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【金属加工 Mitsuri】無償でご利用いただけるキャンペーン実施中!
レーザーでの微細加工は、金属をはじめ、セラミックやガラスなどさまざまな素材に非常に細かな加工を施すことができる加工方法です。金属加工における先端技術の中でも特に注目を集めており、精密機械をはじめ幅広い業界や分野で高いニーズがあります。ただ、肉眼で識別できないほどの微細な切断や穴開けなどの加工を依頼したい、と思ってもレーザーでの微細加工についての知識や得意とする企業の情報がないと難しいですよね。この記事では、レーザーを使った微細加工のメリットや種類、レーザー微細加工を得意とする企業をご紹介します。板金をはじめ金属へのレーザー微細加工の依頼を検討している方は、ぜひ最後までご覧ください。レーザー加工が微細加工に適している理由レーザー加工は、名前のとおりレーザー光線を利用して切削や穴開けなどを行う加工方法です。レーザーを使って微細加工を行う際、レーザー光線が持つ波長のパルス幅が短い「超短波パルスレーザー」を採用しています。超短波パルスレーザーとは超短波パルスレーザーとは、パルス幅が非常に短いレーザー光で、波長によってナノ秒レーザーやフェムト秒レーザー、ピコ秒レーザーなどに区別されます。パルス幅が短い程、光の直進距離が短くなるため、より精密な加工が可能となります。超パルスレーザーのパルス幅について名称パルス幅光の直進距離フェムト秒10-15秒0.3umピコ秒10-12秒0.3mmナノ秒10-9秒30mm通常のレーザー加工では、発生する熱によって変形や反りなどが出る可能性がありますが、超短波パルスレーザーは素材を原子化し、素材にピンポイントで加工を施すことが可能です。よって、熱による損傷を起こす前に低温状態で加工できます。参考記事金属へのレーザー加工については、下記記事にて詳しく解説しています。⇒【レーザー加工】原理や種類、メリット・デメリットを専門家が紹介!!精密レーザー微細加工の種類精密性を求められるレーザー微細加工と言っても種類は多岐に上ります。代表的な加工であるのは微細穴加工と溝加工です。双方順にご説明します。レーザー微細加工の種類【微細穴加工】微細穴加工は、直径1mm未満ほどのごく小さな穴を開ける加工です。レーザーを使用することで1個から高密度での多数の穴加工も可能になります。印刷用の治具や金型などの用途で採用されています。レーザー微細加工の種類【微細溝加工】微細溝加工は、幅1mm以下の溝を素材につける加工です。狭いピッチで均等、あるいは不均等な溝形状の加工を入れる方法で、コネクター端子や半導体などに使用されています。従来は加工幅に成形した砥石を用いて職人によって加工されていましたが、レーザーを使用することで作業効率と安全性が確保され、熱による素材の変形を軽減することで、より高品質な製品が製作可能になりました。レーザー微細加工のメリットレーザーを使った微細加工を行うメリットについて見てきましょう。バリやドロスが少ないレーザーを使った微細加工では、金属や樹脂を加工した際に出る素材の出っ張りであるバリや、切断時に物質が溶けて溶解物として付着するドロスを軽減できます。微細加工に使用するレーザー光は集光性、指向性が確保されており、照射部分をピンポイントで融解できます。加工エリアが小さいため、熱による変形を最小限に抑えられるのです。また、精密さが特徴であり、従来の刃物や砥石を使った加工とは違い接触不要なため、加工時の歪みやクラック(ひび割れ)が起こるリスクも少なくなります。ごく薄い板金などの穴加工、溝加工にも適した加工方法です。多様な材質に対応レーザーでの微細加工は、金属だけでなくセラミックやガラスなどの硬脆材や樹脂などにも採用できます。溝の深さや幅を数μm単位で調節することで、規則正しい溝を任意の場所に高精度で施すことが可能です。レーザー微細加工の加工事例レーザー微細加工の加工事例をご紹介します。1.狭ピッチ溝研削加工(コネクタ端子金型の入れ子)引用元:株式会社ナガセインテグレックスピッチ精度:0.8μm2.超硬材料の微細溝研削加工引用元:株式会社ナガセインテグレックス超硬材料へ50µmピッチの微細溝を研削加工。3.タイバーカットパンチ研削加工(超硬材料)引用元:株式会社ナガセインテグレックスピッチ精度:1.1μmレーザー微細加工に強い工場3選!【箔形状等の薄い形状の加工なら】株式会社リプス・ワークス引用元:株式会社リプス・ワークス①会社概要本社:東京都大田区東糀谷6-4-17 OTAテクノCORE409TEL:03-3745-0330FAX:03-3745-0331設立:2009年5月加工:焼結・熱処理、メッキ加工、表面処理加工などの各種金属加工、試作品開発加工、各種切削 など 素材:ステンレス、アルミ、鉄、合金、樹脂 などHP:https://lps-works.com/②会社の紹介株式会社リプス・ワークスは、都内大田区に拠点を構え、試作品の開発加工や切削などの金属製品加工を行っています。③メリット・デメリット超短パルスレーザー加工機によるレーザー微細加工では、従来からの円柱や半球形状に加え、複雑な形状のエンボス加工を多く受注しています。エンボス加工の範囲や深さなども任意に調節できます。ただ、納期の短縮は可能かどうかは、受注量などの条件によっても異なりますので、事前に相談してみましょう。④製品紹介株式会社リプス・ワークスの製品例は次のとおりです。SUS304への複合エンボス加工モリブデン(Mo)への高アスペクト微細ストレート穴加工タングステン(W)へのストレート穴あけ加工【金属、ガラス、樹脂等様々な素材に対応】株式会社ナノプロセス引用元:株式会社ナノプロセス①会社概要本社:静岡県浜松市西区大久保町1349TEL:053-482-1800FAX:053-485-1512設立:2007年4月加工:レーザー加工、試作、装置開発 など 素材:アルミ、タングステン、モリブデン、チタンなど金属全般、セラミック、シリコン、各種ガラス などHP:https://www.nanoprocess.jp/②会社の紹介株式会社ナノプロセスは、浜松市にあるレーザー加工や試作品の製作、装置の開発を行っている企業です。③メリット・デメリットレーザーを使った微細加工に特化し、穴加工や溝・切断加工、マーキングや多段加工など多種の加工に対応しています。マイクロメートルレベルでの深穴や深溝、貫通加工が可能で、従来の機械加工では取り扱いが難しいタングステンやチタン、モリブデンといった脆性材料の加工も受注しています。早期納品ができるかどうかは事前に確認するようにしてください。④製品紹介株式会社ナノプロセスの製品例は次のとおりです。アルミナ穴加工窒化アルミ加工面(SEM画像)アルミナ異形加工【レーザー微細穴あけ加工なら】東成イービー東北株式会社引用元:東成イービー東北株式会社①会社概要本社:福島県郡山市待池台1‐26TEL:024-963-2411FAX:024-963-0455設立:1987年11月2日加工:電子ビーム溶接加工、各種レーザ加工、レーザクリーニング など 素材:ステンレス、アルミ、銅 などHP:https://www.ebtohoku.co.jp/index.html②会社の紹介東成イービー東北株式会社は福島県郡山市に本社があり、レーザーを使用した加工やクリーニング、電子ビーム溶接加工を受注する企業です。③メリット・デメリット超短パルスレーザーによる微細加工では、幅広い材質に加工が可能です。ステンレスやアルミ、銅などの金属だけでなく、シリコンやタングステンといった素材にも数十μm単位で加工を施せます。ただ、遠方からの依頼を受けられるかどうかは、事前に問い合わせた方が無難でしょう。④製品紹介東成イービー東北株式会社の製品例は次のとおりです。タングステンWへの微細穴あけ加工(穴径 φ0.030mm・φ0.050mm)シリコンSiへの微細穴あけ加工ステンレスSUS304への微細穴あけ加工レーザーでの微細加工の一括見積もりを依頼するなら【Mitsuri】レーザーでの微細加工について、得意とするメーカーを含めてご紹介してきました。幅広い材料に緻密な加工ができる微細加工は、現時点では特殊な加工方法であり企業や製作所によって受注可能な素材や製品、生産数などに違いがあります。また、実績がある加工方法や分野なども異なるため、事前に依頼できるかどうか確認することをおすすめします。レーザーでの微細加工を依頼するメーカーをお探しの際には、一度Mitsuriにご相談ください。提携している日本全国250社以上の企業から、お客様の要望に合った最適なメーカーを紹介いたいます。また、Mitsuriでのお見積りは複数の企業から一度にもらうことが可能です。まずは一度お気軽にお問い合わせください。
アルミニウムは、合金の種類にもよりますが、比較的軟らかい金属です。そのため、軽くて加工しやすいなどの利点を持ちながらも、強度を必要とする機械部品などには使いづらいといった問題がありました。その点、アルマイト処理は、アルミニウムの硬度や耐食性などを向上させる効果があり、またその効果もある程度制御することができます。それにより、アルミニウムの用途は、機械部品などにも拡大しています。今回の記事では、アルマイト処理の内容やメッキとの違いについて説明します。続いて、その工程、アルマイト処理が可能なアルミ合金の種類、アルマイト処理を行うメリットについても詳しく解説していきます。カラーアルマイト処理や硬質アルマイト処理についても触れていますので、ぜひ参考にしてください。アルマイト・アルマイト処理とは引用元:Wikipediaアルマイト処理は、防サビや絶縁性の付与、強度向上などを目的として、アルミ表面に酸化皮膜を人工的に形成させる表面処理法です。アルミニウムは、空気中で酸化して自然と表面に酸化皮膜を形成。その酸化皮膜によってある程度の強度と耐食性を持つようになります。しかし、自然と形成される酸化皮膜は数ナノメートルと薄く、傷や腐食などがアルミ素地に達してしまうことも多いため、強度や耐食性を必要とする場合にはアルマイト処理が施されます。アルマイト処理の過程で美観をある程度制御できることもあり、アルミ製のやかんや鍋等の日用品、電車や航空機の内装品、建材などに広く適用される表面処理法です。また、アルマイトの膜厚は通常10マイクロメートル程度ですが、より膜厚を増した硬質アルマイトは厚さ50マイクロメートルにも達し、その硬度は鉄鋼を超える400HV以上にもなります。そのため、アルマイト処理を施したアルミ製品は、耐摩耗性を必要とする自動車部品や航空機関連部品、シャフトやロールなどの機械部品などにも広く用いられています。参考記事アルミニウムの基本的な情報については、以下の記事に詳細がありますのでご参照ください。⇒【アルミの基礎】アルミの加工上の特性やメリット/デメリットまで徹底解説!アルマイトとメッキの違い引用元:株式会社ミヤキなお、アルマイトは、メッキとは全く異なる表面処理なので注意が必要です。アルマイト処理では、アルミニウムを電気分解の陽極として通電し、アルミニウムを溶解させながら酸化させて酸化皮膜を形成させます。このとき、酸化皮膜は、アルミ表面の外部方向へ成長すると同時に、内部方向にも浸透していきます。(上図参照)また、製品の素材そのものが電気分解によって溶解するので、重量や寸法が厳格に定められた製品には向いていません。その一方、メッキは、耐食性や強度を上げる、外観を変える、多様な機能を付与するなどの目的で行われる表面処理です。酸化皮膜を除去してアルミニウムの素地を露出させ、素材とは別の金属をコーティングする方法です。つまり、メッキでは、酸化皮膜を全て剥がしてしまいますし、メッキ後には酸化皮膜は残りません。また、アルマイトとメッキにおいて電気分解を行う点は共通していますが、メッキでは電気分解の陽極ではなく陰極にメッキされる金属を使用。電解液中の金属イオンを被メッキ金属へ乗せるように還元析出させます。つまり、アルマイト処理は電気分解の酸化を利用して膜を形成していますが、メッキは逆に電気分解の還元を利用して膜を形成しているのです。参考記事アルミニウムのメッキについて、以下の記事で解説していますので、ぜひ参考にしてください。⇒アルミニウムのメッキについて解説!実際の工程やメリットについてもご紹介!アルマイトの処理工程引用元:YKK AP株式会社それでは、アルマイトはどのような処理工程によって施されるのでしょうか。アルマイトの処理工程は、通常以下の手順で行われます。ただし、工程の間には、水洗や湯洗などの処理が入ります。また、工場によっては、品質向上などのため、追加の工程が入ることがあります。アルマイトの処理工程1.枠吊り2.脱脂3.エッチング4.スマット除去5.陽極酸化6.電解着色7.水洗い後、枠外し1.枠吊り引用元:株式会社興和工業所アルマイト処理は、通常自動化されており、治具(処理物を支持または通電するために用いる支持具)にたて吊りにしたアルミニウム部品を各工程の処理を施す浴槽に順番に沈めていくことで実施します。そのアルミニウム部品を治具に吊る工程がこの枠吊りです。2.脱脂脱脂処理は、アルミニウム部品の成形に伴って付着した油分等を取り除く工程です。施される酸化皮膜の密着不良を防止するために行われます。一般的な金属は通常、アルカリ性の溶液に浸漬することで脱脂を行います。しかし、アルミニウムは、両性金属で酸性にもアルカリ性にも溶けてしまうため、弱アルカリ性や中性の溶液が主に採用されます。場合によっては、液中に泡を発生させて撹拌する超音波清浄機などを併用することがあります。3.エッチング引用元:株式会社小池テクノエッチング処理は、アルミ表面の自然に形成された酸化皮膜や脱脂で取り切れなかった油分などを除去する工程です。苛性ソーダなどの水酸化ナトリウムを含んだアルカリ性溶液にアルミニウムを浸漬。酸化皮膜を溶解させると同時に油分などを除去します。4.スマット除去スマット除去処理は、アルミ表面に露わとなった不純物や合金成分を除去する工程です。アルミニウム合金には銅やケイ素などの不純物や合金成分が含まれていますが、これらの成分の中にはエッチング処理で溶解しないものが存在します。そのため、エッチング処理の後には、このような成分が微粉末として表面に露わになります。この「スマット」と呼ばれる微粉末を取り除く工程がスマット除去工程です。ケイ素などの除去にはフッ素を含んだ酸性溶液が、銅合金の除去には硝酸を含んだ酸性の溶液が用いられます。5.陽極酸化引用元:株式会社ミヤキ陽極酸化処理は、アルミニウムを電気分解の陽極として通電し、表面に酸化皮膜を形成させる工程です。電解液には、硫酸やシュウ酸などの酸性溶液が用いられます。この工程においては、上図のように、まず平面的なバリアー皮膜が成長します。その後、表面に凹部が形成されると、硫酸イオンが凹部に入り込んで硫酸アルミを形成。さらに、その硫酸アルミが溶出して表面に無数の穴が空きます。この穴の成長は、皮膜が厚みを増していくと同時に進行していき、最終的には穴が規則正しく伸びた構造となります。結果として形成される皮膜の厚さは、電解時間に比例します。6.電解着色引用元:三協立山株式会社再び陽極酸化処理を行い、酸化皮膜表面に形成された穴の底に塗料やアルミ以外の金属粒子を電着させる工程です。染料を電着するカラーアルマイト処理については後述します。金属粒子を電着させる交流電解着色では、スズやニッケルなどを含む金属塩水溶液中へ交流電流を加えることで再度電解処理を施します。それによって穴に金属粒子が入り込み、酸化皮膜を補強すると共に防サビ性能が向上します。さらに着色も行うことが可能です。例えば、スズやニッケルでは、黄色やブロンズ、黒色、またそれらの中間色を着けることができます。なお、色調は、電解液の成分や濃度、浸漬時間などによって変化させることが可能です。交流電解着色を施したアルマイトは、日光に対する堅牢性が高く、紫外線などで変退色しにくいという特徴を持ちます。そのため、アルミサッシなどの屋外で用いられるアルミ製品に頻繁に採用されます。7.水洗い後、枠外し以上でアルマイト処理は完了です。製品を水洗するなどした後に枠から外します。なお、電解着色を行わない場合や塗料で電解着色する場合(後述)には、十分な耐食性を確保するため、アルマイトの穴を封じる封孔処理を行います。引用元:三協立山株式会社封孔処理には、酢酸ニッケルや酢酸コバルトなどの金属塩で穴を塞ぐ方法(上図)や、高温加圧水蒸気を当てたり沸騰水中で煮沸したりすることで穴を狭める方法(下図)などがあります。引用元:株式会社三恵工業所アルマイト処理が行える金属引用元:NCネットワークそれでは、どのアルミ合金に対してもアルマイト処理は行うことができるのでしょうか。まず、アルミ合金には、一般的な金属加工で用いられる展伸用と、鋳物やダイキャストで成形する鋳造用がありますが、鋳造用合金はアルマイトに向かないとされています。それは、鋳造用合金では不純物が多く、アルマイト層がうまく生成されないことが理由です。一方、展伸用合金は、番手によって1000番から8000番までに分けることができますが、ジュラルミンなどがある2000番手はアルマイト処理が困難な合金として知られています。それは、2000番手では、導電性が高い銅の含有率が大きく、電流密度にムラが生じやすいことから、アルマイト層の厚さがバラツキ易いためです。しかし、業者の保有設備によっては可能であるため、どの番手のアルミニウム合金をアルマイト処理できるかは業者によってまちまちです。参考記事アルミ合金の番手については、以下の記事で詳細を解説していますので、ご参照ください。⇒アルミ合金の種類や特徴、用途について詳しく解説【専門家が語る】適切なアルミ番がわかります!アルマイト処理を行うメリット引用元:日本伸管株式会社アルマイト処理を施すと、以下のような様々な効果をアルミニウムに与えることができます。腐食しにくくなるアルミニウムは、空気中でも容易に酸化して表面に酸化皮膜を形成します。しかし、アルミニウムそのものはアルカリや酸などにも反応しやすく、傷などから変色や腐食を起こすことがあります。従って、アルマイト処理を施し、分厚い酸化皮膜を形成しておくことで、傷などもアルミニウムの素地まで到達しにくくなり、結果として腐食に強くなります。絶縁性が向上するアルミニウムは導電性が高い金属ですが、アルマイト膜を構成する酸化アルミニウムは絶縁性で電流を通しません。硬度が向上するアルマイト処理を施すことで硬度や耐摩耗性が向上します。硬さがHv20~150であるアルミニウムは、アルマイト処理を施すことでHv200~600まで硬さが向上します。美観をコントロールできるアルマイト処理では、そのときに形成される微細な穴に金属を電着させたり染料を吸着させたりすることで多様な色を着けることができます。遮熱性があるアルマイト膜の熱伝導率は、アルミニウムと比べると約3分の1なので、遮熱性を持ちます。放熱性があるアルマイト膜は、遠赤外線などの放射性が高いという特性を持っているため、ヒートシンクなどの放熱性向上に用いられます。アルマイト処理の種類アルマイト処理は、上述した方法のほか、カラーアルマイト処理と硬質アルマイト処理があります。ここでは、これらのアルマイト処理法について説明します。カラーアルマイト処理引用元:東京高圧工業株式会社カラーアルマイト処理は、アルミニウムの陽極酸化処理後、表面に出来た穴に有機塗料を閉じ込めて着色する方法です。金属表面に塗料を焼き付けるのと違い、剥がれにくいという特徴があります。塗料は、アクリル塗料やメラニン塗料などを使用するので、カラーバリエーションが豊富なところも魅力です。ただし、カラーアルマイトは、紫外線や熱などに弱く、様々な影響で変退色します。そのため、建材などには用いられず、モバイル機器の筐体や化粧品容器、インテリア雑貨などに使われています。また、カラーアルマイト処理を行う場合には、以下のような工程で進めます。<カラーアルマイトの処理工程(下図参照)>1〜5.上述したアルマイトの処理工程と同じ。6.着色:有機塗料や溶剤などを溶かした電解液に浸漬して通電する電解着色で製品を着色。染料液中へ単に浸漬することで着色する場合もある。7.封孔処理:染料の流出や汚れの付着を防止するために穴を塞ぐ。(封孔処理については上述)8.水洗い後、枠外し:製品を枠から外す。引用元:株式会社ミヤキ硬質アルマイト処理引用元:日本伸管株式会社一方、硬質アルマイト処理は、陽極酸化処理において、通常のアルマイト膜よりも硬く分厚い酸化皮膜を生成する方法です。電解液に特殊な溶液を用いる、高電圧・高電流で通電する、低温の電解液で時間をかけて処理するなど、メーカー毎に多様な方法で硬く厚い酸化皮膜形成を実現しています。硬質アルマイトは、通常のアルマイトと比較して、硬度(耐摩耗性)や耐食性、絶縁性、耐熱性などに優れているため、シャフトやロールなどの摺動部品、自動車のエンジン部品、航空機関連部品など、様々な用途で用いられています。なお、色や硬度、皮膜の厚さについて、通常のアルマイトと硬質アルマイトを比較すると以下のようになります。比較項目通常のアルマイト硬質アルマイト色着色可グレー(着色原則不可)硬度200HV前後400HV以上皮膜の厚さ5~25μm20~100μmアルマイト処理の見積り依頼ならMitsuriいかがでしたでしょうか。アルミ表面へ人工的に酸化皮膜を形成させるアルマイト処理は、製品に耐食性や絶縁性を付与するだけでなく、強度と美観も向上させることができます。また、カラーアルマイトはアルミ製品のカラーバリエーションを多様化させ、硬質アルマイトは高い硬度が必要な機械部品までにもその用途を拡大させています。難アルマイト素材と言われていた超ジュラルミンやダイキャストのアルマイト処理も、メーカーによりますが、現在では問題なく行えるようになっています。Mitsuriは、アルマイト処理の高度な技術を保有する全国各地のメーカー様とお付き合いがあります。現在、協力企業は250社以上ございます。そのため、お客様に最適な表面処理方法をご提示することが可能です。お見積りは複数社から可能です!アルマイト処理のお見積りでお困りの際は、ぜひMitsuriにお申し付け下さい!
自社工場で、通常製造している工程の他にも、新規技術や新製品のトライアル製造を新たに試してみたいと思うこと、ありますよね。そこで鉄パイプのカットをしたいけれど、自社工場でできない場合、「どこに頼めばいいかわからない……」「いつもの取引先のメーカーに断られてしまって、依頼先に困っている……」といったお悩みを抱えている方も、いらっしゃるのではないでしょうか。自社製品が求める精度までカットしてくれる業者はいるのか、もっと良い業者があるのではないかなど、業者選びに迷っている方も多いかもしれません。今回は、鉄パイプカット後のバリ取りについてもご紹介しますので、ぜひメーカー選びの参考にしてみてください。鉄パイプのカット方法について鉄パイプを綺麗にカットする方法は2種類あり、「パイプカッター」と「レーザー加工機」が挙げられます。小さめサイズのパイプを容易にカットするなら「パイプカッター」、大きめサイズのパイプやパイプカッターではできない複雑なカットが必要な場合は「レーザー加工機」が使われます。さらにレーザー加工機の中でも「3Dレーザー加工機」は、より複雑な加工形状に対応していて、3次元的なカットが実現できます。では、詳しくパイプカッターと3Dレーザー加工機についてご説明していきます。パイプカッター鉄パイプをカットする方法のひとつに、パイプカッターを使用する方法があります。パイプカッターには、市販の電動パイプカッターから工場などで使われる本格的な電動パイプカッターまであります。パイプカッターは、円形のパイプをパイプカッターで押さえながら、回転させ切断します。そのため、高速切断機のように火花や切りくずが出ることがなく、切断面も滑らかに美しくカットできます。パイプのサイズは限定されますが、少し長さを調整したい時に、パイプカッターさえあればどこでもカットできるのが魅力です。狭い場所や高所でも手軽に切断できますので、安心して利用することができます。動画では、厚さ1.5mmのφ30のステンレス菅が、約30秒でカットされています。手軽にパイプをカットするなら、「電動パイプカッター」が一番でしょう。手動のパイプカッターもありますが、こちらは比較的小さなサイズのパイプカットにおすすめです。引用元:MISUMI-VONAたとえばこちらのパイプカッターは、切断能力(パイプ直径)が、3~22mm。パイプをしっかりと固定し、ローラーとカッター刃でカットするパイプを軽く加え、切り込みを入れます。パイプカッターをパイプを中心に回転させることで徐々に切り込みを入れて切断していく使用方法です。コンパクトサイズのパイプカッターなので、持ち運びにも便利です。切断したいパイプのサイズや大きさによって、電動または手動のパイプカッターを選びます。3Dレーザー加工機鉄パイプをカットする方法のひとつとして、「3Dレーザー加工機」があります。3Dレーザー加工機の特徴は、通常のレーザー加工機がX-Yの2軸で加工するに対し、3Dの名の通り「X-Y-Z軸」の3軸を設定し、3次元的な複雑な加工ができることです。鉄パイプをカットする際、ワークもレーザーヘッドも3次元的に動かすことが可能です。そのため、パイプをチャックしたまま回転・カットし、滑らかな仕上がりになります。もともと、通常のレーザー加工機のメリットは下記の3つです。1. 仕上がりが精密で、それ以上加工せずそのまま使用できる場合が多いこと2. 図面があり、ソフトにプログラムを入力すればイメージ通りのカットがすぐにできること3.プレス加工と比較し、金型製作費用や労力・工賃がかからないので、一本からローコストで製作できることこれがさらに3Dになったことで、角パイプはじめ複雑な形状のパイプのカットも可能になりました。3Dレーザー加工機は非常に精度の高いカットが実現できます。通常の一般的な加工方法で同様の加工をしようとした場合、材料をひとつの部品にするまで、何度も切断したり孔あけしたりする必要があります。加工形状が複雑なほど、工数やそれにかかる機械や材料も膨大なものになります。しかし、これを3Dレーザー加工機でカット・加工する場合、わずか数秒で1つの部品が出来上がることもあります。このように工数・材料の無駄を省き、精度の高い製品が出来上がります。また、部品によっては、通常の加工方法では小ロット短納期は不可なものもありますが、3Dレーザー加工機では、小ロット・短納期が比較的簡単にできるため、非常に重宝される機械です。鉄パイプのカットの製品事例ここからは、鉄パイプのカットの製品事例を紹介していきます。ここで紹介する製品は、全て3Dレーザー加工機を用いてカットしたものになります。パイプカッターは持ち運びができるぶん、長さの調節をするような切り方のみとなりますが、3Dレーザー加工機なら、プログラムを入力することで、さまざまな形状にカットすることが可能です。引用元:小谷鋼管上の画像は丸パイプの側面に切り欠きを入れた加工になります。用途としては切り欠き部に別の丸パイプを溶接するためにカットしています。引用元:小谷鋼管こちらは角パイプと丸パイプの加工品を組み合わせたものです。角パイプはアール状に切り欠きを入れる+突起もある程度残す形でカットしています。それに加えて丸パイプは、角パイプの突起と形状が合うように穴が開けられています。このように加工の精度が高ければ、治具が無くても部材同士の位置決めが可能です。引用元:小谷鋼管上図は角パイプをカットと曲げを駆使して制作されたものになります。角の部分は、角パイプをVの字型にカットすることで、上図のようなコの字の曲げも可能です。そのほかにも、さまざまな部材を取り付けるために側面も複雑な形状でカットされています。通常上図のようなコの字の形状にする場合は、パイプを45度にカットして溶接する必要があります。しかし3Dレーザー加工機を用いれば、パイプ1本に対して切り欠きの加工をするだけで上図のような形状にすることが可能です。引用元:サンコウ鋼業株式会社角パイプを、上図一番右の黒いライン上をカットすれば、アールがかかった曲げ形状にすることもできます。ひとつ前の写真では「カド」の立った曲げ形状でしたが、切り欠きの形状を変えることで、曲げたあとの形も変化させることが可能です。パイプの穴あけ加工後のバリ取りについて製造工程にて、パイプの穴あけ加工をすると、穴の加工面にバリが発生することがあります。バリとは、加工の際に、削り残しができる現象です。パイプを加工する現場では、切っても切れない現象かもしれません。では、できてしまったバリを除去するには、どうすればよいでしょうか。実際に発生してしまったら、面取り用エンドミルを使用して除去するのが良いでしょう。エンドミルによって面取りできる角度が違い、さまざまな形状があります。以下、おすすめのエンドミルを3つご紹介します。①TSコート超硬面取り用エンドミル引用元:MISUMI-VONAこのエンドミルは、面取り角度30°・45°・60°に対応しています。先端角度60°・90°・120°のラインナップがあり、穴の側面にそってバリを除去することができます。②アルミ加工用超硬面取り用エンドミル引用元:MISUMI-VONAこのエンドミルは、面取り角度45°に対応しており、アルミ特有の構成刃先を防ぎ、バリを除去します。③超硬裏座ぐり用ミニチャンファーこちらのエンドミルは、スパイラルの刃が特徴で、ドリル穴の裏面やパイプ側面のバリ取りなども可能です。すべての材質に適合するブルーコーティング仕様で、スパイラル刃によって滑らかに仕上がります。鉄パイプのカットならMitsuri!切削加工にバリはつきものですが、ロット数が大きければ大きいほど、全てを手作業でやることは機会損失や工数増加につながります。そのため、バリ取りや再研磨は外注する工場も少なくないでしょう。鉄パイプのカット・バリ取りを発注できる工場をお探しの場合は、ぜひMitsuriまでご相談ください。
皆さんは旋削加工(せんさくかこう)についてご存知でしょうか?あまり聞きなれない加工方法だという方もいらっしゃるかと思います。しかし、これはメジャーな金属の加工方法のひとつで、旋削加工と一言で言っても、紐解いてみると、加工技術や使用機械も様々です。「旋削加工ってどんな加工方法なの?」「どういった加工工程があるの?」今回はそんな疑問のお持ちの方向けに、旋削加工について実際の加工事例も併せてご紹介します。これから旋削加工の依頼を頼もうと考えている方も、是非ご一読下さい。旋削加工とは旋削加工は、回転している材料に工具を当てて移動させることで、希望の形や長さに加工する方法です。主に、丸い部品を成形するのに使用されます。身近なものであれば、ボルトやシャフト、ニップルなどが旋削加工で作られる製品として挙げられます。引用元:株式会社東洋アソシエイツ明治9年 伊藤嘉平治による足踏み式旋盤この加工方法の歴史は非常に古く、明治時代には旋削加工を用いて工作物の加工を行っていました。一方、似ている言葉で切削加工(せっさくかこう)という加工方法があります。切削加工は、材料を切ったり削ったりする加工方法です。その一種に「旋削加工」が挙げられます。また、旋削加工に使用する機械を旋盤といいます。これは一般的な工作機械のひとつであり、対象とする部品に対応して様々な旋盤が製造されています。参考切削加工の種類【専門家が解説】フライス加工、旋盤加工について詳細をお伝えします!旋削加工の加工時間の計算方法旋削加工の加工時間を求めるには、切削の長さと送り量、主軸回転数の値が必要です。まず、主軸が1回転する間の刃物の移動量を表す「送り量」は、以下の式で求められます。①送り量の求め方送り量(mm/rev) = 1分あたりの切削長さ(mm/min) ÷ 主軸速度(min-1)たとえば主軸回転数が500min-1で、1分間の切削長さが100mm/minの場合、以下のようになります。100 ÷ 500 = 0.2(mm/rev)送り量が分かったら、まずは1分間の切削長さを求めます。②1分間の切削長さの求め方1分間の切削長さ(mm/min) = 送り量(mm/rev) x 主軸回転数(min-1)たとえば、長さ100mmの素材を主軸回転数1000min-1・送り量0.2mm/revで削ると、1分間の切削長さは200mm/minになります。(式:0.2 x 1000)最後に、算出した1分間の旋削長さを以下の式に代入すると切削時間が計算できます。③切削時間の長さ切削時間(min) = 加工物の長さ(mm) ÷ 1分間の切削長さ(mm/min)長さ100mmの素材を主軸回転数1000min-1・送り量0.2mm/revで削るとき、100mm ÷ 200mm/min = 0.5minとなります。0.5分なので、切削時間は30秒ということになるでしょう。加工にかかる時間を大まかに把握するのに便利なので、ぜひ覚えておきましょう。旋削 加工の工程旋削加工は以下4つの工程で行われます。旋削加工の工程①バイトの取付②チャック作業③面削り・心立て④切削作業それぞれ詳しくご説明します。①バイトの取付まず、バイトを取り付けます。バイトとは、工作機械に取り付け、工作物を切削する際に用いられる刃物です。バイトを四角刃物台に置き、ボルトを締め固定します。バイト刃先の高さはセンター高さにあわせます。高さを調節するときは、バイトの下に敷金を敷き高さを調節します。②チャック作業続いてチャックで工作物を固定します。チャックとは旋盤の工具や工作物を固定させる時に用いられる装置で、周囲を締め付けて固定させることが特徴です。チャックで固定する際は、削る部分だけを外に出してハンドルを取り付けます。③面削り・心立て面削りでは、工作物の端面を削り平らにし長さを決めます。次に心立てです。心立てとは、工作物の中心にドリルを用いて穴をあける作業のことです。心押台にドリルチャックを取り付け工作物の近くに心押台を固定し、心立てをします。④切削作業いよいよ切削作業に入ります。工作する部品に合わせて切削を行います。切削をする際には、「切削条件」と呼ばれる、切削速度、切り込み量、送り量に気を付け、効率的な切削条件を選定することが重要になります。●切削速度切削速度とは、バイトで素材を削る周速度のことを指します。切削速度が大きいほど加工面はきれいに仕上がり、短時間で切削することができます。反対に切削速度を小さくすると加工面は粗くなり、切削時間も長くなります。そのため切削速度はなるべく大きくした方が加工面の粗さと加工効率は良くなります。しかし、工具の寿命は早くなるため最適な切削速度を見つけることが大切です。●切り込み量切り込み量とは、旋盤で加工する際に刃物が素材に当たる面積をmmの単位で表したものです。切り込み量が大きければ大きいほど加工時間は短くなりますが、刃物が高温になり加工面は粗くなります。また、工具の切れ刃に焼け跡がつくこともあるため、工具の寿命にも影響してきます。工具の素材や加工物の材質にもよるため、まずは少なめの切り込み量から徐々に増やしていき、最適な切り込み量を選定することが重要です。●送り量送り量とは、主軸が1回転する間にどれだけ刃物が移動したかを表す距離のことです。「送り」には自動送りと手動送りがあります。自動送りは、一定の速度で送ることができるため外丸削りやテーパー削りをする場合に使用されます。一方、手動送りは、削るにつれて直径サイズが変わっていくため端面削りをする場合に使用されます。旋削加工の事例引用元:株式会社原田鉄工所引用元:株式会社タムラ引用元:株式会社木山製作所まとめ 旋削 加工ならMitsuri!1コ〜お受けいたします!今回は旋削加工についてご紹介しました。旋削加工は金属加工メーカーによって仕上げや価格が違うこともあるため、依頼する際は十分に調べてから依頼することをおすすめします。また、旋削加工の依頼ができないメーカーもあるため注意が必要です。また、旋削加工についてお悩みの時は、ぜひMitsuriにご相談下さい。日本全国の170社以上の協力会社からお見積りいただけます。ぜひご利用ください。
チタンは丈夫で加工のしやすい金属として、長い間各産業で大活躍している素材です。その使用用途はとても広く、いつも私たちが使っているような自動車や自動二輪車のエンジン部分にも使われています。 丈夫で加工しやすいという特性があるため、頑丈かつ精密さが求められる宇宙産業でも大活躍中です。 今でこそポピュラーな加工金属となったチタンですが、それ故にその種類や特性も様々で、特性を鑑みずに適当に発注してしまうと、依頼先に断られたりしてしまうこともしばしば。 そうならないよう、この記事ではチタン合金と種類や特徴について、詳しくご紹介していきます。 チタン合金とは チタン合金とは、その名の通り、チタンを主成分とした合金のことです。チタンの持つ長所をさらに伸ばしたり、逆に短所を補うため、他の金属と混ぜ合わせて作成します。 混ぜ合わせる他の金属の例として、アルミニウム、バナジウム、パラジウム、モリブデン、クローム、ニオブがあげられます。 チタンの特性には「軽い・強い・錆びにくい」という3大要素があります。チタン合金には後述する様々な型があり、その特徴も様々ですが、この3大要素は絶対です。 軽量という点に関して、比重(水を1とした時の物質の相対的重さのこと)の観点から比べてみましょう。普通鋼が7.9、銅が8.9という重さなのに対し、チタンは4.5。アルミニウムの2.7には劣りますが、普通鋼や銅では加工しにくい形状でもチタンなら可能で、アルミニウムでは脆弱性が目立つという部分でもチタンなら対応できるというわけです。 次に強いという点。 チタンより重い普通鋼や銅よりも強度が高いです。その強度はアルミニウムの3倍、鉄の2倍と言われています。 錆びにくいという点について、特に耐塩性についてみていきましょう。 ステンレス鋼や普通鋼は海水など、塩分濃度が高い水に触れてしまうとすぐに錆びついてしまいます。 しかし、チタンはプラチナに匹敵する耐塩性を持ち、加工業で使用される他のどの主要金属素材よりも優れているのです。 チタンの3大特性軽い:比重4.5強い:アルミニウムの3倍、鉄の2倍錆びにくい:主要金属素材の中で耐塩性No.1 3大要素の他にも、優れた点があります。 その一つは「人体に対して無害」であるという特性も。人体に入れても溶けにくく、人工骨の作成にも使われています。 不燃性もチタンを語る上では離せません。 国土交通省から正式に不燃材料であると認定されており、火事にも非常に強い素材です。 チタン合金の種類とその特徴 さて、チタン合金についての基本的な特性を学習したところで、チタン合金の種類について紹介しましょう。 純粋なチタンの金属組織は常温上、六方最密充填構造と呼ばれる構造で成り立っています。この通常の相を「α相」と呼びます。図式で表すと、正六角柱の結晶構造です。 引用元:化学のグルメこの結晶構造は885度という高温で変態。立方体の体心立方格子構造になります。これを「β相」と呼びます。この段階で他の元素をチタンと組み合わせ、合金にすることによって、常温でもチタン合金中にβ相が存在できるようになります。 α相単体だけか、β相単体か、α相とβ相が混在しているかで、①α型合金 ②β型合金 ③α+β型合金に分けられます。ただし、さらに細分化すると、「nearα型合金」や「nearβ型合金」に分けられますが、今回は3つの基本的な種類について紹介します。 ①α型合金 アルミニウムを添加した際にできる合金で、室温強度の上昇がみられます。アルミニウムはチタンに添加した際、α相の領域を拡大させるという特性を持ちます。 高温に対する強度が大きく、クリープ特性にも優れているのに加え、逆に極低温化での破壊強度は他のどの型よりも強靭です。 低温下から高温下まで、安定した強度を持つ一方で、加工性が悪いということが欠点です。この加工性の悪さについても他のどの型よりも劣っています。 ②β型合金常温で100%のβ相を持つチタン合金ですが、チタン合金中最高強度で、尚且つ冷間での延性はα型よりも優れています。 高強度なのに関わらず、加工性に優れている点を鑑み、様々な用途での使用が可能です。 しかし、一方で熱処理によってβ相を作っているため、高温には弱く、その強度を維持することができません。ヤング率が低いことも欠点の一つです。 ③α+β型合金 その名の通り、常温下でα相もβ相も併せ持っている合金です。バランスよくα型合金とβ型合金の特性を持っており、製造上における調整がしやすく、それ故に扱いやすいチタン合金です。 強度・延性・靱性はそれぞれ良好で、耐熱性にも優れます。 チタン合金の硬度「チタン合金は固い」というイメージがあるかもしれませんが、実は、それほど固い金属ではありません。チタンは、密度当たりの「強度」が高い金属なのです。つまり、チタンは、引張強度を密度で割った値である比強度が高い金属であり、硬度の高い金属ではありません。「比強度」と「硬度」は違うものです。しかし、ある硬度までは、強度と硬度の間に比例関係が成り立つため、強度の高いものほど硬度も高くなっています。硬度がおよそHB500(ブリネル硬さ)ほどを超えてくると比例関係が崩れ、硬度が高くなればなるほど強度は弱くなっていくのです。金属材料の硬度の尺度は種類がいろいろあります。金属硬度は、主にHRC(ロックウェル硬さ)・HV(ビッカース硬さ)・HB(ブリネル硬さ)・HS(ショア硬さ)などで表されます。今回は、比強度と比べるための硬度に、HV(ビッカース硬さ)の単位を例として使うことにします。尚、上述したブリネル硬さとビッカース硬さはほぼ同じ数値として見ることができるので、後述するチタン合金の硬度がHB500を超えない値であることも分かります。HV(ビッカース硬さ)とはビッカース硬度とは、固さを表す尺度の一つで、HVという単位で表します。これは、試験材料にピラミッド型(四角錘)のダイヤモンドを押し込み、窪んでできた正方形の圧痕の面積を数値化したものです。簡単に言うと、圧痕の正方形の面積が大きければ柔らかく、小さければ硬いということになります。チタンの機械的性質と他金属との比較純チタンにはJIS1種・JIS2種・JIS3種・JIS4種などがあり、数字が大きくなるほど硬度が増し、チタンの純度は低くなります。このような純チタンから主なチタン合金に加え、工業的に使用頻度の高い鉄鋼やステンレス・アルミ・マグネシウム合金の機械的性質の中でも、特筆すべきビッカース硬さと比強度について、一般社団法人日本チタン協会と株式会社西村金属のサイトから数値を転記し表を作成しました。それぞれの金属とチタン合金との強度や硬度の違いを比較してみてください。【ビッカース硬さと比強度の表】t:板厚(mm)組成常温における引張性質ビッカース硬さ比強度引張強さ(MPa)伸び(%)純チタン(α)JIS 1種JIS 2種JIS 3種JIS 4種270〜410340〜510480〜620550〜750>=27>=23>=18>=1513016020023060以上75105120α合金Ti-5Al-1 Mo-1V86216310180α-β合金Ti-6 Al-4V98014320200鉄鋼t5(SS400)400~51021≦13051~65ステンレス鋼 (SUS304)520≦40≦18066≦アルミニウム合金 t1(A7075-T6)540≦6≦160193≦参考1:https://nsmr.jp/blog/kokoro/posts/38参考2:http://www.titan-japan.com/technology/physical_properties.html比強度を比較すると、α合金(Ti-5Al-1 Mo-1V)が180N·m/kgに対し、アルミニウム合金t1(A7075-T6)は193N·m/kg以下で、ほとんど大差がありません。しかし、硬度を表すビッカース硬さでは、α合金が310HVに対しアルミニウム合金は160HVしかなく、αチタン合金の方がアルミニウム合金の約2倍の硬度があることがわかります。これらのことがチタン合金が軽さと強度を兼ね備えた良い材料であることを示しているとも言えます。チタン合金はどこで使われるか 前述の通り、チタン合金は軽くて丈夫で加工しやすいという基本的特性があるので、様々な製造場面で活躍してきました。 最もそれが顕著なのが航空産業です。 基本的に航空機は軽くて丈夫な素材が使われると航続距離や速度が向上します。チタン合金は航空機の発展と一緒に開発されてきたと言われるほどです。 軍用機であるF-15戦闘機では機体の25%、F-22戦闘機では40%がチタン合金製です。民間機では軍用機ほどチタン合金の使用拡大は進んでいませんが、それでもターボファンエンジンのファンや圧縮機で使われています。 無害で生体適合性があるということも先ほど紹介しましたが、整形外科用の材料にも利用されています。ただの金属を体に埋め込んでしまうと、有害物質になってしまい、非常に危険ですが、チタン合金の場合はその心配がありません。 また、耐塩性も強いため、最近では船舶の分野で利用拡大が進んでいます。 特に潜水艦分野では既に利用されています。耐塩性の高さに加え、深海の水圧にも負けない強靭度が注目されたのです。 深海潜水調査亭のしんかい6500や旧ソ連の軍用潜水艦はチタン合金に使用が見られます。 まとめ1950年代、軍用のため使われ始め、未だに超有能金属素材として使われ続けているチタン合金。その可能性はまだまだ無限大に広がりそうです。また、地球上に埋蔵している量も多く、まだまだ第一線で活躍してくれることでしょう。そんなチタン合金の良さをさらに引き出してくれる業者に、見積もりと発注をお願いしたいところですよね。
本シリーズでは、溶接加工に関する知識が全くない方でも、読み進めていくことで溶接加工について理解できるようになることを目標にしています。シリーズ第6回目の今回は、自動溶接機を用いる「自動溶接」や、それを発展させた「ロボット溶接」について解説します。溶接の自動化の必要性とは「自動溶接」とは、「操作者が常時操作しなくても連続的に溶接が進行する装置を用いて行う溶接の総称」と、JISに定義されています。もともと溶接は長らく手作業で行われてきたもので、現在も現場では手作業によって多くの溶接が行われています。しかし昨今、ファクトリーオートメーション=FAの考えが浸透するにつれて、製造工程の自動化が推し進められるようになりました。keywordFA…ファクトリーオートメーション 生産工程の自動化を図るシステムの総称FAを導入することによる大きなメリットのひとつが、人件費の削減と安定化です。一時期は海外に生産工場を設ける企業も多かったですが、現在は世界的に人件費が高騰していることもあり、必ずしもコスト削減には繋がらなくなってきました。また、製造業にとって課題であった品質の属人化も、自動化によって手作業によらなくなることで、大部分を解消することができます。溶接の自動化、ひいては製造工程全体の自動化は、工業が次のステージへ移行するために必要なステップなのです。手溶接・半自動溶接・自動溶接の特徴自動溶接やロボット溶接について理解するためには、それ以前の主流であった手溶接や半自動溶接といった各溶接法に関する理解が欠かせません。それぞれが生まれた歴史的な背景も踏まえて、メリットやデメリットなどの特徴を理解しておきましょう。手溶接(被覆アーク溶接)とは引用:日鉄住金テクノロジー株式会社まずは、溶接法の中でも最もポピュラーだった、手溶接についてです。単に手溶接と言った場合、一般に被覆アーク溶接のことを指します。被覆アーク溶接とは、被覆剤(フラックス)を塗布した被覆アーク溶接棒(手溶接棒)を用い、溶接棒と母材に電流を流してアークを発生させて、その熱によって溶接する溶接法のことです。アーク溶接についてはこちら【アーク溶接とは!?】代表的な種類や特徴と「メリット・デメリット」を解説手溶接の歴史溶接という工法全体の歴史は古く、紀元前3000年ごろの史料にはすでにその形跡がありました。しかしその時点では有力者の装飾品などに加工の跡がある程度で、現在のような溶接法が確立され本格的に工業用として取り入れられるようになったのは、20世紀のはじめとかなり最近です。【19世紀 アークの発見・溶接法の開発】その少し前、1800年にアーク自体はイギリスの化学者であり発明家でもあったハンフリー・デービーによって発見されていたのですが、当時はそれを長時間にわたって安定的に扱えるだけの電源がありませんでした。そしてアークの発見からおよそ30年後の1831年に、発電機であるダイナモが開発されます。それからダイナモを利用して、1900年ごろまでにかけて急速に実用的なアーク溶接法が開発されていきました。【20世紀 被覆アーク溶接の浸透】被覆アーク溶接も、そんな中で生まれました。国内で被覆アーク溶接が取り入れられるようになったのは、1914年に三菱長崎造船所がスウェーデンから被覆アーク溶接棒を輸入したことがきっかけです。造船の際、ボイラー部品の溶接などに適用したのが始まりと言われています。それから程なくして、1920年には早くも全溶接船(421総トン)が製造されたほど、被覆アーク溶接は驚くべき速さで浸透していきました。それから溶接は1974年に年間生産量45万トンという生産量のピークを迎え、そのうちの大部分が被覆アーク溶接であったと言われています。その後溶接ロボットなどにより自動溶接化が進展するまで、被覆アーク溶接は溶接法の主流でした。なお現在は、被覆アーク溶接の生産量比率は20%程度まで減少しています。手溶接の特徴ピーク時に比べ極端に生産量の減った手溶接ですが、今後も現場によっては使用され続けることが予想されます。その理由は、手溶接には次のようなメリットがあるからです。手溶接のメリット①設備、装置(溶接棒)が小型で安価なので導入しやすい②被覆剤が溶融して発生するガスやスラグ(※1)が母材を覆うことで、現場環境による影響を受けにくい(=シールド効果を得やすい)③手作業が前提となるため、素材や構造によらず溶接が可能※1 スラグ:溶接の際に発生する、溶融した金属から分離して浮かぶかす。鉱滓、溶滓、のろなどとも呼ぶメリットを見ると分かる通り、手溶接は主にコスト面などで強みを持つ一方で、次のようなデメリットを持っています。手溶接のデメリット①溶着効率が低く、溶接棒の交換やスラグ除去などの手間がかかる②多量のヒューム(※2)が発生する③溶接者の技量によって品質に差が生まれる※2 ヒューム:溶接の際に発生した金属蒸気が凝集して、微細な粒子となったもの。吸入すると、ヒューム熱などの原因となり得る。半自動溶接とは手溶接のデメリットのうち、溶着効率の低さを解決するために生み出されたのが半自動アーク溶接です。手溶接では被覆アーク溶接棒を都度交換しなければいけないのですが、この交換作業を省くために溶接材に長いワイヤーを用いたものが半自動溶接です。かつては溶接と言えば被覆アーク溶接、つまり手溶接のことを指すのが一般的でしたが、現在ではこの半自動アーク溶接のことを指すほど一般的となりました。半自動アーク溶接の種類半自動アーク溶接はガスシールドアーク溶接の一種であり、主な種類としては、CO2溶接(炭酸ガスアーク溶接)、MIG溶接、MAG溶接などが代表的な半自動アーク溶接として挙げられます。なおそれぞれの詳細については、被覆アーク溶接と同じくシリーズ第5回「アーク溶接とは」もご覧ください。半自動溶接の特徴手溶接に代わり主流となった半自動溶接ですが、次のようなメリットとデメリットを持っています。半自動溶接のメリット①溶接材の交換なく長時間の作業が可能で、手溶接に比べ能率が非常に高い②溶接速度が速く、溶接後のフラックスやスパッタ除去作業もほぼ省略できる半自動溶接のデメリット①フラックスの代わりにシールドガスを用いるため、ノンガスワイヤーを使用する場合は別として、基本的に風のない屋内で作業する必要がある②溶接者の技量によって品質に差が生まれる自動溶接とは半自動溶接は、手溶接のデメリットのひとつであった効率の低さを補うことはできましたが、溶接者の技量差によって生まれる品質の違いは防げませんでした。そこで生まれたのが、サブマージアーク溶接を代表とする自動溶接です。自動溶接の種類自動溶接には主に、自動溶接機による「自動溶接」と、ロボットが溶接を行う「ロボット溶接」があります。自動溶接は、溶接を工場のラインなどで連続的に行う溶接法です。それを発展させ、ロボットによってより高度な溶接も自動で行えるようにした溶接法がロボット溶接です。自動溶接では、溶接時の姿勢が下向き・水平・横向きに限られており、また溶接面の形状もほぼ直線に限られていました。そうした制限をクリアしたのが、ロボット溶接です。自動溶接の特徴ロボット溶接も含めた自動溶接の特徴は、一般的に以下の通りです。自動溶接のメリット①スパッタやヒュームの発生が少ない②風の影響をほとんど受けない③仕上がり品質が作業者の技量によらず、品質が均一化できる自動溶接のデメリット①溶接時の姿勢が、下向き、水平、横向きに限られる②溶接面の形状が、直接かそれに近い曲線に限られる③シーケンス制御・機構設計・安全管理など、これまでとは異なる技能が必要となるロボット制御に必要なティーチングとは手溶接や半自動溶接のデメリットを補うために生まれた自動溶接ですが、自動溶接を導入するうえでは、産業用ロボット制御のためのティーチング、というこれまでとは異なった作業が発生します。ティーチングとは、産業用ロボットに一連の動きを教え込む作業のことで、大きく分けて①オンラインティーチング②オフラインティーチングという2種類の方法があります。①オンラインティーチングとはオンラインティーチングとは、ティーチングペンダントと呼ばれるリモコンを使って、ロボットを実際に動かしながら稼働の様子を記録して、その動作をもとに再生、確認するものです。この方法をプレイバック方式と呼ぶことから、オンラインティーチングは、ティーチング・プレイバックとも呼ばれます。手軽かつ確実に実施しやすいことから以前は一般的な手法でしたが、ティーチング実施中は工場のライン自体をストップする必要があることから、その損失が懸念され、採用機会は減少しました。②オフラインティーチングとはオンラインティーチングに代わり導入が増えたのが、オフラインティーチングです。オフラインティーチングでは、オンラインティーチングで問題だった生産ラインの停止を避けるため、ロボットを使わずにティーチングを行えるようにしました。オフラインティーチングは、大きく4種類に分けられます。①テキスト型②シミュレータ型③エミュレータ型④自動ティーチングシステムそれぞれ、3DCADデータを使用してシミュレートしたり、テキストエディタからプログラムを直接打ち込んだりといった作業が発生するため、ティーチングを行う作業者(ティーチングマン)がCADの扱いやプログラミングについてある程度理解している必要があります。その他のティーチング生産ラインを止めないために導入されるようになったオフラインティーチングですが、その多くは特殊な知識や技術が必要になるため、なかなか導入が進められないというケースも少なくありません。特に溶接技術の効率化には、現場での経験によって蓄積した熟練者の知見を取り入れることが不可欠であり、しかしそうした熟練者がオフラインティーチングで求められる技能を備えていることは稀というジレンマがありました。溶接の効率化に向けたジレンマ熟練者の現場の知見を取り入れる必要↕熟練者がオフラインティーチングで必要な技術を備えていることは稀そこで生まれたのが、ダイレクトティーチングです。ダイレクトティーチングは直接教示法とも呼ばれる方法で、ティーチングマンが直接ロボットを動かし、ロボットに動作を教えます。ロボットの先端部分を直接操作し、その操作経緯をコントローラーに記憶させることで、より直感的なティーチングを行うことが可能です。これにより、ロボットそのものに対する理解を深めずとも、それまで蓄えた知見をダイレクトにロボットに伝えることができるようになりました。さらに近年では、AIを搭載することによるティーチングレスも同じく導入が進んでいます。例えばダイレクトティーチングで入力したプログラムに不備があった場合や、生産ライン側の動作がもともとの想定と異なっていた場合などに、細かい調整が必ず発生します。その際、AIが自身で蓄積したデータから自己判断することで、都度発生する細かいティーチングのコストを抑えることができるのです。ティーチングレスが実現すれば、ティーチングマンの育成コストも抑えることができます。まとめ「ゼロからわかる!溶接加工!」シリーズ第6回は、溶接の自動化について、誕生の経緯や現状まで解説しましたがいかがでしたでしょうか。溶接の自動化・ロボット化を推し進めるうえでは、ティーチングマンの育成が欠かせません。ぜひロボットの導入検討と合わせて、新たにどういった人材が必要になるのか、またそもそもどういった作業を効率化したいのかも把握しておくと良いでしょう。
身の回りのもので『ばね』が使われている製品と言えば、皆さん何を思い浮かべるでしょうか。パッと思いつきそうなもので自転車やボールペンなどがありますね。ですがこうして改めて思い返してみると、世の中にありふれているように思えて、実は日常的にばねを見かけることは案外少ないかもしれません。今回の記事ではそんな私たちがよく知るばねについて、製造業ではどんな特徴や役割があるのかを種類別に解説していきたいと思います。ばねというのは実は意外な形をしている種類もあり、私たちの日常に割と多く溶け込んでいたりするんですよ。ばねの種類ばねの形状と言えば、弾力性のあるぐるぐると巻かれたコイル状のものを皆さん思い浮かべるかと思います。ばねの力を利用しているのが分かりやすい日用品・玩具として、ボールペンやホッピングなどがありますね。レインボースプリングなんかは正しくばねそのものと言う感じで、懐かしく思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。ですが製造業におけるばねとは、あくまでネジやギアのような部品の一つのことを指します。その中には、フックがついていたり腕が生えているようなものから、おそよばねとは呼べなさそうな見た目のものまでいろいろな種類があります。コイルばねコイルばねとは、その名の通りぐるぐると巻かれた一般的な見た目のばねです。ばねにもいろいろな種類がありますが、このコイルばねがばねの部品の中で最もよく使われている種類ですね。押し込んだり戻したりする反発力があり、主に衝撃や振動を抑えるクッションとしての役割を持っています。材料はSUS304-WPBというステンレス線がよく使われており、ニッケルでメッキを施すことにより錆びにくく金属間での摩擦に強いばねが成形できます。一昔前ではSWP-Aというピアノ線で作られていることが多くかったのですが、錆びにくいステンレス素材のばねが現在のコイルばねの主流となっています。コイルばねは大別して圧縮コイルばね、引張コイルばね、ねじりコイルばねの3つの分類があり、取り付ける場所や用途によって使い分けられます。引用元:Tech Note画像を見ると、違いと言えばフックがあるかないかぐらいに思えますが、用途はきちんとそれぞれ違います。圧縮コイルばねは上から押されてから反発する力を利用しており、引張コイルばねは引っ張って戻る力を利用しています。ベッドに飛び乗ってボヨンボヨンと跳ねることができるのは、圧縮コイルばねの反発力があるからですね。より詳しい説明は後の項目にありますので、今は3つの種類があるということだけ紹介しておきます。板ばね板ばねとはパッと見、ばねとは思えないような形状をしている平らなばねです。板ばねには大きく分けて薄板ばねと重ね板ばねの2種類のばねがあり、細かく分類した場合、その種類の多さはなんとコイルばね以上に多くあります。材料は1970~80年代こそ銅が主流でしたが、現在では板ばねもステンレス素材が主となって使われています。板ばねは形状を見る限りでは、ばねというより留め金という方が近い形をしているかもしれませんね。板ばねはコイルばねよりも複雑な形状にすることができ、少量生産、オーダーメイドの対応にも向いています。主な用途としては、電気のスイッチの切り替え部分やサスペンションと呼ばれる車や電車などの振動を和らげるクッションのような使い方をします。皿ばね皿ばねは円盤状の金属にドーナツ状の穴が開いているばねです。これもばねというよりは留め金と言う感じで、ネジやボルトの緩みを止めたり、軸受回りのガタ防止に使われます。皿ばねの材料もコイルばねや板ばねと同じくステンレスや銅です。その薄い形状から小さい取り付けスペースで有効に力を発揮でき、コイルばねや板ばねでは組み込めない狭い箇所で重宝されます。また、皿ばねは何枚も重ね合わせて使うことで、緩み止めとしての効力を増加できます。ネジはしっかり締めたつもりでも、緩み止めがないと月日が過ぎれば次第に緩んできてしまいますよね。そうならないようにネジの緩み防止に皿ばねが使われますが、その際一枚では足りないことがあるため、二枚三枚と重ねることで緩み止めの力を強化できるのです。皿ばねを重ねるときに同じ向きに重ねることを並列重ねといい、反対に重ねることを直列組合せといいます。並列重ねをすると緩み止めが強化され、直列組合せをするとたわみが増します。たわみというのは金属を意図的に曲げた時に起こる歪みのことです。たわみを付ける意味は自転車のチェーンで例えると分かりやすくなります。チェーンがたゆんたゆんになっていると、走っている最中少しの振動でチェーンが外れやすくなってしまいますよね。逆にきつく張りすぎてしまうと今度はペダルが重くなって走りにくくなってしまいます。つまり、たわみは適度にある方がいいんですね。そのため、金属を曲げたい時は皿ばねを直列に重ねていくことでたわみをつけていくのです。枚数を増やせばその分たわみが増えていくので、必要に応じて複数重ねて調節することが可能です。トーションバートーションバーとは細長い棒の形をした蛍光灯のようなばねです。もちろん金属でできているため蛍光灯というほど割れやすくはありません。他のばねよりもずいぶん大きく、本当にばねなのか疑わしいのですが、言葉だけでは伝わりにくいため百聞は一見にしかずということでとりあえず画像を。引用元:DRESS UP NAVI タイヤ館やはり画像で見ただけではただの棒にしか見えませんが、これもばねの一種なんですね。トーションバーと聞くと何に使うかを想像しがたい名前ですが、日本語に直すと『ねじり棒ばね』という名称になり、形状も役割も名前そのままということが分かります。用途は主に車や戦車のサスペンションに使われ、カーブで曲がる時に安定感を出し、乗り心地を良くしてくれる働きがあります。トーションバーの動きとしては、カーブの際に棒がねじれるような動きをします。そんなことしたら割れてしまいそうですが、真っすぐの棒に見えて実はねじれるようにできてるんですね。両端のうち一方だけが固定されており、もう一方は回転するようにねじれます。イメージとしては片手を伸ばして右左にひねる感じです。腕は体に固定されてて、手の方は回転するようにねじれますよね。イメージとしてはそんな感じです。そうして棒がねじれて、カーブを曲がり終えるとねじれた分も戻ります。トーションバーの最大の働きは、その戻ってくる力を利用することで、振動のない安定した走りが可能になることです。かなり想像しづらい説明になってしまったかと思いますが、今言ったことをまとめますとトーションバーの動きとしてはねじれること、そして役割としては振動を抑えたり、カーブの安定感を出すことです。車のサスペンションにはコイルばねを使うこともありますが、場合によっては何個も必要になってしまうことがあるので、だいたい一本から二本ですむトーションバーの方が車体の軽量化に繋がって優秀です。また、コイルばねよりもスペースをあまりとらないというメリットもあります。トーションバーはシンプルな作りであるゆえに多様性こそありませんが、必要最小限の本数・スペースで効率よく高い性能を引き出してくれます。渦巻きばね渦巻きばねとは巻かれた金属が伸びたり巻かれたりすることで動力を発生させるねじです。名前の通り渦巻きのような形をしており、日本ではその形状から『ぜんまいばね』と呼ばれることも多くあります。ばねの先端を引っ張ることでばねが伸び、そこからもとに戻ろうとする力を利用して回転する力を生み出します。よく使われている場所は時計やシートベルトの巻き取り部分など。渦巻きばねのメリットとして、同じ力で長い時間稼働することができ、細長い金属を小さなスペースに収納できることがあげられます。そのメリットから時計や計測機器など精密な動作が求められる製品にも多く利用されています。ばね全体の比率で言うとあまり使われていない方ですが、電力の確保ができない災害時でも使える省エネで長持ちするばねです。コイルばねの詳しい特徴・用途数多くあるばねの中でも代表的な位置にあるコイルばね。おさらいになりますが、それらコイルばねには大きく分けて圧縮コイルばね、引張コイルばね、ねじりコイルばねの3種類がありましたね。私たちの生活の中でその3種類のコイルばねがどんな使われ方をしているのか、それぞれ特徴や用途を詳しく見ていきましょう。圧縮コイルばね圧縮コイルばねは形状・用途から見てもっとも一般的なばねです。押し込めばボヨンと反発力が生まれ、元に戻ります。それ以上もそれ以下の動きもしません。非常にシンプルですね。圧縮コイルばねには等ピッチコイルばねと不等ピッチコイルばねの2種類があり、スペースの広さや機能によって使い分けされます。等ピッチコイルばねは完全な円柱の形になっており、不等ピッチコイルばねは円すいだったりたる型だったりいろいろです。ボールペンを分解したら出てくるのは、この内の等ピッチコイルばねですね。等ピッチコイルばねの用途は、ボールペンの他に車のサスペンションやコンピューターのキーボード、不等ピッチコイルばねは乾電池を入れる所の+-の部分やソファ・ベッドのクッションなどに使われています。乾電池を入れる部分のばねは実は円柱ではなく、円すいの形をしているんですよ。意外に思う方もいるかと思うので、気になった方は一度見てみてくださいね。引張コイルばね引張コイルばねは両端にフックが付いてるばねで、横に引っ張られる動きで使われることが多いばねです。圧縮コイルばねが縮められて元に戻る動きがあるのに対し、引張コイルばねは縮んでいる状態から、伸ばされて元に戻る動きがあります。両端のフックには丸フックやVフックなどいろいろな形があり、それぞれ適した用途で使い分けられています。引用元:モノタロウ使われるフックはだいたい画像の6種類であることがほとんどです。引張コイルばねが使われているところは車のブレーキ部分や計量器など。後は自転車のスタンドなんかが身近にあるものの良い例ですね。引張コイルばねのフックの部分はもろい箇所でありながら、強い力を加えられることが多く、破損トラブルがよく起こる箇所です。そのため製造の際には、フック部分の耐久がばねの設計の段階で弱かったりすることがないよう、強度には特に気を使って丈夫な作りにする必要があります。引張コイルばねのフックの強度をどうするかは、設計時に多くの企業が頭を悩ませるところだったりします。ねじりコイルばねねじりコイルばねはコイルの両端が腕のように伸びているコイルのことをいいます。両端にフックがある種類とない種類があり、さらにコイルによって腕の長さや角度、巻き数などのが違い、用途に応じて使い分けます。主な使用例として、身近な製品で言うと安全ピンや穴あけパンチ、クリップなどが挙げられます。上の二つのコイルよりも見慣れない形状ではありますが、日用品の部品として案外紛れ込んでいたりするので、目ざとく探してみると他にも使われている製品が見つかるかもしれません。実はデジカメなんかにもひっそりと使われていたりします。コイルばねの製造方法コイルばねの形状は子供の頃からよくに目にするためか、その形に疑問を抱くことがあまりありませんが、よくよく考えると金属があんなにぐるぐる巻きになっているのは不思議ですよね。コイルばねを製造する方法をざっくりと説明すると、針金のような金属を鉄の棒に巻き付けていくことで成形していきます。鉄を巻いていく作業をコイリングといい、コイリングの方法には熱間加工と冷間加工があります。熱間加工とは金属を過熱して柔らかくする加工方法のことで、冷間加工とは常温から金属が溶けないぐらいの温度で加工することをいいます。なら名称としては常温加工では?と問いたいところですが、なぜか冷間加工と言う名称なんですね。コイルばねは少量生産や試作品を作る時は手作業による冷間加工でコイリングし、大量生産する場合は熱間加工と冷間加工のいずれかで、機械による全自動で製造します。手作業となると、実際に冷えた金属を抑え続けるていると凍傷になってしまいそうなので、常温で作ることができてよかったですね。ばねのへたりについてコイルばねを作る際に注意することとして、へたりが出ないように気を付ける必要があります。へたりというのはコイルの力が衰えて弾力性が落ちてしまうことです。ばねを長いこと使い込むと、次第に潰れていったり伸びてしまったりして勢いがなくなってしまいますよね。コイルばねは製造の過程でそのへたりが起きやすいばねなのです。何年何か月も使った結果、消耗してしまうなら仕方ありませんが、新品の状態からすでにへたりが起きてしまっていては商品になりません。そのため、コイルを製造する過程ではへたりを防止する工程がいくつもあり、技術者たちもなるべくへたりが出ないようにいつも心掛けています。コイルを手作業で巻く技術は動画見ると何とも簡単そうに思えますが、実はけっこうな職人技なのです。板ばねの詳しい特徴・用途金属の板を材料とする板ばねは、丸型が基本のコイルばねと異なり四角い形状をしていることがほとんどです。板ばねは薄板ばねと重ね板ばねの2種類に分けられますが、材料が同じ板金であることから皿ばねや渦巻きばねも板ばねの分類に含まれることもあります。今回は皿ばねや渦巻きばねを先で紹介しているため、薄板ばねと重ね板ばねの二つを説明していきます。薄板ばねばねというには名ばかりの薄い板状の代物ですね。トーションバーほどではないにしろ、見た目からしてばねっぽくないのが伺えます。性能も反発力のあるコイルばねとは違い、押さえることも引っ張ることもできません。ですが板ばねの中では一番使われれる種類で、形状や用途も様々あり、日常的に見かける製品にも多く使われています。主な用途は棚やドアが外れないようにする留め金やストッパーなど。日用品としてはホッチキスやパンを掴むトングとかに利用されています。また、ねじの代わりにガラス窓やアルミサッシを固定するはめ殺しのために使われることもあります。はめ殺しとは、窓や障子などを開閉できないように取り付けることです。ホテルやタクシーの窓は開けられなくなっていることがよくありますよね。その理由に安全性を考慮しているのと、ネジを使うよりも低コストで済むため、板ばねで固定してしまうことが多いのです。板ばねは使われ方としては地味ですが、製品を機能させるための関節として働いているとても重要な役割を持っています。重ね板ばね重ね板ばねは長さが違う金属の板を何枚も重ねた丈夫なばねです。金属板の弾力性を利用することでクッションとしての効果を持たせ、車輌や機械の振動を抑えることができます。いまいちピンとこない方は、文字を書くときにノートの間に挟むしたじきを想像していただけると分かりやすいかと思います。両側から力を入れるとボヨンボヨンと曲がりますよね。そのボヨンボヨンとなる弾力性で振動を軽減させるんですね。複数枚重ねることにより耐久性も高くでき、大きな振動でも継続的に耐えることが可能になっています。引用元:日本自動車部品協会(JAPA)重ね板ばねが使われる場所はトラックや鉄道車両のサスペンション、プレス機やハンマーの装置などです。大型の乗り物や機械に使われていることが多いですね。重ね板ばねは別の呼び方でリーフスプリングとも呼ばれ、車で使われる場合、タイヤを固定する所と車本体とを支える働きをしています。薄板ばねが関節なら重ね板ばねは車や機械を支える縁の下の力持ちと言ったところでしょう。板ばねの製造方法板ばねもコイルばねと同様、少量生産は手作業で大量生産は機械で行うことがほとんどです。板ばねを大量生産する方法に単発型、順送型、トランスファー型の三つがあります。単発型は穴をあける時は穴をあけるだけ、金属を切る時は切るだけといった、一つの加工のみが可能なプレス機を使うことをいいます。単発型は機械による加工ですが、1工程ずつの加工となるため時間が掛かり、そこまで大量には生産できません。順送型は『穴あけ』や『せん断』などの二つ以上の加工を一つの機械でできるプレス機のことです。複数の加工が一つの手間でできる分、単発式よりも多くの製品を作ることができます。トランスファー型は加工する物をベルトコンベアーなどで流すことで、ほぼすべての加工を自動的に行える装置のことです。穴あけやせん断などの機械があるところに加工品を通していくことにより、一連の加工を人の手を介さずに一回一回止めることなくできます。テレビのニュースや番組で製品ができるまでの様子を紹介している時によくVTRで流れるのがそのトランスファー型です。順送型や単発型に比べ値段が高額なのがネックですが、ほぼ全自動なので作業に負担が掛からず非常に高い生産効率を維持できます。ばねの原因によって起こる不具合どれだけ用心していても製品を作り続ける以上不具合は起きてしまうものです。機材の誤作動や経年劣化によるトラブルはいやおうなしに、人為的ミスで起こる事故も決して少なくはありません。そういった不具合を少しでも減らすために原因を追究して対策することは、効率よく安全に製品を作る上で必須と言えるでしょう。ばねのへたりばねのトラブルでまず起こりやすいのは、ばねにへたりが出ることです。前述の通り、ばねにへたりが出ると伸び縮みの勢いがなくなってしまうのですが、そうなることで製造の効率が落ちたり機材の動作不良が起こったりしてします。ばねがへたる原因として、高温の状態でばねを使用した、機材に合わないばねを使用した、そして経年劣化などがあげられます。ばねが異様に早くへたってしまう時は機材や環境がばねに合っているか確認した方が良いでしょう。そして、長期間の使い過ぎで弾力性がなくなってしてしまう前にメンテナンスをきちんとする必要がありますね。ばねの破損ばねは製品を機能させる上でとても重要な役割を持っているので、当然ながらなるべく丈夫に作られてはいますが、それでも壊れてしまうことがあります。よくある例が引張コイルばねのフックの部分が壊れてしまうことです。前の項目でも書きましたが、フックの部分はコイルばねの中でも特に破損しやすく、ばねトラブルが多く起きている箇所です。経年劣化が原因で壊れてしまうこともありますが、その箇所に合わない形のフックを使っていたり、フック部分に負荷が掛かりすぎていることが主な破損の原因となっています。また、ばねの破損は板ばねでもよく起こり、先端の折り曲げてある部分が曲がってしまったり、折れてしまうことが多々あるので、引張コイルばねにせよ板ばねにせよ、バネが耐えられるかどうかの計算と確認はしっかりしなければいけません。錆びばねは長年使い続けていたために錆びてしまうことがあります。乾電池を入れる部分や車・自転車などがよくある例でしょう。環境によって錆びることもあり得ますが、それも含めて製品の交換やメンテナンスをしていないことがほとんどなので、事故になってしまう前に取り換えておくのがよいかと思います。導通不良ばねが使われる製品には電子部品が組み込まれているものも多くあります。板ばねの取り付けが不十分だったり、部品との接触が不安定で不具合が起きることもありますが、電子機器の場合、そもそも電気系統の知識不足が原因であることも珍しくありません。電子機器の導通不良もばねトラブルの例としてしばしばあることなので、品質の良い製品を安全に作るために、しっかりとした知識と技術が求められます。ばねのトラブルの原因には、他にも強度が強すぎたり弱すぎたり、寸法が合わないばねを使っているなど、不適格なばねを使用していることがもとになっていることもありえます。その製品や機材に適したばねを使わなければ、不具合が生じるのも道理と言えますね。後からトラブルが発生してしまっては手遅れなので、ばねに限らずどんな部品でも無理やり使わず、その製品や機械に合った適切な部品を使うようにしましょう。まとめものづくりにおいて、ばねの重要性はネジに次ぐと言っても過言ではありません。ばねが使われている製品・機械は、家の中でも外でもいたる所で見かけることができます。ばねによる支えはいつも私たちの生活の支えとなっているのです。
レーザーでの微細加工は、金属をはじめ、セラミックやガラスなどさまざまな素材に非常に細かな加工を施すことができる加工方法です。金属加工における先端技術の中でも特に注目を集めており、精密機械をはじめ幅広い業界や分野で高いニーズがあります。ただ、肉眼で識別できないほどの微細な切断や穴開けなどの加工を依頼したい、と思ってもレーザーでの微細加工についての知識や得意とする企業の情報がないと難しいですよね。この記事では、レーザーを使った微細加工のメリットや種類、レーザー微細加工を得意とする企業をご紹介します。板金をはじめ金属へのレーザー微細加工の依頼を検討している方は、ぜひ最後までご覧ください。レーザー加工が微細加工に適している理由レーザー加工は、名前のとおりレーザー光線を利用して切削や穴開けなどを行う加工方法です。レーザーを使って微細加工を行う際、レーザー光線が持つ波長のパルス幅が短い「超短波パルスレーザー」を採用しています。超短波パルスレーザーとは超短波パルスレーザーとは、パルス幅が非常に短いレーザー光で、波長によってナノ秒レーザーやフェムト秒レーザー、ピコ秒レーザーなどに区別されます。パルス幅が短い程、光の直進距離が短くなるため、より精密な加工が可能となります。超パルスレーザーのパルス幅について名称パルス幅光の直進距離フェムト秒10-15秒0.3umピコ秒10-12秒0.3mmナノ秒10-9秒30mm通常のレーザー加工では、発生する熱によって変形や反りなどが出る可能性がありますが、超短波パルスレーザーは素材を原子化し、素材にピンポイントで加工を施すことが可能です。よって、熱による損傷を起こす前に低温状態で加工できます。参考記事金属へのレーザー加工については、下記記事にて詳しく解説しています。⇒【レーザー加工】原理や種類、メリット・デメリットを専門家が紹介!!精密レーザー微細加工の種類精密性を求められるレーザー微細加工と言っても種類は多岐に上ります。代表的な加工であるのは微細穴加工と溝加工です。双方順にご説明します。レーザー微細加工の種類【微細穴加工】微細穴加工は、直径1mm未満ほどのごく小さな穴を開ける加工です。レーザーを使用することで1個から高密度での多数の穴加工も可能になります。印刷用の治具や金型などの用途で採用されています。レーザー微細加工の種類【微細溝加工】微細溝加工は、幅1mm以下の溝を素材につける加工です。狭いピッチで均等、あるいは不均等な溝形状の加工を入れる方法で、コネクター端子や半導体などに使用されています。従来は加工幅に成形した砥石を用いて職人によって加工されていましたが、レーザーを使用することで作業効率と安全性が確保され、熱による素材の変形を軽減することで、より高品質な製品が製作可能になりました。レーザー微細加工のメリットレーザーを使った微細加工を行うメリットについて見てきましょう。バリやドロスが少ないレーザーを使った微細加工では、金属や樹脂を加工した際に出る素材の出っ張りであるバリや、切断時に物質が溶けて溶解物として付着するドロスを軽減できます。微細加工に使用するレーザー光は集光性、指向性が確保されており、照射部分をピンポイントで融解できます。加工エリアが小さいため、熱による変形を最小限に抑えられるのです。また、精密さが特徴であり、従来の刃物や砥石を使った加工とは違い接触不要なため、加工時の歪みやクラック(ひび割れ)が起こるリスクも少なくなります。ごく薄い板金などの穴加工、溝加工にも適した加工方法です。多様な材質に対応レーザーでの微細加工は、金属だけでなくセラミックやガラスなどの硬脆材や樹脂などにも採用できます。溝の深さや幅を数μm単位で調節することで、規則正しい溝を任意の場所に高精度で施すことが可能です。レーザー微細加工の加工事例レーザー微細加工の加工事例をご紹介します。1.狭ピッチ溝研削加工(コネクタ端子金型の入れ子)引用元:株式会社ナガセインテグレックスピッチ精度:0.8μm2.超硬材料の微細溝研削加工引用元:株式会社ナガセインテグレックス超硬材料へ50µmピッチの微細溝を研削加工。3.タイバーカットパンチ研削加工(超硬材料)引用元:株式会社ナガセインテグレックスピッチ精度:1.1μmレーザー微細加工に強い工場3選!【箔形状等の薄い形状の加工なら】株式会社リプス・ワークス引用元:株式会社リプス・ワークス①会社概要本社:東京都大田区東糀谷6-4-17 OTAテクノCORE409TEL:03-3745-0330FAX:03-3745-0331設立:2009年5月加工:焼結・熱処理、メッキ加工、表面処理加工などの各種金属加工、試作品開発加工、各種切削 など 素材:ステンレス、アルミ、鉄、合金、樹脂 などHP:https://lps-works.com/②会社の紹介株式会社リプス・ワークスは、都内大田区に拠点を構え、試作品の開発加工や切削などの金属製品加工を行っています。③メリット・デメリット超短パルスレーザー加工機によるレーザー微細加工では、従来からの円柱や半球形状に加え、複雑な形状のエンボス加工を多く受注しています。エンボス加工の範囲や深さなども任意に調節できます。ただ、納期の短縮は可能かどうかは、受注量などの条件によっても異なりますので、事前に相談してみましょう。④製品紹介株式会社リプス・ワークスの製品例は次のとおりです。SUS304への複合エンボス加工モリブデン(Mo)への高アスペクト微細ストレート穴加工タングステン(W)へのストレート穴あけ加工【金属、ガラス、樹脂等様々な素材に対応】株式会社ナノプロセス引用元:株式会社ナノプロセス①会社概要本社:静岡県浜松市西区大久保町1349TEL:053-482-1800FAX:053-485-1512設立:2007年4月加工:レーザー加工、試作、装置開発 など 素材:アルミ、タングステン、モリブデン、チタンなど金属全般、セラミック、シリコン、各種ガラス などHP:https://www.nanoprocess.jp/②会社の紹介株式会社ナノプロセスは、浜松市にあるレーザー加工や試作品の製作、装置の開発を行っている企業です。③メリット・デメリットレーザーを使った微細加工に特化し、穴加工や溝・切断加工、マーキングや多段加工など多種の加工に対応しています。マイクロメートルレベルでの深穴や深溝、貫通加工が可能で、従来の機械加工では取り扱いが難しいタングステンやチタン、モリブデンといった脆性材料の加工も受注しています。早期納品ができるかどうかは事前に確認するようにしてください。④製品紹介株式会社ナノプロセスの製品例は次のとおりです。アルミナ穴加工窒化アルミ加工面(SEM画像)アルミナ異形加工【レーザー微細穴あけ加工なら】東成イービー東北株式会社引用元:東成イービー東北株式会社①会社概要本社:福島県郡山市待池台1‐26TEL:024-963-2411FAX:024-963-0455設立:1987年11月2日加工:電子ビーム溶接加工、各種レーザ加工、レーザクリーニング など 素材:ステンレス、アルミ、銅 などHP:https://www.ebtohoku.co.jp/index.html②会社の紹介東成イービー東北株式会社は福島県郡山市に本社があり、レーザーを使用した加工やクリーニング、電子ビーム溶接加工を受注する企業です。③メリット・デメリット超短パルスレーザーによる微細加工では、幅広い材質に加工が可能です。ステンレスやアルミ、銅などの金属だけでなく、シリコンやタングステンといった素材にも数十μm単位で加工を施せます。ただ、遠方からの依頼を受けられるかどうかは、事前に問い合わせた方が無難でしょう。④製品紹介東成イービー東北株式会社の製品例は次のとおりです。タングステンWへの微細穴あけ加工(穴径 φ0.030mm・φ0.050mm)シリコンSiへの微細穴あけ加工ステンレスSUS304への微細穴あけ加工レーザーでの微細加工の一括見積もりを依頼するなら【Mitsuri】レーザーでの微細加工について、得意とするメーカーを含めてご紹介してきました。幅広い材料に緻密な加工ができる微細加工は、現時点では特殊な加工方法であり企業や製作所によって受注可能な素材や製品、生産数などに違いがあります。また、実績がある加工方法や分野なども異なるため、事前に依頼できるかどうか確認することをおすすめします。レーザーでの微細加工を依頼するメーカーをお探しの際には、一度Mitsuriにご相談ください。提携している日本全国250社以上の企業から、お客様の要望に合った最適なメーカーを紹介いたいます。また、Mitsuriでのお見積りは複数の企業から一度にもらうことが可能です。まずは一度お気軽にお問い合わせください。
アルミニウムは、合金の種類にもよりますが、比較的軟らかい金属です。そのため、軽くて加工しやすいなどの利点を持ちながらも、強度を必要とする機械部品などには使いづらいといった問題がありました。その点、アルマイト処理は、アルミニウムの硬度や耐食性などを向上させる効果があり、またその効果もある程度制御することができます。それにより、アルミニウムの用途は、機械部品などにも拡大しています。今回の記事では、アルマイト処理の内容やメッキとの違いについて説明します。続いて、その工程、アルマイト処理が可能なアルミ合金の種類、アルマイト処理を行うメリットについても詳しく解説していきます。カラーアルマイト処理や硬質アルマイト処理についても触れていますので、ぜひ参考にしてください。アルマイト・アルマイト処理とは引用元:Wikipediaアルマイト処理は、防サビや絶縁性の付与、強度向上などを目的として、アルミ表面に酸化皮膜を人工的に形成させる表面処理法です。アルミニウムは、空気中で酸化して自然と表面に酸化皮膜を形成。その酸化皮膜によってある程度の強度と耐食性を持つようになります。しかし、自然と形成される酸化皮膜は数ナノメートルと薄く、傷や腐食などがアルミ素地に達してしまうことも多いため、強度や耐食性を必要とする場合にはアルマイト処理が施されます。アルマイト処理の過程で美観をある程度制御できることもあり、アルミ製のやかんや鍋等の日用品、電車や航空機の内装品、建材などに広く適用される表面処理法です。また、アルマイトの膜厚は通常10マイクロメートル程度ですが、より膜厚を増した硬質アルマイトは厚さ50マイクロメートルにも達し、その硬度は鉄鋼を超える400HV以上にもなります。そのため、アルマイト処理を施したアルミ製品は、耐摩耗性を必要とする自動車部品や航空機関連部品、シャフトやロールなどの機械部品などにも広く用いられています。参考記事アルミニウムの基本的な情報については、以下の記事に詳細がありますのでご参照ください。⇒【アルミの基礎】アルミの加工上の特性やメリット/デメリットまで徹底解説!アルマイトとメッキの違い引用元:株式会社ミヤキなお、アルマイトは、メッキとは全く異なる表面処理なので注意が必要です。アルマイト処理では、アルミニウムを電気分解の陽極として通電し、アルミニウムを溶解させながら酸化させて酸化皮膜を形成させます。このとき、酸化皮膜は、アルミ表面の外部方向へ成長すると同時に、内部方向にも浸透していきます。(上図参照)また、製品の素材そのものが電気分解によって溶解するので、重量や寸法が厳格に定められた製品には向いていません。その一方、メッキは、耐食性や強度を上げる、外観を変える、多様な機能を付与するなどの目的で行われる表面処理です。酸化皮膜を除去してアルミニウムの素地を露出させ、素材とは別の金属をコーティングする方法です。つまり、メッキでは、酸化皮膜を全て剥がしてしまいますし、メッキ後には酸化皮膜は残りません。また、アルマイトとメッキにおいて電気分解を行う点は共通していますが、メッキでは電気分解の陽極ではなく陰極にメッキされる金属を使用。電解液中の金属イオンを被メッキ金属へ乗せるように還元析出させます。つまり、アルマイト処理は電気分解の酸化を利用して膜を形成していますが、メッキは逆に電気分解の還元を利用して膜を形成しているのです。参考記事アルミニウムのメッキについて、以下の記事で解説していますので、ぜひ参考にしてください。⇒アルミニウムのメッキについて解説!実際の工程やメリットについてもご紹介!アルマイトの処理工程引用元:YKK AP株式会社それでは、アルマイトはどのような処理工程によって施されるのでしょうか。アルマイトの処理工程は、通常以下の手順で行われます。ただし、工程の間には、水洗や湯洗などの処理が入ります。また、工場によっては、品質向上などのため、追加の工程が入ることがあります。アルマイトの処理工程1.枠吊り2.脱脂3.エッチング4.スマット除去5.陽極酸化6.電解着色7.水洗い後、枠外し1.枠吊り引用元:株式会社興和工業所アルマイト処理は、通常自動化されており、治具(処理物を支持または通電するために用いる支持具)にたて吊りにしたアルミニウム部品を各工程の処理を施す浴槽に順番に沈めていくことで実施します。そのアルミニウム部品を治具に吊る工程がこの枠吊りです。2.脱脂脱脂処理は、アルミニウム部品の成形に伴って付着した油分等を取り除く工程です。施される酸化皮膜の密着不良を防止するために行われます。一般的な金属は通常、アルカリ性の溶液に浸漬することで脱脂を行います。しかし、アルミニウムは、両性金属で酸性にもアルカリ性にも溶けてしまうため、弱アルカリ性や中性の溶液が主に採用されます。場合によっては、液中に泡を発生させて撹拌する超音波清浄機などを併用することがあります。3.エッチング引用元:株式会社小池テクノエッチング処理は、アルミ表面の自然に形成された酸化皮膜や脱脂で取り切れなかった油分などを除去する工程です。苛性ソーダなどの水酸化ナトリウムを含んだアルカリ性溶液にアルミニウムを浸漬。酸化皮膜を溶解させると同時に油分などを除去します。4.スマット除去スマット除去処理は、アルミ表面に露わとなった不純物や合金成分を除去する工程です。アルミニウム合金には銅やケイ素などの不純物や合金成分が含まれていますが、これらの成分の中にはエッチング処理で溶解しないものが存在します。そのため、エッチング処理の後には、このような成分が微粉末として表面に露わになります。この「スマット」と呼ばれる微粉末を取り除く工程がスマット除去工程です。ケイ素などの除去にはフッ素を含んだ酸性溶液が、銅合金の除去には硝酸を含んだ酸性の溶液が用いられます。5.陽極酸化引用元:株式会社ミヤキ陽極酸化処理は、アルミニウムを電気分解の陽極として通電し、表面に酸化皮膜を形成させる工程です。電解液には、硫酸やシュウ酸などの酸性溶液が用いられます。この工程においては、上図のように、まず平面的なバリアー皮膜が成長します。その後、表面に凹部が形成されると、硫酸イオンが凹部に入り込んで硫酸アルミを形成。さらに、その硫酸アルミが溶出して表面に無数の穴が空きます。この穴の成長は、皮膜が厚みを増していくと同時に進行していき、最終的には穴が規則正しく伸びた構造となります。結果として形成される皮膜の厚さは、電解時間に比例します。6.電解着色引用元:三協立山株式会社再び陽極酸化処理を行い、酸化皮膜表面に形成された穴の底に塗料やアルミ以外の金属粒子を電着させる工程です。染料を電着するカラーアルマイト処理については後述します。金属粒子を電着させる交流電解着色では、スズやニッケルなどを含む金属塩水溶液中へ交流電流を加えることで再度電解処理を施します。それによって穴に金属粒子が入り込み、酸化皮膜を補強すると共に防サビ性能が向上します。さらに着色も行うことが可能です。例えば、スズやニッケルでは、黄色やブロンズ、黒色、またそれらの中間色を着けることができます。なお、色調は、電解液の成分や濃度、浸漬時間などによって変化させることが可能です。交流電解着色を施したアルマイトは、日光に対する堅牢性が高く、紫外線などで変退色しにくいという特徴を持ちます。そのため、アルミサッシなどの屋外で用いられるアルミ製品に頻繁に採用されます。7.水洗い後、枠外し以上でアルマイト処理は完了です。製品を水洗するなどした後に枠から外します。なお、電解着色を行わない場合や塗料で電解着色する場合(後述)には、十分な耐食性を確保するため、アルマイトの穴を封じる封孔処理を行います。引用元:三協立山株式会社封孔処理には、酢酸ニッケルや酢酸コバルトなどの金属塩で穴を塞ぐ方法(上図)や、高温加圧水蒸気を当てたり沸騰水中で煮沸したりすることで穴を狭める方法(下図)などがあります。引用元:株式会社三恵工業所アルマイト処理が行える金属引用元:NCネットワークそれでは、どのアルミ合金に対してもアルマイト処理は行うことができるのでしょうか。まず、アルミ合金には、一般的な金属加工で用いられる展伸用と、鋳物やダイキャストで成形する鋳造用がありますが、鋳造用合金はアルマイトに向かないとされています。それは、鋳造用合金では不純物が多く、アルマイト層がうまく生成されないことが理由です。一方、展伸用合金は、番手によって1000番から8000番までに分けることができますが、ジュラルミンなどがある2000番手はアルマイト処理が困難な合金として知られています。それは、2000番手では、導電性が高い銅の含有率が大きく、電流密度にムラが生じやすいことから、アルマイト層の厚さがバラツキ易いためです。しかし、業者の保有設備によっては可能であるため、どの番手のアルミニウム合金をアルマイト処理できるかは業者によってまちまちです。参考記事アルミ合金の番手については、以下の記事で詳細を解説していますので、ご参照ください。⇒アルミ合金の種類や特徴、用途について詳しく解説【専門家が語る】適切なアルミ番がわかります!アルマイト処理を行うメリット引用元:日本伸管株式会社アルマイト処理を施すと、以下のような様々な効果をアルミニウムに与えることができます。腐食しにくくなるアルミニウムは、空気中でも容易に酸化して表面に酸化皮膜を形成します。しかし、アルミニウムそのものはアルカリや酸などにも反応しやすく、傷などから変色や腐食を起こすことがあります。従って、アルマイト処理を施し、分厚い酸化皮膜を形成しておくことで、傷などもアルミニウムの素地まで到達しにくくなり、結果として腐食に強くなります。絶縁性が向上するアルミニウムは導電性が高い金属ですが、アルマイト膜を構成する酸化アルミニウムは絶縁性で電流を通しません。硬度が向上するアルマイト処理を施すことで硬度や耐摩耗性が向上します。硬さがHv20~150であるアルミニウムは、アルマイト処理を施すことでHv200~600まで硬さが向上します。美観をコントロールできるアルマイト処理では、そのときに形成される微細な穴に金属を電着させたり染料を吸着させたりすることで多様な色を着けることができます。遮熱性があるアルマイト膜の熱伝導率は、アルミニウムと比べると約3分の1なので、遮熱性を持ちます。放熱性があるアルマイト膜は、遠赤外線などの放射性が高いという特性を持っているため、ヒートシンクなどの放熱性向上に用いられます。アルマイト処理の種類アルマイト処理は、上述した方法のほか、カラーアルマイト処理と硬質アルマイト処理があります。ここでは、これらのアルマイト処理法について説明します。カラーアルマイト処理引用元:東京高圧工業株式会社カラーアルマイト処理は、アルミニウムの陽極酸化処理後、表面に出来た穴に有機塗料を閉じ込めて着色する方法です。金属表面に塗料を焼き付けるのと違い、剥がれにくいという特徴があります。塗料は、アクリル塗料やメラニン塗料などを使用するので、カラーバリエーションが豊富なところも魅力です。ただし、カラーアルマイトは、紫外線や熱などに弱く、様々な影響で変退色します。そのため、建材などには用いられず、モバイル機器の筐体や化粧品容器、インテリア雑貨などに使われています。また、カラーアルマイト処理を行う場合には、以下のような工程で進めます。<カラーアルマイトの処理工程(下図参照)>1〜5.上述したアルマイトの処理工程と同じ。6.着色:有機塗料や溶剤などを溶かした電解液に浸漬して通電する電解着色で製品を着色。染料液中へ単に浸漬することで着色する場合もある。7.封孔処理:染料の流出や汚れの付着を防止するために穴を塞ぐ。(封孔処理については上述)8.水洗い後、枠外し:製品を枠から外す。引用元:株式会社ミヤキ硬質アルマイト処理引用元:日本伸管株式会社一方、硬質アルマイト処理は、陽極酸化処理において、通常のアルマイト膜よりも硬く分厚い酸化皮膜を生成する方法です。電解液に特殊な溶液を用いる、高電圧・高電流で通電する、低温の電解液で時間をかけて処理するなど、メーカー毎に多様な方法で硬く厚い酸化皮膜形成を実現しています。硬質アルマイトは、通常のアルマイトと比較して、硬度(耐摩耗性)や耐食性、絶縁性、耐熱性などに優れているため、シャフトやロールなどの摺動部品、自動車のエンジン部品、航空機関連部品など、様々な用途で用いられています。なお、色や硬度、皮膜の厚さについて、通常のアルマイトと硬質アルマイトを比較すると以下のようになります。比較項目通常のアルマイト硬質アルマイト色着色可グレー(着色原則不可)硬度200HV前後400HV以上皮膜の厚さ5~25μm20~100μmアルマイト処理の見積り依頼ならMitsuriいかがでしたでしょうか。アルミ表面へ人工的に酸化皮膜を形成させるアルマイト処理は、製品に耐食性や絶縁性を付与するだけでなく、強度と美観も向上させることができます。また、カラーアルマイトはアルミ製品のカラーバリエーションを多様化させ、硬質アルマイトは高い硬度が必要な機械部品までにもその用途を拡大させています。難アルマイト素材と言われていた超ジュラルミンやダイキャストのアルマイト処理も、メーカーによりますが、現在では問題なく行えるようになっています。Mitsuriは、アルマイト処理の高度な技術を保有する全国各地のメーカー様とお付き合いがあります。現在、協力企業は250社以上ございます。そのため、お客様に最適な表面処理方法をご提示することが可能です。お見積りは複数社から可能です!アルマイト処理のお見積りでお困りの際は、ぜひMitsuriにお申し付け下さい!
自社工場で、通常製造している工程の他にも、新規技術や新製品のトライアル製造を新たに試してみたいと思うこと、ありますよね。そこで鉄パイプのカットをしたいけれど、自社工場でできない場合、「どこに頼めばいいかわからない……」「いつもの取引先のメーカーに断られてしまって、依頼先に困っている……」といったお悩みを抱えている方も、いらっしゃるのではないでしょうか。自社製品が求める精度までカットしてくれる業者はいるのか、もっと良い業者があるのではないかなど、業者選びに迷っている方も多いかもしれません。今回は、鉄パイプカット後のバリ取りについてもご紹介しますので、ぜひメーカー選びの参考にしてみてください。鉄パイプのカット方法について鉄パイプを綺麗にカットする方法は2種類あり、「パイプカッター」と「レーザー加工機」が挙げられます。小さめサイズのパイプを容易にカットするなら「パイプカッター」、大きめサイズのパイプやパイプカッターではできない複雑なカットが必要な場合は「レーザー加工機」が使われます。さらにレーザー加工機の中でも「3Dレーザー加工機」は、より複雑な加工形状に対応していて、3次元的なカットが実現できます。では、詳しくパイプカッターと3Dレーザー加工機についてご説明していきます。パイプカッター鉄パイプをカットする方法のひとつに、パイプカッターを使用する方法があります。パイプカッターには、市販の電動パイプカッターから工場などで使われる本格的な電動パイプカッターまであります。パイプカッターは、円形のパイプをパイプカッターで押さえながら、回転させ切断します。そのため、高速切断機のように火花や切りくずが出ることがなく、切断面も滑らかに美しくカットできます。パイプのサイズは限定されますが、少し長さを調整したい時に、パイプカッターさえあればどこでもカットできるのが魅力です。狭い場所や高所でも手軽に切断できますので、安心して利用することができます。動画では、厚さ1.5mmのφ30のステンレス菅が、約30秒でカットされています。手軽にパイプをカットするなら、「電動パイプカッター」が一番でしょう。手動のパイプカッターもありますが、こちらは比較的小さなサイズのパイプカットにおすすめです。引用元:MISUMI-VONAたとえばこちらのパイプカッターは、切断能力(パイプ直径)が、3~22mm。パイプをしっかりと固定し、ローラーとカッター刃でカットするパイプを軽く加え、切り込みを入れます。パイプカッターをパイプを中心に回転させることで徐々に切り込みを入れて切断していく使用方法です。コンパクトサイズのパイプカッターなので、持ち運びにも便利です。切断したいパイプのサイズや大きさによって、電動または手動のパイプカッターを選びます。3Dレーザー加工機鉄パイプをカットする方法のひとつとして、「3Dレーザー加工機」があります。3Dレーザー加工機の特徴は、通常のレーザー加工機がX-Yの2軸で加工するに対し、3Dの名の通り「X-Y-Z軸」の3軸を設定し、3次元的な複雑な加工ができることです。鉄パイプをカットする際、ワークもレーザーヘッドも3次元的に動かすことが可能です。そのため、パイプをチャックしたまま回転・カットし、滑らかな仕上がりになります。もともと、通常のレーザー加工機のメリットは下記の3つです。1. 仕上がりが精密で、それ以上加工せずそのまま使用できる場合が多いこと2. 図面があり、ソフトにプログラムを入力すればイメージ通りのカットがすぐにできること3.プレス加工と比較し、金型製作費用や労力・工賃がかからないので、一本からローコストで製作できることこれがさらに3Dになったことで、角パイプはじめ複雑な形状のパイプのカットも可能になりました。3Dレーザー加工機は非常に精度の高いカットが実現できます。通常の一般的な加工方法で同様の加工をしようとした場合、材料をひとつの部品にするまで、何度も切断したり孔あけしたりする必要があります。加工形状が複雑なほど、工数やそれにかかる機械や材料も膨大なものになります。しかし、これを3Dレーザー加工機でカット・加工する場合、わずか数秒で1つの部品が出来上がることもあります。このように工数・材料の無駄を省き、精度の高い製品が出来上がります。また、部品によっては、通常の加工方法では小ロット短納期は不可なものもありますが、3Dレーザー加工機では、小ロット・短納期が比較的簡単にできるため、非常に重宝される機械です。鉄パイプのカットの製品事例ここからは、鉄パイプのカットの製品事例を紹介していきます。ここで紹介する製品は、全て3Dレーザー加工機を用いてカットしたものになります。パイプカッターは持ち運びができるぶん、長さの調節をするような切り方のみとなりますが、3Dレーザー加工機なら、プログラムを入力することで、さまざまな形状にカットすることが可能です。引用元:小谷鋼管上の画像は丸パイプの側面に切り欠きを入れた加工になります。用途としては切り欠き部に別の丸パイプを溶接するためにカットしています。引用元:小谷鋼管こちらは角パイプと丸パイプの加工品を組み合わせたものです。角パイプはアール状に切り欠きを入れる+突起もある程度残す形でカットしています。それに加えて丸パイプは、角パイプの突起と形状が合うように穴が開けられています。このように加工の精度が高ければ、治具が無くても部材同士の位置決めが可能です。引用元:小谷鋼管上図は角パイプをカットと曲げを駆使して制作されたものになります。角の部分は、角パイプをVの字型にカットすることで、上図のようなコの字の曲げも可能です。そのほかにも、さまざまな部材を取り付けるために側面も複雑な形状でカットされています。通常上図のようなコの字の形状にする場合は、パイプを45度にカットして溶接する必要があります。しかし3Dレーザー加工機を用いれば、パイプ1本に対して切り欠きの加工をするだけで上図のような形状にすることが可能です。引用元:サンコウ鋼業株式会社角パイプを、上図一番右の黒いライン上をカットすれば、アールがかかった曲げ形状にすることもできます。ひとつ前の写真では「カド」の立った曲げ形状でしたが、切り欠きの形状を変えることで、曲げたあとの形も変化させることが可能です。パイプの穴あけ加工後のバリ取りについて製造工程にて、パイプの穴あけ加工をすると、穴の加工面にバリが発生することがあります。バリとは、加工の際に、削り残しができる現象です。パイプを加工する現場では、切っても切れない現象かもしれません。では、できてしまったバリを除去するには、どうすればよいでしょうか。実際に発生してしまったら、面取り用エンドミルを使用して除去するのが良いでしょう。エンドミルによって面取りできる角度が違い、さまざまな形状があります。以下、おすすめのエンドミルを3つご紹介します。①TSコート超硬面取り用エンドミル引用元:MISUMI-VONAこのエンドミルは、面取り角度30°・45°・60°に対応しています。先端角度60°・90°・120°のラインナップがあり、穴の側面にそってバリを除去することができます。②アルミ加工用超硬面取り用エンドミル引用元:MISUMI-VONAこのエンドミルは、面取り角度45°に対応しており、アルミ特有の構成刃先を防ぎ、バリを除去します。③超硬裏座ぐり用ミニチャンファーこちらのエンドミルは、スパイラルの刃が特徴で、ドリル穴の裏面やパイプ側面のバリ取りなども可能です。すべての材質に適合するブルーコーティング仕様で、スパイラル刃によって滑らかに仕上がります。鉄パイプのカットならMitsuri!切削加工にバリはつきものですが、ロット数が大きければ大きいほど、全てを手作業でやることは機会損失や工数増加につながります。そのため、バリ取りや再研磨は外注する工場も少なくないでしょう。鉄パイプのカット・バリ取りを発注できる工場をお探しの場合は、ぜひMitsuriまでご相談ください。
皆さんは旋削加工(せんさくかこう)についてご存知でしょうか?あまり聞きなれない加工方法だという方もいらっしゃるかと思います。しかし、これはメジャーな金属の加工方法のひとつで、旋削加工と一言で言っても、紐解いてみると、加工技術や使用機械も様々です。「旋削加工ってどんな加工方法なの?」「どういった加工工程があるの?」今回はそんな疑問のお持ちの方向けに、旋削加工について実際の加工事例も併せてご紹介します。これから旋削加工の依頼を頼もうと考えている方も、是非ご一読下さい。旋削加工とは旋削加工は、回転している材料に工具を当てて移動させることで、希望の形や長さに加工する方法です。主に、丸い部品を成形するのに使用されます。身近なものであれば、ボルトやシャフト、ニップルなどが旋削加工で作られる製品として挙げられます。引用元:株式会社東洋アソシエイツ明治9年 伊藤嘉平治による足踏み式旋盤この加工方法の歴史は非常に古く、明治時代には旋削加工を用いて工作物の加工を行っていました。一方、似ている言葉で切削加工(せっさくかこう)という加工方法があります。切削加工は、材料を切ったり削ったりする加工方法です。その一種に「旋削加工」が挙げられます。また、旋削加工に使用する機械を旋盤といいます。これは一般的な工作機械のひとつであり、対象とする部品に対応して様々な旋盤が製造されています。参考切削加工の種類【専門家が解説】フライス加工、旋盤加工について詳細をお伝えします!旋削加工の加工時間の計算方法旋削加工の加工時間を求めるには、切削の長さと送り量、主軸回転数の値が必要です。まず、主軸が1回転する間の刃物の移動量を表す「送り量」は、以下の式で求められます。①送り量の求め方送り量(mm/rev) = 1分あたりの切削長さ(mm/min) ÷ 主軸速度(min-1)たとえば主軸回転数が500min-1で、1分間の切削長さが100mm/minの場合、以下のようになります。100 ÷ 500 = 0.2(mm/rev)送り量が分かったら、まずは1分間の切削長さを求めます。②1分間の切削長さの求め方1分間の切削長さ(mm/min) = 送り量(mm/rev) x 主軸回転数(min-1)たとえば、長さ100mmの素材を主軸回転数1000min-1・送り量0.2mm/revで削ると、1分間の切削長さは200mm/minになります。(式:0.2 x 1000)最後に、算出した1分間の旋削長さを以下の式に代入すると切削時間が計算できます。③切削時間の長さ切削時間(min) = 加工物の長さ(mm) ÷ 1分間の切削長さ(mm/min)長さ100mmの素材を主軸回転数1000min-1・送り量0.2mm/revで削るとき、100mm ÷ 200mm/min = 0.5minとなります。0.5分なので、切削時間は30秒ということになるでしょう。加工にかかる時間を大まかに把握するのに便利なので、ぜひ覚えておきましょう。旋削 加工の工程旋削加工は以下4つの工程で行われます。旋削加工の工程①バイトの取付②チャック作業③面削り・心立て④切削作業それぞれ詳しくご説明します。①バイトの取付まず、バイトを取り付けます。バイトとは、工作機械に取り付け、工作物を切削する際に用いられる刃物です。バイトを四角刃物台に置き、ボルトを締め固定します。バイト刃先の高さはセンター高さにあわせます。高さを調節するときは、バイトの下に敷金を敷き高さを調節します。②チャック作業続いてチャックで工作物を固定します。チャックとは旋盤の工具や工作物を固定させる時に用いられる装置で、周囲を締め付けて固定させることが特徴です。チャックで固定する際は、削る部分だけを外に出してハンドルを取り付けます。③面削り・心立て面削りでは、工作物の端面を削り平らにし長さを決めます。次に心立てです。心立てとは、工作物の中心にドリルを用いて穴をあける作業のことです。心押台にドリルチャックを取り付け工作物の近くに心押台を固定し、心立てをします。④切削作業いよいよ切削作業に入ります。工作する部品に合わせて切削を行います。切削をする際には、「切削条件」と呼ばれる、切削速度、切り込み量、送り量に気を付け、効率的な切削条件を選定することが重要になります。●切削速度切削速度とは、バイトで素材を削る周速度のことを指します。切削速度が大きいほど加工面はきれいに仕上がり、短時間で切削することができます。反対に切削速度を小さくすると加工面は粗くなり、切削時間も長くなります。そのため切削速度はなるべく大きくした方が加工面の粗さと加工効率は良くなります。しかし、工具の寿命は早くなるため最適な切削速度を見つけることが大切です。●切り込み量切り込み量とは、旋盤で加工する際に刃物が素材に当たる面積をmmの単位で表したものです。切り込み量が大きければ大きいほど加工時間は短くなりますが、刃物が高温になり加工面は粗くなります。また、工具の切れ刃に焼け跡がつくこともあるため、工具の寿命にも影響してきます。工具の素材や加工物の材質にもよるため、まずは少なめの切り込み量から徐々に増やしていき、最適な切り込み量を選定することが重要です。●送り量送り量とは、主軸が1回転する間にどれだけ刃物が移動したかを表す距離のことです。「送り」には自動送りと手動送りがあります。自動送りは、一定の速度で送ることができるため外丸削りやテーパー削りをする場合に使用されます。一方、手動送りは、削るにつれて直径サイズが変わっていくため端面削りをする場合に使用されます。旋削加工の事例引用元:株式会社原田鉄工所引用元:株式会社タムラ引用元:株式会社木山製作所まとめ 旋削 加工ならMitsuri!1コ〜お受けいたします!今回は旋削加工についてご紹介しました。旋削加工は金属加工メーカーによって仕上げや価格が違うこともあるため、依頼する際は十分に調べてから依頼することをおすすめします。また、旋削加工の依頼ができないメーカーもあるため注意が必要です。また、旋削加工についてお悩みの時は、ぜひMitsuriにご相談下さい。日本全国の170社以上の協力会社からお見積りいただけます。ぜひご利用ください。
チタンは丈夫で加工のしやすい金属として、長い間各産業で大活躍している素材です。その使用用途はとても広く、いつも私たちが使っているような自動車や自動二輪車のエンジン部分にも使われています。 丈夫で加工しやすいという特性があるため、頑丈かつ精密さが求められる宇宙産業でも大活躍中です。 今でこそポピュラーな加工金属となったチタンですが、それ故にその種類や特性も様々で、特性を鑑みずに適当に発注してしまうと、依頼先に断られたりしてしまうこともしばしば。 そうならないよう、この記事ではチタン合金と種類や特徴について、詳しくご紹介していきます。 チタン合金とは チタン合金とは、その名の通り、チタンを主成分とした合金のことです。チタンの持つ長所をさらに伸ばしたり、逆に短所を補うため、他の金属と混ぜ合わせて作成します。 混ぜ合わせる他の金属の例として、アルミニウム、バナジウム、パラジウム、モリブデン、クローム、ニオブがあげられます。 チタンの特性には「軽い・強い・錆びにくい」という3大要素があります。チタン合金には後述する様々な型があり、その特徴も様々ですが、この3大要素は絶対です。 軽量という点に関して、比重(水を1とした時の物質の相対的重さのこと)の観点から比べてみましょう。普通鋼が7.9、銅が8.9という重さなのに対し、チタンは4.5。アルミニウムの2.7には劣りますが、普通鋼や銅では加工しにくい形状でもチタンなら可能で、アルミニウムでは脆弱性が目立つという部分でもチタンなら対応できるというわけです。 次に強いという点。 チタンより重い普通鋼や銅よりも強度が高いです。その強度はアルミニウムの3倍、鉄の2倍と言われています。 錆びにくいという点について、特に耐塩性についてみていきましょう。 ステンレス鋼や普通鋼は海水など、塩分濃度が高い水に触れてしまうとすぐに錆びついてしまいます。 しかし、チタンはプラチナに匹敵する耐塩性を持ち、加工業で使用される他のどの主要金属素材よりも優れているのです。 チタンの3大特性軽い:比重4.5強い:アルミニウムの3倍、鉄の2倍錆びにくい:主要金属素材の中で耐塩性No.1 3大要素の他にも、優れた点があります。 その一つは「人体に対して無害」であるという特性も。人体に入れても溶けにくく、人工骨の作成にも使われています。 不燃性もチタンを語る上では離せません。 国土交通省から正式に不燃材料であると認定されており、火事にも非常に強い素材です。 チタン合金の種類とその特徴 さて、チタン合金についての基本的な特性を学習したところで、チタン合金の種類について紹介しましょう。 純粋なチタンの金属組織は常温上、六方最密充填構造と呼ばれる構造で成り立っています。この通常の相を「α相」と呼びます。図式で表すと、正六角柱の結晶構造です。 引用元:化学のグルメこの結晶構造は885度という高温で変態。立方体の体心立方格子構造になります。これを「β相」と呼びます。この段階で他の元素をチタンと組み合わせ、合金にすることによって、常温でもチタン合金中にβ相が存在できるようになります。 α相単体だけか、β相単体か、α相とβ相が混在しているかで、①α型合金 ②β型合金 ③α+β型合金に分けられます。ただし、さらに細分化すると、「nearα型合金」や「nearβ型合金」に分けられますが、今回は3つの基本的な種類について紹介します。 ①α型合金 アルミニウムを添加した際にできる合金で、室温強度の上昇がみられます。アルミニウムはチタンに添加した際、α相の領域を拡大させるという特性を持ちます。 高温に対する強度が大きく、クリープ特性にも優れているのに加え、逆に極低温化での破壊強度は他のどの型よりも強靭です。 低温下から高温下まで、安定した強度を持つ一方で、加工性が悪いということが欠点です。この加工性の悪さについても他のどの型よりも劣っています。 ②β型合金常温で100%のβ相を持つチタン合金ですが、チタン合金中最高強度で、尚且つ冷間での延性はα型よりも優れています。 高強度なのに関わらず、加工性に優れている点を鑑み、様々な用途での使用が可能です。 しかし、一方で熱処理によってβ相を作っているため、高温には弱く、その強度を維持することができません。ヤング率が低いことも欠点の一つです。 ③α+β型合金 その名の通り、常温下でα相もβ相も併せ持っている合金です。バランスよくα型合金とβ型合金の特性を持っており、製造上における調整がしやすく、それ故に扱いやすいチタン合金です。 強度・延性・靱性はそれぞれ良好で、耐熱性にも優れます。 チタン合金の硬度「チタン合金は固い」というイメージがあるかもしれませんが、実は、それほど固い金属ではありません。チタンは、密度当たりの「強度」が高い金属なのです。つまり、チタンは、引張強度を密度で割った値である比強度が高い金属であり、硬度の高い金属ではありません。「比強度」と「硬度」は違うものです。しかし、ある硬度までは、強度と硬度の間に比例関係が成り立つため、強度の高いものほど硬度も高くなっています。硬度がおよそHB500(ブリネル硬さ)ほどを超えてくると比例関係が崩れ、硬度が高くなればなるほど強度は弱くなっていくのです。金属材料の硬度の尺度は種類がいろいろあります。金属硬度は、主にHRC(ロックウェル硬さ)・HV(ビッカース硬さ)・HB(ブリネル硬さ)・HS(ショア硬さ)などで表されます。今回は、比強度と比べるための硬度に、HV(ビッカース硬さ)の単位を例として使うことにします。尚、上述したブリネル硬さとビッカース硬さはほぼ同じ数値として見ることができるので、後述するチタン合金の硬度がHB500を超えない値であることも分かります。HV(ビッカース硬さ)とはビッカース硬度とは、固さを表す尺度の一つで、HVという単位で表します。これは、試験材料にピラミッド型(四角錘)のダイヤモンドを押し込み、窪んでできた正方形の圧痕の面積を数値化したものです。簡単に言うと、圧痕の正方形の面積が大きければ柔らかく、小さければ硬いということになります。チタンの機械的性質と他金属との比較純チタンにはJIS1種・JIS2種・JIS3種・JIS4種などがあり、数字が大きくなるほど硬度が増し、チタンの純度は低くなります。このような純チタンから主なチタン合金に加え、工業的に使用頻度の高い鉄鋼やステンレス・アルミ・マグネシウム合金の機械的性質の中でも、特筆すべきビッカース硬さと比強度について、一般社団法人日本チタン協会と株式会社西村金属のサイトから数値を転記し表を作成しました。それぞれの金属とチタン合金との強度や硬度の違いを比較してみてください。【ビッカース硬さと比強度の表】t:板厚(mm)組成常温における引張性質ビッカース硬さ比強度引張強さ(MPa)伸び(%)純チタン(α)JIS 1種JIS 2種JIS 3種JIS 4種270〜410340〜510480〜620550〜750>=27>=23>=18>=1513016020023060以上75105120α合金Ti-5Al-1 Mo-1V86216310180α-β合金Ti-6 Al-4V98014320200鉄鋼t5(SS400)400~51021≦13051~65ステンレス鋼 (SUS304)520≦40≦18066≦アルミニウム合金 t1(A7075-T6)540≦6≦160193≦参考1:https://nsmr.jp/blog/kokoro/posts/38参考2:http://www.titan-japan.com/technology/physical_properties.html比強度を比較すると、α合金(Ti-5Al-1 Mo-1V)が180N·m/kgに対し、アルミニウム合金t1(A7075-T6)は193N·m/kg以下で、ほとんど大差がありません。しかし、硬度を表すビッカース硬さでは、α合金が310HVに対しアルミニウム合金は160HVしかなく、αチタン合金の方がアルミニウム合金の約2倍の硬度があることがわかります。これらのことがチタン合金が軽さと強度を兼ね備えた良い材料であることを示しているとも言えます。チタン合金はどこで使われるか 前述の通り、チタン合金は軽くて丈夫で加工しやすいという基本的特性があるので、様々な製造場面で活躍してきました。 最もそれが顕著なのが航空産業です。 基本的に航空機は軽くて丈夫な素材が使われると航続距離や速度が向上します。チタン合金は航空機の発展と一緒に開発されてきたと言われるほどです。 軍用機であるF-15戦闘機では機体の25%、F-22戦闘機では40%がチタン合金製です。民間機では軍用機ほどチタン合金の使用拡大は進んでいませんが、それでもターボファンエンジンのファンや圧縮機で使われています。 無害で生体適合性があるということも先ほど紹介しましたが、整形外科用の材料にも利用されています。ただの金属を体に埋め込んでしまうと、有害物質になってしまい、非常に危険ですが、チタン合金の場合はその心配がありません。 また、耐塩性も強いため、最近では船舶の分野で利用拡大が進んでいます。 特に潜水艦分野では既に利用されています。耐塩性の高さに加え、深海の水圧にも負けない強靭度が注目されたのです。 深海潜水調査亭のしんかい6500や旧ソ連の軍用潜水艦はチタン合金に使用が見られます。 まとめ1950年代、軍用のため使われ始め、未だに超有能金属素材として使われ続けているチタン合金。その可能性はまだまだ無限大に広がりそうです。また、地球上に埋蔵している量も多く、まだまだ第一線で活躍してくれることでしょう。そんなチタン合金の良さをさらに引き出してくれる業者に、見積もりと発注をお願いしたいところですよね。
本シリーズでは、溶接加工に関する知識が全くない方でも、読み進めていくことで溶接加工について理解できるようになることを目標にしています。シリーズ第6回目の今回は、自動溶接機を用いる「自動溶接」や、それを発展させた「ロボット溶接」について解説します。溶接の自動化の必要性とは「自動溶接」とは、「操作者が常時操作しなくても連続的に溶接が進行する装置を用いて行う溶接の総称」と、JISに定義されています。もともと溶接は長らく手作業で行われてきたもので、現在も現場では手作業によって多くの溶接が行われています。しかし昨今、ファクトリーオートメーション=FAの考えが浸透するにつれて、製造工程の自動化が推し進められるようになりました。keywordFA…ファクトリーオートメーション 生産工程の自動化を図るシステムの総称FAを導入することによる大きなメリットのひとつが、人件費の削減と安定化です。一時期は海外に生産工場を設ける企業も多かったですが、現在は世界的に人件費が高騰していることもあり、必ずしもコスト削減には繋がらなくなってきました。また、製造業にとって課題であった品質の属人化も、自動化によって手作業によらなくなることで、大部分を解消することができます。溶接の自動化、ひいては製造工程全体の自動化は、工業が次のステージへ移行するために必要なステップなのです。手溶接・半自動溶接・自動溶接の特徴自動溶接やロボット溶接について理解するためには、それ以前の主流であった手溶接や半自動溶接といった各溶接法に関する理解が欠かせません。それぞれが生まれた歴史的な背景も踏まえて、メリットやデメリットなどの特徴を理解しておきましょう。手溶接(被覆アーク溶接)とは引用:日鉄住金テクノロジー株式会社まずは、溶接法の中でも最もポピュラーだった、手溶接についてです。単に手溶接と言った場合、一般に被覆アーク溶接のことを指します。被覆アーク溶接とは、被覆剤(フラックス)を塗布した被覆アーク溶接棒(手溶接棒)を用い、溶接棒と母材に電流を流してアークを発生させて、その熱によって溶接する溶接法のことです。アーク溶接についてはこちら【アーク溶接とは!?】代表的な種類や特徴と「メリット・デメリット」を解説手溶接の歴史溶接という工法全体の歴史は古く、紀元前3000年ごろの史料にはすでにその形跡がありました。しかしその時点では有力者の装飾品などに加工の跡がある程度で、現在のような溶接法が確立され本格的に工業用として取り入れられるようになったのは、20世紀のはじめとかなり最近です。【19世紀 アークの発見・溶接法の開発】その少し前、1800年にアーク自体はイギリスの化学者であり発明家でもあったハンフリー・デービーによって発見されていたのですが、当時はそれを長時間にわたって安定的に扱えるだけの電源がありませんでした。そしてアークの発見からおよそ30年後の1831年に、発電機であるダイナモが開発されます。それからダイナモを利用して、1900年ごろまでにかけて急速に実用的なアーク溶接法が開発されていきました。【20世紀 被覆アーク溶接の浸透】被覆アーク溶接も、そんな中で生まれました。国内で被覆アーク溶接が取り入れられるようになったのは、1914年に三菱長崎造船所がスウェーデンから被覆アーク溶接棒を輸入したことがきっかけです。造船の際、ボイラー部品の溶接などに適用したのが始まりと言われています。それから程なくして、1920年には早くも全溶接船(421総トン)が製造されたほど、被覆アーク溶接は驚くべき速さで浸透していきました。それから溶接は1974年に年間生産量45万トンという生産量のピークを迎え、そのうちの大部分が被覆アーク溶接であったと言われています。その後溶接ロボットなどにより自動溶接化が進展するまで、被覆アーク溶接は溶接法の主流でした。なお現在は、被覆アーク溶接の生産量比率は20%程度まで減少しています。手溶接の特徴ピーク時に比べ極端に生産量の減った手溶接ですが、今後も現場によっては使用され続けることが予想されます。その理由は、手溶接には次のようなメリットがあるからです。手溶接のメリット①設備、装置(溶接棒)が小型で安価なので導入しやすい②被覆剤が溶融して発生するガスやスラグ(※1)が母材を覆うことで、現場環境による影響を受けにくい(=シールド効果を得やすい)③手作業が前提となるため、素材や構造によらず溶接が可能※1 スラグ:溶接の際に発生する、溶融した金属から分離して浮かぶかす。鉱滓、溶滓、のろなどとも呼ぶメリットを見ると分かる通り、手溶接は主にコスト面などで強みを持つ一方で、次のようなデメリットを持っています。手溶接のデメリット①溶着効率が低く、溶接棒の交換やスラグ除去などの手間がかかる②多量のヒューム(※2)が発生する③溶接者の技量によって品質に差が生まれる※2 ヒューム:溶接の際に発生した金属蒸気が凝集して、微細な粒子となったもの。吸入すると、ヒューム熱などの原因となり得る。半自動溶接とは手溶接のデメリットのうち、溶着効率の低さを解決するために生み出されたのが半自動アーク溶接です。手溶接では被覆アーク溶接棒を都度交換しなければいけないのですが、この交換作業を省くために溶接材に長いワイヤーを用いたものが半自動溶接です。かつては溶接と言えば被覆アーク溶接、つまり手溶接のことを指すのが一般的でしたが、現在ではこの半自動アーク溶接のことを指すほど一般的となりました。半自動アーク溶接の種類半自動アーク溶接はガスシールドアーク溶接の一種であり、主な種類としては、CO2溶接(炭酸ガスアーク溶接)、MIG溶接、MAG溶接などが代表的な半自動アーク溶接として挙げられます。なおそれぞれの詳細については、被覆アーク溶接と同じくシリーズ第5回「アーク溶接とは」もご覧ください。半自動溶接の特徴手溶接に代わり主流となった半自動溶接ですが、次のようなメリットとデメリットを持っています。半自動溶接のメリット①溶接材の交換なく長時間の作業が可能で、手溶接に比べ能率が非常に高い②溶接速度が速く、溶接後のフラックスやスパッタ除去作業もほぼ省略できる半自動溶接のデメリット①フラックスの代わりにシールドガスを用いるため、ノンガスワイヤーを使用する場合は別として、基本的に風のない屋内で作業する必要がある②溶接者の技量によって品質に差が生まれる自動溶接とは半自動溶接は、手溶接のデメリットのひとつであった効率の低さを補うことはできましたが、溶接者の技量差によって生まれる品質の違いは防げませんでした。そこで生まれたのが、サブマージアーク溶接を代表とする自動溶接です。自動溶接の種類自動溶接には主に、自動溶接機による「自動溶接」と、ロボットが溶接を行う「ロボット溶接」があります。自動溶接は、溶接を工場のラインなどで連続的に行う溶接法です。それを発展させ、ロボットによってより高度な溶接も自動で行えるようにした溶接法がロボット溶接です。自動溶接では、溶接時の姿勢が下向き・水平・横向きに限られており、また溶接面の形状もほぼ直線に限られていました。そうした制限をクリアしたのが、ロボット溶接です。自動溶接の特徴ロボット溶接も含めた自動溶接の特徴は、一般的に以下の通りです。自動溶接のメリット①スパッタやヒュームの発生が少ない②風の影響をほとんど受けない③仕上がり品質が作業者の技量によらず、品質が均一化できる自動溶接のデメリット①溶接時の姿勢が、下向き、水平、横向きに限られる②溶接面の形状が、直接かそれに近い曲線に限られる③シーケンス制御・機構設計・安全管理など、これまでとは異なる技能が必要となるロボット制御に必要なティーチングとは手溶接や半自動溶接のデメリットを補うために生まれた自動溶接ですが、自動溶接を導入するうえでは、産業用ロボット制御のためのティーチング、というこれまでとは異なった作業が発生します。ティーチングとは、産業用ロボットに一連の動きを教え込む作業のことで、大きく分けて①オンラインティーチング②オフラインティーチングという2種類の方法があります。①オンラインティーチングとはオンラインティーチングとは、ティーチングペンダントと呼ばれるリモコンを使って、ロボットを実際に動かしながら稼働の様子を記録して、その動作をもとに再生、確認するものです。この方法をプレイバック方式と呼ぶことから、オンラインティーチングは、ティーチング・プレイバックとも呼ばれます。手軽かつ確実に実施しやすいことから以前は一般的な手法でしたが、ティーチング実施中は工場のライン自体をストップする必要があることから、その損失が懸念され、採用機会は減少しました。②オフラインティーチングとはオンラインティーチングに代わり導入が増えたのが、オフラインティーチングです。オフラインティーチングでは、オンラインティーチングで問題だった生産ラインの停止を避けるため、ロボットを使わずにティーチングを行えるようにしました。オフラインティーチングは、大きく4種類に分けられます。①テキスト型②シミュレータ型③エミュレータ型④自動ティーチングシステムそれぞれ、3DCADデータを使用してシミュレートしたり、テキストエディタからプログラムを直接打ち込んだりといった作業が発生するため、ティーチングを行う作業者(ティーチングマン)がCADの扱いやプログラミングについてある程度理解している必要があります。その他のティーチング生産ラインを止めないために導入されるようになったオフラインティーチングですが、その多くは特殊な知識や技術が必要になるため、なかなか導入が進められないというケースも少なくありません。特に溶接技術の効率化には、現場での経験によって蓄積した熟練者の知見を取り入れることが不可欠であり、しかしそうした熟練者がオフラインティーチングで求められる技能を備えていることは稀というジレンマがありました。溶接の効率化に向けたジレンマ熟練者の現場の知見を取り入れる必要↕熟練者がオフラインティーチングで必要な技術を備えていることは稀そこで生まれたのが、ダイレクトティーチングです。ダイレクトティーチングは直接教示法とも呼ばれる方法で、ティーチングマンが直接ロボットを動かし、ロボットに動作を教えます。ロボットの先端部分を直接操作し、その操作経緯をコントローラーに記憶させることで、より直感的なティーチングを行うことが可能です。これにより、ロボットそのものに対する理解を深めずとも、それまで蓄えた知見をダイレクトにロボットに伝えることができるようになりました。さらに近年では、AIを搭載することによるティーチングレスも同じく導入が進んでいます。例えばダイレクトティーチングで入力したプログラムに不備があった場合や、生産ライン側の動作がもともとの想定と異なっていた場合などに、細かい調整が必ず発生します。その際、AIが自身で蓄積したデータから自己判断することで、都度発生する細かいティーチングのコストを抑えることができるのです。ティーチングレスが実現すれば、ティーチングマンの育成コストも抑えることができます。まとめ「ゼロからわかる!溶接加工!」シリーズ第6回は、溶接の自動化について、誕生の経緯や現状まで解説しましたがいかがでしたでしょうか。溶接の自動化・ロボット化を推し進めるうえでは、ティーチングマンの育成が欠かせません。ぜひロボットの導入検討と合わせて、新たにどういった人材が必要になるのか、またそもそもどういった作業を効率化したいのかも把握しておくと良いでしょう。
身の回りのもので『ばね』が使われている製品と言えば、皆さん何を思い浮かべるでしょうか。パッと思いつきそうなもので自転車やボールペンなどがありますね。ですがこうして改めて思い返してみると、世の中にありふれているように思えて、実は日常的にばねを見かけることは案外少ないかもしれません。今回の記事ではそんな私たちがよく知るばねについて、製造業ではどんな特徴や役割があるのかを種類別に解説していきたいと思います。ばねというのは実は意外な形をしている種類もあり、私たちの日常に割と多く溶け込んでいたりするんですよ。ばねの種類ばねの形状と言えば、弾力性のあるぐるぐると巻かれたコイル状のものを皆さん思い浮かべるかと思います。ばねの力を利用しているのが分かりやすい日用品・玩具として、ボールペンやホッピングなどがありますね。レインボースプリングなんかは正しくばねそのものと言う感じで、懐かしく思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。ですが製造業におけるばねとは、あくまでネジやギアのような部品の一つのことを指します。その中には、フックがついていたり腕が生えているようなものから、おそよばねとは呼べなさそうな見た目のものまでいろいろな種類があります。コイルばねコイルばねとは、その名の通りぐるぐると巻かれた一般的な見た目のばねです。ばねにもいろいろな種類がありますが、このコイルばねがばねの部品の中で最もよく使われている種類ですね。押し込んだり戻したりする反発力があり、主に衝撃や振動を抑えるクッションとしての役割を持っています。材料はSUS304-WPBというステンレス線がよく使われており、ニッケルでメッキを施すことにより錆びにくく金属間での摩擦に強いばねが成形できます。一昔前ではSWP-Aというピアノ線で作られていることが多くかったのですが、錆びにくいステンレス素材のばねが現在のコイルばねの主流となっています。コイルばねは大別して圧縮コイルばね、引張コイルばね、ねじりコイルばねの3つの分類があり、取り付ける場所や用途によって使い分けられます。引用元:Tech Note画像を見ると、違いと言えばフックがあるかないかぐらいに思えますが、用途はきちんとそれぞれ違います。圧縮コイルばねは上から押されてから反発する力を利用しており、引張コイルばねは引っ張って戻る力を利用しています。ベッドに飛び乗ってボヨンボヨンと跳ねることができるのは、圧縮コイルばねの反発力があるからですね。より詳しい説明は後の項目にありますので、今は3つの種類があるということだけ紹介しておきます。板ばね板ばねとはパッと見、ばねとは思えないような形状をしている平らなばねです。板ばねには大きく分けて薄板ばねと重ね板ばねの2種類のばねがあり、細かく分類した場合、その種類の多さはなんとコイルばね以上に多くあります。材料は1970~80年代こそ銅が主流でしたが、現在では板ばねもステンレス素材が主となって使われています。板ばねは形状を見る限りでは、ばねというより留め金という方が近い形をしているかもしれませんね。板ばねはコイルばねよりも複雑な形状にすることができ、少量生産、オーダーメイドの対応にも向いています。主な用途としては、電気のスイッチの切り替え部分やサスペンションと呼ばれる車や電車などの振動を和らげるクッションのような使い方をします。皿ばね皿ばねは円盤状の金属にドーナツ状の穴が開いているばねです。これもばねというよりは留め金と言う感じで、ネジやボルトの緩みを止めたり、軸受回りのガタ防止に使われます。皿ばねの材料もコイルばねや板ばねと同じくステンレスや銅です。その薄い形状から小さい取り付けスペースで有効に力を発揮でき、コイルばねや板ばねでは組み込めない狭い箇所で重宝されます。また、皿ばねは何枚も重ね合わせて使うことで、緩み止めとしての効力を増加できます。ネジはしっかり締めたつもりでも、緩み止めがないと月日が過ぎれば次第に緩んできてしまいますよね。そうならないようにネジの緩み防止に皿ばねが使われますが、その際一枚では足りないことがあるため、二枚三枚と重ねることで緩み止めの力を強化できるのです。皿ばねを重ねるときに同じ向きに重ねることを並列重ねといい、反対に重ねることを直列組合せといいます。並列重ねをすると緩み止めが強化され、直列組合せをするとたわみが増します。たわみというのは金属を意図的に曲げた時に起こる歪みのことです。たわみを付ける意味は自転車のチェーンで例えると分かりやすくなります。チェーンがたゆんたゆんになっていると、走っている最中少しの振動でチェーンが外れやすくなってしまいますよね。逆にきつく張りすぎてしまうと今度はペダルが重くなって走りにくくなってしまいます。つまり、たわみは適度にある方がいいんですね。そのため、金属を曲げたい時は皿ばねを直列に重ねていくことでたわみをつけていくのです。枚数を増やせばその分たわみが増えていくので、必要に応じて複数重ねて調節することが可能です。トーションバートーションバーとは細長い棒の形をした蛍光灯のようなばねです。もちろん金属でできているため蛍光灯というほど割れやすくはありません。他のばねよりもずいぶん大きく、本当にばねなのか疑わしいのですが、言葉だけでは伝わりにくいため百聞は一見にしかずということでとりあえず画像を。引用元:DRESS UP NAVI タイヤ館やはり画像で見ただけではただの棒にしか見えませんが、これもばねの一種なんですね。トーションバーと聞くと何に使うかを想像しがたい名前ですが、日本語に直すと『ねじり棒ばね』という名称になり、形状も役割も名前そのままということが分かります。用途は主に車や戦車のサスペンションに使われ、カーブで曲がる時に安定感を出し、乗り心地を良くしてくれる働きがあります。トーションバーの動きとしては、カーブの際に棒がねじれるような動きをします。そんなことしたら割れてしまいそうですが、真っすぐの棒に見えて実はねじれるようにできてるんですね。両端のうち一方だけが固定されており、もう一方は回転するようにねじれます。イメージとしては片手を伸ばして右左にひねる感じです。腕は体に固定されてて、手の方は回転するようにねじれますよね。イメージとしてはそんな感じです。そうして棒がねじれて、カーブを曲がり終えるとねじれた分も戻ります。トーションバーの最大の働きは、その戻ってくる力を利用することで、振動のない安定した走りが可能になることです。かなり想像しづらい説明になってしまったかと思いますが、今言ったことをまとめますとトーションバーの動きとしてはねじれること、そして役割としては振動を抑えたり、カーブの安定感を出すことです。車のサスペンションにはコイルばねを使うこともありますが、場合によっては何個も必要になってしまうことがあるので、だいたい一本から二本ですむトーションバーの方が車体の軽量化に繋がって優秀です。また、コイルばねよりもスペースをあまりとらないというメリットもあります。トーションバーはシンプルな作りであるゆえに多様性こそありませんが、必要最小限の本数・スペースで効率よく高い性能を引き出してくれます。渦巻きばね渦巻きばねとは巻かれた金属が伸びたり巻かれたりすることで動力を発生させるねじです。名前の通り渦巻きのような形をしており、日本ではその形状から『ぜんまいばね』と呼ばれることも多くあります。ばねの先端を引っ張ることでばねが伸び、そこからもとに戻ろうとする力を利用して回転する力を生み出します。よく使われている場所は時計やシートベルトの巻き取り部分など。渦巻きばねのメリットとして、同じ力で長い時間稼働することができ、細長い金属を小さなスペースに収納できることがあげられます。そのメリットから時計や計測機器など精密な動作が求められる製品にも多く利用されています。ばね全体の比率で言うとあまり使われていない方ですが、電力の確保ができない災害時でも使える省エネで長持ちするばねです。コイルばねの詳しい特徴・用途数多くあるばねの中でも代表的な位置にあるコイルばね。おさらいになりますが、それらコイルばねには大きく分けて圧縮コイルばね、引張コイルばね、ねじりコイルばねの3種類がありましたね。私たちの生活の中でその3種類のコイルばねがどんな使われ方をしているのか、それぞれ特徴や用途を詳しく見ていきましょう。圧縮コイルばね圧縮コイルばねは形状・用途から見てもっとも一般的なばねです。押し込めばボヨンと反発力が生まれ、元に戻ります。それ以上もそれ以下の動きもしません。非常にシンプルですね。圧縮コイルばねには等ピッチコイルばねと不等ピッチコイルばねの2種類があり、スペースの広さや機能によって使い分けされます。等ピッチコイルばねは完全な円柱の形になっており、不等ピッチコイルばねは円すいだったりたる型だったりいろいろです。ボールペンを分解したら出てくるのは、この内の等ピッチコイルばねですね。等ピッチコイルばねの用途は、ボールペンの他に車のサスペンションやコンピューターのキーボード、不等ピッチコイルばねは乾電池を入れる所の+-の部分やソファ・ベッドのクッションなどに使われています。乾電池を入れる部分のばねは実は円柱ではなく、円すいの形をしているんですよ。意外に思う方もいるかと思うので、気になった方は一度見てみてくださいね。引張コイルばね引張コイルばねは両端にフックが付いてるばねで、横に引っ張られる動きで使われることが多いばねです。圧縮コイルばねが縮められて元に戻る動きがあるのに対し、引張コイルばねは縮んでいる状態から、伸ばされて元に戻る動きがあります。両端のフックには丸フックやVフックなどいろいろな形があり、それぞれ適した用途で使い分けられています。引用元:モノタロウ使われるフックはだいたい画像の6種類であることがほとんどです。引張コイルばねが使われているところは車のブレーキ部分や計量器など。後は自転車のスタンドなんかが身近にあるものの良い例ですね。引張コイルばねのフックの部分はもろい箇所でありながら、強い力を加えられることが多く、破損トラブルがよく起こる箇所です。そのため製造の際には、フック部分の耐久がばねの設計の段階で弱かったりすることがないよう、強度には特に気を使って丈夫な作りにする必要があります。引張コイルばねのフックの強度をどうするかは、設計時に多くの企業が頭を悩ませるところだったりします。ねじりコイルばねねじりコイルばねはコイルの両端が腕のように伸びているコイルのことをいいます。両端にフックがある種類とない種類があり、さらにコイルによって腕の長さや角度、巻き数などのが違い、用途に応じて使い分けます。主な使用例として、身近な製品で言うと安全ピンや穴あけパンチ、クリップなどが挙げられます。上の二つのコイルよりも見慣れない形状ではありますが、日用品の部品として案外紛れ込んでいたりするので、目ざとく探してみると他にも使われている製品が見つかるかもしれません。実はデジカメなんかにもひっそりと使われていたりします。コイルばねの製造方法コイルばねの形状は子供の頃からよくに目にするためか、その形に疑問を抱くことがあまりありませんが、よくよく考えると金属があんなにぐるぐる巻きになっているのは不思議ですよね。コイルばねを製造する方法をざっくりと説明すると、針金のような金属を鉄の棒に巻き付けていくことで成形していきます。鉄を巻いていく作業をコイリングといい、コイリングの方法には熱間加工と冷間加工があります。熱間加工とは金属を過熱して柔らかくする加工方法のことで、冷間加工とは常温から金属が溶けないぐらいの温度で加工することをいいます。なら名称としては常温加工では?と問いたいところですが、なぜか冷間加工と言う名称なんですね。コイルばねは少量生産や試作品を作る時は手作業による冷間加工でコイリングし、大量生産する場合は熱間加工と冷間加工のいずれかで、機械による全自動で製造します。手作業となると、実際に冷えた金属を抑え続けるていると凍傷になってしまいそうなので、常温で作ることができてよかったですね。ばねのへたりについてコイルばねを作る際に注意することとして、へたりが出ないように気を付ける必要があります。へたりというのはコイルの力が衰えて弾力性が落ちてしまうことです。ばねを長いこと使い込むと、次第に潰れていったり伸びてしまったりして勢いがなくなってしまいますよね。コイルばねは製造の過程でそのへたりが起きやすいばねなのです。何年何か月も使った結果、消耗してしまうなら仕方ありませんが、新品の状態からすでにへたりが起きてしまっていては商品になりません。そのため、コイルを製造する過程ではへたりを防止する工程がいくつもあり、技術者たちもなるべくへたりが出ないようにいつも心掛けています。コイルを手作業で巻く技術は動画見ると何とも簡単そうに思えますが、実はけっこうな職人技なのです。板ばねの詳しい特徴・用途金属の板を材料とする板ばねは、丸型が基本のコイルばねと異なり四角い形状をしていることがほとんどです。板ばねは薄板ばねと重ね板ばねの2種類に分けられますが、材料が同じ板金であることから皿ばねや渦巻きばねも板ばねの分類に含まれることもあります。今回は皿ばねや渦巻きばねを先で紹介しているため、薄板ばねと重ね板ばねの二つを説明していきます。薄板ばねばねというには名ばかりの薄い板状の代物ですね。トーションバーほどではないにしろ、見た目からしてばねっぽくないのが伺えます。性能も反発力のあるコイルばねとは違い、押さえることも引っ張ることもできません。ですが板ばねの中では一番使われれる種類で、形状や用途も様々あり、日常的に見かける製品にも多く使われています。主な用途は棚やドアが外れないようにする留め金やストッパーなど。日用品としてはホッチキスやパンを掴むトングとかに利用されています。また、ねじの代わりにガラス窓やアルミサッシを固定するはめ殺しのために使われることもあります。はめ殺しとは、窓や障子などを開閉できないように取り付けることです。ホテルやタクシーの窓は開けられなくなっていることがよくありますよね。その理由に安全性を考慮しているのと、ネジを使うよりも低コストで済むため、板ばねで固定してしまうことが多いのです。板ばねは使われ方としては地味ですが、製品を機能させるための関節として働いているとても重要な役割を持っています。重ね板ばね重ね板ばねは長さが違う金属の板を何枚も重ねた丈夫なばねです。金属板の弾力性を利用することでクッションとしての効果を持たせ、車輌や機械の振動を抑えることができます。いまいちピンとこない方は、文字を書くときにノートの間に挟むしたじきを想像していただけると分かりやすいかと思います。両側から力を入れるとボヨンボヨンと曲がりますよね。そのボヨンボヨンとなる弾力性で振動を軽減させるんですね。複数枚重ねることにより耐久性も高くでき、大きな振動でも継続的に耐えることが可能になっています。引用元:日本自動車部品協会(JAPA)重ね板ばねが使われる場所はトラックや鉄道車両のサスペンション、プレス機やハンマーの装置などです。大型の乗り物や機械に使われていることが多いですね。重ね板ばねは別の呼び方でリーフスプリングとも呼ばれ、車で使われる場合、タイヤを固定する所と車本体とを支える働きをしています。薄板ばねが関節なら重ね板ばねは車や機械を支える縁の下の力持ちと言ったところでしょう。板ばねの製造方法板ばねもコイルばねと同様、少量生産は手作業で大量生産は機械で行うことがほとんどです。板ばねを大量生産する方法に単発型、順送型、トランスファー型の三つがあります。単発型は穴をあける時は穴をあけるだけ、金属を切る時は切るだけといった、一つの加工のみが可能なプレス機を使うことをいいます。単発型は機械による加工ですが、1工程ずつの加工となるため時間が掛かり、そこまで大量には生産できません。順送型は『穴あけ』や『せん断』などの二つ以上の加工を一つの機械でできるプレス機のことです。複数の加工が一つの手間でできる分、単発式よりも多くの製品を作ることができます。トランスファー型は加工する物をベルトコンベアーなどで流すことで、ほぼすべての加工を自動的に行える装置のことです。穴あけやせん断などの機械があるところに加工品を通していくことにより、一連の加工を人の手を介さずに一回一回止めることなくできます。テレビのニュースや番組で製品ができるまでの様子を紹介している時によくVTRで流れるのがそのトランスファー型です。順送型や単発型に比べ値段が高額なのがネックですが、ほぼ全自動なので作業に負担が掛からず非常に高い生産効率を維持できます。ばねの原因によって起こる不具合どれだけ用心していても製品を作り続ける以上不具合は起きてしまうものです。機材の誤作動や経年劣化によるトラブルはいやおうなしに、人為的ミスで起こる事故も決して少なくはありません。そういった不具合を少しでも減らすために原因を追究して対策することは、効率よく安全に製品を作る上で必須と言えるでしょう。ばねのへたりばねのトラブルでまず起こりやすいのは、ばねにへたりが出ることです。前述の通り、ばねにへたりが出ると伸び縮みの勢いがなくなってしまうのですが、そうなることで製造の効率が落ちたり機材の動作不良が起こったりしてします。ばねがへたる原因として、高温の状態でばねを使用した、機材に合わないばねを使用した、そして経年劣化などがあげられます。ばねが異様に早くへたってしまう時は機材や環境がばねに合っているか確認した方が良いでしょう。そして、長期間の使い過ぎで弾力性がなくなってしてしまう前にメンテナンスをきちんとする必要がありますね。ばねの破損ばねは製品を機能させる上でとても重要な役割を持っているので、当然ながらなるべく丈夫に作られてはいますが、それでも壊れてしまうことがあります。よくある例が引張コイルばねのフックの部分が壊れてしまうことです。前の項目でも書きましたが、フックの部分はコイルばねの中でも特に破損しやすく、ばねトラブルが多く起きている箇所です。経年劣化が原因で壊れてしまうこともありますが、その箇所に合わない形のフックを使っていたり、フック部分に負荷が掛かりすぎていることが主な破損の原因となっています。また、ばねの破損は板ばねでもよく起こり、先端の折り曲げてある部分が曲がってしまったり、折れてしまうことが多々あるので、引張コイルばねにせよ板ばねにせよ、バネが耐えられるかどうかの計算と確認はしっかりしなければいけません。錆びばねは長年使い続けていたために錆びてしまうことがあります。乾電池を入れる部分や車・自転車などがよくある例でしょう。環境によって錆びることもあり得ますが、それも含めて製品の交換やメンテナンスをしていないことがほとんどなので、事故になってしまう前に取り換えておくのがよいかと思います。導通不良ばねが使われる製品には電子部品が組み込まれているものも多くあります。板ばねの取り付けが不十分だったり、部品との接触が不安定で不具合が起きることもありますが、電子機器の場合、そもそも電気系統の知識不足が原因であることも珍しくありません。電子機器の導通不良もばねトラブルの例としてしばしばあることなので、品質の良い製品を安全に作るために、しっかりとした知識と技術が求められます。ばねのトラブルの原因には、他にも強度が強すぎたり弱すぎたり、寸法が合わないばねを使っているなど、不適格なばねを使用していることがもとになっていることもありえます。その製品や機材に適したばねを使わなければ、不具合が生じるのも道理と言えますね。後からトラブルが発生してしまっては手遅れなので、ばねに限らずどんな部品でも無理やり使わず、その製品や機械に合った適切な部品を使うようにしましょう。まとめものづくりにおいて、ばねの重要性はネジに次ぐと言っても過言ではありません。ばねが使われている製品・機械は、家の中でも外でもいたる所で見かけることができます。ばねによる支えはいつも私たちの生活の支えとなっているのです。