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  • インボイス制度と電子帳簿保存法の概念と関係を徹底解説!改定による影響と準備も紹介

    インボイス制度の開始や電子帳簿保存法の改正というニュースを通じて「インボイス」や「電帳法」といった言葉を聞いたことがあっても、実際にその内容まで理解できていないという方も多いのではないでしょうか。 今回は、インボイス制度と電子帳簿保存法について、それぞれの概念と具体的な影響、制度への対応に向けた準備について解説をします。 インボイス制度と電子帳簿保存法とは まずは、インボイス制度と電子帳簿保存法について解説をしていきます。 インボイス制度の概要 インボイス制度とは、「適格請求書等保存方式」の通称で、インボイス(適格請求書)を用いることによって仕入税額控除を受けられる制度です。 国税庁が事前に許可を与えた適格請求書発行事業者だけが発行できるインボイスの中で、取引先が支払う消費税額を計算します。 インボイスには以下の内容を含む必要があります。 登録番号 適格請求書を発行する氏名または名称 取引年月日 取引内容 税率ごとに区分した消費税額 適格請求書の交付を受ける取引先の氏名または名称 また、事業者は販売時と仕入れ時に支払う消費税によって二重課税が発生します。この二重課税を避けるために、仕入税額控除という仕組みを使って消費税を計算します。 事業者が消費税を計算するときには仕入税額控除によって計算された金額を支払うことになります。 電子帳簿保存法の概要 電子帳簿保存法とは、電子化された帳簿類を法的に認めるための法律です。また、この法律は1998年に施行され、改正が重ねられてきましたが、2022年1月にも改正されています。 対象書類は、簿記帳簿・記録書類・証憑などが該当します。これらの帳簿類を電子で保存する場合は下記の要件を満たす必要があります。 完全性:情報が改ざんされていないことを証明できるか 可読性:読み取り可能か 再現性:復元時に元の情報と一致しているか 保存期間:書類別に定められた期間保存しているか 保存場所:一元管理やセキュリティ対策をしているか 2022年の改正点の概要を以下に3つ記載します。 税務署長の事前承認制度の廃止:事前承認がなくなることで実施工程を簡素化 適正事務処理要件の廃止:紙原本をスキャナ保存するときに1人で作業可能 検索要件の緩和:電子データ検索時の必要な項目を簡略化 インボイス制度と電子帳簿保存法との関係性 インボイス制度と電子帳簿保存法の関係性について紹介します。 インボイス制度は、インボイスの中で消費税額を計算し、帳簿に記載する制度です。インボイスを適切に保存・管理しておかないと仕入税額控を受けることができません。具体的には、制度に則った帳簿や請求書などを保管しておく必要があります。 一方、電子帳簿保存法は、事業者が帳簿類を電子化して保存するときに、どのような要件を満たす必要があるかを定めた法律です。電子帳簿保存法により、事業者は電子帳簿の作成・保存によって、紙帳簿と同等の証憑力を持つことができます。 インボイス制度と電子帳簿保存法はお互いに関係する制度です。電子帳簿保存法の要件に沿って電子化を行い、適切に管理をすることで、インボイス制度の適切な運用が可能になります。 インボイス制度と電子帳簿保存法による影響 次に、インボイス制度と電子帳簿保存法による影響について解説します。 インボイス制度による影響 インボイス制度の実施は、普段作成する請求書に影響を与えます。 インボイス制度以前の請求書は「区分記載請求書」という書類でしたが、インボイス制度導入に伴い「適格請求書」へと変更になり、請求書の記載事項が変わります。 具体的には、適格請求書になることで 「適格請求書を発行する事業者の登録番号」 「税率ごとの消費税額」 を新たに追記する必要があります。 また、その他の変更点として、消費税額の算出方法が選べることも挙げられます。 以前は、年間の総売上に対して消費税を計算する「割戻し計算」だけが認められていました。しかし、インボイス制度によって売上が発生するたびに消費税を計算する「積上げ計算」を選択することも可能になりました。 電子帳簿保存法による影響 電子帳簿保存法改正の主な影響は、帳票類をデータ保存して管理しなければならなくなったことです。 ただし、2022年の改正で電子データの保存要件が緩和され、電子データの保存がしやすくなっています。 一方で、スキャナ保存したデータに不正があった場合には加重措置が課されることになります。具体的には、隠蔽、仮装、それらの申告漏れがあった場合に10%加重されることになります。 電子データの保存はしやすくなっても、管理は注意して行う必要があります。 インボイス制度と電子帳簿保存法に対応するための準備 インボイス制度と電子帳簿保存法に対応するための準備について解説します。 新しい制度に対する社内教育 1つ目は、新しい制度に対する社内教育です。 インボイス制度や電子帳簿保存法は、帳簿に関することなので経営者や経理担当者のみが知っていればよいという訳ではありません。 たとえば、営業担当者が顧客と請求書のやり取りをする場合、どのように事務処理を進めるのか理解しておかないと余計な時間を取ることになってしまうかもしれません。 社内教育をしっかりと行うことで、新しい制度への理解を深めておくことが重要です。 証憑書類管理システムの導入 2つ目は、証憑書類管理システムの導入です。 証憑書類管理システムの導入により、インボイスに必要な項目が記載されているか、保存要件に不備がないかといったことまで一元管理することが可能になります。 システム導入によって作業が効率化され、工数削減や証憑書類関係の業務の属人性の解消にもつながります。 まとめ 本記事ではインボイス制度と電子帳簿保存法の概要や影響、それらに対応するための準備について解説してきました。 インボイス制度や電子帳簿保存法は電子データでの証憑書類の保存や運用方法を定めた法律であり、電子化の流れが加速しています。 社内の書類が電子データになることで便利になり、生産性が高まる期待もあります。企業はそれらの法整備に対応できるように準備をすることが必要です。 本記事も参考に、インボイス制度や電子帳簿保存法についての対応を検討しましょう。

  • インボイス制度の問題点を徹底解説!解決方法・押さえておきたい負担軽減措置も詳しく紹介

    インボイス制度の問題点を徹底解説!解決方法・押さえておきたい負担軽減措置も詳しく紹介

    インボイス制度の問題点を徹底解説!解決方法・押さえておきたい負担軽減措置も詳しく紹介 インボイス制度が始まる前に問題点への対策を打っておきたい、と考える担当者もいるでしょう。インボイス制度を適切に利用開始すればメリットを得られるものの、取引先が制度加入していない場合、適切な控除を得られない可能性もあります。制度開始に合わせて社内体制を整備しなければ、経理担当者の負担が増えてしまいます。そのような事態が発生しないためにも、問題点を早期に把握して、対策を打つことが大切です。 そこで本記事では、インボイス制度の問題点と解決方法、押さえておくべき負担軽減措置について詳しく解説します。 インボイス制度の問題点とは まずは、インボイス制度の問題点について、以下4点を説明します。 仕入れ税額控除減額の可能性 経理担当者の負担増の可能性 取引が継続されない可能性 請求書の様式変更 それぞれ、一つずつ見ていきましょう。 仕入れ税額控除減額の可能性 1つ目の問題点は、仕入れ税額控除減額の可能性です。 仕入れ税額控除減額とは、仕入れた商品やサービスにかかった消費税を、自社で支払った消費税から差し引いて納税する仕組みです。消費税の二重課税を解消できる、という特徴があります。 インボイス制度開始後、売り手となる取引先がインボイス制度に加入していない場合、買い手は仕入税額控除が減額されます。免税事業者に支払った消費税は、税務署からは支払ったと認められないため、自社がわざわざ納付しなければなりません。 経理担当者の負担増の可能性 2つ目の問題点は、経理担当者の負担増の可能性です。 インボイス制度導入開始後は、免税事業者となる取引先が、インボイス制度に加入しているか、そうでないかが分かれます。そのため、買い手側の経理担当者は、それぞれの企業に合わせた対応が必要です。 仕入れ税額控除率も異なり、取引ごとに税額計算を行う積上げ計算も加わるため、それぞれのインボイス(適格請求書)を区別して管理する必要があるでしょう。 インボイス制度開始後は、請求書を受け取って処理する経理担当者の請求書業務の負担も増える可能性が高く、制度開始に備えて体制を整えておく必要があります。 取引が継続されない可能性 3つ目の問題点は、取引が継続されない可能性です。 売り手側がインボイス制度に加入していない場合、買い手にとっては「取引先の仕入れ税額控除が減額されてしまう」というデメリットがあります。買い手の中には「インボイス制度に加入していない企業とは今後の取引を見直したい」と判断し、取引を継続されない可能性が高まるでしょう。 そのため、インボイス制度に加入しない免税事業者(売り手)は、インボイス制度開始後取引先が減り、売上も減少してしまうかもしれません。 請求書の様式変更 4つ目の問題点は、請求書の様式変更です。 インボイス制度開始後、売手側は従来の請求書の様式に対して、以下の記載事項を追加して発行する必要があります。 ①適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号②取引年月日③取引内容(軽減税率の対象品目である旨)④税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)及び適用税率⑤税率ごとに区分した消費税額等⑥書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称 出典:適格請求書等保存方式の概要|国税庁 上記対応のためには、請求書や請求書まわりの帳票(納品書・検収書)などを管理する、基幹システム・帳票システムなどへの対応が必要です。 請求書一つの様式を変更するだけでも、データ生成方法や項目定義、帳票定義の仕様変更など、さまざまなシステムの変更対応をしなければなりません。 経理部門、システムを担当するバックオフィス部門などに、インボイス対応による仕事の負担がかかる可能性もあります。 インボイス制度の問題点の解決方法 インボイス制度の問題点の解決方法について、以下2点を説明します。 売手側の対応 買手側の対応 それぞれ、一つずつ見ていきましょう。 売手側の対応 1つ目は、売手側の対応です。 インボイス制度開始後、要件が満たされた適格請求書をスムーズに発行するためにも、売り手は早い段階で、インボイス制度への登録申請などの手続きを進めておく必要があります。 場合によっては免税事業者から課税事業者への変更対応が必要なケースもあるでしょう。請求書のフォーマット対応や、基幹システム側で項目変更など対応に追われないためにも、余裕を持った期間設定が大切です。 買手側の対応 2つ目は、買手側の対応です。 社内で経理事務を担当する方は、インボイス制度の問題点に備えた対応が必要となります。 たとえば、消費税額の計算方法に関して従来の割り戻し計算ではなく、売上で発生した消費税の金額を都度足す「積上げ計算」を理解しておくことが重要です。 中小企業の場合、売上に係る消費税額から、消費税の納税額を簡単に算出できる「簡易課税制度」の適用も検討しましょう。対象となる課税事業者なら任意で選択でき、経理事務の負担も軽減できる可能性があります。 また、免税事業者と課税事業者から発行される請求書の区分・管理も必要です。請求業務のワークフローの見直しも検討することで、業務効率化を図りましょう。 インボイス制度開始後は、取引先が課税事業者ではない場合、仕入れ税額控除減額の恐れもあります。取引相手が免税事業者か課税事業者かを確認し、今後も継続するべきかを見極めていきましょう。 インボイス制度で問題点を見つけた時に押さえたい負担軽減措置とは インボイス制度で問題点を見つけた時に押さえたい負担軽減措置について、以下4点を説明します。 小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置(2割特例) 一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置(少額特例) 少額な返還インボイスの交付義務免除 登録制度の見直しと手続の柔軟化 それぞれ、一つずつ見ていきましょう。 小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置(2割特例) 小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置(2割特例)とは、インボイス制度開始を機に、免税事業者から課税事業者(インボイス発行事業者)となった小規模事業者に対して、税負担が増えることを防ぐために設けられた控除制度です。 インボイス制度は、小規模事業者や個人事業主・フリーランスにとって、請求書の内容記録や報告負担が重く、導入に踏み切れない場合もあるでしょう。 2割特例を適用可能な小規模事業者は、売上税額の2割を納税額とできるため、納税義務の負担が重いと感じている事業者にとって大きなメリットです。 ただし、この特例は小規模事業者に限られており、補助上限が設けられています。 また、2割特例の期間は、2023年(令和5年)10月1日〜2029年(令和11年)9月30日までの間と限定されています。 したがって、小規模事業者はその期間の間、インボイス制度を導入するために体制などを整えておくといいでしょう。インボイス発行事業者登録を受けていないと、2割特例の対象となりませんので、注意しましょう。 一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置(少額特例) 一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置(少額特例)とは、前々年・前々事業年度となる基準期間において、課税売上高が1億円以下、かつ当該課税仕入れに係る支払対価よの額が、1万円未満の場合に適用される仕組みです。 一定の事項が記載された帳簿を保存しておけば、インボイス制度の開始から6年間、仕入税額控除を受けることが可能です。 この制度により、2023年10月1日〜2029年9月30日までの間は、インボイスとして保存しなくとも、国内の課税仕入れに関しても仕入れ額控除を認められるでしょう。 少額な返還インボイスの交付義務免除 少額な返還インボイスの交付義務免除とは、一定金額以下の返品・値引き・割戻しなどを対象に、売上の返還に関して、返還インボイス交付義務が免除される、という制度です。 インボイス制度では、商品などの返品・値引きにおいて売上の一部返還を行う際、適格返還請求書となる返還インボイスを、別途交付する必要がありました。インボイス制度の改正により、税込1万円未満の値引き等については、返還インボイスの交付不要と定められています。 登録制度の見直しと手続の柔軟化 インボイス制度導入にあたり、登録制度の見直し・手続きの柔軟化が行われています。 適格請求書を発行するためには、当初2023年3月31日までが登録期限とされ、その日までに登録申請書を提出する必要がありました。しかし、登録制度の見直しにより、2023年9月30日まで、期限が延長されることとなりました。 この見直しにより、これから導入を検討する企業も増えています。またインボイス制度は多くの企業にとって簡単で使いやすい制度になるのではと、期待が高まっています。 まとめ 本記事では、インボイス制度の問題点とその解決方法、負担軽減措置について解説しました。 インボイス制度準備をしていないままでいると、自社に大きな影響をもたらしてしまうかもしれません。インボイス制度を円滑に進めるためにも、制度開始前に既知の問題点を把握し、請求書等関連システムの仕様変更や体制強化が大切です。インボイス制度は2023年10月1日よりスタートします。制度開始に合わせて、しっかりと準備を整えていきましょう。

  • インボイス制度を簡単にわかりやすく解説!開始後の影響から必要な準備までまとめて紹介

    インボイス制度を簡単にわかりやすく解説!開始後の影響から必要な準備までまとめて紹介

    令和5年10月1日から、インボイス制度が開始されます。まだ制度についてよくわからない、難しそうと考えている方も多いのではないでしょうか。普段、請求書・納品書などの帳票のやり取りが発生している事業者にとって、インボイス制度を利用すれば消費税の仕入税額控除を受けられるなどの大きなメリットがあると言えます。 そこで本記事では、インボイス制度とは何かを簡単に解説するとともに、開始後の影響、する・しないそれぞれのケース影響、スケジュールと必要な準備についても触れていきます。 インボイス制度とは?簡単に解説 まずは、インボイス制度とは何か簡単に解説するために、以下4点を説明します。 概要 目的 開始時期 やらないとどうなる? それぞれ、一つずつ見ていきましょう。 概要 インボイス制度とは、商品やサービスを購入する際に、購入証明書となるインボイスを受け取ることによって、税金の申告や控除をする制度を指します。適格請求書等保存方式とも呼ばれます。 適格請求書(インボイス)と呼ばれる、一定の要件を満たす請求書をやり取りすることで、インボイスを受け取った企業・個人(購入者)は、自分が支払った税金を申告して控除を受けられるというメリットがあります。一方、販売者は、自社が発行したインボイスをもとに税金を申告し、納付することが求められます。 インボイス制度を開始すれば、税金の申告や控除がスムーズに行われるため、企業や個人にとって有益な制度といえるでしょう。 目的 インボイス制度の主な目的は、税金の申告や控除をスムーズ、かつ正確に行うことです。 買い手は、自社が支払った金額を申告して税金を控除し、税金の支払いを軽減できます。売り手は、インボイスを元に税金を正確に申告・納付できるようになります。インボイスを発行して、売上税にかかった税金を申告・納付できるため、税金の適正な徴収を行えます。 また、税務署などは不正なインボイスの発行や使用を厳重に禁止することも可能です。インボイス制度は、税関機関が管理しています。インボイスによって適正な税金の支払いが行われるようになるため、税関機関にとっても、取引の正確な消費税額と消費税率を把握でき、税金の徴収を適正に行えるといえます。 開始時期 インボイス制度は、令和5年10月1日から、消費税の仕入税額控除の方式として開始されます。制度開始後、インボイスを発行できるのは、適格請求書発行事業者に限定されます。 適格請求書発行事業者になりインボイスを発行するためには、登録申請書を提出して登録を受ける必要があります。令和5年10月1日の制度開始から発行したいと考えている場合は、原則として令和5年3月31日までに登録が必要なため注意しましょう。 やらないとどうなる? インボイス制度をやらない場合、どうなるのかについて説明します。 インボイスを発行されない買い手は、原則として消費税の仕入税額控除ができないため、税額が増える可能性があります。 売り手はインボイス制度に登録申請しなければ、インボイスを発行することができません。買い手にとっても税率が上がるなどデメリットしかないため、今後の取引を解除される理由になるかもしれません。 インボイス制度に登録しないことで、買い手・売り手どちらにも大きな影響を与えるでしょう。 簡単にわかるインボイス制度に欠かせない消費税の仕入税額控除とは インボイス制度に欠かせない、消費税の仕入税額控除について、説明します。 消費税の仕入税額控除とは、企業が仕入れた商品やサービスにかかった消費税を、自社で発生する消費税に対して、控除することを指します。 具体的には、課税事業者にとって、自社が納税すべき消費税を計算する際、売上に紐づく消費税から仕入に紐づく消費税を差し引いて計算することです。従来に比べて、消費税の二重課税を解消できる計算方法が可能となります。 従来の制度では、仕入税額控除の適用を受けるためには、企業は仕入れの事実を記載した請求書・帳簿を保存することが求められていました。今後はインボイスを元に、企業が購入した商品やサービスにかかった消費税に関して、自社商品・サービスの売上税の一部である消費税を控除できるようになります。 これにより企業にとっても、販売する商品やサービスにかかる消費税の金額を減らし、経営の負担を軽減できるでしょう。 インボイス制度開始後の影響を簡単に説明 インボイス制度開始後の影響について、以下2点を説明します。 課税事業者の場合 免税事業者の場合 それぞれ、一つずつ見ていきましょう。 課税事業者の場合 インボイス制度開始後の課税事業者への影響について、説明していきます。 課税事業者は、仕入れ先から発行されるインボイスを元に、仕入にかかった消費税額を控除できるようになります。インボイスを入手できなかった場合は、自社の消費税額が増加する可能性もあるかもしれません。簡易課税制度を選択した場合は税負担が増加しない場合もありますが、仕入れ先がインボイス制度に登録しているかどうか、注意すべきでしょう。 免税事業者の場合 インボイス制度開始後の免税事業者の影響について、説明していきます。 免税事業者は、課税事業者の申請を済ませてインボイス制度に登録申請すれば、インボイスを発行できます。そのため、販売先の企業にとっても消費税額の控除が可能です。 課税事業者に登録申請しない場合は、インボイスを交付できず、販売先も仕入税額の控除ができません。6年間の経過措置期間はあるものの、販売先にとっては今後税負担が増加することを懸念して、今後の取引を見直されるかもしれません。 インボイス制度を利用する場合は、課税事業者への申請・インボイス制度への登録申請が必要となりますので国税庁のWebサイトを参考に手順などをしっかりと確認しておきましょう。 参考:[手続名]適格請求書発行事業者の登録申請手続(国内事業者用)|国税庁 インボイス制度に登録する・しない?それぞれのケースを簡単に説明 ここまで、インボイス制度の概要と、開始後の影響について解説しました。それでは、インボイス制度に登録する・しないでは何が異なるのでしょうか。ここからはそれぞれのケースについて説明していきます。 登録した場合 登録しなかった場合 それぞれ、一つずつ見ていきましょう。 登録した場合 インボイス制度に登録した場合、販売先は仕入れ税額控除が可能となります。減税率も上がる可能性もあり、メリットが大きいと言えるでしょう。今後も販売先からの取引が継続できる可能性も高いです 自社にとっては、インボイスを元にした消費税の申告・納付の手続きが必要となり、納税担当者にとって負担が増える傾向にあるため、制度開始後慌てないように、事前準備が大切です。 登録しなかった場合 インボイス制度に登録しなかった場合、自社の経理業務など納税担当者への負担に関しては、現行と変わりません。 しかし、販売した相手先は消費税の仕入税額控除を受けることができません。販売先は、自社の税負担が増加してしまうかもしれません。インボイスを発行してもらえないならば取引を見直したいと言われて、今後の案件を獲得できなくなる可能性もあります。そのため、企業の今後の収益に大きな影響を及ぼしてしまうかもしれません。 インボイス制度のスケジュールを簡単に説明 インボイス制度のスケジュールについて、以下2点を説明します。 登録申請 導入開始 それぞれ、一つずつ見ていきましょう。 登録申請 インボイスを発行するためには、まずはインボイス制度への登録申請をする必要があります。登録申請手続きは、令和3年10月1日から既に始まっており、登録申請手続きを終えた企業は制度が始まらなくても、登録番号・適用税率・消費税額などの項目を追加したインボイスを発行できるようになります。 現在登録申請をしておらず、令和5年10月1日からインボイスを発行したいと考えている事業者は原則として、令和5年3月31日までに登録申請手続きを済ませることが必要です。 導入開始 インボイスの制度が始まるのは、令和5年10月1日からです。それ以降の取引で、取引先が希望した場合には、インボイスを発行することが義務付けられます。 令和5年10月1日以降、インボイスを発行すれば、販売先にとって仕入れ税額の控除を受けられるようになります。登録申請を終えていれば、令和5年10月1日より前の期間でもインボイス発行できますが、令和5年9月30日時点では仕入税額控除の対象とはならないので注意しましょう。 インボイス制度開始前までにすべき準備を簡単に説明 課税事業者の場合 免税事業者の場合 それぞれ、一つずつ見ていきましょう。 課税事業者の場合 インボイス制度開始前までに、課税事業者がすべき準備について、説明します。 すべき主な準備として、以下3点があります。 ・現在使用の請求書に関して、インボイスに従った記載項目に変更する・インボイスと従来の請求書類など、制度開始前後の資料をしっかりと分けて管理する・電子帳簿保存法などに対応した帳票系のシステムを利用している場合、インボイスの要件を満たせるように仕様変更する 免税事業者の場合 インボイス制度開始前までに、免税事業者がすべき準備について説明します。 小規模事業者や個人事業主、フリーランスが主に該当する免税事業者は、「インボイス制度開始後に課税事業者になるかどうか」の選択検討が必要です。 免税事業者のままでは、適格請求書発行事業者になれず、インボイスの発行ができないという問題があります。 免税事業者はこれまで売上高が1,000万円に満たない場合において、消費税の納税が免除されていましたが、インボイス制度が開始されたら、インボイスが発行できなくなり、6年の経過措置期間はあるものの、やがて免除されなくなるでしょう。 免税事業者は申請を出せば、課税事業者となることも可能です。課税事業者の申請手続きと共に、販売先にインボイスを発行できるように、インボイス制度の登録申請を済ませておくことをおすすめします。 まとめ 本記事では、インボイス制度について簡単に解説しました。消費税の仕入税額控除の方式として、令和5年10月1日から、いよいよインボイス制度がスタートします。制度導入後は、事前に登録申請した事業者だけがインボイス発行できるようになり、控除対象となります。 制度にしっかりと対応するためにも、本記事に記載したインボイス制度の概要、開始後の影響、スケジュールをしっかりと理解しておきましょう。

  • インボイス制度後の請求書の書き方を徹底解説!登録申請書や意識すべきポイントも詳しく紹介

    インボイス制度後の請求書の書き方を徹底解説!登録申請書や意識すべきポイントも詳しく紹介

    インボイス制度後の請求書の書き方を、早い段階で知っておきたいと考えるご担当者も多いかと思います。登録申請書を提出すれば、制度適用後の書き方で書いても問題ないとされているので、早期段階で書き方をおさえておくと、制度開始後もスムーズに切り替えができるでしょう。 そこで本記事では、インボイス制度開始後の請求書の具体的な書き方・制度開始前との書き方の違い・登録申請書の書き方・ポイントについて詳しく解説していきます。 インボイス制度開始後の請求書の書き方 まずは、インボイス制度開始後の請求書の書き方について、以下2つを説明します。 適格請求書 適格簡易請求書(製造業用) それぞれ、一つずつ見ていきましょう。 適格請求書 インボイス制度の適格請求書の書き方について説明します。 取引先などに送る適格請求書の様式・書式は、法令などで定められていません。デジタルや手書きの両方においても、以下必要事項が記載されたものであれば、適格請求書に該当します。 ①適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号②取引年月日 ③取引内容(軽減税率の対象品目である旨) ④税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)及び適用税率 ⑤税率ごとに区分した消費税額等 ⑥書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称 出典:適格請求書等保存方式の概要|国税庁 上記インボイス要件に加えて、従来の請求書に記載していた項目、品目・数量・単価・金額請求金額・発行者名と署名・取引先名なども記載が必要です。 インボイスに合わせて請求書のフォーマット・書式を決める際は、テンプレートを公開しているサイトなどを参考にしてみましょう。 適格簡易請求書(製造業用) インボイス制度の製造業用を例とした適格簡易請求書の書き方について説明します。 不特定多数の者に対して販売等を行う製造業や小売業、飲食店業などの場合には、適格請求書よりも簡単に作成できる、適格簡易請求書を交付することが可能です。 適格簡易請求書には、以下項目の記入が必要です。 ①適格請求書発行事業者の氏名または名称及び登録番号 ②取引年月日 ③取引内容(軽減税率の対象品目である旨) ④税率ごとに区分した合計した対価の額(税抜き又は税込み) ⑤税率ごとに区分した消費税等又は適用税率 出典:適格請求書等保存方式の概要|国税庁 インボイス制度の開始前と開始後の書き方における違い インボイス制度の開始前と開始後の請求書の書き方における違いについて、説明します。 インボイス制度開始前と開始後では、請求書の書き方が異なります。インボイス制度開始後は、税金に関する情報を記載することが求められるため、請求書の書き方がより詳細になります。 インボイス制度が開始されると、請求書には以下項目を追加で記載する必要があります。 ・適格請求書発行事業者の登録番号・適用税率(8%や10%など)ごとの取引金額の合計額とその税率 税率ごとに区分した消費税額等の端数処理の際に、1円未満の端数が生じる場合、1つの適格請求書につき、税率ごとに1回の端数処理の計算が必要となるため注意しましょう。詳しくは国税庁が出している「適格請求書等保存方式の概要」を参考にしてみてください。 インボイス制度への登録申請書の書き方 インボイス制度への登録申請書の書き方について、以下4つを説明します。 ケースによって書き方が異なる 郵送提出の場合 e-Tax申請の場合 提出期限 それぞれ、一つずつ見ていきましょう。 ケースによって書き方が異なる インボイス制度に登録するための、登録申請書は、課税事業者になるタイミングなどによって書き方が異なります。 個人事業者や12月決算の法人が令和5年(2023年)中に申請する場合に対して、以下ケース毎の書き方を国税庁が発表しているので、自社ケースにあてはめて参考にしてみてください。 CASE1:令和5年(提出時)が課税事業者の方(個人事業者・12月決算の法人) CASE2:令和5年(提出時)が免税事業者で、令和5年10月1日に登録を受ける方(個人事業者・12月決算の法人) CASE3:令和5年(提出時)が免税事業者で、 令和5年10月2日~12月31日に登録を受ける方(個人事業者・12月決算の法人) CASE4:令和5年(提出時)が免税事業者の方(個人事業者・12月決算の法人)で、 令和6年が①課税事業者または②免税事業者で課税事業者選択届出書を提出し課税事業者になる方 CASE5:令和5年(提出時)・令和6年が免税事業者で、 令和6年1月1日~3月31日に登録を受ける方(個人事業者・12月決算の法人) 出典:登録申請書の書き方 フローチャート|国税庁 郵送提出の場合 インボイス制度に関する申請書等を書面で郵送提出する場合は、それぞれの納税地を管轄しているインボイス登録センターへ送付する必要があります。国税庁の以下サイトを参考に、自社の納税地を管轄するセンターに提出するようにしましょう。 参考:郵送による提出先のご案内|国税庁 インボイス登録センターが受領した後、記載した内容について電話などで連絡がくる場合もあります。 郵送時やインボイス制度で不明点が出てきた場合、インボイス登録センターではなく、インボイスコールセンターに問い合わせするようにしましょう。インボイス登録センターでは、インボイス制度に関する相談は受け付けていないため、質問をしても回答を得られません。 e-Tax申請の場合 e-Tax申請の場合は、スマホアプリでe-Taxソフト(SP版)をダウンロードする、もしくはPCでWebブラウザ経由からe-Taxソフト(WEB版)を使った方法で、申請できます。 e-Taxソフトを使うと、慣れないインボイス制度でも画面に沿って入力するため、まだ慣れないインボイス制度でも入力漏れもなく、スムーズな申請が可能です。 e-Tax申請の場合には、事前に以下を準備する必要があります。 法人の場合は商業登記認証局が発行する電子. 証明書等(個人事業主の場合はマイナンバーカード)利用者識別番号(マイナンバー登録時に発行されるがe-Taxで取得も可能) 提出期限 登録申請書の提出期限について説明します。 インボイス制度が始まるのは令和5年10月1日(2023/10/01)です。その日付から制度を利用したいと考えている事業者は令和5年3月31日(2023/3/31)までに、登録申請書の提出が必要、とチェックしておきましょう。 遅れた場合、制度導入開始日に間に合わない可能性があるため、注意しましょう。 インボイスの書き方で意識すべきポイント インボイスの書き方で意識すべきポイントについて、以下を解説します。 紙とデジタルそれぞれの差はない 枚数指定もない 制度開始前から始めても問題ない それでは、一つずつ見ていきましょう。 紙とデジタルそれぞれの差はない インボイスは、紙・デジタル媒体どちらの発行も認められています。メール送付・電子領収書なども含まれます。 印刷した書面とデジタルデータを併用することも、問題ありません。基本的にインボイスとして記載すべき内容が書いてあること、書類ごとの関連性を正確に確認できれば、インボイスとして認められます。 そのため、納品書は電子の領収書で、請求書は紙で交付することも可能です。 適格請求書に関わる電磁的記録と呼ばれているデジタルの場合、インボイスに記載した内容と同一の記載が必要です。制度対応後は記載項目が追加されていますので、内容に記載漏れのないようにしましょう。 枚数指定もない インボイスは枚数指定もありません。 請求書を提出する際は、必ずしも1枚の書類にする必要はなく、複数枚にまたがっても問題なしとされています。ただし、複数枚はそれぞれ書類同士の関連性を持たせるために識別できる情報の記載が必要です。 また、納品書には、取引の内容・税率ごとの区分取引金額の合計・消費税額の記載、請求書には納品書ごとに合計金額・登録番号の記載が必要となります。 制度開始前から始めても問題ない インボイスは、制度開始前から初めても問題ないとされています。 インボイスの登録申請は、令和3年10月1日から開始されているため、制度が始まる、令和5年10月よりも前からインボイスの交付ができるとされています。 そのため、今からインボイス制度に対応するフォーマットで請求書を作成しても、インボイス制度開始以前の請求書の記載事項を網羅しているため、既存取引への影響はありません。 まとめ 本記事では、インボイス制度開始後の請求書の書き方・制度開始前との書き方の違い・登録申請書の書き方・ポイントについて解説しました。令和5年10月1日より、インボイス制度がスタートしますが、インボイス交付は制度開始を待たずに今からでもすぐに始められます。制度が導入された後スムーズに対応できるように、登録申請を済ませて新しい書き方に慣れていくことをおすすめします。

  • 【製造業の現場改善】ECRSの原則ではじめるコスト改善!

    製造業の現場では、コスト改善のため、日常的に作業の効率化が追求されています。しかし、いざ業務改善を図ろうとしても、どこから手を付けたら良いのか、また多くの課題がある中でどのような優先順位を付けたら良いのか迷うことが多々あります。このようなときに指針となるのが、ECRSの原則です。ECRSの原則は、業務改善を検討する際、有効性の高い4つの視点を与えるとともに、それらの優先順位を教えてくれるものです。そのため、ECRSの原則に従って業務改善を実践することで、的確な課題の抽出と大きな改善効果が期待できます。この記事では、このECRSの原則について解説するとともに、製造業に適用したときの改善例について紹介していきます。ECRSの4原則とは?ECRSの4原則とは、業務を効率化する上で、順番に考えるべき以下の4つの原則を述べたものです。●Eliminate(排除):業務そのものをやめられないか?●Combine(結合):複数の業務をまとめて一緒にできないか?●Rearrange(交換):業務の順番や実施場所などを変えられないか?●Simplify(簡素化):業務をより簡単にできないか?業務改善の際に、業務の排除・結合・交換・簡素化の可能性を順番に検討していくことで、適切に業務の改善方法を立案・実践することができます。一般的には、次のような流れで業務の改善を考えていきます。まず、各業務の理由や目的を洗い出します。このとき、明確な理由や目的が見出だせない業務があればやめることを検討します。不必要であるにも関わらず、慣例的に行われている業務などがこれに該当します。業務の排除は、業務にかかった時間や費用をまるごと削減できる効果が大きい改善となります。次に、残った業務のうち、まとめて実行することで効率化に繋がるものがないかを確認します。類似した業務を別々に進めていたり別々の人と手分けしていたりする場合などが考えられます。場合によっては、分離したほうが効率化が図れることもあります。続いては、業務の順序や実施場所などを入れ替えることで、時間や費用の削減になるものがないかを検討します。それにより、業務全体を再設計して最適化します。作業順序を適正化して作業員の移動距離を減らすなどの効率化が挙げられます。代替案を検討して入れ替えることが必要になる場合もあります。最後は、業務の簡素化です。このステップは、改善の仕上げのようなものです。各業務を分析し、狭い範囲で最適化を図ります。例えば、業務の自動化やパターン化が挙げられます。工数削減やミスの防止などに繋がります。以上の4原則に従った業務改善は、おおよそ、「排除」の効果が最も大きく、「結合」、「交換」、「簡素化」の順に効果が小さくなっていきます。そのため、ECRSの順に改善計画を立案・実践していくことが大切です。ECRSの4原則を製造業に適用して考えるそれでは、ECRSの4原則を製造業に適用して考えます。通常、製造業の業務には加工や組立、検査などの工程があり、各工程では複数の作業が実行されます。これらの工程や作業は、実施順序が決まっており、順番に実行していくことで生産活動が行われています。これらを前提に、製造業ではどのような業務改善が可能か、例を挙げて見ていきます。E 排除(Eliminate) やめられないか?初めに、やめてもよいムダな作業がないかを検討します。製造業では、機械や機器、作業方法の研究不足からムダが生じていることがよくあります。例えば、今まで必要だった作業でも、工作機械や検査機器などを新たに導入したことで、作業が不要となることがあります。それにも関わらず、機械・機器の知識不足から、不要な作業が従来通りに行われていることがあるのです。また、情報の記録や通信が可能な機械や機器も存在します。そのため、工作物の寸法などを書類に記録し、次工程に受け渡すといった作業も不要となることが多々あります。そのほか、顧客の要求を大幅に上回る過剰品質の製品を作ってしまうという問題もあります。それにより、多くの作業が発生して、高コスト体質となっているケースがよくあります。参考:7つのムダ例「かざふてつどう」製造業のコスト改善を考えるC 結合(Combine) 一緒にできないか?次に、複数の作業をまとめて一緒にできないかを検討します。例えば、複数の工作機械で加工していたものを1台の機械で加工してしまうといったケースが考えられます。特に加工工程では、工作物の機械への設置と機械からの取り外しに多大な工数がかかるため、改善の効果が高くなります。類似する作業をまとめ、1人の作業者に担当させるといった方法もあります。それにより、作業者が必要とする技術も減少するため、教育にかかる工数を削減できます。そのほか、機械の自動送り時間中にバリ取りやツヤ出しを行うなど、本来は別の作業として実施していたことを一緒に行うことも検討してみます。R 交換(Rearrange) 順番を変えられないか?続いては、作業の順番や実施場所、担当者などを変えられないか検討します。製造業では、ラインにおける様々な作業を最適化し、効率化するなどの例が挙げられます。この例では、加工の順序や機械の配置などを入れ替えることで、時間の短縮と低コスト化を図ります。また、単に頻繁に利用する工具をより取り出しやすい位置に配置して、動作や移動距離を削減するといった改善もあります。細かいことですが、長期的には、大幅なコスト削減になっていることがあるのです。S 簡素(Simplify) 簡単にできないか?最後は、個々の作業をより簡単にできないか検討します。作業員が実行する作業では、動作を分析して簡素化することが有効です。品質や作業時間、作業員への訓練などを考慮した上で、どの作業員でも簡単かつ楽に実行できる動作を探します。作業の一部を自動化するといった手段もあります。機械やロボットなどの利用のほか、情報化することが自動化になることがあります。

  • 制約理論で製造業の業務改善!ボトルネックを見つけてコストマネジメントをしよう!

    制約理論とは、「Theory of Constraints(TOC)」の日本語を訳したもので、生産性の低いボトルネック・制約条件を見つけ、その改善を図ることで業務全体の最適化を行い、生産性を高めることを目的とした考え方です。製造業の生産分野のほか、経営マネジメントなどの分野でも用いられることがあります。制約理論とは?基本的な考え方と目的制約理論は、「製造業などにおける生産性は、制約条件(ボトルネック)に依存していて、その制約条件を改善することで、業務全体のパフォーマンスが向上する」という考え方に基づいています。ボトルネックの特定→改善を行うことで、業務全体の最適化を行い、処理能力(スループット)を向上させること、つまり生産性を高めることを目的としています。制約理論で進める業務改善手順制約理論では、以下のような5つの業務改善手順を踏むことで、継続的な業務の改善を行います。(1)業務全体のボトルネックを特定する第1ステップでは、業務プロセス全体の中からボトルネック、つまり全体の生産性を規定してしまっている工程を見つけます。工場の生産ラインにおいて特に時間を要する工程や、生産能力や作業効率が悪い工程が挙げられます。ボトルネックの特定に当たり、プロセス全体の工程を、各工程の処理能力と合わせて可視化することで、どこがボトルネックとなっているかが把握しやすくなります。特に製造業の生産分野では、3M(ムリ・ムダ・ムラ)の発生や、装置による生産量の制限などがボトルネックにつながります。参考:7つのムダ例「かざふてつどう」製造業のコスト改善を考える(2)ボトルネックを最大限に活用するボトルネックとなる工程がある場合、その処理能力(スループット)が業務全体の処理能力に大きく影響することがあります。そのため、第2ステップでは、ボトルネックとなっている工程のパフォーマンスを最大限に活用する、つまりその処理能力を最大にする方法を考えていきます。この段階では、新たな設備の導入や新たな人員の確保などは検討せず、現状の設備、人員数を持って、パフォーマンスを高めることにフォーカスします。ボトルネックとなっている工程に、どのような障害・不具合があるかを判断した上で、対策を検討します。製造工程においては、段取り時間の短縮、トラブルの削減、材料待ち時間の削減、歩留まりの向上、稼働時間の延長などが方法として挙げられます。(3)業務プロセスをボトルネックに合わせる第3ステップでは、業務全体の処理能力をボトルネックとなっている工程の処理能力に合わせていきます。これによって、業務全体が無駄を省いた効率的なプロセスに最適化されます。例えば、製造工程ではボトルネック工程の処理能力に合わせて資材を投入するということが行われます。これにより、全工程の処理能力のバランスが取れ、結果的に生産スケジュール及び在庫の最適化につながります。(4)ボトルネックの能力を向上させる第4ステップでは、ボトルネックの処理能力を高めることで、業務プロセス全体の処理能力の向上を図ります。例えば、新規設備の導入や遊休設備の改造などといった設備強化の他、新たに優れた人材を採用するという方法が考えられます。ここでは、需要の変化や、製品設計の変更など将来的に起こりうる変化を考慮した上で、対策を取ることが重要となります。(5)新たなボトルネックを探すボトルネックとなっていた工程の改善を行い、処理能力が向上した後は、制約条件(ボトルネック)が変わる可能性もあります。そのため、第1ステップに戻り、新たなボトルネックの解消に向け、さらなる業務改善を図ることが重要となります。

  • 製造原価とは?求め方・計算式を解説!売上原価との違い

    製造業では材料や原料を仕入れ、工場で生産し、製品を売ることで利益を得ています。生産するのにかかった費用の合計である「製造原価」は、製造業を運営していくにあたり、利益に大きく関わります。企業がより利益を上げるためには、売上の向上、もしくは製品の原価を抑えなければなりません。原価を抑える方法で利益を上げるのであれば、製造原価を計算・分析しておくのは重要なポイントです。また、製造原価をしっかりと把握しておくことは、製品の価格設定や予算管理などにも役立ちます。製造原価とは?製造原価とは、製品を作るうえで発生したすべての費用のことで、主に製造業で使われる言葉です。製品を作るには、原料や材料を仕入れて、設備の運転や外注を利用するなど、さまざまな工程を必要とします。費用は、原料などを仕入れる以外にも、設備の燃料費・水道光熱費・人件費などにもコストは発生しているものです。製造原価は、そのようなものも含めてすべて合算します。なお、企業で発生する原価には、仕入れから生産までにかかる費用である「製造原価」のほかに、製品を販売するのにかかる費用である「販売費及び一般管理費」もあります。ここでは、製造原価に焦点をあてて解説していきます。製造原価と売上原価の違い売上原価とは、売れた商品に対する仕入れや製造にかかった原価のことで、主に小売業で使われる言葉です。一方で製造原価は、製品を製造するのにかかった費用の合算であるため、計算する対象が異なります。製造原価の分類方法製造原価は、基本的に費用の発生形態による分類である「材料費・労務費・経費」の3つに種類分けされます。各費用の詳細は下表の通りです。<費用の発生形態による分類>分類内容代表例材料費物品の消費で発生する原価原料費・消耗品費・燃料費・備品費など労務費人件費などの労働力を使うことで発生する原価給料・賞与・手当・福利厚生費など経費材料費と労務費以外で発生する原価減価償却費・水道光熱費・賃貸料など製造原価を計算する際は、以上の3つを用います。また、製造原価は、製品との関連による分類である「製造直接費・製造間接費」の2種類による分け方もあります。さらに製造直接費には「直接材料費・直接労務費・直接経費」の3種類、製造間接費には「間接材料費・間接労務費・間接経費」の3種類で、合計6種類の分類がされています。製品との関連による分類の詳細は下表の通りです。<製品との関連による分類>分類1分類2内容代表例製造直接費直接材料費特定の製品のために使った費用特定の製品を作るうえで必要な金属や部品などの材料費直接労務費製品の製造に関わった従業員の賃金現場作業員の賃金直接経費製造にかけた材料費・労務費以外の費用や外注費用外注加工費製造間接費間接材料費製品にどれだけの材料費をかけたのか不明確なもの潤滑油・塗料・工具といった消耗品・補助材料費など間接労務費直接製造に関わらない人への労務費生産管理者の給料・賞与・福利厚生費など間接経費特定の製品との関わりが不明な経費減価償却費・水道光熱費・賃貸料など製造間接費は製造直接費と違い、明確にかかった費用が把握しにくいため、製品の生産量や設備の稼働時間などから配賦(はいふ)計算を行います。配賦とは、費用を配分処理することで、企業ごとに配賦基準を定めて製造間接費を計算します。製造原価の求め方・計算式製造業での決算書には、当期に販売した製品の製造原価を明らかにするための「製造原価報告書」があります。ここでは、「材料費・労務費・経費」の分類を用いた方法で、製造原価報告書に記載が必要な、「当期製品製造原価」の計算式を以下に紹介します。当期製品製造原価=当期総製造費用+期首仕掛品棚卸高-期末仕掛品棚卸高当期製品製造原価とは、当期に完成した製品の製造原価を指します。これは、前期に未完成だったものが当期に完成したものも含みます。一方、当期中に完成しなかった製品については含みません。当期総製造費用は、当期にかかった、費用の発生形態による分類の「材料費・労務費・経費」の合計額です。当期材料費は「期首材料棚卸高+当期材料仕入れ高-期末材料棚卸高」の数式から算出します。期首仕掛品棚卸高は、前期末時点で未完成の製品の金額です。期末仕掛品棚卸高は、今期末時点で未完成の製品の金額を表します。

  • 製造現場が悩まされるチョコ停の原因と対策

    チョコ停は、コストダウンや効率良くものづくりを進める上で、顕在化しておきたいポイントです。小さなトラブルではあるものの、1日に何回も発生してしまうため、生産効率が大幅に低下している恐れがあります。トラブルを根本的に解決しないままにしておくと、製造設備の大きな故障を招き、ドカ停に発展することもあるでしょう。チョコ停とはチョコ停とは、製造設備にトラブルが発生するなどして、設備・製造が短時間の間停止することで、別名「空転ロス」とも呼ばれています。チョコ停は、以下の設備効率を阻害する大きなロスである「7大ロス」と呼ばれるものの一種です。7大ロス一覧故障ロス設備故障により稼働停止している時間段取り替えロス生産する製品を変更する際の切替えにより稼働停止している時間治具交換ロス治具や刃物などの交換により稼働停止している時間立ち上げロス生産設備の立ち上げ時に行う調整にかかる時間チョコ停(空転ロス)一時的なトラブルにより設備の稼働を停止している時間速度低下ロス想定している設備のスピードに対して、遅れている時間不良品ロス不良や手直しによる物量的ロスと、修正にかかる時間的なロスチョコ停は製造設備が停止している状態のため、現場の作業者がいち早く気づき、復旧させる必要があります。チョコ停の具体的な特徴については下記の通りです。チョコ停の特徴・トラブルの発生から数分程度で復旧が可能・設備の修理や部品交換の作業を必要としない・1日のうちに何度も発生するチョコ停は大きなトラブルとは異なり、現場の作業者による対応で済ませてしまうケースが多く、顕在化しにくいもの。また、1日の間に何度も発生してしまうのが特徴です。停止した状態が長く続くと、稼働率や生産性が大幅に低下し、製造コストの高騰にも繫がります。チョコ停は、JIS規格の【JIS Z 8141:2001 生産管理用語】にも記述されており、その内容は下記の通りです。設備が生産ラインなどの大規模なシステムの一部となっていて、システム全体を停止に至らしめるような重大又は決定的な故障を大故障(通称としてドカ停)、逆に設備の部分的な停止又は設備の作用対象の不具合による停止で、短時間に回復できる故障を小故障(通称としてチョコ停)という。引用元:JIS Z 8141:2001 生産管理用語 設備管理 番号6108チョコ停の名称は、チョコチョコ停止することの略称として使われていますが、似たような言葉に、ドカっと長い時間製造設備が停止する「ドカ停」も用語としてあります。チョコ停が重なるとドカ停に発展し、生産ラインに大きく悪影響を及ぼす場合もあります。チョコ停の原因と問題点7大ロスである、段取り替えロス・治具交換ロス・立ち上げロスは、ある程度決まった時間で、予定として組み込まれているロスになります。故障ロス・速度低下ロス・不良品ロスは、停止時間が長かったり、タクトタイムを測定したりするものであるため、顕在化がしやすいものです。一方で、チョコ停は突発的に発生するロスのため、復旧は現場の作業者が対応して済ませるケースがほとんどです。ロスした時間や内容などの、具体的な記録が残らないことも多い分、顕在化がしにくいとされています。チョコ停の対策チョコ停は、作業者による対応で改善されるような細かいトラブルかつ、記録を残していないケースが多いため、顕在化がされにくいものです。しかし、チョコ停をそのままにしておくとドカ停に発展し、大きなトラブルとなりかねません。そのため、チョコ停の段階から対策しておくべきかどうかを検討する必要があります。チョコ停の顕在化チョコ停を対策するには、まず始めにチョコ停を顕在化する必要があります。顕在化するための方法として、「ワークサンプリング」を行うのが有効です。ワークサンプリングとは稼働分析の手法のひとつで、作業に対してどの程度の時間や工数がかかっているかをチェックすることを指します。ここでのワークサンプリングは、設備の状態を「稼働」と「非稼働」に分け、非稼働を「段取り替え・チョコ停・設備トラブル」に分類し、チョコ停の時間を明確にします。明確にした時間から、チョコ停を含めた稼働率を計算します。稼働率の計算式稼働率(%)=稼働時間÷負荷時間稼働時間:負荷時間-計画停止時間-停止ロス時間負荷時間:1日または月間を通じて設備が稼動しうる時間チョコ停を含めた稼働率の計算式稼働率(%)=稼働時間÷(負荷時間+チョコ停時間)以上の2つの式を用いて、チョコ停によりどれだけ稼働率が低下したかを算出します。チョコ停の原因調査チョコ停を顕在化したあとは、原因調査を行います。原因調査は設備のエラーなど、チョコ停が起こった場合に記録するためにワークシートを用います。ワークシートへの記入は、現場の作業者がチョコ停が起きた問題点の回数を記録するだけで、現場の負担にならないようにします。そのためにも、あらかじめワークシートには、縦軸に発生件数・横軸にワークサンプリングで明らかになった発生原因を記述した表を作成しておくといいでしょう。チョコ停の原因抽出チョコ停の原因調査で記録したワークシートを元に、発生件数の割合を示した図であるパレート図を作成し、原因を抽出します。パレート図は、発生したチョコ停の回数が多いものから順に並べることで、重大な原因がいずれなのかが分かり、効率の良い対策が立てやすくなります。以上のようなパレート図による解析は「パレート解析」と呼ばれており、問題に対する分析や対策を講じる場合に有効です。パレート図の例パレート図の例は上表の通りです。アルファベットのA~Jは各チョコ停の種類、棒グラフは各チョコ停の発生件数、折れ線グラフは累積比率を表しています。上図のように、発生件数の多いものから順番に並べることで、チョコ停の大きな問題が何なのかを明確にできます。チョコ停の改善効果の確認パレート解析後は、チョコ停1回あたりの損失金額を計算し、チョコ停を改善することでどれだけの効果が得られるかを確認します。チョコ停1回あたりの損失金額の計算式は以下の通りです。●チョコ停1回あたりの損失金額損失金額=チョコ停時間×時間あたりの生産個数×製品単価上の式から改善効果を数値化し、チョコ停の対策を実施するかを検討しましょう。チョコ停改善によるメリット今まで対策を講じていなかったチョコ停を改善することで、以下のようなメリットがあります。●ドカ停に発展するリスクの低減チョコ停は放置してしまうと、設備の劣化を招く要因となります。チョコ停を対策しておくことで設備が故障しにくくなり、大きく生産効率が低下するドカ停の防止にも繫がります。●稼働率の向上チョコ停は小さいトラブルとはいえ、1日に何度も発生するもののため、稼働率が低下します。チョコ停を改善することで、製造設備の停止時間が少なくなり、時間あたりの生産個数を増やすことができます。●不良率の軽減チョコ停の発生するタイミングなどによっては、製品の品質に悪影響を及ぼす場合もあるでしょう。チョコ停が改善されれば、不良品の数が減るほか、トラブルの対応にかかる手間も少なく済みます。●安全性の向上チョコ停の復旧作業を行う上で、製造設備の巻き込みや、刃物などによるケガなどのリスクも考えられます。チョコ停のように1日に発生する回数も多いと、その分ケガをしてしまう可能性も高くなるでしょう。チョコ停改善は、安全第一で作業をするのにも有効となります。

  • 7つのムダ例「かざふてつどう」製造業のコスト改善を考える

    7つのムダとは、製造業の現場で問題となる以下の7つのムダ例を指す言葉です。「か」加工のムダ「ざ」在庫のムダ「ふ」不良・手直しのムダ「て」手待ちのムダ「つ」造りすぎのムダ「ど」動作のムダ「う」運搬のムダ7つのムダは、生産現場の管理者や作業者が意識して注意しないと、しばしば起こってしまうものです。そのため、製造業に従事する人が頭に入れておくべきものとして、これらの7つのムダの頭文字をとった「かざふてつどう」が標語となっています。この記事では、7つのムダの各々について解説するとともに、その発生原因や対処法について説明していきます。7つのムダとは?7つのムダとは、製造業の現場で起こりがちな、付加価値を生まない現象や結果のことです。「ジャスト・イン・タイム」などと並ぶトヨタ生産方式の一つで、コスト増大や生産性低下に繋がることから、現在の生産現場において改善していくことが求められています。造りすぎのムダ造りすぎのムダとは、不要なものを余分に作ってしまうムダのことです。注文を受けていない、計画されていない製品の生産は、以下で説明する「運搬のムダ」や「在庫のムダ」の発生にも繋がる、最も悪いムダと言えるでしょう。そもそも、造りすぎのムダは、作業員の手待ちや余分な設備があって、機械の故障や不良品の発生に対して不安感があることが原因で発生します。しかし、造りすぎのムダが許されてしまえば、作業そのものが増えるだけでなく、運搬車・リフトの稼働時間の増加、倉庫・保管スペースの増加など、新たなムダが発生し続けます。また、その間は作業員の手が空かないため、後述する「手待ちのムダ」があっても明らかにすることができません。これを解消するには、タクトタイムを適切に設定して手待ちをなくすことや、生産管理をきちんと実行して納期遅延の懸念をなくすことが大切です。手待ちのムダ手待ちのムダとは、作業員の手が待ちの状態にあるムダのことです。機械が稼働せず空いている状態も同様です。前工程から受け渡される材料・部品を待っている状態や、機械が自動で加工しているときに必要なく監視している状態、機械が故障して復帰を待っている状態などが該当します。特に、作業員による機械の監視は、機械の故障検知や不良品の発見装置が適切に作動すれば不必要です。それにも関わらず、機械の監視は、さも必要であるように見え、不可欠な作業であるように見えます。また、手待ちは、作業員が作業スピードを調整することで覆い隠されてしまうことにも注意しなくてはなりません。そのため、まずは、ラインへの1個流しなどで標準作業を構築し、どこに手待ちが存在するかを明らかにしましょう。また、機械の仕様を理解し、不必要な監視をなくすことも必要です。動作のムダ動作のムダとは、作業の中での、探す、しゃがむ、持ち替える、調べるといった工程の直接的な進展に繋がらない不要な動作のことです。標準作業がきちんと規定されていない場合や、標準作業が誰でも同様に実行可能でない場合、作業員への訓練が不足している場合などに起こります。これを改善するには、日常的な作業の観察はもちろん、作業員から案を募ったり作業員からヒアリングしたりすることも有効です。作業員にとって楽な動作を追求することも重要であり、動作のムダの解消に繋がります。運搬のムダ運搬のムダとは、不必要なモノの移動、仮置き、積み替え、整理などのことです。ここで言うモノとは、原材料・部品、仕掛品、完成品、またこれらの在庫品を指し、運搬とは、原材料・部品が工場に入り、完成品となって工場へ出ていくまでのモノの流れを指します。運搬のムダは、モノの流れが決まっていない場合や、各工程の作業場のレイアウトが悪い場合などに発生します。そのほか、「造りすぎのムダ」によって必要以上にモノが溢れ、置き場所がなくなることで不必要な積み替えなどの運搬のムダが発生します。運搬のムダの改善には、「手待ちのムダ」の改善にも繋がることから、仕掛品に対する運搬の最適化が特に重要です。具体的には、工場内の設備・作業員・モノの配置を見直して工程間のモノの移動距離を短くするのはもちろん、前後の工程と作業を同期させて仕掛品の余計な仮置き等を減らすことも効果があります。不良・手直しのムダ不良・手直しのムダとは、不良品を発生させて廃棄し、手直し、造り直しするムダのことです。不良品が発生すれば、材料費や設備費、人件費などの全てがムダになるのはもちろん、廃棄するためのコストもかかります。手直し・造り直しにも時間とコストがかかるため、良いことはありません。このムダは、様々なことが原因で起こりますが、これを防ぐためにあるのが品質管理です。品質管理の重要性を理解し、しっかりと実行しましょう。加工のムダ加工のムダとは、そもそも加工が不要であったり加工手段が最適でなかったりする際に発生するムダのことです。必要以上の仕上げ作業や、不要な検査なども該当します。従来のやり方だからと、本当に必要かどうか、より良い方法がないかを検討しないことで起こります。ムダな作業や工程はないか、より良い加工方法はないか、しっかり見直すことが大切です。参考:【金属加工】金属加工の特徴や種類について徹底解説!!在庫のムダ引用元:合同会社高崎ものづくり技術研究所在庫のムダとは、原材料・部品、仕掛品、完成品等が倉庫などに理由なく置かれているムダのことです。一定量の在庫を計画的に確保することが不可欠なこともあります。しかし、在庫が存在することで、「運搬のムダ」が生じたり、在庫管理に手間や費用がかかったりします。また、モデルチェンジなどで、価値がなくなってしまうこともあります。在庫を保管する倉庫等の維持コストもタダではありません。もちろん、在庫があったことで、機械の故障が起きたときでも納期が守れたということもあるでしょう。しかし、在庫の存在を前提としていると、不良や機械の故障などへの対策に力を入れず、生産性の向上に繋がりません。重要なのは、故障が起きた場合ても迅速な復帰が可能で、一定のアクシデントにも対応できる生産計画が立てられていることです。在庫のムダの解消には、注文後に生産を開始するという方法が有効です。もちろん、この方法では、実現可能な納期でないと、機会損失に繋がります。

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    金属加工の板金塗装の見積りについて解説!塗装の種類ごとについてもご紹介!

    板金塗装をするなら専門のメーカーへ依頼することをおすすめします。専用の塗料を使用することで、製品の見た目だけでなく、耐久性や耐熱性などの効果を得ることができるからです。しかし、いざ板金塗装の見積りを依頼するとなっても、塗装にどのような種類があって、見積り金額がどのように変わるのかわからないでしょう。また、塗装ができる工場を探すのも、時間がかかり大変です。そこで今回は、板金塗装について、その種類や塗装の選び方を解説していきます。板金塗装について悩んでいる人は、ぜひ参考にしてください。板金塗装とは金属の板や製品に指定の色や特殊な塗料を塗ることを板金塗装といいます。板金塗装と聞くと自動車板金のことを想像するのが一般的でなはいでしょうか。しかし、工場などの製品で使う金属板などへの塗装も、板金塗装に含まれることを理解しておきましょう。色を塗ったりする塗装は自宅などでも可能でしょう。ただ、特殊な樹脂や有機溶剤を含むような塗料を使った特殊な塗装は、専門の工場で行う方が早く綺麗に仕上がります。板金塗装の種類実は、ひとことで板金塗装といっても、塗装の種類は複数あり、それぞれで使用用途が異なります。塗装の種類によって費用や効果が変わるので、板金塗装の依頼をする時は事前に調べておきましょう。ここでは、塗装の種類について詳しく解説していきます。どのような塗装にするか悩んでいる人はぜひチェックしてください。粉体塗装粉体塗装は、まず樹脂や顔料などを細かく粉砕し粉状にしたものを、静電気を使って金属に付着させます。その後、高温で焼付乾燥を行なって塗装を完了さます。特徴は、有機溶剤を使用しないので体や環境に非常に優しく、安全性が高い点です。また、粉体塗装は塗膜を最大150μまで厚くすることができ、塗布面に生じる小さな穴も少ないため、製品に空気が触れにくくなります。そのため、サビに強い塗装方法です。粉体塗装だけでも複数の種類があり、種類によって使用用途が異なりますが、主に家電や自動車のボディ部分などに使用されています。ただ、粉体塗装は、粉体の密着性を高めるために、下処理が入念に行われます。さらに粉体を静電気で付着させてから乾燥焼付を行うので、多くの作業工程を要します。そのため、短納期の依頼などには対応できないので注意しておきましょう。エポキシ塗装エポキシ塗装とは、エポキシ樹脂というプラスチックの素材にもなる原料を含んだ塗料を使用する塗装方法です。エポキシ塗装の特徴として、水分を通しにくく、酸素を通しにくい性質があるため、高い耐食性を持ちます。耐水性や絶縁性もあるため、パソコンやプリンターの金属部分に多用されます。ただ、コスト面が少し高額になる塗装方法であるため、依頼する場合には注意が必要です。さらに、エポキシ樹脂は紫外線に弱く、日に当たりすぎると白く劣化しやすいデメリットがあります。そのため、塗装した部分に紫外線が当たるような場所で使用する製品にはあまり向いていません。参考記事エポキシ塗装について、さらに詳しい内容を知りたい人は、下記の記事を参考にしてください。⇒エポキシ塗装について表面処理の専門家が解説!製品事例についても紹介しています!アクリル樹脂焼付塗装アクリル樹脂焼付塗装とは、アクリル樹脂塗料に熱を加えながら金属に塗っていく塗装方法です。特徴として、焼付塗装後の金属表面に光沢が出やすく、素材に高級感を持たせられる点が挙げられます。また、耐熱性が高いため、屋外で使用する製品でも塗装が経年劣化しづらいです。硬度が高く傷もつきにくいので、アクリル樹脂焼付塗装は、金属製の工業製品や日用品などに多用されます。アクリル樹脂焼付塗装のデメリットは、塗り替えのサイクルが早い点です。耐用年数が4〜7年ほどと短いので、頻繁に塗り替える必要があります。参考記事アクリル樹脂焼付塗装のメリットやデメリットについて、理解を深めたい人は、下記の記事を参考にして下さい。⇒アクリル樹脂焼付塗装のメリット・デメリットについて専門家が解説!溶剤塗装溶剤塗装では、有機溶剤に樹脂や塗料を溶かし入れて、専用のスプレーやハケ、ペイントローラーで金属の板に液状の溶剤を塗布していきます。アクリル樹脂焼付塗装やエポキシ塗装なども、溶剤塗装の分類になります。特徴として、昔から使われている塗装方法なので信頼性が高く、比較的コストもかかりません。また、広範囲の塗装も得意としており、カラーバリエーションが豊富なのも、溶剤塗装のメリットです。ただ、溶剤塗装は主にスプレーを使用して塗布していくため、職人の腕に左右されやすいデメリットがあります。そのため、経験がある職人がいる工場を選びましょう。自動車部品や電化製品など、さまざまな分野で溶剤塗装は使われています。参考記事溶剤塗装の特徴やメリットなどについて、さらに詳しく知りたい人は、下記の記事をチェックしてください。⇒溶剤塗装とは?特徴や粉体塗装との違いについて専門家が解説!フッ素樹脂塗装フッ素樹脂と呼ばれる物質を金属の板などに塗布する加工がフッ素樹脂塗装です。代表的な例を上げると、フライパンに使用されるテフロン加工もフッ素樹脂塗装のひとつです。特徴として、非粘着性や低摩擦性性に優れており、水を弾きやすいので、汚れが取りやすい点が挙げられます。また、紫外線に強いため耐候性が高く、屋外で使用する製品の塗装にもよく使用されています。ただし、フッ素塗料は1㎡あたり4,000~4,500円と、塗料価格が高いデメリットがあります。そのため、大型製品の塗装などをする場合には、見積りが高くなる可能性があるので、依頼する工場に確認しておきましょう。参考記事フッ素樹脂塗装のメリットや塗装耐用年数などについて詳しく知りたい人は、下記の記事を参考にしてください。⇒フッ素樹脂塗装について専門家が解説!メリット・デメリットや耐用年数、色についてご紹介!板金の塗装の種類の選び方前項でご紹介したように、板金塗装の種類はさまざまあります。そのため、どの種類の塗装を行えばいいのか悩む方は多いでしょう。板金塗装の種類を選ぶ際には、耐用年数と料金をしっかりと確認しておきましょう。耐用年数と料金が塗装の種類によってどれぐらい変わるのか表にまとめましたので、参考にしてください。●耐用年数耐用年数とは、簡単にいうと塗った塗料の寿命のようなものです。耐用年数を超えてくると、塗料が剥がれてきたり、水を弾く力が弱くなったりと、塗料がもつ効果が発揮できなくなります。耐用年数を事前に把握しておき、最終的なランニングコストで塗装の種類を選びましょう。※耐用年数は、使用する溶剤、塗料のグレードや重ね塗りを何回したかによっても異なるので、あくまでも目安として考えてください。●料金塗装の料金は、使用する塗料や範囲によって異なります。※あくまで目安です。こちらも使用する溶剤、グレードや製品形状、膜圧、メーカーによって変動します。板金塗装見積りを決める要素板金塗装の見積りを決める際には、下記の3つの要素が押さえておきたい重要なポイントです。見積りを決める際のポイント・形状・塗装の種類・下処理では、上記3つの項目が見積りにどのように影響するのか解説していきましょう。形状塗装する金属製品の形状や塗装範囲によって、見積り金額は変わってきます。たとえば、小型の金属部品であっても、自動塗装が難しい形状の場合は、人間を使って塗装を行う必要があるので、見積りが高くなる場合が多いです。また、塗装範囲が広くなることで使用する塗料も増えるため、その分見積り金額は高額になってしまうでしょう。塗装種類2つ目の要素として、塗装の種類も見積りに影響します。エポキシ塗装や、フッ素樹脂塗装など、塗料代金が高い塗装は、見積りが高くなってしまいます。塗装は製品の仕様に合わせた価格・耐久性を吟味して選ぶことが非常に大切です。下処理下処理も含めて工場に依頼するかどうかで、見積りの金額は異なってくるでしょう。塗装前の下処理をしておかないと、塗装が剥がれやすくなったり、塗装にムラができたりします。たとえば、自社で板金と組み立てまでをして塗装だけを外注するとします。その場合、製品の汚れを落とす作業や研磨作業などの下処理も含めて依頼すると、受注側の作業工程が増えるので見積り金額が高くなってしまうでしょう。ただ、下処理は塗装の仕上がりを左右する非常に重要な工程です。そのため、下処理から塗装までを社内で一貫して行う業者も多いでしょう。そのため、下処理を発注前に行なっていいか判断するために、事前に工場へ相談しておきましょう。板金塗装の見積り依頼ならMitsuri今回は、板金塗装の種類や選び方について解説していきました。板金塗装といっても種類はさまざまで、塗装の種類によって得られる効果や使用用途が異なります。もちろん、フッ素樹脂塗装などの高額な塗装方法を選べば見積り金額は高くなるので、事前にしっかりと確認しておきましょう。ただ、塗装の種類や選び方がわかっても、どのような専門工場へ依頼すればいいのかわからない人は多いでしょう。そこでおすすめなのが、Mitsuriのサービスです。Mitsuriは、日本全国250社以上のメーカー様とお付き合いがあります。板金塗装をどこのメーカーへ依頼するか迷っている方は、複数社から同時に見積りが取れるMitsuriに、ぜひご相談ください!

  • インボイス制度と電子帳簿保存法の概念と関係を徹底解説!改定による影響と準備も紹介

    インボイス制度の開始や電子帳簿保存法の改正というニュースを通じて「インボイス」や「電帳法」といった言葉を聞いたことがあっても、実際にその内容まで理解できていないという方も多いのではないでしょうか。 今回は、インボイス制度と電子帳簿保存法について、それぞれの概念と具体的な影響、制度への対応に向けた準備について解説をします。 インボイス制度と電子帳簿保存法とは まずは、インボイス制度と電子帳簿保存法について解説をしていきます。 インボイス制度の概要 インボイス制度とは、「適格請求書等保存方式」の通称で、インボイス(適格請求書)を用いることによって仕入税額控除を受けられる制度です。 国税庁が事前に許可を与えた適格請求書発行事業者だけが発行できるインボイスの中で、取引先が支払う消費税額を計算します。 インボイスには以下の内容を含む必要があります。 登録番号 適格請求書を発行する氏名または名称 取引年月日 取引内容 税率ごとに区分した消費税額 適格請求書の交付を受ける取引先の氏名または名称 また、事業者は販売時と仕入れ時に支払う消費税によって二重課税が発生します。この二重課税を避けるために、仕入税額控除という仕組みを使って消費税を計算します。 事業者が消費税を計算するときには仕入税額控除によって計算された金額を支払うことになります。 電子帳簿保存法の概要 電子帳簿保存法とは、電子化された帳簿類を法的に認めるための法律です。また、この法律は1998年に施行され、改正が重ねられてきましたが、2022年1月にも改正されています。 対象書類は、簿記帳簿・記録書類・証憑などが該当します。これらの帳簿類を電子で保存する場合は下記の要件を満たす必要があります。 完全性:情報が改ざんされていないことを証明できるか 可読性:読み取り可能か 再現性:復元時に元の情報と一致しているか 保存期間:書類別に定められた期間保存しているか 保存場所:一元管理やセキュリティ対策をしているか 2022年の改正点の概要を以下に3つ記載します。 税務署長の事前承認制度の廃止:事前承認がなくなることで実施工程を簡素化 適正事務処理要件の廃止:紙原本をスキャナ保存するときに1人で作業可能 検索要件の緩和:電子データ検索時の必要な項目を簡略化 インボイス制度と電子帳簿保存法との関係性 インボイス制度と電子帳簿保存法の関係性について紹介します。 インボイス制度は、インボイスの中で消費税額を計算し、帳簿に記載する制度です。インボイスを適切に保存・管理しておかないと仕入税額控を受けることができません。具体的には、制度に則った帳簿や請求書などを保管しておく必要があります。 一方、電子帳簿保存法は、事業者が帳簿類を電子化して保存するときに、どのような要件を満たす必要があるかを定めた法律です。電子帳簿保存法により、事業者は電子帳簿の作成・保存によって、紙帳簿と同等の証憑力を持つことができます。 インボイス制度と電子帳簿保存法はお互いに関係する制度です。電子帳簿保存法の要件に沿って電子化を行い、適切に管理をすることで、インボイス制度の適切な運用が可能になります。 インボイス制度と電子帳簿保存法による影響 次に、インボイス制度と電子帳簿保存法による影響について解説します。 インボイス制度による影響 インボイス制度の実施は、普段作成する請求書に影響を与えます。 インボイス制度以前の請求書は「区分記載請求書」という書類でしたが、インボイス制度導入に伴い「適格請求書」へと変更になり、請求書の記載事項が変わります。 具体的には、適格請求書になることで 「適格請求書を発行する事業者の登録番号」 「税率ごとの消費税額」 を新たに追記する必要があります。 また、その他の変更点として、消費税額の算出方法が選べることも挙げられます。 以前は、年間の総売上に対して消費税を計算する「割戻し計算」だけが認められていました。しかし、インボイス制度によって売上が発生するたびに消費税を計算する「積上げ計算」を選択することも可能になりました。 電子帳簿保存法による影響 電子帳簿保存法改正の主な影響は、帳票類をデータ保存して管理しなければならなくなったことです。 ただし、2022年の改正で電子データの保存要件が緩和され、電子データの保存がしやすくなっています。 一方で、スキャナ保存したデータに不正があった場合には加重措置が課されることになります。具体的には、隠蔽、仮装、それらの申告漏れがあった場合に10%加重されることになります。 電子データの保存はしやすくなっても、管理は注意して行う必要があります。 インボイス制度と電子帳簿保存法に対応するための準備 インボイス制度と電子帳簿保存法に対応するための準備について解説します。 新しい制度に対する社内教育 1つ目は、新しい制度に対する社内教育です。 インボイス制度や電子帳簿保存法は、帳簿に関することなので経営者や経理担当者のみが知っていればよいという訳ではありません。 たとえば、営業担当者が顧客と請求書のやり取りをする場合、どのように事務処理を進めるのか理解しておかないと余計な時間を取ることになってしまうかもしれません。 社内教育をしっかりと行うことで、新しい制度への理解を深めておくことが重要です。 証憑書類管理システムの導入 2つ目は、証憑書類管理システムの導入です。 証憑書類管理システムの導入により、インボイスに必要な項目が記載されているか、保存要件に不備がないかといったことまで一元管理することが可能になります。 システム導入によって作業が効率化され、工数削減や証憑書類関係の業務の属人性の解消にもつながります。 まとめ 本記事ではインボイス制度と電子帳簿保存法の概要や影響、それらに対応するための準備について解説してきました。 インボイス制度や電子帳簿保存法は電子データでの証憑書類の保存や運用方法を定めた法律であり、電子化の流れが加速しています。 社内の書類が電子データになることで便利になり、生産性が高まる期待もあります。企業はそれらの法整備に対応できるように準備をすることが必要です。 本記事も参考に、インボイス制度や電子帳簿保存法についての対応を検討しましょう。

  • インボイス制度の問題点を徹底解説!解決方法・押さえておきたい負担軽減措置も詳しく紹介

    インボイス制度の問題点を徹底解説!解決方法・押さえておきたい負担軽減措置も詳しく紹介

    インボイス制度の問題点を徹底解説!解決方法・押さえておきたい負担軽減措置も詳しく紹介 インボイス制度が始まる前に問題点への対策を打っておきたい、と考える担当者もいるでしょう。インボイス制度を適切に利用開始すればメリットを得られるものの、取引先が制度加入していない場合、適切な控除を得られない可能性もあります。制度開始に合わせて社内体制を整備しなければ、経理担当者の負担が増えてしまいます。そのような事態が発生しないためにも、問題点を早期に把握して、対策を打つことが大切です。 そこで本記事では、インボイス制度の問題点と解決方法、押さえておくべき負担軽減措置について詳しく解説します。 インボイス制度の問題点とは まずは、インボイス制度の問題点について、以下4点を説明します。 仕入れ税額控除減額の可能性 経理担当者の負担増の可能性 取引が継続されない可能性 請求書の様式変更 それぞれ、一つずつ見ていきましょう。 仕入れ税額控除減額の可能性 1つ目の問題点は、仕入れ税額控除減額の可能性です。 仕入れ税額控除減額とは、仕入れた商品やサービスにかかった消費税を、自社で支払った消費税から差し引いて納税する仕組みです。消費税の二重課税を解消できる、という特徴があります。 インボイス制度開始後、売り手となる取引先がインボイス制度に加入していない場合、買い手は仕入税額控除が減額されます。免税事業者に支払った消費税は、税務署からは支払ったと認められないため、自社がわざわざ納付しなければなりません。 経理担当者の負担増の可能性 2つ目の問題点は、経理担当者の負担増の可能性です。 インボイス制度導入開始後は、免税事業者となる取引先が、インボイス制度に加入しているか、そうでないかが分かれます。そのため、買い手側の経理担当者は、それぞれの企業に合わせた対応が必要です。 仕入れ税額控除率も異なり、取引ごとに税額計算を行う積上げ計算も加わるため、それぞれのインボイス(適格請求書)を区別して管理する必要があるでしょう。 インボイス制度開始後は、請求書を受け取って処理する経理担当者の請求書業務の負担も増える可能性が高く、制度開始に備えて体制を整えておく必要があります。 取引が継続されない可能性 3つ目の問題点は、取引が継続されない可能性です。 売り手側がインボイス制度に加入していない場合、買い手にとっては「取引先の仕入れ税額控除が減額されてしまう」というデメリットがあります。買い手の中には「インボイス制度に加入していない企業とは今後の取引を見直したい」と判断し、取引を継続されない可能性が高まるでしょう。 そのため、インボイス制度に加入しない免税事業者(売り手)は、インボイス制度開始後取引先が減り、売上も減少してしまうかもしれません。 請求書の様式変更 4つ目の問題点は、請求書の様式変更です。 インボイス制度開始後、売手側は従来の請求書の様式に対して、以下の記載事項を追加して発行する必要があります。 ①適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号②取引年月日③取引内容(軽減税率の対象品目である旨)④税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)及び適用税率⑤税率ごとに区分した消費税額等⑥書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称 出典:適格請求書等保存方式の概要|国税庁 上記対応のためには、請求書や請求書まわりの帳票(納品書・検収書)などを管理する、基幹システム・帳票システムなどへの対応が必要です。 請求書一つの様式を変更するだけでも、データ生成方法や項目定義、帳票定義の仕様変更など、さまざまなシステムの変更対応をしなければなりません。 経理部門、システムを担当するバックオフィス部門などに、インボイス対応による仕事の負担がかかる可能性もあります。 インボイス制度の問題点の解決方法 インボイス制度の問題点の解決方法について、以下2点を説明します。 売手側の対応 買手側の対応 それぞれ、一つずつ見ていきましょう。 売手側の対応 1つ目は、売手側の対応です。 インボイス制度開始後、要件が満たされた適格請求書をスムーズに発行するためにも、売り手は早い段階で、インボイス制度への登録申請などの手続きを進めておく必要があります。 場合によっては免税事業者から課税事業者への変更対応が必要なケースもあるでしょう。請求書のフォーマット対応や、基幹システム側で項目変更など対応に追われないためにも、余裕を持った期間設定が大切です。 買手側の対応 2つ目は、買手側の対応です。 社内で経理事務を担当する方は、インボイス制度の問題点に備えた対応が必要となります。 たとえば、消費税額の計算方法に関して従来の割り戻し計算ではなく、売上で発生した消費税の金額を都度足す「積上げ計算」を理解しておくことが重要です。 中小企業の場合、売上に係る消費税額から、消費税の納税額を簡単に算出できる「簡易課税制度」の適用も検討しましょう。対象となる課税事業者なら任意で選択でき、経理事務の負担も軽減できる可能性があります。 また、免税事業者と課税事業者から発行される請求書の区分・管理も必要です。請求業務のワークフローの見直しも検討することで、業務効率化を図りましょう。 インボイス制度開始後は、取引先が課税事業者ではない場合、仕入れ税額控除減額の恐れもあります。取引相手が免税事業者か課税事業者かを確認し、今後も継続するべきかを見極めていきましょう。 インボイス制度で問題点を見つけた時に押さえたい負担軽減措置とは インボイス制度で問題点を見つけた時に押さえたい負担軽減措置について、以下4点を説明します。 小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置(2割特例) 一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置(少額特例) 少額な返還インボイスの交付義務免除 登録制度の見直しと手続の柔軟化 それぞれ、一つずつ見ていきましょう。 小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置(2割特例) 小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置(2割特例)とは、インボイス制度開始を機に、免税事業者から課税事業者(インボイス発行事業者)となった小規模事業者に対して、税負担が増えることを防ぐために設けられた控除制度です。 インボイス制度は、小規模事業者や個人事業主・フリーランスにとって、請求書の内容記録や報告負担が重く、導入に踏み切れない場合もあるでしょう。 2割特例を適用可能な小規模事業者は、売上税額の2割を納税額とできるため、納税義務の負担が重いと感じている事業者にとって大きなメリットです。 ただし、この特例は小規模事業者に限られており、補助上限が設けられています。 また、2割特例の期間は、2023年(令和5年)10月1日〜2029年(令和11年)9月30日までの間と限定されています。 したがって、小規模事業者はその期間の間、インボイス制度を導入するために体制などを整えておくといいでしょう。インボイス発行事業者登録を受けていないと、2割特例の対象となりませんので、注意しましょう。 一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置(少額特例) 一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置(少額特例)とは、前々年・前々事業年度となる基準期間において、課税売上高が1億円以下、かつ当該課税仕入れに係る支払対価よの額が、1万円未満の場合に適用される仕組みです。 一定の事項が記載された帳簿を保存しておけば、インボイス制度の開始から6年間、仕入税額控除を受けることが可能です。 この制度により、2023年10月1日〜2029年9月30日までの間は、インボイスとして保存しなくとも、国内の課税仕入れに関しても仕入れ額控除を認められるでしょう。 少額な返還インボイスの交付義務免除 少額な返還インボイスの交付義務免除とは、一定金額以下の返品・値引き・割戻しなどを対象に、売上の返還に関して、返還インボイス交付義務が免除される、という制度です。 インボイス制度では、商品などの返品・値引きにおいて売上の一部返還を行う際、適格返還請求書となる返還インボイスを、別途交付する必要がありました。インボイス制度の改正により、税込1万円未満の値引き等については、返還インボイスの交付不要と定められています。 登録制度の見直しと手続の柔軟化 インボイス制度導入にあたり、登録制度の見直し・手続きの柔軟化が行われています。 適格請求書を発行するためには、当初2023年3月31日までが登録期限とされ、その日までに登録申請書を提出する必要がありました。しかし、登録制度の見直しにより、2023年9月30日まで、期限が延長されることとなりました。 この見直しにより、これから導入を検討する企業も増えています。またインボイス制度は多くの企業にとって簡単で使いやすい制度になるのではと、期待が高まっています。 まとめ 本記事では、インボイス制度の問題点とその解決方法、負担軽減措置について解説しました。 インボイス制度準備をしていないままでいると、自社に大きな影響をもたらしてしまうかもしれません。インボイス制度を円滑に進めるためにも、制度開始前に既知の問題点を把握し、請求書等関連システムの仕様変更や体制強化が大切です。インボイス制度は2023年10月1日よりスタートします。制度開始に合わせて、しっかりと準備を整えていきましょう。

  • インボイス制度を簡単にわかりやすく解説!開始後の影響から必要な準備までまとめて紹介

    インボイス制度を簡単にわかりやすく解説!開始後の影響から必要な準備までまとめて紹介

    令和5年10月1日から、インボイス制度が開始されます。まだ制度についてよくわからない、難しそうと考えている方も多いのではないでしょうか。普段、請求書・納品書などの帳票のやり取りが発生している事業者にとって、インボイス制度を利用すれば消費税の仕入税額控除を受けられるなどの大きなメリットがあると言えます。 そこで本記事では、インボイス制度とは何かを簡単に解説するとともに、開始後の影響、する・しないそれぞれのケース影響、スケジュールと必要な準備についても触れていきます。 インボイス制度とは?簡単に解説 まずは、インボイス制度とは何か簡単に解説するために、以下4点を説明します。 概要 目的 開始時期 やらないとどうなる? それぞれ、一つずつ見ていきましょう。 概要 インボイス制度とは、商品やサービスを購入する際に、購入証明書となるインボイスを受け取ることによって、税金の申告や控除をする制度を指します。適格請求書等保存方式とも呼ばれます。 適格請求書(インボイス)と呼ばれる、一定の要件を満たす請求書をやり取りすることで、インボイスを受け取った企業・個人(購入者)は、自分が支払った税金を申告して控除を受けられるというメリットがあります。一方、販売者は、自社が発行したインボイスをもとに税金を申告し、納付することが求められます。 インボイス制度を開始すれば、税金の申告や控除がスムーズに行われるため、企業や個人にとって有益な制度といえるでしょう。 目的 インボイス制度の主な目的は、税金の申告や控除をスムーズ、かつ正確に行うことです。 買い手は、自社が支払った金額を申告して税金を控除し、税金の支払いを軽減できます。売り手は、インボイスを元に税金を正確に申告・納付できるようになります。インボイスを発行して、売上税にかかった税金を申告・納付できるため、税金の適正な徴収を行えます。 また、税務署などは不正なインボイスの発行や使用を厳重に禁止することも可能です。インボイス制度は、税関機関が管理しています。インボイスによって適正な税金の支払いが行われるようになるため、税関機関にとっても、取引の正確な消費税額と消費税率を把握でき、税金の徴収を適正に行えるといえます。 開始時期 インボイス制度は、令和5年10月1日から、消費税の仕入税額控除の方式として開始されます。制度開始後、インボイスを発行できるのは、適格請求書発行事業者に限定されます。 適格請求書発行事業者になりインボイスを発行するためには、登録申請書を提出して登録を受ける必要があります。令和5年10月1日の制度開始から発行したいと考えている場合は、原則として令和5年3月31日までに登録が必要なため注意しましょう。 やらないとどうなる? インボイス制度をやらない場合、どうなるのかについて説明します。 インボイスを発行されない買い手は、原則として消費税の仕入税額控除ができないため、税額が増える可能性があります。 売り手はインボイス制度に登録申請しなければ、インボイスを発行することができません。買い手にとっても税率が上がるなどデメリットしかないため、今後の取引を解除される理由になるかもしれません。 インボイス制度に登録しないことで、買い手・売り手どちらにも大きな影響を与えるでしょう。 簡単にわかるインボイス制度に欠かせない消費税の仕入税額控除とは インボイス制度に欠かせない、消費税の仕入税額控除について、説明します。 消費税の仕入税額控除とは、企業が仕入れた商品やサービスにかかった消費税を、自社で発生する消費税に対して、控除することを指します。 具体的には、課税事業者にとって、自社が納税すべき消費税を計算する際、売上に紐づく消費税から仕入に紐づく消費税を差し引いて計算することです。従来に比べて、消費税の二重課税を解消できる計算方法が可能となります。 従来の制度では、仕入税額控除の適用を受けるためには、企業は仕入れの事実を記載した請求書・帳簿を保存することが求められていました。今後はインボイスを元に、企業が購入した商品やサービスにかかった消費税に関して、自社商品・サービスの売上税の一部である消費税を控除できるようになります。 これにより企業にとっても、販売する商品やサービスにかかる消費税の金額を減らし、経営の負担を軽減できるでしょう。 インボイス制度開始後の影響を簡単に説明 インボイス制度開始後の影響について、以下2点を説明します。 課税事業者の場合 免税事業者の場合 それぞれ、一つずつ見ていきましょう。 課税事業者の場合 インボイス制度開始後の課税事業者への影響について、説明していきます。 課税事業者は、仕入れ先から発行されるインボイスを元に、仕入にかかった消費税額を控除できるようになります。インボイスを入手できなかった場合は、自社の消費税額が増加する可能性もあるかもしれません。簡易課税制度を選択した場合は税負担が増加しない場合もありますが、仕入れ先がインボイス制度に登録しているかどうか、注意すべきでしょう。 免税事業者の場合 インボイス制度開始後の免税事業者の影響について、説明していきます。 免税事業者は、課税事業者の申請を済ませてインボイス制度に登録申請すれば、インボイスを発行できます。そのため、販売先の企業にとっても消費税額の控除が可能です。 課税事業者に登録申請しない場合は、インボイスを交付できず、販売先も仕入税額の控除ができません。6年間の経過措置期間はあるものの、販売先にとっては今後税負担が増加することを懸念して、今後の取引を見直されるかもしれません。 インボイス制度を利用する場合は、課税事業者への申請・インボイス制度への登録申請が必要となりますので国税庁のWebサイトを参考に手順などをしっかりと確認しておきましょう。 参考:[手続名]適格請求書発行事業者の登録申請手続(国内事業者用)|国税庁 インボイス制度に登録する・しない?それぞれのケースを簡単に説明 ここまで、インボイス制度の概要と、開始後の影響について解説しました。それでは、インボイス制度に登録する・しないでは何が異なるのでしょうか。ここからはそれぞれのケースについて説明していきます。 登録した場合 登録しなかった場合 それぞれ、一つずつ見ていきましょう。 登録した場合 インボイス制度に登録した場合、販売先は仕入れ税額控除が可能となります。減税率も上がる可能性もあり、メリットが大きいと言えるでしょう。今後も販売先からの取引が継続できる可能性も高いです 自社にとっては、インボイスを元にした消費税の申告・納付の手続きが必要となり、納税担当者にとって負担が増える傾向にあるため、制度開始後慌てないように、事前準備が大切です。 登録しなかった場合 インボイス制度に登録しなかった場合、自社の経理業務など納税担当者への負担に関しては、現行と変わりません。 しかし、販売した相手先は消費税の仕入税額控除を受けることができません。販売先は、自社の税負担が増加してしまうかもしれません。インボイスを発行してもらえないならば取引を見直したいと言われて、今後の案件を獲得できなくなる可能性もあります。そのため、企業の今後の収益に大きな影響を及ぼしてしまうかもしれません。 インボイス制度のスケジュールを簡単に説明 インボイス制度のスケジュールについて、以下2点を説明します。 登録申請 導入開始 それぞれ、一つずつ見ていきましょう。 登録申請 インボイスを発行するためには、まずはインボイス制度への登録申請をする必要があります。登録申請手続きは、令和3年10月1日から既に始まっており、登録申請手続きを終えた企業は制度が始まらなくても、登録番号・適用税率・消費税額などの項目を追加したインボイスを発行できるようになります。 現在登録申請をしておらず、令和5年10月1日からインボイスを発行したいと考えている事業者は原則として、令和5年3月31日までに登録申請手続きを済ませることが必要です。 導入開始 インボイスの制度が始まるのは、令和5年10月1日からです。それ以降の取引で、取引先が希望した場合には、インボイスを発行することが義務付けられます。 令和5年10月1日以降、インボイスを発行すれば、販売先にとって仕入れ税額の控除を受けられるようになります。登録申請を終えていれば、令和5年10月1日より前の期間でもインボイス発行できますが、令和5年9月30日時点では仕入税額控除の対象とはならないので注意しましょう。 インボイス制度開始前までにすべき準備を簡単に説明 課税事業者の場合 免税事業者の場合 それぞれ、一つずつ見ていきましょう。 課税事業者の場合 インボイス制度開始前までに、課税事業者がすべき準備について、説明します。 すべき主な準備として、以下3点があります。 ・現在使用の請求書に関して、インボイスに従った記載項目に変更する・インボイスと従来の請求書類など、制度開始前後の資料をしっかりと分けて管理する・電子帳簿保存法などに対応した帳票系のシステムを利用している場合、インボイスの要件を満たせるように仕様変更する 免税事業者の場合 インボイス制度開始前までに、免税事業者がすべき準備について説明します。 小規模事業者や個人事業主、フリーランスが主に該当する免税事業者は、「インボイス制度開始後に課税事業者になるかどうか」の選択検討が必要です。 免税事業者のままでは、適格請求書発行事業者になれず、インボイスの発行ができないという問題があります。 免税事業者はこれまで売上高が1,000万円に満たない場合において、消費税の納税が免除されていましたが、インボイス制度が開始されたら、インボイスが発行できなくなり、6年の経過措置期間はあるものの、やがて免除されなくなるでしょう。 免税事業者は申請を出せば、課税事業者となることも可能です。課税事業者の申請手続きと共に、販売先にインボイスを発行できるように、インボイス制度の登録申請を済ませておくことをおすすめします。 まとめ 本記事では、インボイス制度について簡単に解説しました。消費税の仕入税額控除の方式として、令和5年10月1日から、いよいよインボイス制度がスタートします。制度導入後は、事前に登録申請した事業者だけがインボイス発行できるようになり、控除対象となります。 制度にしっかりと対応するためにも、本記事に記載したインボイス制度の概要、開始後の影響、スケジュールをしっかりと理解しておきましょう。

  • インボイス制度後の請求書の書き方を徹底解説!登録申請書や意識すべきポイントも詳しく紹介

    インボイス制度後の請求書の書き方を徹底解説!登録申請書や意識すべきポイントも詳しく紹介

    インボイス制度後の請求書の書き方を、早い段階で知っておきたいと考えるご担当者も多いかと思います。登録申請書を提出すれば、制度適用後の書き方で書いても問題ないとされているので、早期段階で書き方をおさえておくと、制度開始後もスムーズに切り替えができるでしょう。 そこで本記事では、インボイス制度開始後の請求書の具体的な書き方・制度開始前との書き方の違い・登録申請書の書き方・ポイントについて詳しく解説していきます。 インボイス制度開始後の請求書の書き方 まずは、インボイス制度開始後の請求書の書き方について、以下2つを説明します。 適格請求書 適格簡易請求書(製造業用) それぞれ、一つずつ見ていきましょう。 適格請求書 インボイス制度の適格請求書の書き方について説明します。 取引先などに送る適格請求書の様式・書式は、法令などで定められていません。デジタルや手書きの両方においても、以下必要事項が記載されたものであれば、適格請求書に該当します。 ①適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号②取引年月日 ③取引内容(軽減税率の対象品目である旨) ④税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)及び適用税率 ⑤税率ごとに区分した消費税額等 ⑥書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称 出典:適格請求書等保存方式の概要|国税庁 上記インボイス要件に加えて、従来の請求書に記載していた項目、品目・数量・単価・金額請求金額・発行者名と署名・取引先名なども記載が必要です。 インボイスに合わせて請求書のフォーマット・書式を決める際は、テンプレートを公開しているサイトなどを参考にしてみましょう。 適格簡易請求書(製造業用) インボイス制度の製造業用を例とした適格簡易請求書の書き方について説明します。 不特定多数の者に対して販売等を行う製造業や小売業、飲食店業などの場合には、適格請求書よりも簡単に作成できる、適格簡易請求書を交付することが可能です。 適格簡易請求書には、以下項目の記入が必要です。 ①適格請求書発行事業者の氏名または名称及び登録番号 ②取引年月日 ③取引内容(軽減税率の対象品目である旨) ④税率ごとに区分した合計した対価の額(税抜き又は税込み) ⑤税率ごとに区分した消費税等又は適用税率 出典:適格請求書等保存方式の概要|国税庁 インボイス制度の開始前と開始後の書き方における違い インボイス制度の開始前と開始後の請求書の書き方における違いについて、説明します。 インボイス制度開始前と開始後では、請求書の書き方が異なります。インボイス制度開始後は、税金に関する情報を記載することが求められるため、請求書の書き方がより詳細になります。 インボイス制度が開始されると、請求書には以下項目を追加で記載する必要があります。 ・適格請求書発行事業者の登録番号・適用税率(8%や10%など)ごとの取引金額の合計額とその税率 税率ごとに区分した消費税額等の端数処理の際に、1円未満の端数が生じる場合、1つの適格請求書につき、税率ごとに1回の端数処理の計算が必要となるため注意しましょう。詳しくは国税庁が出している「適格請求書等保存方式の概要」を参考にしてみてください。 インボイス制度への登録申請書の書き方 インボイス制度への登録申請書の書き方について、以下4つを説明します。 ケースによって書き方が異なる 郵送提出の場合 e-Tax申請の場合 提出期限 それぞれ、一つずつ見ていきましょう。 ケースによって書き方が異なる インボイス制度に登録するための、登録申請書は、課税事業者になるタイミングなどによって書き方が異なります。 個人事業者や12月決算の法人が令和5年(2023年)中に申請する場合に対して、以下ケース毎の書き方を国税庁が発表しているので、自社ケースにあてはめて参考にしてみてください。 CASE1:令和5年(提出時)が課税事業者の方(個人事業者・12月決算の法人) CASE2:令和5年(提出時)が免税事業者で、令和5年10月1日に登録を受ける方(個人事業者・12月決算の法人) CASE3:令和5年(提出時)が免税事業者で、 令和5年10月2日~12月31日に登録を受ける方(個人事業者・12月決算の法人) CASE4:令和5年(提出時)が免税事業者の方(個人事業者・12月決算の法人)で、 令和6年が①課税事業者または②免税事業者で課税事業者選択届出書を提出し課税事業者になる方 CASE5:令和5年(提出時)・令和6年が免税事業者で、 令和6年1月1日~3月31日に登録を受ける方(個人事業者・12月決算の法人) 出典:登録申請書の書き方 フローチャート|国税庁 郵送提出の場合 インボイス制度に関する申請書等を書面で郵送提出する場合は、それぞれの納税地を管轄しているインボイス登録センターへ送付する必要があります。国税庁の以下サイトを参考に、自社の納税地を管轄するセンターに提出するようにしましょう。 参考:郵送による提出先のご案内|国税庁 インボイス登録センターが受領した後、記載した内容について電話などで連絡がくる場合もあります。 郵送時やインボイス制度で不明点が出てきた場合、インボイス登録センターではなく、インボイスコールセンターに問い合わせするようにしましょう。インボイス登録センターでは、インボイス制度に関する相談は受け付けていないため、質問をしても回答を得られません。 e-Tax申請の場合 e-Tax申請の場合は、スマホアプリでe-Taxソフト(SP版)をダウンロードする、もしくはPCでWebブラウザ経由からe-Taxソフト(WEB版)を使った方法で、申請できます。 e-Taxソフトを使うと、慣れないインボイス制度でも画面に沿って入力するため、まだ慣れないインボイス制度でも入力漏れもなく、スムーズな申請が可能です。 e-Tax申請の場合には、事前に以下を準備する必要があります。 法人の場合は商業登記認証局が発行する電子. 証明書等(個人事業主の場合はマイナンバーカード)利用者識別番号(マイナンバー登録時に発行されるがe-Taxで取得も可能) 提出期限 登録申請書の提出期限について説明します。 インボイス制度が始まるのは令和5年10月1日(2023/10/01)です。その日付から制度を利用したいと考えている事業者は令和5年3月31日(2023/3/31)までに、登録申請書の提出が必要、とチェックしておきましょう。 遅れた場合、制度導入開始日に間に合わない可能性があるため、注意しましょう。 インボイスの書き方で意識すべきポイント インボイスの書き方で意識すべきポイントについて、以下を解説します。 紙とデジタルそれぞれの差はない 枚数指定もない 制度開始前から始めても問題ない それでは、一つずつ見ていきましょう。 紙とデジタルそれぞれの差はない インボイスは、紙・デジタル媒体どちらの発行も認められています。メール送付・電子領収書なども含まれます。 印刷した書面とデジタルデータを併用することも、問題ありません。基本的にインボイスとして記載すべき内容が書いてあること、書類ごとの関連性を正確に確認できれば、インボイスとして認められます。 そのため、納品書は電子の領収書で、請求書は紙で交付することも可能です。 適格請求書に関わる電磁的記録と呼ばれているデジタルの場合、インボイスに記載した内容と同一の記載が必要です。制度対応後は記載項目が追加されていますので、内容に記載漏れのないようにしましょう。 枚数指定もない インボイスは枚数指定もありません。 請求書を提出する際は、必ずしも1枚の書類にする必要はなく、複数枚にまたがっても問題なしとされています。ただし、複数枚はそれぞれ書類同士の関連性を持たせるために識別できる情報の記載が必要です。 また、納品書には、取引の内容・税率ごとの区分取引金額の合計・消費税額の記載、請求書には納品書ごとに合計金額・登録番号の記載が必要となります。 制度開始前から始めても問題ない インボイスは、制度開始前から初めても問題ないとされています。 インボイスの登録申請は、令和3年10月1日から開始されているため、制度が始まる、令和5年10月よりも前からインボイスの交付ができるとされています。 そのため、今からインボイス制度に対応するフォーマットで請求書を作成しても、インボイス制度開始以前の請求書の記載事項を網羅しているため、既存取引への影響はありません。 まとめ 本記事では、インボイス制度開始後の請求書の書き方・制度開始前との書き方の違い・登録申請書の書き方・ポイントについて解説しました。令和5年10月1日より、インボイス制度がスタートしますが、インボイス交付は制度開始を待たずに今からでもすぐに始められます。制度が導入された後スムーズに対応できるように、登録申請を済ませて新しい書き方に慣れていくことをおすすめします。

  • 【製造業の現場改善】ECRSの原則ではじめるコスト改善!

    製造業の現場では、コスト改善のため、日常的に作業の効率化が追求されています。しかし、いざ業務改善を図ろうとしても、どこから手を付けたら良いのか、また多くの課題がある中でどのような優先順位を付けたら良いのか迷うことが多々あります。このようなときに指針となるのが、ECRSの原則です。ECRSの原則は、業務改善を検討する際、有効性の高い4つの視点を与えるとともに、それらの優先順位を教えてくれるものです。そのため、ECRSの原則に従って業務改善を実践することで、的確な課題の抽出と大きな改善効果が期待できます。この記事では、このECRSの原則について解説するとともに、製造業に適用したときの改善例について紹介していきます。ECRSの4原則とは?ECRSの4原則とは、業務を効率化する上で、順番に考えるべき以下の4つの原則を述べたものです。●Eliminate(排除):業務そのものをやめられないか?●Combine(結合):複数の業務をまとめて一緒にできないか?●Rearrange(交換):業務の順番や実施場所などを変えられないか?●Simplify(簡素化):業務をより簡単にできないか?業務改善の際に、業務の排除・結合・交換・簡素化の可能性を順番に検討していくことで、適切に業務の改善方法を立案・実践することができます。一般的には、次のような流れで業務の改善を考えていきます。まず、各業務の理由や目的を洗い出します。このとき、明確な理由や目的が見出だせない業務があればやめることを検討します。不必要であるにも関わらず、慣例的に行われている業務などがこれに該当します。業務の排除は、業務にかかった時間や費用をまるごと削減できる効果が大きい改善となります。次に、残った業務のうち、まとめて実行することで効率化に繋がるものがないかを確認します。類似した業務を別々に進めていたり別々の人と手分けしていたりする場合などが考えられます。場合によっては、分離したほうが効率化が図れることもあります。続いては、業務の順序や実施場所などを入れ替えることで、時間や費用の削減になるものがないかを検討します。それにより、業務全体を再設計して最適化します。作業順序を適正化して作業員の移動距離を減らすなどの効率化が挙げられます。代替案を検討して入れ替えることが必要になる場合もあります。最後は、業務の簡素化です。このステップは、改善の仕上げのようなものです。各業務を分析し、狭い範囲で最適化を図ります。例えば、業務の自動化やパターン化が挙げられます。工数削減やミスの防止などに繋がります。以上の4原則に従った業務改善は、おおよそ、「排除」の効果が最も大きく、「結合」、「交換」、「簡素化」の順に効果が小さくなっていきます。そのため、ECRSの順に改善計画を立案・実践していくことが大切です。ECRSの4原則を製造業に適用して考えるそれでは、ECRSの4原則を製造業に適用して考えます。通常、製造業の業務には加工や組立、検査などの工程があり、各工程では複数の作業が実行されます。これらの工程や作業は、実施順序が決まっており、順番に実行していくことで生産活動が行われています。これらを前提に、製造業ではどのような業務改善が可能か、例を挙げて見ていきます。E 排除(Eliminate) やめられないか?初めに、やめてもよいムダな作業がないかを検討します。製造業では、機械や機器、作業方法の研究不足からムダが生じていることがよくあります。例えば、今まで必要だった作業でも、工作機械や検査機器などを新たに導入したことで、作業が不要となることがあります。それにも関わらず、機械・機器の知識不足から、不要な作業が従来通りに行われていることがあるのです。また、情報の記録や通信が可能な機械や機器も存在します。そのため、工作物の寸法などを書類に記録し、次工程に受け渡すといった作業も不要となることが多々あります。そのほか、顧客の要求を大幅に上回る過剰品質の製品を作ってしまうという問題もあります。それにより、多くの作業が発生して、高コスト体質となっているケースがよくあります。参考:7つのムダ例「かざふてつどう」製造業のコスト改善を考えるC 結合(Combine) 一緒にできないか?次に、複数の作業をまとめて一緒にできないかを検討します。例えば、複数の工作機械で加工していたものを1台の機械で加工してしまうといったケースが考えられます。特に加工工程では、工作物の機械への設置と機械からの取り外しに多大な工数がかかるため、改善の効果が高くなります。類似する作業をまとめ、1人の作業者に担当させるといった方法もあります。それにより、作業者が必要とする技術も減少するため、教育にかかる工数を削減できます。そのほか、機械の自動送り時間中にバリ取りやツヤ出しを行うなど、本来は別の作業として実施していたことを一緒に行うことも検討してみます。R 交換(Rearrange) 順番を変えられないか?続いては、作業の順番や実施場所、担当者などを変えられないか検討します。製造業では、ラインにおける様々な作業を最適化し、効率化するなどの例が挙げられます。この例では、加工の順序や機械の配置などを入れ替えることで、時間の短縮と低コスト化を図ります。また、単に頻繁に利用する工具をより取り出しやすい位置に配置して、動作や移動距離を削減するといった改善もあります。細かいことですが、長期的には、大幅なコスト削減になっていることがあるのです。S 簡素(Simplify) 簡単にできないか?最後は、個々の作業をより簡単にできないか検討します。作業員が実行する作業では、動作を分析して簡素化することが有効です。品質や作業時間、作業員への訓練などを考慮した上で、どの作業員でも簡単かつ楽に実行できる動作を探します。作業の一部を自動化するといった手段もあります。機械やロボットなどの利用のほか、情報化することが自動化になることがあります。

  • 制約理論で製造業の業務改善!ボトルネックを見つけてコストマネジメントをしよう!

    制約理論とは、「Theory of Constraints(TOC)」の日本語を訳したもので、生産性の低いボトルネック・制約条件を見つけ、その改善を図ることで業務全体の最適化を行い、生産性を高めることを目的とした考え方です。製造業の生産分野のほか、経営マネジメントなどの分野でも用いられることがあります。制約理論とは?基本的な考え方と目的制約理論は、「製造業などにおける生産性は、制約条件(ボトルネック)に依存していて、その制約条件を改善することで、業務全体のパフォーマンスが向上する」という考え方に基づいています。ボトルネックの特定→改善を行うことで、業務全体の最適化を行い、処理能力(スループット)を向上させること、つまり生産性を高めることを目的としています。制約理論で進める業務改善手順制約理論では、以下のような5つの業務改善手順を踏むことで、継続的な業務の改善を行います。(1)業務全体のボトルネックを特定する第1ステップでは、業務プロセス全体の中からボトルネック、つまり全体の生産性を規定してしまっている工程を見つけます。工場の生産ラインにおいて特に時間を要する工程や、生産能力や作業効率が悪い工程が挙げられます。ボトルネックの特定に当たり、プロセス全体の工程を、各工程の処理能力と合わせて可視化することで、どこがボトルネックとなっているかが把握しやすくなります。特に製造業の生産分野では、3M(ムリ・ムダ・ムラ)の発生や、装置による生産量の制限などがボトルネックにつながります。参考:7つのムダ例「かざふてつどう」製造業のコスト改善を考える(2)ボトルネックを最大限に活用するボトルネックとなる工程がある場合、その処理能力(スループット)が業務全体の処理能力に大きく影響することがあります。そのため、第2ステップでは、ボトルネックとなっている工程のパフォーマンスを最大限に活用する、つまりその処理能力を最大にする方法を考えていきます。この段階では、新たな設備の導入や新たな人員の確保などは検討せず、現状の設備、人員数を持って、パフォーマンスを高めることにフォーカスします。ボトルネックとなっている工程に、どのような障害・不具合があるかを判断した上で、対策を検討します。製造工程においては、段取り時間の短縮、トラブルの削減、材料待ち時間の削減、歩留まりの向上、稼働時間の延長などが方法として挙げられます。(3)業務プロセスをボトルネックに合わせる第3ステップでは、業務全体の処理能力をボトルネックとなっている工程の処理能力に合わせていきます。これによって、業務全体が無駄を省いた効率的なプロセスに最適化されます。例えば、製造工程ではボトルネック工程の処理能力に合わせて資材を投入するということが行われます。これにより、全工程の処理能力のバランスが取れ、結果的に生産スケジュール及び在庫の最適化につながります。(4)ボトルネックの能力を向上させる第4ステップでは、ボトルネックの処理能力を高めることで、業務プロセス全体の処理能力の向上を図ります。例えば、新規設備の導入や遊休設備の改造などといった設備強化の他、新たに優れた人材を採用するという方法が考えられます。ここでは、需要の変化や、製品設計の変更など将来的に起こりうる変化を考慮した上で、対策を取ることが重要となります。(5)新たなボトルネックを探すボトルネックとなっていた工程の改善を行い、処理能力が向上した後は、制約条件(ボトルネック)が変わる可能性もあります。そのため、第1ステップに戻り、新たなボトルネックの解消に向け、さらなる業務改善を図ることが重要となります。

  • 製造原価とは?求め方・計算式を解説!売上原価との違い

    製造業では材料や原料を仕入れ、工場で生産し、製品を売ることで利益を得ています。生産するのにかかった費用の合計である「製造原価」は、製造業を運営していくにあたり、利益に大きく関わります。企業がより利益を上げるためには、売上の向上、もしくは製品の原価を抑えなければなりません。原価を抑える方法で利益を上げるのであれば、製造原価を計算・分析しておくのは重要なポイントです。また、製造原価をしっかりと把握しておくことは、製品の価格設定や予算管理などにも役立ちます。製造原価とは?製造原価とは、製品を作るうえで発生したすべての費用のことで、主に製造業で使われる言葉です。製品を作るには、原料や材料を仕入れて、設備の運転や外注を利用するなど、さまざまな工程を必要とします。費用は、原料などを仕入れる以外にも、設備の燃料費・水道光熱費・人件費などにもコストは発生しているものです。製造原価は、そのようなものも含めてすべて合算します。なお、企業で発生する原価には、仕入れから生産までにかかる費用である「製造原価」のほかに、製品を販売するのにかかる費用である「販売費及び一般管理費」もあります。ここでは、製造原価に焦点をあてて解説していきます。製造原価と売上原価の違い売上原価とは、売れた商品に対する仕入れや製造にかかった原価のことで、主に小売業で使われる言葉です。一方で製造原価は、製品を製造するのにかかった費用の合算であるため、計算する対象が異なります。製造原価の分類方法製造原価は、基本的に費用の発生形態による分類である「材料費・労務費・経費」の3つに種類分けされます。各費用の詳細は下表の通りです。<費用の発生形態による分類>分類内容代表例材料費物品の消費で発生する原価原料費・消耗品費・燃料費・備品費など労務費人件費などの労働力を使うことで発生する原価給料・賞与・手当・福利厚生費など経費材料費と労務費以外で発生する原価減価償却費・水道光熱費・賃貸料など製造原価を計算する際は、以上の3つを用います。また、製造原価は、製品との関連による分類である「製造直接費・製造間接費」の2種類による分け方もあります。さらに製造直接費には「直接材料費・直接労務費・直接経費」の3種類、製造間接費には「間接材料費・間接労務費・間接経費」の3種類で、合計6種類の分類がされています。製品との関連による分類の詳細は下表の通りです。<製品との関連による分類>分類1分類2内容代表例製造直接費直接材料費特定の製品のために使った費用特定の製品を作るうえで必要な金属や部品などの材料費直接労務費製品の製造に関わった従業員の賃金現場作業員の賃金直接経費製造にかけた材料費・労務費以外の費用や外注費用外注加工費製造間接費間接材料費製品にどれだけの材料費をかけたのか不明確なもの潤滑油・塗料・工具といった消耗品・補助材料費など間接労務費直接製造に関わらない人への労務費生産管理者の給料・賞与・福利厚生費など間接経費特定の製品との関わりが不明な経費減価償却費・水道光熱費・賃貸料など製造間接費は製造直接費と違い、明確にかかった費用が把握しにくいため、製品の生産量や設備の稼働時間などから配賦(はいふ)計算を行います。配賦とは、費用を配分処理することで、企業ごとに配賦基準を定めて製造間接費を計算します。製造原価の求め方・計算式製造業での決算書には、当期に販売した製品の製造原価を明らかにするための「製造原価報告書」があります。ここでは、「材料費・労務費・経費」の分類を用いた方法で、製造原価報告書に記載が必要な、「当期製品製造原価」の計算式を以下に紹介します。当期製品製造原価=当期総製造費用+期首仕掛品棚卸高-期末仕掛品棚卸高当期製品製造原価とは、当期に完成した製品の製造原価を指します。これは、前期に未完成だったものが当期に完成したものも含みます。一方、当期中に完成しなかった製品については含みません。当期総製造費用は、当期にかかった、費用の発生形態による分類の「材料費・労務費・経費」の合計額です。当期材料費は「期首材料棚卸高+当期材料仕入れ高-期末材料棚卸高」の数式から算出します。期首仕掛品棚卸高は、前期末時点で未完成の製品の金額です。期末仕掛品棚卸高は、今期末時点で未完成の製品の金額を表します。

  • 製造現場が悩まされるチョコ停の原因と対策

    チョコ停は、コストダウンや効率良くものづくりを進める上で、顕在化しておきたいポイントです。小さなトラブルではあるものの、1日に何回も発生してしまうため、生産効率が大幅に低下している恐れがあります。トラブルを根本的に解決しないままにしておくと、製造設備の大きな故障を招き、ドカ停に発展することもあるでしょう。チョコ停とはチョコ停とは、製造設備にトラブルが発生するなどして、設備・製造が短時間の間停止することで、別名「空転ロス」とも呼ばれています。チョコ停は、以下の設備効率を阻害する大きなロスである「7大ロス」と呼ばれるものの一種です。7大ロス一覧故障ロス設備故障により稼働停止している時間段取り替えロス生産する製品を変更する際の切替えにより稼働停止している時間治具交換ロス治具や刃物などの交換により稼働停止している時間立ち上げロス生産設備の立ち上げ時に行う調整にかかる時間チョコ停(空転ロス)一時的なトラブルにより設備の稼働を停止している時間速度低下ロス想定している設備のスピードに対して、遅れている時間不良品ロス不良や手直しによる物量的ロスと、修正にかかる時間的なロスチョコ停は製造設備が停止している状態のため、現場の作業者がいち早く気づき、復旧させる必要があります。チョコ停の具体的な特徴については下記の通りです。チョコ停の特徴・トラブルの発生から数分程度で復旧が可能・設備の修理や部品交換の作業を必要としない・1日のうちに何度も発生するチョコ停は大きなトラブルとは異なり、現場の作業者による対応で済ませてしまうケースが多く、顕在化しにくいもの。また、1日の間に何度も発生してしまうのが特徴です。停止した状態が長く続くと、稼働率や生産性が大幅に低下し、製造コストの高騰にも繫がります。チョコ停は、JIS規格の【JIS Z 8141:2001 生産管理用語】にも記述されており、その内容は下記の通りです。設備が生産ラインなどの大規模なシステムの一部となっていて、システム全体を停止に至らしめるような重大又は決定的な故障を大故障(通称としてドカ停)、逆に設備の部分的な停止又は設備の作用対象の不具合による停止で、短時間に回復できる故障を小故障(通称としてチョコ停)という。引用元:JIS Z 8141:2001 生産管理用語 設備管理 番号6108チョコ停の名称は、チョコチョコ停止することの略称として使われていますが、似たような言葉に、ドカっと長い時間製造設備が停止する「ドカ停」も用語としてあります。チョコ停が重なるとドカ停に発展し、生産ラインに大きく悪影響を及ぼす場合もあります。チョコ停の原因と問題点7大ロスである、段取り替えロス・治具交換ロス・立ち上げロスは、ある程度決まった時間で、予定として組み込まれているロスになります。故障ロス・速度低下ロス・不良品ロスは、停止時間が長かったり、タクトタイムを測定したりするものであるため、顕在化がしやすいものです。一方で、チョコ停は突発的に発生するロスのため、復旧は現場の作業者が対応して済ませるケースがほとんどです。ロスした時間や内容などの、具体的な記録が残らないことも多い分、顕在化がしにくいとされています。チョコ停の対策チョコ停は、作業者による対応で改善されるような細かいトラブルかつ、記録を残していないケースが多いため、顕在化がされにくいものです。しかし、チョコ停をそのままにしておくとドカ停に発展し、大きなトラブルとなりかねません。そのため、チョコ停の段階から対策しておくべきかどうかを検討する必要があります。チョコ停の顕在化チョコ停を対策するには、まず始めにチョコ停を顕在化する必要があります。顕在化するための方法として、「ワークサンプリング」を行うのが有効です。ワークサンプリングとは稼働分析の手法のひとつで、作業に対してどの程度の時間や工数がかかっているかをチェックすることを指します。ここでのワークサンプリングは、設備の状態を「稼働」と「非稼働」に分け、非稼働を「段取り替え・チョコ停・設備トラブル」に分類し、チョコ停の時間を明確にします。明確にした時間から、チョコ停を含めた稼働率を計算します。稼働率の計算式稼働率(%)=稼働時間÷負荷時間稼働時間:負荷時間-計画停止時間-停止ロス時間負荷時間:1日または月間を通じて設備が稼動しうる時間チョコ停を含めた稼働率の計算式稼働率(%)=稼働時間÷(負荷時間+チョコ停時間)以上の2つの式を用いて、チョコ停によりどれだけ稼働率が低下したかを算出します。チョコ停の原因調査チョコ停を顕在化したあとは、原因調査を行います。原因調査は設備のエラーなど、チョコ停が起こった場合に記録するためにワークシートを用います。ワークシートへの記入は、現場の作業者がチョコ停が起きた問題点の回数を記録するだけで、現場の負担にならないようにします。そのためにも、あらかじめワークシートには、縦軸に発生件数・横軸にワークサンプリングで明らかになった発生原因を記述した表を作成しておくといいでしょう。チョコ停の原因抽出チョコ停の原因調査で記録したワークシートを元に、発生件数の割合を示した図であるパレート図を作成し、原因を抽出します。パレート図は、発生したチョコ停の回数が多いものから順に並べることで、重大な原因がいずれなのかが分かり、効率の良い対策が立てやすくなります。以上のようなパレート図による解析は「パレート解析」と呼ばれており、問題に対する分析や対策を講じる場合に有効です。パレート図の例パレート図の例は上表の通りです。アルファベットのA~Jは各チョコ停の種類、棒グラフは各チョコ停の発生件数、折れ線グラフは累積比率を表しています。上図のように、発生件数の多いものから順番に並べることで、チョコ停の大きな問題が何なのかを明確にできます。チョコ停の改善効果の確認パレート解析後は、チョコ停1回あたりの損失金額を計算し、チョコ停を改善することでどれだけの効果が得られるかを確認します。チョコ停1回あたりの損失金額の計算式は以下の通りです。●チョコ停1回あたりの損失金額損失金額=チョコ停時間×時間あたりの生産個数×製品単価上の式から改善効果を数値化し、チョコ停の対策を実施するかを検討しましょう。チョコ停改善によるメリット今まで対策を講じていなかったチョコ停を改善することで、以下のようなメリットがあります。●ドカ停に発展するリスクの低減チョコ停は放置してしまうと、設備の劣化を招く要因となります。チョコ停を対策しておくことで設備が故障しにくくなり、大きく生産効率が低下するドカ停の防止にも繫がります。●稼働率の向上チョコ停は小さいトラブルとはいえ、1日に何度も発生するもののため、稼働率が低下します。チョコ停を改善することで、製造設備の停止時間が少なくなり、時間あたりの生産個数を増やすことができます。●不良率の軽減チョコ停の発生するタイミングなどによっては、製品の品質に悪影響を及ぼす場合もあるでしょう。チョコ停が改善されれば、不良品の数が減るほか、トラブルの対応にかかる手間も少なく済みます。●安全性の向上チョコ停の復旧作業を行う上で、製造設備の巻き込みや、刃物などによるケガなどのリスクも考えられます。チョコ停のように1日に発生する回数も多いと、その分ケガをしてしまう可能性も高くなるでしょう。チョコ停改善は、安全第一で作業をするのにも有効となります。

  • 7つのムダ例「かざふてつどう」製造業のコスト改善を考える

    7つのムダとは、製造業の現場で問題となる以下の7つのムダ例を指す言葉です。「か」加工のムダ「ざ」在庫のムダ「ふ」不良・手直しのムダ「て」手待ちのムダ「つ」造りすぎのムダ「ど」動作のムダ「う」運搬のムダ7つのムダは、生産現場の管理者や作業者が意識して注意しないと、しばしば起こってしまうものです。そのため、製造業に従事する人が頭に入れておくべきものとして、これらの7つのムダの頭文字をとった「かざふてつどう」が標語となっています。この記事では、7つのムダの各々について解説するとともに、その発生原因や対処法について説明していきます。7つのムダとは?7つのムダとは、製造業の現場で起こりがちな、付加価値を生まない現象や結果のことです。「ジャスト・イン・タイム」などと並ぶトヨタ生産方式の一つで、コスト増大や生産性低下に繋がることから、現在の生産現場において改善していくことが求められています。造りすぎのムダ造りすぎのムダとは、不要なものを余分に作ってしまうムダのことです。注文を受けていない、計画されていない製品の生産は、以下で説明する「運搬のムダ」や「在庫のムダ」の発生にも繋がる、最も悪いムダと言えるでしょう。そもそも、造りすぎのムダは、作業員の手待ちや余分な設備があって、機械の故障や不良品の発生に対して不安感があることが原因で発生します。しかし、造りすぎのムダが許されてしまえば、作業そのものが増えるだけでなく、運搬車・リフトの稼働時間の増加、倉庫・保管スペースの増加など、新たなムダが発生し続けます。また、その間は作業員の手が空かないため、後述する「手待ちのムダ」があっても明らかにすることができません。これを解消するには、タクトタイムを適切に設定して手待ちをなくすことや、生産管理をきちんと実行して納期遅延の懸念をなくすことが大切です。手待ちのムダ手待ちのムダとは、作業員の手が待ちの状態にあるムダのことです。機械が稼働せず空いている状態も同様です。前工程から受け渡される材料・部品を待っている状態や、機械が自動で加工しているときに必要なく監視している状態、機械が故障して復帰を待っている状態などが該当します。特に、作業員による機械の監視は、機械の故障検知や不良品の発見装置が適切に作動すれば不必要です。それにも関わらず、機械の監視は、さも必要であるように見え、不可欠な作業であるように見えます。また、手待ちは、作業員が作業スピードを調整することで覆い隠されてしまうことにも注意しなくてはなりません。そのため、まずは、ラインへの1個流しなどで標準作業を構築し、どこに手待ちが存在するかを明らかにしましょう。また、機械の仕様を理解し、不必要な監視をなくすことも必要です。動作のムダ動作のムダとは、作業の中での、探す、しゃがむ、持ち替える、調べるといった工程の直接的な進展に繋がらない不要な動作のことです。標準作業がきちんと規定されていない場合や、標準作業が誰でも同様に実行可能でない場合、作業員への訓練が不足している場合などに起こります。これを改善するには、日常的な作業の観察はもちろん、作業員から案を募ったり作業員からヒアリングしたりすることも有効です。作業員にとって楽な動作を追求することも重要であり、動作のムダの解消に繋がります。運搬のムダ運搬のムダとは、不必要なモノの移動、仮置き、積み替え、整理などのことです。ここで言うモノとは、原材料・部品、仕掛品、完成品、またこれらの在庫品を指し、運搬とは、原材料・部品が工場に入り、完成品となって工場へ出ていくまでのモノの流れを指します。運搬のムダは、モノの流れが決まっていない場合や、各工程の作業場のレイアウトが悪い場合などに発生します。そのほか、「造りすぎのムダ」によって必要以上にモノが溢れ、置き場所がなくなることで不必要な積み替えなどの運搬のムダが発生します。運搬のムダの改善には、「手待ちのムダ」の改善にも繋がることから、仕掛品に対する運搬の最適化が特に重要です。具体的には、工場内の設備・作業員・モノの配置を見直して工程間のモノの移動距離を短くするのはもちろん、前後の工程と作業を同期させて仕掛品の余計な仮置き等を減らすことも効果があります。不良・手直しのムダ不良・手直しのムダとは、不良品を発生させて廃棄し、手直し、造り直しするムダのことです。不良品が発生すれば、材料費や設備費、人件費などの全てがムダになるのはもちろん、廃棄するためのコストもかかります。手直し・造り直しにも時間とコストがかかるため、良いことはありません。このムダは、様々なことが原因で起こりますが、これを防ぐためにあるのが品質管理です。品質管理の重要性を理解し、しっかりと実行しましょう。加工のムダ加工のムダとは、そもそも加工が不要であったり加工手段が最適でなかったりする際に発生するムダのことです。必要以上の仕上げ作業や、不要な検査なども該当します。従来のやり方だからと、本当に必要かどうか、より良い方法がないかを検討しないことで起こります。ムダな作業や工程はないか、より良い加工方法はないか、しっかり見直すことが大切です。参考:【金属加工】金属加工の特徴や種類について徹底解説!!在庫のムダ引用元:合同会社高崎ものづくり技術研究所在庫のムダとは、原材料・部品、仕掛品、完成品等が倉庫などに理由なく置かれているムダのことです。一定量の在庫を計画的に確保することが不可欠なこともあります。しかし、在庫が存在することで、「運搬のムダ」が生じたり、在庫管理に手間や費用がかかったりします。また、モデルチェンジなどで、価値がなくなってしまうこともあります。在庫を保管する倉庫等の維持コストもタダではありません。もちろん、在庫があったことで、機械の故障が起きたときでも納期が守れたということもあるでしょう。しかし、在庫の存在を前提としていると、不良や機械の故障などへの対策に力を入れず、生産性の向上に繋がりません。重要なのは、故障が起きた場合ても迅速な復帰が可能で、一定のアクシデントにも対応できる生産計画が立てられていることです。在庫のムダの解消には、注文後に生産を開始するという方法が有効です。もちろん、この方法では、実現可能な納期でないと、機会損失に繋がります。

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    金属加工の板金塗装の見積りについて解説!塗装の種類ごとについてもご紹介!

    板金塗装をするなら専門のメーカーへ依頼することをおすすめします。専用の塗料を使用することで、製品の見た目だけでなく、耐久性や耐熱性などの効果を得ることができるからです。しかし、いざ板金塗装の見積りを依頼するとなっても、塗装にどのような種類があって、見積り金額がどのように変わるのかわからないでしょう。また、塗装ができる工場を探すのも、時間がかかり大変です。そこで今回は、板金塗装について、その種類や塗装の選び方を解説していきます。板金塗装について悩んでいる人は、ぜひ参考にしてください。板金塗装とは金属の板や製品に指定の色や特殊な塗料を塗ることを板金塗装といいます。板金塗装と聞くと自動車板金のことを想像するのが一般的でなはいでしょうか。しかし、工場などの製品で使う金属板などへの塗装も、板金塗装に含まれることを理解しておきましょう。色を塗ったりする塗装は自宅などでも可能でしょう。ただ、特殊な樹脂や有機溶剤を含むような塗料を使った特殊な塗装は、専門の工場で行う方が早く綺麗に仕上がります。板金塗装の種類実は、ひとことで板金塗装といっても、塗装の種類は複数あり、それぞれで使用用途が異なります。塗装の種類によって費用や効果が変わるので、板金塗装の依頼をする時は事前に調べておきましょう。ここでは、塗装の種類について詳しく解説していきます。どのような塗装にするか悩んでいる人はぜひチェックしてください。粉体塗装粉体塗装は、まず樹脂や顔料などを細かく粉砕し粉状にしたものを、静電気を使って金属に付着させます。その後、高温で焼付乾燥を行なって塗装を完了さます。特徴は、有機溶剤を使用しないので体や環境に非常に優しく、安全性が高い点です。また、粉体塗装は塗膜を最大150μまで厚くすることができ、塗布面に生じる小さな穴も少ないため、製品に空気が触れにくくなります。そのため、サビに強い塗装方法です。粉体塗装だけでも複数の種類があり、種類によって使用用途が異なりますが、主に家電や自動車のボディ部分などに使用されています。ただ、粉体塗装は、粉体の密着性を高めるために、下処理が入念に行われます。さらに粉体を静電気で付着させてから乾燥焼付を行うので、多くの作業工程を要します。そのため、短納期の依頼などには対応できないので注意しておきましょう。エポキシ塗装エポキシ塗装とは、エポキシ樹脂というプラスチックの素材にもなる原料を含んだ塗料を使用する塗装方法です。エポキシ塗装の特徴として、水分を通しにくく、酸素を通しにくい性質があるため、高い耐食性を持ちます。耐水性や絶縁性もあるため、パソコンやプリンターの金属部分に多用されます。ただ、コスト面が少し高額になる塗装方法であるため、依頼する場合には注意が必要です。さらに、エポキシ樹脂は紫外線に弱く、日に当たりすぎると白く劣化しやすいデメリットがあります。そのため、塗装した部分に紫外線が当たるような場所で使用する製品にはあまり向いていません。参考記事エポキシ塗装について、さらに詳しい内容を知りたい人は、下記の記事を参考にしてください。⇒エポキシ塗装について表面処理の専門家が解説!製品事例についても紹介しています!アクリル樹脂焼付塗装アクリル樹脂焼付塗装とは、アクリル樹脂塗料に熱を加えながら金属に塗っていく塗装方法です。特徴として、焼付塗装後の金属表面に光沢が出やすく、素材に高級感を持たせられる点が挙げられます。また、耐熱性が高いため、屋外で使用する製品でも塗装が経年劣化しづらいです。硬度が高く傷もつきにくいので、アクリル樹脂焼付塗装は、金属製の工業製品や日用品などに多用されます。アクリル樹脂焼付塗装のデメリットは、塗り替えのサイクルが早い点です。耐用年数が4〜7年ほどと短いので、頻繁に塗り替える必要があります。参考記事アクリル樹脂焼付塗装のメリットやデメリットについて、理解を深めたい人は、下記の記事を参考にして下さい。⇒アクリル樹脂焼付塗装のメリット・デメリットについて専門家が解説!溶剤塗装溶剤塗装では、有機溶剤に樹脂や塗料を溶かし入れて、専用のスプレーやハケ、ペイントローラーで金属の板に液状の溶剤を塗布していきます。アクリル樹脂焼付塗装やエポキシ塗装なども、溶剤塗装の分類になります。特徴として、昔から使われている塗装方法なので信頼性が高く、比較的コストもかかりません。また、広範囲の塗装も得意としており、カラーバリエーションが豊富なのも、溶剤塗装のメリットです。ただ、溶剤塗装は主にスプレーを使用して塗布していくため、職人の腕に左右されやすいデメリットがあります。そのため、経験がある職人がいる工場を選びましょう。自動車部品や電化製品など、さまざまな分野で溶剤塗装は使われています。参考記事溶剤塗装の特徴やメリットなどについて、さらに詳しく知りたい人は、下記の記事をチェックしてください。⇒溶剤塗装とは?特徴や粉体塗装との違いについて専門家が解説!フッ素樹脂塗装フッ素樹脂と呼ばれる物質を金属の板などに塗布する加工がフッ素樹脂塗装です。代表的な例を上げると、フライパンに使用されるテフロン加工もフッ素樹脂塗装のひとつです。特徴として、非粘着性や低摩擦性性に優れており、水を弾きやすいので、汚れが取りやすい点が挙げられます。また、紫外線に強いため耐候性が高く、屋外で使用する製品の塗装にもよく使用されています。ただし、フッ素塗料は1㎡あたり4,000~4,500円と、塗料価格が高いデメリットがあります。そのため、大型製品の塗装などをする場合には、見積りが高くなる可能性があるので、依頼する工場に確認しておきましょう。参考記事フッ素樹脂塗装のメリットや塗装耐用年数などについて詳しく知りたい人は、下記の記事を参考にしてください。⇒フッ素樹脂塗装について専門家が解説!メリット・デメリットや耐用年数、色についてご紹介!板金の塗装の種類の選び方前項でご紹介したように、板金塗装の種類はさまざまあります。そのため、どの種類の塗装を行えばいいのか悩む方は多いでしょう。板金塗装の種類を選ぶ際には、耐用年数と料金をしっかりと確認しておきましょう。耐用年数と料金が塗装の種類によってどれぐらい変わるのか表にまとめましたので、参考にしてください。●耐用年数耐用年数とは、簡単にいうと塗った塗料の寿命のようなものです。耐用年数を超えてくると、塗料が剥がれてきたり、水を弾く力が弱くなったりと、塗料がもつ効果が発揮できなくなります。耐用年数を事前に把握しておき、最終的なランニングコストで塗装の種類を選びましょう。※耐用年数は、使用する溶剤、塗料のグレードや重ね塗りを何回したかによっても異なるので、あくまでも目安として考えてください。●料金塗装の料金は、使用する塗料や範囲によって異なります。※あくまで目安です。こちらも使用する溶剤、グレードや製品形状、膜圧、メーカーによって変動します。板金塗装見積りを決める要素板金塗装の見積りを決める際には、下記の3つの要素が押さえておきたい重要なポイントです。見積りを決める際のポイント・形状・塗装の種類・下処理では、上記3つの項目が見積りにどのように影響するのか解説していきましょう。形状塗装する金属製品の形状や塗装範囲によって、見積り金額は変わってきます。たとえば、小型の金属部品であっても、自動塗装が難しい形状の場合は、人間を使って塗装を行う必要があるので、見積りが高くなる場合が多いです。また、塗装範囲が広くなることで使用する塗料も増えるため、その分見積り金額は高額になってしまうでしょう。塗装種類2つ目の要素として、塗装の種類も見積りに影響します。エポキシ塗装や、フッ素樹脂塗装など、塗料代金が高い塗装は、見積りが高くなってしまいます。塗装は製品の仕様に合わせた価格・耐久性を吟味して選ぶことが非常に大切です。下処理下処理も含めて工場に依頼するかどうかで、見積りの金額は異なってくるでしょう。塗装前の下処理をしておかないと、塗装が剥がれやすくなったり、塗装にムラができたりします。たとえば、自社で板金と組み立てまでをして塗装だけを外注するとします。その場合、製品の汚れを落とす作業や研磨作業などの下処理も含めて依頼すると、受注側の作業工程が増えるので見積り金額が高くなってしまうでしょう。ただ、下処理は塗装の仕上がりを左右する非常に重要な工程です。そのため、下処理から塗装までを社内で一貫して行う業者も多いでしょう。そのため、下処理を発注前に行なっていいか判断するために、事前に工場へ相談しておきましょう。板金塗装の見積り依頼ならMitsuri今回は、板金塗装の種類や選び方について解説していきました。板金塗装といっても種類はさまざまで、塗装の種類によって得られる効果や使用用途が異なります。もちろん、フッ素樹脂塗装などの高額な塗装方法を選べば見積り金額は高くなるので、事前にしっかりと確認しておきましょう。ただ、塗装の種類や選び方がわかっても、どのような専門工場へ依頼すればいいのかわからない人は多いでしょう。そこでおすすめなのが、Mitsuriのサービスです。Mitsuriは、日本全国250社以上のメーカー様とお付き合いがあります。板金塗装をどこのメーカーへ依頼するか迷っている方は、複数社から同時に見積りが取れるMitsuriに、ぜひご相談ください!