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せん断加工

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    抜き加工とは?種類、適した材料、加工限界、方法を解説

    金属を使った製品の製造において、板材を曲げたり切断したりする「板金加工」は欠かせない金属の加工方法です。その中でも、板材にシャフトやケーブルを通したり、ネジで締め付けたりするような構造が必要となる場合があります。その中でも薄い板に穴を開ける方法のひとつとして「抜き加工」があります。今回は、板金加工において、薄い板材に穴を開ける代表的な加工方法、抜き加工について解説していきます。抜き加工の種類や適した材料、やり方などの基礎知識、必要とされる板材の厚さによっても加工方法が異なるため、条件やメリットなども含めて詳しくご紹介します。板金加工の抜き加工とは?板金加工における抜き加工は、一般的に金属の板材をせん断することを言います。プレス、レーザー、ワイヤーカットなど、用いられる方法はさまざまですが、丸型や角型の板材を、汎用的な金型を使って特定の形状にせん断する、タレパンと呼ばれるタレットパンチプレス機が最もポピュラーな抜き加工の方法です。複雑な形状や高い精度が要求される場合、専用型が用いられる場合もありますが、こちらは汎用型に比べてコストが高くなります。また、同じ抜き加工でもタレパンとレーザーとでは加工の定義や方法が大きく異なるため、今回は板金加工における抜き加工の代表的な方法、タレパンを使った抜き加工についてご紹介します。抜き加工の種類抜き加工には、大きく分けて5種類の加工方法があります。また、抜き加工は製品が圧力を受けてせん断されるため、板材は押し込まれる時に多少曲がり、引っ張られたような形状になります。●打ち抜き加工…板材から部品になる部分をくり抜く●穴抜き加工…製品から不要な部分を切り抜く●切り込み(スリット)加工…製品を繋がったままにして切り込みを入れる●縁取り(トリミング)加工…製品の不要な部分を縁取る●半抜き加工…完全に抜くのではなく、浮き上がらせた状態で止める製品によっては穴抜きと半抜きを両方取り入れるなど、ひとつの製品に複数の抜き加工が施されることもあります。打ち抜き加工打ち抜き加工は、抜型と呼ばれる型を使い、金属板に圧力をかけて目的のカタチに打ち抜き、製品部分を完全に分離させる加工方法です。抜き加工といえば打ち抜き加工を想像する人も多く、最もポピュラーな加工方法です。穴抜き加工穴抜き加工は打ち抜き加工と同じく型枠を使って金属板をくり抜く加工方法です。異なるのは、打ち抜かれた方ではなく、プレス機に残った金属板が製品になるという点です。用途は製品にネジを通すための穴を開けるなど、板材に穴をあけることを目的に用いられます。切り込み(スリット)加工一部がドアのように開いた形状の製品を作る際に用いられる抜き加工です。切り込みに合わせて曲げ加工も必要となるため、金属板と平行のパンチを使うことはできません。そのため、スリットの角度に合わせたパンチとダイが一体となったものを使用するのが一般的です。傾斜の角度や形状によって抜かれた部分が分離してしまう可能性があるため、加工の際には注意が必要です。縁取り(トリミング)加工型枠などで整形された部品の縁をきれいに切り取り、形状を整えるのが縁取り加工です。打ち抜き加工のように製品部分をくり抜くタイプの抜き加工ですが、大きく異なるのはすでに成形されている商品をキレイにするのが目的であること。一般的には、製品の大きさを調整するために用いられます。半抜き加工抜き加工を途中やめにして、凸状態の形状を作る加工方法です。他の抜き加工と違い、形状を変化させただけでくり抜いてはいませんが、凹凸をつけるだけの半抜き加工も、抜き加工のひとつに分類されます。深くまでプレスし過ぎると板材が分断されたり亀裂が入ったりしてしまったりするため、きれいに成形できるかどうかが技術の見せ所となります。抜き加工に適した材料抜き加工には、鉄やアルミ、ステンレスや銅などの金属以外にも、ウレタンやゴム、樹脂やカーボンなどにも用いられます。一定の靭性がないと、製品はひび割れてしまいます。そのため、硬くてひび割れやすい、ガラスのような素材には抜き加工は使えません。また、同じ形状の加工でも、やり方や得意不得意が加工会社によって異なるため、工場によって抜き方や製品単価などが変動することもあります。抜き加工の加工限界抜き加工に適した素材を使用していても、厚みが薄すぎるとうまく抜くことができません。逆に、厚過ぎる場合も同様で、曲げたりせん断したりすることが難しくなります。そのため、素材によっても異なりますが、一般的に抜き加工は0.5mm~3mmの素材が使用されます。抜き加工の方法抜き加工は、タレパンを使った最もポピュラーな加工と、それ以外の方法を使ったものの2種類に大別されます。どちらを選ぶかは、素材や目的、コストによっても異なります。そのため、タレパンが適しているのはどのような場合か、以下解説します。タレパンを使った抜き加工タレパンを使うメリットは加工スピードの早さとコストの安さ。金型を使用するため、1回のプレスで複数個の穴を同時に打ち抜くことも可能です。板材を打ち抜く際、型の取り方を工夫したり、異なる製品を同じ板材から打ちぬいたりすることで、材料を無駄なく活用することができます。タレパンには複数の金型を同時にセットすることができ、NC制御によって板材を打ち抜いては次の工程へ送るという動作を繰り返すことができます。これにより、ひとつのプレス機で複数の抜き加工を施し、金属加工を完成させることが可能です。タレパンの種類と選び方タレパンには、「単発型」「トランスファー型」「順送型」の3種類があります。●単発型単発型は、単純に1回のプレスで抜き加工をした後、作業者が1つずつ材料の取り出しと次の材料のセットを行う、最も単純で手間の多い方法です。ただし、手間はかかるものの、金型の修理や改造がしやすいメリットもあるため、製品の試作段階で用いられるのはほとんどが単発型です。数百、数千といったレベルの製品個数であれば、単発型でも十分対応が可能です。また、1個や2個といった少量生産の場合、レーザーを使った加工の方がコスパが良い可能性があります。●トランスファー型トランスファー型は、1つのプレスが終わったら次のプレス機へ、さらにその次のプレス機へと加工品を移動させていくタイプの加工方法です。●順送型順送型は、1台のプレス機に複数の金型をセットし、プレス機の上下動で、1回目はAの型枠を使用して穴を開け、次の型枠に送って2回目は凹凸を作り、3回目にくり抜くといったカタチで、同じプレス機を使い、連続したプレスによって製品を作り出す加工方法です。どちらも生産速度が早く、数万個、数十万個といった大量生産にも問題なく対応が可能です。

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    溶接時のスラグはなぜでるのかを解説!スラグ巻き込みの原因と対処法についてもご紹介!

    今回は、溶接時に発生するスラグについて詳しく解説していきます。溶接の際に金属の表面に浮き出てくるのが、スラグと呼ばれる物質です。ただゴミとなってしまうだけの邪魔な金属カスなのか、それともこれはこれで何か必要となるものなのか、よくわからないところです。「スラグの発生を抑えるための溶接方法が知りたい」とか「溶接にかかるまでの準備作業でスラグを防ぐことができるのだろうか」などの悩みを抱えたまま、手間のかかるスラグの除去をしながら、溶接の作業をしている方もいるかもしれません。今回ご案内するスラグに関する様々な情報が、溶接作業に携わる大勢の皆様のお役に立てれば幸いです。スラグとは溶接の際に発生するスラグというものをご存知でしょうか?スラグとは簡単に言うと、溶接の際に金属から出てくるカスのことです。溶接時に溶融した金属から分離して発生するもので、現場においては「のろ」とも呼ばれています。金属から発生するカスですので、当然に溶接後には剥いできれいに除去しなくてはなりません。きれいにしておかないと、次の溶接の際に悪影響がでてくる可能性があるからです。ただ、ちょっとした注意を怠らないようにしたり、管理さえしっかりしておけば、スラグの発生を減らすことも十分に可能なんです。スラグの発生を抑えて除去作業の手間が少なくなれば、溶接作業もスムーズに行うことができます。それらの方法も、この後の項目で解説していますので、参考にしていただければと思います。参考尚、溶接に関する基本的な知識については、こちらの記事をご一読ください。溶接に関する『10の基本知見』製造業マニアの私が切る!【重要】溶接時にスラグがでるのはなぜか溶接を行う際に、なぜスラグが発生するのでしょうか。アーク溶接の場合、アークの熱が溶接材料と母材の一部を溶かして溶融金属となり、それが固まって溶接部が形成されます。溶融時の金属の温度は千数百度という高温になるため、それが誘引となって酸素や窒素などの気体を吸収しやすい状態になります。それらの気体は、溶接金属が固まっていく時点で、気孔を作り出したり金属内に含まれてる元素と結合したりして、非金属介在物として出現して残ってしまいます。気孔や非金属介在物として発生した場合、溶接部の接合強度に悪影響を与えることも少なくありません。溶融金属が吸収してしまう気体の中で、水素と窒素においては溶接材料の適切な管理をすることで防湿や再乾燥を防ぐことができますし、溶接の際のシールドをしっかりと行うことで溶接金属の品質低下を抑えることができます。しかし、防止が難しいとされているのが酸素なのです。そのため、アーク溶接を実施する場合においては、気体を吸収する量や溶接金属への残留を可能な限り抑えるため、十分な対策がとられています。それらの対処法の中で、特に溶融金属から酸素を取り除く作業を行った際の結果として、スラグが発生することとなっているのです。極力発生を抑えたいスラグではありますが、実際の現場におきましては、溶接の際に使用される被覆アーク溶接棒やスラグ系フラックス入りワイヤなど、脱酸剤以外にもスラグを生成する成分が積極的に添加されています。その理由は、スラグはただの不要なカスという訳ではなく、溶融金属の表面を覆うことで、大気中に存在する酸素や窒素を溶融金属が吸収しないようにするという役目も受け持っているからなのです。スラグ巻き込みとは溶接の際に発生するスラグは、不純物である酸化物が金属の表面に浮き出てきたものです。しかし、スラグが排出される過程で酸化物が大量に含まれ、スラグが一定の方向に上手く排出されない場合があります。そのような時にスラグが金属の表面に浮き上がれず、溶接金属の中に閉じ込められた状態でスラグとなってしまうのです。これが、スラグ巻き込みという現象です。この際のスラグは、凝固の途中でできるため、通常、球形や長楕円形のような形状となることが多いようです。スラグ巻き込みが発生しやすい溶接部としては、狭開先溶接部が挙げられます。この溶接において、開先壁や横向溶接の上側開先、そしてレ型開先の立板側開先において、スラグ巻き込みがよく見られます。これは、ビードの形状が凸状となった場合、止端部のスラグが剥離しにくくなってしまうためです。更に、狭開先溶接の際には、開先壁方向への溶込みがどうしても浅くなってしまうため、止端部における溶込みを十分に行うことができないのも原因の一つといえます。その他、肉盛溶接の場合でも、溶込みを浅くするような施工条件が付加されたような場合に、スラグ巻込みが多く見られます。引用元:(社)日本溶接協会/溶接情報センターソリッドワイヤによる多層溶接を行う場合、被覆アーク溶接棒やフラックス入りワイヤに比べてスラグ量が少なくなるので、何パスかを続けて溶接する場合があります。この時、厚めのスラグを残した状態で溶接を続けてしまうと、アークが不安定になり、スラグ巻込みが発生しやすくなります。これ以外にも、アークが安定しにくい溶接の開始時点や傾斜下進溶接でも、スラグ巻込みが発生しやすくなるので、施工の際には十分に注意をしなくてはいけません。対処法スラグ巻込みの発生は、前工程または前パスでのスラグが十分に除去されていなかった場合や、融合不良が主な原因です。そのため、溶接開始前にスラグを丁寧に除去するように心がけ、融合不良を起こさないようにすることが重要となります。手間のかかるスラグの除去を容易にするには、オーバーラップやアンダカットのようなビード形状や、極端な凸状ビードとならないように、適切な溶接条件の元で溶接作業をするようにしましょう。更には、スラグ剥離性の良い溶接材料をチョイスするのも有効な対処法となります。※こちらの記事では、たくさんある溶接の種類の中から、代表的な溶接方法について解説しています。⇒溶接の種類はこの記事だけでOK!3分でわかる金属加工で代表的溶接方法!まとめ今回は、「溶接時のスラグはなぜでるのかを解説!スラグ巻き込みの原因と対処法についてもご紹介!」をテーマに、溶接スラグに関する情報をご紹介しました。お役に立つ情報はありましたか?

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    チタン切削はなぜ難しいのか?【3分でわかる】チタンの切削ならMitsuri

    チタンは高級な金属のイメージがありますが、現在の私達の日常の多くで使われる金属です。アルミニウムやステンレスなどの工業製品の金属の中で、最も優れた性能をもつ材質です。こんな優れた材質を容易に削る事ができれば、最高の材質という事になります。スポーツ、アクセサリー、医療機器など、製品例は多数ありますが、そんな様々な用途に合わせてチタンを加工する技術の一つがチタン切削です。本記事では、そんなチタン切削がなぜ難しいのかを、わかりやすく紹介していきます。チタン切削について  切削とは金属の不要な部分の内径や外径を削り取ったり、穴を開けたり穴を広げたり、必要な形に加工する技術です。チタンには純チタンとチタン合金とがあります。我々一般的に目にするのは純チタンであり、高速切削加工が困難なチタン合金(64合金)は難削材に分類されています。難削材とは、材質そのもが削りにくく、加工時に発火する可能性が高い材料を言います。その加工が難しい事で新たに開発されたいわゆるB系合金などは、64合金とほぼ同等の強度を持ち、冷間での加工性は64合金よりも優れているものも開発されました。チタンを製品として仕上げるには、熟練の技術と経験で磨かれた職人が必要になります。1950年ごろの戦闘機には、大部分でチタンが使われておりました。アメリカやソ連では、純チタンがそのまま使われる事は少なく、強力チタン合金として使われ、この頃では主に軍事機や宇宙ロケット開発に使われていました。アメリカのチタン生産量の80%~90%が軍用機に使われ、民間での使用量は10%程度でした。近年、軍事機では複合材などが使用されるようになり、チタンの使用は減ってきていますが、民間機には広く使われています。これまでは、加工経験者も少なく専用工具の開発も進んでいないため、経験が通用しないところが、難削材加工の難しい部分ではありました。その難しいとされていたチタン切削ですが、近年開発が進み、①チタンの特性を把握できたこと②工具の開発が進んだことにより、その他金属と同様に加工出来る様になりました。最近では以前の10倍もの耐久性がある工具も開発されています。近年では、製品例として、高性能品(パソコン、高給腕時計、デジタルカメラなど)、ハンコ、食器、スポーツ、医療機器など様々な身近な物に使われています。宇宙や深海で使うロケットや潜水船にも使われている為、チタン切削自体もその必要な強度や信頼性に基づき多種多様になっています。チタンの加工について知りたい方はこちら!【チタン加工】チタンの加工上の特性や加工方法を徹底解説!!チタン切削が難しい理由チタン切削がなぜ難しいかというと、チタンがもつ三大特徴が原因となります。チタンの三大特徴①発火しやすい②摩擦で工具の寿命が短くなる③薄いチタンは変形しやすい切削しにくいが故、精密な作業がしにくく、加工工程が増えるので手間と時間がかかってしまうのです。ここではチタン切削が難しい理由を詳しく解説していきます。①発火しやすいチタンは科学的に活性である為、可燃性が高く、トラブルが発生しやすい材です。高い切削速度で切削していくと切りくずが発生し、その切りくずが発火し、燃焼しやすいのです。その切りくずにガスバーナーで火をつけるとアッと言う間に燃焼します。燃焼時に水での消火は水素爆発を起こす可能性があるので禁物です。乾いた砂か、金属火災用の粉末消火剤で消化するようにしましょう。②摩擦で工具の寿命が短くなるチタンは強度が高く熱伝導率が悪い為、切削した時に放たれた熱の逃げ場がなく、加工材と工具に熱が蓄積され、工具の摩擦が大きくなります。科学的に活性も一因となり、切削熱が発生し切削部の温度が上昇することで、活性度が増し、工具への摩擦が大きくなってしまうのです。純チタンは柔らかく粘りがあり、アルミニウムやステンレスは綺麗に切削ができますが、純チタンは削りカスが工具に付着してしまい摩耗しやすいといえます。③薄いチタンは変形しやすいヤング率が小さい(たわみやすい)為、切削する力によって変形やヒビ割れしやすい性質もあります。ヤング率とは、ものを引っ張った際の伸びと力の関係から求められる定数です。チタンのヤング率は鉄の約半分で、同じ力を加えたら2倍もたわむという事です。例えば、太い大きな木材にボルトを埋め込むのは簡単ですが、薄くたわみやすい木材にボルト埋め込むには、しっかり固定するなどのひと手間が必要になるのと同様です。また、チタン合金は代表的な難削材であるだけに、高速切削加工において切削油剤は重要な役割を果たします。そんな切削剤剤には、不水溶性切削油剤と水溶性切削油剤との2種類があります。近年コスト面の影響もあり水溶性切削油剤の比率が増してきている一方で、チタン合金の高速切削加工で十分な性能を発揮出来ず、増加するチタン合金の需要に対応しきれていない実情があります。チタンについて知りたい方はこちら!【チタン】とは!?チタンは他の金属とどう違うのかメリット・デメリットをご紹介!チタンの切削についてわかったところで、・具体的に費用はどれくらい掛かるのか・納品まで期間はどれくらい掛かるのかなどについて気になる方がいると思われます。そんな時はMitsuriにお任せ下さい!チタン 切削加工事例引用元:株式会社名取製作所こちらの製品はチタンで創られた自転車ペダルです。レーサーの義足をこの器具に取り付け固定されます。チタンは軽いという利点があるため、パラリンピックなど多くの障害者スポーツに使用され、その多くが個別の形状の物を要求されるため、切削加工が多様になります。チタンは耐食性・耐久性が高く、しなりやすいためある程度の変形に耐えられることで、締め付ける際に少し変形し、ナットをしっかり捉えて緩みにくくなるのです。まとめここまでチタン切削について紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。民間の小規模町工場などでも、チタン合金切削が可能な会社が多数あり、各会社、工場により技術の違いや実績なども異なります。

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    抜き加工とは?種類、適した材料、加工限界、方法を解説

    金属を使った製品の製造において、板材を曲げたり切断したりする「板金加工」は欠かせない金属の加工方法です。その中でも、板材にシャフトやケーブルを通したり、ネジで締め付けたりするような構造が必要となる場合があります。その中でも薄い板に穴を開ける方法のひとつとして「抜き加工」があります。今回は、板金加工において、薄い板材に穴を開ける代表的な加工方法、抜き加工について解説していきます。抜き加工の種類や適した材料、やり方などの基礎知識、必要とされる板材の厚さによっても加工方法が異なるため、条件やメリットなども含めて詳しくご紹介します。板金加工の抜き加工とは?板金加工における抜き加工は、一般的に金属の板材をせん断することを言います。プレス、レーザー、ワイヤーカットなど、用いられる方法はさまざまですが、丸型や角型の板材を、汎用的な金型を使って特定の形状にせん断する、タレパンと呼ばれるタレットパンチプレス機が最もポピュラーな抜き加工の方法です。複雑な形状や高い精度が要求される場合、専用型が用いられる場合もありますが、こちらは汎用型に比べてコストが高くなります。また、同じ抜き加工でもタレパンとレーザーとでは加工の定義や方法が大きく異なるため、今回は板金加工における抜き加工の代表的な方法、タレパンを使った抜き加工についてご紹介します。抜き加工の種類抜き加工には、大きく分けて5種類の加工方法があります。また、抜き加工は製品が圧力を受けてせん断されるため、板材は押し込まれる時に多少曲がり、引っ張られたような形状になります。●打ち抜き加工…板材から部品になる部分をくり抜く●穴抜き加工…製品から不要な部分を切り抜く●切り込み(スリット)加工…製品を繋がったままにして切り込みを入れる●縁取り(トリミング)加工…製品の不要な部分を縁取る●半抜き加工…完全に抜くのではなく、浮き上がらせた状態で止める製品によっては穴抜きと半抜きを両方取り入れるなど、ひとつの製品に複数の抜き加工が施されることもあります。打ち抜き加工打ち抜き加工は、抜型と呼ばれる型を使い、金属板に圧力をかけて目的のカタチに打ち抜き、製品部分を完全に分離させる加工方法です。抜き加工といえば打ち抜き加工を想像する人も多く、最もポピュラーな加工方法です。穴抜き加工穴抜き加工は打ち抜き加工と同じく型枠を使って金属板をくり抜く加工方法です。異なるのは、打ち抜かれた方ではなく、プレス機に残った金属板が製品になるという点です。用途は製品にネジを通すための穴を開けるなど、板材に穴をあけることを目的に用いられます。切り込み(スリット)加工一部がドアのように開いた形状の製品を作る際に用いられる抜き加工です。切り込みに合わせて曲げ加工も必要となるため、金属板と平行のパンチを使うことはできません。そのため、スリットの角度に合わせたパンチとダイが一体となったものを使用するのが一般的です。傾斜の角度や形状によって抜かれた部分が分離してしまう可能性があるため、加工の際には注意が必要です。縁取り(トリミング)加工型枠などで整形された部品の縁をきれいに切り取り、形状を整えるのが縁取り加工です。打ち抜き加工のように製品部分をくり抜くタイプの抜き加工ですが、大きく異なるのはすでに成形されている商品をキレイにするのが目的であること。一般的には、製品の大きさを調整するために用いられます。半抜き加工抜き加工を途中やめにして、凸状態の形状を作る加工方法です。他の抜き加工と違い、形状を変化させただけでくり抜いてはいませんが、凹凸をつけるだけの半抜き加工も、抜き加工のひとつに分類されます。深くまでプレスし過ぎると板材が分断されたり亀裂が入ったりしてしまったりするため、きれいに成形できるかどうかが技術の見せ所となります。抜き加工に適した材料抜き加工には、鉄やアルミ、ステンレスや銅などの金属以外にも、ウレタンやゴム、樹脂やカーボンなどにも用いられます。一定の靭性がないと、製品はひび割れてしまいます。そのため、硬くてひび割れやすい、ガラスのような素材には抜き加工は使えません。また、同じ形状の加工でも、やり方や得意不得意が加工会社によって異なるため、工場によって抜き方や製品単価などが変動することもあります。抜き加工の加工限界抜き加工に適した素材を使用していても、厚みが薄すぎるとうまく抜くことができません。逆に、厚過ぎる場合も同様で、曲げたりせん断したりすることが難しくなります。そのため、素材によっても異なりますが、一般的に抜き加工は0.5mm~3mmの素材が使用されます。抜き加工の方法抜き加工は、タレパンを使った最もポピュラーな加工と、それ以外の方法を使ったものの2種類に大別されます。どちらを選ぶかは、素材や目的、コストによっても異なります。そのため、タレパンが適しているのはどのような場合か、以下解説します。タレパンを使った抜き加工タレパンを使うメリットは加工スピードの早さとコストの安さ。金型を使用するため、1回のプレスで複数個の穴を同時に打ち抜くことも可能です。板材を打ち抜く際、型の取り方を工夫したり、異なる製品を同じ板材から打ちぬいたりすることで、材料を無駄なく活用することができます。タレパンには複数の金型を同時にセットすることができ、NC制御によって板材を打ち抜いては次の工程へ送るという動作を繰り返すことができます。これにより、ひとつのプレス機で複数の抜き加工を施し、金属加工を完成させることが可能です。タレパンの種類と選び方タレパンには、「単発型」「トランスファー型」「順送型」の3種類があります。●単発型単発型は、単純に1回のプレスで抜き加工をした後、作業者が1つずつ材料の取り出しと次の材料のセットを行う、最も単純で手間の多い方法です。ただし、手間はかかるものの、金型の修理や改造がしやすいメリットもあるため、製品の試作段階で用いられるのはほとんどが単発型です。数百、数千といったレベルの製品個数であれば、単発型でも十分対応が可能です。また、1個や2個といった少量生産の場合、レーザーを使った加工の方がコスパが良い可能性があります。●トランスファー型トランスファー型は、1つのプレスが終わったら次のプレス機へ、さらにその次のプレス機へと加工品を移動させていくタイプの加工方法です。●順送型順送型は、1台のプレス機に複数の金型をセットし、プレス機の上下動で、1回目はAの型枠を使用して穴を開け、次の型枠に送って2回目は凹凸を作り、3回目にくり抜くといったカタチで、同じプレス機を使い、連続したプレスによって製品を作り出す加工方法です。どちらも生産速度が早く、数万個、数十万個といった大量生産にも問題なく対応が可能です。

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    溶接時のスラグはなぜでるのかを解説!スラグ巻き込みの原因と対処法についてもご紹介!

    今回は、溶接時に発生するスラグについて詳しく解説していきます。溶接の際に金属の表面に浮き出てくるのが、スラグと呼ばれる物質です。ただゴミとなってしまうだけの邪魔な金属カスなのか、それともこれはこれで何か必要となるものなのか、よくわからないところです。「スラグの発生を抑えるための溶接方法が知りたい」とか「溶接にかかるまでの準備作業でスラグを防ぐことができるのだろうか」などの悩みを抱えたまま、手間のかかるスラグの除去をしながら、溶接の作業をしている方もいるかもしれません。今回ご案内するスラグに関する様々な情報が、溶接作業に携わる大勢の皆様のお役に立てれば幸いです。スラグとは溶接の際に発生するスラグというものをご存知でしょうか?スラグとは簡単に言うと、溶接の際に金属から出てくるカスのことです。溶接時に溶融した金属から分離して発生するもので、現場においては「のろ」とも呼ばれています。金属から発生するカスですので、当然に溶接後には剥いできれいに除去しなくてはなりません。きれいにしておかないと、次の溶接の際に悪影響がでてくる可能性があるからです。ただ、ちょっとした注意を怠らないようにしたり、管理さえしっかりしておけば、スラグの発生を減らすことも十分に可能なんです。スラグの発生を抑えて除去作業の手間が少なくなれば、溶接作業もスムーズに行うことができます。それらの方法も、この後の項目で解説していますので、参考にしていただければと思います。参考尚、溶接に関する基本的な知識については、こちらの記事をご一読ください。溶接に関する『10の基本知見』製造業マニアの私が切る!【重要】溶接時にスラグがでるのはなぜか溶接を行う際に、なぜスラグが発生するのでしょうか。アーク溶接の場合、アークの熱が溶接材料と母材の一部を溶かして溶融金属となり、それが固まって溶接部が形成されます。溶融時の金属の温度は千数百度という高温になるため、それが誘引となって酸素や窒素などの気体を吸収しやすい状態になります。それらの気体は、溶接金属が固まっていく時点で、気孔を作り出したり金属内に含まれてる元素と結合したりして、非金属介在物として出現して残ってしまいます。気孔や非金属介在物として発生した場合、溶接部の接合強度に悪影響を与えることも少なくありません。溶融金属が吸収してしまう気体の中で、水素と窒素においては溶接材料の適切な管理をすることで防湿や再乾燥を防ぐことができますし、溶接の際のシールドをしっかりと行うことで溶接金属の品質低下を抑えることができます。しかし、防止が難しいとされているのが酸素なのです。そのため、アーク溶接を実施する場合においては、気体を吸収する量や溶接金属への残留を可能な限り抑えるため、十分な対策がとられています。それらの対処法の中で、特に溶融金属から酸素を取り除く作業を行った際の結果として、スラグが発生することとなっているのです。極力発生を抑えたいスラグではありますが、実際の現場におきましては、溶接の際に使用される被覆アーク溶接棒やスラグ系フラックス入りワイヤなど、脱酸剤以外にもスラグを生成する成分が積極的に添加されています。その理由は、スラグはただの不要なカスという訳ではなく、溶融金属の表面を覆うことで、大気中に存在する酸素や窒素を溶融金属が吸収しないようにするという役目も受け持っているからなのです。スラグ巻き込みとは溶接の際に発生するスラグは、不純物である酸化物が金属の表面に浮き出てきたものです。しかし、スラグが排出される過程で酸化物が大量に含まれ、スラグが一定の方向に上手く排出されない場合があります。そのような時にスラグが金属の表面に浮き上がれず、溶接金属の中に閉じ込められた状態でスラグとなってしまうのです。これが、スラグ巻き込みという現象です。この際のスラグは、凝固の途中でできるため、通常、球形や長楕円形のような形状となることが多いようです。スラグ巻き込みが発生しやすい溶接部としては、狭開先溶接部が挙げられます。この溶接において、開先壁や横向溶接の上側開先、そしてレ型開先の立板側開先において、スラグ巻き込みがよく見られます。これは、ビードの形状が凸状となった場合、止端部のスラグが剥離しにくくなってしまうためです。更に、狭開先溶接の際には、開先壁方向への溶込みがどうしても浅くなってしまうため、止端部における溶込みを十分に行うことができないのも原因の一つといえます。その他、肉盛溶接の場合でも、溶込みを浅くするような施工条件が付加されたような場合に、スラグ巻込みが多く見られます。引用元:(社)日本溶接協会/溶接情報センターソリッドワイヤによる多層溶接を行う場合、被覆アーク溶接棒やフラックス入りワイヤに比べてスラグ量が少なくなるので、何パスかを続けて溶接する場合があります。この時、厚めのスラグを残した状態で溶接を続けてしまうと、アークが不安定になり、スラグ巻込みが発生しやすくなります。これ以外にも、アークが安定しにくい溶接の開始時点や傾斜下進溶接でも、スラグ巻込みが発生しやすくなるので、施工の際には十分に注意をしなくてはいけません。対処法スラグ巻込みの発生は、前工程または前パスでのスラグが十分に除去されていなかった場合や、融合不良が主な原因です。そのため、溶接開始前にスラグを丁寧に除去するように心がけ、融合不良を起こさないようにすることが重要となります。手間のかかるスラグの除去を容易にするには、オーバーラップやアンダカットのようなビード形状や、極端な凸状ビードとならないように、適切な溶接条件の元で溶接作業をするようにしましょう。更には、スラグ剥離性の良い溶接材料をチョイスするのも有効な対処法となります。※こちらの記事では、たくさんある溶接の種類の中から、代表的な溶接方法について解説しています。⇒溶接の種類はこの記事だけでOK!3分でわかる金属加工で代表的溶接方法!まとめ今回は、「溶接時のスラグはなぜでるのかを解説!スラグ巻き込みの原因と対処法についてもご紹介!」をテーマに、溶接スラグに関する情報をご紹介しました。お役に立つ情報はありましたか?

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    チタン切削はなぜ難しいのか?【3分でわかる】チタンの切削ならMitsuri

    チタンは高級な金属のイメージがありますが、現在の私達の日常の多くで使われる金属です。アルミニウムやステンレスなどの工業製品の金属の中で、最も優れた性能をもつ材質です。こんな優れた材質を容易に削る事ができれば、最高の材質という事になります。スポーツ、アクセサリー、医療機器など、製品例は多数ありますが、そんな様々な用途に合わせてチタンを加工する技術の一つがチタン切削です。本記事では、そんなチタン切削がなぜ難しいのかを、わかりやすく紹介していきます。チタン切削について  切削とは金属の不要な部分の内径や外径を削り取ったり、穴を開けたり穴を広げたり、必要な形に加工する技術です。チタンには純チタンとチタン合金とがあります。我々一般的に目にするのは純チタンであり、高速切削加工が困難なチタン合金(64合金)は難削材に分類されています。難削材とは、材質そのもが削りにくく、加工時に発火する可能性が高い材料を言います。その加工が難しい事で新たに開発されたいわゆるB系合金などは、64合金とほぼ同等の強度を持ち、冷間での加工性は64合金よりも優れているものも開発されました。チタンを製品として仕上げるには、熟練の技術と経験で磨かれた職人が必要になります。1950年ごろの戦闘機には、大部分でチタンが使われておりました。アメリカやソ連では、純チタンがそのまま使われる事は少なく、強力チタン合金として使われ、この頃では主に軍事機や宇宙ロケット開発に使われていました。アメリカのチタン生産量の80%~90%が軍用機に使われ、民間での使用量は10%程度でした。近年、軍事機では複合材などが使用されるようになり、チタンの使用は減ってきていますが、民間機には広く使われています。これまでは、加工経験者も少なく専用工具の開発も進んでいないため、経験が通用しないところが、難削材加工の難しい部分ではありました。その難しいとされていたチタン切削ですが、近年開発が進み、①チタンの特性を把握できたこと②工具の開発が進んだことにより、その他金属と同様に加工出来る様になりました。最近では以前の10倍もの耐久性がある工具も開発されています。近年では、製品例として、高性能品(パソコン、高給腕時計、デジタルカメラなど)、ハンコ、食器、スポーツ、医療機器など様々な身近な物に使われています。宇宙や深海で使うロケットや潜水船にも使われている為、チタン切削自体もその必要な強度や信頼性に基づき多種多様になっています。チタンの加工について知りたい方はこちら!【チタン加工】チタンの加工上の特性や加工方法を徹底解説!!チタン切削が難しい理由チタン切削がなぜ難しいかというと、チタンがもつ三大特徴が原因となります。チタンの三大特徴①発火しやすい②摩擦で工具の寿命が短くなる③薄いチタンは変形しやすい切削しにくいが故、精密な作業がしにくく、加工工程が増えるので手間と時間がかかってしまうのです。ここではチタン切削が難しい理由を詳しく解説していきます。①発火しやすいチタンは科学的に活性である為、可燃性が高く、トラブルが発生しやすい材です。高い切削速度で切削していくと切りくずが発生し、その切りくずが発火し、燃焼しやすいのです。その切りくずにガスバーナーで火をつけるとアッと言う間に燃焼します。燃焼時に水での消火は水素爆発を起こす可能性があるので禁物です。乾いた砂か、金属火災用の粉末消火剤で消化するようにしましょう。②摩擦で工具の寿命が短くなるチタンは強度が高く熱伝導率が悪い為、切削した時に放たれた熱の逃げ場がなく、加工材と工具に熱が蓄積され、工具の摩擦が大きくなります。科学的に活性も一因となり、切削熱が発生し切削部の温度が上昇することで、活性度が増し、工具への摩擦が大きくなってしまうのです。純チタンは柔らかく粘りがあり、アルミニウムやステンレスは綺麗に切削ができますが、純チタンは削りカスが工具に付着してしまい摩耗しやすいといえます。③薄いチタンは変形しやすいヤング率が小さい(たわみやすい)為、切削する力によって変形やヒビ割れしやすい性質もあります。ヤング率とは、ものを引っ張った際の伸びと力の関係から求められる定数です。チタンのヤング率は鉄の約半分で、同じ力を加えたら2倍もたわむという事です。例えば、太い大きな木材にボルトを埋め込むのは簡単ですが、薄くたわみやすい木材にボルト埋め込むには、しっかり固定するなどのひと手間が必要になるのと同様です。また、チタン合金は代表的な難削材であるだけに、高速切削加工において切削油剤は重要な役割を果たします。そんな切削剤剤には、不水溶性切削油剤と水溶性切削油剤との2種類があります。近年コスト面の影響もあり水溶性切削油剤の比率が増してきている一方で、チタン合金の高速切削加工で十分な性能を発揮出来ず、増加するチタン合金の需要に対応しきれていない実情があります。チタンについて知りたい方はこちら!【チタン】とは!?チタンは他の金属とどう違うのかメリット・デメリットをご紹介!チタンの切削についてわかったところで、・具体的に費用はどれくらい掛かるのか・納品まで期間はどれくらい掛かるのかなどについて気になる方がいると思われます。そんな時はMitsuriにお任せ下さい!チタン 切削加工事例引用元:株式会社名取製作所こちらの製品はチタンで創られた自転車ペダルです。レーサーの義足をこの器具に取り付け固定されます。チタンは軽いという利点があるため、パラリンピックなど多くの障害者スポーツに使用され、その多くが個別の形状の物を要求されるため、切削加工が多様になります。チタンは耐食性・耐久性が高く、しなりやすいためある程度の変形に耐えられることで、締め付ける際に少し変形し、ナットをしっかり捉えて緩みにくくなるのです。まとめここまでチタン切削について紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。民間の小規模町工場などでも、チタン合金切削が可能な会社が多数あり、各会社、工場により技術の違いや実績なども異なります。