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【金属加工 Mitsuri】見積から発注までWEB完結!
板金加工の分野では、部材の強化を目的とした加工が数多くあります。今回の記事ではその中でも強化を目的とした【ビード加工】を分かりやすく解説していきます。 ビード加工とは 引用元:協和工業株式会社 この画像のように、工業用の機械などの金属部品には、画像のような細長い凹凸があります。 これが【ビード加工】です。 ビード加工は「紐出し加工」とも言い、紐のような凹凸をつけることにによって成形部品の面を強化する効果があります。 では、ビード加工をすることによってどのように強度をあげていくのでしょうか。 一般的に強度をあげるには、材料に厚みを持たせたり補強金具を使用する方法がありますが、コストがかかることや、重量が増えること、厚さが変わってしまうことなどが課題でした。 そこで、ビード加工で強化したい部分を紐のように隆起させたり溝を作ることによって圧力を分散させ、強度を格段に高めることが可能となりました。 引用元:株式会社 山光 また、厚さを変えずに強度を高めることだけでなく、補強金具を使用しないことで軽量化、さらには原材料の削減によるコストダウンに繋がります。 ビード加工はどんな時に用いられるか 機械は使用していくうちに様々な要因で部材に力が加わります。ある程度の力が加わった部材は変形を起こし、主として安全性に問題が発生します。 そこで、ビード加工によって【強度】をあげていくのです。 強度とは、材料がどのくらい力に耐えられるかを示し、強度をあげることによって安全性が高まります。 強度にもどの力に対して強いのか様々な種類があり、中でもビード加工は「曲げ強度」に対して力を発揮します。 曲げ強度とは抗折力ともいい、部材の破損は引っ張る力より曲げる力の負荷により破損することが多いことから、部材を曲げる力に対抗するためビード加工は用いられるのです。 ビード加工の製品例 主な製品としては、機械などの金属部品や身近なところではパイプなどにもビード加工は施されています。 引用元:RTEC ビード加工によって外観的にも凹凸がつくので、よりデザイン性も高まります。 引用元:杉本金属工業株式会社 私たちの生活が豊かになるにつれ工業製品により機械化が進んでいくなか、ビード加工は施され、ひっそりと活躍しているのです。 まとめ 今回溶接の数ある工程の中、強化の【ビード加工】について解説していきました。 少しの工夫でコストや重量などの課題をクリアしつつ、強度を格段にあげることが可能になるビード加工は、私たちの生活の中に馴染みながらよりよい暮らしに役立っているのですね。
板金加工の加工素材として、最もオーソドックスな材といえるのが【鉄】。 「鉄の加工をお願いしたいけれど、初めてで、どこに頼めばいいか分からない…」 「いつもお願いしている取引先に断られてしまって、どこに依頼したらいいのか…」 工場探しで、こんなお悩みで頭を抱えている方も多いのではないでしょうか。 板金加工といっても、切断、曲げ、抜き、溶接、切削など、その加工の種類は様々。また、工場によって得意加工・苦手加工などの特徴があったりもしますよね。 「小ロットの発注になるので申し訳ない…」といったお悩みもあるかもしれません。 Mitsuriで依頼できる鉄加工の種類 ①切断加工 シャーリングマシンを使用して、必要な大きさにカットしたり、展開寸法に合わせてカットするなど(ブランク加工)、変形のための事前準備を行います。 製品の精度に関わる上、後加工にも大きく影響する重要な工程ですので、バリや反りを極力抑え、正しい形状を切り出します。 Mitsuriでは、高速・高精度なレーザー加工での切断も可能です。小サイズの切り出しや、狭い幅の溝部分など、材の硬度や厚みに依らない、正確な切断を可能にします。 ②曲げ加工 ベンダー機を用いて、型に合わせて、お求めの形状・角度に変形させます。曲げ加工は、薄板・厚板など、材に合わせた適切な加工を行うことが必要となります。シンプルな技法ですが、ひずみや反りなどが生じやすいだけに、工場の技量が試される加工といえます。 Mitsuriでは、一つの板材について、一ヶ所の曲げ加工だけでなく、多段曲げや複数個所の曲げ加工を行うことも可能です。指定角度の細かい指定にも正確に応え、精度の高い製品をご提供いたします。 ③溶接 板と板を接合することで製品になるものは、溶接加工を施します。高温の熱、もしくは圧力を加えることで、部材同士を接合します。容器状の製品などを製作する場合には特に、溶接の精度や強度が重要になります。 被覆アーク溶接、スポット溶接、ガス溶接など、溶接の種類は様々で、材や接合部に応じて、使い分けることが必要です。Mitsuriでは、レーザー溶接であるYAG溶接やCO2レーザーなどのニーズにも対応可能ですので、幅広い方法で溶接が可能です。 ④切削加工 切削加工には、材を固定して機械を回転させる「フライス加工」、材を回転させる「旋削加工」が挙げられます。 フライス加工では、材の表面を平面や曲面に加工できるほか、穴あけ、溝削りなど、多様な加工が可能です。また、旋削加工では、円筒形状の材の外周を円形や先細形状(テーパ)に加工したり、穴あけや、中ぐり、ねじ切り、突切りなどの加工を行うこともできます。 いずれも、抵抗や温度、速さなど、機械と材の相性を考慮して加工することが求められます。そんな切削加工もMitsuriにぜひお任せください! 鉄の加工を依頼するなら【鉄加工のMitsuri】 Mitsuriでは、小ロットのご依頼にもご対応しています。また、量産はもちろん、1個からの小ロットのご依頼についても、大歓迎です!小ロットの製品をご依頼いただいた後、量産化へ向けてご相談いただくことも可能です。 日本全国各地、どちらのご依頼でもお受けいたしますので、鉄加工でお困りの際は、ぜひMitsuriにご相談ください!
板金加工業においても、製品を商品として売り出すにあたり、コストや品質向上の課題はつきものです。そんな中で、現在様々な企業でVA・VEの取り組みが行われています。 本記事では、「そもそもVA・VEって何?」という方にもわかるVA・VEの概要と、取り組みの事例をご紹介します。 VA・VEとは? “ VA”とは、“ Value Analysis”(価値分析)を示します。価値(V)=機能・品質(F)/コスト(C)で表され、品質を向上もしくは維持しながらコストを抑えることによって、製品の価値を最大化することを目的とした取り組みです。 VAと併用してよく使用される言葉“VE”は、“Value Engineering”を意味し、基本的に同義として使われていますが、設計検討段階から価値の最大化を考える“VE”に対して、量産化している既存製品についてバリューチェーン全体の視野からコストダウンを行うものを“VA”として区別する場合もあります。 板金加工のコストを決める要因 どの企業も、少しでもコストを削減して製造したいと考えるものですが、板金加工のコストはどのような要因に左右されるのでしょうか。 大きく分けると、①イニシャルコスト②材料③加工方法④組み立て、の四つが要因として挙げられます。 ①イニシャルコスト 一般的な曲げや溶接などでは、イニシャルコストはあまりかかりませんが、例えば絞り加工を行う際などは、金型を必要とします。簡易金型を採用できるよう設計することで、金型にかかるイニシャルコストを抑えることができます。 ②材料 材料に関しては、加工に使用して残った部分が廃棄され、無駄なロスが生じています。コストを抑えるコツとしては、定尺という決まった板の寸法を考慮することで無駄を抑えることができます。 ③加工方法 曲げ・溶接などの加工方法では、板厚や施工によって曲げ限界に違いがあったり、溶接しづらい構造や溶接後の仕上げが必要な構造で設計を行うと、溶接加工に時間がかかるなど、コストアップに繋がってしまいます。 ④組み立て 最終的な組み立て作業で、図面上では成立していても実際の現場ではスパナを回すことができない、または部材同士が緩衝して組み立てられないなどの事象が発生することもあります。 以上のような要因に対処していくには、設計者が部材の加工方法をしっかりと知った上で図面を書くことが必要です。加工を知らないと、結果として段取りが多く、歩留まりの悪い加工方法を強いる図面になってしまい、コストアップ・オーバースペックを招いてしまうのです。 VA・VEの実行手順 引用元:株式会社産業革新研究所 次に、VA・VEを実行する手順について説明していきます。 ①対象の選定 まずは、対象(品物)が何なのかを選択します。 ②機能の定義 次に、技術情報、コスト情報、要求事項、品質情報、法的制約などの情報を収集し、その品物の機能は何かを定義します。同時に、定義した機能の関連性を図示し、機能の整理も行っていきます。 ③機能の評価 次に、定義した機能について、コスト分析などを行い評価をします。 ④改善案の提案 さらに改善案を練り、新規アイデアの発想・評価を行います。出来上がった改善案については、TRIZ(発明的問題解決理論)、チェックリスト法、ブレインストーミングなどの方法を用いてさらに具体化し、提案書の作成を行います。 以下は、チェックリストの項目例ですが、会社の業種や製品、作業内容で変わってくるので、自社に合ったチェックリストを作ることをおすすめします。 チェックリスト項目の例 □そのものの使用によって価値が高められるか □その品物の原価と用途がつり合っているか □そのものの形状全部が必要であるか □使用目的に適ったものが他にないか □もっと低原価な作業方法で機能的な部品が作れないか □もっと有用な標準あるいは、部外供給業者の標準がないか □使用される数量を考慮に入れた妥当な工具、設備で生産されているか □合理的な資材費、労務費、間接費および利潤は適切か □もっと安く供給する信頼できる業者はないか □それをもっと安く買っている会社はないか ⑤実施とフォローアップ 作成した提案書に従って実行し、随時フォローアップを行います。 ⑥実施状況の評価 実施した後には、次につながるよう全体の評価を行います。 VA・VEの取り組み事例 VA・VEの取り組みとして、コスト要因である①イニシャルコスト②材料③加工方法④組み立てに着目しながら事例をご紹介します。 ①イニシャルコストに対する取り組み 【Before】プレス金型を用いて行う絞り加工は、通常の方法では、板厚や絞り深さ、高さを気にすることなく設計することができます。しかし、金型は製作期間が長い上、物によっては数百万円もする高価なものまであり、製品原価に大きな影響を与えかねません。 【After】このような場合の対処方法として、簡易金型の使用が挙げられます。深く絞ることができない簡易金型ですが、切断・溶接を併せて行うことで、深絞りのような形状を生み出すことが可能になります。 ■このように、簡易金型に追加工を施すことで、イニシャルコスト低減を図ることができます。 事例参考・画像URL:精密板金コストダウン.COM ②材料に対する取り組み 【Before】一般的に、耐食性が必要な機械部品にはステンレス材料、中でもSUS304が使用されます。しかし、加工の観点で見ると、SUS304は加工性が悪く、機械加工のコストが高くなる傾向があります。 【After】同じステンレスでも、材料をSUS304から加工性に優れたSUS303に変更することで、コストを削減することが可能になります。耐食性を重視する場合には、SUS316なども選択肢として検討します。 ■このように、一口でステンレスとしても、品番によって様々な特性をもっており、加工性・耐食性も異なるため、入念に検討することが必要です。 事例参考URL:機械部品・組立コストダウン.COM ③加工方法に対する取り組み 【Before】TIG溶接を行った後の仕上げ工程では、何度も段階的に細めのディスクで仕上げ研磨作業を行わなければならず、溶接工程以上に研削工程で工数がかかり、コストアップにつながってしまうことがあります。 【After】そこで、YAGレーザー溶接を採用することで、溶接ビードが細く、きれいな仕上がりが可能になります。外観上の美しさをそこまで追求しない場合には、溶接焼けの除去だけで済むため、研磨工程を大きく削減することができます。 ■このように、YAGレーザー溶接に置き替えたことで、溶接後の工程を削減でき、溶接自体のコストが高くても、トータルで見るとコストダウンにつなげることができます。 事例参考・画像URL:板金加工コストダウン ④組み立てに対する取り組み 【Before】機械や装置を組み立てる際、ステンレスやアルミなどのフラットな部品同士をネジやボルトで組み立てるとなると、両方の部品の位置を正確に合わせることが難しくなります。部品が大きくなるほど困難になり、組み立て作業に時間が費やされてしまいます。 【After】一方に切り欠きを入れ、位置合わせがしやすいようにすることで、時間が短縮されコストダウンにつながります。大きな機械部品や重い部品ほど、時間短縮が可能になります。 ■このように、効率よく組み立てられるように設計するためには、構成する部品の改善を考える必要があります。 事例参考URL:機械部品・組立コストダウン.COM まとめ 現在、様々な企業で、コストダウンや時間短縮に向けたVA・VEの取り組みがなされていることがわかりました。機械やシステムがますます発達する今日ですが、これからも現場の技術者達が生み出す工夫や改良に注目していきたいですね。
板金加工というと、自動車製造で使用される技術としてのイメージが強いかもしれませんが、近年、医療分野でもその技術が使用されていることをご存知でしょうか。 本記事では、医療分野で使用されている精密板金加工とその製品例を取り上げます。 医療機器で用いられる板金加工の特徴 1.使用される素材 まず、医療分野で使用される金属加工品として、衛生面や耐食性、耐熱性、強度、メンテナンスのしやすさが求められます。そこで、主に素材として使用されるのが、ステンレスです。ステンレスは英語で「Stainless Steel」と言い、“さびにくい鋼”を指します。その名の通り、ステンレスは一般の鋼と比較すると、極めて優れた耐食性を有します。また、メンテナンスのしやすさから、医療機器ではステンレス素材が主に使用されています。 2.精密板金加工とは 精密板金加工とは、汎用金型やジグを組み合わせて板厚t = 3.0程度までの薄板金属を用いた部品製品を製造するものです。厳しい寸法公差(生じても仕方のないとされる誤差範囲)・加工精度が求められます。また、多くの曲げ箇所があり多段曲げが必要となるなど、複雑な形状のものも多く見られ、それだけ丁寧な加工が求められています。一般的な加工工程は、以下のとおりです。 ①設計・板金面展開 ②プランク加工 ③前段加工(曲げ加工前の加工) ④曲げ加工(ベンディング) ⑤溶接加工 ⑥仕上げ加工 ⑦メッキ、塗装等の表面加工 ⑧ビス止め等の組み立て ⑨検査・納品 製品例 実際に医療機器に用いられている精密板金加工品の例を5つご紹介します。 内視鏡光源交換部 引用元:株式会社西山精密板金 内視鏡光源装置は、内視鏡検査で用いられる、強力な発光媒体によって光を供給する独立した装置のことです。この照明光がケーブルを介して内視鏡に到達し、内視鏡の先端から再度照射され観察空間をくまなく照らします。この光源装置の部品となっているのが、内視鏡光源交換部です。 加工技術としては、カシメ加工、曲げ加工、組立加工、メッキ加工が使用されています。ここで使用されているカシメ加工とは、素材を変形させて他の部品へ固定させる方法です。具体的には、穴の中に棒(リベットなど)を入れ、棒に向かって回りを変形させることで、棒が抜けないように固定させる加工法です。 医療機器用CCDユニット装着フレーム 引用元:産業機器・装置精密板金加工.COM このフレームは、医療機器のCCDユニット(カメラ)を取り付ける製品です。薄板金加工品で、重要部品に位置づけられているため、公差がとても厳しい商品といえます。レーザー・タレパン複合機でブランク加工後、タップ、曲げ加工を行った後に、黒色亜鉛メッキ処理を行います。 この製品の特徴としては、複数の多段曲げ加工を行っている点、形状が複雑な点が挙げられます。多段曲げを必要とする製品の多くは、その曲げ加工の順番が重要であり、工程を誤ってしまうと曲げられない箇所が発生し不良となってしまいます。累積公差も加味する必要があり、非常ににデリケートな製品といえます。 医療機器カバー 引用元:株式会社西山精密板金 このカバーは、胃カメラ光源部などの医療機器に用いられる製品です。曲げ加工、溶接、塗装、組み立て加工によって作られます。その他、医療現場で用いられる機器のカバー部分に、同様の方法で作られた製品が多く使用されています。 医療機器用ミキシングチャンバー 引用元:板金ユニット装置設計・組立.COM ミキシングチャンバーとは、医療現場で用いられる薬液混合器です。ブランク展開、曲げ溶接、酸洗いを行って製造します。ここで行う酸洗いとは、金属の熱処理や溶接で生じた焼け、酸化皮膜を、硫酸や塩酸で除去する作業です。 さらに、この製品は円筒部は板厚が薄く、上部と下部に全溶接箇所があり溶接の歪みが出やすい形状です。素材がステンレスということもあり、外観に傷がないことは勿論、バリが残らないように一層丁寧な仕上げ加工が求められます。 配線固定版 引用元:産業機器・装置精密板金加工.COM こちらは、SPCCでできた医療機器の電気配線を固定するための精密板金加工品です。ブランク加工の後、タップ、曲げ加工を行い、サビ防止のためのニッケルメッキ処理を行います。プレートのような、長尺の精密板金加工品のため、立ち上がりが短い場合には反りが発生しやすく、寸法出しが難しい製品です。 今後注目したい板金加工による製品 鉗子(かんし) ここでは、現在はまだ板金加工による製造がメジャーではないものの、今後シェア拡大が期待される製品を紹介します。 鉗子とは、手術で血管や器官をつまんだり固定したりする際に使用する器具です。用途ごとにサイズや長さが異なり、様々な種類の鉗子が手術で使われています。 鉗子の国内市場は年間20億円程度、このうち国内製品は3割を満たしません。安価な海外製品に押されて採算が悪化し、職人の高齢化などを背景に後継者難が続く現状があります。しかし近年、これまで職人による手作業が中心だった製造工程を見直し、ステンレス素材の鍛造や切削、研磨などの工程において大型プレス機械による機械化を試みています。国産の鉗子は、海外製に比べ、金属がしなって使いやすい上、耐久性も高いといわれています。 今後、手作業を極力減らし、生産を効率化することにより、国内生産のシェア増加を狙います。 まとめ いかがでしたでしょうか。本記事では、医療分野で用いられる精密板金加工の特徴、製品例についてご紹介しました。 まだまだ様々な分野で応用される可能性を秘めた板金加工が、今後どう活躍の場を広げていくのか、これからもその展開に目が離せません。
精密板金加工で活躍する「タレパン」について、その仕組みやメリット・デメリットといった特徴を解説します。レーザー加工機との違いにも触れますので、今後導入を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。 タレパンとは? タレパンとは、タレットパンチプレスというプレス機械の略称で、金属板の打ち抜き加工に用いられるものを指します。タレットと呼ばれる金型ホルダーに、円形や扇形の金型を配置して、NC制御によって成形加工や打ち抜き加工を行います。 ちょうど穴あけパンチのような仕組みで、汎用金型で金属板を打ち抜くことを、追い抜き、二ブリングとも呼びます。 タレパンのメカニズムとは?仕組みを解説 タレパンには、大きく分けて2種類あります。 ひとつは、金型を1種類だけセットできるもの。もうひとつは、金型を複数セットできるものです。 今回は、一般的に精密板金加工で用いられる「金型を複数セットできるタイプ」について解説します。 金型を複数セットできるタイプはNC制御(数値制御)を用いるため、専用のプログラムによって必要な金型を入れ替えながら、複雑な打ち抜き加工を行うことができます。 タレパンの金型は上下で一組になっていて、パンチと呼ばれる上金型と、ダイと呼ばれる下金型で、金属板をはさみ圧力をかけて打ち抜く構造です。 ハサミのような仕組みで金型を打ち抜くため、この上下の金型の精度が切れ味に直結します。 タレパンによる打ち抜き加工の精度は、金型の精度とタレパンのメンテナンスにかかっているといっても過言ではありません。 金型自体の寿命は、メンテナンスサイクルだけでなく使用する材料にも左右されます。柔らかい材料の加工ではバリが発生しやすいため、それだけ金型にも歪みが起こりやすくなります。 タレパンで加工できる板金素材の厚さは、0.5~3mm程度。3mm以上の厚板を加工する場合は、速度は遅くなりますが、レーザー加工機を検討した方がよいでしょう。 タレパンの加工範囲は、定尺材5フィート×10フィート材(1524mm×3048mm)または、4フィート×8フィート材(1219mm×2438mm)まで。大きな素材まで対応できる分、広い設置場所を必要とします。 なおタレパンで打ち抜かれた板金は、その場では切り離されずに材料の板金とミクロジョイントにて、つながった状態で排出されます。そのため、別途切り離し作業が必要です。 タレパンの特徴とは? タレパンの主な特徴は次の通りです。 タレパンの特徴 ・加工精度が安定する ・複雑な加工への対応力がある ・材料や加工方法がやや限られる ・加工の自動化が容易 ・ランニングコストが抑えられる ・導入コストが高い それぞれ具体的にご説明します。 加工精度が安定する まず、取扱者の熟練度に左右されず加工精度が安定します。タレパンはNCで制御するため、プログラミングに基づいて金型の選定や板材の移動を正確に行えるので、熟練の技術者を必要としません。ただし、NC制御プログラム作成のための専用ソフトウェアが必要になります。 複雑な加工への対応力がある また、複雑な加工を行える点も魅力。金型の組み合わせや追い抜き加工(二ブリング加工)を使用することにより、汎用金型で円弧状や難しい角度などの複雑な加工が可能です。専用金型が不要なため、試作品の製作などで多品種少量生産したい場合にも活躍します。 材料や加工方法がやや限られる 一方で、厚板や深絞り加工といった苦手な材料や加工も存在します。成形加工は金型サイズに収まるレベルの加工に限られ、本格的な曲げ加工は別途、プレスブレーキなどを用いる必要があります。 加工の自動化が容易 加工可能な範囲の材料に対しては、自動化も可能です。材料の自動供給装置や自動取り出し機などを組み合わせることで、24時間連続稼働の大量生産を実現することもできます。 ランニングコストが抑えられる メンテナンスの手間もあまりかからないので、一人で複数台のタレパンを監視・操作することもでき、人的コストの削減にも貢献します。 なお監視と言っても、直接見張る必要はありません。遠隔カメラでの監視のほか、各メーカーから、機械に異常が発生した際にパソコンやスマホに通知してくれるアプリなどが提供されていますので、別作業をしながらタレパンを稼働し続けることも十分可能です。汎用旋盤やフライス盤のように、加工中の工具を近くで直接見る必要もないため、事故のリスクはかなり低いと言えます。 導入コストが高い ただし、他の板金工作機械と比べて導入コストが高いのが難点です。新品のタレパンは数千万円しますし、高額な機種では1億円を超える場合も。タレパン自体非常に人気のある機械なので、中古品でもあまり値下がりしません。さらに加工可能範囲が広い分、設置にもそれなりのスペースが必要になります。 タレパンのまとめ タレパンの特徴をまとめると、導入コストはかかるものの、ランニングコストがかなり抑えられ、一般的な板金工作機械に比べて人的リソースも必要としないプレス機械と言えます。 板金の打ち抜き加工ではレーザー加工機という選択肢もありますが、ランニングコストの面では、使用する電気量や充填ガス費などから、タレットパンチプレスの方がはるかに優れています。しかしレーザー加工機にはタレパンより厚い材料を加工できる・金型の交換やメンテが不要、といったメリットがあります。 加工する材料の材質・厚さ・加工精度・加工速度・コストなど、それぞれ長所と短所がありますので、比較検討して最適な加工機を選定することが重要です。
本シリーズは、板金に関する知識がゼロでも、読み進めていくことで、板金加工の理解が身についてくことを目標にしています。 板金加工には、大きく分けて切る、曲げる、作るという加工方法があります。その中で、今回取り上げるのは、板金加工の主役としても過言ではない曲げ加工です。 前回取り上げたように、曲げ加工は、主としてプレスブレーキが使用されますが、作業者の技量に大きく依存します。そのため、作業者の技量が求められます。他方で、曲げ加工には、L曲げという加工方法も存在します。 これは作業者の技量に依存する部分が少ないため、比較的自動化されやすい加工方法です。 しかしながら、汎用性という面においてV曲げに負ける面があります。 以下では、L曲げ加工の基礎的な理解を確認してみたいと思います。 タイトル こちらの動画では簡単そうに見えて意外と高価になる曲げ5選を紹介しております! 4分ほどで視聴可能です! Youtubeにて、金属加工Mitsuriチャンネルを運営中!こちらからご覧ください! L曲げ加工とは L曲げ加工は、V曲げ加工と異なり、下の図に示すように材料の端を滑らないようにパッドなどで押さえつけ、もう一端をパンチなどで折り曲げる加工方法です。 引用元:林洪鑾「薄板のL曲げ加工における高精度化の研究」より 図に示したL曲げ機構であれば、曲げ時に発生するスプリングバック角度を見込んで、余分に曲げることが難しく、直角曲げができません。 そのため、工業的にはオーバーベンドができるフォールディング曲げ加工方法とオーバーベンディングL曲げ加工方法が使用されています。 フォールディング曲げは、フォールディングマシンを使用する加工方法です。 具体的には、ラムの上下と、ウイングの回転機構を組み合わせた、押さえ巻き曲げ(迎え巻き曲げ)といわれる加工をおこないます。 これは、高いフランジを持った製品を閉じた形状の口の字形に曲げることができます。 他方で、オーバーベンディングL曲げは、パンチ側になる金型(刃)を横方向に動かして、スプリングバック余分にオーバーベンディングさせる加工方法です、 金型(刃)の軌跡を自由に制御できるため、ヘミング、シーミング、カーリングなどに代表される複雑な曲げ形状を実現できます。 (ヘミング・シーミング・カーリングについては、別記事で取り上げます) L曲げ加工を使用する理由 一般的に、配電盤、制御盤の扉、空調機のカバーなどにL曲げ加工を行います。 その理由は、曲げフランジが長い大板の一端を、一般的なV曲げで曲げると、自重により腰折れなどが発生し、製品の精度や外観を悪くしてしまうからです。 それを防ぐためには、加工中にワークを保持しなければなりません。 この作業には、数人の作業員を必要とします。 また、跳ね上がりによる危険や、曲げ完了後のワークの落下にも注意を払わなければなりません。 この点、L曲げ加工では、ワークをホルダに乗せたままで行なうことが可能です。 そのため、腰折れの防止、万歳作業を実現します。 L曲げ加工の特徴 ①非対称であること 左右で曲率が対称であるV曲げ加工と異なり、L曲げ加工では曲率が非対称となります。 パッドで押さえた側の曲率は小さく、パンチで折り曲げる側の曲率が大きいです。 ②スプリングバックとスプリングゴーが生じること L曲げ加工では、目標角度まで曲げた後、パンチが材料から離れるとスプリングバックが生じ、パッドが材料から離れるとスプリングゴーが生じます。 スプリングバックとスプリングゴーが生じるのがL曲げ加工の特徴です。 パンチが材料から離れると、V曲げと同様に曲げ外側に引張り応力、内側に圧縮応力が生じています。 除荷時にこれらの応力によるモーメントがゼロになるように弾性回復し、スプリングバックが生じます。 ベンディングマシン 板材の曲げ加工様式を大別すると、V曲げに代表される突き曲げ方式と板を押さえつけて折り曲げるL曲げ方式とに分けられます。 突き曲げ様式の曲げは、板金加工業界で最も使用されている曲げです。 後述する多様な曲げ金型との組み合わせで、加工を自由自在に行うことができます。 極めて汎用性の高い曲げ加工として、多く使用されています。 L曲げは、突き曲げ様式に比べて汎用性には劣るものの、省人省力化および自動化ラインへの応用など、大規模な生産工場での活用が可能になります。 また、大板材の曲げなどでは、曲げフランジの曲げによる跳ね上がりが小さくなるため、大型パネル曲げに向いています。 プレスブレーキはラムが下側から上昇する上昇式タイプとラムが上側から下降する下降式タイプがあり、それぞれ設備コスト、対象製品の形状、大きさ、要求加工精度などにより使い分けられている。 L曲げ機械は単体での使用、自動化ラインでの使用、対象製品の形状、大きさなど、装着金型の要望などにより個別対応しているケースが多いです。 そのため、一般的な機械形状を特定するのは難しいです。 曲げ加工における金型 金型の選択を行う場合は、その金型が適切な金型としての条件を満足しているかどうかを判断しなければなりません。 さらには、その条件が曲げ加工作業にどのように関係するかを理解しておかなければなりません。 金型の適切な条件 適切な金型の条件として、以下の点が挙げられる。 ①取り付け、取り外しが容易にできる長さであること。 ②完全な熱処理が施され、十分な強度があり耐摩耗性が高いこと。 ③寸法精度が高いこと。 ④機種に関係なく使用する上での互換性が高いこと。 金型の種類 一般に曲げ金型は、大きくパンチ(上型・上刃・雄型)とダイ(下型・下刃・雌型)に分類されます。 パンチやダイは、各機械メーカー別・用途・特徴により様々な取り付け方式や形状があります。 市販されている曲げ金型は、大きく分けて2つあります。 ・パンチ・ダイそれぞれの仕様・形状を規定し、在庫品として製造・販売している標準金型。 ・加工用途などに合わせて専用に設計・製作する特殊金型。 標準金型は、コスト的にも安価であり、愛個品であるため納期的にも入手が容易です。 他方で、特殊金型は基本的に受注生産品であるため、標準金型に比較して価格が高く納期がかかるのが一般的です。 もっとも、加工の合理化や省力化を実現することができます。 パンチとダイ パンチは、一般的にその断面形状や刃先角度などの特徴によって分類することができます。 ・V曲げ(90°・鋭角)用パンチ ・曲率の大きいR加工を行うR曲げパンチ ・ヘミング(潰し)加工を行うフラットパンチ ダイは、一般的にその断面形状・V溝の数・V溝の角度・構造・加工内容などによって分類することができます。 1Vダイ・2Vダイや鋭角ダイのほかに、ヘミング加工用のダイなどがあります。
曲げ加工は、主としてプレスブレーキが使用されますが、作業者の技量に大きく依存します。 プレスブレーキによる曲げ加工は、V曲げと呼ばれる加工で、被加工材はパンチとダイの間で複雑な変形過程を経ます。他方で、L曲げという加工方法も存在します。これは作業者の技量に依存する部分が少ないため、比較的自動化されやすい加工方法です。しかしながら、汎用性という面においてV曲げに負ける面があります。 「曲げ加工をお願いしたいけれど、初めてで、どこに頼めばいいか分からない…」 「いつもお願いしている取引先に断られてしまって、どこに依頼したらいいのか…」 板金加工といっても、切断、曲げ、抜き、溶接、切削など、その加工の種類は様々。工場によって得意加工・苦手加工などの特徴があったりして、どこに依頼すればよいのか分からない…等。 こんなお悩みで頭を抱えている方は、一度Mitsuriをご利用してみてください! 簡単そうに見えて意外と高くつく曲げ5選 こちらの動画では簡単そうに見えて意外と高価になる曲げ5選を紹介しております! 4分ほどで視聴可能です! Youtubeにて、金属加工Mitsuriチャンネルを運営中!こちらからご覧ください! 曲げ加工の原理 板を曲げる原理は、以下の図のように2点で支えた中央を直角方向に押すことでと、外側が伸ばされ、内側が逆に縮んで反ります。 このときの曲げる力のことを曲げモーメント(M)と呼び、その大きさは、押す力(荷重)×距離となります。したがって、距離に比例して曲げモーメントが大きくなります。 図:引張応力と圧縮応力 曲げ加工では、距離が大きすぎると幅の狭い製品はV溝の中に落ちてしまいます。 他方で、小さすぎると反りが発生するなど不具合が生じます。 一般的に、V曲げ加工の場合、ダイの肩幅(各部の距離)は、板厚の8倍を標準としています。 加圧力の計算もこれを基本としています。 曲げ加工に使われる材料 曲げ加工に使われる板材は、鉄鋼材料(軟鋼、ステンレス鋼などの特殊鋼など)と非鉄金属材料(アルミニウムとその合金、鋼とその合金)に分けることができます。 これらの材料にはそれぞれ特性があります。材料の特性として、一般的に材料試験と呼ばれる一様な断面に均等な力が働いている状態で調べる試験があります。 その材料の特性を表す指標を理解するには、いわゆる塑性力学の基礎知識が要求されますが、ここではそのような塑性力学の議論には踏み込みません。 特に必要な用語のみ以下に列挙しておきます。 特に必要な用語 ・公称応力:外力/素材断面積。引張り試験における最大値を「引張り強さ」といいます。 ・公称ひずみ:標点間の伸び/標点間距離のことをいいます。 ・降伏点:塑性変形が始まる応力のことをいいます。 ・真応力:負荷時の外力/負荷時の素材断面積をいいます。 板金加工で用いられる板材は、定尺材あるいはスケッチ材で板厚は規格化されています。ただし、実厚板は同一ロット内、あるいは同一の板でも場所によって微妙に異なることがあります。同じく、材料の特性値もロット内でも異なっていることがあります。 板の方向によっても異なることがあり、これを異方性といいます。特に圧延方向(ロール目と呼ぶことがある)と直角方向、45度方向で異なっています。 曲げ加工は、材料の寸法特性や材料特性を考慮しながら行う必要があります。 曲げ加工図面の展開寸法の計算方法 引用元:アイティメディア株式会社 寸法精度が高い曲げ加工を施すには、展開寸法をシュミレートしなければなりません。曲げ加工製品の寸法を安定させるためには、曲げ加工図面の展開寸法を計算する必要があるのです。 展開寸法は、伸び縮みのない板厚方向における中立軸の長さ(上画像L)になります。 中立軸の長さを求めるためには、中立軸が板金の曲げ部のどの位置にあるかも知らなければなりません。 そのためには、金属素材の特性などを考慮に入れる必要があり、材料試験などを実施して、素材を加工した時の伸びしろなどから経験値を導き出します。 材料試験などで得られた経験値により、曲げRから中立軸までの距離の移動率(%)が変わり、それを展開寸法を求める計算式に当てはめることで、中立軸の長さが得られます。 板厚や曲げの角度にもよりますが、曲げ部の中立軸は板厚の20~45%の間の位置になります。 引用元:株式会社春日井金型 上画像右の表は、板金加工で最も良く行われるV曲げ加工を例にとり、板厚と曲げR、曲げRからの中立軸までの距離の割合(λ)を表にしたものです。曲げRが板厚(T)の5倍以上など、大きくなればなるほど、中立軸は板厚の中央に近づいていきます。 金属特性の経験値を踏まえ、展開寸法(Lの値)を求める計算式は以下の通りです。 展開寸法の計算式 L=展開寸法 ・A,B=曲げ応力のない部分の長さ ・R=曲げ 内R ・t=板厚(mm) ・θ=角度 ・λ=中立軸移動率(%) *経験値(0.2~0.45)を採用 L=A+B+(R+T×λ)×2π×θ/360 参考:曲げRの計算方法【基礎知識】図面指示と板厚・強度 曲げ加工の限界について 曲げ加工をする場合、ダイの溝幅や金型が干渉することで加工ができなくなるという2通りの限界があります。 ダイの溝幅についての限界は、加工する板厚によって決まる加工に適切な溝幅の限界です。この横幅より狭すぎると、金属素材が反ってしまったり、曲げ傷が深くなったりするため、限界内の適切なダイの溝幅を選択しなければなりません。 もう一つの限界は、曲げ加工が金型の干渉によりできなくなる加工可能範囲の限界です。曲げ加工をするには、曲げ加工が可能な範囲(限界値)があります。 例えば、最小曲げ高さ・あざおり幅・穴から端までの長さ・穴から折り曲げ線までの長さの限界値などです。 この加工可能な限界値は、設計内容や加工メーカーにより異なるため、ヤゲンの断面形状シートやリターンベンドの限界グラフなどを使うことで、加工可能かを確認することができます。 曲げ加工の種類 曲げ加工の種類には、大きく分けて型曲げ・フランジ成形・送り曲げの3つがあります。 それぞれについて、解説していきます。 型曲げ 型曲げは、金属素材を型に固定し、加圧して曲げる加工法です。型曲げの代表的な方法には、ワークをダイに固定して上からパンチで押し込んで曲げる「突き曲げ」や、フォールディングマシンでパンチを側面から起こすようにワークを曲げる「迎え巻き曲げ」などがあります。 型曲げが向いているのは、板状や棒状のワークをV字・L字・U字・Z字など、単純な断面の形状に曲げる加工です。型曲げの種類は、断面形状によりV曲げ・L曲げ・U曲げ・Z曲げなどに分けられます。 V曲げ加工には、突き曲げと自由曲げがあり、突き曲げにはボトミング・コイニングがあります。自由曲げは、エアベンディングやパーシャルベンディングとも呼ばれています。 それでは、型曲げの中から多用されている①V曲げと②L曲げについて、詳しく解説していきましょう。 ①V曲げ加工方法 引用元:株式会社ヒラミヤ V曲げは板金加工の中で、最も基本的な曲げ加工であり、最も多く使用される加工法です。 加工形状は、アングル形状の単純な1工程曲げから、建材、サッシなどに用いられる複雑な多工程曲げまであります。V曲げ加工の製品は、用途が幅広く汎用性も高いため、日常生活の場面で目にすることも数多いです。 V曲げで加工可能な材料の板厚は、0.3mmの極薄板から30mmぐらいまでの厚板といわれています。しかし、この加工可能な板厚は、先に述べたように加工メーカーや作業者の技量、設計内容などに関わるところが大きくなります。 引用元:金型ワールド V曲げには、上画像のようになエアベンディング(パーシャルベンディング)・ボトミング・コイニングの3種類の形態があります。これは、金属素材(ワーク)にかける圧力の違いによります。 どのようなV曲げ加工が適切な加工方法かは、対象となる製品の精度や工場設備の能力により選択することになるでしょう。 エアベンディング 引用元:株式会社コニック 上画像で示すようにエアベンディングは、ワークが赤い3点のみ金型に接触します。ダイやパンチとワークが面で接触しない自由曲げであるところが特徴で、突き曲げ(ボトミング・コイニング)とは大きく異なるところです。 この3点を加圧する曲げ加工であるため、折り曲げる角度を鋭角から鈍角まで自由に決めることができるのが利点です。 パンチの位置を途中で止めて曲げ加工できるため、同じ金型を使いながらもパンチを止める位置を変えることで、さまざまな角度に曲げることが可能です。金型の種類と構造などを変えれば、様々な断面形状の加工が施せます。多品種少量生産や試作品など、幅広くかつようできる加工法です。 しかし、ワークや加工機械の性能に角度の精度が左右され、安定して精度を高めることが難しく、高い技術力が要求されます。 エアベンディングのダイの溝幅(V幅)は、板厚の12~15倍を目安に選定するのが良いされています。ただし、曲げ部の内側の半径が製品の仕様を満たしているか、フランジ長さが最小フランジの長さより大きいかも確認する必要があります。 ボトミング 引用元:株式会社コニック ボトミングは、V曲げ加工の中で最も良く使われる加工法です。ボトミングが、「底押し」や「底突き」と製造現場で言われるのは、ボトムが英語で「底につける」という意味があるからでしょう。 ボトミングの特徴であり、エアベンディングとの大きな相違点は、上画像のようにワークがダイに面で接触するところです。ボトミングの利点は、加圧が小さくても、高い精度の曲げ加工が実現できる点です。 しかし、材料が曲げ加工後に反発する「スプリングバック」が発生することがあります。 そのため、ボトミング加工の場合はスプリングバックの分を計算に入れ、パンチ先端V角度とダイのV溝角度を完成形状の角度より鋭角にし、多めに曲げ込んで精度を高めるのが一般的な方法です。 例えば90度曲げのボトミング加工をする時、スプリングバックの小さいケースでは90度の金型を使用しますが、スプリングバックの大きいケースでは88度の金型を使用したりします。ボトミングのダイの溝幅(V幅)は、板厚によって異なってきます。 ダイの溝幅(V幅)は、板厚が0.5~2.6mmの場合は板厚の6倍ほどで、板厚が3.0~8mmの場合は板厚の8倍、板厚が9~10mmでは板厚の10倍が目安になります。ただし、曲げ部の内側の半径、最小フランジの長さ、加圧力も鑑みて決定するようにします。 コイニング 引用元:株式会社コニック コイニングは、V曲げ加工の中で最もワークにパンチとダイが密着する加工法です。加圧が大きいため機械設備が大きくなり、金型の摩耗が早く耐圧も必要とされます。 近年は、加工機械のスペックが進歩したこともあり、コイニングはあまり汎用されていません。 コイニングは、硬貨を製作するという名前の通り、スプリングバックが極めて小さく、小さな曲げ内Rを可能にするため、正確で高精度な曲げ加工が実現できるのが利点です。 しかし、上画像のようにパンチ先端をワークに食い込ませるようにするため、ボトミングの5~8倍の加圧をしなければなりません。そのため、加工機械のスペックに多少左右されますが、SPCCの板厚で2mmほどが加工限界になります。 コイニングのダイの溝幅(V幅)は、板厚の5倍程度が選定の目安になっています。ダイの溝幅(V幅)がボトミングより小さいのは、V溝の面積を小さくして加圧を効率的にワークにかけるためです。 ②L曲げ加工方法 引用元:林洪鑾「薄板のL曲げ加工における高精度化の研究」 L曲げ加工とは、上画像に示すようにV曲げ加工とは異なり、材料の端を滑らないようにパッドなどで押さえ、もう一端をパンチでL字型に折り曲げる「押さえ曲げ」と呼ばれる加工法です。 パッドの押さえる力とパッドとダイに挟まれているワークの面積(ウェッブの面積)が、L曲げ加工の重要な点で、加工精度に大きな影響を与えます。 L曲げ加工は上画像のような工程で曲げ加工するため、V曲げのボトミング加工の時のように、スプリングバックを計算に入れて多めに曲げ込み精度を高めることは難しいです。ですから、スプリングバックの分を多めに曲げこむことが必要な直角曲げも、L曲げ加工ではできません。 L曲げ加工を使用する理由 一般的に曲げフランジが長い大板を加工して製作する配電盤・制御盤の扉・空調機のカバーなどに、L曲げ加工が使用されます。 その理由は、曲げフランジが長い大板の一端をV曲げで曲げると、自重により腰折れなどが発生し、製品の精度や外観を悪くしてしまうからです。 一般的なV曲げ加工でそれを防ぐには、加工中にワークを数人の作業員で保持しなければなりませんし、跳ね上がりによる危険や、曲げ完了後のワークの落下にも注意を払わなければなりません。 このような無駄や危険を排除するためにも、配電盤・制御盤の扉・空調機のカバーなどの大板を加工する製作には、ワークをホルダに乗せたまま加工できるL曲げ加工が使用されるのです。 L曲げ加工の特徴 L曲げ加工には、次のような2つの特徴があります。 ①非対称であること ダイ側とパンチ側で曲率が対称であるV曲げ加工と異なり、L曲げ加工ではパッド側とパンチ側の曲率が非対称になります。 パッドで押さえた側の曲率は小さく、パンチで折り曲げる側の曲率が大きくなるのです。 ②スプリングバックとスプリングゴーが発生する L曲げ加工では、目標角度まで曲げた後、パンチが材料から離れるとスプリングバックが生じ、パッドが材料から離れるとスプリングゴーが生じます。 スプリングバックとスプリングゴーが生じるのがL曲げ加工の特徴です。パンチが材料から離れると、V曲げと同様に曲げ外側に引張り応力、内側に圧縮応力が生じています。 そして、パッドからワークが離れる時、これらの応力による曲げモーメント(曲げる力)がゼロになるようにワークが弾性回復し、スプリングバックが生じます。 参考:【曲げ加工】の基礎やV曲げ/L曲げ加工について徹底解説!! フランジ成形 フランジ成形はL曲げ加工が発展したもので、自動車のボディなどの複雑な湾曲を作る製品にも使われる加工法です。 フランジ成形には、内側に湾曲する「伸びフランジ成形」と、外側に湾曲する「縮みフランジ成形」の2種類があります。 フランジ成形は、圧縮や引張のひずみのコントロールが難しく、直線曲げの加工とは違ってシワや割れなどが発生しやすくなるため、機械設計を精密にしなければなりません。 送り曲げ 引用元:株式会社井田商店 送り曲げは、型曲げのように金属素材を型に固定する加工法とは違い、素材を固定せずにラインの中で順次曲げ加工を行っていく方法です。 3本のロールで曲げ加工することを「ロール曲げ」、複数のロールで連続して曲げ加工することを「ロール成形」といいます。 連続して曲げ加工をすることができるため、複雑な断面形状の加工も可能です。作り上げる形状の複雑さに合わせ、半径の大きなロールや小さなロールを組み合わせ、送り曲げ加工をすることができます。 曲げ加工における金型 金型の選択を行う場合は、その金型が適切な金型としての条件を満足しているかどうかを判断しなければなりません。 さらには、その条件が曲げ加工作業にどのように関係するかを理解しておかなければなりません。 金型の適切な条件 適切な金型の条件として、以下の点が挙げられます。 適切な金型の条件 ①取り付け、取り外しが容易にできる長さであること ②完全な熱処理が施され、十分な強度があり耐摩耗性が高いこと ③寸法精度が高いこと ④機種に関係なく使用する上での互換性が高いこと 金型の種類 一般に曲げ金型は、大きくパンチ(上型・上刃・雄型)とダイ(下型・下刃・雌型)に分類されます。 パンチやダイは、各機械メーカー別・用途・特徴により様々な取り付け方式や形状があります。 市販されている曲げ金型は、大きく分けて2つあります。 市販の曲げ金型の種類 ①パンチ・ダイそれぞれの仕様・形状を規定し、在庫品として製造・販売している標準金型。 ②加工用途などに合わせて専用に設計・製作する特殊金型。 標準金型は、コスト的にも安価であり、愛個品であるため納期的にも入手が容易です。 他方で、特殊金型は基本的に受注生産品であるため、標準金型に比較して価格が高く納期がかかるのが一般的です。 もっとも、加工の合理化や省力化を実現することができます。 パンチとダイ パンチは、一般的にその断面形状や刃先角度などの特徴によって分類することができます。 パンチの分類 ・V曲げ(90°・鋭角)用パンチ ・曲率の大きいR加工を行うR曲げパンチ ・ヘミング(潰し)加工を行うフラットパンチ ダイは、一般的にその断面形状・V溝の数・V溝の角度・構造・加工内容などによって分類することができます。 1Vダイ・2Vダイや鋭角ダイのほかに、ヘミング加工用のダイなどがあります。 板金の曲げ加工Q&Aまとめ Q1.板金曲げ加工の種類を教えてください。 主に、型曲げ・フランジ成形・送り曲げがあります。型曲げは、金属素材を型に固定し、加圧して曲げる加工法です。フランジ成形は、複雑な湾曲を作る製品にも使われる加工法です。送り曲げは、素材を固定せずにラインの中で順次曲げ加工を行っていく方法です。 Q2.曲げ加工の反りの原因は何ですか? ワーク内側に縮み、外側に伸びが発生することで歪みが生じます。その歪みが反りにつながります。長いワークのL曲げなどで発生します。 Q3.曲げ加工の反りの対策はありますか? 曲げ部分に穴を空けることで、反りが発生しにくくなりますが、強度に問題が無いか確認しておく必要があります。 曲げ加工を板金加工業者に発注したい方へ 「曲げ加工を工場に発注したいけど、どこの工場にお願いすれば良いかわからない・・・」 「曲げ加工の発注で一気に複数の工場から見積もりをもらえたら良いのに・・・」 そんなお悩みをお持ちの方は、ぜひMitsuriにご登録ください。 いますぐ下の赤いボタンをクリックしてご連絡くださいませ!
金属を加工する際の一つの手段として用いられるのが、「レーザー」。 レーザー加工はその有用性から、工業の分野ではもちろん医療の分野でも一部取り入れられている方法です。 そんな汎用性が高く、実用性が高いレーザー加工なので、発注する工場を選ぶのはとても大切です。 レーザー加工が可能な工場を探す際にこのようなお悩みをお持ちではないでしょうか? 「レーザー加工を依頼したいけれど、初めてでどこに頼めばいいかわからない……」 「他の工場で断られてしまって、依頼先に困っている……」 探す中で、こんなお悩みを抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。 その他にも、「小ロットでの発注を断られてしまった……」といったお悩みや、あるいは「いつも依頼している工場に小ロットで発注するのが申し訳ない……」とお悩みの方もいるでしょう。 レーザー加工とは レーザー加工とは、言葉そのままにレーザー光線を使って加工することです。 レーザーを使って金属や木材などを切断したり穴あけして製品を作っていく、プレス加工や穴あけ加工と同じ金属加工の一種です。 レーザー加工機を使うことによって、もともと手作業で加工していた商品や材料を大量に素早く加工することが可能になりました。 金属や木材だけでなく、柔らかくて加工しずらいゴム素材や布地にも文字や記号を記す表面処理がしやすくなったりと、レーザー加工が普及したことによって加工できる幅が格段に広がりました。 手作業では難しい複雑な加工も容易にできるようになり、今ではいろいろな業種に導入されています。 いろいろな業種の一つに、加工とは違いますが近年では医療でもレーザーの導入が進んでいます。 手術時に出血を抑えるためにレーザーメスを使ったり、虫歯にレーザーをあてて治療したりと、日々、金属加工や日常生活で活躍しています。 そんな工業以外の分野でも注目され、研究が進んでいるレーザーですが、その原理はどうなっているのでしょうか。 次の項目で分かりやすく解説していきましょう。 レーザー加工の原理 レーザーと聞くと、やはり皆さんは高熱で高火力を想像するでしょうか。 テレビやゲームで目にするレーザーは一瞬触れただけでも体が溶けたり、レーザーの光を振り回すと瞬時に周りの建物や金属が切断されたりする光景が多いですね。 それを想像すると、確かにテレビのレーザー光線は超がつくほどの高熱を放っていることになります。 実際、金属加工用のレーザーに触れると大変なことになってしまいます。 金属ですら瞬時に切断したり穴をあけたりするので、人体を通せば触れた部分は一瞬でどうにかなってしまうほどの威力が出いてます。 恐ろしく危険なので、レーザー加工機を扱う際はメンテナンスの時を含め重々注意が必要です。 光の波と熱の振動 レーザー加工の原理は波と振動によって成り立っています。 レーザーの威力ですが、なぜ光に金属を溶かすほどの威力があるのかと言うと、それは光の波を合わせているためです。 かみ砕いて説明しましょう。 普通、光というと太陽光や電灯のようにあらゆる方面に光が発せられ、さらに光の色が何色も合わさっています。 太陽光や電灯の光の色は白いですが、白く見える理由はいくつもの光が合わさっているためなんですね。 絵具は何色も混ぜることにより黒くなる性質を持ちますが、光は何色も混ざることにより白く見えるように人間の目はできているのです。 引用元:マーキング学習塾 太陽光などの白い光は何色もあるため、光の波が合いません。 しかし、レーザーの光は一点集中しており、しかも単色なので光の波がそろっているのです。 上の画像のように、波長や山と谷がそろっている光をレーザー加工機内部にあるレンズに通すと、密度の高い光ができあがり、威力が格段に増すのです。 分かりやすく例をあげると、ホースから出る水を散水ノズルで細くすると、水が出る勢いが増す感じです。 ホースの水を細くして強力にする散水ノズルが、レーザー加工機でいうレンズの役割にあたります。 加工機の中を通ってきた光を集光レンズで細く絞ることで光を集中させ、威力を格段にあげて素材を溶かします。 金属や木材などの材料にレーザー光を当てることにより、材料の原子や分子が振動すると急激な発熱が起こります。 そうして溶かした金属をアシストエアーで瞬時に飛ばして、穴をあけた部分をきれいにしていきながら材料を掘り進めていきます。 かなり説明を省いていますが、詳しく説明するとニュアンスが伝わりにくくなってしまうのでこの程度に留めておきます。 レーザー加工機の仕組み レーザー加工機は、大きく分けると3つの系統で構成されています。系統ごとに多くの制御パラメータが関連しており、加工目的によって最適化して使われています。それぞれの系統について詳しく見ていきましょう。 レーザー発振器系 レーザー発振器は、光を発振する装置です。励起光と呼ばれる光をレーザー媒体に照射し、媒体特有の波長を発生させた後、共振器に当てることで増幅させてレーザー光を発振するメカニズムになっています。レーザー加工時に最初に検討される装置のひとつで、以下の検討条件をひとつずつ決定していくことになります。 主な検討条件 出力 波長 パルス幅 発振モード(連続派・パルス派) 切断用の熱源には、CO2レーザーの他、YAGレーザーやYLFレーザー、Ybレーザーなどが用いられ、加工する材料や板の厚み、求められる加工精度によって異なるレーザー光の波長、出力が選ばれます。 加工光学系 加工光学系は、レーザー発振器から発生したレーザー光を集めて、テーブルに照射する装置です。 レーザー発振器からレーザー光を送り出す「光路」と、伝送されたレーザー光を集めて対象に照射する「集光系」の2つで構成されています。 レーザ加工に使われている光学系の種類は、大まかに分けると次の4つです。 ①集光光学系(固定光学系) レーザ発振器から出力されたレーザ光を、集光レンズを使って集めて加工するタイプ。最も基本的な光学系のひとつで広範囲の加工に適している ②スキャニング光学系 ガルバノスキャナー(ヘッド部内のミラーが動くタイプの装置)、f-θレンズ(レーザービームを2次元走査させるレンズ)で構成される光学系。走査型とも呼ばれ、レーザーマーキング(刻印・彫刻)や溶接のリモートヘッドなどに多い ③結像光学系 マスクパターン、面発光を行う光源像を対象材料に転写できる光学系で、パターン(模様)を一括加工する時などに使用 ④特殊光学系 屈折型光学系(非球面レンズを利用)、回折光学素子利用タイプ(レーザー光をターゲット上で回折させて光の干渉パターンを作る)など特殊なタイプで、装置自体は受注生産が多い 求められるレーザー発振器の特徴や、加工に求められる精度、技術などに合わせて、適切な光学系を選んで使用します。 加工物質系 加工物質系とは、対象物を固定するためのテーブル及び加工物を指します。レーザー加工における加工物の性質は仕上がりを決める重要な要素です。反射率や吸収率、透過率といった加工物の光学的な性質、熱的性能なども仕上がりに影響します。 照射位置を移動しながら加工する場合、集光系あるいはテーブル、またはその両方を動かす必要があり、それらを制御する駆動システムが必要です。精密な加工を行う際、テーブル送りのスピードも細かく調節します。高出力レーザー加工機であれば問題ありませんが、低出力タイプでは適切な速度設定が必須です。 レーザーカット加工による影響【材質別】 複雑な部材や、微細な部分への加工を得意とするレーザー加工では、材質によって注意すべき点があります。レーザーカット加工が加工対象に及ぼす影響について、材質別に解説していきます。 鉄 鉄は、加工しやすく入手性も良く、広範囲に用いられる一般的な金属です。ごく薄い薄板から数十mmの厚板まで豊富に板厚が揃っており、幅広い用途で使用されます。塗装やメッキ、表面処理鋼板などを使うことで、鉄のデメリットである錆びやすさをカバーできます。 引用元:astamuse 加工すると図に示す通り、レーザー加工特有の現象で、穴がテーパー状になります。テーパーとは、加工面がすり鉢状になっている状態です。厚板になるほど入口と出口の差が広がる傾向があります。 この差をなくすためには、ドリルやリーマーなどを使った追加工が必要です。 また、金属板金の打ち抜き加工によく使われるタレットパンチプレスに比べると、熱による変形や反りが出る恐れも出てきます。 ステンレス ステンレスは、英語で錆びにくい鋼という意味の「Stainless Steel」です。耐食性や耐熱性、加工性に優れており、キッチン用品から建築材料、医療機械器具、航空機部材まで、あらゆる分野で採用されています。100%リサイクルが可能なため、サステナビリティや環境への配慮への関心が高まっている現在、非常に注目されている材質です。 鉄と同じように、レーザー加工を利用することで穴がテーパーになる可能性が高く、厚板になるほど穴の入口と出口の差が出やすくなります。こうした差を埋めるために、ドリルやリーマによる追加工が必要です。また、熱による変形や反りが、タレットパンチプレスよりも出やすい点も同様に注意しましょう。 アルミニウム アルミニウムは鉄に比べて比重が35%ほどと軽量な金属です。軟性、展延性が高く、溶接性、耐食性、熱伝導性も優れているなど、加工に向いている材質として幅広い業界で使用されています。 アルミニウムは反射率が高すぎるため、レーザー加工に向かないケースがほとんどです。また、鉄やステンレスに比べて、加工後に裏面に尖ったバリができやすいので、後処理が必要です。レーザー加工機特有の穴のテーパーや、熱による変形や反りについては、鉄、ステンレスと同様に対応が発生します。 銅 鉄と較べて熱伝導率が高い銅のレーザー加工では、反りや変形、腐食が起こりやすい点に注意が必要です。 また、銅は反射率が高いためレーザーが反射することによって機械に支障が出る恐れがあること、銅自体が高額なので失敗した際の損害が大きくなることなどから、実際に加工できる業者が限られてきます。 出力を抑えながら切断する、フルスピードにはしない、細かな配慮をするなど、高度な技術を持ち合わせた業者であれば、高品質な仕上がりが可能です。 上記のような金属へのレーザー加工も、Mitsuriなら的確な加工技術を持って仕上げることができます。 参考記事 金属へのレーザー加工については、下記記事でも詳しくご説明していますのでご参照ください。 ⇒金属をレーザー加工ならMitsuri!【小ロットの依頼もOK】どこよりもカンタンに依頼ができます! レーザー加工のメリット レーザー加工の原理が何となくわかったところで、次はメリットの解説に移ります。 レーザー加工のメリットは大雑把に以下の通りです。 ・仕上がりが早い ・仕上がりがきれい ・加工の自由度が高い ・難度の高い加工が可能 ・メンテナンスに手間が掛からない 当然箇条書きだけでは不十分なので、項目ごとに一つずつ説明していきます。 上から順に見ていきましょう。 作業に手間が掛からない レーザー加工は金型を使う必要がありません。 基本的に金属の加工には金型と呼ばれる「元の型」が必要になります。 元の型は他の加工方法ですと、製品を早く均一に大量生産するために必須で、種類も様々あります。 しかし、レーザー加工では金型の変わりにパソコンで形を作るため、一度作った後はデータを入力するだけで加工・生産ができるのです。 金型を使わないため加工途中の金型交換の手間が省けて作業効率が良くなります。 仕上がりがきれい レーザー加工機を使えば加工後の処理に手間が掛かりません。 バリやカエリの発生を抑えることができるので、切断面がきれいに仕上がります。 加工の際に起こりえる歪みやひび割れのリスクもなくすことができ、安定した品質を保つことができます。 従来までの加工方法では必要だった後処理の手間を省けるのは大助かりですね。 加工の自由度が高い 加工できる素材の幅が広いのもレーザー加工のメリットです。 他の方法では硬すぎる金属や柔らかすぎる布地でも、素材によってレンズや照射の出力を変えることで問題なく加工できます。 熱で変形してしまうような薄版の素材でもレーザー加工なら大丈夫です。 また、穴あけや切削以外にも溶接や熱処理、製品に文字を入れ込むマーキングなど様々な加工が可能です。 いろいろな製品を作るには、従来では複数の加工方法を取り入れる必要がありました。 ですが、将来的にはレーザー加工だけですべての素材や加工方法を実現することができるかもしれませんね。 難度の高い加工が可能 レーザー加工の台頭により、複雑かつ精密な形でも比較的容易に加工することが可能になりました。 レーザーの光が細いので、他の加工機器では穴あけが出来ないような細かく小さな場所でも正確にでき、曲線を辿った切断でもレーザーなら安定して加工することができます。 複雑な絵柄を描いたり、錆びにくさを向上させるなど製品の様々な表面改善もレーザー加工で出来るので、非常に便利な加工法となってきています。 工業分野の人手が足りない今の時代、できるだけ簡単に、誰にでも品質が安定した製品を作るには、レーザー加工はうってつけと言えるのではないでしょうか。 メンテナンスに手間が掛からない レーザー加工では材料と工具が接触しないので、刃物や研削盤などを消耗することがなくメンテナンスに手間が掛かりません。 メンテナンスで必要なのはレンズをきれいにしたり、アシストエアーを清掃したりする程度なので交換作業も必要ありません。 また、加工時に材料を切った後の粉塵が発生せず、刃物などに付かないため、除去する手間も省けて作業も楽になります。 金属加工ではこういったメンテナンスの時間を割くことで生産効率を上げていくことも重要でしょう。 レーザー加工のデメリット 数多くメリットがあるレーザー加工ですが、デメリットもそれなりにあるようです。 こちらも詳しく見ていきましょう。 加工速度が遅い 切削加工やプレス加工と比べると加工速度に劣る面があります。 多彩な加工方法を持ち合わせるレーザー加工ですが、速度重視で見るとやや不利な傾向があるようですね。 金属加工にはレーザー加工以外にも早くて精度が高い加工方法がたくさんあるので、必要に応じて適材適所の板金機械を使っていくのです。 厚板の素材は加工しずらい レーザー加工には適切な焦点距離というものがあり、レーザーの光が集中している箇所があります。 その焦点距離の範囲でないとエネルギー密度が低下して素材が溶かせなくなるのです。 レーザーは真下に向かっているように見えて、実は光線同士が交わっているんですね。 なので、この焦点の位置から遠ざかってしまうとレーザーの威力が弱まって加工できなくなるということです。 レーザー加工の意外な弱点ですね。 下に向けられているレーザーが作業台や床を貫通しないのは、こういった仕組みがあったのです。 反射率の高い素材は加工できない アルミや銅など反射率が高いとされている素材は、古いタイプのレーザー加工機ですと上手く加工できないことが多いです。 レーザーの光を弾いてしまっては材料に熱が伝わらないので、当然と言えば当然ですね。 ですが近年になって、反射率が高い素材でも加工できるレーザー加工機が登場しています。 これを機に、これまでレーザーではできなかった素材も、これからどんどん加工できるようになっていくでしょう。 コストが高い 特に不思議なことも意外なこともないですが、レーザー加工機は高いのです。 性能がいい反面、値段は相応ということですね。 消耗品や維持費にもけっこうな費用が掛かり、電気代やガス代などの光熱費に加えて、焦点レンズやミラーには定期的に交換が必要です。 工業製品と言えど精密機械です。 大切に扱いながら、稼働時間やランニングコストにも注視しながら活用していかねばいけません。 レーザー加工の種類 レーザー加工のレーザーには、金属加工用として一般的に使われているもので3種類のレーザーがあります。 3種類とも特徴に違いがあり、用途も違うので、その違いを重点的に説明していきます。 CO2レーザー 3種類のうち最も使用されているレーザー加工機ですね。 名前にあるように二酸化炭素を利用しているガスレーザータイプの加工機です。 金属、木材、ゴム、ガラスなどほとんどの素材に適応できます。 活用の幅に加え値段も他2種類の加工機よりも安く、CO2レーザーが主流になるのも納得の性能です。 ただし弱点として、アルミや銅など反射が強い金属には不向きとなっています。 ファイバーレーザー ここ数年の間に開発された新しいレーザー加工機です。 CO2レーザーには向かない銅やアルミなどの難溶接材や反射が強い金属の加工ができ、新しく出ただけあってCO2レーザーの弱点を補う特徴を持っています。 加工機自体は高いものの、レーザーガスがいらなかったり、エネルギー効率が良かったりとランニングコストが安く抑えられます。 近年出始めたばかりで本体価格も高いため、まだまだ普及していませんが、今後の進展しだいでは主流になりえるかもしれません。 YAGレーザー 金属の加工以外に医療でも使われるレーザーです。 金属加工では主に溶接とマーキングに使われ、溶接では薄い素材でも変形や歪みがなくきれいに仕上げることができ、溶接スピードも早くできます。 マーキングとは簡単に言うと出来上がった製品に文字や記号を書くことです。 YAGレーザーはあらゆる素材に精密かつ高速で写し出すことができます。 医療では歯や目の治療に使われています。 そんな高性能なYAGレーザー加工機ですが、CO2レーザーと比較すると値段やランニングコストが高くついてしまい、そこがネックと言えるでしょう。 レーザー加工事例 レーザー加工の種類ごとに、実際の加工例をご紹介します。 ステンレス鋼板へのCO2レーザーカット加工 引用元:大畠製作所 ステンレス鋼板(SUS304、2.5mm圧)のCO2レーザーカット加工 アルミニウム合金へのCO2レーザーカット加工例 引用元:大畠製作所 アルミニウム合金(A5052、8mm厚)へのCO2レーザーカット加工 鉄クロム合金のレーザーカット加工例 引用元:ベルテックレーザ株式会社 鉄にクロムを加えた合金(炭素が1.2%以下、クロムを10.5%以上含む特殊鋼)のレーザーカット加工 参考記事 板金加工については、下記記事も参考にしてください。 ⇒【レーザー加工】板金加工におけるレーザー加工について専門家が徹底解説! レーザー加工のまとめ 一流の板金加工業者に発注しませんか? レーザー加工と言うと物騒な印象があり、危険ではないかと思われるかもしれませんが、テレビで見られるようなレーザーとは別物です。 まったく危険がないかと言われればウソになりますが、正しく使うことによって、非常に幅広く質の高い加工ができるのです。 レーザー加工は現在においても、次々に新しい加工法が生み出されています。 これから将来的に、性能面でも安全面でもますますの進展に期待が持てることでしょう。
板金加工とは何か、という問いに答えることは決して簡単ではありません 。 というのも、板金と呼ばれる業界や加工内容はとても広く、また関係する作業はそれぞれ独立し、複雑に絡み合っているからです。 とはいえ、板金を無視することも簡単にはできません。 なぜなら、私たちの生活は板金加工によってつくられた製品なしでは成り立たないからです。 身の回りを見渡してみてください。 スチールの机、ロッカー、書庫、キャビネット、パソコン、冷蔵庫、洗濯機、電子レンジ、エアコン、テレビ・・・。 これらの製品には、ほとんど板金が使われています。 そんな日常の中にも溶け込んでいる、板金加工とはどのようなものなのでしょうか? 板金加工の特徴や種類、または材料まで専門家が徹底解説致します! 板金加工とは? 板金加工は、一般に金属の板を切ったり、曲げたりすることで製品をつくる加工方法のことをいいます。 ここでは、板金の加工方法にこだわり、以下の定義を採用してみたいと思います。 板金加工とは 、 金属加工の一分野である塑性加工の一領域で、 主として板材を切断、 抜きおよび曲げなどにより、 さまざまな形状(部品・製品)を作り出す加工方法である。 少し難しい定義ですが、一つずつ紐解いていきます。 金属加工とは 金属加工とは文字通り、金属を材料として加工する分野のことを指します。 金属加工で使用する材料には、鉄鋼材料、アルミニウム系材料、銅系材料などがあります。これに対して、非金属加工で使用する材料には、プラスチック材料やセラミック材料などがあります。 材料については、第2回の「板金加工、材料の基礎」で解説します。 塑性加工とは 塑性加工を理解するには、弾性変形と塑性変形という概念が欠かせません。 ・弾性変形とは 材料に一定の力を加えると形が変形しますが、加えた力を取り去ると元に戻ることがあります。 これを弾性変形と言います。 ・塑性変形とは これに対して、材料に一定以上の力を超えると力を取り去っても変形が残ります。このようにして起きた変形を塑性変形と言います。この塑性変形を利用した加工方法を塑性加工と呼びます。板金加工で行う、切断、抜き、曲げは、いずれも塑性加工に当たります。 板金加工と他の塑性加工との違い 板金加工以外の塑性加工に、圧延、転造、押し出し・引抜き、鍛造、プレスなどがあります。 板金加工と他の塑性加工との違いはあいまいといわれますが、それぞれの加工の概略を見ておくことはとても有益です。以下、簡単に見てみましょう。 ①圧延加工 回転するロールの間に材料を通すことで、ロールのすき間量まで薄くする加工方法です。圧延加工は平板だけではなく、さまざまな形状の成形も可能です。 この圧延加工によって、板金加工で使用される板材が成形されます。 引用元:モノタロウ ②転造加工 丸い工作物を工具(ダイス)に強い力で押し付けながら回転させることで、工作物の表面をダイスの逆形状に成形する加工方法です。ねじや歯車はこの転造で加工されています。 引用元:ユニオンツール株式会社 ③押し出し・引き抜き加工 押し出し加工とは、ほしい断面形状の穴のあいたダイスに材料を通すことで、長尺の製品をつくる加工です。レールやフレームなどはこの加工方法でつくられています。このダイスへの材料の通し方によって「押し出し加工」と「引き抜き加工」が区分されます。 ⅰ. 押し出し加工 は、コンテナと呼ばれる筒状の容器に入れた材料に、力をかけてダイスから押し出すことで、ダイスにあいた穴形状の断面を持った形に成形する加工方法です。 ⅱ. 引き抜き加工は、先の押し出し加工や圧延加工した材料を使用し、材料の先端を細めてダイスの穴に通してから、この先端をつかんで引っ張ることで、ダイスの穴形状に成形する加工方法です。 引用元:東大阪市技術交流プラザ ④鍛造 鍛造は「鍛え造る」と書くように、ハンマやプレス機で金属に大きな力を加えることで成形すると同時に、金属組織の密度を高める加工方法です。板金加工は、基本的に板厚を変化させませんが、鍛造は厚さを変化させるという点で違いがあります。 ⑤プレス 板金加工と他の塑性加工との区別はあいまいである、といいました。学会や業界団体、企業や製品などによって、区分がさまざまなのが実情です。 このような事態に陥っている理由の一つに、全く同じ製品であっても、異なる加工方法によって作ることが可能である、ということが挙げられます。 とりわけ板金加工とプレス加工は重なるところが多く、はっきりと区別するのは困難です。 ただ、本記事では両者の強み、弱みに着目して、区別して考えてみたいと思います。この点については、後述の 「板金加工の特徴」で考察します。 また、加工方法ではなく、製品の完成に焦点を当てて、板金加工と呼ぶ場合もあります。実際の製造現場では、塗装や溶接、組立まで行い、完成品を出荷することがあるためです。 本連載では、塑性加工としての板金加工について解説することに止めます。以下の動画では溶接まで踏み込んでいますが、板金加工の全体像をつかむ上で、有益です。是非視聴してみて下さい。 金属板でストーリーを組立てる~板金加工~ 概要 モノづくりの現場で磨きをかけるその道の熟練者を追うドキュメンタリーシリーズ。埼玉県所沢市にある竹下工業では主に事務機器・空調機器・医療機械・配電盤などの筐体ならびにその部品を製作しています。板金加工は、機械化の進んだ分野で、レーザーカットマシンによる金属の板材を切断加工、タレットパンチプレスによる穴あけ加工、ベンディングと呼ばれる曲げ加工を施し、必要な箇所を溶接するというように、今や自動化・管理されています。番組では、熟練技能者の技が求められる溶接工程の技の魅力を紹介します。 出演者名・所属機関名および協力機関名> 竹下 力(竹下工業㈱),竹下 祐司(竹下工業㈱),今井 繁(竹下工業㈱),玉井 今朝治(竹下工業㈱),西村 幸弘(竹下工業㈱),高塚 正也(㈱青二プロダクション),竹下工業㈱ 引用元:サイエンスチャンネル 板金加工の中身 ここまで、金属加工における板金加工の位置づけについて確認してきました。ここから先は、板金加工の具体的な中身を見ていきたいと思います。 板金加工は、手加工板金と機械板金(工場板金、精密板金)の2つに分類することができます。 手加工板金とは 手加工板金は、その名が示す通り、主に人間の手の力を使用する加工方法です。 手加工板金には、自動車板金 、 打ち出し板金 、 建築板金があります。 これらの板金で使用する道具を見てみると、板金加工が従来、手加工で行われてきたことがよくわかります。 ・手加工板金で使用する道具 引用元:Tech Note「試作車ボディの板金職人、13種類の道具をどう使い分けるのか?」 画像引用元の記事は、自動車板金についてかかれたものですが、とても内容の濃い記事です。一読をお勧めします。 機械板金とは 手加工板金に対して、機械を使用する板金加工方法を機械板金とよびます。 機械板金は、機械を使用するためには一定以上の敷地、つまり工場が必要であることから工場板金 、また機械によって精密な加工を実現できることから精密板金とも呼ばれます。 機械板金による加工方法 では、機械板金によってどのような加工が実現できるのでしょうか。 機械板金には、切断加工、打ち抜き加工、曲げ加工、成形加工、絞り加工、特殊加工などの加工方法があります。これらの加工方法については、別の記事で詳しく解説します。 切断加工にはレーザーマシン、抜き加工にはパンチングプレス、曲げ加工にはベンディングマシン、というように加工方法毎に対応した機械があります。 本記事では、主に機械板金を取り上げ、手加工板金は別の連載で取り上げることとします。 板金加工の特徴 先に述べたように、板金加工(機械板金)とプレス加工は重なるところが非常に多いため、はっきりと区別できないとされています。 企業内でも板金加工とプレス加工を区別しないところが増えてきています。しかしながら、ここではあえて板金加工とプレス加工を区別し、その相違について考えてみたいと思います。というのも、両者の相違に着目することで、板金加工の特徴が明確になると考えるからです。以下、見ていきたいと思います。 プレス加工との違い 一般的に、板金加工とプレス加工の相違は、金型に集約することができます。 板金加工が汎用金型(標準金型)を使用するのに対して、プレス加工は専用金型を使用します。 日本金型協会では、以下のように金型を定義しています。 金型とは、材料の塑性または流動性の性質を利用して、材料を成形加工して得るための、主として金属材料を用いてつくった型を総称します。 例えば、自動車のボディーは金属板をプレス金型によって成形加工することによって出来上がります。 また、電話機など樹脂製品はプラスチック材料を金型に射出成形すること出来上がります。このように、金属、プラスチック、ゴム、ガラス等の素材を、それぞれ目的とする製品の成型加工用に使用されるものが金型で、金型の品質如何が製品の良否を 決定づけるものなのです。したがって、金型は製品の産みの親などといわれています。 引用元:一般社団法人日本金型工業会 プレス加工の強みと弱み プレス加工は、製品および工程ごとに専用の金型を作り、これを使用する点に特徴があります。 これにより複雑で高精度の製品を早く、安く加工することができるのです。 しかしながら、専用の金型を作るため、多量生産に向いており、生産数が少ないとそれに要した費用を償却するのが困難です。 また、製品の形状および寸法などは金型で決まってしまうため、加工者の技量に左右されにくいという特徴があります。 板金加工の強みと弱み 板金加工は、上記プレス加工と逆の特徴を持っています。 汎用金型および工具を使用することが多いため、特定の製品にかかる費用が安く、少量生産に適しています。 しかし、生産性はプレス加工に比べ大幅に低くなるため、大量生産には向いていません。 また、汎用金型を使用して工夫しながら加工するので、加工者の技量が重要な要素になってきます。 金型という観点から見た、板金加工とプレス加工の差異は、以下のように示すことができます。 板材は一体どのように作られているの? 1. 鉄を生みだす製鉄と製鋼 ・製鉄 鉄は酸素と結びつき、安定した状態で鉄鉱石や砂鉄といった形で存在しています。そのため、鉄を取り出すためには、酸素を引き離すことが必要です。 この工程を「製鉄」といい、高さ100メートル以上もある高炉という設備を使います。炉の上から鉄鉱石と共に石炭を蒸し焼きにしたコークスを投入し、下から高圧の熱風を吹き込むことでコークスが燃えだします。この熱によって鉄鉱石を溶かします。 ・銑鉄 この時に、鉄は結びついていた酸素を手放し、炉の底にたまります。 これを「銑鉄」と呼びます。 この銑鉄には炭素や不純物が多く含まれています。 ・鋼 この銑鉄をドロドロに溶けた状態のまま転炉という設備に移し、そこで酸素を吹きつけることで炭素量を適正量にコントロールし、不純物を除去します。このようにしてできた鉄を「鋼」(こう)といいます。 ・製鋼 この鋼を溶けたまま連続鋳造設備に流し込み、さらに不純物を除去しつつ冷却していくことで、大きな塊にします。 このように不純物を取り除き、溶けた鉄を鋼片にする工程を「製鋼」といいます。 引用元:中部鋼鈑株式会社 2. 圧延機で鋼材をつくる(熱間圧延) 製鉄工程と製鋼工程を通して鉄鉱石から鉄を取り出し、鋼にするところまで見ました。 この鋼の塊は厚みが25cm近くあるので、このままでは用途が限られてしまいます。そこで、この鋼の塊から板や棒といった形状をつくります。 これが圧延加工の工程になります。 一旦冷えた鋼片を再度1000℃以上に熱し、軟らかくしてから、圧延機という設備に送ります。 引用元:日本冶金工業株式会社 圧延機は、鋼片を上下のローラーに挟み込んで徐々に薄くしていきます。 厚い板はその板形状のままで取り出します。1.2mm~19mmの板厚ではコイル状に巻き取り、これをホットコイルと呼びます。 熱い状態で圧延加工するので、この工程を熱間圧延といい、できたものが熱延鋼板として出荷されます。 板材だけではなく棒材、線材、断面形状が特殊な形鋼など、さまざまな形状もつくられます。 3. さらに圧延して薄板をつくる(冷間圧延) 板金加工に使われる板材には、さらに薄いものも求められます。 このような薄板は冷間圧延によってつくられます。 冷間圧延は、先の圧延鋼板を使って常温で圧延加工してつくられ、できたものは冷延鋼板と呼ばれます。冷間という言葉には、冷やすイメージがつきまといますが、常温でおこなう工程です。 冷間圧延では、1ミリの千分の一の極小レベルで厚みをコントロールするため、厚み精度に優れており、表面もなめらかできれいに仕上がります。あとで紹介するSPC材(冷間圧延鋼板)は、この工程でつくられた材料です。 常温で圧延することにより金属組織が乱れて硬くなるため、圧延後に焼きなましという熱処理をおこない、内部のひずみを除去して軟らかくしています。(熱処理に関しては、別の記事で解説します。) また、さびを防ぐ亜鉛メッキ鋼板は、この冷延鋼板の表面にめっき処理をおこなったものです。 引用元:中部鋼鈑株式会社 黒皮材とみがき材 熱間圧延鋼板は黒皮材、冷間圧延鋼板はみがき材と慣習的に区分されています。 酸化鉄によって生ずる黒皮は、手でさわって凸凹を感じるほど大きなことがあります。 黒皮材は、寸法精度が必要なく見栄えも問わない建築材料などに使用されます。 他方で、製品や生産設備に使う場合には高い寸法精度やなめらかな表面が求められるので、黒皮を除去しなければなりません。 これに対して、みがき材であれば、表面がなめらかできれいなのでそのまま使用することができます。 黒皮材よりみがき材の方が価格は高いのですが、黒皮材をそのまま表面を加工するコストと比較すると、みがき材の方を使用する方がメリットがあるとされています。 板材の種類を細かく分ける 1. 板材の種類 板金加工で使用される板材の多くは鉄鋼材料から構成されています。 そこで、まず鉄鋼材料と非鉄鋼材料に分けて、全体を俯瞰してみたいと思います。 ・鉄鋼材料には、軟鋼板、表面処理鋼板、ステンレス鋼板があります。 ・鋼板とは、文字通り板状に加工された鋼のことをいいます。 ・非鉄鋼材料には、アルミニウム板、銅板などあります。 ・軟鋼板としては、熱間圧延鋼板(SPHC)と冷間圧延鋼板(SPCC) が代表的なもので、一般に「鉄板」 と呼ばれています。 ・鋼板(鉄板)は板厚によって、厚板(6mm以上)、中板(3mm以上6mm未満)、薄板(3mm未満)に分けることができます。 ・ステンレス鋼板は、鋼にクロムを12%以上添加したもので耐食性に優れています。 ・表面処理鋼板は、軟鋼材を母材として表面にめっきしたもの、あるいはめっきして更に塗装したものです。 ・アルミニウムは、軽く、伝熱性、導電性に優れています。 ・銅も、伝熱性、導電性に優れていますが、高価なため構造部品などに使われることはめったにありません。 2. 板材の寸法、形状 板金材料には、あらかじめ必要な寸法に切断されたスケッチ材と、寸法が規格で決められた定尺材があります。実務では、定尺材をそのまま使い、切断、穴あけ加工を行うのが一般的です。 ・軟鋼材の定尺材の寸法は、以下の3つが広く流通しています。 914×1829mm(3×6、サブロク) 1219×2438mm(4×8、シハチ) 1524×3048mm(5×10、ゴトー) ・ステンレス、アルミニウムの定尺材は以下のものが、広く流通しています。 材料の特性 さて、いよいよ材料の特性について見ていきます。 個別の材料について述べる前に、鉄鋼材料を考える上で基本となる2つの事柄について確認しておきたいと思います。 1. 炭素量で鉄の性質をコントロール 鉄もアルミニウムも純金属では軟らかすぎて用途が限られるため、他の成分を加えることで、実用に適した性質に変えていきます。 鉄に最も影響を与えるのが炭素(C)です。加える炭素の量により軟らかい鉄から硬い鉄までつくり分けることができます。鉄鋼材料は、このように成分をコントロールされてできあがっています。 また、鉄鋼材料はこの炭素量の大小によって分類されます。炭素量が0~0.02%が純鉄 、0.02~0.3%が軟鋼、0.3~2.1%が硬鋼、2.1~6.7%が鋳鉄です。純鉄は柔らかすぎて実務上の用途がないので、軟鋼から実用領域となります。 軟鋼と硬鋼を分ける0.3%は、焼き入れ効果の有無と溶接可否の目安になります。(この溶接の詳細については、別記事で解説します。) 2. 炭素量による性質の各特長 (1)強さと硬さ:炭素量が増えるほど強く硬くなります。 (2)加工性:炭素量が増えるほど硬くなり、加工しにくくなります。 (3)焼き入れ効果:炭素量が少ないと、焼きは入らず、炭素量が増えるほど焼き入れの効果がでてきます。 (4)溶接性:0.3%以下は溶接が容易ですが、0.3%を超えると炭素の含有量が多いために溶接の熱で焼きが入り、焼き割れといった欠陥が生じやすいために溶接は避けます。 (5)溶融温度:炭素量が増えるほど溶ける温度は下がっていきます。 3. 主要な5大元素 鉄に加える成分の代表格は 炭素(C)で、その他に補助的な役割としてシリコン(Si)、マンガン(Mn)、リン(P)、硫黄(S)が入っており、これらを5大元素といいます。 ・炭素はなくてはならない存在で、強さと硬さの源泉です。 ・シリコンはけい素とも呼ばれ、弾性変形の上限値である降伏点と破断限界を示す引張り強さを増します。 ・マンガンは粘り強さを高め、焼きを入れやすくする元素です。 ・ここまでの3元素は鉄の性質を向上する大切な成分ですが、残りのリンと硫黄は基本的に有害な成分です。 以上の5つが鉄鋼材料の基本となる元素です。 炭素鋼と合金鋼の区分け 鋼は添加物の種類によって炭素鋼と合金鋼に分かれます。 5大元素のみで構成されたものを「炭素鋼」といいます これに対して、5大元素にクロム(Cr)やニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)などの金属を加えたものを 「合金鋼」といいます。 合金鋼は高価な半面、優れた性質を持っています。 身近に使われている合金鋼としては、ステンレス鋼を挙げることができます。 1. SPC材(冷間圧延鋼板) (1)概要: ・SPC(Steel Plate Coldの略)材は、0.4~3.2mmの薄板で、最大でも3.2.mmです。 ・冷蔵庫や洗濯機のボディなど家電製品などで、広く使用されています。 ・SPCは用途によって、SPCC(一般用)、SPCD(絞り用)、SPCE(深絞り用)などがあります。 ・このSPCCに電気亜鉛メッキを施したものがSECCです。 (2)強さ: 軟らかい板材なので、大きな力が加わる箇所には使用しません。 (3)加工性: 加工性は良好です。平板のまま使うか、もしくは曲げ加工やプレス加工が中心です。 冷間圧延なのでとてもなめらかできれいな表面です。 表面は削らずにそのままの面を使います。 2. SS材(一般構造用圧延鋼材) (1)概要:SS(Steel Structureの略称)材は汎用材として、金属加工で最もよく使用される圧延鋼板です。安価で市販性も高く、鋼板、棒材、形鋼とバリエーションも多く揃っています。 (2)強さ: 一般的に鋼材は、厚くなるほど降伏点が下がる傾向にあります。 これは、厚くなるほど圧延後に常温まで冷える時間が長くなり、そのことによる金属組織の変化が影響するためです。 しかし、一般環境下で使用する場合、この強さは相当の余裕度があるので、厚みによる降伏点の差異は、特に意識する必要はありません。 (3)加工性: とても加工しやすい材料です。 SS材は材料の表面が良好なので、できるだけ表面をそのまま使用します。 というのも、表面を加工すると内部応力が解放されて、そりが発生する恐れがあるからです。 内部応力とは 内部応力とは、外から材料に力を加えた際に、内部で反作用として生じる力のことです。外部の力に応じて発生する力という意味で、内部応力(単に応力とも)と呼びます。内部応力には2つの種類があります。材料を引き延ばそうとする力が働く場合の引張応力と、縮めようとする圧縮応力です。 内部応力は部材ごとに違うので、実際に削ってみなければわかりません。 合金鋼 炭素鋼の5大元素に加えて他の金属を添加したものが **合金鋼** です。 合金の元素には、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、コバルト(Co)などがあります。 SUS材(ステンレス材) (1)概要: 合金鋼の中で最も身近に使われているのがステンレス鋼です。ステンレスはStainless、すなわち「汚れが少ない、さびが少ない」を意味し、五大元素にクロムとニッケルを加えた合金です。 SUS(Steel Use Stainlessの略称)材の特徴は、何といってもさびに強い耐食性です。 クロムと酸素が結びついた緻密な酸化膜(不動態被膜)が、金属表面をしっかり覆うことによって可能になります。 以下、ステンレス鋼でよく使用されるSUS304とSUS303について、解説します。 ①SUS304(18-8系ステンレス) ステンレスの半分以上を占めるのが、このSUS304です。 抜群の耐食性を活かして、台所のシンクや、機械部品にも使用されるオールマイティな品種です。 耐熱性もあり、600℃まで使用でき、溶接も可能です。 磁性がないので磁石につかないのが特徴です。ただし、曲げ加工などによる加工硬化があると、その個所は磁性を帯びることもあります。 ②SUS303(18-8系ステンレス) 先のSUS304は耐食性が優れていますが、硬くて粘っこいために加工性があまりよくありません。 そこで、有害成分とされているリンと硫黄を含ませることで加工性を向上させたものがこのSUS303です。 耐食性は若干劣るものの、加工性が良い点は機械部品に適しています。 SUS304と同じく非磁性です。 非鉄鋼材料 1. アルミニウム 鉄が鉄鉱石から酸素を離して取り出されるように、アルミニウムも鉱物のボーキサイトから取り出されます。 鉄の場合に比べて、アルミニウムと酸素の結びつく力は、はるかに大きく、多くの電力を用いて電気分解をおこなう必要があります。 しかし、アルミニウムには優れた特徴があるため、いまや鉄につぐ生産量となっています。 以下の動画は、アルミニウムの特徴をよく説明してくれています。是非、視聴してみてください。 「電気の缶詰~アルミニウム~」 概要 奇妙な骨董屋の周期表を模した棚を前に、少女と怪しい店長のシュールなやりとりを通じて、単なる記号の羅列ではない周期表の正体を探っていきます。元素の性質、発見の歴史をじっくりと見つめると、あたかも物語の人間関係相関図のように整理された元素たちの関係が見えてくるのです。シリーズ第10回は、「電気の缶詰~アルミニウム~」と題し、アルミニウム精錬の歴史と現在の利用例、アルミニウムの特徴を紹介します。 出演者名・所属機関名および協力機関名 佐藤瀬奈(オスカープロモーション)、コハ・ラ・スマート(個人)、オスカープロモーション 引用元:サイエンスチャンネル 2. アルミニウムの特徴 アルミニウムの特徴は、鉄と比較することでよく理解できます。以下、その特徴を列挙します。 (1)軽さ: アルミニウムの一番の特徴はその軽さです。 鉄とその密度を比較すると約3分の1です。アルミニウムが工業製品として使われだしたのは、時代背景と関係しています。 20世紀に入り、航空機生産の需要が高まると、アルミニウムはこの航空機の軽量化を最大の目的に進められます。航空機の機体は、その総重量の約70%がアルミニウム合金でできているといわれています。 今では、地下鉄から新幹線、果ては人工衛星に至るまで広く使用されています。 (2)強さ: アルミニウムは鉄に比べると弱くなります。 しかし、7000系(亜鉛とマグネシウムの合金)のA7075は、炭素鋼のSS400を超える引っ張り強さがあります。 剛性の指針である縦弾性係数は、どの品種も同じく鉄の3分の1なので、同じ力がかかると鉄の3倍の変形量が生じます。 (3)加工性: 切削の抵抗が小さく熱伝導性も良いために、切削熱を拡散できます。それゆえ、加工性は非常に優れています。 高速加工や大きな切込みも可能です。 (4)耐食性: ステンレスと同じく大気中で自然に金属表面に酸化被膜を形成し、酸素と水分を遮断するので耐食性に優れます。 さらには耐食性を向上させる必要があるときには、表面処理としてアルマイト処理をおこない、人工的に酸化被膜を形成します。 (5)導電率: 電気の流れやすさを示す導電率は銀、銅、金についで高い金属です。 (6)熱伝導率: 熱伝導率は銀と銅についで高いです。 (7)耐熱温度: アルミニウムの融点は約660℃です。また強さは200℃を超えると急激に下がるので、200℃を最高使用温度に設定します。 (8)光沢と非磁性: 光を良く反射するので外観が美しく、磁性をもたないことも大きな特徴です。 3. 銅と銅合金 銅は人類がはじめて手にした金属といわれています。 鉄の溶融温度が約1500℃であるのに対して、銅は1000℃とかなり低いです。これが鉄よりも銅を早く手にした、といわれる理由です。 日本でも約2000年前から農耕具や武器、貨幣、銅鐸などに使われました。 現代では優れた伝導率や熱伝導性を活かして、情報通信や精密機器などの先端産業に使われています。 4. 銅の特徴 銅の特徴も、鉄と比較することでよく理解できます。大きな特徴は導電率と熱伝導率が抜群に良いことです。一方で高価なため、構造部品として使用することはありません。以下、その特徴を挙げてみます。 (1)導電率: 銅の最大の特徴はこの導電率の高さです。 銀につぐ性質のため、銅線として電気配線に使われています。 (2)熱伝導率: 熱の伝わりやすさは鉄鋼材料やアルミニウムよりも優れています。 そのため、鍋やフライパンなどの調理器具によく使用されています。 熱伝導率の高さから、熱が素早く均一に伝わるためです。 (3)加工性: 大昔から使われている理由のひとつが加工のしやすさです。 切削加工や圧延加工に適しています。 まためっきやはんだづけが容易な金属です。 (4)耐熱温度: 200℃を超えると軟化するため、通常200℃以下で使用します。例外的にベリウム鋼は耐熱性に優れており、600℃までは軟化しません。低温側の劣化はないので、問題なく使えます。 (5)耐食性: 耐食性に優れており、他の金属は苦手とする海水に対しても良好な耐食性をもっています。ただし硝酸や塩酸、硫酸にはおかされることには注意が必要です。 (6)光沢: 金以外で唯一黄色の光沢をもつ金属です。加工性がよく光沢があることから工芸品にも使われています。 (7)非磁性: 非磁性を活かした用途として、磁気厳禁の電気機器の背億定期や化学工業の防爆用工具として使われています。 5. 銅と合金銅の種類 生産量の割合を見ると純銅が50%、黄銅が約40%で合わせて90%を占めています。ここでは、純銅と黄銅についてのみ解説します。 (1)純銅 純度は99.90%以上で、酸素の含有量によって3種類に分かれます。 酸素の多い方から順にタフピッチ銅(CC1100)、りん脱酸銅(C1201、C1220)、無酸素銅(C1020)があります。 無酸素銅は酸素が極小で不純物も除去された高純度の銅です。これらの純銅は高い導電率や熱伝導率を活かした銅線や電子機器材料に使用されます。 (2)黄銅(真鍮) 黄銅は銅と亜鉛の合金で、真鍮(しんちゅう)と呼ばれています。 合金の比率によって銅と70%と亜鉛30%の70/30黄銅(C2600)、同じく65%と35%の65/35黄銅(C2680)、60%と40%の60/40黄銅(C2801)があります。 銅の比率が下がるにつれて、引張り強さと硬さは増えていきます。一方で、銅の比率が60%未満になるともろさが出てくるため、ラインナップは60%以上になっています。 C2600とC2680は伸びが大きいので、冷間加工性が良好で深絞り加工にも使用されます。 亜鉛の量が多いほど、銅の比率が少なくなるので、価格も安くなります。 6. その他の非鉄金属材料 チタンとチタン合金、マグネシウムとマグネシウム合金などがあります。 この記事では割愛します。 本記事では、板金加工に使用する材料を俯瞰しました。材料の知識なしに板金加工を行うことはできません。さらに別の記事でより具体的な内容に踏み込んでみたいと思います。 次回は、板金加工に欠かせない図面について考えてみたいと思います。 次の記事:【板金加工 図面】図面の基礎を徹底解説!書き方・読み方・必要性
板金加工の分野では、部材の強化を目的とした加工が数多くあります。今回の記事ではその中でも強化を目的とした【ビード加工】を分かりやすく解説していきます。 ビード加工とは 引用元:協和工業株式会社 この画像のように、工業用の機械などの金属部品には、画像のような細長い凹凸があります。 これが【ビード加工】です。 ビード加工は「紐出し加工」とも言い、紐のような凹凸をつけることにによって成形部品の面を強化する効果があります。 では、ビード加工をすることによってどのように強度をあげていくのでしょうか。 一般的に強度をあげるには、材料に厚みを持たせたり補強金具を使用する方法がありますが、コストがかかることや、重量が増えること、厚さが変わってしまうことなどが課題でした。 そこで、ビード加工で強化したい部分を紐のように隆起させたり溝を作ることによって圧力を分散させ、強度を格段に高めることが可能となりました。 引用元:株式会社 山光 また、厚さを変えずに強度を高めることだけでなく、補強金具を使用しないことで軽量化、さらには原材料の削減によるコストダウンに繋がります。 ビード加工はどんな時に用いられるか 機械は使用していくうちに様々な要因で部材に力が加わります。ある程度の力が加わった部材は変形を起こし、主として安全性に問題が発生します。 そこで、ビード加工によって【強度】をあげていくのです。 強度とは、材料がどのくらい力に耐えられるかを示し、強度をあげることによって安全性が高まります。 強度にもどの力に対して強いのか様々な種類があり、中でもビード加工は「曲げ強度」に対して力を発揮します。 曲げ強度とは抗折力ともいい、部材の破損は引っ張る力より曲げる力の負荷により破損することが多いことから、部材を曲げる力に対抗するためビード加工は用いられるのです。 ビード加工の製品例 主な製品としては、機械などの金属部品や身近なところではパイプなどにもビード加工は施されています。 引用元:RTEC ビード加工によって外観的にも凹凸がつくので、よりデザイン性も高まります。 引用元:杉本金属工業株式会社 私たちの生活が豊かになるにつれ工業製品により機械化が進んでいくなか、ビード加工は施され、ひっそりと活躍しているのです。 まとめ 今回溶接の数ある工程の中、強化の【ビード加工】について解説していきました。 少しの工夫でコストや重量などの課題をクリアしつつ、強度を格段にあげることが可能になるビード加工は、私たちの生活の中に馴染みながらよりよい暮らしに役立っているのですね。
板金加工の加工素材として、最もオーソドックスな材といえるのが【鉄】。 「鉄の加工をお願いしたいけれど、初めてで、どこに頼めばいいか分からない…」 「いつもお願いしている取引先に断られてしまって、どこに依頼したらいいのか…」 工場探しで、こんなお悩みで頭を抱えている方も多いのではないでしょうか。 板金加工といっても、切断、曲げ、抜き、溶接、切削など、その加工の種類は様々。また、工場によって得意加工・苦手加工などの特徴があったりもしますよね。 「小ロットの発注になるので申し訳ない…」といったお悩みもあるかもしれません。 Mitsuriで依頼できる鉄加工の種類 ①切断加工 シャーリングマシンを使用して、必要な大きさにカットしたり、展開寸法に合わせてカットするなど(ブランク加工)、変形のための事前準備を行います。 製品の精度に関わる上、後加工にも大きく影響する重要な工程ですので、バリや反りを極力抑え、正しい形状を切り出します。 Mitsuriでは、高速・高精度なレーザー加工での切断も可能です。小サイズの切り出しや、狭い幅の溝部分など、材の硬度や厚みに依らない、正確な切断を可能にします。 ②曲げ加工 ベンダー機を用いて、型に合わせて、お求めの形状・角度に変形させます。曲げ加工は、薄板・厚板など、材に合わせた適切な加工を行うことが必要となります。シンプルな技法ですが、ひずみや反りなどが生じやすいだけに、工場の技量が試される加工といえます。 Mitsuriでは、一つの板材について、一ヶ所の曲げ加工だけでなく、多段曲げや複数個所の曲げ加工を行うことも可能です。指定角度の細かい指定にも正確に応え、精度の高い製品をご提供いたします。 ③溶接 板と板を接合することで製品になるものは、溶接加工を施します。高温の熱、もしくは圧力を加えることで、部材同士を接合します。容器状の製品などを製作する場合には特に、溶接の精度や強度が重要になります。 被覆アーク溶接、スポット溶接、ガス溶接など、溶接の種類は様々で、材や接合部に応じて、使い分けることが必要です。Mitsuriでは、レーザー溶接であるYAG溶接やCO2レーザーなどのニーズにも対応可能ですので、幅広い方法で溶接が可能です。 ④切削加工 切削加工には、材を固定して機械を回転させる「フライス加工」、材を回転させる「旋削加工」が挙げられます。 フライス加工では、材の表面を平面や曲面に加工できるほか、穴あけ、溝削りなど、多様な加工が可能です。また、旋削加工では、円筒形状の材の外周を円形や先細形状(テーパ)に加工したり、穴あけや、中ぐり、ねじ切り、突切りなどの加工を行うこともできます。 いずれも、抵抗や温度、速さなど、機械と材の相性を考慮して加工することが求められます。そんな切削加工もMitsuriにぜひお任せください! 鉄の加工を依頼するなら【鉄加工のMitsuri】 Mitsuriでは、小ロットのご依頼にもご対応しています。また、量産はもちろん、1個からの小ロットのご依頼についても、大歓迎です!小ロットの製品をご依頼いただいた後、量産化へ向けてご相談いただくことも可能です。 日本全国各地、どちらのご依頼でもお受けいたしますので、鉄加工でお困りの際は、ぜひMitsuriにご相談ください!
板金加工業においても、製品を商品として売り出すにあたり、コストや品質向上の課題はつきものです。そんな中で、現在様々な企業でVA・VEの取り組みが行われています。 本記事では、「そもそもVA・VEって何?」という方にもわかるVA・VEの概要と、取り組みの事例をご紹介します。 VA・VEとは? “ VA”とは、“ Value Analysis”(価値分析)を示します。価値(V)=機能・品質(F)/コスト(C)で表され、品質を向上もしくは維持しながらコストを抑えることによって、製品の価値を最大化することを目的とした取り組みです。 VAと併用してよく使用される言葉“VE”は、“Value Engineering”を意味し、基本的に同義として使われていますが、設計検討段階から価値の最大化を考える“VE”に対して、量産化している既存製品についてバリューチェーン全体の視野からコストダウンを行うものを“VA”として区別する場合もあります。 板金加工のコストを決める要因 どの企業も、少しでもコストを削減して製造したいと考えるものですが、板金加工のコストはどのような要因に左右されるのでしょうか。 大きく分けると、①イニシャルコスト②材料③加工方法④組み立て、の四つが要因として挙げられます。 ①イニシャルコスト 一般的な曲げや溶接などでは、イニシャルコストはあまりかかりませんが、例えば絞り加工を行う際などは、金型を必要とします。簡易金型を採用できるよう設計することで、金型にかかるイニシャルコストを抑えることができます。 ②材料 材料に関しては、加工に使用して残った部分が廃棄され、無駄なロスが生じています。コストを抑えるコツとしては、定尺という決まった板の寸法を考慮することで無駄を抑えることができます。 ③加工方法 曲げ・溶接などの加工方法では、板厚や施工によって曲げ限界に違いがあったり、溶接しづらい構造や溶接後の仕上げが必要な構造で設計を行うと、溶接加工に時間がかかるなど、コストアップに繋がってしまいます。 ④組み立て 最終的な組み立て作業で、図面上では成立していても実際の現場ではスパナを回すことができない、または部材同士が緩衝して組み立てられないなどの事象が発生することもあります。 以上のような要因に対処していくには、設計者が部材の加工方法をしっかりと知った上で図面を書くことが必要です。加工を知らないと、結果として段取りが多く、歩留まりの悪い加工方法を強いる図面になってしまい、コストアップ・オーバースペックを招いてしまうのです。 VA・VEの実行手順 引用元:株式会社産業革新研究所 次に、VA・VEを実行する手順について説明していきます。 ①対象の選定 まずは、対象(品物)が何なのかを選択します。 ②機能の定義 次に、技術情報、コスト情報、要求事項、品質情報、法的制約などの情報を収集し、その品物の機能は何かを定義します。同時に、定義した機能の関連性を図示し、機能の整理も行っていきます。 ③機能の評価 次に、定義した機能について、コスト分析などを行い評価をします。 ④改善案の提案 さらに改善案を練り、新規アイデアの発想・評価を行います。出来上がった改善案については、TRIZ(発明的問題解決理論)、チェックリスト法、ブレインストーミングなどの方法を用いてさらに具体化し、提案書の作成を行います。 以下は、チェックリストの項目例ですが、会社の業種や製品、作業内容で変わってくるので、自社に合ったチェックリストを作ることをおすすめします。 チェックリスト項目の例 □そのものの使用によって価値が高められるか □その品物の原価と用途がつり合っているか □そのものの形状全部が必要であるか □使用目的に適ったものが他にないか □もっと低原価な作業方法で機能的な部品が作れないか □もっと有用な標準あるいは、部外供給業者の標準がないか □使用される数量を考慮に入れた妥当な工具、設備で生産されているか □合理的な資材費、労務費、間接費および利潤は適切か □もっと安く供給する信頼できる業者はないか □それをもっと安く買っている会社はないか ⑤実施とフォローアップ 作成した提案書に従って実行し、随時フォローアップを行います。 ⑥実施状況の評価 実施した後には、次につながるよう全体の評価を行います。 VA・VEの取り組み事例 VA・VEの取り組みとして、コスト要因である①イニシャルコスト②材料③加工方法④組み立てに着目しながら事例をご紹介します。 ①イニシャルコストに対する取り組み 【Before】プレス金型を用いて行う絞り加工は、通常の方法では、板厚や絞り深さ、高さを気にすることなく設計することができます。しかし、金型は製作期間が長い上、物によっては数百万円もする高価なものまであり、製品原価に大きな影響を与えかねません。 【After】このような場合の対処方法として、簡易金型の使用が挙げられます。深く絞ることができない簡易金型ですが、切断・溶接を併せて行うことで、深絞りのような形状を生み出すことが可能になります。 ■このように、簡易金型に追加工を施すことで、イニシャルコスト低減を図ることができます。 事例参考・画像URL:精密板金コストダウン.COM ②材料に対する取り組み 【Before】一般的に、耐食性が必要な機械部品にはステンレス材料、中でもSUS304が使用されます。しかし、加工の観点で見ると、SUS304は加工性が悪く、機械加工のコストが高くなる傾向があります。 【After】同じステンレスでも、材料をSUS304から加工性に優れたSUS303に変更することで、コストを削減することが可能になります。耐食性を重視する場合には、SUS316なども選択肢として検討します。 ■このように、一口でステンレスとしても、品番によって様々な特性をもっており、加工性・耐食性も異なるため、入念に検討することが必要です。 事例参考URL:機械部品・組立コストダウン.COM ③加工方法に対する取り組み 【Before】TIG溶接を行った後の仕上げ工程では、何度も段階的に細めのディスクで仕上げ研磨作業を行わなければならず、溶接工程以上に研削工程で工数がかかり、コストアップにつながってしまうことがあります。 【After】そこで、YAGレーザー溶接を採用することで、溶接ビードが細く、きれいな仕上がりが可能になります。外観上の美しさをそこまで追求しない場合には、溶接焼けの除去だけで済むため、研磨工程を大きく削減することができます。 ■このように、YAGレーザー溶接に置き替えたことで、溶接後の工程を削減でき、溶接自体のコストが高くても、トータルで見るとコストダウンにつなげることができます。 事例参考・画像URL:板金加工コストダウン ④組み立てに対する取り組み 【Before】機械や装置を組み立てる際、ステンレスやアルミなどのフラットな部品同士をネジやボルトで組み立てるとなると、両方の部品の位置を正確に合わせることが難しくなります。部品が大きくなるほど困難になり、組み立て作業に時間が費やされてしまいます。 【After】一方に切り欠きを入れ、位置合わせがしやすいようにすることで、時間が短縮されコストダウンにつながります。大きな機械部品や重い部品ほど、時間短縮が可能になります。 ■このように、効率よく組み立てられるように設計するためには、構成する部品の改善を考える必要があります。 事例参考URL:機械部品・組立コストダウン.COM まとめ 現在、様々な企業で、コストダウンや時間短縮に向けたVA・VEの取り組みがなされていることがわかりました。機械やシステムがますます発達する今日ですが、これからも現場の技術者達が生み出す工夫や改良に注目していきたいですね。
板金加工というと、自動車製造で使用される技術としてのイメージが強いかもしれませんが、近年、医療分野でもその技術が使用されていることをご存知でしょうか。 本記事では、医療分野で使用されている精密板金加工とその製品例を取り上げます。 医療機器で用いられる板金加工の特徴 1.使用される素材 まず、医療分野で使用される金属加工品として、衛生面や耐食性、耐熱性、強度、メンテナンスのしやすさが求められます。そこで、主に素材として使用されるのが、ステンレスです。ステンレスは英語で「Stainless Steel」と言い、“さびにくい鋼”を指します。その名の通り、ステンレスは一般の鋼と比較すると、極めて優れた耐食性を有します。また、メンテナンスのしやすさから、医療機器ではステンレス素材が主に使用されています。 2.精密板金加工とは 精密板金加工とは、汎用金型やジグを組み合わせて板厚t = 3.0程度までの薄板金属を用いた部品製品を製造するものです。厳しい寸法公差(生じても仕方のないとされる誤差範囲)・加工精度が求められます。また、多くの曲げ箇所があり多段曲げが必要となるなど、複雑な形状のものも多く見られ、それだけ丁寧な加工が求められています。一般的な加工工程は、以下のとおりです。 ①設計・板金面展開 ②プランク加工 ③前段加工(曲げ加工前の加工) ④曲げ加工(ベンディング) ⑤溶接加工 ⑥仕上げ加工 ⑦メッキ、塗装等の表面加工 ⑧ビス止め等の組み立て ⑨検査・納品 製品例 実際に医療機器に用いられている精密板金加工品の例を5つご紹介します。 内視鏡光源交換部 引用元:株式会社西山精密板金 内視鏡光源装置は、内視鏡検査で用いられる、強力な発光媒体によって光を供給する独立した装置のことです。この照明光がケーブルを介して内視鏡に到達し、内視鏡の先端から再度照射され観察空間をくまなく照らします。この光源装置の部品となっているのが、内視鏡光源交換部です。 加工技術としては、カシメ加工、曲げ加工、組立加工、メッキ加工が使用されています。ここで使用されているカシメ加工とは、素材を変形させて他の部品へ固定させる方法です。具体的には、穴の中に棒(リベットなど)を入れ、棒に向かって回りを変形させることで、棒が抜けないように固定させる加工法です。 医療機器用CCDユニット装着フレーム 引用元:産業機器・装置精密板金加工.COM このフレームは、医療機器のCCDユニット(カメラ)を取り付ける製品です。薄板金加工品で、重要部品に位置づけられているため、公差がとても厳しい商品といえます。レーザー・タレパン複合機でブランク加工後、タップ、曲げ加工を行った後に、黒色亜鉛メッキ処理を行います。 この製品の特徴としては、複数の多段曲げ加工を行っている点、形状が複雑な点が挙げられます。多段曲げを必要とする製品の多くは、その曲げ加工の順番が重要であり、工程を誤ってしまうと曲げられない箇所が発生し不良となってしまいます。累積公差も加味する必要があり、非常ににデリケートな製品といえます。 医療機器カバー 引用元:株式会社西山精密板金 このカバーは、胃カメラ光源部などの医療機器に用いられる製品です。曲げ加工、溶接、塗装、組み立て加工によって作られます。その他、医療現場で用いられる機器のカバー部分に、同様の方法で作られた製品が多く使用されています。 医療機器用ミキシングチャンバー 引用元:板金ユニット装置設計・組立.COM ミキシングチャンバーとは、医療現場で用いられる薬液混合器です。ブランク展開、曲げ溶接、酸洗いを行って製造します。ここで行う酸洗いとは、金属の熱処理や溶接で生じた焼け、酸化皮膜を、硫酸や塩酸で除去する作業です。 さらに、この製品は円筒部は板厚が薄く、上部と下部に全溶接箇所があり溶接の歪みが出やすい形状です。素材がステンレスということもあり、外観に傷がないことは勿論、バリが残らないように一層丁寧な仕上げ加工が求められます。 配線固定版 引用元:産業機器・装置精密板金加工.COM こちらは、SPCCでできた医療機器の電気配線を固定するための精密板金加工品です。ブランク加工の後、タップ、曲げ加工を行い、サビ防止のためのニッケルメッキ処理を行います。プレートのような、長尺の精密板金加工品のため、立ち上がりが短い場合には反りが発生しやすく、寸法出しが難しい製品です。 今後注目したい板金加工による製品 鉗子(かんし) ここでは、現在はまだ板金加工による製造がメジャーではないものの、今後シェア拡大が期待される製品を紹介します。 鉗子とは、手術で血管や器官をつまんだり固定したりする際に使用する器具です。用途ごとにサイズや長さが異なり、様々な種類の鉗子が手術で使われています。 鉗子の国内市場は年間20億円程度、このうち国内製品は3割を満たしません。安価な海外製品に押されて採算が悪化し、職人の高齢化などを背景に後継者難が続く現状があります。しかし近年、これまで職人による手作業が中心だった製造工程を見直し、ステンレス素材の鍛造や切削、研磨などの工程において大型プレス機械による機械化を試みています。国産の鉗子は、海外製に比べ、金属がしなって使いやすい上、耐久性も高いといわれています。 今後、手作業を極力減らし、生産を効率化することにより、国内生産のシェア増加を狙います。 まとめ いかがでしたでしょうか。本記事では、医療分野で用いられる精密板金加工の特徴、製品例についてご紹介しました。 まだまだ様々な分野で応用される可能性を秘めた板金加工が、今後どう活躍の場を広げていくのか、これからもその展開に目が離せません。
精密板金加工で活躍する「タレパン」について、その仕組みやメリット・デメリットといった特徴を解説します。レーザー加工機との違いにも触れますので、今後導入を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。 タレパンとは? タレパンとは、タレットパンチプレスというプレス機械の略称で、金属板の打ち抜き加工に用いられるものを指します。タレットと呼ばれる金型ホルダーに、円形や扇形の金型を配置して、NC制御によって成形加工や打ち抜き加工を行います。 ちょうど穴あけパンチのような仕組みで、汎用金型で金属板を打ち抜くことを、追い抜き、二ブリングとも呼びます。 タレパンのメカニズムとは?仕組みを解説 タレパンには、大きく分けて2種類あります。 ひとつは、金型を1種類だけセットできるもの。もうひとつは、金型を複数セットできるものです。 今回は、一般的に精密板金加工で用いられる「金型を複数セットできるタイプ」について解説します。 金型を複数セットできるタイプはNC制御(数値制御)を用いるため、専用のプログラムによって必要な金型を入れ替えながら、複雑な打ち抜き加工を行うことができます。 タレパンの金型は上下で一組になっていて、パンチと呼ばれる上金型と、ダイと呼ばれる下金型で、金属板をはさみ圧力をかけて打ち抜く構造です。 ハサミのような仕組みで金型を打ち抜くため、この上下の金型の精度が切れ味に直結します。 タレパンによる打ち抜き加工の精度は、金型の精度とタレパンのメンテナンスにかかっているといっても過言ではありません。 金型自体の寿命は、メンテナンスサイクルだけでなく使用する材料にも左右されます。柔らかい材料の加工ではバリが発生しやすいため、それだけ金型にも歪みが起こりやすくなります。 タレパンで加工できる板金素材の厚さは、0.5~3mm程度。3mm以上の厚板を加工する場合は、速度は遅くなりますが、レーザー加工機を検討した方がよいでしょう。 タレパンの加工範囲は、定尺材5フィート×10フィート材(1524mm×3048mm)または、4フィート×8フィート材(1219mm×2438mm)まで。大きな素材まで対応できる分、広い設置場所を必要とします。 なおタレパンで打ち抜かれた板金は、その場では切り離されずに材料の板金とミクロジョイントにて、つながった状態で排出されます。そのため、別途切り離し作業が必要です。 タレパンの特徴とは? タレパンの主な特徴は次の通りです。 タレパンの特徴 ・加工精度が安定する ・複雑な加工への対応力がある ・材料や加工方法がやや限られる ・加工の自動化が容易 ・ランニングコストが抑えられる ・導入コストが高い それぞれ具体的にご説明します。 加工精度が安定する まず、取扱者の熟練度に左右されず加工精度が安定します。タレパンはNCで制御するため、プログラミングに基づいて金型の選定や板材の移動を正確に行えるので、熟練の技術者を必要としません。ただし、NC制御プログラム作成のための専用ソフトウェアが必要になります。 複雑な加工への対応力がある また、複雑な加工を行える点も魅力。金型の組み合わせや追い抜き加工(二ブリング加工)を使用することにより、汎用金型で円弧状や難しい角度などの複雑な加工が可能です。専用金型が不要なため、試作品の製作などで多品種少量生産したい場合にも活躍します。 材料や加工方法がやや限られる 一方で、厚板や深絞り加工といった苦手な材料や加工も存在します。成形加工は金型サイズに収まるレベルの加工に限られ、本格的な曲げ加工は別途、プレスブレーキなどを用いる必要があります。 加工の自動化が容易 加工可能な範囲の材料に対しては、自動化も可能です。材料の自動供給装置や自動取り出し機などを組み合わせることで、24時間連続稼働の大量生産を実現することもできます。 ランニングコストが抑えられる メンテナンスの手間もあまりかからないので、一人で複数台のタレパンを監視・操作することもでき、人的コストの削減にも貢献します。 なお監視と言っても、直接見張る必要はありません。遠隔カメラでの監視のほか、各メーカーから、機械に異常が発生した際にパソコンやスマホに通知してくれるアプリなどが提供されていますので、別作業をしながらタレパンを稼働し続けることも十分可能です。汎用旋盤やフライス盤のように、加工中の工具を近くで直接見る必要もないため、事故のリスクはかなり低いと言えます。 導入コストが高い ただし、他の板金工作機械と比べて導入コストが高いのが難点です。新品のタレパンは数千万円しますし、高額な機種では1億円を超える場合も。タレパン自体非常に人気のある機械なので、中古品でもあまり値下がりしません。さらに加工可能範囲が広い分、設置にもそれなりのスペースが必要になります。 タレパンのまとめ タレパンの特徴をまとめると、導入コストはかかるものの、ランニングコストがかなり抑えられ、一般的な板金工作機械に比べて人的リソースも必要としないプレス機械と言えます。 板金の打ち抜き加工ではレーザー加工機という選択肢もありますが、ランニングコストの面では、使用する電気量や充填ガス費などから、タレットパンチプレスの方がはるかに優れています。しかしレーザー加工機にはタレパンより厚い材料を加工できる・金型の交換やメンテが不要、といったメリットがあります。 加工する材料の材質・厚さ・加工精度・加工速度・コストなど、それぞれ長所と短所がありますので、比較検討して最適な加工機を選定することが重要です。
本シリーズは、板金に関する知識がゼロでも、読み進めていくことで、板金加工の理解が身についてくことを目標にしています。 板金加工には、大きく分けて切る、曲げる、作るという加工方法があります。その中で、今回取り上げるのは、板金加工の主役としても過言ではない曲げ加工です。 前回取り上げたように、曲げ加工は、主としてプレスブレーキが使用されますが、作業者の技量に大きく依存します。そのため、作業者の技量が求められます。他方で、曲げ加工には、L曲げという加工方法も存在します。 これは作業者の技量に依存する部分が少ないため、比較的自動化されやすい加工方法です。 しかしながら、汎用性という面においてV曲げに負ける面があります。 以下では、L曲げ加工の基礎的な理解を確認してみたいと思います。 タイトル こちらの動画では簡単そうに見えて意外と高価になる曲げ5選を紹介しております! 4分ほどで視聴可能です! Youtubeにて、金属加工Mitsuriチャンネルを運営中!こちらからご覧ください! L曲げ加工とは L曲げ加工は、V曲げ加工と異なり、下の図に示すように材料の端を滑らないようにパッドなどで押さえつけ、もう一端をパンチなどで折り曲げる加工方法です。 引用元:林洪鑾「薄板のL曲げ加工における高精度化の研究」より 図に示したL曲げ機構であれば、曲げ時に発生するスプリングバック角度を見込んで、余分に曲げることが難しく、直角曲げができません。 そのため、工業的にはオーバーベンドができるフォールディング曲げ加工方法とオーバーベンディングL曲げ加工方法が使用されています。 フォールディング曲げは、フォールディングマシンを使用する加工方法です。 具体的には、ラムの上下と、ウイングの回転機構を組み合わせた、押さえ巻き曲げ(迎え巻き曲げ)といわれる加工をおこないます。 これは、高いフランジを持った製品を閉じた形状の口の字形に曲げることができます。 他方で、オーバーベンディングL曲げは、パンチ側になる金型(刃)を横方向に動かして、スプリングバック余分にオーバーベンディングさせる加工方法です、 金型(刃)の軌跡を自由に制御できるため、ヘミング、シーミング、カーリングなどに代表される複雑な曲げ形状を実現できます。 (ヘミング・シーミング・カーリングについては、別記事で取り上げます) L曲げ加工を使用する理由 一般的に、配電盤、制御盤の扉、空調機のカバーなどにL曲げ加工を行います。 その理由は、曲げフランジが長い大板の一端を、一般的なV曲げで曲げると、自重により腰折れなどが発生し、製品の精度や外観を悪くしてしまうからです。 それを防ぐためには、加工中にワークを保持しなければなりません。 この作業には、数人の作業員を必要とします。 また、跳ね上がりによる危険や、曲げ完了後のワークの落下にも注意を払わなければなりません。 この点、L曲げ加工では、ワークをホルダに乗せたままで行なうことが可能です。 そのため、腰折れの防止、万歳作業を実現します。 L曲げ加工の特徴 ①非対称であること 左右で曲率が対称であるV曲げ加工と異なり、L曲げ加工では曲率が非対称となります。 パッドで押さえた側の曲率は小さく、パンチで折り曲げる側の曲率が大きいです。 ②スプリングバックとスプリングゴーが生じること L曲げ加工では、目標角度まで曲げた後、パンチが材料から離れるとスプリングバックが生じ、パッドが材料から離れるとスプリングゴーが生じます。 スプリングバックとスプリングゴーが生じるのがL曲げ加工の特徴です。 パンチが材料から離れると、V曲げと同様に曲げ外側に引張り応力、内側に圧縮応力が生じています。 除荷時にこれらの応力によるモーメントがゼロになるように弾性回復し、スプリングバックが生じます。 ベンディングマシン 板材の曲げ加工様式を大別すると、V曲げに代表される突き曲げ方式と板を押さえつけて折り曲げるL曲げ方式とに分けられます。 突き曲げ様式の曲げは、板金加工業界で最も使用されている曲げです。 後述する多様な曲げ金型との組み合わせで、加工を自由自在に行うことができます。 極めて汎用性の高い曲げ加工として、多く使用されています。 L曲げは、突き曲げ様式に比べて汎用性には劣るものの、省人省力化および自動化ラインへの応用など、大規模な生産工場での活用が可能になります。 また、大板材の曲げなどでは、曲げフランジの曲げによる跳ね上がりが小さくなるため、大型パネル曲げに向いています。 プレスブレーキはラムが下側から上昇する上昇式タイプとラムが上側から下降する下降式タイプがあり、それぞれ設備コスト、対象製品の形状、大きさ、要求加工精度などにより使い分けられている。 L曲げ機械は単体での使用、自動化ラインでの使用、対象製品の形状、大きさなど、装着金型の要望などにより個別対応しているケースが多いです。 そのため、一般的な機械形状を特定するのは難しいです。 曲げ加工における金型 金型の選択を行う場合は、その金型が適切な金型としての条件を満足しているかどうかを判断しなければなりません。 さらには、その条件が曲げ加工作業にどのように関係するかを理解しておかなければなりません。 金型の適切な条件 適切な金型の条件として、以下の点が挙げられる。 ①取り付け、取り外しが容易にできる長さであること。 ②完全な熱処理が施され、十分な強度があり耐摩耗性が高いこと。 ③寸法精度が高いこと。 ④機種に関係なく使用する上での互換性が高いこと。 金型の種類 一般に曲げ金型は、大きくパンチ(上型・上刃・雄型)とダイ(下型・下刃・雌型)に分類されます。 パンチやダイは、各機械メーカー別・用途・特徴により様々な取り付け方式や形状があります。 市販されている曲げ金型は、大きく分けて2つあります。 ・パンチ・ダイそれぞれの仕様・形状を規定し、在庫品として製造・販売している標準金型。 ・加工用途などに合わせて専用に設計・製作する特殊金型。 標準金型は、コスト的にも安価であり、愛個品であるため納期的にも入手が容易です。 他方で、特殊金型は基本的に受注生産品であるため、標準金型に比較して価格が高く納期がかかるのが一般的です。 もっとも、加工の合理化や省力化を実現することができます。 パンチとダイ パンチは、一般的にその断面形状や刃先角度などの特徴によって分類することができます。 ・V曲げ(90°・鋭角)用パンチ ・曲率の大きいR加工を行うR曲げパンチ ・ヘミング(潰し)加工を行うフラットパンチ ダイは、一般的にその断面形状・V溝の数・V溝の角度・構造・加工内容などによって分類することができます。 1Vダイ・2Vダイや鋭角ダイのほかに、ヘミング加工用のダイなどがあります。
曲げ加工は、主としてプレスブレーキが使用されますが、作業者の技量に大きく依存します。 プレスブレーキによる曲げ加工は、V曲げと呼ばれる加工で、被加工材はパンチとダイの間で複雑な変形過程を経ます。他方で、L曲げという加工方法も存在します。これは作業者の技量に依存する部分が少ないため、比較的自動化されやすい加工方法です。しかしながら、汎用性という面においてV曲げに負ける面があります。 「曲げ加工をお願いしたいけれど、初めてで、どこに頼めばいいか分からない…」 「いつもお願いしている取引先に断られてしまって、どこに依頼したらいいのか…」 板金加工といっても、切断、曲げ、抜き、溶接、切削など、その加工の種類は様々。工場によって得意加工・苦手加工などの特徴があったりして、どこに依頼すればよいのか分からない…等。 こんなお悩みで頭を抱えている方は、一度Mitsuriをご利用してみてください! 簡単そうに見えて意外と高くつく曲げ5選 こちらの動画では簡単そうに見えて意外と高価になる曲げ5選を紹介しております! 4分ほどで視聴可能です! Youtubeにて、金属加工Mitsuriチャンネルを運営中!こちらからご覧ください! 曲げ加工の原理 板を曲げる原理は、以下の図のように2点で支えた中央を直角方向に押すことでと、外側が伸ばされ、内側が逆に縮んで反ります。 このときの曲げる力のことを曲げモーメント(M)と呼び、その大きさは、押す力(荷重)×距離となります。したがって、距離に比例して曲げモーメントが大きくなります。 図:引張応力と圧縮応力 曲げ加工では、距離が大きすぎると幅の狭い製品はV溝の中に落ちてしまいます。 他方で、小さすぎると反りが発生するなど不具合が生じます。 一般的に、V曲げ加工の場合、ダイの肩幅(各部の距離)は、板厚の8倍を標準としています。 加圧力の計算もこれを基本としています。 曲げ加工に使われる材料 曲げ加工に使われる板材は、鉄鋼材料(軟鋼、ステンレス鋼などの特殊鋼など)と非鉄金属材料(アルミニウムとその合金、鋼とその合金)に分けることができます。 これらの材料にはそれぞれ特性があります。材料の特性として、一般的に材料試験と呼ばれる一様な断面に均等な力が働いている状態で調べる試験があります。 その材料の特性を表す指標を理解するには、いわゆる塑性力学の基礎知識が要求されますが、ここではそのような塑性力学の議論には踏み込みません。 特に必要な用語のみ以下に列挙しておきます。 特に必要な用語 ・公称応力:外力/素材断面積。引張り試験における最大値を「引張り強さ」といいます。 ・公称ひずみ:標点間の伸び/標点間距離のことをいいます。 ・降伏点:塑性変形が始まる応力のことをいいます。 ・真応力:負荷時の外力/負荷時の素材断面積をいいます。 板金加工で用いられる板材は、定尺材あるいはスケッチ材で板厚は規格化されています。ただし、実厚板は同一ロット内、あるいは同一の板でも場所によって微妙に異なることがあります。同じく、材料の特性値もロット内でも異なっていることがあります。 板の方向によっても異なることがあり、これを異方性といいます。特に圧延方向(ロール目と呼ぶことがある)と直角方向、45度方向で異なっています。 曲げ加工は、材料の寸法特性や材料特性を考慮しながら行う必要があります。 曲げ加工図面の展開寸法の計算方法 引用元:アイティメディア株式会社 寸法精度が高い曲げ加工を施すには、展開寸法をシュミレートしなければなりません。曲げ加工製品の寸法を安定させるためには、曲げ加工図面の展開寸法を計算する必要があるのです。 展開寸法は、伸び縮みのない板厚方向における中立軸の長さ(上画像L)になります。 中立軸の長さを求めるためには、中立軸が板金の曲げ部のどの位置にあるかも知らなければなりません。 そのためには、金属素材の特性などを考慮に入れる必要があり、材料試験などを実施して、素材を加工した時の伸びしろなどから経験値を導き出します。 材料試験などで得られた経験値により、曲げRから中立軸までの距離の移動率(%)が変わり、それを展開寸法を求める計算式に当てはめることで、中立軸の長さが得られます。 板厚や曲げの角度にもよりますが、曲げ部の中立軸は板厚の20~45%の間の位置になります。 引用元:株式会社春日井金型 上画像右の表は、板金加工で最も良く行われるV曲げ加工を例にとり、板厚と曲げR、曲げRからの中立軸までの距離の割合(λ)を表にしたものです。曲げRが板厚(T)の5倍以上など、大きくなればなるほど、中立軸は板厚の中央に近づいていきます。 金属特性の経験値を踏まえ、展開寸法(Lの値)を求める計算式は以下の通りです。 展開寸法の計算式 L=展開寸法 ・A,B=曲げ応力のない部分の長さ ・R=曲げ 内R ・t=板厚(mm) ・θ=角度 ・λ=中立軸移動率(%) *経験値(0.2~0.45)を採用 L=A+B+(R+T×λ)×2π×θ/360 参考:曲げRの計算方法【基礎知識】図面指示と板厚・強度 曲げ加工の限界について 曲げ加工をする場合、ダイの溝幅や金型が干渉することで加工ができなくなるという2通りの限界があります。 ダイの溝幅についての限界は、加工する板厚によって決まる加工に適切な溝幅の限界です。この横幅より狭すぎると、金属素材が反ってしまったり、曲げ傷が深くなったりするため、限界内の適切なダイの溝幅を選択しなければなりません。 もう一つの限界は、曲げ加工が金型の干渉によりできなくなる加工可能範囲の限界です。曲げ加工をするには、曲げ加工が可能な範囲(限界値)があります。 例えば、最小曲げ高さ・あざおり幅・穴から端までの長さ・穴から折り曲げ線までの長さの限界値などです。 この加工可能な限界値は、設計内容や加工メーカーにより異なるため、ヤゲンの断面形状シートやリターンベンドの限界グラフなどを使うことで、加工可能かを確認することができます。 曲げ加工の種類 曲げ加工の種類には、大きく分けて型曲げ・フランジ成形・送り曲げの3つがあります。 それぞれについて、解説していきます。 型曲げ 型曲げは、金属素材を型に固定し、加圧して曲げる加工法です。型曲げの代表的な方法には、ワークをダイに固定して上からパンチで押し込んで曲げる「突き曲げ」や、フォールディングマシンでパンチを側面から起こすようにワークを曲げる「迎え巻き曲げ」などがあります。 型曲げが向いているのは、板状や棒状のワークをV字・L字・U字・Z字など、単純な断面の形状に曲げる加工です。型曲げの種類は、断面形状によりV曲げ・L曲げ・U曲げ・Z曲げなどに分けられます。 V曲げ加工には、突き曲げと自由曲げがあり、突き曲げにはボトミング・コイニングがあります。自由曲げは、エアベンディングやパーシャルベンディングとも呼ばれています。 それでは、型曲げの中から多用されている①V曲げと②L曲げについて、詳しく解説していきましょう。 ①V曲げ加工方法 引用元:株式会社ヒラミヤ V曲げは板金加工の中で、最も基本的な曲げ加工であり、最も多く使用される加工法です。 加工形状は、アングル形状の単純な1工程曲げから、建材、サッシなどに用いられる複雑な多工程曲げまであります。V曲げ加工の製品は、用途が幅広く汎用性も高いため、日常生活の場面で目にすることも数多いです。 V曲げで加工可能な材料の板厚は、0.3mmの極薄板から30mmぐらいまでの厚板といわれています。しかし、この加工可能な板厚は、先に述べたように加工メーカーや作業者の技量、設計内容などに関わるところが大きくなります。 引用元:金型ワールド V曲げには、上画像のようになエアベンディング(パーシャルベンディング)・ボトミング・コイニングの3種類の形態があります。これは、金属素材(ワーク)にかける圧力の違いによります。 どのようなV曲げ加工が適切な加工方法かは、対象となる製品の精度や工場設備の能力により選択することになるでしょう。 エアベンディング 引用元:株式会社コニック 上画像で示すようにエアベンディングは、ワークが赤い3点のみ金型に接触します。ダイやパンチとワークが面で接触しない自由曲げであるところが特徴で、突き曲げ(ボトミング・コイニング)とは大きく異なるところです。 この3点を加圧する曲げ加工であるため、折り曲げる角度を鋭角から鈍角まで自由に決めることができるのが利点です。 パンチの位置を途中で止めて曲げ加工できるため、同じ金型を使いながらもパンチを止める位置を変えることで、さまざまな角度に曲げることが可能です。金型の種類と構造などを変えれば、様々な断面形状の加工が施せます。多品種少量生産や試作品など、幅広くかつようできる加工法です。 しかし、ワークや加工機械の性能に角度の精度が左右され、安定して精度を高めることが難しく、高い技術力が要求されます。 エアベンディングのダイの溝幅(V幅)は、板厚の12~15倍を目安に選定するのが良いされています。ただし、曲げ部の内側の半径が製品の仕様を満たしているか、フランジ長さが最小フランジの長さより大きいかも確認する必要があります。 ボトミング 引用元:株式会社コニック ボトミングは、V曲げ加工の中で最も良く使われる加工法です。ボトミングが、「底押し」や「底突き」と製造現場で言われるのは、ボトムが英語で「底につける」という意味があるからでしょう。 ボトミングの特徴であり、エアベンディングとの大きな相違点は、上画像のようにワークがダイに面で接触するところです。ボトミングの利点は、加圧が小さくても、高い精度の曲げ加工が実現できる点です。 しかし、材料が曲げ加工後に反発する「スプリングバック」が発生することがあります。 そのため、ボトミング加工の場合はスプリングバックの分を計算に入れ、パンチ先端V角度とダイのV溝角度を完成形状の角度より鋭角にし、多めに曲げ込んで精度を高めるのが一般的な方法です。 例えば90度曲げのボトミング加工をする時、スプリングバックの小さいケースでは90度の金型を使用しますが、スプリングバックの大きいケースでは88度の金型を使用したりします。ボトミングのダイの溝幅(V幅)は、板厚によって異なってきます。 ダイの溝幅(V幅)は、板厚が0.5~2.6mmの場合は板厚の6倍ほどで、板厚が3.0~8mmの場合は板厚の8倍、板厚が9~10mmでは板厚の10倍が目安になります。ただし、曲げ部の内側の半径、最小フランジの長さ、加圧力も鑑みて決定するようにします。 コイニング 引用元:株式会社コニック コイニングは、V曲げ加工の中で最もワークにパンチとダイが密着する加工法です。加圧が大きいため機械設備が大きくなり、金型の摩耗が早く耐圧も必要とされます。 近年は、加工機械のスペックが進歩したこともあり、コイニングはあまり汎用されていません。 コイニングは、硬貨を製作するという名前の通り、スプリングバックが極めて小さく、小さな曲げ内Rを可能にするため、正確で高精度な曲げ加工が実現できるのが利点です。 しかし、上画像のようにパンチ先端をワークに食い込ませるようにするため、ボトミングの5~8倍の加圧をしなければなりません。そのため、加工機械のスペックに多少左右されますが、SPCCの板厚で2mmほどが加工限界になります。 コイニングのダイの溝幅(V幅)は、板厚の5倍程度が選定の目安になっています。ダイの溝幅(V幅)がボトミングより小さいのは、V溝の面積を小さくして加圧を効率的にワークにかけるためです。 ②L曲げ加工方法 引用元:林洪鑾「薄板のL曲げ加工における高精度化の研究」 L曲げ加工とは、上画像に示すようにV曲げ加工とは異なり、材料の端を滑らないようにパッドなどで押さえ、もう一端をパンチでL字型に折り曲げる「押さえ曲げ」と呼ばれる加工法です。 パッドの押さえる力とパッドとダイに挟まれているワークの面積(ウェッブの面積)が、L曲げ加工の重要な点で、加工精度に大きな影響を与えます。 L曲げ加工は上画像のような工程で曲げ加工するため、V曲げのボトミング加工の時のように、スプリングバックを計算に入れて多めに曲げ込み精度を高めることは難しいです。ですから、スプリングバックの分を多めに曲げこむことが必要な直角曲げも、L曲げ加工ではできません。 L曲げ加工を使用する理由 一般的に曲げフランジが長い大板を加工して製作する配電盤・制御盤の扉・空調機のカバーなどに、L曲げ加工が使用されます。 その理由は、曲げフランジが長い大板の一端をV曲げで曲げると、自重により腰折れなどが発生し、製品の精度や外観を悪くしてしまうからです。 一般的なV曲げ加工でそれを防ぐには、加工中にワークを数人の作業員で保持しなければなりませんし、跳ね上がりによる危険や、曲げ完了後のワークの落下にも注意を払わなければなりません。 このような無駄や危険を排除するためにも、配電盤・制御盤の扉・空調機のカバーなどの大板を加工する製作には、ワークをホルダに乗せたまま加工できるL曲げ加工が使用されるのです。 L曲げ加工の特徴 L曲げ加工には、次のような2つの特徴があります。 ①非対称であること ダイ側とパンチ側で曲率が対称であるV曲げ加工と異なり、L曲げ加工ではパッド側とパンチ側の曲率が非対称になります。 パッドで押さえた側の曲率は小さく、パンチで折り曲げる側の曲率が大きくなるのです。 ②スプリングバックとスプリングゴーが発生する L曲げ加工では、目標角度まで曲げた後、パンチが材料から離れるとスプリングバックが生じ、パッドが材料から離れるとスプリングゴーが生じます。 スプリングバックとスプリングゴーが生じるのがL曲げ加工の特徴です。パンチが材料から離れると、V曲げと同様に曲げ外側に引張り応力、内側に圧縮応力が生じています。 そして、パッドからワークが離れる時、これらの応力による曲げモーメント(曲げる力)がゼロになるようにワークが弾性回復し、スプリングバックが生じます。 参考:【曲げ加工】の基礎やV曲げ/L曲げ加工について徹底解説!! フランジ成形 フランジ成形はL曲げ加工が発展したもので、自動車のボディなどの複雑な湾曲を作る製品にも使われる加工法です。 フランジ成形には、内側に湾曲する「伸びフランジ成形」と、外側に湾曲する「縮みフランジ成形」の2種類があります。 フランジ成形は、圧縮や引張のひずみのコントロールが難しく、直線曲げの加工とは違ってシワや割れなどが発生しやすくなるため、機械設計を精密にしなければなりません。 送り曲げ 引用元:株式会社井田商店 送り曲げは、型曲げのように金属素材を型に固定する加工法とは違い、素材を固定せずにラインの中で順次曲げ加工を行っていく方法です。 3本のロールで曲げ加工することを「ロール曲げ」、複数のロールで連続して曲げ加工することを「ロール成形」といいます。 連続して曲げ加工をすることができるため、複雑な断面形状の加工も可能です。作り上げる形状の複雑さに合わせ、半径の大きなロールや小さなロールを組み合わせ、送り曲げ加工をすることができます。 曲げ加工における金型 金型の選択を行う場合は、その金型が適切な金型としての条件を満足しているかどうかを判断しなければなりません。 さらには、その条件が曲げ加工作業にどのように関係するかを理解しておかなければなりません。 金型の適切な条件 適切な金型の条件として、以下の点が挙げられます。 適切な金型の条件 ①取り付け、取り外しが容易にできる長さであること ②完全な熱処理が施され、十分な強度があり耐摩耗性が高いこと ③寸法精度が高いこと ④機種に関係なく使用する上での互換性が高いこと 金型の種類 一般に曲げ金型は、大きくパンチ(上型・上刃・雄型)とダイ(下型・下刃・雌型)に分類されます。 パンチやダイは、各機械メーカー別・用途・特徴により様々な取り付け方式や形状があります。 市販されている曲げ金型は、大きく分けて2つあります。 市販の曲げ金型の種類 ①パンチ・ダイそれぞれの仕様・形状を規定し、在庫品として製造・販売している標準金型。 ②加工用途などに合わせて専用に設計・製作する特殊金型。 標準金型は、コスト的にも安価であり、愛個品であるため納期的にも入手が容易です。 他方で、特殊金型は基本的に受注生産品であるため、標準金型に比較して価格が高く納期がかかるのが一般的です。 もっとも、加工の合理化や省力化を実現することができます。 パンチとダイ パンチは、一般的にその断面形状や刃先角度などの特徴によって分類することができます。 パンチの分類 ・V曲げ(90°・鋭角)用パンチ ・曲率の大きいR加工を行うR曲げパンチ ・ヘミング(潰し)加工を行うフラットパンチ ダイは、一般的にその断面形状・V溝の数・V溝の角度・構造・加工内容などによって分類することができます。 1Vダイ・2Vダイや鋭角ダイのほかに、ヘミング加工用のダイなどがあります。 板金の曲げ加工Q&Aまとめ Q1.板金曲げ加工の種類を教えてください。 主に、型曲げ・フランジ成形・送り曲げがあります。型曲げは、金属素材を型に固定し、加圧して曲げる加工法です。フランジ成形は、複雑な湾曲を作る製品にも使われる加工法です。送り曲げは、素材を固定せずにラインの中で順次曲げ加工を行っていく方法です。 Q2.曲げ加工の反りの原因は何ですか? ワーク内側に縮み、外側に伸びが発生することで歪みが生じます。その歪みが反りにつながります。長いワークのL曲げなどで発生します。 Q3.曲げ加工の反りの対策はありますか? 曲げ部分に穴を空けることで、反りが発生しにくくなりますが、強度に問題が無いか確認しておく必要があります。 曲げ加工を板金加工業者に発注したい方へ 「曲げ加工を工場に発注したいけど、どこの工場にお願いすれば良いかわからない・・・」 「曲げ加工の発注で一気に複数の工場から見積もりをもらえたら良いのに・・・」 そんなお悩みをお持ちの方は、ぜひMitsuriにご登録ください。 いますぐ下の赤いボタンをクリックしてご連絡くださいませ!
金属を加工する際の一つの手段として用いられるのが、「レーザー」。 レーザー加工はその有用性から、工業の分野ではもちろん医療の分野でも一部取り入れられている方法です。 そんな汎用性が高く、実用性が高いレーザー加工なので、発注する工場を選ぶのはとても大切です。 レーザー加工が可能な工場を探す際にこのようなお悩みをお持ちではないでしょうか? 「レーザー加工を依頼したいけれど、初めてでどこに頼めばいいかわからない……」 「他の工場で断られてしまって、依頼先に困っている……」 探す中で、こんなお悩みを抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。 その他にも、「小ロットでの発注を断られてしまった……」といったお悩みや、あるいは「いつも依頼している工場に小ロットで発注するのが申し訳ない……」とお悩みの方もいるでしょう。 レーザー加工とは レーザー加工とは、言葉そのままにレーザー光線を使って加工することです。 レーザーを使って金属や木材などを切断したり穴あけして製品を作っていく、プレス加工や穴あけ加工と同じ金属加工の一種です。 レーザー加工機を使うことによって、もともと手作業で加工していた商品や材料を大量に素早く加工することが可能になりました。 金属や木材だけでなく、柔らかくて加工しずらいゴム素材や布地にも文字や記号を記す表面処理がしやすくなったりと、レーザー加工が普及したことによって加工できる幅が格段に広がりました。 手作業では難しい複雑な加工も容易にできるようになり、今ではいろいろな業種に導入されています。 いろいろな業種の一つに、加工とは違いますが近年では医療でもレーザーの導入が進んでいます。 手術時に出血を抑えるためにレーザーメスを使ったり、虫歯にレーザーをあてて治療したりと、日々、金属加工や日常生活で活躍しています。 そんな工業以外の分野でも注目され、研究が進んでいるレーザーですが、その原理はどうなっているのでしょうか。 次の項目で分かりやすく解説していきましょう。 レーザー加工の原理 レーザーと聞くと、やはり皆さんは高熱で高火力を想像するでしょうか。 テレビやゲームで目にするレーザーは一瞬触れただけでも体が溶けたり、レーザーの光を振り回すと瞬時に周りの建物や金属が切断されたりする光景が多いですね。 それを想像すると、確かにテレビのレーザー光線は超がつくほどの高熱を放っていることになります。 実際、金属加工用のレーザーに触れると大変なことになってしまいます。 金属ですら瞬時に切断したり穴をあけたりするので、人体を通せば触れた部分は一瞬でどうにかなってしまうほどの威力が出いてます。 恐ろしく危険なので、レーザー加工機を扱う際はメンテナンスの時を含め重々注意が必要です。 光の波と熱の振動 レーザー加工の原理は波と振動によって成り立っています。 レーザーの威力ですが、なぜ光に金属を溶かすほどの威力があるのかと言うと、それは光の波を合わせているためです。 かみ砕いて説明しましょう。 普通、光というと太陽光や電灯のようにあらゆる方面に光が発せられ、さらに光の色が何色も合わさっています。 太陽光や電灯の光の色は白いですが、白く見える理由はいくつもの光が合わさっているためなんですね。 絵具は何色も混ぜることにより黒くなる性質を持ちますが、光は何色も混ざることにより白く見えるように人間の目はできているのです。 引用元:マーキング学習塾 太陽光などの白い光は何色もあるため、光の波が合いません。 しかし、レーザーの光は一点集中しており、しかも単色なので光の波がそろっているのです。 上の画像のように、波長や山と谷がそろっている光をレーザー加工機内部にあるレンズに通すと、密度の高い光ができあがり、威力が格段に増すのです。 分かりやすく例をあげると、ホースから出る水を散水ノズルで細くすると、水が出る勢いが増す感じです。 ホースの水を細くして強力にする散水ノズルが、レーザー加工機でいうレンズの役割にあたります。 加工機の中を通ってきた光を集光レンズで細く絞ることで光を集中させ、威力を格段にあげて素材を溶かします。 金属や木材などの材料にレーザー光を当てることにより、材料の原子や分子が振動すると急激な発熱が起こります。 そうして溶かした金属をアシストエアーで瞬時に飛ばして、穴をあけた部分をきれいにしていきながら材料を掘り進めていきます。 かなり説明を省いていますが、詳しく説明するとニュアンスが伝わりにくくなってしまうのでこの程度に留めておきます。 レーザー加工機の仕組み レーザー加工機は、大きく分けると3つの系統で構成されています。系統ごとに多くの制御パラメータが関連しており、加工目的によって最適化して使われています。それぞれの系統について詳しく見ていきましょう。 レーザー発振器系 レーザー発振器は、光を発振する装置です。励起光と呼ばれる光をレーザー媒体に照射し、媒体特有の波長を発生させた後、共振器に当てることで増幅させてレーザー光を発振するメカニズムになっています。レーザー加工時に最初に検討される装置のひとつで、以下の検討条件をひとつずつ決定していくことになります。 主な検討条件 出力 波長 パルス幅 発振モード(連続派・パルス派) 切断用の熱源には、CO2レーザーの他、YAGレーザーやYLFレーザー、Ybレーザーなどが用いられ、加工する材料や板の厚み、求められる加工精度によって異なるレーザー光の波長、出力が選ばれます。 加工光学系 加工光学系は、レーザー発振器から発生したレーザー光を集めて、テーブルに照射する装置です。 レーザー発振器からレーザー光を送り出す「光路」と、伝送されたレーザー光を集めて対象に照射する「集光系」の2つで構成されています。 レーザ加工に使われている光学系の種類は、大まかに分けると次の4つです。 ①集光光学系(固定光学系) レーザ発振器から出力されたレーザ光を、集光レンズを使って集めて加工するタイプ。最も基本的な光学系のひとつで広範囲の加工に適している ②スキャニング光学系 ガルバノスキャナー(ヘッド部内のミラーが動くタイプの装置)、f-θレンズ(レーザービームを2次元走査させるレンズ)で構成される光学系。走査型とも呼ばれ、レーザーマーキング(刻印・彫刻)や溶接のリモートヘッドなどに多い ③結像光学系 マスクパターン、面発光を行う光源像を対象材料に転写できる光学系で、パターン(模様)を一括加工する時などに使用 ④特殊光学系 屈折型光学系(非球面レンズを利用)、回折光学素子利用タイプ(レーザー光をターゲット上で回折させて光の干渉パターンを作る)など特殊なタイプで、装置自体は受注生産が多い 求められるレーザー発振器の特徴や、加工に求められる精度、技術などに合わせて、適切な光学系を選んで使用します。 加工物質系 加工物質系とは、対象物を固定するためのテーブル及び加工物を指します。レーザー加工における加工物の性質は仕上がりを決める重要な要素です。反射率や吸収率、透過率といった加工物の光学的な性質、熱的性能なども仕上がりに影響します。 照射位置を移動しながら加工する場合、集光系あるいはテーブル、またはその両方を動かす必要があり、それらを制御する駆動システムが必要です。精密な加工を行う際、テーブル送りのスピードも細かく調節します。高出力レーザー加工機であれば問題ありませんが、低出力タイプでは適切な速度設定が必須です。 レーザーカット加工による影響【材質別】 複雑な部材や、微細な部分への加工を得意とするレーザー加工では、材質によって注意すべき点があります。レーザーカット加工が加工対象に及ぼす影響について、材質別に解説していきます。 鉄 鉄は、加工しやすく入手性も良く、広範囲に用いられる一般的な金属です。ごく薄い薄板から数十mmの厚板まで豊富に板厚が揃っており、幅広い用途で使用されます。塗装やメッキ、表面処理鋼板などを使うことで、鉄のデメリットである錆びやすさをカバーできます。 引用元:astamuse 加工すると図に示す通り、レーザー加工特有の現象で、穴がテーパー状になります。テーパーとは、加工面がすり鉢状になっている状態です。厚板になるほど入口と出口の差が広がる傾向があります。 この差をなくすためには、ドリルやリーマーなどを使った追加工が必要です。 また、金属板金の打ち抜き加工によく使われるタレットパンチプレスに比べると、熱による変形や反りが出る恐れも出てきます。 ステンレス ステンレスは、英語で錆びにくい鋼という意味の「Stainless Steel」です。耐食性や耐熱性、加工性に優れており、キッチン用品から建築材料、医療機械器具、航空機部材まで、あらゆる分野で採用されています。100%リサイクルが可能なため、サステナビリティや環境への配慮への関心が高まっている現在、非常に注目されている材質です。 鉄と同じように、レーザー加工を利用することで穴がテーパーになる可能性が高く、厚板になるほど穴の入口と出口の差が出やすくなります。こうした差を埋めるために、ドリルやリーマによる追加工が必要です。また、熱による変形や反りが、タレットパンチプレスよりも出やすい点も同様に注意しましょう。 アルミニウム アルミニウムは鉄に比べて比重が35%ほどと軽量な金属です。軟性、展延性が高く、溶接性、耐食性、熱伝導性も優れているなど、加工に向いている材質として幅広い業界で使用されています。 アルミニウムは反射率が高すぎるため、レーザー加工に向かないケースがほとんどです。また、鉄やステンレスに比べて、加工後に裏面に尖ったバリができやすいので、後処理が必要です。レーザー加工機特有の穴のテーパーや、熱による変形や反りについては、鉄、ステンレスと同様に対応が発生します。 銅 鉄と較べて熱伝導率が高い銅のレーザー加工では、反りや変形、腐食が起こりやすい点に注意が必要です。 また、銅は反射率が高いためレーザーが反射することによって機械に支障が出る恐れがあること、銅自体が高額なので失敗した際の損害が大きくなることなどから、実際に加工できる業者が限られてきます。 出力を抑えながら切断する、フルスピードにはしない、細かな配慮をするなど、高度な技術を持ち合わせた業者であれば、高品質な仕上がりが可能です。 上記のような金属へのレーザー加工も、Mitsuriなら的確な加工技術を持って仕上げることができます。 参考記事 金属へのレーザー加工については、下記記事でも詳しくご説明していますのでご参照ください。 ⇒金属をレーザー加工ならMitsuri!【小ロットの依頼もOK】どこよりもカンタンに依頼ができます! レーザー加工のメリット レーザー加工の原理が何となくわかったところで、次はメリットの解説に移ります。 レーザー加工のメリットは大雑把に以下の通りです。 ・仕上がりが早い ・仕上がりがきれい ・加工の自由度が高い ・難度の高い加工が可能 ・メンテナンスに手間が掛からない 当然箇条書きだけでは不十分なので、項目ごとに一つずつ説明していきます。 上から順に見ていきましょう。 作業に手間が掛からない レーザー加工は金型を使う必要がありません。 基本的に金属の加工には金型と呼ばれる「元の型」が必要になります。 元の型は他の加工方法ですと、製品を早く均一に大量生産するために必須で、種類も様々あります。 しかし、レーザー加工では金型の変わりにパソコンで形を作るため、一度作った後はデータを入力するだけで加工・生産ができるのです。 金型を使わないため加工途中の金型交換の手間が省けて作業効率が良くなります。 仕上がりがきれい レーザー加工機を使えば加工後の処理に手間が掛かりません。 バリやカエリの発生を抑えることができるので、切断面がきれいに仕上がります。 加工の際に起こりえる歪みやひび割れのリスクもなくすことができ、安定した品質を保つことができます。 従来までの加工方法では必要だった後処理の手間を省けるのは大助かりですね。 加工の自由度が高い 加工できる素材の幅が広いのもレーザー加工のメリットです。 他の方法では硬すぎる金属や柔らかすぎる布地でも、素材によってレンズや照射の出力を変えることで問題なく加工できます。 熱で変形してしまうような薄版の素材でもレーザー加工なら大丈夫です。 また、穴あけや切削以外にも溶接や熱処理、製品に文字を入れ込むマーキングなど様々な加工が可能です。 いろいろな製品を作るには、従来では複数の加工方法を取り入れる必要がありました。 ですが、将来的にはレーザー加工だけですべての素材や加工方法を実現することができるかもしれませんね。 難度の高い加工が可能 レーザー加工の台頭により、複雑かつ精密な形でも比較的容易に加工することが可能になりました。 レーザーの光が細いので、他の加工機器では穴あけが出来ないような細かく小さな場所でも正確にでき、曲線を辿った切断でもレーザーなら安定して加工することができます。 複雑な絵柄を描いたり、錆びにくさを向上させるなど製品の様々な表面改善もレーザー加工で出来るので、非常に便利な加工法となってきています。 工業分野の人手が足りない今の時代、できるだけ簡単に、誰にでも品質が安定した製品を作るには、レーザー加工はうってつけと言えるのではないでしょうか。 メンテナンスに手間が掛からない レーザー加工では材料と工具が接触しないので、刃物や研削盤などを消耗することがなくメンテナンスに手間が掛かりません。 メンテナンスで必要なのはレンズをきれいにしたり、アシストエアーを清掃したりする程度なので交換作業も必要ありません。 また、加工時に材料を切った後の粉塵が発生せず、刃物などに付かないため、除去する手間も省けて作業も楽になります。 金属加工ではこういったメンテナンスの時間を割くことで生産効率を上げていくことも重要でしょう。 レーザー加工のデメリット 数多くメリットがあるレーザー加工ですが、デメリットもそれなりにあるようです。 こちらも詳しく見ていきましょう。 加工速度が遅い 切削加工やプレス加工と比べると加工速度に劣る面があります。 多彩な加工方法を持ち合わせるレーザー加工ですが、速度重視で見るとやや不利な傾向があるようですね。 金属加工にはレーザー加工以外にも早くて精度が高い加工方法がたくさんあるので、必要に応じて適材適所の板金機械を使っていくのです。 厚板の素材は加工しずらい レーザー加工には適切な焦点距離というものがあり、レーザーの光が集中している箇所があります。 その焦点距離の範囲でないとエネルギー密度が低下して素材が溶かせなくなるのです。 レーザーは真下に向かっているように見えて、実は光線同士が交わっているんですね。 なので、この焦点の位置から遠ざかってしまうとレーザーの威力が弱まって加工できなくなるということです。 レーザー加工の意外な弱点ですね。 下に向けられているレーザーが作業台や床を貫通しないのは、こういった仕組みがあったのです。 反射率の高い素材は加工できない アルミや銅など反射率が高いとされている素材は、古いタイプのレーザー加工機ですと上手く加工できないことが多いです。 レーザーの光を弾いてしまっては材料に熱が伝わらないので、当然と言えば当然ですね。 ですが近年になって、反射率が高い素材でも加工できるレーザー加工機が登場しています。 これを機に、これまでレーザーではできなかった素材も、これからどんどん加工できるようになっていくでしょう。 コストが高い 特に不思議なことも意外なこともないですが、レーザー加工機は高いのです。 性能がいい反面、値段は相応ということですね。 消耗品や維持費にもけっこうな費用が掛かり、電気代やガス代などの光熱費に加えて、焦点レンズやミラーには定期的に交換が必要です。 工業製品と言えど精密機械です。 大切に扱いながら、稼働時間やランニングコストにも注視しながら活用していかねばいけません。 レーザー加工の種類 レーザー加工のレーザーには、金属加工用として一般的に使われているもので3種類のレーザーがあります。 3種類とも特徴に違いがあり、用途も違うので、その違いを重点的に説明していきます。 CO2レーザー 3種類のうち最も使用されているレーザー加工機ですね。 名前にあるように二酸化炭素を利用しているガスレーザータイプの加工機です。 金属、木材、ゴム、ガラスなどほとんどの素材に適応できます。 活用の幅に加え値段も他2種類の加工機よりも安く、CO2レーザーが主流になるのも納得の性能です。 ただし弱点として、アルミや銅など反射が強い金属には不向きとなっています。 ファイバーレーザー ここ数年の間に開発された新しいレーザー加工機です。 CO2レーザーには向かない銅やアルミなどの難溶接材や反射が強い金属の加工ができ、新しく出ただけあってCO2レーザーの弱点を補う特徴を持っています。 加工機自体は高いものの、レーザーガスがいらなかったり、エネルギー効率が良かったりとランニングコストが安く抑えられます。 近年出始めたばかりで本体価格も高いため、まだまだ普及していませんが、今後の進展しだいでは主流になりえるかもしれません。 YAGレーザー 金属の加工以外に医療でも使われるレーザーです。 金属加工では主に溶接とマーキングに使われ、溶接では薄い素材でも変形や歪みがなくきれいに仕上げることができ、溶接スピードも早くできます。 マーキングとは簡単に言うと出来上がった製品に文字や記号を書くことです。 YAGレーザーはあらゆる素材に精密かつ高速で写し出すことができます。 医療では歯や目の治療に使われています。 そんな高性能なYAGレーザー加工機ですが、CO2レーザーと比較すると値段やランニングコストが高くついてしまい、そこがネックと言えるでしょう。 レーザー加工事例 レーザー加工の種類ごとに、実際の加工例をご紹介します。 ステンレス鋼板へのCO2レーザーカット加工 引用元:大畠製作所 ステンレス鋼板(SUS304、2.5mm圧)のCO2レーザーカット加工 アルミニウム合金へのCO2レーザーカット加工例 引用元:大畠製作所 アルミニウム合金(A5052、8mm厚)へのCO2レーザーカット加工 鉄クロム合金のレーザーカット加工例 引用元:ベルテックレーザ株式会社 鉄にクロムを加えた合金(炭素が1.2%以下、クロムを10.5%以上含む特殊鋼)のレーザーカット加工 参考記事 板金加工については、下記記事も参考にしてください。 ⇒【レーザー加工】板金加工におけるレーザー加工について専門家が徹底解説! レーザー加工のまとめ 一流の板金加工業者に発注しませんか? レーザー加工と言うと物騒な印象があり、危険ではないかと思われるかもしれませんが、テレビで見られるようなレーザーとは別物です。 まったく危険がないかと言われればウソになりますが、正しく使うことによって、非常に幅広く質の高い加工ができるのです。 レーザー加工は現在においても、次々に新しい加工法が生み出されています。 これから将来的に、性能面でも安全面でもますますの進展に期待が持てることでしょう。
板金加工とは何か、という問いに答えることは決して簡単ではありません 。 というのも、板金と呼ばれる業界や加工内容はとても広く、また関係する作業はそれぞれ独立し、複雑に絡み合っているからです。 とはいえ、板金を無視することも簡単にはできません。 なぜなら、私たちの生活は板金加工によってつくられた製品なしでは成り立たないからです。 身の回りを見渡してみてください。 スチールの机、ロッカー、書庫、キャビネット、パソコン、冷蔵庫、洗濯機、電子レンジ、エアコン、テレビ・・・。 これらの製品には、ほとんど板金が使われています。 そんな日常の中にも溶け込んでいる、板金加工とはどのようなものなのでしょうか? 板金加工の特徴や種類、または材料まで専門家が徹底解説致します! 板金加工とは? 板金加工は、一般に金属の板を切ったり、曲げたりすることで製品をつくる加工方法のことをいいます。 ここでは、板金の加工方法にこだわり、以下の定義を採用してみたいと思います。 板金加工とは 、 金属加工の一分野である塑性加工の一領域で、 主として板材を切断、 抜きおよび曲げなどにより、 さまざまな形状(部品・製品)を作り出す加工方法である。 少し難しい定義ですが、一つずつ紐解いていきます。 金属加工とは 金属加工とは文字通り、金属を材料として加工する分野のことを指します。 金属加工で使用する材料には、鉄鋼材料、アルミニウム系材料、銅系材料などがあります。これに対して、非金属加工で使用する材料には、プラスチック材料やセラミック材料などがあります。 材料については、第2回の「板金加工、材料の基礎」で解説します。 塑性加工とは 塑性加工を理解するには、弾性変形と塑性変形という概念が欠かせません。 ・弾性変形とは 材料に一定の力を加えると形が変形しますが、加えた力を取り去ると元に戻ることがあります。 これを弾性変形と言います。 ・塑性変形とは これに対して、材料に一定以上の力を超えると力を取り去っても変形が残ります。このようにして起きた変形を塑性変形と言います。この塑性変形を利用した加工方法を塑性加工と呼びます。板金加工で行う、切断、抜き、曲げは、いずれも塑性加工に当たります。 板金加工と他の塑性加工との違い 板金加工以外の塑性加工に、圧延、転造、押し出し・引抜き、鍛造、プレスなどがあります。 板金加工と他の塑性加工との違いはあいまいといわれますが、それぞれの加工の概略を見ておくことはとても有益です。以下、簡単に見てみましょう。 ①圧延加工 回転するロールの間に材料を通すことで、ロールのすき間量まで薄くする加工方法です。圧延加工は平板だけではなく、さまざまな形状の成形も可能です。 この圧延加工によって、板金加工で使用される板材が成形されます。 引用元:モノタロウ ②転造加工 丸い工作物を工具(ダイス)に強い力で押し付けながら回転させることで、工作物の表面をダイスの逆形状に成形する加工方法です。ねじや歯車はこの転造で加工されています。 引用元:ユニオンツール株式会社 ③押し出し・引き抜き加工 押し出し加工とは、ほしい断面形状の穴のあいたダイスに材料を通すことで、長尺の製品をつくる加工です。レールやフレームなどはこの加工方法でつくられています。このダイスへの材料の通し方によって「押し出し加工」と「引き抜き加工」が区分されます。 ⅰ. 押し出し加工 は、コンテナと呼ばれる筒状の容器に入れた材料に、力をかけてダイスから押し出すことで、ダイスにあいた穴形状の断面を持った形に成形する加工方法です。 ⅱ. 引き抜き加工は、先の押し出し加工や圧延加工した材料を使用し、材料の先端を細めてダイスの穴に通してから、この先端をつかんで引っ張ることで、ダイスの穴形状に成形する加工方法です。 引用元:東大阪市技術交流プラザ ④鍛造 鍛造は「鍛え造る」と書くように、ハンマやプレス機で金属に大きな力を加えることで成形すると同時に、金属組織の密度を高める加工方法です。板金加工は、基本的に板厚を変化させませんが、鍛造は厚さを変化させるという点で違いがあります。 ⑤プレス 板金加工と他の塑性加工との区別はあいまいである、といいました。学会や業界団体、企業や製品などによって、区分がさまざまなのが実情です。 このような事態に陥っている理由の一つに、全く同じ製品であっても、異なる加工方法によって作ることが可能である、ということが挙げられます。 とりわけ板金加工とプレス加工は重なるところが多く、はっきりと区別するのは困難です。 ただ、本記事では両者の強み、弱みに着目して、区別して考えてみたいと思います。この点については、後述の 「板金加工の特徴」で考察します。 また、加工方法ではなく、製品の完成に焦点を当てて、板金加工と呼ぶ場合もあります。実際の製造現場では、塗装や溶接、組立まで行い、完成品を出荷することがあるためです。 本連載では、塑性加工としての板金加工について解説することに止めます。以下の動画では溶接まで踏み込んでいますが、板金加工の全体像をつかむ上で、有益です。是非視聴してみて下さい。 金属板でストーリーを組立てる~板金加工~ 概要 モノづくりの現場で磨きをかけるその道の熟練者を追うドキュメンタリーシリーズ。埼玉県所沢市にある竹下工業では主に事務機器・空調機器・医療機械・配電盤などの筐体ならびにその部品を製作しています。板金加工は、機械化の進んだ分野で、レーザーカットマシンによる金属の板材を切断加工、タレットパンチプレスによる穴あけ加工、ベンディングと呼ばれる曲げ加工を施し、必要な箇所を溶接するというように、今や自動化・管理されています。番組では、熟練技能者の技が求められる溶接工程の技の魅力を紹介します。 出演者名・所属機関名および協力機関名> 竹下 力(竹下工業㈱),竹下 祐司(竹下工業㈱),今井 繁(竹下工業㈱),玉井 今朝治(竹下工業㈱),西村 幸弘(竹下工業㈱),高塚 正也(㈱青二プロダクション),竹下工業㈱ 引用元:サイエンスチャンネル 板金加工の中身 ここまで、金属加工における板金加工の位置づけについて確認してきました。ここから先は、板金加工の具体的な中身を見ていきたいと思います。 板金加工は、手加工板金と機械板金(工場板金、精密板金)の2つに分類することができます。 手加工板金とは 手加工板金は、その名が示す通り、主に人間の手の力を使用する加工方法です。 手加工板金には、自動車板金 、 打ち出し板金 、 建築板金があります。 これらの板金で使用する道具を見てみると、板金加工が従来、手加工で行われてきたことがよくわかります。 ・手加工板金で使用する道具 引用元:Tech Note「試作車ボディの板金職人、13種類の道具をどう使い分けるのか?」 画像引用元の記事は、自動車板金についてかかれたものですが、とても内容の濃い記事です。一読をお勧めします。 機械板金とは 手加工板金に対して、機械を使用する板金加工方法を機械板金とよびます。 機械板金は、機械を使用するためには一定以上の敷地、つまり工場が必要であることから工場板金 、また機械によって精密な加工を実現できることから精密板金とも呼ばれます。 機械板金による加工方法 では、機械板金によってどのような加工が実現できるのでしょうか。 機械板金には、切断加工、打ち抜き加工、曲げ加工、成形加工、絞り加工、特殊加工などの加工方法があります。これらの加工方法については、別の記事で詳しく解説します。 切断加工にはレーザーマシン、抜き加工にはパンチングプレス、曲げ加工にはベンディングマシン、というように加工方法毎に対応した機械があります。 本記事では、主に機械板金を取り上げ、手加工板金は別の連載で取り上げることとします。 板金加工の特徴 先に述べたように、板金加工(機械板金)とプレス加工は重なるところが非常に多いため、はっきりと区別できないとされています。 企業内でも板金加工とプレス加工を区別しないところが増えてきています。しかしながら、ここではあえて板金加工とプレス加工を区別し、その相違について考えてみたいと思います。というのも、両者の相違に着目することで、板金加工の特徴が明確になると考えるからです。以下、見ていきたいと思います。 プレス加工との違い 一般的に、板金加工とプレス加工の相違は、金型に集約することができます。 板金加工が汎用金型(標準金型)を使用するのに対して、プレス加工は専用金型を使用します。 日本金型協会では、以下のように金型を定義しています。 金型とは、材料の塑性または流動性の性質を利用して、材料を成形加工して得るための、主として金属材料を用いてつくった型を総称します。 例えば、自動車のボディーは金属板をプレス金型によって成形加工することによって出来上がります。 また、電話機など樹脂製品はプラスチック材料を金型に射出成形すること出来上がります。このように、金属、プラスチック、ゴム、ガラス等の素材を、それぞれ目的とする製品の成型加工用に使用されるものが金型で、金型の品質如何が製品の良否を 決定づけるものなのです。したがって、金型は製品の産みの親などといわれています。 引用元:一般社団法人日本金型工業会 プレス加工の強みと弱み プレス加工は、製品および工程ごとに専用の金型を作り、これを使用する点に特徴があります。 これにより複雑で高精度の製品を早く、安く加工することができるのです。 しかしながら、専用の金型を作るため、多量生産に向いており、生産数が少ないとそれに要した費用を償却するのが困難です。 また、製品の形状および寸法などは金型で決まってしまうため、加工者の技量に左右されにくいという特徴があります。 板金加工の強みと弱み 板金加工は、上記プレス加工と逆の特徴を持っています。 汎用金型および工具を使用することが多いため、特定の製品にかかる費用が安く、少量生産に適しています。 しかし、生産性はプレス加工に比べ大幅に低くなるため、大量生産には向いていません。 また、汎用金型を使用して工夫しながら加工するので、加工者の技量が重要な要素になってきます。 金型という観点から見た、板金加工とプレス加工の差異は、以下のように示すことができます。 板材は一体どのように作られているの? 1. 鉄を生みだす製鉄と製鋼 ・製鉄 鉄は酸素と結びつき、安定した状態で鉄鉱石や砂鉄といった形で存在しています。そのため、鉄を取り出すためには、酸素を引き離すことが必要です。 この工程を「製鉄」といい、高さ100メートル以上もある高炉という設備を使います。炉の上から鉄鉱石と共に石炭を蒸し焼きにしたコークスを投入し、下から高圧の熱風を吹き込むことでコークスが燃えだします。この熱によって鉄鉱石を溶かします。 ・銑鉄 この時に、鉄は結びついていた酸素を手放し、炉の底にたまります。 これを「銑鉄」と呼びます。 この銑鉄には炭素や不純物が多く含まれています。 ・鋼 この銑鉄をドロドロに溶けた状態のまま転炉という設備に移し、そこで酸素を吹きつけることで炭素量を適正量にコントロールし、不純物を除去します。このようにしてできた鉄を「鋼」(こう)といいます。 ・製鋼 この鋼を溶けたまま連続鋳造設備に流し込み、さらに不純物を除去しつつ冷却していくことで、大きな塊にします。 このように不純物を取り除き、溶けた鉄を鋼片にする工程を「製鋼」といいます。 引用元:中部鋼鈑株式会社 2. 圧延機で鋼材をつくる(熱間圧延) 製鉄工程と製鋼工程を通して鉄鉱石から鉄を取り出し、鋼にするところまで見ました。 この鋼の塊は厚みが25cm近くあるので、このままでは用途が限られてしまいます。そこで、この鋼の塊から板や棒といった形状をつくります。 これが圧延加工の工程になります。 一旦冷えた鋼片を再度1000℃以上に熱し、軟らかくしてから、圧延機という設備に送ります。 引用元:日本冶金工業株式会社 圧延機は、鋼片を上下のローラーに挟み込んで徐々に薄くしていきます。 厚い板はその板形状のままで取り出します。1.2mm~19mmの板厚ではコイル状に巻き取り、これをホットコイルと呼びます。 熱い状態で圧延加工するので、この工程を熱間圧延といい、できたものが熱延鋼板として出荷されます。 板材だけではなく棒材、線材、断面形状が特殊な形鋼など、さまざまな形状もつくられます。 3. さらに圧延して薄板をつくる(冷間圧延) 板金加工に使われる板材には、さらに薄いものも求められます。 このような薄板は冷間圧延によってつくられます。 冷間圧延は、先の圧延鋼板を使って常温で圧延加工してつくられ、できたものは冷延鋼板と呼ばれます。冷間という言葉には、冷やすイメージがつきまといますが、常温でおこなう工程です。 冷間圧延では、1ミリの千分の一の極小レベルで厚みをコントロールするため、厚み精度に優れており、表面もなめらかできれいに仕上がります。あとで紹介するSPC材(冷間圧延鋼板)は、この工程でつくられた材料です。 常温で圧延することにより金属組織が乱れて硬くなるため、圧延後に焼きなましという熱処理をおこない、内部のひずみを除去して軟らかくしています。(熱処理に関しては、別の記事で解説します。) また、さびを防ぐ亜鉛メッキ鋼板は、この冷延鋼板の表面にめっき処理をおこなったものです。 引用元:中部鋼鈑株式会社 黒皮材とみがき材 熱間圧延鋼板は黒皮材、冷間圧延鋼板はみがき材と慣習的に区分されています。 酸化鉄によって生ずる黒皮は、手でさわって凸凹を感じるほど大きなことがあります。 黒皮材は、寸法精度が必要なく見栄えも問わない建築材料などに使用されます。 他方で、製品や生産設備に使う場合には高い寸法精度やなめらかな表面が求められるので、黒皮を除去しなければなりません。 これに対して、みがき材であれば、表面がなめらかできれいなのでそのまま使用することができます。 黒皮材よりみがき材の方が価格は高いのですが、黒皮材をそのまま表面を加工するコストと比較すると、みがき材の方を使用する方がメリットがあるとされています。 板材の種類を細かく分ける 1. 板材の種類 板金加工で使用される板材の多くは鉄鋼材料から構成されています。 そこで、まず鉄鋼材料と非鉄鋼材料に分けて、全体を俯瞰してみたいと思います。 ・鉄鋼材料には、軟鋼板、表面処理鋼板、ステンレス鋼板があります。 ・鋼板とは、文字通り板状に加工された鋼のことをいいます。 ・非鉄鋼材料には、アルミニウム板、銅板などあります。 ・軟鋼板としては、熱間圧延鋼板(SPHC)と冷間圧延鋼板(SPCC) が代表的なもので、一般に「鉄板」 と呼ばれています。 ・鋼板(鉄板)は板厚によって、厚板(6mm以上)、中板(3mm以上6mm未満)、薄板(3mm未満)に分けることができます。 ・ステンレス鋼板は、鋼にクロムを12%以上添加したもので耐食性に優れています。 ・表面処理鋼板は、軟鋼材を母材として表面にめっきしたもの、あるいはめっきして更に塗装したものです。 ・アルミニウムは、軽く、伝熱性、導電性に優れています。 ・銅も、伝熱性、導電性に優れていますが、高価なため構造部品などに使われることはめったにありません。 2. 板材の寸法、形状 板金材料には、あらかじめ必要な寸法に切断されたスケッチ材と、寸法が規格で決められた定尺材があります。実務では、定尺材をそのまま使い、切断、穴あけ加工を行うのが一般的です。 ・軟鋼材の定尺材の寸法は、以下の3つが広く流通しています。 914×1829mm(3×6、サブロク) 1219×2438mm(4×8、シハチ) 1524×3048mm(5×10、ゴトー) ・ステンレス、アルミニウムの定尺材は以下のものが、広く流通しています。 材料の特性 さて、いよいよ材料の特性について見ていきます。 個別の材料について述べる前に、鉄鋼材料を考える上で基本となる2つの事柄について確認しておきたいと思います。 1. 炭素量で鉄の性質をコントロール 鉄もアルミニウムも純金属では軟らかすぎて用途が限られるため、他の成分を加えることで、実用に適した性質に変えていきます。 鉄に最も影響を与えるのが炭素(C)です。加える炭素の量により軟らかい鉄から硬い鉄までつくり分けることができます。鉄鋼材料は、このように成分をコントロールされてできあがっています。 また、鉄鋼材料はこの炭素量の大小によって分類されます。炭素量が0~0.02%が純鉄 、0.02~0.3%が軟鋼、0.3~2.1%が硬鋼、2.1~6.7%が鋳鉄です。純鉄は柔らかすぎて実務上の用途がないので、軟鋼から実用領域となります。 軟鋼と硬鋼を分ける0.3%は、焼き入れ効果の有無と溶接可否の目安になります。(この溶接の詳細については、別記事で解説します。) 2. 炭素量による性質の各特長 (1)強さと硬さ:炭素量が増えるほど強く硬くなります。 (2)加工性:炭素量が増えるほど硬くなり、加工しにくくなります。 (3)焼き入れ効果:炭素量が少ないと、焼きは入らず、炭素量が増えるほど焼き入れの効果がでてきます。 (4)溶接性:0.3%以下は溶接が容易ですが、0.3%を超えると炭素の含有量が多いために溶接の熱で焼きが入り、焼き割れといった欠陥が生じやすいために溶接は避けます。 (5)溶融温度:炭素量が増えるほど溶ける温度は下がっていきます。 3. 主要な5大元素 鉄に加える成分の代表格は 炭素(C)で、その他に補助的な役割としてシリコン(Si)、マンガン(Mn)、リン(P)、硫黄(S)が入っており、これらを5大元素といいます。 ・炭素はなくてはならない存在で、強さと硬さの源泉です。 ・シリコンはけい素とも呼ばれ、弾性変形の上限値である降伏点と破断限界を示す引張り強さを増します。 ・マンガンは粘り強さを高め、焼きを入れやすくする元素です。 ・ここまでの3元素は鉄の性質を向上する大切な成分ですが、残りのリンと硫黄は基本的に有害な成分です。 以上の5つが鉄鋼材料の基本となる元素です。 炭素鋼と合金鋼の区分け 鋼は添加物の種類によって炭素鋼と合金鋼に分かれます。 5大元素のみで構成されたものを「炭素鋼」といいます これに対して、5大元素にクロム(Cr)やニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)などの金属を加えたものを 「合金鋼」といいます。 合金鋼は高価な半面、優れた性質を持っています。 身近に使われている合金鋼としては、ステンレス鋼を挙げることができます。 1. SPC材(冷間圧延鋼板) (1)概要: ・SPC(Steel Plate Coldの略)材は、0.4~3.2mmの薄板で、最大でも3.2.mmです。 ・冷蔵庫や洗濯機のボディなど家電製品などで、広く使用されています。 ・SPCは用途によって、SPCC(一般用)、SPCD(絞り用)、SPCE(深絞り用)などがあります。 ・このSPCCに電気亜鉛メッキを施したものがSECCです。 (2)強さ: 軟らかい板材なので、大きな力が加わる箇所には使用しません。 (3)加工性: 加工性は良好です。平板のまま使うか、もしくは曲げ加工やプレス加工が中心です。 冷間圧延なのでとてもなめらかできれいな表面です。 表面は削らずにそのままの面を使います。 2. SS材(一般構造用圧延鋼材) (1)概要:SS(Steel Structureの略称)材は汎用材として、金属加工で最もよく使用される圧延鋼板です。安価で市販性も高く、鋼板、棒材、形鋼とバリエーションも多く揃っています。 (2)強さ: 一般的に鋼材は、厚くなるほど降伏点が下がる傾向にあります。 これは、厚くなるほど圧延後に常温まで冷える時間が長くなり、そのことによる金属組織の変化が影響するためです。 しかし、一般環境下で使用する場合、この強さは相当の余裕度があるので、厚みによる降伏点の差異は、特に意識する必要はありません。 (3)加工性: とても加工しやすい材料です。 SS材は材料の表面が良好なので、できるだけ表面をそのまま使用します。 というのも、表面を加工すると内部応力が解放されて、そりが発生する恐れがあるからです。 内部応力とは 内部応力とは、外から材料に力を加えた際に、内部で反作用として生じる力のことです。外部の力に応じて発生する力という意味で、内部応力(単に応力とも)と呼びます。内部応力には2つの種類があります。材料を引き延ばそうとする力が働く場合の引張応力と、縮めようとする圧縮応力です。 内部応力は部材ごとに違うので、実際に削ってみなければわかりません。 合金鋼 炭素鋼の5大元素に加えて他の金属を添加したものが **合金鋼** です。 合金の元素には、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、コバルト(Co)などがあります。 SUS材(ステンレス材) (1)概要: 合金鋼の中で最も身近に使われているのがステンレス鋼です。ステンレスはStainless、すなわち「汚れが少ない、さびが少ない」を意味し、五大元素にクロムとニッケルを加えた合金です。 SUS(Steel Use Stainlessの略称)材の特徴は、何といってもさびに強い耐食性です。 クロムと酸素が結びついた緻密な酸化膜(不動態被膜)が、金属表面をしっかり覆うことによって可能になります。 以下、ステンレス鋼でよく使用されるSUS304とSUS303について、解説します。 ①SUS304(18-8系ステンレス) ステンレスの半分以上を占めるのが、このSUS304です。 抜群の耐食性を活かして、台所のシンクや、機械部品にも使用されるオールマイティな品種です。 耐熱性もあり、600℃まで使用でき、溶接も可能です。 磁性がないので磁石につかないのが特徴です。ただし、曲げ加工などによる加工硬化があると、その個所は磁性を帯びることもあります。 ②SUS303(18-8系ステンレス) 先のSUS304は耐食性が優れていますが、硬くて粘っこいために加工性があまりよくありません。 そこで、有害成分とされているリンと硫黄を含ませることで加工性を向上させたものがこのSUS303です。 耐食性は若干劣るものの、加工性が良い点は機械部品に適しています。 SUS304と同じく非磁性です。 非鉄鋼材料 1. アルミニウム 鉄が鉄鉱石から酸素を離して取り出されるように、アルミニウムも鉱物のボーキサイトから取り出されます。 鉄の場合に比べて、アルミニウムと酸素の結びつく力は、はるかに大きく、多くの電力を用いて電気分解をおこなう必要があります。 しかし、アルミニウムには優れた特徴があるため、いまや鉄につぐ生産量となっています。 以下の動画は、アルミニウムの特徴をよく説明してくれています。是非、視聴してみてください。 「電気の缶詰~アルミニウム~」 概要 奇妙な骨董屋の周期表を模した棚を前に、少女と怪しい店長のシュールなやりとりを通じて、単なる記号の羅列ではない周期表の正体を探っていきます。元素の性質、発見の歴史をじっくりと見つめると、あたかも物語の人間関係相関図のように整理された元素たちの関係が見えてくるのです。シリーズ第10回は、「電気の缶詰~アルミニウム~」と題し、アルミニウム精錬の歴史と現在の利用例、アルミニウムの特徴を紹介します。 出演者名・所属機関名および協力機関名 佐藤瀬奈(オスカープロモーション)、コハ・ラ・スマート(個人)、オスカープロモーション 引用元:サイエンスチャンネル 2. アルミニウムの特徴 アルミニウムの特徴は、鉄と比較することでよく理解できます。以下、その特徴を列挙します。 (1)軽さ: アルミニウムの一番の特徴はその軽さです。 鉄とその密度を比較すると約3分の1です。アルミニウムが工業製品として使われだしたのは、時代背景と関係しています。 20世紀に入り、航空機生産の需要が高まると、アルミニウムはこの航空機の軽量化を最大の目的に進められます。航空機の機体は、その総重量の約70%がアルミニウム合金でできているといわれています。 今では、地下鉄から新幹線、果ては人工衛星に至るまで広く使用されています。 (2)強さ: アルミニウムは鉄に比べると弱くなります。 しかし、7000系(亜鉛とマグネシウムの合金)のA7075は、炭素鋼のSS400を超える引っ張り強さがあります。 剛性の指針である縦弾性係数は、どの品種も同じく鉄の3分の1なので、同じ力がかかると鉄の3倍の変形量が生じます。 (3)加工性: 切削の抵抗が小さく熱伝導性も良いために、切削熱を拡散できます。それゆえ、加工性は非常に優れています。 高速加工や大きな切込みも可能です。 (4)耐食性: ステンレスと同じく大気中で自然に金属表面に酸化被膜を形成し、酸素と水分を遮断するので耐食性に優れます。 さらには耐食性を向上させる必要があるときには、表面処理としてアルマイト処理をおこない、人工的に酸化被膜を形成します。 (5)導電率: 電気の流れやすさを示す導電率は銀、銅、金についで高い金属です。 (6)熱伝導率: 熱伝導率は銀と銅についで高いです。 (7)耐熱温度: アルミニウムの融点は約660℃です。また強さは200℃を超えると急激に下がるので、200℃を最高使用温度に設定します。 (8)光沢と非磁性: 光を良く反射するので外観が美しく、磁性をもたないことも大きな特徴です。 3. 銅と銅合金 銅は人類がはじめて手にした金属といわれています。 鉄の溶融温度が約1500℃であるのに対して、銅は1000℃とかなり低いです。これが鉄よりも銅を早く手にした、といわれる理由です。 日本でも約2000年前から農耕具や武器、貨幣、銅鐸などに使われました。 現代では優れた伝導率や熱伝導性を活かして、情報通信や精密機器などの先端産業に使われています。 4. 銅の特徴 銅の特徴も、鉄と比較することでよく理解できます。大きな特徴は導電率と熱伝導率が抜群に良いことです。一方で高価なため、構造部品として使用することはありません。以下、その特徴を挙げてみます。 (1)導電率: 銅の最大の特徴はこの導電率の高さです。 銀につぐ性質のため、銅線として電気配線に使われています。 (2)熱伝導率: 熱の伝わりやすさは鉄鋼材料やアルミニウムよりも優れています。 そのため、鍋やフライパンなどの調理器具によく使用されています。 熱伝導率の高さから、熱が素早く均一に伝わるためです。 (3)加工性: 大昔から使われている理由のひとつが加工のしやすさです。 切削加工や圧延加工に適しています。 まためっきやはんだづけが容易な金属です。 (4)耐熱温度: 200℃を超えると軟化するため、通常200℃以下で使用します。例外的にベリウム鋼は耐熱性に優れており、600℃までは軟化しません。低温側の劣化はないので、問題なく使えます。 (5)耐食性: 耐食性に優れており、他の金属は苦手とする海水に対しても良好な耐食性をもっています。ただし硝酸や塩酸、硫酸にはおかされることには注意が必要です。 (6)光沢: 金以外で唯一黄色の光沢をもつ金属です。加工性がよく光沢があることから工芸品にも使われています。 (7)非磁性: 非磁性を活かした用途として、磁気厳禁の電気機器の背億定期や化学工業の防爆用工具として使われています。 5. 銅と合金銅の種類 生産量の割合を見ると純銅が50%、黄銅が約40%で合わせて90%を占めています。ここでは、純銅と黄銅についてのみ解説します。 (1)純銅 純度は99.90%以上で、酸素の含有量によって3種類に分かれます。 酸素の多い方から順にタフピッチ銅(CC1100)、りん脱酸銅(C1201、C1220)、無酸素銅(C1020)があります。 無酸素銅は酸素が極小で不純物も除去された高純度の銅です。これらの純銅は高い導電率や熱伝導率を活かした銅線や電子機器材料に使用されます。 (2)黄銅(真鍮) 黄銅は銅と亜鉛の合金で、真鍮(しんちゅう)と呼ばれています。 合金の比率によって銅と70%と亜鉛30%の70/30黄銅(C2600)、同じく65%と35%の65/35黄銅(C2680)、60%と40%の60/40黄銅(C2801)があります。 銅の比率が下がるにつれて、引張り強さと硬さは増えていきます。一方で、銅の比率が60%未満になるともろさが出てくるため、ラインナップは60%以上になっています。 C2600とC2680は伸びが大きいので、冷間加工性が良好で深絞り加工にも使用されます。 亜鉛の量が多いほど、銅の比率が少なくなるので、価格も安くなります。 6. その他の非鉄金属材料 チタンとチタン合金、マグネシウムとマグネシウム合金などがあります。 この記事では割愛します。 本記事では、板金加工に使用する材料を俯瞰しました。材料の知識なしに板金加工を行うことはできません。さらに別の記事でより具体的な内容に踏み込んでみたいと思います。 次回は、板金加工に欠かせない図面について考えてみたいと思います。 次の記事:【板金加工 図面】図面の基礎を徹底解説!書き方・読み方・必要性