記のように「三価黒クロメート」などと追記することになります。・Ep-Fe/Zn 8(三価黒クロメート)三価クロムめっきとの違い三価クロメートと類似した言葉に「三価クロムめっき」がありますが、三価クロムめっきはめっき処理を指すため、化成処理を指す三価クロメートとは全く異なります。三価クロムめっきは、三価クロムが安定的に存在するめっき浴に金属を浸し、電流を流すことで、金属表面にクロムのめっき皮膜を生成する表面処理法です。実際、三価クロムめっきと三価クロメートは、下表のように皮膜の化学組成が大きく異なります。ただし、下表の皮膜の化学組成は、一例であり、めっきはめっき浴に、化成処理は処理剤によって異なります。なお、三価クロメートの黒色以外の処理剤には、有機酸を含有する有機系とシリカを含有する無機シリカ系があります。<三価クロムめっきと三価クロメートの皮膜の化学組成>皮膜の種類三価クロムめっき皮膜三価クロム化成皮膜無機シリカ系有機系皮膜の化学組成Cr:91.3%C:2.7%O:2.0%S:4.0%Cr:20%O:55%Zn:20%Si:微量Co:微量Cr:22%O:55%Zn:18%C:5%Co:微量三価クロメートの種類と特徴三価クロメートは、色調の違いにより、大きく「三価白」と「三価黒」の2種類に分けられます。その色調の違いは、化成処理の処理剤や処理時間などによってコントロールされています。ただし、同じ色の処理剤でも、その成分や処理条件などは、処理剤によって異なります。そのため、処理剤のメーカーによって、色調も変わってくるので注意が必要です。三価白三価白は、銀色、青白色(青みを帯びた銀色)または淡黃色(黄みを帯びた銀色)の色調となるように調整された三価クロメートです。「三価白クロメート」や「三価ホワイト」とも呼ばれます。銀色となるのは、三価クロム化成皮膜が0.02~0.05μm程度と薄く、クリアー(透明色)で、亜鉛めっきの色調がそのまま現れるように調整された三価クロメートです。「三価無色クロメート」と呼ばれることがあります。青白色となるのは、三価クロム化成皮膜が0.05~0.3μm程度の厚みで、六価クロメートで青白色となる「ユニクロ」の代替となっている三価クロメートです。「三価ユニクロ」や「三価光沢クロメート」とも呼ばれています。淡黃色となるのは、三価クロム化成皮膜の膜厚を0.2~0.5μm程度とした三価クロメートです。「三価有色クロメート」とも呼ばれます。このように、三価白は、膜厚によって、銀色、青白色、淡黄色と色調が変化します。膜厚は耐食性にも影響し、皮膜が厚いほど、耐食性が高くなるという特徴があります。そのほか、三価白による化成皮膜は、損傷すると、皮膜中の成分と露出した亜鉛が反応し、自己修復する機能も備えています。三価黒三価黒は、黒色となるように調整された三価クロメートです。その処理剤に添加された硫黄とコバルトが反応し、黒味成分となる硫化コバルトへ変化することによって黒色が実現されています。「三価黒クロメート」や「三価ブラック」とも呼ばれます。三価黒による化成皮膜は、0.2~0.5μm程度の厚さです。この膜厚は、三価有色クロメートと同程度であることから、耐食性についても三価有色クロメートと同水準となっています。ただし、化成皮膜の表面は、微小な凹凸を形成するため、光が反射しにくく、光沢のないマットな仕上がりとなります。また、耐傷性が低いという欠点もあります。そのため、三価黒の化成皮膜には、多くの場合、三価黒の後処理としてクリアー塗装を施して、透明な塗膜でコーティングを行います。それにより、耐傷性を高めるとともに、光沢を付与して、光沢感のある美麗な黒色を実現しています。三価クロメートの種類と名称以上の三価クロメートの種類と名称をまとめると下表のようになります。<三価クロメートの名称と種類一覧>クロム化成処理の名称クロム化成処理の種類処理の名称色調三価クロメートクロメートフリー処理三価クロム化成処理三価白三価白クロメート三価ホワイト三価無色クロメート銀色三価ユニクロ三価光沢クロメート青白色三価有色クロメート淡黄色三価黒三価黒クロメート三価ブラック黒色三価クロメートと六価クロメートの違い三価クロメートと六価クロメートの違いは、六価クロムの有無です。六価クロメートの処理液や化成皮膜は、三価クロムと六価クロムの双方を含有する一方、三価クロメートの処理液や化成皮膜は、三価クロムは含むものの、六価クロムはほぼ含有していません。毒性の有無上述したように、六価クロムは人体に対して強い毒性を示す一方、三価クロムには、毒性はありません。六価クロムは、接触や吸引、摂取によって、皮膚炎や皮膚潰瘍、吐き気、嘔吐、下痢などを引き起こし、消化器系に対しては胃腸炎・胃癌・大腸癌・肝臓障害、呼吸器系に対しては気道炎・呼吸障害・肺癌の原因となります。従って、六価クロメートの処理液については、作業者への付着はもちろん、周囲への飛散も避けることが必要です。処理液から水分が蒸発し、粉末状となった六価クロムが空気中に浮遊することがあるからです。地下に浸透し、井戸水などを汚染する可能性もあります。一方、三価クロムには、全く毒性はなく、自然界の河川や海洋などにも存在している物質です。有毒どころか、人間にとっては必須ミネラルであると考えられており、欠乏症ともなると糖の代謝異常を起こすとされています。参考:クロムの毒性(三価・六価)を解説規制の有無六価クロムは、世界の多くの国で使用禁止となっていますが、三価クロムの使用を禁止している国はありません。六価クロムは、下表で説明しているELV指令やWEEE指令、RoHS指令が施行されて以降、欧州連合(EU)域内で規制されています。<欧州連合(EU)域内の六価クロム規制>法令名施行年月内容ELV指令2000年10月自動車の廃棄処分時、製造者は、鉛・水銀・カドミウム・六価クロムを含む部品は取り外して保管し、環境に影響を与えないよう、再利用または処理しなくてはならない。2003年7月1日以降、市場に流通する自動車および自動車部品は、鉛・水銀・カドミウム・六価クロムを含有してはならない。WEEE指令2005年8月電気・電子機器の廃棄処分時、製造者は、六価クロムなどの有害物質を環境に影響を与えないように廃製品から除去しなくてはならない。RoHS指令2006年7月電気・電子機器の製造段階での、六価クロムなどの6つの有害物質の使用を原則禁止。2019年7月4つの有害物質が追加されて、合計10つの有害物質の使用を原則禁止。つまり、EU域内では、六価クロメートが使用された自動車や電気・電子機器は販売できません。ただし、どのような物質でも完全にゼロにすることは不可能なので、上表の法令でも最大許容含有量が定められています。その中で六価クロムは、0.1wt%(1000ppm)が最大許容含有量です。参考:RoHS指令について詳細を解説!対象範囲についてもご紹介!そのほか、中国や韓国、タイ、ベトナム、米国カリフォルニア州などにも、RoHS指令と類似の規制が存在します。一方、日本では、六価クロムの使用が禁止されているわけではありませんが、下表のような法令および基準が存在するため、六価クロムの取り扱いには注意が必要です。なお、下表は国の法令・基準であり、自治体によっては、より詳細で厳しい基準を条例で定めている場合があります。<日本における六価クロム規制>法令名基準名対象基準値環境基本法環境基準公共用水域 (注1)0.05mg/L以下 (注2)地下水0.05mg/L以下水質汚濁防止法排水基準工場排水など0.5mg/L以下土壌汚染対策法土壌環境基準土壌0.05mg/L以下注1. 公共用水域とは、河川や湖沼、海域、用水路などの公共利用のための水域や水路のこと。注2. 2022年4月1日から0.02mg/Lに改正。ただし、三価クロメートについても、硫酸クロム・硝酸クロム・酢酸クロムといった三価クロム化合物、硫酸コバルトといったコバルト化合物、硫酸ニッケルといったニッケル化合物など、多様な化学物質を処理液に含みます。そのため、これらの化学物質を含有する排水には、適切な処理が必要不可欠です。そして、その結果生じるスラッジからは、有効活用できる物質は最大限リサイクルし、廃棄物の量を最小限化することが必須となります。また、これらの化学物質は、PRTR(化学物質排出移動量届出)制度に基づく第1種指定化学物質に指定されています。PRTR制度は、これらの化学物質の排出量などを規制するものではありませんが、公共用水域や土壌といった環境への排出量と廃棄物としての外部への移動量を国に届け出することが義務付けられています。さらに、届出データは国によって公表されることになっているため、事業者は、化学物質を適正に管理することが重要です。色調の違い三価クロメートと六価クロメートでは、実現可能な色調も異なります。下表は、三価クロメートと六価クロメートの実現可能な色調をまとめたものです。六価クロメートの色調には、三価クロメートの色調にはない緑色などが存在し、六価クロメートの方が色調のバリエーションが多くなっています。また、それぞれの色調も、六価クロメートの方が鮮やかだったり、光沢が強かったりするなど、六価クロメートの方が優れているとされています。しかし、近年では、三価クロメートでも六価クロメートの色調をほぼ実現できるようになっているほか、三価クロメートで下表の色調以外の色調も表現できるようになっています。<三価クロメートと六価クロメートの色調>クロム化成処理の名称クロム化成処理の種類処理の名称色調三価クロメートクロメートフリー処理三価クロム化成処理三価白三価白クロメート三価ホワイト三価無色クロメート銀色三価ユニクロ三価光沢クロメート青白色三価有色クロメート淡黄色三価黒三価黒クロメート三価ブラック黒色六価クロメートクロメート処理六価クロム化成処理光沢クロメートユニクロ銀色青白色淡黄色有色クロメート黄色黄金色虹色緑色クロメート緑色褐色黒色クロメート黒色耐食性の違い耐食性について、三価クロメートは、六価クロメートと比べて同等か、上回るとされています。下表は、三価クロム化成皮膜と六価クロム化成皮膜に対し、5%濃度の塩水を吹き付けたときの白錆発生までの時間を記載したものです。下表から、無色または光沢の化成皮膜では、三価クロメートの方が六価クロメートよりも耐食性が高く、有色や黒色の化成皮膜でも、三価クロメートは、六価クロメートと比べて同等以上の耐食性を示しています。<三価クロメートと六価クロメートの白錆発生にかかる時間>色調の種類塩水(5%濃度)噴霧時の白錆発生までの時間三価クロメート六価クロメート無色 (銀色), 光沢 (青白色)72〜120時間24〜72時間有色120〜360時間120〜240時間緑色ー240時間以上黒色120〜240時間120〜240時間また、三価クロム化成皮膜は、六価クロム化成皮膜に比べて、高温時の耐食性が高いという特徴があります。六価クロム化成皮膜は、約70℃以上の高温で皮膜にクラックが発生し、耐食性が著しく低下します。一方、三価クロム化成皮膜は、約200℃の高温でもクラックが発生しにくく、それ故に耐食性の低下が起こりません。自己修復機能の違い上述した三価クロム化成皮膜の自己修復機能は、六価クロム化成皮膜にも備わっており、六価クロム化成皮膜の自己修復機能の方が効果が高いとされています。六価クロム化成皮膜の自己修復機能は、六価クロムによって実現されます。六価クロム化成皮膜では、皮膜が傷付いた場合でも、六価クロムが溶出して露出した亜鉛めっきを被覆し、その部分を化成皮膜に変化させます。そのため、六価クロム化成皮膜では、色調に関わらず、自己修復機能が働きます。一方、三価クロム化成皮膜では、皮膜中の成分が亜鉛めっきと成膜反応を起こすことで、皮膜が再生されます。この成膜反応の反応性は、三価白クロメートの有機系で高く、無機シリカ系では低いために、有機系の方が自己修復機能の効果が高くなっています。なお、三価黒クロメートの化成皮膜には、自己修復機能はありません。コストの違い三価クロメートは、以下のような理由から、六価クロメートと比べると高コストになるとされています。●三価クロメートが六価クロメートよりも高コストになる理由・三価クロメートの処理剤が高価。・厳密なpH管理の必要性から処理液の管理が難しく、成膜反応が遅いことから処理時間も長くなるため、処理コストが高い。しかし、近年、六価クロメートから三価クロメートへの代替が進展したことで、三価クロメートのコストは低下してきており、需要が多い色調・性能の三価クロメートでは、六価クロメートと同程度のコストとなっています。ただし、需要の少ない色調の三価クロメートはまだ割高であり、トップコートなどで性能を高めた三価クロメートは、当然ながら高コストです。三価クロム化成皮膜からの六価クロムの溶出について以上のように、三価クロメートは、六価クロメートと様々な違いはあるものの、新たな処理剤の開発や処理方法の高度化、需要増によるコスト低下などにより、六価クロメートの代替としての役割を十分に果たしつつあります。しかし、三価クロム化成皮膜にコバルトを含有している場合、皮膜に六価クロムが含まれることがあります。これは、皮膜への水分の浸透などによってコバルトが不安定化して三価クロムを酸化し、六価クロムへと変化させることがあるからです。そして、三価クロム化成皮膜から六価クロムが溶出してしまう事例も発生しており、その対策が処理剤のメーカーなどにより進められています。ただし、注意点として、六価クロムが溶出した事例についても、その量はRoHS指令などで規定された最大許容含有量よりも微量であるため、特に規制に抵触したわけではなく、欧州などでの販売ができなくなったわけではありません。なお、このコバルトの不安定化は、以下のように不安定化の原因を排除することによって抑制することができます。●コバルトの不安定化を抑制する方法・三価クロム化成皮膜中のコバルト濃度の低減。・三価クロム化成皮膜のクラック発生の抑制。・三価クロム化成皮膜への水分の浸透を防止。そして、これらの実現には、以下のような対策が効果的です。・三価クロメートの処理液中のコバルト濃度を下げることで、皮膜中のコバルト濃度の低減が可能。・三価クロメートの処理時間を短くし、処理温度を下げることで、皮膜中のコバルト濃度の低減が可能。・三価クロム化成皮膜の乾燥温度を低くすることで、皮膜のクラック発生の低減が可能。・高温多湿環境下での保管や使用を禁止することで、皮膜への水分の浸透を防止することが可能。・三価クロメートの処理液にコバルトの酸化抑制剤を加えることで、コバルトの不安定化の抑制が可能。三価クロメートの処理剤の各メーカーは、これらを元に処理剤の改良を進めているほか、コバルトを含まない処理剤やクロム自体をも含まない処理剤の開発にも着手しています。
溶融亜鉛めっきは、溶かした亜鉛に製品を浸漬させてめっきを施す手法で、錆びや腐食を防止するために行われます。溶融亜鉛めっきは、標識やガードレールなど、私たちの生活の身近な製品に採用されているめっき方法ですが、どのような仕組みで防錆効果を得ているのか分からない方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、溶融亜鉛めっきの特徴や加工工程、規格などについて解説します。溶融亜鉛めっきとは引用元:株式会社小池テクノ 溶融めっきの概要と利点・欠点溶融亜鉛めっきとは、高温で溶かした亜鉛の槽に鋼材を浸し、表面に亜鉛皮膜を形成することです。別名「どぶ付けめっき」とも呼ばれています。溶融亜鉛めっきの特徴と用途鋼材は溶融亜鉛めっきを施すことで、「保護皮膜作用」と「犠牲防食作用」の2つの効果が得られ、錆びや腐食を防止できるようになります。保護皮膜作用は、鋼材の表面に空気や水を通しにくい亜鉛の酸化皮膜を形成することを指します。引用元:日本溶融亜鉛鍍金協会 溶融亜鉛めっきとは犠牲防食作用は、亜鉛めっきにキズが付いた場合、素地の鉄が露出してもキズの周囲に亜鉛が溶けだして保護し、鉄が腐食するのを防ぎます。また、溶融亜鉛めっきは、亜鉛と素地の鉄から形成される合金層により、互いの金属が強く結合しているため、めっきが剥がれにくい特徴もあります。溶融亜鉛めっきは、長期間に渡り錆びや腐食を防ぐ効果があるため、ガードレール・標識や照明などの柱・橋梁・各種金物など、さまざまな場所で活用されています。腐食環境の厳しいところでは、亜鉛めっきの上に塗装を施すこともあります。適切な塗装系を用いて亜鉛めっき上に塗装を施した場合、以下表のように耐用年数が通常の亜鉛めっきの2倍程度の効果が得られるとされています。<亜鉛めっき上に塗装した時の耐用年数(単位:年)>亜鉛付着量田園地帯海洋工業地帯g/m2めっきのみ二重防食めっきのみ二重防食めっきのみ二重防食107~2294~1510~25 2~11 7~241~45~15305~48818~3735~5013~2825~465~612~30488~76335~6045~7028~4037~6015~2120~32引用元:日本溶融亜鉛鍍金協会 亜鉛めっき上の塗装についてただし亜鉛は活性の高い金属で、鉄素地と同じ要領で塗装をすると塗膜が剥離しやすくなるため、エポキシ系などの密着性のよい塗装系を選択しなければなりません。参考として、日本溶融亜鉛鍍金協会で記述されている、亜鉛めっき面への塗装の実例を以下に示します。<亜鉛めっき面への塗装仕様>新設亜鉛めっき面への塗装仕様既設劣化亜鉛めっき面の塗装仕様工程塩化ゴム系樹脂塗料ポリウレタン樹脂塗料塩化ゴム系樹脂塗料ポリウレタン樹脂塗料素地調整油分の付着は脱脂洗浄する。付着性を確保するためにスイープブラスト処理を行う。ブラスト処理が難しい、複雑形状の小部材は屋外で暴露し、白さびを除去した後塗装してもよい。表面に付着しているほこり、ゴミなどを清掃除去する。油分の付着は脱脂洗浄する。白さびは研掃たらしなどで除去し、赤錆発生部は電動工具でSIS St3に素地調整する。補修塗--亜鉛めっき面用エポキシ樹脂塗料亜鉛めっき面用エポキシ樹脂塗料下塗塩化ゴム系塗料下塗亜鉛めっき面用エポキシ樹脂塗料亜鉛めっき面用エポキシ樹脂塗料亜鉛めっき面用エポキシ樹脂塗料中塗塩化ゴム系塗料中塗ポリウレタン樹脂塗料用中塗塩化ゴム系塗料中塗ポリウレタン樹脂塗料用中塗上塗塩化ゴム系塗料上塗ポリウレタン樹脂塗料上塗塩化ゴム系塗料上塗ポリウレタン樹脂塗料上塗引用元:日本溶融亜鉛鍍金協会 亜鉛めっき上の塗装について溶融亜鉛めっきのメリット溶融亜鉛めっきは以下のようなメリットがあります。・保護皮膜作用・犠牲防食作用により、錆びや腐食を防止する。・長い年月が経過してもめっきが剥がれにくい。・大気中であれば数十年にわたる耐用年数が期待できる。・めっき槽に浸漬できるものであれば、ボルト・ナットなどのサイズの小さな製品から、橋梁やガードレールなどの比較的大型の構造物までめっきが可能。溶融亜鉛めっきのデメリット溶融亜鉛めっきのデメリットは以下の通りです。・密閉した部分のある製品や、複雑な形状の製品はめっきできない場合がある。・海岸地帯や工業地帯では耐用年数が短くなる溶融亜鉛めっきは、密閉構造の製品や内部に空気がたまる箇所があると、浮力が働いてめっき槽への浸漬が難しくなるほか、内部の空気が膨張することで水蒸気爆発を起こしてしまいます。これらを避けるためにも、構造物には切り欠きや空気抜き孔が必要です。溶融亜鉛めっきの規格溶融亜鉛めっきの規格は、JIS規格の【JIS H 8641 溶融亜鉛めっき】があります。JIS H 8641:2007では、溶融亜鉛めっきの種類及び記号を以下のように記述しています。<溶融亜鉛めっきの種類及び記号>種類記号適用例(参考)1種 AHDZ A厚さ5mm以下の鋼材・鋼製品、高管類、直径12mm以上のボルト・ナット及び厚さ2.3mmを超える座金類。1種 BHDZ B厚さ5mmを超える鋼材・鋼製品、鋼管類及び鋳鍛造品類。2種 35HDZ 35厚さ1mm以上2mm以下の鋼材・鋼製品、直径12mm以上のボルト・ナット及び厚さ2.3mmを超える座金類。2種 40HDZ 40厚さ2mmを超え3mm以下の鋼材・鋼製品及び鋳鍛造品類。2種 45HDZ 45厚さ3mmを超え5mm以下の鋼材・鋼製品及び鋳鍛造品類。2種 50HDZ 50厚さ5mmを超える鋼材・鋼製品及び鋳鍛造品類。2種 55HDZ 55過酷な腐食環境下で使用される鋼材・鋼製品及び鋳鍛造品類。備考1,HDZ 55のめっきを要求するものは、素材の厚さ6mm以上であることが望ましい。素材の厚さが6mm未満のものに適用する場合は、事前に受渡当事者間の協定による。2,表中、適用例の欄で示す厚さ及び直径は、呼称寸法による。3,過酷な腐食環境は、海塩粒子濃度の高い海岸、凍結防止剤の散布される地域などをいう。引用元:JIS H 8641:2007 溶融亜鉛めっきまた、溶融亜鉛めっきの種類及び記号ごとのめっき付着量は、JIS規格に規定された試験を行ったとき、以下の表に適合しなければなりません。<溶融亜鉛めっきの付着量及び硫酸銅試験回数>種類記号硫酸銅試験回数付着量g/m2平均めっき膜厚μm(参考)1種 AHDZ A4回-28~421種 BHDZ B5回-35~492種 35HDZ 35-350以上49以上2種 40HDZ 40-400以上56以上2種 45HDZ 45-450以上63以上2種 50HDZ 50-500以上69以上2種 55HDZ 55-550以上76以上備考1,めっき膜厚とは、めっき表面から素材表面までの距離をいう。2,1種A及び1種Bの平均めっき膜厚欄の数値は、硫酸銅試験回数から推定した最小めっき皮膜厚さの範囲を示す。3,平均めっき膜厚は、めっき皮膜の密度を7.2g/cm3として、付着量を除した値を示す。引用元:JIS H 8641:2007 溶融亜鉛めっき溶融亜鉛めっきの加工工程引用元:新潟亜鉛工業株式会社 溶融亜鉛めっきとは? 加工工程溶融亜鉛めっきの基本的な加工工程は、以下のようにして行われています。1.脱脂処理:鉄鋼製品の表面に付着した油脂や塗料を除去するため、苛性ソーダ水溶液に浸します。2.水洗:鉄鋼製品の表面に付着している脱脂液を洗い流します。3.酸洗処理:鉄鋼素材に付着した錆びやスケールを除去するため、塩酸または硫酸水溶液に浸します。4.水洗:鉄鋼製品の表面に付着している酸洗液を洗い流します。5.フラックス処理:酸洗後の錆びの発生防止と、鉄と亜鉛の合金反応を促進させるため、加熱した塩化亜鉛アンモニウム水溶液(フラックス)に漬けて、素地表面にフラックス皮膜を形成させます。6.乾燥:亜鉛の飛散(スプラッシュ)を抑えるために乾燥させます。7.めっき:鉄鋼素材を溶融した亜鉛浴のなかに浸して皮膜を形成させます。鋼材の材質や形状によって最も適合するめっき条件を選択します。8.冷却:めっきを施した鉄鋼製品を温水で冷却します。冷却の工程により、鉄と亜鉛の合金層の成長を抑えます。
今回はニッケルめっきの種類や特徴について解説します。ニッケルめっきは、美しい外観と優れた耐食性を有しためっき処理で、電気コネクターやスイッチの装飾・防食、金めっきやクロムめっきの下地めっきなど、幅広い用途で採用されています。しかしニッケルめっきは、皮膜を析出させる手法の違いで「電解ニッケルめっき」と「無電解ニッケルめっき」に分かれており、それぞれで特徴に違いがあります。参考:【めっき処理とは?】目的・仕組み・種類・特徴について徹底解説!ニッケルめっきとはニッケルめっきとは、その名前の通り、ニッケルの成分を用いためっきのことを指します。ニッケルは、適度な硬度と柔軟性があり、強磁性を示す金属です。ニッケルめっきを施すと、黄白色の美しい外観になるほか、優れた耐食性が得られます。ニッケルめっきは変色しにくいことから、美観性の向上を目的として利用されることが多くあります。対応する素材は、鉄鋼材料・銅・銅合金・ステンレス・アルミなどが代表的です。ニッケルめっきの種類と特徴ニッケルめっきには、大きく分けて「電解ニッケルめっき」と「無電解ニッケルめっき」の2種類があります。電解ニッケルめっき引用元:アルファメック株式会社 無電解ニッケルめっきの基礎電解ニッケルめっきは、外部電源から供給される電気を利用してめっきを行う手法で、「電気ニッケルめっき」とも呼ばれています。上図のように、陽極のニッケル極板を用い、ニッケルを溶解させることで、陰極の材料にめっきを行います。電解ニッケルめっきは、ステンレス・銅素材への処理がしにくい特徴がありますが、前処理である「ニッケルストライクめっき」を施すことで、良好な皮膜を析出できるようになります。電気ニッケルめっきは、さらに細かく分類すると、「光沢ニッケルめっき」「半光沢ニッケルめっき」「無光沢ニッケルめっき」の3種類があります。●光沢ニッケルめっき光沢ニッケルめっきは、光沢のある黄白色の外観で、変色しにくい特徴があります。ただし、皮膜の硬度が高く、二次加工時のスポット溶接の不具合・カシメ加工でのめっき割れや、クラックなどの不良が発生しやすい点に注意が必要です。用途としては、金めっき・銀めっき・クロムめっきなどの光沢が必要な場合の下地めっきや、耐食性を必要とするめっきの下地、はんだ付けなどに採用されています。●半光沢ニッケルめっき半光沢ニッケルめっきは、光沢ニッケルめっきと比べて光沢が控えめで、柔らかい特徴があります。また、光沢ニッケルめっきと組み合わせた2層のめっきである「ダブルニッケルめっき」を施すことで、より優れた耐食性を得られるようになります。引用元:株式会社三和鍍金 【連載】ダブルニッケルとは vol.2~電位差とガルバニック腐食~ダブルニッケルめっきは、材料の外層にある光沢ニッケルめっきを優先的に腐食させて、素地への腐食を遅らせることが可能です。半光沢ニッケルめっきは、はんだ付け製品に多く採用されています。ダブルニッケルめっきでは、優れた耐食性を有することから、自動車部品や機械部品、装飾部品などに採用されています。●無光沢ニッケルめっき無光沢ニッケルめっきは、その名前の通り光沢のないニッケルめっきです。光沢を出すために必要な添加剤の影響がないので、安定したニッケルめっきの皮膜が得られます。溶接性に優れ、折り曲げても割れにくいため、カシメ加工に強い特徴があります。ただし、表面に指紋が付きやすいほか、経年変化による変色が発生する場合があります。無電解ニッケルめっき引用元:アルファメック株式会社 無電解ニッケルめっきの基礎無電解ニッケルめっきは、電気を利用せず、化学的還元作用によりめっきを施す手法で、別名「カニゼンめっき」とも呼ばれています。無電解ニッケルめっきは、還元剤である次亜リン酸塩が酸化され、亜リン酸塩になります。このときに電子を放出してニッケルイオンを還元し、めっき皮膜になる仕組みです。無電解ニッケルめっきは、電解ニッケルめっきよりも均一に皮膜を析出できるので、寸法精度を要する製品や、複雑な形状の製品のめっきに適しています。ただし、他の表面処理に比べて単価が高い傾向にあります。無電解ニッケルめっきは、主にリンが含まれており、リンの含有量によって「低リンタイプ」「中リンタイプ」「高リンタイプ」に分類されます。リンの含有量が多いと、ピンホールが少なくなり、耐食性が向上します。これらは熱処理を施すことで、析出時500~700Hvの硬度が、900〜1000Hv程度まで向上させられます。参考:鋼の性質を変える【熱処理】とは?仕組みや種類について徹底解説!また、無電解ニッケルめっきは、ホウ素を含有したものもあります。各種類の特性については以下の通りです。●低リンタイプ低リンタイプは、リン含有率が1~4%程度の無電解ニッケルめっきで、700Hv程度の優れた硬度と耐摩耗性を有していますが、耐食性には劣ります。●中リンタイプ中リンタイプは、リン含有率が5~10%程度で、最も一般的に採用されている無電解ニッケルめっきです。通常は非磁性ですが、熱により磁性を示します。また、耐食性・耐摩耗性や各物性のバランスも良好で、汎用性に優れています。●高リンタイプ高リンタイプは、リン含有率が11~13%程度で、耐食性に優れているものの、はんだ付け性に劣ります。また、通常時および比較的高温で熱処理した状態でも非磁性を示します。●無電解ニッケル-ホウ素めっき無電解ニッケル-ホウ素めっきは、ホウ素の含有率が0.2~1.0%の無電解ニッケルめっきで、はんだ付け性や硬度に優れています。ニッケルめっきのメリットとデメリットニッケルめっきは、美しい外観と、優れた耐食性を備えているのがメリットです。ダブルニッケルめっきや高リンタイプの無電解ニッケルめっきを用いれば、より高い耐食性が得られます。無電解ニッケルめっきでは、熱処理を行うことで、用途によっては硬質クロムめっきに匹敵するほどの硬度が得られます。一方で、ニッケルめっきのデメリットは、電解ニッケルめっきを施したときに、薄い膜厚しかつかないなど均一性に乏しいこと、パイプ内部などの電気が届かない箇所は皮膜が付きにくいことが挙げられます。複雑な形状や均一にめっきを施すのに適している無電解ニッケルめっきでは、コストが比較的大きくかかってしまう点もデメリットと言えます。
アルミは、軽量かつ安価で、耐食性や加工性にも優れるため、アルミ缶やアルミ箔など、身近な製品に広く用いられている金属材料です。また、一部のアルミ合金は、高い強度を持つことから、航空機用部材や建築用サッシなどにも使用されています。 このように、家庭用にも産業用にも幅広い用途があるアルミですが、軽量化ニーズの高まりから、その特性や機能性を向上させ、他の様々な金属の代替材料とする技術開発が進んでいます。さらに、導電性の高さにも注目が集まっており、エレクトロニクス分野などでも導電材としての採用が始まっています。 今回の記事では、アルミの特性向上を実現するアルミ材へのめっき方法について解説していきます。めっきの種類やメリットについても説明しますので、ぜひご覧ください。 アルミへのめっきはできるの? アルミは、めっきすることが難しい「難めっき材」として知られていました。しかし、現在では、安定しためっきを確実に形成できるプロセスが開発されています。 アルミは、酸素との反応性が高く、空気中で酸化アルミニウムの皮膜を形成します。この酸化皮膜は、水中のわずかな酸素でも形成されてしまうため、除去が追い付かず、めっきが析出することを阻害し、めっきの密着性も悪化させていました。 これを改善するため、一般的にジンケート処理がアルミ材のめっき前処理として採用されています。この方法では、表面の酸化皮膜を除去すると同時に亜鉛皮膜を置換析出させます。亜鉛は下地メッキにも使用されるような材料ですから、置換析出した亜鉛皮膜の上には密着性の高いメッキを施すことが可能となります。 なぜアルミめっきを行うのか アルミ材は、めっきすることで電気的特性や機械的特性、装飾性などを向上させることが可能です。 ですが、導電性は銅や銀が勝りますし、強度は鉄やステンレスがより優れるので、あえてめっきしたアルミを使う必要はありません。そこで理由となるのがアルミの軽量性です。 アルミは、その比重が鉄やステンレスの3分の1ほどと非常に軽量です。そのため、鉄鋼などの代替材料に用いることができれば、かなりの軽量化が期待できます。もちろん、アルミ合金であるジェラルミンなどを用いれば、強度も鉄鋼などに匹敵させることが可能です。さらに、硬質クロムめっきなどを施せば、さらに耐摩耗性や耐振動性などを向上させることができます。 また、アルミは、導電性が銅の60%ほどですが、その比重は銅の約30%です。そのため、同じ重さの銅に比べて2倍もの電流を通すことができます。しかし、アルミの酸化皮膜は通電性が悪いため、導電材として用いる場合には外部との接触部が抵抗となります。そのため、これまでは電気接点などの用途には使用できませんでした。ですが、ニッケルめっきなどを施せば、酸化皮膜の形成を防ぐことができますので、接触部でも通電性を維持することができます。 アルミ材へのめっきの工程 アルミ材へのめっきの工程は、一般的に以下のように進めます。なお実際は、各工程の間に、工程で用いた薬液などを落とす水洗などの洗浄工程が入ります。 アルミ材のめっき工程 研磨 脱脂工程 エッチング工程 スマット除去工程 ジンケート工程 めっき処理 ここでは、各工程の詳細について解説していきます。 1.研磨 研磨は、鋳造品やダイカスト(ダイキャスト)品、切削加工品で重要となる工程です。 鋳造やダイカストでは、加工後、表面層に鋳巣や湯じわなどが生じることがあります。金型から製品を剥がれやすくする離型剤が残ってしまうこともあり、めっき前にこれらを取り除くための研磨を行います。 また、アルミは軟らかいため、切削加工時、むしれ痕やばりなどが発生しやすく、仕上げ表面に加工硬化や残留応力に起因する加工変質層が生成しやすいです。そのため、これらをめっき前に除去する必要があります。 2.脱脂工程 引用元:株式会社NIMURA 脱脂工程では、付着している工作油や汚れなどを除去するため、上の写真のような薬液に製品を浸漬します。 アルミは、酸にもアルカリにも溶解する両性金属です。よって、鉄やステンレスなどの脱脂工程で用いられる水酸化ナトリウムなどの強アルカリの脱脂剤は使うことができません。 その代わりとして、中性または弱アルカリ性の脱脂剤が使われますが、油性汚れの洗浄効果がより高い弱アルカリ性の脱脂剤を用いることが多いです。その脱脂剤として、ケイ酸ナトリウムやリン酸ナトリウムなどが挙げられますが、この場合においても、pH値はおよそ10以下とする必要があります。ただし、ケイ酸ナトリウムでは、表面にケイ酸皮膜を形成しやすいので、なるべく濃度の低い溶液を使用しなくてはなりません。 そのほか、凹凸があるダイカスト品や切削加工品などは、油分が溜まりやすいため、有機溶媒での脱脂を併用したり、ウォータージェットでの洗浄を行ったりすることがあります。 また、脱脂工程の後のエッチング工程やジンケート工程でもアルカリ溶液が使用されます。そのため、脱脂工程以降においても油脂などを除去する効果が期待できます。 3.エッチング工程 エッチング工程は、予備的に脱脂を行うと共に酸化皮膜を除去する工程です。 この工程では、高温環境で強アルカリ性のエッチング液を使用します。溶解加工を意味するエッチングの言葉通り、酸化皮膜を溶解して除去しますが、溶液の温度や工程の時間によっては溶解が内部に進行してしまうことがあります。 また、強アルカリ性ですから、油脂を乳化分散させる効果があり、脱脂工程と同じく脱脂が可能です。それと同時に、アルミ表面では、水が還元されて水素ガスを発生。ガスが溶液を撹拌して、汚れや異物を取り除きます。 ●エッチング工程のデメリット 強アルカリを用いたエッチングは、酸化皮膜の除去に有効な方法です。しかし、溶解の効果が高すぎるため、以下のようなデメリットも生じます。 表面が粗くなり、光沢感がなくなる アルカリに溶けないケイ素や銅などの成分が残留し、ざらつくことがある 溶解の進行が速いため、寸法の調整が困難 従って、溶液の温度や工程の時間の管理に注意が必要です。また、鏡面光沢仕上げとする場合などには、アルカリ溶液によるエッチングを行わず、酸性フッ化アンモニウムなどを用いた酸性エッチングを行うことがあります。 4.スマット除去工程 スマット除去工程は、表面に残留する不純物や合金成分を除去する工程です。 アルミは、不純物や合金成分に銅やケイ素などを含みます。これらの一部は、アルカリに溶解しないものがあり、エッチング工程の後も微粉末として表面に付着したままとなることがあります。めっき加工では、このような微粉末を「スマット」と呼び、アルミ材のめっきでは、エッチング工程の後にスマットを除去する必要があります。 特に、ケイ素などの除去にはフッ素を含んだ酸性溶液が、銅合金の除去には硝酸を含んだ酸性の溶液が用いられ、製品をこれらの溶液に漬け込むことでスマットを取り除きます。 5.ジンケート工程 ジンケート工程は、アルミの酸化皮膜を除去すると同時に、密着性の良い亜鉛の皮膜を形成させる工程です。これにより、アルミの酸化皮膜が形成されなくなります。 この工程では、強アルカリ性の亜鉛溶液であるジンケート液を用います。まず、この液に漬けたアルミの酸化皮膜が溶解し、続いて、露出したアルミが溶液中の亜鉛と置換して亜鉛が析出します。なお、この置換析出させるめっき法については、以下の「置換めっきとは」で詳しく解説しています。 しかしこのとき、亜鉛の析出が不均一に生じることが多く、通常は硝酸などの薬液で析出した亜鉛を剥離し、もう一度ジンケート液に漬け込みます。これをダブルジンケート処理と言いますが、これにより均一な亜鉛皮膜を形成することが可能となり、優れた密着性を得ることができます。 ただし、密着性については、アルミ合金の種類(番手)に左右されます。そのため、番手によって溶液の使い分けが必要となります。 ●置換めっきとは 置換めっきとは、電気を使わない無電解めっきの中でも、金属のイオン化傾向の大小だけで金属を析出させる方法です。 金属には、溶液中でのイオンのなりやすさを示すイオン化傾向と呼ばれる性質があります。そのため、イオン化傾向が低い金属が溶けた液中にイオン化傾向が高い金属を漬けると、これらの金属が酸化還元反応を起こし、イオン化傾向が高い金属が酸化されて溶解し、イオン化傾向が低い金属が還元されて析出します。この反応は、漬けた金属がもう一方の金属で完全に覆われると終了します。 アルミと亜鉛の場合では、アルミの方がイオン化傾向が高いため、アルミが溶解すると同時に亜鉛が置き換わるようにアルミの表面に析出します。 6.めっき処理 ジンケート工程が完了したら、めっき処理に移ります。 めっき方法としては、電気めっきと無電解めっきの双方が可能ですが、めっきする金属によっては、ストライクめっきが必要となることがあります。 なお、ストライクめっきとは、ジンケート工程の亜鉛のように、最終的なめっきの下地とする薄いめっきのことです。 アルミめっきの種類 アルミ材に対するめっきには、様々な種類があります。ここでは、アルミ材への代表的なめっき金属について説明します。 ニッケル アルミ材に対するニッケルめっきは通常、銅のストライクめっきを施した後に実施します。 銅ストライクめっきは、ジンケート工程で施した亜鉛がニッケルと置換反応を起こしてしまうことから必要となる下地めっきです。この方法では、シアン化銅とシアン化塩を含んだシアン化銅浴などに、亜鉛皮膜で覆われたアルミを通電しながら漬けることで銅を析出させます。 ストライクめっき後のニッケルめっきは、電気めっきと無電解めっきのどちらでも可能です。複雑な形状の製品などは、均一にメッキできる無電解メッキを採用することが多いです。 しかし、近年では、ストライクめっきが不要なニッケルめっき法も開発されています。これは、亜鉛置換ニッケルめっきと呼ばれる方法で、ジンケート工程後のアルミを無電解ニッケルめっき液に漬けます。すると、下図のように亜鉛とニッケルが置換してニッケルが析出します。つまり、この方法だと、アルミ素地にニッケルを直接めっきすることが可能となります。 銅 銅めっきは、ニッケルめっきで説明したシアン化銅浴などを用いためっき法によって実現することができます。 真鍮 真鍮めっきは通常、ニッケルめっきの上に施されます。つまり、銅めっきを下地めっきとしてニッケルめっきを施し、その後、電気めっきによって真鍮をめっきします。 クロム クロムめっきは、硬質クロムめっきと装飾クロムめっきでその方法が違います。 硬質クロムめっきは、ジンケート工程の後に、電気めっきを用いて実施します。均一にめっきしづらいため、製品の形状によっては、補助陽極や補助陰極を設置して、めっきの厚みが出来るだけ均一になるように調整します。 装飾クロムめっきは、銅を下地めっきとしたニッケルめっきの後に電気めっきを用いて行われます。 スズ スズメッキは、ニッケルめっきの上から、電気めっきや無電解めっきによって施すことができます。 この方法のほか、ジンケート工程で亜鉛の代わりにスズを用いることが可能で、アルミの直上に形成されたスズ皮膜をめっきとすることができます。この方法をスズ置換めっきと呼びますが、ジンケート工程と同じく、アルカリ溶液でアルミの酸化皮膜を溶解すると同時にスズでアルミを置換してスズを析出させます。 Mitsuriでは、アルミ材に対する様々なメッキが可能なメーカーをご紹介できます。用途をお伝えくだされば、適切なメッキ法をご提示することも可能です。アルミ材のめっきにお悩みでしたら、ぜひMitsuriにご相談ください。 アルミ材へのめっきのメリット それでは、アルミ材にめっきすることには、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、1.電気抵抗の軽減、2.はんだ付け性の付与、3.溶接性の向上という特徴的な3つのメリットについて説明します。 1.電気抵抗の軽減に アルミは、素材そのものの導電性が高いものの、表面に電気抵抗の高い酸化皮膜を生成してしまいます。ですが、めっきを施せば、酸化皮膜は形成されていませんので、他の部品との接触部の通電性を確保することができます。 これにより、アルミは、スイッチやリレーなどの電気接点にも用途を広げることができます。この用途で使用されるアルミめっきには、金めっきや銀めっき、銅めっき、ニッケルめっき、スズめっきなどが挙げられます。 2.はんだ付けが可能に アルミは、その酸化被膜がはんだをはじく上、強酸性のものが多いフラックス(はんだ付け促進剤)に侵されることがあります。そのため、めっきなしのアルミ製電子部品などを電子回路にそのままはんだ付けすることはできません。ですが、スズめっきなどを施すことで、はんだに馴染むようになりますので、はんだ付けが可能となります。 3.溶接加工がしやすくなる アルミそのものの融点は660℃ですが、その酸化皮膜の融点は2000℃にも達します。そのため、アルミを溶接するには、この酸化皮膜を除去する必要があり、また除去したとしても入念にシールドしないとすぐに酸化皮膜が形成されてしまいます。その点めっきしておけば、シールドは必要ですが、酸化皮膜を除去する工程が不要となります。 また、アルミ材へのスズめっきで、抵抗溶接の作業性を向上させることができます。アルミの抵抗溶接では、溶接機の電極にアルミが付着してしまうことから、電極の研磨が必要となります。しかし、スズめっきを施すことで、電極へのアルミ付着を抑制することが可能です。 アルマイトとめっきの違い アルミの代表的な表面処理加工にアルマイトがありますが、これはめっきとは全く異なるものです。 アルマイトは、アルミの酸化を人工的に進め、表面の酸化皮膜をさらに分厚くする表面処理です。このとき、アルミは酸素と結合して酸化アルミニウムを形成し、外部方向に成長すると共に内部方向にも浸透していきます。 一方、めっきは、酸化皮膜を除去し、アルミの素地を露出させた上で他の金属を乗せていく方法です。 参考:アルマイトとは?【3分でわかる】専門家がわかりやすく解説してみた! アルミニウムのめっきの見積りを依頼するならMitsuri 難めっき材と言われていたアルミですが、今では様々なめっき液や方法が開発されており、めっきすることで、アルミの特性を向上させると共にアルミに機能性を付与することができます。 ですが、アルミ合金は種類が多く、その種類毎にめっき液の調製やめっきするときの工夫が必要となります。また、全ての合金にめっきできるわけではなく、めっき可能な合金の種類は、メーカーによって異なります。 Mitsuriは、アルミ材へのめっき技術を保有する全国各地のメーカー様とお付き合いがあります。現在、協力企業は250社以上ございます。そのため、お客様に最適な加工方法をご提示することが可能です。 お見積りは複数社から可能です! アルミ材のめっきのお見積りでお困りの際は、ぜひMitsuriにお申し付け下さい!
「高級感を出したいけど、めっきと塗装どっちがいいの?」「耐食性が必要な製品だけど、めっきと塗装どちらが良いのかわからない・・・」こんな、お悩みをお持ちではありませんか。めっきと塗装は、似たような状況で必要となる加工法です。しかし、いざ依頼しようとした際、そのケースにはどちらが適切なのか、分からないことも多々あるかと思います。そこで、今回の記事では、めっきと塗装について説明すると共に、その違いや混同しやすいめっき塗装などについても解説していきます。めっきと塗装のメリット・デメリットも述べていますので、ご依頼する際の参考にしてください。めっきとはめっきとは、素材の表面に金属の薄膜を形成させる技術のことです。表面処理技術の一つで、素材が錆びることを防いだり、外観の装飾性を高めたり、素材に機能を付与したりするために行われます。付与できる機能は幅広く、金めっきを例にすれば、熱伝導性や導電性を付与できますし、抗菌効果も期待できます。また、硬い素材であるクロムのめっきは、優れた耐摩耗性を付与できることから、強度が必要な部品や擦り減りやすい部品に実施されることが多いです。めっき方法めっきの主要な加工方法としては、電気めっきと無電解めっきが挙げられます。どちらも、めっきする金属や薬品が溶けた液に素材を漬けることは共通です。ですが、電気めっきは電気を流すことで素材表面に金属膜を析出させる一方、無電解めっきは、薬品による化学反応だけを利用してめっきを行います。参考記事めっきの加工方法については、以下の記事に詳細がありますので、気になった方はぜひご覧ください。⇒メッキ加工方法について!【専門家が語る】メッキされるまでの工程が丸わかり!めっき金属の種類めっきする金属としては、上述した金やクロムのほか、銀や銅、ニッケルなどが代表的です。特にニッケルは、硬く腐食しにくい上、光沢や色味、性質などをめっき溶液に添加する薬品や合金化することによって調整できます。そのため、自動車部品や機械部品、精密機器のほか、装飾品にもよく用いられるめっきです。参考記事めっきの概要を知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。⇒【メッキ処理とは?】目的・仕組み・種類・特徴について徹底解説!塗装とは塗装とは、素材表面に塗料を塗ったり、吹きかけたりすることで、塗膜を形成させる表面処理技術のことを言います。塗装もまた、防錆や装飾、機能の付与が主要な役割です。その一方、素材の保護を目的に塗装することもあり、塗り直すことを前提としている場合があります。防錆を目的とする塗装は、鉄が代表的です。鉄は、空気や水との接触で簡単に錆びてしまうため、めっきか塗装が必須となります。一方、塗装が不必要にみえるステンレスにも塗装することがあります。ステンレスは、サビに強い素材ですが、傷や亀裂から腐食が進むことがあります。このような、傷の発生を防ぐことなどを目的に、塗装する場合があります。塗装方法塗装方法には、様々なものがあります。刷毛(ハケ)・ローラー等を使った手作業による塗装や、塗料を高圧の空気で吹き付ける吹付塗装などは、建築物の外壁などに用いられているため、目にしたこともあるかも知れません。これらの方法の多くは、溶剤塗装に分類され、揮発性の溶剤を含有する塗料を乾燥させることで固化、密着させて塗膜を形成させます。専門的な塗装法としては、加熱して塗料を硬化させる焼付塗装、粉末状の塗料を静電気で付着させた後に加熱溶解させる粉体塗装、後述で説明する電着塗装などが挙げられます。参考記事焼付塗装の概要については、以下の記事で解説しています。ぜひ、参考にしてください。⇒焼付塗装ならMitsuri!1コ〜お受けいたします!塗料の種類塗料としては、ペンキやニス、樹脂(プラスチック)などが挙げられ、塗装方法や用途によって様々なものが選ばれます。ペンキは、一般的に、揮発性の溶剤を含む油性塗料、ニスは、有機溶剤などを含んだ樹脂塗料のことで、共に乾燥させることで塗膜を形成させる溶剤塗装の材料です。一方、焼付塗装に用いられるアクリル樹脂やメラミン樹脂、フッソ樹脂は、100~200℃程度の加熱を必要としますが、塗装の中では品質が良いです。塗料によりますが、焼付塗装は、インテリアやエクステリアのほか、様々な日用品などに用いられています。粉体塗装には、熱可塑性の塗料と熱硬化性の塗料があります。熱可塑性塗料としては、ポリエステル系や塩化ビニル系の樹脂、熱硬化性塗料としては、エポキシ系やポリエステル系、アクリル系の樹脂が挙げられます。熱可塑性塗料は、熱硬化させているわけではないので、焼付塗装による塗膜ほどの硬度は得られません。ですが、熱硬化性塗料は、焼付塗装に用いられる塗料と同様、高い強度が期待できます。また、粉体塗装に用いられる塗料は、環境や人体に悪影響を与える、有機溶剤を使用していないことが特徴です。めっきと塗装の種類次は、めっきと塗装の種類の中でも、名称や内容が分かりにくい「クロームめっき」と、めっきなのか塗装なのか混同しやすい「電着塗装(電着めっき)」と「めっき塗装」について説明します。クロームめっき(クロムめっき)クロームめっきとは、めっき金属としてクロムを使うめっき、つまり「クロムめっき」のことです。クロムめっきしたものは、英語で「chrome」と記述し、その読みはむしろ「クローム」に近いです。ですが、JIS規格では「クロムめっき」とされています。クロムめっきには、装飾用クロムめっきと工業用クロムめっきがあるのも分かりにくいところです。装飾用クロムめっきは、下地にニッケルをめっきし、その上に薄いクロムめっきを施しためっきで、「ニッケルクロムめっき」とも呼ばれています。一方、工業用クロムめっきは、クロムの優れた硬度や耐摩耗性を利用したもので、硬質クロムめっきとも呼ばれます。摩耗しやすい機械部品などに用いられ、耐用年数が必要なものほど厚いめっきを施します。クロムめっきと混同しやすいものに「クロメート処理」があります。クロメート処理は、クロムを含有した溶液に亜鉛やアルミなどを浸し、素材表面にクロムを含む酸化皮膜を形成する表面処理です。表面に膜を付着させるめっきではなく、化学反応を起こすことで表面の性質を変化させる化成処理に当たります。また、クロメート処理では、溶液のクロム含有量や添加する薬品を変化させることで、光沢や色味を調整することが可能です。そのような処理の中でも、光沢を付与する方法を光沢クロメート処理と呼び、亜鉛めっきに光沢クロメート処理を施すことを「ユニクロめっき」と言います。これも、クロムめっきを分かりにくくしています。電着塗装(電着めっき)電着塗装とは、塗料を溶かした液に素材を漬け、電気を流すことで素材に塗膜を形成する塗装方法です。素材と塗料の一方を正、もう一方を負にする必要があるため、導電性の素材にしか適用できませんし、電荷を付与できる塗料でないと、電着塗装の塗布物にはできません。電気めっきと加工方法が似ているためか、「電着めっき」と呼ばれることもあるようです。しかし、塗膜は樹脂であり、金属ではないので、電着メッキ(電着塗装)は、メッキではありません。電着塗装には、電気めっきと同様のメリットがあります。例えば、構造が複雑な部分にも均一な厚さの塗膜を形成できますし、膜厚の調整も容易です。また、そのほかの塗装方法と比べ、ラインを組みやすいという利点もあります。めっき塗装とは最近では、めっき塗装と呼ばれる、めっきなのか塗装なのか分かりにくい表面処理方法も目にします。しかし、これは、あくまで「めっき調塗装」であり、めっきではありません。めっき塗装は、銀を含んだ塗料をスプレーなどで素材に吹きかけ、素材表面で銀鏡反応を起こして鏡のような光沢ある塗膜を形成。その上に、透明な塗料を使った塗装を施すことで、金属的な光沢と質感が得られる塗装方法です。透明な塗料に色を加えれば、多様な金属的色彩を付けることもできます。この塗装方法は、薬品で銀を還元して析出させる銀鏡反応を利用することから、「銀鏡塗装」や「銀鏡めっき」とも呼ばれます。ですが、もちろん、銀を含んだ溶液に素材を漬け込み、表面から金属を析出させる銀めっきとは異なります。めっき塗装では、塗料を付着させた部分でのみ銀鏡反応が起こります。そのため、銀めっきとは違って、均一な膜形成は困難ですし、表面の微細な凹凸を完全に埋めることも容易ではありません。このように、めっき塗装の塗膜は、めっきに近い質感が得られるものの、密着性が弱く、剝がれやすいという欠点があります。ですが、塗装の前処理の工夫などにより、高い密着性を実現しているメッキ塗装もあります。Mitsuriでしたら、めっき塗装を得意としてるメーカーもご紹介できますので、ぜひご相談ください。めっきのメリット・デメリットそれでは、めっきと塗装のどちらを選べば良いのでしょうか。まず、めっきには、以下のようなメリットがあります。剥がれにくいめっきは、めっき金属が素材の金属と金属結合することで素材表面に析出したものです。このとき、素材とめっきの境界は、金属が連続的に存在しているかのように接着しています。そのため、素材とめっきが共に金属であるめっきは剥がれにくいです。ですが、無電解めっきなどで樹脂等の非金属にめっきする場合は、素材表面の微細な凹凸に入り込んだめっき金属が固化し、引っ掛かることで接着します。この効果をアンカー効果と呼びますが、金属同士の接着に比べると接着性が低いです。傷みにくく、長持ちするめっきは、傷みにくく、長持ちしやすいです。めっきは通常、傷や部分的な剥離をきっかけにサビや痛みが進行します。金属が塗料に比べて高強度であること、まためっきの剥がれにくさから、めっきは塗装に比べて長持ちし、長く機能を保持できます。多様な機能を付与できるめっきを行うと、めっきする金属の性質を利用することが可能です。耐食性を引き継げるのはもちろん、導電性や熱伝導性、磁気的性質など、様々な特性を素材に付与することができます。金属的な光沢や質感が得られる金属の特徴的な光沢や質感を素材に与えることができます。また、めっきを薄くすることで、下地の色味などを反映することができるため、多様な色彩や光沢を形作ることが可能です。複雑な構造の素材にもめっきすることができるめっき金属は、素材表面の原子レベルの凹凸にも入り込むことができます。そのため、構造が複雑な素材であってもめっきすることが可能です。膜厚が均一で、ムラが生じにくいめっきは、液体が浸透する箇所であれば、めっきすることが可能です。そのため、ムラが生じにくく、均一性の高い金属膜を形成することが可能です。しかし、めっきには、以下のようなデメリットがあります。加工工程が多く、時間がかかるめっきをしっかりと付けるには、素材が清浄であることや素材が露出していることが必要です。そのため、素材の前処理に多くの工程を必要とし、その結果、ある程度の時間を要します。設備が大掛かりで、工場内でしかめっきすることができないめっきは、加工工程が多いことから、様々な設備を必要とします。そのため、自然と設備が大掛かりになり、現地へ行ってめっきするといったことが難しくなります。めっきの貼り直しが困難めっきは、一部分が剥離したからといって、その上からめっきし直すことはできません。めっき可能かどうかは、素材とめっき金属のイオン化傾向の大小などにも依存するため、めっきの貼り直しには、一度全てのメッキを剥がすことなどが必要となります。素材によってはめっきすることが難しいある金属の上には、この金属をめっきできると言うように、めっき可能か否かには制限があります。例えば、金などの貴金属をめっきする場合には、素材へのめっき金属の拡散防止が必要となるため、ニッケルを下地めっきとして挟まなければなりません。また、イオン化傾向が大きいチタンやマグネシウムなどは、どのような金属に対してもめっきすることが難しいです。塗装のメリット・デメリット一方、塗装には、以下のようなメリットがあります。塗料の種類が豊富なため、多様な色彩を選択できる塗料は、樹脂や硬化剤、顔料など、さまざまな成分を混ぜ合わせたものです。それらは無数に存在し、その組み合わせも多様です。そのため、塗料には、どのような色彩にも対応可能というほどの種類があります。機能を付与できる塗装は、めっきと同様の機能を付与することもありますが、めっきできないものや、通常めっきしないものに施すことが多く、付与する機能もめっきとは異なることが多いです。代表的なものとして、耐火塗料や難燃性塗料を用いた防火機能の付与があります。そのほか、抗菌性を付与する抗菌塗料、カビの発生を抑制する防カビ塗料など、付与できる機能は様々です。現地へ行って塗装することができる塗装方法や塗装設備によりますが、塗装対象がある現地に行って塗装することができます。そのため、建築物など、動かせないものの塗装が可能です。塗り直しが容易塗装方法や塗料にもよりますが、塗装済みのものにも、そのまま上から塗装できます。塗り直しを前提としていることも多く、ひび割れや剥離が生じても、塗り直すことで元の品質や機能を容易に復元することができます。安価塗装方法や塗料にもよりますが、めっきに比べると低コストです。塗料自体が、めっきに使用する金属よりも安価ですし、加工工程もめっきより少なく、加工賃も安くなります。しかし、塗装には、以下のようなデメリットがあります。塗膜の均一性が低く、ムラが生じやすい塗膜の厚みや表面の均一性は、塗装の仕方に依存します。手塗りで不均一になるのは当然ですし、吹付塗装で機械的に360°を均一に塗装できたとしても、塗装対象の形状によっては、不均一性が生じてしまいます。電着塗装など、めっきに近い均一性が得られる塗装法もありますが、総じてめっきよりも均一性が低いです。剥がれやすい塗装は、めっきに比べて剥がれやすいです。塗装は主に、アンカー効果で接着しますが、めっきが素材表面の原子レベルの凹凸に入り込んで固化するのに対し、塗装は表面に付着するだけです。そのため、アンカー効果が弱く、接着性が低いです。また、塗料が金属よりも強度が低く、壊れやすいことも、塗装の剥離の原因となります。長持ちしない塗装は、めっきに比べると、長持ちしません。塗膜は、そもそも、金属めっきよりも強度が低く、また密着性も弱いため、剥がれたり、痛みやすかったりします。そのため、塗装は、定期的に塗り直すものとして用いることが多々あります。めっき塗装の一括見積りを依頼するなら【Mitsuri】この記事から、めっきは高級感があって品質が高く、塗装は手軽で多様な色彩にも対応可能であるとまとめることができます。ですが、近年では、めっき塗装のようなめっきに似せた塗装法も開発されており、いずれは、外観や品質を再現することも可能になるかもしれません。しかし、新しい技術ゆえに、メーカーごとの技術の差が大きく、品質もピンからキリまで、というのが現状です。その点、Mitsuriは、日本全国に協力会社が250社以上ございますので、めっき塗装を得意とする先進的な塗装メーカーのご紹介が可能です。Mitsuriでのお見積りは複数社から可能です!ぜひお気軽にお問い合わせください。
ユニクロめっきとはいったいどのような特徴があるのでしょうか?めっきとは物体に対して金属の膜で覆うことを指しますが、ユニクロと聞いてどのような処理がされているかをご存知の方は少ないかもしれません。 この記事では「ユニクロめっきとは何か」について解説するだけでなく、亜鉛めっき・クロメートの違いについても解説します。 ユニクロめっきとは ユニクロめっきとは、電気亜鉛メッキされた材料に対してフッ化物を含んだ溶液でクロメート処理したもののことを言い、一般名称は「光沢クロメート」とも呼ばれています。色合いはシルバーに少し青みがかったような見た目です。 クロメート処理は、亜鉛・アルミ・マグネシウムなどに対して六価のクロム酸を主とした処理液で表面処理することを言います。この処理をすることで一部の六価クロムが還元されて三価の水和クロムによる無機高分子被膜が形成され、残りの六価クロムとの相乗効果で耐食性を増加させるのです。 ただし六価クロムには有害性があり、RoHS指令(*)と呼ばれるEUの特定有害物質の使用制限法に違反しているため、EUではユニクロめっきされた商品は販売できません。また、EU以外の地域での六価クロムを使用した商品でも、EUへ輸出する場合は使用制限に抵触するため注意が必要です。特に自動車や電気電子機器などの部品を多く使用する業界では、メーカー側だけでなく協力会社も含めて、RoHS指令に抵触しないように管理しなければなりません。規制のトラブルを避けるためにも、協力会社は納入仕様書をよく確認して、めっきの選択をする必要があるでしょう。 ここで、六価クロムを含有しためっき品は使用不可という仕様の場合、ユニクロめっきの代わりに何を使えばいいのかという疑問が出てきます。その解答としましては、現在ではユニクロめっきの代替品として、「三価ホワイト(別名:三価クロメート)」というめっきが流通されています。 三価ホワイトは防錆力が通常のユニクロめっきと同等に備えていること。また、有害性がなく、RoHS指令の規制対象外として使用することが可能です。以上のことから、三価ホワイトのめっきをオススメする、または売りにしている企業は多いです。 (*)RoHS指令 RoHS指令制限6物質 Pb Hg Cd Cr+6 PBB PBDE 鉛 水銀 カドミウム 六価クロム ポリ臭素化ビフェニル ポリ臭素化ジフェニルエーテル もしめっきについてお困りのことがあればMitsuriまでご相談ください。ユニクロめっきだけでなく、三価ホワイトについても対応したメーカーをご紹介できます。 ユニクロメッキと亜鉛めっきとクロメートの違い ここではユニクロめっき・亜鉛めっき・クロメートの違いについて紹介します。 防錆力の違い 防錆力は、以下の順で効果が高いです。 【クロメート>ユニクロめっき>亜鉛めっき】 クロメートとユニクロめっきは亜鉛めっきを下地とし、亜鉛めっきよりも更に防錆力を高めています。そしてクロメートとユニクロめっきは、どちらもクロメート処理が施されていますが、使用されている溶液が異なり、結果クロメートの方がクロムの含有量が多いことから、ユニクロめっきよりも防錆力が高くなります。クロムには金属の表面を不働態被膜と呼ばれる薄い膜で覆い、サビから守る効果が期待できます。 ユニクロめっき ユニクロめっきは前述でもお伝えしたように、電気亜鉛めっきされた材料に対してフッ化物を含んだ溶液でクロメート処理したものになります。正式名称は「光沢クロメート」と呼ばれ、シルバーに青みがかった色合いが特徴です。クロメート処理には、防錆力を高めるだけでなく、亜鉛皮膜の変色を防ぐことや光沢を持たせて見た目を良くするといった役割もあります。 また、ユニクロめっきには、クロメート処理をした際に六価クロムが含まれるため、EUのRoHS指令の規制対象品に該当します。RoHS指令に対応するために、六価クロムを使うことを禁止する仕様がある場合は、防錆力が同等でもある三価ホワイトのめっき品を使うなどの対応をする必要があるでしょう。 亜鉛めっき 亜鉛めっきには「犠牲防食」と呼ばれる防錆効果により、鉄を腐食から守ってくれます。 亜鉛めっきの塗膜にキズが付いて鉄の素地が露出してしまった場合、上図右のように亜鉛が鉄よりも優先して溶けだし、酸化被膜を作られて鉄の腐食を防止します。もし鉄が亜鉛めっきではなく樹脂系塗装だけ施した状態だと、キズが付いてしまった時点で、下図左のように鉄が空気中の酸素と反応し赤錆が発生して、強度の低下および破損といった問題が出てしまいます。 樹脂などによる被覆 亜鉛めっき 腐食して赤錆が発生する 腐食しない(犠牲防食) 亜鉛めっきは大きく分けて「電気亜鉛めっき」と「溶融亜鉛めっき」の2種類に分けられます。 電気亜鉛めっきは材料を亜鉛の槽に浸し、電解することで亜鉛の被膜を形成します。被膜の厚みが2~25μmと非常に薄く、均一に亜鉛が付着していることから仕上がりが綺麗なことが特徴です。被膜が薄いことから、寸法の精度が厳しい場合にも適していると言えるでしょう。電気亜鉛めっきは防錆効果を高めるために、ユニクロめっき・クロメートの下地として合わせて処理されていることが多いです。 溶融亜鉛めっきは別名「ドブづけ」「天ぷらめっき」とも言われるように、材料を高温で溶かした亜鉛の槽に浸して亜鉛を付着させます。製品にもよりますが、電気亜鉛めっきと比べると膜厚は8~125μmと少々厚みがあるため耐食性には優れています。しかし、膜厚があるぶん、寸法精度を必要とする部材には適していないことと、高温の亜鉛槽に浸すため、材料が薄いと歪んでしまう恐れがあるので注意が必要です。 参考:電気亜鉛めっきとは【3分でわかる】専門家がわかりやすく解説します! クロメート クロメートの一般名称は「有色クロメート」とも呼ばれています。クロメートは二層の被膜から成り立っており、下地に電気亜鉛めっきを有します。製法としては電気亜鉛メッキの上から六価クロムを主成分とした溶液に浸漬させることでクロメート被膜を生成。クロメート処理された材料は虹色がかったような金色の見た目になり、耐食性に優れた性質を有します。 六価クロムの含有率はユニクロめっきよりもクロメートの方が大きく、それにともない耐食性もユニクロめっきより優れています。クロメートもユニクロめっきと同様にRoHS指令に抵触してしまうため、納入仕様書をよく確認したうえで使うようにしてください。 ユニクロめっきの製品事例 ボルトナット類 ボルトナット類はユニクロめっきが採用されている最もポピュラーな商品と言っても良いでしょう。上図は六角ボルトナットの写真ですが、キャップスクリューやアンカーボルトといった、ボルトナット類全般でユニクロめっきは使用されています。土木関係だと、ボルトナットは景観性をそこまで重視しない箇所にもよく使われるので、サビのない洗練された見た目のステンレスよりも、比較的安価で購入できるユニクロめっきを使うことが多々あります。 クサリ類 クサリ類もボルトナットと同様にユニクロめっきが施されているものが多いです。こちらもクサリのみではなく、カンやシャックルにもユニクロめっきが使われています。 Lアングル 建築系で用いられる補強金物のLアングルにもユニクロめっきが施されています。 ユニクロめっきとクロメートには、有害と言われている六価クロムを含有していることから、EUのRoHS指令に対応していない点には注意してください。それらの代替品として三価ホワイトと呼ばれるめっきも現在では流通しています。三価ホワイトは有害性のない三価クロムを使用しているほか、防錆力もユニクロめっきと同等レベルで持ち合わせています。 めっきのことでお困りのことがあれば是非Mitsuriへご登録ください。日本全国で250社以上の工場が登録しているため、ご希望に沿う工場が見つけやすく、直接取引が行えます。 下の赤いボタンをクリックして、お気軽にお問い合わせください。
今回は真鍮とメッキについて詳しく解説していきます。 真鍮とは黄銅ともよばれる、銅と亜鉛の合金で、導電性が非常に高く、また加工性も優れており、広く使われている素材の一つです。その優れた素材の真鍮にも表面が酸化により錆びたり黒く変色するというデメリットがあります。その対策としてメッキ処理が必要になります。 真鍮にメッキをする際の注意点 現在では、真鍮にはさまざまなメッキ処理が施されています。素材の特性やメッキの特性、組み合わせ、またメッキ前の洗浄工程でも注意点が多くみられます。 今回はその中から、主な注意点を紹介します。 アルカリ焼け 引用元:株式会社 K&K メッキの前処理工程では脱脂処理は必須です。脱脂剤の中で、pHの高い液に長時間浸漬するとアルカリ焼けの原因になります。上の画像に記されたPH値では、pH7~10では変色が見られませんが、pH11より変色が始まり、pH13.1では真っ黒にアルカリ焼けしています。 アルカリ焼けを起こしたままメッキ処理を行うと、メッキ剥がれを起こす原因になるため注意が必要です。 エッチング エッチングは、メッキ前工程の洗浄で発生する腐食のことです。メッキ前工程では、メッキを付きやすくするため、素材の活性化が不可欠で、その際に複数の酸が使用されています。真鍮に含まれる銅や亜鉛は塩酸に非常に弱く、腐食を進めます。エッチングされた状態のままメッキを施すと、密着不良、膨れ、剥がれの原因になります。 ストライクメッキ 真鍮は錆びにくい特徴を持った素材ですが、酸化被膜が発生します。酸化被膜に覆われるとメッキとの密着が悪くなりメッキ剥がれの原因に繋がります。 メッキの密着を強化するためストライクメッキ(下地メッキ)を施し、素材とメッキの密着性を高めます。ストライクメッキにはさまざまな種類がありますが、その中でも銅、ニッケルによるストライクメッキがよく知られています。 真鍮に向いているメッキ処理 メッキの向き不向きについては、メッキ業者さんの技術にも左右されます。 真鍮と相性の良いメッキは数多くありますが、その中でも一般的に多く使われているメッキを紹介しますので参考にしてみて下さい。 無電解ニッケルメッキ 無電解ニッケルメッキは”カニゼンメッキ”とも呼ばれています。 下地メッキが不要とも言われ、真鍮とメッキの相性は非常に良いです。特徴としては、メッキの膜厚を管理することができ、複雑な形状や穴の内部に関しても均一に処理する事が可能な点です。 電気メッキ 電気メッキはさまざまなメッキがありますが、全般的に電気メッキと真鍮の相性は良いとされています。電気メッキの特徴としては、比較的に安価であり、また真鍮に欠けている、耐食性、耐摩耗性、また外観の見栄えを良くすることができます。 まとめ 真鍮とメッキについて詳しく説明してきましたが、いかがでしたか。 近年では、真鍮も多種多様な用途が開発され、またそれと同様にメッキについても日々研究開発されています。 素材や処理方法など、組み合わせや、機能が幅広いことから、全てを説明することはできませんが、メッキ選びの参考にしていただければと思います。
メッキは、材料に防食性や装飾性、導電性や摩耗耐性などの機能性を付与するために行われます。なかでも電解メッキは、最も広範囲に用いられているメッキ技術であり、身の回りの金属製品の多くがこの技術によりメッキされています。 しかし、電解メッキはどのような方法で、どんな種類があるのか詳しくは分からない方も多いことでしょう。金属製品を扱っている方には、電解メッキのメリットやデメリットを知っておきたいと考えている方もいるかも知れません。 そこで本記事では、電解メッキの詳細や種類、メリットやデメリットを解説していきます。無電解メッキとの違いについてもご紹介しますので、メッキ方法を選択するときの参考にしてください。 電解メッキとは 電解メッキとは、電解液にメッキされる金属を浸し、電気を通してメッキしたい金属を析出させるメッキ法で、電気メッキともいわれます。 具体的には、電解液に陽極であるメッキ金属と陰極である被メッキ金属を浸し、直流の電気を通します。すると、陽極では酸化反応によってメッキ金属が液中に溶け出し、陰極では還元反応によってメッキ金属が析出してメッキ皮膜に成長します。 しかし、この方法は、メッキ金属が可溶性金属、つまり電解液に溶ける金属でない場合は用いることができません。 電解液に溶けにくい金や白金などの不溶性金属をメッキしたい場合には、シアン化金カリウムや塩化白金酸に代表される金属塩など電解液に溶ける状態にしたものを補給して電解メッキを行います。 電解液への添加剤もメッキの品質や機能に重要な役割を持ちます。その役割の1つがメッキ皮膜の形状制御です。添加剤はこの場合、被メッキ金属やメッキ皮膜に吸着して反応を促進、または抑制し、メッキ皮膜の平滑化や光沢化、穴埋めなどを可能にします。添加剤によっては、メッキ皮膜の硬さ・伸び・脆さ・応力などの物性にも影響するものがあります。 しかし、これらの添加剤は、ニーズに応じて試行錯誤で開発されてきたため、メーカーによって多種多様な種類があります。Mitsuriでしたら、電解メッキの多様な技術やノウハウを持つメーカーをご紹介可能です。電解メッキのご依頼がありましたら、ぜひMitsuriにご連絡ください。 電解メッキと無電解メッキの違いについて 電解メッキと無電解メッキ、この2種のメッキ法の違いは、電解メッキが電気を流したときの電気分解による化学反応を利用しているのに対し、無電解メッキは薬品による化学反応だけを利用していることです。そのため、無電解メッキは化学メッキとも呼ばれます。 電解メッキ・無電解メッキの違い 電解メッキ…電気を流したときの電気分解による化学反応を利用 無電解メッキ…薬品による化学反応だけを利用 無電解メッキは、メッキしたい物質を含む水溶液に被メッキ物を浸し、表面で還元反応を生じさせてメッキ皮膜を成長させる方法です。 無電解メッキでは、電気を使わないため、被メッキ物に導電性がなくてもメッキできます。さらに、電気の流れに左右されないため、表面に均一にメッキすることができます。そのため、無電解メッキは、複雑な形状のメッキにより適しています。 それに対し、電解メッキで同様な品質のメッキ皮膜を得るには、メッキ治具による被メッキ物の配置や、メッキ皮膜が厚く、もしくは薄くなってしまう部位近くへの補助極の配置など、多くの工夫やノウハウを必要とします。 無電解メッキは、化学反応だけで皮膜を形成するので、膜厚に限度がある、析出する速度が遅いなどの欠点があります。また、化学反応に高温の維持を必要とする場合もあることから、メッキ槽の管理が難しくなります。さらに、メッキ槽が化学的に不安定になりやすく、その調整のために投入する薬液にコストがかかります。このようなメッキ槽の維持管理の困難さから、無電解メッキの多くは電解メッキよりも高コストです。 無電解メッキでは、ph調整剤や添加剤などのメッキ槽へ投入する薬品と、温度維持などのメッキ槽の調整だけで、メッキしたい物質と被メッキ物が化学反応しなくてはなりません。そのため、無電解メッキの種類は電解メッキに比べて限られています。 電解メッキのメリット・デメリット 電解メッキは、以下のようなメリット・デメリットがあります。 電解メッキのメリット ・低コスト ・メッキする速度が速い ・厚くメッキすることが可能 ・様々な金属・合金にメッキ可能 ・被メッキ金属への熱的影響が小さい 電解メッキのデメリット ・均一にメッキすることが難しい ・複雑形状の金属にメッキすることが難しい ・不導体にはメッキできない 電解メッキの工程について 引用元:通販モノタロウ 電解メッキの工程は、上図に見られるように、大きく前処理、本処理、後処理に分けることができます。ここでは、これらの処理工程の詳細について解説していきます。 前処理 前処理は、メッキがしっかりと密着するように、汚れや酸化皮膜などを除去し、被メッキ物の素地面を露出させるために行われます。 前処理の工程は、脱脂、酸洗い、酸活性など多様で、メッキの種類や被メッキ物の材質、加工履歴などの違いにより、適切な工程が選定され、実施されます。 ●水洗・湯洗 水洗・湯洗は、水やお湯で素材を洗浄する工程で、各工程で用いられた溶剤などの成分を次工程に持ち込ませないために行われます。そのため、各工程の完了後には水洗・湯洗が実施され、状態の確認も併せて行われます。 ●脱脂(溶剤洗浄、アルカリ洗浄) 脱脂は、素材表面に付着したゴミや、加工の際に用いたオイルなどの有機性の汚れを除去する工程です。その中でも、溶剤洗浄は有機溶剤を用いることで、アルカリ洗浄はアルカリ性の苛性ソーダなどに漬け込むことで油脂を取り除きます。 ●酸洗い 酸洗いは、サビやスケール(熱処理で生じる焼けや変色)を除去するため、硫酸や塩酸など、比較的強力な酸に漬け込む工程です。 ●電解洗浄 電解洗浄は、素材に電流を流すことで素材表面に酸素や水素などを発生させ、そのガスの力によって微細な凹凸面に付着したゴミやスケールなどを除去する工程です。取り切れなかった汚れや酸化皮膜を取り除く仕上げの洗浄工程と言えるでしょう。 ●酸活性(酸浸漬) 酸活性は、素材を酸に漬けることでメッキしやすい素材の素地面を露出させる工程です。 ●中和 酸やアルカリを次工程に持ち込ませないように酸性溶液やアルカリ性溶液に漬け込んで中和することがあります。 ●ストライクメッキ 引用元:株式会社会津技研 ストライクメッキは、下地メッキを施す工程で、素材表面が活性化しにくい場合などに行われます。上図は、下地メッキとして銅を用いた例で、平滑化や密着性向上を目的に実施されます。 本処理 実際にメッキを施す工程です。 黄銅、亜鉛、アルミニウムなどのメッキでは、耐食性向上や変色防止を目的に、さらにクロメート処理を行うことがあります。クロメート処理は、金属表面にクロムの酸化皮膜を形成させる表面処理です。 後処理 メッキを施した後は、水洗した後、水を吹き飛ばす、熱するなどすることで乾燥させれば完成です。 ただし、水素脆性に陥りやすい素材では、190〜220℃程度に加熱することで水素を追い出すベーキング処理が必要になることがあります。 電解メッキの種類 それでは、電解メッキにはどのような種類があるのでしょうか。代表的な「銅メッキ」「亜鉛メッキ」「クロムメッキ」「ニッケルメッキ」「金メッキ」について解説します。 銅メッキ 銅は、熱伝導性・導電性が高く、展延性に優れる金属で、赤い色調の光沢を持ちます。 メッキとしては、高い導電性や優れた展延性を活かして、プリント配線板などの電子部品に多く用いられています。 装飾を目的とする場合は、銅は変色するため、クリアー塗装などの表面処理が必要です。しかし銅メッキは、優れた平滑性を示し、また加工しやすいことから、他のメッキの下地に多く利用されています。 また銅メッキは、炭素添加によって耐摩耗性を向上させる浸炭処理時に、炭素の侵入を防止する特性があります。そのため、浸炭の効果が表れてほしくない部位に銅をメッキすることがあります。 亜鉛メッキ 亜鉛は、大気中で優れた耐食性を示し、水分下でも亜鉛自らが溶解して鉄の腐食を防ぐ働きをします。 そのため、亜鉛メッキは、鉄鋼の防サビ用メッキとして広く用いられています。 しかしほとんどの場合、亜鉛メッキだけでは耐食性能に限りがあるため、メッキ後にクロム酸塩を含む溶液に浸して酸化皮膜を生じさせるクロメート処理を行います。クロメート処理では、その溶液を調整することで、亜鉛メッキに以下の外観や耐食性を持たせることができます。 クロメート処理の種類 光沢クロメート:ユニクロとも呼ばれ、青銀白色で美しいが耐食性は低い 有色クロメート:黄金色や虹色で、耐食性は良好 緑色クロメート:緑色や茶色で、高腐食環境で使用される 黒色クロメート:黒色で、耐食性は良好 亜鉛メッキの用途としては、自動車部品、電気機器部品、機械部品、建築部品などが挙げられます。最近では、クロメート処理による装飾性の向上により、事務機や文具などの外観が問題となる製品にも多く利用されています。 参考記事 鉄鋼に対するメッキについては以下に詳しくご紹介していますのでご覧ください。 ⇒鉄メッキならMitsuri!1コ〜お受けいたします! クロムメッキ クロムは、光沢のある銀白色の硬い金属で、耐食性のある酸化皮膜を形成することからメッキとして広く用いられています。 クロムメッキは、光沢と美しい外観を活かす場合には装飾用として、硬さや耐摩耗性を活かす場合には工業用として利用されています。 装飾用クロムメッキでは、主に銅やニッケルを下地として0.1~0.5μm程度の薄いメッキを施します。装飾用クロムメッキは、この薄さでも耐食性、耐変色性、耐候性などに優れた性能を示します。 そのため、自動車や機械の外装部品、台所用品やインテリア関係など、美観を求められる製品で幅広い用途があります。また、装飾用としては、漆黒調の皮膜が得られる黒クロムメッキもあり、自動車やオートバイ、カメラ、時計、事務機などに利用されています。 工業用クロムメッキは、硬質クロムメッキとも呼ばれ、5μmから100μm超まで、用途に従って厚くメッキします。そのメッキ皮膜は、硬く耐磨耗性に優れ、低摩擦係数や非粘着性などの特性も有します。そのため、ベアリングやロール、シリンダー、金型などの産業用機械部品や自動車部品などに広く用いられています。 ニッケルメッキ ニッケルは、光沢があり耐食性や導電性に優れています。硬さ、柔軟性なども良好なため、メッキとしてもよく利用されています。ただし、空気中で時間経過と共に変色するので、その上にクロムメッキを施すことが多いメッキ金属です。 ニッケルメッキは、様々な金属への密着性が高いことから、中間層や下地としてよく用いられています。また、銅素材に金をメッキする際には、金が銅に拡散するのを防ぐため、金の下地としてニッケルがメッキされます。 ニッケルメッキは、電解メッキするときの添加剤によって無光沢から光沢まで調整することができます。そのため、自動車部品や産業機械部品などのほか、装飾用にも多く用いられています。特殊な用途として、はんだ付け性が高いことから電子部品などにもよく利用されています。 またニッケルメッキは、無電解メッキでも行えるため、複雑な形状や精密な部品のメッキには無電解メッキが用いられます。 金メッキ 金は、高い熱伝導性・導電性を持ち、化学的に非常に安定で耐食性に優れた金属です。 金メッキとしては、はんだ付け性が良く、時間経過による接触抵抗の変化が小さいため、電子部品などに多く利用されています。外観も美しいので、装飾器具や時計、自動車のエンブレムや内装部品などに用いられています。 上述したように、金は銅や銅合金と接すると拡散していくため、銅素材にメッキする場合にはニッケルメッキの下地が必要です。 金は無電解メッキも可能なため、導電しない素材や複雑なパターンのメッキには、無電解メッキが用いられています。 まとめ 以上、電解メッキの詳細や種類、また無電解メッキと比較した場合のメリット・デメリットについて解説しました。 電解メッキは、無電解メッキと比較して、低コストで様々な金属にメッキできるため、最も広範に用いられているメッキ法です。 電解メッキの種類も様々ですが、品質やコストを勘案すると、無電解メッキが適切な場合もあります。 Mitsuriは協力工場が全国に140社以上あるため、電解メッキと無電解メッキ含めて最適なメッキ法をご提案できます。 電解メッキでお困りの際は、ぜひMitsuriにお申し付け下さい。
今回は、亜鉛めっきの特徴や種類について解説します。亜鉛めっきは、鋼材の表面に亜鉛の皮膜を形成し、耐食性を得ることを指します。しかし、一口に亜鉛めっきと言っても、大きく分けて「電気亜鉛めっき」と「溶融亜鉛めっき」の2種類があり、それぞれで特性に違いがあります。亜鉛めっきとは亜鉛めっきとは、電気の作用で亜鉛をめっきしたり、溶融させた亜鉛に浸漬させて、鋼材をめっきしたりする手法のことです。亜鉛めっきを施した鋼材は、表面が銀白色の外観になり、錆びや腐食を防止できるようになります。亜鉛めっきの特徴亜鉛めっきは、主に鉄製品に対して処理を行います。亜鉛めっきを施すと、めっきの表面に不働態皮膜が形成されます。不働態皮膜とは、めっき層と鉄の素地に空気や水が侵入を防止し、錆びを生じにくくする皮膜のことです。引用元:日本溶融亜鉛鍍金協会 溶融亜鉛めっきとは不働態皮膜があると、犠牲防食作用と呼ばれる反応が得られます。犠牲防食は、表面に傷が付いて素地の鉄が露出した場合でも、周囲の亜鉛が鉄より先に溶け出して電気科学的に保護し、鉄の腐食を保護します。亜鉛めっきの種類亜鉛めっきは大きく分けて「電気亜鉛めっき」と「溶融亜鉛めっき」の2種類があります。電気亜鉛めっき引用元:三和メッキ工業株式会社 亜鉛めっき電気亜鉛めっきは、鉄素地を亜鉛めっき液に浸してから、電気を通すことで亜鉛めっきを施す手法です。亜鉛めっき液中でプラス極にある亜鉛が電気の作用で溶解し、マイナス極である鉄に亜鉛皮膜を析出します。ただし、電気亜鉛めっきだけでは、亜鉛めっき皮膜が酸化し、腐食してしまう恐れがあります。そのため、一般的に亜鉛めっき皮膜の上にクロメート処理を施して、より亜鉛めっき皮膜の耐食性を向上させる場合が多いです。また、クロメート処理を施した場合は、導電性も高くなる傾向にあります。クロメート処理は、光沢クロメート(ユニクロ)・有色クロメート・黒色クロメート・三価クロメートなどがあり、種類によって異なる外観と特性が得られます。電気亜鉛めっきは、溶融亜鉛めっきに比べて膜厚が薄いため、自動車部品やコンピュータ部品のような精密機器に採用されることが多いです。参考:ユニクロめっきとは!?亜鉛めっき/クロメートとの違い参考:電気亜鉛めっきとは【3分でわかる】専門家がわかりやすく解説します!溶融亜鉛めっき引用元:マルコ工業株式会社 溶融亜鉛メッキ溶融亜鉛めっきは、高温で溶かした亜鉛の槽に鋼材を浸漬させた後、冷却することで亜鉛めっきを施す手法です。その手法の様子から、別名「ドブ漬けめっき」とも呼ばれています。溶融亜鉛めっきは、塗装や電気めっきと異なり、亜鉛と鉄素地から形成される合金層が、亜鉛と鉄素地を強く結合するため、めっきが剝がれにくく、長期間耐食性が持続します。このことから、建築物やガードレールなどの幅広い用途で活用されています。また、溶融亜鉛めっきは、電気亜鉛めっきのようにクロメート処理を必要としません。溶融亜鉛めっきは、大きな製品の処理に適していますが、高温のめっき液に浸漬させるので、材料が反りやすくなります。加えて、膜厚が電気めっきよりも厚くなるので、精密部品への処理には適していません。参考:溶融亜鉛メッキとは?特徴、規格、加工工程を解説
今回は、無電解ニッケルめっきの原理、用途、特性、メリット・デメリットについて解説します。無電解ニッケルめっきは、電気を使わずに化学的還元作用を利用してニッケル金属の皮膜を形成する手法を指します。似たものに電気ニッケルめっきがありますが、無電解ニッケルめっきと、処理の方法だけでなく、成分や特性についても違いがあります。参考:ニッケルめっきとは?種類や特徴、メリット・デメリット無電解ニッケルめっきとは?引用元:株式会社センショー 無電解ニッケル無電解ニッケルめっきとは、電気ではなく、化学的還元作用にて材料にニッケル金属の皮膜を形成する手法のことで、別名「カニゼンめっき」や「化学ニッケル(化学Ni)」とも呼ばれています。無電解ニッケルめっきは、一般的にリンを含有しています。膜厚を均一にしやすい特徴があり、複雑な形状や寸法精度を要する製品に適しています。無電解ニッケルめっきの原理引用元:アルファメック株式会社 無電解ニッケルめっきとは無電解ニッケルめっきにおける、ニッケルの析出には、めっき液中のニッケルイオンと電子が必要です。無電解ニッケルめっきは、主に還元剤である次亜リン酸塩が添加されており、分解された次亜リン酸から発する電子が、ニッケルの析出に利用されています。還元されて析出したニッケルは、還元剤の分解触媒として作用し、めっき表面で連続的に分解反応とニッケルの析出を行います。この仕組みを「自己触媒還元めっき」と呼びます。無電解ニッケルめっきの用途無電解ニッケルめっきは、以下のような用途で使用されています。<無電解ニッケルめっきの用途>使用目的製品耐食性、耐摩耗性反応槽、輸送管、パイプ、ポンプ、金型自動車部品、船舶部品、航空部品はんだ付け、耐食性、導電性付与接点、シャフト、抵抗体サーミスタ、ディスク耐食性、硬さ、精密性、耐摩耗性ピストン、軸、シリンダー測定装置、変速機耐食性、非磁性、硬さ時計、カメラ、電子顕微鏡等の部品耐食性、耐摩耗性、硬さ金型、事務機、船舶航空、原子力等の部品無電解ニッケルめっきの分類無電解ニッケルめっきは、還元剤の種類により、ニッケル-リン系とニッケル-ホウ素系があります。ニッケル-リン系は細かく分けると「低リンタイプ」「中リンタイプ」「高リンタイプ」の3種類があります。低リンタイプ低リンタイプは、1~4%程度のリンを含有する無電解ニッケルめっきです。他の種類に比べて700Hvと硬度が高く、耐摩耗性と耐アルカリ性に優れていますが、耐食性は劣ります。中リンタイプ中リンタイプは、5~10%程度のリンを含有する無電解ニッケルめっきです。一般的に採用されることの多い種類で、無電解ニッケルめっきと言えば中リンタイプを示す場合が多くあります。通常は非磁性ですが、熱により磁性を示します。また、耐食性・耐摩耗性や各物性のバランスも他の無電解ニッケルめっきと比べて良好で、汎用性に優れています。高リンタイプ高リンタイプは、11~13%程度のリンを含有する無電解ニッケルめっきです。耐食性に優れているものの、はんだ付け性に劣ります。また、結晶構造が非晶質で、通常時および比較的高温で熱処理した状態でも非磁性を示します。他のめっき種類に比べて光沢が少ないのも特徴です。無電解ニッケル-ホウ素めっき無電解ニッケル-ホウ素めっきは、ホウ素を0.2~1.0%程度含有する無電解ニッケルめっきです。はんだ付け性や硬度に優れています。また、400℃程度の熱処理では、変色しない特徴があります。ただし、めっき液が高価のため、他の種類に比べて処理コストがかかります。無電解ニッケルめっきのメリット●耐食性の向上無電解ニッケルめっきは、一般的に電気ニッケルめっきよりも耐食性に優れています。数%のリンを含有し、リンの含有率が多いほどピンホールが少なくなり、耐食性が向上します。●均一な膜厚が得られやすい電気ニッケルめっきは、めっきする製品に対して、電気が弱くかかる部分と強くかかる部分に分かれてしまうので、均一な膜厚になりにくい特徴があります。一方で、無電解ニッケルめっきは、電気を使わずに化学的還元作用にて材料をめっきする手法のため、膜厚が均一になりやすいメリットがあります。●非金属材料にも対応可能無電解ニッケルめっきは、電気を使わないめっきなので、樹脂やセラミックなどの不導体に対しても対応が可能です。●電気ニッケルめっきと比べて耐摩耗性に優れる電気ニッケルめっきの硬度は、ビッカース硬さで200Hv程度、熱処理で500Hv程度の値です。一方で無電解ニッケルめっきの硬度は500Hv程度あり、熱処理を行うと最高1000Hv程度までの硬さが得られます。無電解ニッケルめっきのデメリット●電気ニッケルめっきに比べてコストが高い無電解ニッケルめっきは、電気ニッケルめっきに比べて材料費が高いほか、めっきの析出速度も遅いので、コストが高くなる傾向にあります。●めっき液の管理が難しい無電解ニッケルめっきは、電気ニッケルめっきに比べて浴組成の変動が大きく、扱いが難しいので、技術や知識を要します。無電解ニッケルめっきの特性機械的特性無電解ニッケルめっきは、硬度が高く、耐摩耗性に優れています。また、ねじを締め付ける際に摩擦の熱で溶着してしまう「かじり」についても防止する効果が期待できます。無電解ニッケルめっきの種類ごとの硬度については以下の通りです。<無電解ニッケルめっきの種類別硬度>めっき種類低リン中リン高リンホウ素硬度Hv熱処理前700550500780400℃,2h10009509501000引用元:ヱビナ電化工業株式会社 無電解ニッケルめっきには、どの様な種類がありますか?化学的特性無電解ニッケルめっきは、種類によって良好な耐食性、耐酸性、耐アルカリ性の特性を有しています。以下の表は、リン含有量による化学的特性の違いを示したものです。<めっきのリン含有別化学的特性>めっき種類低リン中リン高リン耐食性(塩水噴霧)やや劣る良好普通~良好耐酸性劣る普通良好耐アルカリ性良好普通劣る引用元:アルファメック株式会社 無電解ニッケルめっきとは電磁気的特性無電解ニッケルめっきは、導電率(比抵抗)、接触抵抗、磁性(非磁性)、電磁波防止の特性を有しています。めっきの種類による磁性の有無と、比抵抗の値については以下の通りです。<めっきの種類別比抵抗(導電率)と磁気特性>めっき種類低リン中リン高リンホウ素比抵抗 μΩ・cm30~6060~75150~2005~6磁気特性熱処理前磁性非磁性非磁性磁性280℃,2h磁性磁性非磁性磁性引用元:ヱビナ電化工業株式会社 無電解ニッケルめっきには、どの様な種類がありますか?光学的特性無電解ニッケルめっきは、めっきの処理液の違いにより、光沢が出るタイプと出ないタイプがあります。光を反射させたくない医療機器や光学機器などでは、光の反射率が低い黒色無電解ニッケルめっきが採用されることもあります。熱的特性無電解ニッケルめっきは、良好な耐熱性、熱伝導性、はんだ付け性の特性を有しています。以下の表は、無電解ニッケルめっきの中リンタイプの融点、熱伝導度、膨張係数を示したものです。融点熱伝導度膨張係数890℃0.0105cal/cm/s/℃13×10-6cm/cm/℃引用元:アルファメック株式会社 無電解ニッケルめっきとは電気ニッケルめっきとの違い無電解ニッケルめっきと電気ニッケルめっきは、めっき方法、皮膜成分、物性に違いがあります。●めっき方法の違い電気ニッケルめっきは、名前の通り電気を使ってめっき皮膜を形成する手法です。浴管理は無電解ニッケルめっきに比べて比較的容易のため、金額も安価な傾向にあります。しかし、電流分布によりめっきの厚みが変わるので、無電解ニッケルめっきと違って均一にめっきを付けるのが困難です。無電解ニッケルめっきは、化学反応にてめっきを施すため、均一にめっきを付けることが可能です。複雑な形状の製品に対してもめっきしやすい特徴があります。ただし、めっきの析出速度が遅い、浴管理が難しいなどの難点もあり、コスト面で電気ニッケルめっきに劣ります。●皮膜成分の違い電気ニッケルめっきは、およそ99.5%以上がニッケルでできているので、純ニッケルめっきとも呼べます。一方で無電解ニッケルめっきは、ニッケル90~95%、リン5~10%程度の割合でできた合金めっきになります。そのため「ニッケル-リン合金めっき」と呼ばれることもあります。●物性の違い無電解ニッケルめっきと電気ニッケルめっきの物性の違いは以下の通りです。<無電解ニッケルと電気ニッケルの物性の違い>性質無電解ニッケル(Ni-P 中リンタイプ)電気ニッケル組織非結晶性(熱で結晶)微結晶性融点890℃(P;9%)1450℃電気抵抗60μΩ/cm(熱処理400℃で1/3に低下)約8.5μΩ/cm比重7.9(P;9%)7.7-8.7硬さHv500±50(析出状態)Hv900±100(400℃ 1Hr)Hv150-250(普通浴)Hv400-500(光沢浴)磁気特性非磁性強磁性耐食性電気ニッケルより優れるNi-Pより劣る引用元:アルファメック株式会社 無電解ニッケルメッキと電気ニッケルメッキの違い
三価クロメートは、ヨーロッパなどで使用禁止となっているクロメート処理の代替として採用されている表面処理です。主に亜鉛めっきの防錆性能の向上や外観の色調変化などが目的で、通常は亜鉛めっきとセットで行われています。自動車や電気・電子、建築など、幅広い分野で使用されており、身近な例では、青銀色や黄金色、黒色のネジ・ボルト・ナット類が挙げられます。この記事では、三価クロメートとは何かというところから、種類や特徴、類似の加工方法であるクロメート処理(六価クロメート)やクロムめっきとの違いについて解説していきます。三価クロメートとは三価クロメートとは、三価クロムを含むものの六価クロムは含まない溶液に金属を浸すことによって、金属表面で化学反応を起こし、金属表面に防食効果などを発揮する皮膜を形成する化成処理のことです。「三価クロム化成処理」や「クロメートフリー処理」「とも呼ばれます。詳しくは後述しますが、単にクロメート処理と言う場合、六価クロムで皮膜を形成する化成処理を指します。しかし、この六価クロムは、生体に有害で、欧州などで規制されていることから、現在はクロメート処理から六価クロムを含まないクロメートフリー処理へと移行が進んでいます。そのため、最近では、クロメート処理を「六価クロメート処理」と六価クロムを用いることを明示して呼称したり、記述したりすることが多くなっています。三価クロメートの適用対象は、主に亜鉛めっきや亜鉛合金めっきが施された鋼材や金属製品で、めっきの後処理として施されるのが三価クロメートです(上図参照)。具体的には、溶融亜鉛めっきや電気亜鉛めっきが施されたもの、ガルバリウム鋼、ガルタイト鋼(ガルファン鋼)が素材のものなどが挙げられ、これらのめっき製品には、六価クロメート処理と三価クロメートのどちらかが適用されています。なお、ガルバリウム鋼とガルタイト鋼は、下表のめっき浴成分によってめっき処理された鋼です。<ガルバリウム鋼(溶融55%アルミニウム-亜鉛合金めっき鋼)のめっき浴>構成成分AlSiAl, Si, Zn以外の元素Zn成分量 (%)50.0~60.01.0~3.05.0以下残部<ガルタイト鋼(溶融亜鉛-5%アルミニウム合金めっき鋼)のめっき浴>構成成分AlAl, Zn以外の元素Zn成分量 (%)4.0~5.51.0以下残部三価クロメートの用途は、亜鉛めっきや亜鉛合金めっきの用途とほとんど同じで、自動車や輸送機器、電気機器、建築部材、事務機などと幅広い分野に及んでいます。特に、自動車や電機などの輸出企業が取り扱う製品は、欧州市場などを考慮して、三価クロメートへの切り替えが進んでいます。しかし、建材・建築などの市場が国内中心の企業は、未だ六価クロメートが適用された製品を使用しています。三価クロメートの効果三価クロメートの主な効果は、耐食性の向上と外観の色調変化です。そもそも、その下地である亜鉛めっきには、以下のような優れた効果があります。▼鉄の表面を物理的に被覆して、腐食原因となる水と酸素を鉄の表面から遮断する。▼中性環境で酸化皮膜を形成し、良好な耐食性を発揮する。▼鉄の身代わりとなって錆びる犠牲的防食作用が働くため、亜鉛めっき皮膜にキズが生じて鉄素地が一部露出しても、防錆効果を発揮する。▼めっき処理の直後は、銀色(光沢のある灰色)を呈する。▼複雑な形状でも、均一な厚さでめっき皮膜を形成することができる。▼コストが低い。▼量産加工が容易。しかし、亜鉛めっきは、大気中で使用していると、時間経過とともに酸化皮膜が厚くなって光沢を失います。さらに、大気が汚染されていたり、湿度が高かったりするような腐食環境下では、亜鉛自身の腐食によって白錆を生成します。その点、亜鉛めっきの上に三価クロメートを施すと、その化成皮膜が空気に対して反応性のないバリヤー層として亜鉛めっきを保護する上、亜鉛の白錆発生も長期間防止するため、高い防錆効果が期待できます。また、三価クロメートの処理液や処理時間などを制御することによって、外観の色調をある程度変化させることが可能です。亜鉛めっき直後の銀色そのままの色調から、青白い色、淡い黄色、黒色というように、いくつかの色調を付与することができます。そのほか、三価クロメートには、以下のような効果もあります。▼塗料などの密着性向上。▼耐指紋性や防汚性が向上。▼亜鉛めっきのみよりも電気抵抗は高いが、導通性は維持される。三価クロメートの表記六価クロメートの表記がJIS規格(JIS H 8625:1993)にて定められているのに対し、三価クロメートの表記は、規定されていません。そのため、現状は六価クロメートのJIS規格に従って表記し、注釈として「三価クロメート」や「TC(Trivalent Chromate)」などと追記することが標準的となっています。例えば、電気めっきで鉄生地に8μm厚の亜鉛をめっきした後、淡黄色の三価クロメートを施す場合は、下記のように記述します。Ep-Fe/Zn 8/CM1B(三価クロメート)なお、「Ep」は電気めっきを表す記号で、クロメート処理(六価クロメート)の記号「CM」は色調によって下表のような種類があります。<クロメート皮膜の種類と表記・色合い>クロメート皮膜の種類記号代表的色合い光沢CM1A透明, 青味のある透明淡黄色CM1B淡黄色の干渉模様黄色CM2C黄色の干渉模様緑色CM2Dオリーブ, グリーン, ブロンズ, 褐色なお、三価クロメートと六価クロメートの双方に黒色のクロメート処理がありますが、これもJIS規格に規定されていないので、下記のように「三価黒クロメート」などと追記することになります。・Ep-Fe/Zn 8(三価黒クロメート)三価クロムめっきとの違い三価クロメートと類似した言葉に「三価クロムめっき」がありますが、三価クロムめっきはめっき処理を指すため、化成処理を指す三価クロメートとは全く異なります。三価クロムめっきは、三価クロムが安定的に存在するめっき浴に金属を浸し、電流を流すことで、金属表面にクロムのめっき皮膜を生成する表面処理法です。実際、三価クロムめっきと三価クロメートは、下表のように皮膜の化学組成が大きく異なります。ただし、下表の皮膜の化学組成は、一例であり、めっきはめっき浴に、化成処理は処理剤によって異なります。なお、三価クロメートの黒色以外の処理剤には、有機酸を含有する有機系とシリカを含有する無機シリカ系があります。<三価クロムめっきと三価クロメートの皮膜の化学組成>皮膜の種類三価クロムめっき皮膜三価クロム化成皮膜無機シリカ系有機系皮膜の化学組成Cr:91.3%C:2.7%O:2.0%S:4.0%Cr:20%O:55%Zn:20%Si:微量Co:微量Cr:22%O:55%Zn:18%C:5%Co:微量三価クロメートの種類と特徴三価クロメートは、色調の違いにより、大きく「三価白」と「三価黒」の2種類に分けられます。その色調の違いは、化成処理の処理剤や処理時間などによってコントロールされています。ただし、同じ色の処理剤でも、その成分や処理条件などは、処理剤によって異なります。そのため、処理剤のメーカーによって、色調も変わってくるので注意が必要です。三価白三価白は、銀色、青白色(青みを帯びた銀色)または淡黃色(黄みを帯びた銀色)の色調となるように調整された三価クロメートです。「三価白クロメート」や「三価ホワイト」とも呼ばれます。銀色となるのは、三価クロム化成皮膜が0.02~0.05μm程度と薄く、クリアー(透明色)で、亜鉛めっきの色調がそのまま現れるように調整された三価クロメートです。「三価無色クロメート」と呼ばれることがあります。青白色となるのは、三価クロム化成皮膜が0.05~0.3μm程度の厚みで、六価クロメートで青白色となる「ユニクロ」の代替となっている三価クロメートです。「三価ユニクロ」や「三価光沢クロメート」とも呼ばれています。淡黃色となるのは、三価クロム化成皮膜の膜厚を0.2~0.5μm程度とした三価クロメートです。「三価有色クロメート」とも呼ばれます。このように、三価白は、膜厚によって、銀色、青白色、淡黄色と色調が変化します。膜厚は耐食性にも影響し、皮膜が厚いほど、耐食性が高くなるという特徴があります。そのほか、三価白による化成皮膜は、損傷すると、皮膜中の成分と露出した亜鉛が反応し、自己修復する機能も備えています。三価黒三価黒は、黒色となるように調整された三価クロメートです。その処理剤に添加された硫黄とコバルトが反応し、黒味成分となる硫化コバルトへ変化することによって黒色が実現されています。「三価黒クロメート」や「三価ブラック」とも呼ばれます。三価黒による化成皮膜は、0.2~0.5μm程度の厚さです。この膜厚は、三価有色クロメートと同程度であることから、耐食性についても三価有色クロメートと同水準となっています。ただし、化成皮膜の表面は、微小な凹凸を形成するため、光が反射しにくく、光沢のないマットな仕上がりとなります。また、耐傷性が低いという欠点もあります。そのため、三価黒の化成皮膜には、多くの場合、三価黒の後処理としてクリアー塗装を施して、透明な塗膜でコーティングを行います。それにより、耐傷性を高めるとともに、光沢を付与して、光沢感のある美麗な黒色を実現しています。三価クロメートの種類と名称以上の三価クロメートの種類と名称をまとめると下表のようになります。<三価クロメートの名称と種類一覧>クロム化成処理の名称クロム化成処理の種類処理の名称色調三価クロメートクロメートフリー処理三価クロム化成処理三価白三価白クロメート三価ホワイト三価無色クロメート銀色三価ユニクロ三価光沢クロメート青白色三価有色クロメート淡黄色三価黒三価黒クロメート三価ブラック黒色三価クロメートと六価クロメートの違い三価クロメートと六価クロメートの違いは、六価クロムの有無です。六価クロメートの処理液や化成皮膜は、三価クロムと六価クロムの双方を含有する一方、三価クロメートの処理液や化成皮膜は、三価クロムは含むものの、六価クロムはほぼ含有していません。毒性の有無上述したように、六価クロムは人体に対して強い毒性を示す一方、三価クロムには、毒性はありません。六価クロムは、接触や吸引、摂取によって、皮膚炎や皮膚潰瘍、吐き気、嘔吐、下痢などを引き起こし、消化器系に対しては胃腸炎・胃癌・大腸癌・肝臓障害、呼吸器系に対しては気道炎・呼吸障害・肺癌の原因となります。従って、六価クロメートの処理液については、作業者への付着はもちろん、周囲への飛散も避けることが必要です。処理液から水分が蒸発し、粉末状となった六価クロムが空気中に浮遊することがあるからです。地下に浸透し、井戸水などを汚染する可能性もあります。一方、三価クロムには、全く毒性はなく、自然界の河川や海洋などにも存在している物質です。有毒どころか、人間にとっては必須ミネラルであると考えられており、欠乏症ともなると糖の代謝異常を起こすとされています。参考:クロムの毒性(三価・六価)を解説規制の有無六価クロムは、世界の多くの国で使用禁止となっていますが、三価クロムの使用を禁止している国はありません。六価クロムは、下表で説明しているELV指令やWEEE指令、RoHS指令が施行されて以降、欧州連合(EU)域内で規制されています。<欧州連合(EU)域内の六価クロム規制>法令名施行年月内容ELV指令2000年10月自動車の廃棄処分時、製造者は、鉛・水銀・カドミウム・六価クロムを含む部品は取り外して保管し、環境に影響を与えないよう、再利用または処理しなくてはならない。2003年7月1日以降、市場に流通する自動車および自動車部品は、鉛・水銀・カドミウム・六価クロムを含有してはならない。WEEE指令2005年8月電気・電子機器の廃棄処分時、製造者は、六価クロムなどの有害物質を環境に影響を与えないように廃製品から除去しなくてはならない。RoHS指令2006年7月電気・電子機器の製造段階での、六価クロムなどの6つの有害物質の使用を原則禁止。2019年7月4つの有害物質が追加されて、合計10つの有害物質の使用を原則禁止。つまり、EU域内では、六価クロメートが使用された自動車や電気・電子機器は販売できません。ただし、どのような物質でも完全にゼロにすることは不可能なので、上表の法令でも最大許容含有量が定められています。その中で六価クロムは、0.1wt%(1000ppm)が最大許容含有量です。参考:RoHS指令について詳細を解説!対象範囲についてもご紹介!そのほか、中国や韓国、タイ、ベトナム、米国カリフォルニア州などにも、RoHS指令と類似の規制が存在します。一方、日本では、六価クロムの使用が禁止されているわけではありませんが、下表のような法令および基準が存在するため、六価クロムの取り扱いには注意が必要です。なお、下表は国の法令・基準であり、自治体によっては、より詳細で厳しい基準を条例で定めている場合があります。<日本における六価クロム規制>法令名基準名対象基準値環境基本法環境基準公共用水域 (注1)0.05mg/L以下 (注2)地下水0.05mg/L以下水質汚濁防止法排水基準工場排水など0.5mg/L以下土壌汚染対策法土壌環境基準土壌0.05mg/L以下注1. 公共用水域とは、河川や湖沼、海域、用水路などの公共利用のための水域や水路のこと。注2. 2022年4月1日から0.02mg/Lに改正。ただし、三価クロメートについても、硫酸クロム・硝酸クロム・酢酸クロムといった三価クロム化合物、硫酸コバルトといったコバルト化合物、硫酸ニッケルといったニッケル化合物など、多様な化学物質を処理液に含みます。そのため、これらの化学物質を含有する排水には、適切な処理が必要不可欠です。そして、その結果生じるスラッジからは、有効活用できる物質は最大限リサイクルし、廃棄物の量を最小限化することが必須となります。また、これらの化学物質は、PRTR(化学物質排出移動量届出)制度に基づく第1種指定化学物質に指定されています。PRTR制度は、これらの化学物質の排出量などを規制するものではありませんが、公共用水域や土壌といった環境への排出量と廃棄物としての外部への移動量を国に届け出することが義務付けられています。さらに、届出データは国によって公表されることになっているため、事業者は、化学物質を適正に管理することが重要です。色調の違い三価クロメートと六価クロメートでは、実現可能な色調も異なります。下表は、三価クロメートと六価クロメートの実現可能な色調をまとめたものです。六価クロメートの色調には、三価クロメートの色調にはない緑色などが存在し、六価クロメートの方が色調のバリエーションが多くなっています。また、それぞれの色調も、六価クロメートの方が鮮やかだったり、光沢が強かったりするなど、六価クロメートの方が優れているとされています。しかし、近年では、三価クロメートでも六価クロメートの色調をほぼ実現できるようになっているほか、三価クロメートで下表の色調以外の色調も表現できるようになっています。<三価クロメートと六価クロメートの色調>クロム化成処理の名称クロム化成処理の種類処理の名称色調三価クロメートクロメートフリー処理三価クロム化成処理三価白三価白クロメート三価ホワイト三価無色クロメート銀色三価ユニクロ三価光沢クロメート青白色三価有色クロメート淡黄色三価黒三価黒クロメート三価ブラック黒色六価クロメートクロメート処理六価クロム化成処理光沢クロメートユニクロ銀色青白色淡黄色有色クロメート黄色黄金色虹色緑色クロメート緑色褐色黒色クロメート黒色耐食性の違い耐食性について、三価クロメートは、六価クロメートと比べて同等か、上回るとされています。下表は、三価クロム化成皮膜と六価クロム化成皮膜に対し、5%濃度の塩水を吹き付けたときの白錆発生までの時間を記載したものです。下表から、無色または光沢の化成皮膜では、三価クロメートの方が六価クロメートよりも耐食性が高く、有色や黒色の化成皮膜でも、三価クロメートは、六価クロメートと比べて同等以上の耐食性を示しています。<三価クロメートと六価クロメートの白錆発生にかかる時間>色調の種類塩水(5%濃度)噴霧時の白錆発生までの時間三価クロメート六価クロメート無色 (銀色), 光沢 (青白色)72〜120時間24〜72時間有色120〜360時間120〜240時間緑色ー240時間以上黒色120〜240時間120〜240時間また、三価クロム化成皮膜は、六価クロム化成皮膜に比べて、高温時の耐食性が高いという特徴があります。六価クロム化成皮膜は、約70℃以上の高温で皮膜にクラックが発生し、耐食性が著しく低下します。一方、三価クロム化成皮膜は、約200℃の高温でもクラックが発生しにくく、それ故に耐食性の低下が起こりません。自己修復機能の違い上述した三価クロム化成皮膜の自己修復機能は、六価クロム化成皮膜にも備わっており、六価クロム化成皮膜の自己修復機能の方が効果が高いとされています。六価クロム化成皮膜の自己修復機能は、六価クロムによって実現されます。六価クロム化成皮膜では、皮膜が傷付いた場合でも、六価クロムが溶出して露出した亜鉛めっきを被覆し、その部分を化成皮膜に変化させます。そのため、六価クロム化成皮膜では、色調に関わらず、自己修復機能が働きます。一方、三価クロム化成皮膜では、皮膜中の成分が亜鉛めっきと成膜反応を起こすことで、皮膜が再生されます。この成膜反応の反応性は、三価白クロメートの有機系で高く、無機シリカ系では低いために、有機系の方が自己修復機能の効果が高くなっています。なお、三価黒クロメートの化成皮膜には、自己修復機能はありません。コストの違い三価クロメートは、以下のような理由から、六価クロメートと比べると高コストになるとされています。●三価クロメートが六価クロメートよりも高コストになる理由・三価クロメートの処理剤が高価。・厳密なpH管理の必要性から処理液の管理が難しく、成膜反応が遅いことから処理時間も長くなるため、処理コストが高い。しかし、近年、六価クロメートから三価クロメートへの代替が進展したことで、三価クロメートのコストは低下してきており、需要が多い色調・性能の三価クロメートでは、六価クロメートと同程度のコストとなっています。ただし、需要の少ない色調の三価クロメートはまだ割高であり、トップコートなどで性能を高めた三価クロメートは、当然ながら高コストです。三価クロム化成皮膜からの六価クロムの溶出について以上のように、三価クロメートは、六価クロメートと様々な違いはあるものの、新たな処理剤の開発や処理方法の高度化、需要増によるコスト低下などにより、六価クロメートの代替としての役割を十分に果たしつつあります。しかし、三価クロム化成皮膜にコバルトを含有している場合、皮膜に六価クロムが含まれることがあります。これは、皮膜への水分の浸透などによってコバルトが不安定化して三価クロムを酸化し、六価クロムへと変化させることがあるからです。そして、三価クロム化成皮膜から六価クロムが溶出してしまう事例も発生しており、その対策が処理剤のメーカーなどにより進められています。ただし、注意点として、六価クロムが溶出した事例についても、その量はRoHS指令などで規定された最大許容含有量よりも微量であるため、特に規制に抵触したわけではなく、欧州などでの販売ができなくなったわけではありません。なお、このコバルトの不安定化は、以下のように不安定化の原因を排除することによって抑制することができます。●コバルトの不安定化を抑制する方法・三価クロム化成皮膜中のコバルト濃度の低減。・三価クロム化成皮膜のクラック発生の抑制。・三価クロム化成皮膜への水分の浸透を防止。そして、これらの実現には、以下のような対策が効果的です。・三価クロメートの処理液中のコバルト濃度を下げることで、皮膜中のコバルト濃度の低減が可能。・三価クロメートの処理時間を短くし、処理温度を下げることで、皮膜中のコバルト濃度の低減が可能。・三価クロム化成皮膜の乾燥温度を低くすることで、皮膜のクラック発生の低減が可能。・高温多湿環境下での保管や使用を禁止することで、皮膜への水分の浸透を防止することが可能。・三価クロメートの処理液にコバルトの酸化抑制剤を加えることで、コバルトの不安定化の抑制が可能。三価クロメートの処理剤の各メーカーは、これらを元に処理剤の改良を進めているほか、コバルトを含まない処理剤やクロム自体をも含まない処理剤の開発にも着手しています。
溶融亜鉛めっきは、溶かした亜鉛に製品を浸漬させてめっきを施す手法で、錆びや腐食を防止するために行われます。溶融亜鉛めっきは、標識やガードレールなど、私たちの生活の身近な製品に採用されているめっき方法ですが、どのような仕組みで防錆効果を得ているのか分からない方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、溶融亜鉛めっきの特徴や加工工程、規格などについて解説します。溶融亜鉛めっきとは引用元:株式会社小池テクノ 溶融めっきの概要と利点・欠点溶融亜鉛めっきとは、高温で溶かした亜鉛の槽に鋼材を浸し、表面に亜鉛皮膜を形成することです。別名「どぶ付けめっき」とも呼ばれています。溶融亜鉛めっきの特徴と用途鋼材は溶融亜鉛めっきを施すことで、「保護皮膜作用」と「犠牲防食作用」の2つの効果が得られ、錆びや腐食を防止できるようになります。保護皮膜作用は、鋼材の表面に空気や水を通しにくい亜鉛の酸化皮膜を形成することを指します。引用元:日本溶融亜鉛鍍金協会 溶融亜鉛めっきとは犠牲防食作用は、亜鉛めっきにキズが付いた場合、素地の鉄が露出してもキズの周囲に亜鉛が溶けだして保護し、鉄が腐食するのを防ぎます。また、溶融亜鉛めっきは、亜鉛と素地の鉄から形成される合金層により、互いの金属が強く結合しているため、めっきが剥がれにくい特徴もあります。溶融亜鉛めっきは、長期間に渡り錆びや腐食を防ぐ効果があるため、ガードレール・標識や照明などの柱・橋梁・各種金物など、さまざまな場所で活用されています。腐食環境の厳しいところでは、亜鉛めっきの上に塗装を施すこともあります。適切な塗装系を用いて亜鉛めっき上に塗装を施した場合、以下表のように耐用年数が通常の亜鉛めっきの2倍程度の効果が得られるとされています。<亜鉛めっき上に塗装した時の耐用年数(単位:年)>亜鉛付着量田園地帯海洋工業地帯g/m2めっきのみ二重防食めっきのみ二重防食めっきのみ二重防食107~2294~1510~25 2~11 7~241~45~15305~48818~3735~5013~2825~465~612~30488~76335~6045~7028~4037~6015~2120~32引用元:日本溶融亜鉛鍍金協会 亜鉛めっき上の塗装についてただし亜鉛は活性の高い金属で、鉄素地と同じ要領で塗装をすると塗膜が剥離しやすくなるため、エポキシ系などの密着性のよい塗装系を選択しなければなりません。参考として、日本溶融亜鉛鍍金協会で記述されている、亜鉛めっき面への塗装の実例を以下に示します。<亜鉛めっき面への塗装仕様>新設亜鉛めっき面への塗装仕様既設劣化亜鉛めっき面の塗装仕様工程塩化ゴム系樹脂塗料ポリウレタン樹脂塗料塩化ゴム系樹脂塗料ポリウレタン樹脂塗料素地調整油分の付着は脱脂洗浄する。付着性を確保するためにスイープブラスト処理を行う。ブラスト処理が難しい、複雑形状の小部材は屋外で暴露し、白さびを除去した後塗装してもよい。表面に付着しているほこり、ゴミなどを清掃除去する。油分の付着は脱脂洗浄する。白さびは研掃たらしなどで除去し、赤錆発生部は電動工具でSIS St3に素地調整する。補修塗--亜鉛めっき面用エポキシ樹脂塗料亜鉛めっき面用エポキシ樹脂塗料下塗塩化ゴム系塗料下塗亜鉛めっき面用エポキシ樹脂塗料亜鉛めっき面用エポキシ樹脂塗料亜鉛めっき面用エポキシ樹脂塗料中塗塩化ゴム系塗料中塗ポリウレタン樹脂塗料用中塗塩化ゴム系塗料中塗ポリウレタン樹脂塗料用中塗上塗塩化ゴム系塗料上塗ポリウレタン樹脂塗料上塗塩化ゴム系塗料上塗ポリウレタン樹脂塗料上塗引用元:日本溶融亜鉛鍍金協会 亜鉛めっき上の塗装について溶融亜鉛めっきのメリット溶融亜鉛めっきは以下のようなメリットがあります。・保護皮膜作用・犠牲防食作用により、錆びや腐食を防止する。・長い年月が経過してもめっきが剥がれにくい。・大気中であれば数十年にわたる耐用年数が期待できる。・めっき槽に浸漬できるものであれば、ボルト・ナットなどのサイズの小さな製品から、橋梁やガードレールなどの比較的大型の構造物までめっきが可能。溶融亜鉛めっきのデメリット溶融亜鉛めっきのデメリットは以下の通りです。・密閉した部分のある製品や、複雑な形状の製品はめっきできない場合がある。・海岸地帯や工業地帯では耐用年数が短くなる溶融亜鉛めっきは、密閉構造の製品や内部に空気がたまる箇所があると、浮力が働いてめっき槽への浸漬が難しくなるほか、内部の空気が膨張することで水蒸気爆発を起こしてしまいます。これらを避けるためにも、構造物には切り欠きや空気抜き孔が必要です。溶融亜鉛めっきの規格溶融亜鉛めっきの規格は、JIS規格の【JIS H 8641 溶融亜鉛めっき】があります。JIS H 8641:2007では、溶融亜鉛めっきの種類及び記号を以下のように記述しています。<溶融亜鉛めっきの種類及び記号>種類記号適用例(参考)1種 AHDZ A厚さ5mm以下の鋼材・鋼製品、高管類、直径12mm以上のボルト・ナット及び厚さ2.3mmを超える座金類。1種 BHDZ B厚さ5mmを超える鋼材・鋼製品、鋼管類及び鋳鍛造品類。2種 35HDZ 35厚さ1mm以上2mm以下の鋼材・鋼製品、直径12mm以上のボルト・ナット及び厚さ2.3mmを超える座金類。2種 40HDZ 40厚さ2mmを超え3mm以下の鋼材・鋼製品及び鋳鍛造品類。2種 45HDZ 45厚さ3mmを超え5mm以下の鋼材・鋼製品及び鋳鍛造品類。2種 50HDZ 50厚さ5mmを超える鋼材・鋼製品及び鋳鍛造品類。2種 55HDZ 55過酷な腐食環境下で使用される鋼材・鋼製品及び鋳鍛造品類。備考1,HDZ 55のめっきを要求するものは、素材の厚さ6mm以上であることが望ましい。素材の厚さが6mm未満のものに適用する場合は、事前に受渡当事者間の協定による。2,表中、適用例の欄で示す厚さ及び直径は、呼称寸法による。3,過酷な腐食環境は、海塩粒子濃度の高い海岸、凍結防止剤の散布される地域などをいう。引用元:JIS H 8641:2007 溶融亜鉛めっきまた、溶融亜鉛めっきの種類及び記号ごとのめっき付着量は、JIS規格に規定された試験を行ったとき、以下の表に適合しなければなりません。<溶融亜鉛めっきの付着量及び硫酸銅試験回数>種類記号硫酸銅試験回数付着量g/m2平均めっき膜厚μm(参考)1種 AHDZ A4回-28~421種 BHDZ B5回-35~492種 35HDZ 35-350以上49以上2種 40HDZ 40-400以上56以上2種 45HDZ 45-450以上63以上2種 50HDZ 50-500以上69以上2種 55HDZ 55-550以上76以上備考1,めっき膜厚とは、めっき表面から素材表面までの距離をいう。2,1種A及び1種Bの平均めっき膜厚欄の数値は、硫酸銅試験回数から推定した最小めっき皮膜厚さの範囲を示す。3,平均めっき膜厚は、めっき皮膜の密度を7.2g/cm3として、付着量を除した値を示す。引用元:JIS H 8641:2007 溶融亜鉛めっき溶融亜鉛めっきの加工工程引用元:新潟亜鉛工業株式会社 溶融亜鉛めっきとは? 加工工程溶融亜鉛めっきの基本的な加工工程は、以下のようにして行われています。1.脱脂処理:鉄鋼製品の表面に付着した油脂や塗料を除去するため、苛性ソーダ水溶液に浸します。2.水洗:鉄鋼製品の表面に付着している脱脂液を洗い流します。3.酸洗処理:鉄鋼素材に付着した錆びやスケールを除去するため、塩酸または硫酸水溶液に浸します。4.水洗:鉄鋼製品の表面に付着している酸洗液を洗い流します。5.フラックス処理:酸洗後の錆びの発生防止と、鉄と亜鉛の合金反応を促進させるため、加熱した塩化亜鉛アンモニウム水溶液(フラックス)に漬けて、素地表面にフラックス皮膜を形成させます。6.乾燥:亜鉛の飛散(スプラッシュ)を抑えるために乾燥させます。7.めっき:鉄鋼素材を溶融した亜鉛浴のなかに浸して皮膜を形成させます。鋼材の材質や形状によって最も適合するめっき条件を選択します。8.冷却:めっきを施した鉄鋼製品を温水で冷却します。冷却の工程により、鉄と亜鉛の合金層の成長を抑えます。
今回はニッケルめっきの種類や特徴について解説します。ニッケルめっきは、美しい外観と優れた耐食性を有しためっき処理で、電気コネクターやスイッチの装飾・防食、金めっきやクロムめっきの下地めっきなど、幅広い用途で採用されています。しかしニッケルめっきは、皮膜を析出させる手法の違いで「電解ニッケルめっき」と「無電解ニッケルめっき」に分かれており、それぞれで特徴に違いがあります。参考:【めっき処理とは?】目的・仕組み・種類・特徴について徹底解説!ニッケルめっきとはニッケルめっきとは、その名前の通り、ニッケルの成分を用いためっきのことを指します。ニッケルは、適度な硬度と柔軟性があり、強磁性を示す金属です。ニッケルめっきを施すと、黄白色の美しい外観になるほか、優れた耐食性が得られます。ニッケルめっきは変色しにくいことから、美観性の向上を目的として利用されることが多くあります。対応する素材は、鉄鋼材料・銅・銅合金・ステンレス・アルミなどが代表的です。ニッケルめっきの種類と特徴ニッケルめっきには、大きく分けて「電解ニッケルめっき」と「無電解ニッケルめっき」の2種類があります。電解ニッケルめっき引用元:アルファメック株式会社 無電解ニッケルめっきの基礎電解ニッケルめっきは、外部電源から供給される電気を利用してめっきを行う手法で、「電気ニッケルめっき」とも呼ばれています。上図のように、陽極のニッケル極板を用い、ニッケルを溶解させることで、陰極の材料にめっきを行います。電解ニッケルめっきは、ステンレス・銅素材への処理がしにくい特徴がありますが、前処理である「ニッケルストライクめっき」を施すことで、良好な皮膜を析出できるようになります。電気ニッケルめっきは、さらに細かく分類すると、「光沢ニッケルめっき」「半光沢ニッケルめっき」「無光沢ニッケルめっき」の3種類があります。●光沢ニッケルめっき光沢ニッケルめっきは、光沢のある黄白色の外観で、変色しにくい特徴があります。ただし、皮膜の硬度が高く、二次加工時のスポット溶接の不具合・カシメ加工でのめっき割れや、クラックなどの不良が発生しやすい点に注意が必要です。用途としては、金めっき・銀めっき・クロムめっきなどの光沢が必要な場合の下地めっきや、耐食性を必要とするめっきの下地、はんだ付けなどに採用されています。●半光沢ニッケルめっき半光沢ニッケルめっきは、光沢ニッケルめっきと比べて光沢が控えめで、柔らかい特徴があります。また、光沢ニッケルめっきと組み合わせた2層のめっきである「ダブルニッケルめっき」を施すことで、より優れた耐食性を得られるようになります。引用元:株式会社三和鍍金 【連載】ダブルニッケルとは vol.2~電位差とガルバニック腐食~ダブルニッケルめっきは、材料の外層にある光沢ニッケルめっきを優先的に腐食させて、素地への腐食を遅らせることが可能です。半光沢ニッケルめっきは、はんだ付け製品に多く採用されています。ダブルニッケルめっきでは、優れた耐食性を有することから、自動車部品や機械部品、装飾部品などに採用されています。●無光沢ニッケルめっき無光沢ニッケルめっきは、その名前の通り光沢のないニッケルめっきです。光沢を出すために必要な添加剤の影響がないので、安定したニッケルめっきの皮膜が得られます。溶接性に優れ、折り曲げても割れにくいため、カシメ加工に強い特徴があります。ただし、表面に指紋が付きやすいほか、経年変化による変色が発生する場合があります。無電解ニッケルめっき引用元:アルファメック株式会社 無電解ニッケルめっきの基礎無電解ニッケルめっきは、電気を利用せず、化学的還元作用によりめっきを施す手法で、別名「カニゼンめっき」とも呼ばれています。無電解ニッケルめっきは、還元剤である次亜リン酸塩が酸化され、亜リン酸塩になります。このときに電子を放出してニッケルイオンを還元し、めっき皮膜になる仕組みです。無電解ニッケルめっきは、電解ニッケルめっきよりも均一に皮膜を析出できるので、寸法精度を要する製品や、複雑な形状の製品のめっきに適しています。ただし、他の表面処理に比べて単価が高い傾向にあります。無電解ニッケルめっきは、主にリンが含まれており、リンの含有量によって「低リンタイプ」「中リンタイプ」「高リンタイプ」に分類されます。リンの含有量が多いと、ピンホールが少なくなり、耐食性が向上します。これらは熱処理を施すことで、析出時500~700Hvの硬度が、900〜1000Hv程度まで向上させられます。参考:鋼の性質を変える【熱処理】とは?仕組みや種類について徹底解説!また、無電解ニッケルめっきは、ホウ素を含有したものもあります。各種類の特性については以下の通りです。●低リンタイプ低リンタイプは、リン含有率が1~4%程度の無電解ニッケルめっきで、700Hv程度の優れた硬度と耐摩耗性を有していますが、耐食性には劣ります。●中リンタイプ中リンタイプは、リン含有率が5~10%程度で、最も一般的に採用されている無電解ニッケルめっきです。通常は非磁性ですが、熱により磁性を示します。また、耐食性・耐摩耗性や各物性のバランスも良好で、汎用性に優れています。●高リンタイプ高リンタイプは、リン含有率が11~13%程度で、耐食性に優れているものの、はんだ付け性に劣ります。また、通常時および比較的高温で熱処理した状態でも非磁性を示します。●無電解ニッケル-ホウ素めっき無電解ニッケル-ホウ素めっきは、ホウ素の含有率が0.2~1.0%の無電解ニッケルめっきで、はんだ付け性や硬度に優れています。ニッケルめっきのメリットとデメリットニッケルめっきは、美しい外観と、優れた耐食性を備えているのがメリットです。ダブルニッケルめっきや高リンタイプの無電解ニッケルめっきを用いれば、より高い耐食性が得られます。無電解ニッケルめっきでは、熱処理を行うことで、用途によっては硬質クロムめっきに匹敵するほどの硬度が得られます。一方で、ニッケルめっきのデメリットは、電解ニッケルめっきを施したときに、薄い膜厚しかつかないなど均一性に乏しいこと、パイプ内部などの電気が届かない箇所は皮膜が付きにくいことが挙げられます。複雑な形状や均一にめっきを施すのに適している無電解ニッケルめっきでは、コストが比較的大きくかかってしまう点もデメリットと言えます。
アルミは、軽量かつ安価で、耐食性や加工性にも優れるため、アルミ缶やアルミ箔など、身近な製品に広く用いられている金属材料です。また、一部のアルミ合金は、高い強度を持つことから、航空機用部材や建築用サッシなどにも使用されています。 このように、家庭用にも産業用にも幅広い用途があるアルミですが、軽量化ニーズの高まりから、その特性や機能性を向上させ、他の様々な金属の代替材料とする技術開発が進んでいます。さらに、導電性の高さにも注目が集まっており、エレクトロニクス分野などでも導電材としての採用が始まっています。 今回の記事では、アルミの特性向上を実現するアルミ材へのめっき方法について解説していきます。めっきの種類やメリットについても説明しますので、ぜひご覧ください。 アルミへのめっきはできるの? アルミは、めっきすることが難しい「難めっき材」として知られていました。しかし、現在では、安定しためっきを確実に形成できるプロセスが開発されています。 アルミは、酸素との反応性が高く、空気中で酸化アルミニウムの皮膜を形成します。この酸化皮膜は、水中のわずかな酸素でも形成されてしまうため、除去が追い付かず、めっきが析出することを阻害し、めっきの密着性も悪化させていました。 これを改善するため、一般的にジンケート処理がアルミ材のめっき前処理として採用されています。この方法では、表面の酸化皮膜を除去すると同時に亜鉛皮膜を置換析出させます。亜鉛は下地メッキにも使用されるような材料ですから、置換析出した亜鉛皮膜の上には密着性の高いメッキを施すことが可能となります。 なぜアルミめっきを行うのか アルミ材は、めっきすることで電気的特性や機械的特性、装飾性などを向上させることが可能です。 ですが、導電性は銅や銀が勝りますし、強度は鉄やステンレスがより優れるので、あえてめっきしたアルミを使う必要はありません。そこで理由となるのがアルミの軽量性です。 アルミは、その比重が鉄やステンレスの3分の1ほどと非常に軽量です。そのため、鉄鋼などの代替材料に用いることができれば、かなりの軽量化が期待できます。もちろん、アルミ合金であるジェラルミンなどを用いれば、強度も鉄鋼などに匹敵させることが可能です。さらに、硬質クロムめっきなどを施せば、さらに耐摩耗性や耐振動性などを向上させることができます。 また、アルミは、導電性が銅の60%ほどですが、その比重は銅の約30%です。そのため、同じ重さの銅に比べて2倍もの電流を通すことができます。しかし、アルミの酸化皮膜は通電性が悪いため、導電材として用いる場合には外部との接触部が抵抗となります。そのため、これまでは電気接点などの用途には使用できませんでした。ですが、ニッケルめっきなどを施せば、酸化皮膜の形成を防ぐことができますので、接触部でも通電性を維持することができます。 アルミ材へのめっきの工程 アルミ材へのめっきの工程は、一般的に以下のように進めます。なお実際は、各工程の間に、工程で用いた薬液などを落とす水洗などの洗浄工程が入ります。 アルミ材のめっき工程 研磨 脱脂工程 エッチング工程 スマット除去工程 ジンケート工程 めっき処理 ここでは、各工程の詳細について解説していきます。 1.研磨 研磨は、鋳造品やダイカスト(ダイキャスト)品、切削加工品で重要となる工程です。 鋳造やダイカストでは、加工後、表面層に鋳巣や湯じわなどが生じることがあります。金型から製品を剥がれやすくする離型剤が残ってしまうこともあり、めっき前にこれらを取り除くための研磨を行います。 また、アルミは軟らかいため、切削加工時、むしれ痕やばりなどが発生しやすく、仕上げ表面に加工硬化や残留応力に起因する加工変質層が生成しやすいです。そのため、これらをめっき前に除去する必要があります。 2.脱脂工程 引用元:株式会社NIMURA 脱脂工程では、付着している工作油や汚れなどを除去するため、上の写真のような薬液に製品を浸漬します。 アルミは、酸にもアルカリにも溶解する両性金属です。よって、鉄やステンレスなどの脱脂工程で用いられる水酸化ナトリウムなどの強アルカリの脱脂剤は使うことができません。 その代わりとして、中性または弱アルカリ性の脱脂剤が使われますが、油性汚れの洗浄効果がより高い弱アルカリ性の脱脂剤を用いることが多いです。その脱脂剤として、ケイ酸ナトリウムやリン酸ナトリウムなどが挙げられますが、この場合においても、pH値はおよそ10以下とする必要があります。ただし、ケイ酸ナトリウムでは、表面にケイ酸皮膜を形成しやすいので、なるべく濃度の低い溶液を使用しなくてはなりません。 そのほか、凹凸があるダイカスト品や切削加工品などは、油分が溜まりやすいため、有機溶媒での脱脂を併用したり、ウォータージェットでの洗浄を行ったりすることがあります。 また、脱脂工程の後のエッチング工程やジンケート工程でもアルカリ溶液が使用されます。そのため、脱脂工程以降においても油脂などを除去する効果が期待できます。 3.エッチング工程 エッチング工程は、予備的に脱脂を行うと共に酸化皮膜を除去する工程です。 この工程では、高温環境で強アルカリ性のエッチング液を使用します。溶解加工を意味するエッチングの言葉通り、酸化皮膜を溶解して除去しますが、溶液の温度や工程の時間によっては溶解が内部に進行してしまうことがあります。 また、強アルカリ性ですから、油脂を乳化分散させる効果があり、脱脂工程と同じく脱脂が可能です。それと同時に、アルミ表面では、水が還元されて水素ガスを発生。ガスが溶液を撹拌して、汚れや異物を取り除きます。 ●エッチング工程のデメリット 強アルカリを用いたエッチングは、酸化皮膜の除去に有効な方法です。しかし、溶解の効果が高すぎるため、以下のようなデメリットも生じます。 表面が粗くなり、光沢感がなくなる アルカリに溶けないケイ素や銅などの成分が残留し、ざらつくことがある 溶解の進行が速いため、寸法の調整が困難 従って、溶液の温度や工程の時間の管理に注意が必要です。また、鏡面光沢仕上げとする場合などには、アルカリ溶液によるエッチングを行わず、酸性フッ化アンモニウムなどを用いた酸性エッチングを行うことがあります。 4.スマット除去工程 スマット除去工程は、表面に残留する不純物や合金成分を除去する工程です。 アルミは、不純物や合金成分に銅やケイ素などを含みます。これらの一部は、アルカリに溶解しないものがあり、エッチング工程の後も微粉末として表面に付着したままとなることがあります。めっき加工では、このような微粉末を「スマット」と呼び、アルミ材のめっきでは、エッチング工程の後にスマットを除去する必要があります。 特に、ケイ素などの除去にはフッ素を含んだ酸性溶液が、銅合金の除去には硝酸を含んだ酸性の溶液が用いられ、製品をこれらの溶液に漬け込むことでスマットを取り除きます。 5.ジンケート工程 ジンケート工程は、アルミの酸化皮膜を除去すると同時に、密着性の良い亜鉛の皮膜を形成させる工程です。これにより、アルミの酸化皮膜が形成されなくなります。 この工程では、強アルカリ性の亜鉛溶液であるジンケート液を用います。まず、この液に漬けたアルミの酸化皮膜が溶解し、続いて、露出したアルミが溶液中の亜鉛と置換して亜鉛が析出します。なお、この置換析出させるめっき法については、以下の「置換めっきとは」で詳しく解説しています。 しかしこのとき、亜鉛の析出が不均一に生じることが多く、通常は硝酸などの薬液で析出した亜鉛を剥離し、もう一度ジンケート液に漬け込みます。これをダブルジンケート処理と言いますが、これにより均一な亜鉛皮膜を形成することが可能となり、優れた密着性を得ることができます。 ただし、密着性については、アルミ合金の種類(番手)に左右されます。そのため、番手によって溶液の使い分けが必要となります。 ●置換めっきとは 置換めっきとは、電気を使わない無電解めっきの中でも、金属のイオン化傾向の大小だけで金属を析出させる方法です。 金属には、溶液中でのイオンのなりやすさを示すイオン化傾向と呼ばれる性質があります。そのため、イオン化傾向が低い金属が溶けた液中にイオン化傾向が高い金属を漬けると、これらの金属が酸化還元反応を起こし、イオン化傾向が高い金属が酸化されて溶解し、イオン化傾向が低い金属が還元されて析出します。この反応は、漬けた金属がもう一方の金属で完全に覆われると終了します。 アルミと亜鉛の場合では、アルミの方がイオン化傾向が高いため、アルミが溶解すると同時に亜鉛が置き換わるようにアルミの表面に析出します。 6.めっき処理 ジンケート工程が完了したら、めっき処理に移ります。 めっき方法としては、電気めっきと無電解めっきの双方が可能ですが、めっきする金属によっては、ストライクめっきが必要となることがあります。 なお、ストライクめっきとは、ジンケート工程の亜鉛のように、最終的なめっきの下地とする薄いめっきのことです。 アルミめっきの種類 アルミ材に対するめっきには、様々な種類があります。ここでは、アルミ材への代表的なめっき金属について説明します。 ニッケル アルミ材に対するニッケルめっきは通常、銅のストライクめっきを施した後に実施します。 銅ストライクめっきは、ジンケート工程で施した亜鉛がニッケルと置換反応を起こしてしまうことから必要となる下地めっきです。この方法では、シアン化銅とシアン化塩を含んだシアン化銅浴などに、亜鉛皮膜で覆われたアルミを通電しながら漬けることで銅を析出させます。 ストライクめっき後のニッケルめっきは、電気めっきと無電解めっきのどちらでも可能です。複雑な形状の製品などは、均一にメッキできる無電解メッキを採用することが多いです。 しかし、近年では、ストライクめっきが不要なニッケルめっき法も開発されています。これは、亜鉛置換ニッケルめっきと呼ばれる方法で、ジンケート工程後のアルミを無電解ニッケルめっき液に漬けます。すると、下図のように亜鉛とニッケルが置換してニッケルが析出します。つまり、この方法だと、アルミ素地にニッケルを直接めっきすることが可能となります。 銅 銅めっきは、ニッケルめっきで説明したシアン化銅浴などを用いためっき法によって実現することができます。 真鍮 真鍮めっきは通常、ニッケルめっきの上に施されます。つまり、銅めっきを下地めっきとしてニッケルめっきを施し、その後、電気めっきによって真鍮をめっきします。 クロム クロムめっきは、硬質クロムめっきと装飾クロムめっきでその方法が違います。 硬質クロムめっきは、ジンケート工程の後に、電気めっきを用いて実施します。均一にめっきしづらいため、製品の形状によっては、補助陽極や補助陰極を設置して、めっきの厚みが出来るだけ均一になるように調整します。 装飾クロムめっきは、銅を下地めっきとしたニッケルめっきの後に電気めっきを用いて行われます。 スズ スズメッキは、ニッケルめっきの上から、電気めっきや無電解めっきによって施すことができます。 この方法のほか、ジンケート工程で亜鉛の代わりにスズを用いることが可能で、アルミの直上に形成されたスズ皮膜をめっきとすることができます。この方法をスズ置換めっきと呼びますが、ジンケート工程と同じく、アルカリ溶液でアルミの酸化皮膜を溶解すると同時にスズでアルミを置換してスズを析出させます。 Mitsuriでは、アルミ材に対する様々なメッキが可能なメーカーをご紹介できます。用途をお伝えくだされば、適切なメッキ法をご提示することも可能です。アルミ材のめっきにお悩みでしたら、ぜひMitsuriにご相談ください。 アルミ材へのめっきのメリット それでは、アルミ材にめっきすることには、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、1.電気抵抗の軽減、2.はんだ付け性の付与、3.溶接性の向上という特徴的な3つのメリットについて説明します。 1.電気抵抗の軽減に アルミは、素材そのものの導電性が高いものの、表面に電気抵抗の高い酸化皮膜を生成してしまいます。ですが、めっきを施せば、酸化皮膜は形成されていませんので、他の部品との接触部の通電性を確保することができます。 これにより、アルミは、スイッチやリレーなどの電気接点にも用途を広げることができます。この用途で使用されるアルミめっきには、金めっきや銀めっき、銅めっき、ニッケルめっき、スズめっきなどが挙げられます。 2.はんだ付けが可能に アルミは、その酸化被膜がはんだをはじく上、強酸性のものが多いフラックス(はんだ付け促進剤)に侵されることがあります。そのため、めっきなしのアルミ製電子部品などを電子回路にそのままはんだ付けすることはできません。ですが、スズめっきなどを施すことで、はんだに馴染むようになりますので、はんだ付けが可能となります。 3.溶接加工がしやすくなる アルミそのものの融点は660℃ですが、その酸化皮膜の融点は2000℃にも達します。そのため、アルミを溶接するには、この酸化皮膜を除去する必要があり、また除去したとしても入念にシールドしないとすぐに酸化皮膜が形成されてしまいます。その点めっきしておけば、シールドは必要ですが、酸化皮膜を除去する工程が不要となります。 また、アルミ材へのスズめっきで、抵抗溶接の作業性を向上させることができます。アルミの抵抗溶接では、溶接機の電極にアルミが付着してしまうことから、電極の研磨が必要となります。しかし、スズめっきを施すことで、電極へのアルミ付着を抑制することが可能です。 アルマイトとめっきの違い アルミの代表的な表面処理加工にアルマイトがありますが、これはめっきとは全く異なるものです。 アルマイトは、アルミの酸化を人工的に進め、表面の酸化皮膜をさらに分厚くする表面処理です。このとき、アルミは酸素と結合して酸化アルミニウムを形成し、外部方向に成長すると共に内部方向にも浸透していきます。 一方、めっきは、酸化皮膜を除去し、アルミの素地を露出させた上で他の金属を乗せていく方法です。 参考:アルマイトとは?【3分でわかる】専門家がわかりやすく解説してみた! アルミニウムのめっきの見積りを依頼するならMitsuri 難めっき材と言われていたアルミですが、今では様々なめっき液や方法が開発されており、めっきすることで、アルミの特性を向上させると共にアルミに機能性を付与することができます。 ですが、アルミ合金は種類が多く、その種類毎にめっき液の調製やめっきするときの工夫が必要となります。また、全ての合金にめっきできるわけではなく、めっき可能な合金の種類は、メーカーによって異なります。 Mitsuriは、アルミ材へのめっき技術を保有する全国各地のメーカー様とお付き合いがあります。現在、協力企業は250社以上ございます。そのため、お客様に最適な加工方法をご提示することが可能です。 お見積りは複数社から可能です! アルミ材のめっきのお見積りでお困りの際は、ぜひMitsuriにお申し付け下さい!
「高級感を出したいけど、めっきと塗装どっちがいいの?」「耐食性が必要な製品だけど、めっきと塗装どちらが良いのかわからない・・・」こんな、お悩みをお持ちではありませんか。めっきと塗装は、似たような状況で必要となる加工法です。しかし、いざ依頼しようとした際、そのケースにはどちらが適切なのか、分からないことも多々あるかと思います。そこで、今回の記事では、めっきと塗装について説明すると共に、その違いや混同しやすいめっき塗装などについても解説していきます。めっきと塗装のメリット・デメリットも述べていますので、ご依頼する際の参考にしてください。めっきとはめっきとは、素材の表面に金属の薄膜を形成させる技術のことです。表面処理技術の一つで、素材が錆びることを防いだり、外観の装飾性を高めたり、素材に機能を付与したりするために行われます。付与できる機能は幅広く、金めっきを例にすれば、熱伝導性や導電性を付与できますし、抗菌効果も期待できます。また、硬い素材であるクロムのめっきは、優れた耐摩耗性を付与できることから、強度が必要な部品や擦り減りやすい部品に実施されることが多いです。めっき方法めっきの主要な加工方法としては、電気めっきと無電解めっきが挙げられます。どちらも、めっきする金属や薬品が溶けた液に素材を漬けることは共通です。ですが、電気めっきは電気を流すことで素材表面に金属膜を析出させる一方、無電解めっきは、薬品による化学反応だけを利用してめっきを行います。参考記事めっきの加工方法については、以下の記事に詳細がありますので、気になった方はぜひご覧ください。⇒メッキ加工方法について!【専門家が語る】メッキされるまでの工程が丸わかり!めっき金属の種類めっきする金属としては、上述した金やクロムのほか、銀や銅、ニッケルなどが代表的です。特にニッケルは、硬く腐食しにくい上、光沢や色味、性質などをめっき溶液に添加する薬品や合金化することによって調整できます。そのため、自動車部品や機械部品、精密機器のほか、装飾品にもよく用いられるめっきです。参考記事めっきの概要を知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。⇒【メッキ処理とは?】目的・仕組み・種類・特徴について徹底解説!塗装とは塗装とは、素材表面に塗料を塗ったり、吹きかけたりすることで、塗膜を形成させる表面処理技術のことを言います。塗装もまた、防錆や装飾、機能の付与が主要な役割です。その一方、素材の保護を目的に塗装することもあり、塗り直すことを前提としている場合があります。防錆を目的とする塗装は、鉄が代表的です。鉄は、空気や水との接触で簡単に錆びてしまうため、めっきか塗装が必須となります。一方、塗装が不必要にみえるステンレスにも塗装することがあります。ステンレスは、サビに強い素材ですが、傷や亀裂から腐食が進むことがあります。このような、傷の発生を防ぐことなどを目的に、塗装する場合があります。塗装方法塗装方法には、様々なものがあります。刷毛(ハケ)・ローラー等を使った手作業による塗装や、塗料を高圧の空気で吹き付ける吹付塗装などは、建築物の外壁などに用いられているため、目にしたこともあるかも知れません。これらの方法の多くは、溶剤塗装に分類され、揮発性の溶剤を含有する塗料を乾燥させることで固化、密着させて塗膜を形成させます。専門的な塗装法としては、加熱して塗料を硬化させる焼付塗装、粉末状の塗料を静電気で付着させた後に加熱溶解させる粉体塗装、後述で説明する電着塗装などが挙げられます。参考記事焼付塗装の概要については、以下の記事で解説しています。ぜひ、参考にしてください。⇒焼付塗装ならMitsuri!1コ〜お受けいたします!塗料の種類塗料としては、ペンキやニス、樹脂(プラスチック)などが挙げられ、塗装方法や用途によって様々なものが選ばれます。ペンキは、一般的に、揮発性の溶剤を含む油性塗料、ニスは、有機溶剤などを含んだ樹脂塗料のことで、共に乾燥させることで塗膜を形成させる溶剤塗装の材料です。一方、焼付塗装に用いられるアクリル樹脂やメラミン樹脂、フッソ樹脂は、100~200℃程度の加熱を必要としますが、塗装の中では品質が良いです。塗料によりますが、焼付塗装は、インテリアやエクステリアのほか、様々な日用品などに用いられています。粉体塗装には、熱可塑性の塗料と熱硬化性の塗料があります。熱可塑性塗料としては、ポリエステル系や塩化ビニル系の樹脂、熱硬化性塗料としては、エポキシ系やポリエステル系、アクリル系の樹脂が挙げられます。熱可塑性塗料は、熱硬化させているわけではないので、焼付塗装による塗膜ほどの硬度は得られません。ですが、熱硬化性塗料は、焼付塗装に用いられる塗料と同様、高い強度が期待できます。また、粉体塗装に用いられる塗料は、環境や人体に悪影響を与える、有機溶剤を使用していないことが特徴です。めっきと塗装の種類次は、めっきと塗装の種類の中でも、名称や内容が分かりにくい「クロームめっき」と、めっきなのか塗装なのか混同しやすい「電着塗装(電着めっき)」と「めっき塗装」について説明します。クロームめっき(クロムめっき)クロームめっきとは、めっき金属としてクロムを使うめっき、つまり「クロムめっき」のことです。クロムめっきしたものは、英語で「chrome」と記述し、その読みはむしろ「クローム」に近いです。ですが、JIS規格では「クロムめっき」とされています。クロムめっきには、装飾用クロムめっきと工業用クロムめっきがあるのも分かりにくいところです。装飾用クロムめっきは、下地にニッケルをめっきし、その上に薄いクロムめっきを施しためっきで、「ニッケルクロムめっき」とも呼ばれています。一方、工業用クロムめっきは、クロムの優れた硬度や耐摩耗性を利用したもので、硬質クロムめっきとも呼ばれます。摩耗しやすい機械部品などに用いられ、耐用年数が必要なものほど厚いめっきを施します。クロムめっきと混同しやすいものに「クロメート処理」があります。クロメート処理は、クロムを含有した溶液に亜鉛やアルミなどを浸し、素材表面にクロムを含む酸化皮膜を形成する表面処理です。表面に膜を付着させるめっきではなく、化学反応を起こすことで表面の性質を変化させる化成処理に当たります。また、クロメート処理では、溶液のクロム含有量や添加する薬品を変化させることで、光沢や色味を調整することが可能です。そのような処理の中でも、光沢を付与する方法を光沢クロメート処理と呼び、亜鉛めっきに光沢クロメート処理を施すことを「ユニクロめっき」と言います。これも、クロムめっきを分かりにくくしています。電着塗装(電着めっき)電着塗装とは、塗料を溶かした液に素材を漬け、電気を流すことで素材に塗膜を形成する塗装方法です。素材と塗料の一方を正、もう一方を負にする必要があるため、導電性の素材にしか適用できませんし、電荷を付与できる塗料でないと、電着塗装の塗布物にはできません。電気めっきと加工方法が似ているためか、「電着めっき」と呼ばれることもあるようです。しかし、塗膜は樹脂であり、金属ではないので、電着メッキ(電着塗装)は、メッキではありません。電着塗装には、電気めっきと同様のメリットがあります。例えば、構造が複雑な部分にも均一な厚さの塗膜を形成できますし、膜厚の調整も容易です。また、そのほかの塗装方法と比べ、ラインを組みやすいという利点もあります。めっき塗装とは最近では、めっき塗装と呼ばれる、めっきなのか塗装なのか分かりにくい表面処理方法も目にします。しかし、これは、あくまで「めっき調塗装」であり、めっきではありません。めっき塗装は、銀を含んだ塗料をスプレーなどで素材に吹きかけ、素材表面で銀鏡反応を起こして鏡のような光沢ある塗膜を形成。その上に、透明な塗料を使った塗装を施すことで、金属的な光沢と質感が得られる塗装方法です。透明な塗料に色を加えれば、多様な金属的色彩を付けることもできます。この塗装方法は、薬品で銀を還元して析出させる銀鏡反応を利用することから、「銀鏡塗装」や「銀鏡めっき」とも呼ばれます。ですが、もちろん、銀を含んだ溶液に素材を漬け込み、表面から金属を析出させる銀めっきとは異なります。めっき塗装では、塗料を付着させた部分でのみ銀鏡反応が起こります。そのため、銀めっきとは違って、均一な膜形成は困難ですし、表面の微細な凹凸を完全に埋めることも容易ではありません。このように、めっき塗装の塗膜は、めっきに近い質感が得られるものの、密着性が弱く、剝がれやすいという欠点があります。ですが、塗装の前処理の工夫などにより、高い密着性を実現しているメッキ塗装もあります。Mitsuriでしたら、めっき塗装を得意としてるメーカーもご紹介できますので、ぜひご相談ください。めっきのメリット・デメリットそれでは、めっきと塗装のどちらを選べば良いのでしょうか。まず、めっきには、以下のようなメリットがあります。剥がれにくいめっきは、めっき金属が素材の金属と金属結合することで素材表面に析出したものです。このとき、素材とめっきの境界は、金属が連続的に存在しているかのように接着しています。そのため、素材とめっきが共に金属であるめっきは剥がれにくいです。ですが、無電解めっきなどで樹脂等の非金属にめっきする場合は、素材表面の微細な凹凸に入り込んだめっき金属が固化し、引っ掛かることで接着します。この効果をアンカー効果と呼びますが、金属同士の接着に比べると接着性が低いです。傷みにくく、長持ちするめっきは、傷みにくく、長持ちしやすいです。めっきは通常、傷や部分的な剥離をきっかけにサビや痛みが進行します。金属が塗料に比べて高強度であること、まためっきの剥がれにくさから、めっきは塗装に比べて長持ちし、長く機能を保持できます。多様な機能を付与できるめっきを行うと、めっきする金属の性質を利用することが可能です。耐食性を引き継げるのはもちろん、導電性や熱伝導性、磁気的性質など、様々な特性を素材に付与することができます。金属的な光沢や質感が得られる金属の特徴的な光沢や質感を素材に与えることができます。また、めっきを薄くすることで、下地の色味などを反映することができるため、多様な色彩や光沢を形作ることが可能です。複雑な構造の素材にもめっきすることができるめっき金属は、素材表面の原子レベルの凹凸にも入り込むことができます。そのため、構造が複雑な素材であってもめっきすることが可能です。膜厚が均一で、ムラが生じにくいめっきは、液体が浸透する箇所であれば、めっきすることが可能です。そのため、ムラが生じにくく、均一性の高い金属膜を形成することが可能です。しかし、めっきには、以下のようなデメリットがあります。加工工程が多く、時間がかかるめっきをしっかりと付けるには、素材が清浄であることや素材が露出していることが必要です。そのため、素材の前処理に多くの工程を必要とし、その結果、ある程度の時間を要します。設備が大掛かりで、工場内でしかめっきすることができないめっきは、加工工程が多いことから、様々な設備を必要とします。そのため、自然と設備が大掛かりになり、現地へ行ってめっきするといったことが難しくなります。めっきの貼り直しが困難めっきは、一部分が剥離したからといって、その上からめっきし直すことはできません。めっき可能かどうかは、素材とめっき金属のイオン化傾向の大小などにも依存するため、めっきの貼り直しには、一度全てのメッキを剥がすことなどが必要となります。素材によってはめっきすることが難しいある金属の上には、この金属をめっきできると言うように、めっき可能か否かには制限があります。例えば、金などの貴金属をめっきする場合には、素材へのめっき金属の拡散防止が必要となるため、ニッケルを下地めっきとして挟まなければなりません。また、イオン化傾向が大きいチタンやマグネシウムなどは、どのような金属に対してもめっきすることが難しいです。塗装のメリット・デメリット一方、塗装には、以下のようなメリットがあります。塗料の種類が豊富なため、多様な色彩を選択できる塗料は、樹脂や硬化剤、顔料など、さまざまな成分を混ぜ合わせたものです。それらは無数に存在し、その組み合わせも多様です。そのため、塗料には、どのような色彩にも対応可能というほどの種類があります。機能を付与できる塗装は、めっきと同様の機能を付与することもありますが、めっきできないものや、通常めっきしないものに施すことが多く、付与する機能もめっきとは異なることが多いです。代表的なものとして、耐火塗料や難燃性塗料を用いた防火機能の付与があります。そのほか、抗菌性を付与する抗菌塗料、カビの発生を抑制する防カビ塗料など、付与できる機能は様々です。現地へ行って塗装することができる塗装方法や塗装設備によりますが、塗装対象がある現地に行って塗装することができます。そのため、建築物など、動かせないものの塗装が可能です。塗り直しが容易塗装方法や塗料にもよりますが、塗装済みのものにも、そのまま上から塗装できます。塗り直しを前提としていることも多く、ひび割れや剥離が生じても、塗り直すことで元の品質や機能を容易に復元することができます。安価塗装方法や塗料にもよりますが、めっきに比べると低コストです。塗料自体が、めっきに使用する金属よりも安価ですし、加工工程もめっきより少なく、加工賃も安くなります。しかし、塗装には、以下のようなデメリットがあります。塗膜の均一性が低く、ムラが生じやすい塗膜の厚みや表面の均一性は、塗装の仕方に依存します。手塗りで不均一になるのは当然ですし、吹付塗装で機械的に360°を均一に塗装できたとしても、塗装対象の形状によっては、不均一性が生じてしまいます。電着塗装など、めっきに近い均一性が得られる塗装法もありますが、総じてめっきよりも均一性が低いです。剥がれやすい塗装は、めっきに比べて剥がれやすいです。塗装は主に、アンカー効果で接着しますが、めっきが素材表面の原子レベルの凹凸に入り込んで固化するのに対し、塗装は表面に付着するだけです。そのため、アンカー効果が弱く、接着性が低いです。また、塗料が金属よりも強度が低く、壊れやすいことも、塗装の剥離の原因となります。長持ちしない塗装は、めっきに比べると、長持ちしません。塗膜は、そもそも、金属めっきよりも強度が低く、また密着性も弱いため、剥がれたり、痛みやすかったりします。そのため、塗装は、定期的に塗り直すものとして用いることが多々あります。めっき塗装の一括見積りを依頼するなら【Mitsuri】この記事から、めっきは高級感があって品質が高く、塗装は手軽で多様な色彩にも対応可能であるとまとめることができます。ですが、近年では、めっき塗装のようなめっきに似せた塗装法も開発されており、いずれは、外観や品質を再現することも可能になるかもしれません。しかし、新しい技術ゆえに、メーカーごとの技術の差が大きく、品質もピンからキリまで、というのが現状です。その点、Mitsuriは、日本全国に協力会社が250社以上ございますので、めっき塗装を得意とする先進的な塗装メーカーのご紹介が可能です。Mitsuriでのお見積りは複数社から可能です!ぜひお気軽にお問い合わせください。
ユニクロめっきとはいったいどのような特徴があるのでしょうか?めっきとは物体に対して金属の膜で覆うことを指しますが、ユニクロと聞いてどのような処理がされているかをご存知の方は少ないかもしれません。 この記事では「ユニクロめっきとは何か」について解説するだけでなく、亜鉛めっき・クロメートの違いについても解説します。 ユニクロめっきとは ユニクロめっきとは、電気亜鉛メッキされた材料に対してフッ化物を含んだ溶液でクロメート処理したもののことを言い、一般名称は「光沢クロメート」とも呼ばれています。色合いはシルバーに少し青みがかったような見た目です。 クロメート処理は、亜鉛・アルミ・マグネシウムなどに対して六価のクロム酸を主とした処理液で表面処理することを言います。この処理をすることで一部の六価クロムが還元されて三価の水和クロムによる無機高分子被膜が形成され、残りの六価クロムとの相乗効果で耐食性を増加させるのです。 ただし六価クロムには有害性があり、RoHS指令(*)と呼ばれるEUの特定有害物質の使用制限法に違反しているため、EUではユニクロめっきされた商品は販売できません。また、EU以外の地域での六価クロムを使用した商品でも、EUへ輸出する場合は使用制限に抵触するため注意が必要です。特に自動車や電気電子機器などの部品を多く使用する業界では、メーカー側だけでなく協力会社も含めて、RoHS指令に抵触しないように管理しなければなりません。規制のトラブルを避けるためにも、協力会社は納入仕様書をよく確認して、めっきの選択をする必要があるでしょう。 ここで、六価クロムを含有しためっき品は使用不可という仕様の場合、ユニクロめっきの代わりに何を使えばいいのかという疑問が出てきます。その解答としましては、現在ではユニクロめっきの代替品として、「三価ホワイト(別名:三価クロメート)」というめっきが流通されています。 三価ホワイトは防錆力が通常のユニクロめっきと同等に備えていること。また、有害性がなく、RoHS指令の規制対象外として使用することが可能です。以上のことから、三価ホワイトのめっきをオススメする、または売りにしている企業は多いです。 (*)RoHS指令 RoHS指令制限6物質 Pb Hg Cd Cr+6 PBB PBDE 鉛 水銀 カドミウム 六価クロム ポリ臭素化ビフェニル ポリ臭素化ジフェニルエーテル もしめっきについてお困りのことがあればMitsuriまでご相談ください。ユニクロめっきだけでなく、三価ホワイトについても対応したメーカーをご紹介できます。 ユニクロメッキと亜鉛めっきとクロメートの違い ここではユニクロめっき・亜鉛めっき・クロメートの違いについて紹介します。 防錆力の違い 防錆力は、以下の順で効果が高いです。 【クロメート>ユニクロめっき>亜鉛めっき】 クロメートとユニクロめっきは亜鉛めっきを下地とし、亜鉛めっきよりも更に防錆力を高めています。そしてクロメートとユニクロめっきは、どちらもクロメート処理が施されていますが、使用されている溶液が異なり、結果クロメートの方がクロムの含有量が多いことから、ユニクロめっきよりも防錆力が高くなります。クロムには金属の表面を不働態被膜と呼ばれる薄い膜で覆い、サビから守る効果が期待できます。 ユニクロめっき ユニクロめっきは前述でもお伝えしたように、電気亜鉛めっきされた材料に対してフッ化物を含んだ溶液でクロメート処理したものになります。正式名称は「光沢クロメート」と呼ばれ、シルバーに青みがかった色合いが特徴です。クロメート処理には、防錆力を高めるだけでなく、亜鉛皮膜の変色を防ぐことや光沢を持たせて見た目を良くするといった役割もあります。 また、ユニクロめっきには、クロメート処理をした際に六価クロムが含まれるため、EUのRoHS指令の規制対象品に該当します。RoHS指令に対応するために、六価クロムを使うことを禁止する仕様がある場合は、防錆力が同等でもある三価ホワイトのめっき品を使うなどの対応をする必要があるでしょう。 亜鉛めっき 亜鉛めっきには「犠牲防食」と呼ばれる防錆効果により、鉄を腐食から守ってくれます。 亜鉛めっきの塗膜にキズが付いて鉄の素地が露出してしまった場合、上図右のように亜鉛が鉄よりも優先して溶けだし、酸化被膜を作られて鉄の腐食を防止します。もし鉄が亜鉛めっきではなく樹脂系塗装だけ施した状態だと、キズが付いてしまった時点で、下図左のように鉄が空気中の酸素と反応し赤錆が発生して、強度の低下および破損といった問題が出てしまいます。 樹脂などによる被覆 亜鉛めっき 腐食して赤錆が発生する 腐食しない(犠牲防食) 亜鉛めっきは大きく分けて「電気亜鉛めっき」と「溶融亜鉛めっき」の2種類に分けられます。 電気亜鉛めっきは材料を亜鉛の槽に浸し、電解することで亜鉛の被膜を形成します。被膜の厚みが2~25μmと非常に薄く、均一に亜鉛が付着していることから仕上がりが綺麗なことが特徴です。被膜が薄いことから、寸法の精度が厳しい場合にも適していると言えるでしょう。電気亜鉛めっきは防錆効果を高めるために、ユニクロめっき・クロメートの下地として合わせて処理されていることが多いです。 溶融亜鉛めっきは別名「ドブづけ」「天ぷらめっき」とも言われるように、材料を高温で溶かした亜鉛の槽に浸して亜鉛を付着させます。製品にもよりますが、電気亜鉛めっきと比べると膜厚は8~125μmと少々厚みがあるため耐食性には優れています。しかし、膜厚があるぶん、寸法精度を必要とする部材には適していないことと、高温の亜鉛槽に浸すため、材料が薄いと歪んでしまう恐れがあるので注意が必要です。 参考:電気亜鉛めっきとは【3分でわかる】専門家がわかりやすく解説します! クロメート クロメートの一般名称は「有色クロメート」とも呼ばれています。クロメートは二層の被膜から成り立っており、下地に電気亜鉛めっきを有します。製法としては電気亜鉛メッキの上から六価クロムを主成分とした溶液に浸漬させることでクロメート被膜を生成。クロメート処理された材料は虹色がかったような金色の見た目になり、耐食性に優れた性質を有します。 六価クロムの含有率はユニクロめっきよりもクロメートの方が大きく、それにともない耐食性もユニクロめっきより優れています。クロメートもユニクロめっきと同様にRoHS指令に抵触してしまうため、納入仕様書をよく確認したうえで使うようにしてください。 ユニクロめっきの製品事例 ボルトナット類 ボルトナット類はユニクロめっきが採用されている最もポピュラーな商品と言っても良いでしょう。上図は六角ボルトナットの写真ですが、キャップスクリューやアンカーボルトといった、ボルトナット類全般でユニクロめっきは使用されています。土木関係だと、ボルトナットは景観性をそこまで重視しない箇所にもよく使われるので、サビのない洗練された見た目のステンレスよりも、比較的安価で購入できるユニクロめっきを使うことが多々あります。 クサリ類 クサリ類もボルトナットと同様にユニクロめっきが施されているものが多いです。こちらもクサリのみではなく、カンやシャックルにもユニクロめっきが使われています。 Lアングル 建築系で用いられる補強金物のLアングルにもユニクロめっきが施されています。 ユニクロめっきとクロメートには、有害と言われている六価クロムを含有していることから、EUのRoHS指令に対応していない点には注意してください。それらの代替品として三価ホワイトと呼ばれるめっきも現在では流通しています。三価ホワイトは有害性のない三価クロムを使用しているほか、防錆力もユニクロめっきと同等レベルで持ち合わせています。 めっきのことでお困りのことがあれば是非Mitsuriへご登録ください。日本全国で250社以上の工場が登録しているため、ご希望に沿う工場が見つけやすく、直接取引が行えます。 下の赤いボタンをクリックして、お気軽にお問い合わせください。
今回は真鍮とメッキについて詳しく解説していきます。 真鍮とは黄銅ともよばれる、銅と亜鉛の合金で、導電性が非常に高く、また加工性も優れており、広く使われている素材の一つです。その優れた素材の真鍮にも表面が酸化により錆びたり黒く変色するというデメリットがあります。その対策としてメッキ処理が必要になります。 真鍮にメッキをする際の注意点 現在では、真鍮にはさまざまなメッキ処理が施されています。素材の特性やメッキの特性、組み合わせ、またメッキ前の洗浄工程でも注意点が多くみられます。 今回はその中から、主な注意点を紹介します。 アルカリ焼け 引用元:株式会社 K&K メッキの前処理工程では脱脂処理は必須です。脱脂剤の中で、pHの高い液に長時間浸漬するとアルカリ焼けの原因になります。上の画像に記されたPH値では、pH7~10では変色が見られませんが、pH11より変色が始まり、pH13.1では真っ黒にアルカリ焼けしています。 アルカリ焼けを起こしたままメッキ処理を行うと、メッキ剥がれを起こす原因になるため注意が必要です。 エッチング エッチングは、メッキ前工程の洗浄で発生する腐食のことです。メッキ前工程では、メッキを付きやすくするため、素材の活性化が不可欠で、その際に複数の酸が使用されています。真鍮に含まれる銅や亜鉛は塩酸に非常に弱く、腐食を進めます。エッチングされた状態のままメッキを施すと、密着不良、膨れ、剥がれの原因になります。 ストライクメッキ 真鍮は錆びにくい特徴を持った素材ですが、酸化被膜が発生します。酸化被膜に覆われるとメッキとの密着が悪くなりメッキ剥がれの原因に繋がります。 メッキの密着を強化するためストライクメッキ(下地メッキ)を施し、素材とメッキの密着性を高めます。ストライクメッキにはさまざまな種類がありますが、その中でも銅、ニッケルによるストライクメッキがよく知られています。 真鍮に向いているメッキ処理 メッキの向き不向きについては、メッキ業者さんの技術にも左右されます。 真鍮と相性の良いメッキは数多くありますが、その中でも一般的に多く使われているメッキを紹介しますので参考にしてみて下さい。 無電解ニッケルメッキ 無電解ニッケルメッキは”カニゼンメッキ”とも呼ばれています。 下地メッキが不要とも言われ、真鍮とメッキの相性は非常に良いです。特徴としては、メッキの膜厚を管理することができ、複雑な形状や穴の内部に関しても均一に処理する事が可能な点です。 電気メッキ 電気メッキはさまざまなメッキがありますが、全般的に電気メッキと真鍮の相性は良いとされています。電気メッキの特徴としては、比較的に安価であり、また真鍮に欠けている、耐食性、耐摩耗性、また外観の見栄えを良くすることができます。 まとめ 真鍮とメッキについて詳しく説明してきましたが、いかがでしたか。 近年では、真鍮も多種多様な用途が開発され、またそれと同様にメッキについても日々研究開発されています。 素材や処理方法など、組み合わせや、機能が幅広いことから、全てを説明することはできませんが、メッキ選びの参考にしていただければと思います。
メッキは、材料に防食性や装飾性、導電性や摩耗耐性などの機能性を付与するために行われます。なかでも電解メッキは、最も広範囲に用いられているメッキ技術であり、身の回りの金属製品の多くがこの技術によりメッキされています。 しかし、電解メッキはどのような方法で、どんな種類があるのか詳しくは分からない方も多いことでしょう。金属製品を扱っている方には、電解メッキのメリットやデメリットを知っておきたいと考えている方もいるかも知れません。 そこで本記事では、電解メッキの詳細や種類、メリットやデメリットを解説していきます。無電解メッキとの違いについてもご紹介しますので、メッキ方法を選択するときの参考にしてください。 電解メッキとは 電解メッキとは、電解液にメッキされる金属を浸し、電気を通してメッキしたい金属を析出させるメッキ法で、電気メッキともいわれます。 具体的には、電解液に陽極であるメッキ金属と陰極である被メッキ金属を浸し、直流の電気を通します。すると、陽極では酸化反応によってメッキ金属が液中に溶け出し、陰極では還元反応によってメッキ金属が析出してメッキ皮膜に成長します。 しかし、この方法は、メッキ金属が可溶性金属、つまり電解液に溶ける金属でない場合は用いることができません。 電解液に溶けにくい金や白金などの不溶性金属をメッキしたい場合には、シアン化金カリウムや塩化白金酸に代表される金属塩など電解液に溶ける状態にしたものを補給して電解メッキを行います。 電解液への添加剤もメッキの品質や機能に重要な役割を持ちます。その役割の1つがメッキ皮膜の形状制御です。添加剤はこの場合、被メッキ金属やメッキ皮膜に吸着して反応を促進、または抑制し、メッキ皮膜の平滑化や光沢化、穴埋めなどを可能にします。添加剤によっては、メッキ皮膜の硬さ・伸び・脆さ・応力などの物性にも影響するものがあります。 しかし、これらの添加剤は、ニーズに応じて試行錯誤で開発されてきたため、メーカーによって多種多様な種類があります。Mitsuriでしたら、電解メッキの多様な技術やノウハウを持つメーカーをご紹介可能です。電解メッキのご依頼がありましたら、ぜひMitsuriにご連絡ください。 電解メッキと無電解メッキの違いについて 電解メッキと無電解メッキ、この2種のメッキ法の違いは、電解メッキが電気を流したときの電気分解による化学反応を利用しているのに対し、無電解メッキは薬品による化学反応だけを利用していることです。そのため、無電解メッキは化学メッキとも呼ばれます。 電解メッキ・無電解メッキの違い 電解メッキ…電気を流したときの電気分解による化学反応を利用 無電解メッキ…薬品による化学反応だけを利用 無電解メッキは、メッキしたい物質を含む水溶液に被メッキ物を浸し、表面で還元反応を生じさせてメッキ皮膜を成長させる方法です。 無電解メッキでは、電気を使わないため、被メッキ物に導電性がなくてもメッキできます。さらに、電気の流れに左右されないため、表面に均一にメッキすることができます。そのため、無電解メッキは、複雑な形状のメッキにより適しています。 それに対し、電解メッキで同様な品質のメッキ皮膜を得るには、メッキ治具による被メッキ物の配置や、メッキ皮膜が厚く、もしくは薄くなってしまう部位近くへの補助極の配置など、多くの工夫やノウハウを必要とします。 無電解メッキは、化学反応だけで皮膜を形成するので、膜厚に限度がある、析出する速度が遅いなどの欠点があります。また、化学反応に高温の維持を必要とする場合もあることから、メッキ槽の管理が難しくなります。さらに、メッキ槽が化学的に不安定になりやすく、その調整のために投入する薬液にコストがかかります。このようなメッキ槽の維持管理の困難さから、無電解メッキの多くは電解メッキよりも高コストです。 無電解メッキでは、ph調整剤や添加剤などのメッキ槽へ投入する薬品と、温度維持などのメッキ槽の調整だけで、メッキしたい物質と被メッキ物が化学反応しなくてはなりません。そのため、無電解メッキの種類は電解メッキに比べて限られています。 電解メッキのメリット・デメリット 電解メッキは、以下のようなメリット・デメリットがあります。 電解メッキのメリット ・低コスト ・メッキする速度が速い ・厚くメッキすることが可能 ・様々な金属・合金にメッキ可能 ・被メッキ金属への熱的影響が小さい 電解メッキのデメリット ・均一にメッキすることが難しい ・複雑形状の金属にメッキすることが難しい ・不導体にはメッキできない 電解メッキの工程について 引用元:通販モノタロウ 電解メッキの工程は、上図に見られるように、大きく前処理、本処理、後処理に分けることができます。ここでは、これらの処理工程の詳細について解説していきます。 前処理 前処理は、メッキがしっかりと密着するように、汚れや酸化皮膜などを除去し、被メッキ物の素地面を露出させるために行われます。 前処理の工程は、脱脂、酸洗い、酸活性など多様で、メッキの種類や被メッキ物の材質、加工履歴などの違いにより、適切な工程が選定され、実施されます。 ●水洗・湯洗 水洗・湯洗は、水やお湯で素材を洗浄する工程で、各工程で用いられた溶剤などの成分を次工程に持ち込ませないために行われます。そのため、各工程の完了後には水洗・湯洗が実施され、状態の確認も併せて行われます。 ●脱脂(溶剤洗浄、アルカリ洗浄) 脱脂は、素材表面に付着したゴミや、加工の際に用いたオイルなどの有機性の汚れを除去する工程です。その中でも、溶剤洗浄は有機溶剤を用いることで、アルカリ洗浄はアルカリ性の苛性ソーダなどに漬け込むことで油脂を取り除きます。 ●酸洗い 酸洗いは、サビやスケール(熱処理で生じる焼けや変色)を除去するため、硫酸や塩酸など、比較的強力な酸に漬け込む工程です。 ●電解洗浄 電解洗浄は、素材に電流を流すことで素材表面に酸素や水素などを発生させ、そのガスの力によって微細な凹凸面に付着したゴミやスケールなどを除去する工程です。取り切れなかった汚れや酸化皮膜を取り除く仕上げの洗浄工程と言えるでしょう。 ●酸活性(酸浸漬) 酸活性は、素材を酸に漬けることでメッキしやすい素材の素地面を露出させる工程です。 ●中和 酸やアルカリを次工程に持ち込ませないように酸性溶液やアルカリ性溶液に漬け込んで中和することがあります。 ●ストライクメッキ 引用元:株式会社会津技研 ストライクメッキは、下地メッキを施す工程で、素材表面が活性化しにくい場合などに行われます。上図は、下地メッキとして銅を用いた例で、平滑化や密着性向上を目的に実施されます。 本処理 実際にメッキを施す工程です。 黄銅、亜鉛、アルミニウムなどのメッキでは、耐食性向上や変色防止を目的に、さらにクロメート処理を行うことがあります。クロメート処理は、金属表面にクロムの酸化皮膜を形成させる表面処理です。 後処理 メッキを施した後は、水洗した後、水を吹き飛ばす、熱するなどすることで乾燥させれば完成です。 ただし、水素脆性に陥りやすい素材では、190〜220℃程度に加熱することで水素を追い出すベーキング処理が必要になることがあります。 電解メッキの種類 それでは、電解メッキにはどのような種類があるのでしょうか。代表的な「銅メッキ」「亜鉛メッキ」「クロムメッキ」「ニッケルメッキ」「金メッキ」について解説します。 銅メッキ 銅は、熱伝導性・導電性が高く、展延性に優れる金属で、赤い色調の光沢を持ちます。 メッキとしては、高い導電性や優れた展延性を活かして、プリント配線板などの電子部品に多く用いられています。 装飾を目的とする場合は、銅は変色するため、クリアー塗装などの表面処理が必要です。しかし銅メッキは、優れた平滑性を示し、また加工しやすいことから、他のメッキの下地に多く利用されています。 また銅メッキは、炭素添加によって耐摩耗性を向上させる浸炭処理時に、炭素の侵入を防止する特性があります。そのため、浸炭の効果が表れてほしくない部位に銅をメッキすることがあります。 亜鉛メッキ 亜鉛は、大気中で優れた耐食性を示し、水分下でも亜鉛自らが溶解して鉄の腐食を防ぐ働きをします。 そのため、亜鉛メッキは、鉄鋼の防サビ用メッキとして広く用いられています。 しかしほとんどの場合、亜鉛メッキだけでは耐食性能に限りがあるため、メッキ後にクロム酸塩を含む溶液に浸して酸化皮膜を生じさせるクロメート処理を行います。クロメート処理では、その溶液を調整することで、亜鉛メッキに以下の外観や耐食性を持たせることができます。 クロメート処理の種類 光沢クロメート:ユニクロとも呼ばれ、青銀白色で美しいが耐食性は低い 有色クロメート:黄金色や虹色で、耐食性は良好 緑色クロメート:緑色や茶色で、高腐食環境で使用される 黒色クロメート:黒色で、耐食性は良好 亜鉛メッキの用途としては、自動車部品、電気機器部品、機械部品、建築部品などが挙げられます。最近では、クロメート処理による装飾性の向上により、事務機や文具などの外観が問題となる製品にも多く利用されています。 参考記事 鉄鋼に対するメッキについては以下に詳しくご紹介していますのでご覧ください。 ⇒鉄メッキならMitsuri!1コ〜お受けいたします! クロムメッキ クロムは、光沢のある銀白色の硬い金属で、耐食性のある酸化皮膜を形成することからメッキとして広く用いられています。 クロムメッキは、光沢と美しい外観を活かす場合には装飾用として、硬さや耐摩耗性を活かす場合には工業用として利用されています。 装飾用クロムメッキでは、主に銅やニッケルを下地として0.1~0.5μm程度の薄いメッキを施します。装飾用クロムメッキは、この薄さでも耐食性、耐変色性、耐候性などに優れた性能を示します。 そのため、自動車や機械の外装部品、台所用品やインテリア関係など、美観を求められる製品で幅広い用途があります。また、装飾用としては、漆黒調の皮膜が得られる黒クロムメッキもあり、自動車やオートバイ、カメラ、時計、事務機などに利用されています。 工業用クロムメッキは、硬質クロムメッキとも呼ばれ、5μmから100μm超まで、用途に従って厚くメッキします。そのメッキ皮膜は、硬く耐磨耗性に優れ、低摩擦係数や非粘着性などの特性も有します。そのため、ベアリングやロール、シリンダー、金型などの産業用機械部品や自動車部品などに広く用いられています。 ニッケルメッキ ニッケルは、光沢があり耐食性や導電性に優れています。硬さ、柔軟性なども良好なため、メッキとしてもよく利用されています。ただし、空気中で時間経過と共に変色するので、その上にクロムメッキを施すことが多いメッキ金属です。 ニッケルメッキは、様々な金属への密着性が高いことから、中間層や下地としてよく用いられています。また、銅素材に金をメッキする際には、金が銅に拡散するのを防ぐため、金の下地としてニッケルがメッキされます。 ニッケルメッキは、電解メッキするときの添加剤によって無光沢から光沢まで調整することができます。そのため、自動車部品や産業機械部品などのほか、装飾用にも多く用いられています。特殊な用途として、はんだ付け性が高いことから電子部品などにもよく利用されています。 またニッケルメッキは、無電解メッキでも行えるため、複雑な形状や精密な部品のメッキには無電解メッキが用いられます。 金メッキ 金は、高い熱伝導性・導電性を持ち、化学的に非常に安定で耐食性に優れた金属です。 金メッキとしては、はんだ付け性が良く、時間経過による接触抵抗の変化が小さいため、電子部品などに多く利用されています。外観も美しいので、装飾器具や時計、自動車のエンブレムや内装部品などに用いられています。 上述したように、金は銅や銅合金と接すると拡散していくため、銅素材にメッキする場合にはニッケルメッキの下地が必要です。 金は無電解メッキも可能なため、導電しない素材や複雑なパターンのメッキには、無電解メッキが用いられています。 まとめ 以上、電解メッキの詳細や種類、また無電解メッキと比較した場合のメリット・デメリットについて解説しました。 電解メッキは、無電解メッキと比較して、低コストで様々な金属にメッキできるため、最も広範に用いられているメッキ法です。 電解メッキの種類も様々ですが、品質やコストを勘案すると、無電解メッキが適切な場合もあります。 Mitsuriは協力工場が全国に140社以上あるため、電解メッキと無電解メッキ含めて最適なメッキ法をご提案できます。 電解メッキでお困りの際は、ぜひMitsuriにお申し付け下さい。