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転造加工

  • 転造ネジ・切削ネジとは?デメリット・メリットや加工法の違いを解説!

    ネジには、加工方法が異なる「転造ネジ」と「切削ネジ」があります。これらは強度面での違いのみならず、生産性も異なります。また、それぞれの加工方法には、得意・不得意なネジ形状があります。 そのため、ネジの製作をご依頼される場合には、希望の強度や生産数、ネジの形状によって、どちらの加工方法でネジを製作するかを検討する必要があります。 今回の記事では、転造ネジと切削ネジ、それぞれの加工法の詳細について解説します。希望や状況に合わせた選定方法もご紹介していますので、参考にしてください。 転造ネジと切削ネジの違い|強度と生産性 転造ネジ 切削ネジ 強度 転造ネジの方が強度が強い (最大1.5倍) 金型が必要か 必要 不要 生産性 転造ネジの方が生産性が高い (ただし、金型の初期コストがかかる) 得意・不得意 大量生産 少量生産・多様な形状に対応できる 転造ネジと切削ネジの大きな違いは強度です。転造ネジの方が強度が高く、その強度の違いは最大で1.5倍にもなります。 また、生産性も異なります。転造ネジの方が生産性が高いものの、製作に金型が必要となるため、その分の初期コストがかかります。 一方、切削ネジの製作には、金型が不要です。少量生産で多様な形状のネジを製作する場合にコストメリットがあります。 転造加工によるネジ製作!転造加工とは? 図1:転造盤とダイス 転造加工とは、素材を転がしながら圧縮して成形する塑性加工の一つあり、鍛造加工の一種です。「ダイス」という工具を備えた工作機械である「転造盤」を使用します(図1)。主に円筒状の素材が加工対象です。素材をダイスで挟み込んで圧力をかけ、同時にダイスを動かして素材を転がし、円筒表面を加工します。ネジ、歯車、スプライン・セレーションシャフト(動力伝達用の軸状部品)など、回転対称の部品を製造するときに用いられる加工方法です。 転造加工には、ダイスの形状や動かし方の異なる数種類の加工方式があります。 転造加工の種類(平ダイス転造方式・丸ダイス転造方式・プラネタリ転造方式) 平ダイス転造方式 丸ダイス転造方式 プラネタリ転造方式  2枚の板状ダイス(平ダイス)で素材を挟み、片方もしくは両方のダイスを平行に動かして加工する転造方式。  2つ又は3つの円筒状のダイス(丸ダイス)で素材を挟み、全てのダイスを一方向に回転させて加工する転造方式。  アーチ状のダイス(セグメントダイス)と丸ダイスで素材を挟み、丸ダイスのみを回転させて加工する転造方式。 平ダイス転造盤 カウンターフロー転造盤 丸ダイス転造盤 ロータリー転造盤 プラネタリ転造方式は多様な形状に対応可 プラネタリ転造方式は、雄ネジ加工に適した加工方法です。使用するダイスによって、多様な形状を製作可能です。 図2:転造加工で作れるネジの種類 E溝加工・尖り先加工・球面加工は、その形状を写し取った板状のダイス(ダイプレート)を使用し、平ダイス転造方式で金型形状を転写するように成形します。また、ローレット加工は転造加工などで素材表面に施された細かい凹凸状の加工のことです。 参考:転造加工とは?加工可能な金属やメリット・デメリットを解説! 転造ネジ製作の流れ 転造加工を採用した場合のネジ製作は(1)頭部圧造→(2)転造加工→(3)熱処理→(4)表面処理の流れで進みます。 (1)頭部圧造 頭部圧造は、ネジの頭部を鍛造加工によって成形する工程です(図3)。ヘッダーマシンと呼ばれる工作機械で線材や丸材を切断し、材料の一端を以下の順序で加工して頭部を成形します。 図3:転造ネジ製作・頭部圧造の流れ  ①前方押出し加工(絞り)  ネジ部の原形を材料を絞って成形する加工  ②据込み加工(仕上げ)  材料の一端を潰して頭部を成形する加工  ③後方押出し加工(穴あけ)  ネジの駆動部を成形する加工、材料を押し込んで駆動部の穴を形作る 図4:前方押し出し加工(絞り加工) 図5:仕上げ加工(据込み加工) (2)転造加工 ネジ製作の転造加工は、転造盤でネジ山を成形する工程です。平ダイス転造方式では、ネジ山の形状を写し取った固定側と移動側の2枚の平ダイスを使用します。加工品を平ダイスで挟み、一定の圧力をかけながら転がすことで、表面にネジ山を成形します。移動側のダイスが1往復する毎にネジ1本が製作できます。 図6:ネジ山部とネジ谷部の形成 図6のように、平ダイスのネジ山部が押し付けられることでネジ谷部が形成されます。同時に金属が流動して盛り上がることで、ネジ山部が形作られます。 (3)熱処理 成形が完了したネジを強く・硬く、または軟らかくしたい場合には、熱処理を施します。素材が鋼材であれば、多くの場合「焼入れ」「焼戻し」を行います。焼入れは強度を与えるため、加熱後に急冷する熱処理です。ただし、脆くなることから靭性を回復させるために焼戻しを行います。焼戻しは、焼入れよりも低温で加熱して保持する熱処理です。 図7:焼入れと焼き戻し タッピンネジやドリルネジなどは、ネジ山の硬度をより上げるため、浸炭焼入れを行うことがあります。浸炭焼入れは、素材表面を硬化させるため、焼入れ時に炭素を素材表面に浸入させて表面を硬化させる熱処理です。そのほか、追加工がしやすいように軟化させる焼なまし(焼鈍)や強度・延性を向上させる焼ならしを行うことがあります。 (4)表面処理 ネジ製作では、ほとんどのケースで表面処理を施します。ただし、材質がステンレスの場合には表面処理を行わないことがあります。メッキが最も多く採用されます。耐食性や表面の硬度、装飾性などを向上させるために亜鉛やニッケル、クロムなどのメッキを施します。 鋼鉄製のネジでは、メッキの代わりに黒染めやパーカーと呼ばれる化成処理を施すことがあります。黒染めは、表面を酸化させて四三酸化鉄の酸化皮膜を形成させる表面処理です。耐食性の向上が見込める上、光沢のある黒い色が得られます。 パーカーは、リン酸塩皮膜を形成させる表面処理です。耐食性と耐摩耗性が向上するとともに、艶なしのマッドな黒色が得られます。 転造加工によるネジ製作の特徴とメリット 転造加工によるネジ製作の特徴 メリット1 強度に優れる メリット2 平滑な仕上げ面が得られる メリット3 工具の寿命が長い メリット4 切り屑が出ないので経済的 メリット5 加工速度が速い メリット6 生産性が高い (1)強度に優れる ネジを転造加工で製作すると、高い強度が得られます。転造加工の材料となる線材・棒材は、長さ方向にファイバーフローと呼ばれる繊維状に結びついた金属組織を形成しています。 図8:転造加工のファイバーフローは切断されない 図8は転造加工によって製作したネジ山のファイバーフローを示したものです。転造加工ではファイバーフローが切断されずに残ります。鍛造加工品に共通しますが、ファイバーフローが表面に沿っていると衝撃値や疲労強度が高くなるとともに、表面に生じる引張応力に対して強靭です。 また、転造加工では強い圧力をかけてネジを成形する塑性変形です。塑性変形では加工硬化が起こり、硬度も高まります。 (2)平滑な仕上げ面が得られる 転造加工では、切削加工で生じるようなバリが発生せず、また研削された滑らかなダイスで圧縮するため、平滑な仕上げ面が得られます。従って、材質にもよりますが、ねじ面は光沢を帯びた鏡面仕上げとなります。 (3)工具の寿命が長い 転造加工で使用される工具(ダイス)は材料と面で接するため、点で接する切削加工と比べて寿命が長くなります。 (4)切り屑が出ないので経済的 転造加工は材料歩留まり率が悪い切削加工と異なり、材料を圧縮して成形するため、切り屑を排出しません。 (5)加工速度が速い 転造加工は鍛造加工でもあります。切削加工と比べて、短い時間で加工することができます。 (6)生産性が高い 転造加工は工具寿命が長いです。工具が長持ちするので工具の交換頻度が少なくなり、工作機械の稼働率が上がります。さらに切り屑も出ないため、材料の歩留まり率が高いです。そして短時間で加工ができます。 転造加工は生産性が高く、大量生産に適した加工方法です。 切削加工によるネジ製作!切削加工とは? 図9:切削加工の種類 切削加工とは、素材の一部を削り取って成形する加工方法です。回転させた材料に工具を当てて削る旋削加工と、材料に回転させた工具を当てて削る転削加工に分類されます。 雄ネジの製作には、円筒状素材の加工を得意とする旋削加工が適しています。旋盤やネジ製作に特化したねじ切り盤と呼ばれる工作機械が使われます。 旋盤を使用する旋盤加工には、ネジ山を成形する「ねじ切り加工」があり、その加工法の専用工具である「ネジ切りバイト」があります。転造加工とは異なり、工具を付け替えれば雄ネジだけでなく、雌ネジの加工もできます。 図10:雄ネジと雌ネジの切削加工 参考:切削加工の種類【専門家が解説】フライス加工、旋盤加工について詳細をお伝えします! 切削ネジ製作の流れ 切削加工を採用した場合のネジ製作の流れは、(1)切削加工→(2)熱処理→(3)表面処理です。熱処理・表面処理は転造加工と同じ内容なので、(1)切削加工のみ説明します。 切削加工 切削ネジは通常、切削加工だけでネジの全ての成形を完了させます。切削加工では、ネジの頭部など直径が最大の部分と同等もしくはより大きい直径を持つ丸材からネジを削り出します。 ネジの切削加工 ①旋盤に片刃バイトなどを取り付け、外形を仕上げる ②ネジの逃げ(ネジ部のネジ山がない部分)を突切りバイトで作る ③旋盤のバイト自動送り機能を利用してネジ山を成形する(ねじ切り加工) ※NC旋盤を用いれば、プログラムした形状通りにネジ全体を成形できます。 六角ボルトなどは、ネジの頭部や駆動部は回転対称でないことが多いため、これらの部分はフライス加工などで加工します。また、頭部が六角形の場合、六角棒の外形をそのまま利用することもあります。 切削加工によるネジ製作の特徴|メリットとデメリット 切削加工によるネジ加工の特徴 メリット1 複雑な形状を成形しやすい メリット2 多様な形状を成形しやすい デメリット1 強度が弱い デメリット2 削り屑は発生する (1)強度が弱い 切削加工ではファイバーフローを切断してネジを成形するので、転造加工で製作したネジに比べて強度が劣ります。 図11:切削ネジのファイバーフローは切断される (2)複雑な形状を成形しやすい 切削加工では工具を取り替えるだけで、多様な形状の加工が実現できます。フライス加工も併用すれば、回転対称でない形状の加工も可能です。そのため、転造加工に比べて複雑な形状のネジを成形できます。 (3)多様な形状を成形しやすい 切削加工では、転造加工のように完成品の形状が工具(ダイス)の形状で決まるわけではありません。加工の仕方を変える自由度があり、工具を取り替えることもできるので、多様な形状のネジを製作することができます。 (4)削り屑が発生する 切削加工では加工中に削り屑が発生するため、切削した分の金属が無駄になってしまいます。 転造ネジと切削ネジの選び方 転造ネジと切削ネジには様々なメリット・デメリットがあります。それぞれの特徴から、希望や状況に合わせた選定方法をご紹介します。 Point!転造ネジ・切削ネジの選び方 ① 強度が必要な場合は転造ネジ ② 形状が複雑な場合は切削ネジ ③ 大量生産品は転造ネジ ④ 多品種少量生産品は切削ネジ ① 強度が必要な場合は転造ネジ ファイバーフロー(フローライン)形成と強度の違い 転造ネジ 切削ネジ 高強度 転造ネジより弱い強度 転造ネジと切削ネジでは、ファイバーフロー(フローライン)の形成する様子が異なり、転造ネジは切削ネジよりも高強度です。これを要因とする強度の差は約20%にも達します。さらに転造ネジは加工硬化を起こすことから、さらなる高い強度が見込めます。強度を必要とする場合は、転造ネジを選びましょう。 ② 形状が複雑な場合は切削ネジ 転造ネジは回転させながら圧縮して加工するため、完成品の形状は回転対称に近い形状になります。一方、切削ネジではタレット旋盤を用いたり、フライス加工を併用したりすれば、複雑な形状を実現できます。ネジの形状が複雑な場合は、切削ネジしか選択肢がない可能性があります。 ③ 大量生産品は転造ネジ 転造ネジの加工は、初回に金型となるダイスを製作してしまえば高い生産性が見込めます。一方、切削ネジの加工は、NC(CNC)加工機による自動化が可能ではあるものの、ほとんどの場合で加工速度が転造加工に劣ります。 また、転造加工では切り屑を排出せず、絞り加工によって材料を引き伸ばすため、より少ない量の材料で同寸法のネジを製作可能です。よって、大量生産品には転造ネジが適しています。 ④ 多品種少量生産品は切削ネジ 転造ネジの加工では、1種類のネジの形状に対して1つのダイスが必要となります。一方、切削ネジの加工では金型を必要とせず、1つのネジの製作ごとに形状を変えられます。多品種少量生産の場合は、切削ネジが適しています。 ネジの製作は、強度や形状によって加工方法を選定する必要があり、ネジの生産量も加工方法の選択に影響があります。ネジの製作をご依頼する際は、これらを参考にして最適な加工方法を選定してください。

  • Mitsuri

    転造加工とは?種類とデメリット、加工可能な金属を解説!

    転造加工は雄ねじの加工用に開発された加工方法で、今ではネジ生産に欠かせない技術です。ネジ転造は100年以上の歴史を持ち、日本でも50年間使用されてきた加工方法です。転造加工は雄ねじの加工の他にも、ギア(歯車)などの部品加工にも広く用いられています。本記事では転造加工について、基本的な知識に加え転造加工の種類、加工可能な金属、転造加工のメリット・デメリットなど幅広く解説しています。転造加工とは?転造とは強い力を加えることで、素材を変形させる塑性加工の一つです。材料の可塑性(材料を変形させても元に戻らない性質)を利用して、転造ダイス(断面がねじ山の形をした工具)を回転している加工対象物に押し当て、盛り上げることで成形(塑性変形)させます。転造という言葉は「転がして(形を)造る」と書きますが、加工物を回転させながら加工を行うことに由来しており、英語ではローリング(Rolling)と呼ばれています。転造加工で施すことができる形状のバリエーションは、以下のようにさまざまな種類があります。図1:転造加工で作れる形状バリエーション  転造加工で施す形状の一つには、ローレットと呼ばれる金属表面に細かい凹凸状の形状が施されているものもあります。参考:ローレット加工とは?適した素材や転造と切削の特徴に関しても解説!転造加工の種類平面ダイス転造加工丸ダイス転造加工プラネタリ転造加工汎用ねじの大量生産ねじ以外の部品加工 汎用ねじの大量生産転造では、転造盤と呼ばれる加工装置を使います。転造盤は、使用する転造ダイス(工具)の種類やその加工法の違いによって、数種類に分類されます。代表的なものとして「平面ダイス転造方式」「丸ダイス転造方式」「プラネタリ転造方式」が挙げられます。(1)平面ダイス転造加工図2:平面ダイス転造方式 平面ダイス転造方式は、板状の平ダイスを用いる加工方法です。2枚の平面ダイスで加工物をはさみ、一方のダイスは固定させたまま、もう一方のダイスを平行方向に動かして加工を行います。生産性の高い加工方法であるため、汎用ねじの大量生産に用いられます。2枚の平ダイスで加工物をはさみ、両者のダイスを同じ速度で反対方向に運動させる加工方法もあります。(2)丸ダイス転造加工図3:丸ダイス転造加工 丸ダイス転造加工は、円筒状の丸ダイス(ローラーダイス)を用いる加工方法です。2~3つの丸ダイスで加工物をはさみ、ダイスを同一方向へ、同じ速度で回転させながら加工を行います。ダイス間の距離を自由に変更できるため、加工の応用性に優れており、ねじ転造以外の部品加工にも幅広く用いられています。他の2種類の加工方法とは異なり、加工時の材料の供給と排出が同じ場所で行われることから、生産性は平面ダイス転造加工やプラネタリ転造加工よりも劣ります。(3)プラネタリ転造加工図4:プラネタリ転造加工プラネタリ転造加工は、アーチ形状のセグメントダイスと丸ダイスを用いる加工方法です。固定されたセグメントダイスの内側で丸ダイスを回転させ、この間に加工物を送り込んで加工を行います。加工中にダイス間の距離の変更ができず、加工の応用性は少ないですが生産性は高く、平ダイス転造加工と同様に汎用ねじの大量生産の現場でよく用いられている加工方法です。転造加工で加工可能な金属転造加工で加工可能な金属には、鉄、アルミニウム、真鍮、ステンレスなどがあります。転造加工に用いる材料は、材質の弾性と塑性の性質が重要です。材料の特性には、伸び率(弾性)や張力(塑性のしやすさ)の項目があります。転造加工には、伸び率が5%以上で、張力が最高1700N/mm2までの材料が適しています。さらに、押込み硬さを表す尺度であるHRC硬度(ロックウェル硬さ)が20以下の材質はより向いている材質です。転造加工のメリット!切削加工と比較して学ぶ転造加工は、よく切削加工と比較されます。切削加工とは、加工物を切って削る加工方法です。転造加工のメリットは以下の5点です。転造加工のメリット(1)工具を長く使用できる(2)切削加工よりも精密な仕上げ(3)生産性が高い(4)強度が高い(5)環境にやさしい転造加工のメリット(1)工具を長く使用できる転造加工に用いられる工具(転造ダイス)は、切削加工に使用される工具と比較して、工具寿命が長いです。そのためコスト低減につながるほか、工具の交換頻度が少なくなって生産性の向上も期待できます。転造加工のメリット(2)切削加工よりも精密な仕上げ転造加工が施された被加工面は、研削されたダイスによって押し当てられて成形されるため、切削加工品と比較して非常に面粗度が良好です。光沢を帯びた仕上がりが得られます。転造加工のメリット(3)生産性が高い転造加工は切削加工と比べて加工時間が短く、工具の交換頻度も少ないため、生産性が非常に高く大量生産に最適な加工方法です。転造加工のメリット(4)加工硬化による高強度転造加工のファイバーフロー切削加工のファイバーフロー転造加工では、切削加工とは異なりファイバーフロー(繊維状金属組織)が切断されません。連続したファイバーフローを持ち、かつ強い力で押し込まれた金属繊維は、圧縮されることでさらに密度が高くなり加工硬化を起こします。塑性変形の加工硬化によって、転造加工品は切削加工品と比較して高い強度を持ちます。転造加工のメリット(5)環境にやさしい転造加工は切削加工のように切り屑を排出せず、比較的少ない動力でかつ短時間で加工できることから消費電力も少ないです。そのため環境にやさしい加工方法と言われています。参考:【切削加工とは?】特徴・種類・注意点を動画と一緒にご紹介します!転造加工のデメリット!転造加工のデメリットは以下の2点です。転造加工のデメリット(1)設備投資の費用が高額(2)少量加工や試作に不向き転造加工のデメリット(1)設備投資の費用が高額転造加工では、転造ダイスなどの初期投資が必要です。さらに一般的なねじ用のダイスなどは流通していますが、特殊なサイズや形状などになると、販売しているメーカーなども少なく、初期投資が高額になる可能性があります。転造加工のデメリット(2)少量加工や試作に不向き加工物のサイズや形状に合わせて転造ダイスをその都度購入する必要があるため、転造加工は少量生産には向いていません。試作などの極小ロットの場合には、切削加工のほうが加工時間が短くて済む場合もあります。転造加工まとめ転造加工をメーカーに依頼する際には、各メーカーによって対応できる材質や加工方法などが異なるため、事前に確認してから依頼することが重要です。

  • Mitsuri

    ローレット加工(ナーリング加工)とは?転造と切削の特徴に関しても解説!

    金属の加工方法の一つに「ローレット加工」があります。ローレットとは、フランス語を起源とする言葉でギザギザの形状を表します。つまり、ローレット加工とは金属表面に、細かい凹凸の加工を施す方法を指します。実は、このローレット加工ですが、私たちの身近なところでもよく使われている技術なのです。例えば、ライターのローラーやダンベルのシャフト、シャープペンのグリップなどに使用されており、滑り止めとしての役割を果たしています。今回は、ローレット加工について、その加工の種類やメリット・デメリット、ローレット加工に適した素材、加工事例など幅広く解説していきます。ローレット加工についてさらに知識を深めたい方や、ローレット加工でお悩みの方は、ぜひご一読ください。ローレット加工(ナーリング加工)とはローレット加工とは、金属に細かい凹凸状の加工を施す加工方法を指します。その加工方法には、ワークの表面を削り取る切削加工とワークを転がしながら圧力を加えて変形させる転造加工があります。切削加工では、主に旋盤で回転させているワークにローレット工具を押し付け、等間隔の溝を形成するように削り、表面に凹凸を付けます。一方、転造加工では、施したい凹凸と同じ模様の工具をワークに押し付け、工具の形状を転写することで成形します。ローレットには主に二つの役割があります。一つは、滑り止めとしての役割です。手や指が使用中に滑らない様に、ハンドル部品やネジの頭などで使用されます。もう一つは、抜け止め、回り止めとしての役割です。圧入する部品の接合部分にローレット加工を施すことで、摩擦や食い付きによる作用を付加することができます。他にも、模様をつけるという点で、意匠性の役割としても用いられます。このように、ローレット加工は私たちの生活の中の様々なところで使用されている技術なのです。一般的に、ローレット加工では、平目、あや目という2種類の模様が用いられますが、他にも斜目、四角目などの特殊な形状もあります。<ローレット加工の代表的な模様の例>平目、あや目引用元:株式会社大塚商会斜目引用元:有限会社アドバンス産業四角目引用元:山田マシンツール株式会社ナーリングとも言うまた、ローレット加工は、主に日本の金属加工で使われている言葉で、英語圏などではナーリング加工と呼ばれます。これは、ローレットが単にフランス語のルレット(roulette)に由来し、ローレット加工と同様の加工法が英語圏ではナーリング加工と呼ばれているだけのことです。このフランス語のルレットは、「小さい輪」や「小さくて回るもの」を語源とし、洋裁におけるギザギザの付いたローラで布地に刻み目を入れる道具を指す言葉です。この道具の形状や使用法から、ローレット加工という言葉が生まれたと考えられます。一方、英語のナーリング(knurling)は、つまみネジなどに付けられたギザギザ形状などの模様を指し、日本で使われているローレットとほぼ同じ意味を持ちます。ローレット加工の種類ローレット加工は、加工方法によって切削・転造の2種類に分けられます。それでは、それぞれの加工方法の特徴について見ていきましょう。ローレット加工①【切削】切削タイプのローレット加工では、被削材にローレット駒を押し付けて削ることで加工を施します。金属を削るので、切りくずを排出します。主に、ツマミネジやインサートナットなどの加工に使用されます。加工には、必要な模様に応じて、下図のような工具を用います。<切削ローレット加工用工具>引用元:株式会社ミスミローレット加工②【転造】転造タイプのローレット加工では、ワークを削らず、工具を押しつけて圧力を加え、塑性変形を施すことで加工を行います。押し付けて盛り上げることから、盛り上げ加工と呼ばれることもあります。切削加工とは異なり、切りくずは排出されません。主に、熱圧入用インサートナットやインサートカラーなどの加工に使用されます。加工には、必要な模様に応じて、下図のような工具を用います。<転造ローレット加工用工具>引用元:株式会社ミスミ参考:【板金加工】専門家が教える板金加工の「特徴・種類・材料」について!ローレット加工のメリットここからは、切削・転造の両加工方法について、それぞれのメリットを挙げていきます。ローレット加工のメリット【切削】●転造式に比べて機械への負荷が少ない切りくずを排出する削りのため、抵抗が抑制され、工作機械への負担は小さくなります。●細長材・中空材の加工に適しているこれは、工作機械への負担が少ないこととも関係しており、切削加工では、ワークの盛り上がりがほとんど生じないため、薄肉や長物、細物の加工に適しています。●長尺ワークの加工に適している工具の幅分しか加工を施すことができない転造加工とは異なり、連続して削り加工を行うことができる切削加工では、特に長尺ワークへの加工に向いています。ローレット加工のメリット【転造】●短時間で加工することができる削らず押しつけて圧力をかける加工なので、切削加工と比べて短時間で加工することが可能です。●ツールコストを抑えられる切削加工の工具と比較して、部品点数が少ないため工具が安価です。●被削材に段差があっても、段差際まで加工できる切削加工では被削材に段差がある場合は、工具の干渉により段差の際まで加工することは難しいですが、転造加工では可能となります。ローレット加工のデメリットここからは、切削・転造の両加工方法について、それぞれのデメリットを挙げていきます。ローレット加工のデメリット【切削】●素材径より小さくなる切削加工では、金属を削り切りくずを排出するため、素材径より小さくなってしまいます。●フランジの際まで加工できない工具が干渉するため、フランジ(円筒形あるいは部材からはみ出すように出っ張った部分)の際まで加工を施すことはできません。●管理が難しい量産時には、工具摩耗によって切れが低下してしまうため、品質を保証するために工具の交換など管理を行う必要があります。ローレット加工のデメリット【転造】●工具の幅分のみの加工となる転造加工では押し付けて圧力をかけることで加工を施すため、工具の幅分しか掛けられず、長尺ワークの加工などには不向きです。●工作機械への負担が大きい大きな抵抗が作用するため、工作機械への負担が大きく、塑性変形によって工作物の盛り上がりも大きくなります。ローレット加工の素材について次は、ローレット加工に適している素材について見ていきましょう。下表に、切削・転造の両加工方法について、対応可能な材質をまとめています。材質銅・真鍮アルミSS材SSM材鋳鉄チタン樹脂転造〇〇〇△△△NG切削〇〇〇〇〇△〇切削加工では、ほとんどの材質に対応可能ですが、難削材であるチタンの加工は対応が難しくなります。一方、転造加工では塑性変形によって加工が行われるため、チタンや鋳鉄のような硬い材料への加工は難しく、さらに金属ではありませんが、樹脂などのもろい材料には加工ができません。ローレット加工の加工事例ここでは、ローレット加工の加工事例についてご紹介していきます。<熱圧入用インサートナット(転造ローレット加工、材質:アルミ)>引用元:大森精密工業株式会社<ツマミネジ(切削ローレット加工、材質:画像左からアルマイト、SUS303、アルミ)>引用元:大森精密工業株式会社<熱圧入用インサートナット(転造ローレット加工、材質:快削鋼)>引用元:大森精密工業株式会社ローレット加工(ナーリング加工)まとめ今回は、ローレット加工(ナーリング加工)の詳細やその加工方法である切削加工と転造加工についてご説明しました。これらの加工法は、それぞれ異なる特徴を持ち、得意とする素材や形状も違います。ローレット加工をご依頼する際は、解説した異なる点を考慮した上で適切な加工方法を選択しますが、ローレット加工に対応しているメーカーの多くは、得意とする加工法があるため、メーカー選びも重要となってきます。

  • ねじ切り加工とは?意外と知らないねじの作り方を分かりやすく解説!

    価格が安くなるねじ切り図面の書き方についてはこちら! 価格が安くなるねじ切り指示の書き方を解説しています! 20〜30%ほどの低減につながる可能性がございますのでぜひご覧ください! 5分ほどで視聴可能です! Youtubeにて、金属加工Mitsuriチャンネルを運営中!こちらからご覧ください! 皆さんは「ねじを切る」と言う言葉を知っていますか。 「ねじを切る」とは金属を削ってねじのギザギザしたところを掘ることを言います。つまりねじの下の部分を作ることですね。 今回のテーマである「ねじ切り加工」では、そのねじ切りの方法や工具の種類などを金属加工のことを何も知らない方でも分かりやすいように解説していきます。普段何気なく使っているねじがどのようにして作られているのか、この記事をきっかけに知る良い機会になればと思います。 ねじ切り加工の長所・短所 冒頭でも話した通り、ねじ切り加工とはねじのギザギザを作る加工のことです。ねじのギザギザのことをねじ山と言います。ねじ山とは頭部の出っ張ったところではないんですね。 ねじ山のギザギザは切削加工や塑性加工などの方法で、金属の棒を削ったり変形させたりすることで作られます。 keyword ①切削(せっさく)加工… 素材を切ったり削ったりする加工のこと。 ②塑性(そせい)加工… 素材に大きな力を加えることで、目的の形に変化させる加工のこと。 曲げたり押し潰したりします。 ではまず、ねじ切りがどういうものか手っ取り早く知るために、実際に加工の様子を動画で見てみましょう。 一概にねじ切り加工とは言ってもその方法は様々あるので、今回の動画はあくまで一例です。 動画のねじ切りの方法は金属を削って作る切削加工ですね。 切削加工によるねじ切りの長所・短所 切削加工は塑性加工よりも多くの種類のねじを作ることができ、その削ったり切ったりする作り方から元の金属よりも小さなねじを製造します。 短所としては素材を削って作るため切りくず大量に出る点と、刃物を多用するので新しい刃に変えるたびにコストがかかる点です。 塑性加工によるねじ切りの長所・短所 一方、塑性加工は切りくずが出ない方法で、削らないぶん素材の太さを確保したままのねじができます。 ただし、短所としては金型を用意する必要があるため、金型の費用と金型作成の時間がかかります。 金型とは画像のような製品を一定の形にするためのものです。 引用元:金型って何? 切削加工で作るねじも塑性加工で作るねじも、上記の通り長所・短所があるため、作るねじの大きさや種類に応じて加工の方法を選びます。 それぞれの加工の仕方は後ほどの項目で説明しますが、どちらも安価かつ短時間で製造でき、大量生産が可能になっています。 おねじとめねじ ねじにはおねじとめねじというのがあります。 ねじと言えば、一般的に使う種類ではドライバーで締めるタイプのものをみなさん思い浮かべるでしょうか。部品を組み立てる時に固定したりや機械の調子が悪くなって解体する時に外すものですね。適当に床に置いてしまい、なくして探すのに苦労した経験は誰にでもあるかと思います。 その一般的なねじの方をおねじと言い、めねじはそのおねじに組み入れるねじのことを言います。めねじの方もそれほど珍しいものではありません。 画像をご覧いただけると分かるように、おねじは外側に線状を作り、めねじは中をくり抜いて作られます。 引用元:amazon Narse ☆ Yome  また、ボルトとナットもおねじとめねじにあたります。ナットもねじの種類の一つなんですね。形状からはあまりねじとは言えない形をしているので、少々意外に思う方もいるかもしれません。 おねじとめねじを作る方法 おねじとめねじを比較的簡単に作る工具にダイスとタップという道具があります。おねじを作るときはダイスとダイスハンドルという工具を使い、めねじを作るときはタップとタップハンドルいう工具を使います。 ダイスとタップを使ったねじ切り加工は、一つの道具で一つの寸法しかできないので他の寸法のねじを作りたい時は複数の工具が必要になります。 下の動画は、おねじとめねじを作っている様子です。 ねじ切りは工場で大掛かりな機械を使わないとできない印象がありますが、やり方さえ覚えれば誰でも日曜大工の感覚でねじを作ることができるのです。 手順や工具の種類の多さなど少し取っつきにくいところがありますが、職人芸並みの難しい技術は必要なさそうですね。 とは言え、動画ほどの手際のよさは初めてですとなかなか再現できないと思いますので、上手く加工できるようになるには何度もやって慣れていく必要があるでしょう。 なお、加工の時に過度に力を入れ過ぎるとねじがつぶれたり工具が折れてしまうことがあるので、実際にねじ切りをする場合は切削油を使いながら行い、無理に回したり押し込まないように注意してください。 いろいろなねじ切りの方法 先ほどの紹介は手作業による加工でしたが、ねじ切り加工にはもちろん機械を使った方法もあります。 主な方法としては、最初の項目で説明した金属を削って作る切削(せっさく)加工と金属の形を変えて作る塑性(そせい)加工の2パターン。 ねじの材料には金属だけではなくプラスチックスや樹脂などもありますが、今回は金属で広く使われている方法をいくつか紹介していきます。 機械を使用した方法 ①旋盤を使ったねじ切り加工 ②ねじ切り盤を使ったねじ切り加工 ③塑性加工によるねじ作り ①旋盤を使ったねじ切り加工 旋盤という機械による方法はねじ作りの中でも代表的な加工方法で、工業高校の機械実習でも入門編として使われます。 記事の最初の方で見た動画が旋盤を使ったねじ切り加工ですね。 おねじを作る時は金属の外側を削る外径ねじ切り旋削(せんさく)で、めねじを作る時は内側を削る内径ねじ切り旋削で行います。 引用元:モノタロウ 旋盤でのねじ切りは自動で加工する機能があるため、加工の様子を見ることができる外径ねじ切りは比較的容易にできます。 内径ねじ切りも基本的には外径ねじ切りと同じ方法ですが、金属の中を見ることができないので多少加工の難易度が上がります。 この実習でも使われるほど容易にできる旋盤を使った加工ですが、実はこの方法には欠点があり、旋盤によるねじ切りは機械加工ではあるものの、加工の仕方から大量生産向きではありません。ねじという、どの製品にも必要な部品が大量に生産できないのは、困りものですね。 そこで登場したのが下の画像のNC旋盤というハイテクな機械。 引用元:NC network これを使えば回転速度の設定や加工中の工具の移動などが自動で行われるので、一度設定すれば人の手を介することなく大量生産ができます。 プログラムさえ作成してしまえば加工の開始から終了まで全自動なので、非常に効率的にねじが作れるのです。 加工中に出る金属の切りくずの処理もしなくてよいので面倒がなく楽ですね。 ②ねじ切り盤を使ったねじ切り加工 ねじ切り盤はねじ切り加工に特化した機械です。 旋盤はねじ切り加工専用の機械というわけではなく他にも様々な使い道があります。一方、ねじ切り盤は特化しているだけあって、この方法では日常でよく見かけるねじとは異なる大型のねじを製造します。 ねじ切り盤で作られるねじは、橋やコンクリートの建物に埋め込まれる耐震補強用のアンカーボルトや水道・ガスで使用される配管などに使われます。画像で見る大きな鉄の棒やナットは、もはやねじと言えるか怪しいほどですね。 ねじ切り加工の技術は土木や建築、はたまた水道の分野でも活かされているのです。 ③塑性加工によるねじ作り 大きなねじの作り方の次は小さなねじの作り方です。 子ねじと呼ばれる小型のねじは、旋盤などで削って作ることはせず、圧造という塑性加工の方法で作られることが多くなります。 もし小さなねじを作るために削ろうとすると、当然小さな金属から生成することになるため、普通の大きさのねじよりも素材となる金属を多く削り取ってしまうことになります。それでは明らかにコストの無駄になってしまうので、切りくずを出さずに製造できる塑性加工が用いられるのです。 前の項目でも説明した通り、塑性加工は金属を潰して変形させる加工方法です。潰して変形させると言うとイマイチ作られる様子が想像できませんが、次のgifを見ていただくと分かりやすいかと思います。 引用元:森岡産業株式会社 上の動きの作り方はダブルヘッダー加工と言います。 パンチと呼ばれる赤色の部分の金型で、素材となる金属の棒を押し潰してねじの頭とドライバーを入れるくぼみの部分を成形します。 ねじの頭部ができたら、次は肝心のねじ山の部分を作っていきます。ねじ山を付けるには、下の画像のようにねじを工具の間に挟み、ギザギザの跡を付けるように押し込みながら回転させていきます。 引用元:モノタロウ この方法を転造と言い、その転造のタイプには平らな工具を使う平ダイス転造や丸い工具を使う丸ダイス転造、平ダイスや丸ダイスよりも生産能力が高いセグメントダイス転造などがあります。圧造は金属を圧縮させて作り、転造は転がして作るという漢字の通りの方法なので覚えやすいですね。 塑性加工による製造は、小ねじだけでなく大きめのねじや太いボルトなどのねじも製造が可能です。金属内部の繊維を切断しないため、ファイバーフローという耐摩耗性に優れたねじができるというメリットもあります。 また、塑性加工は金属を数回加工するだけででき、しかも機械で自動的に作ることができるため、切削加工よりも短い時間で加工できます。非常に大量生産向きの方法なんですね。 ねじはどんな分野のどんな製品でも使われる部品なので大量生産が必須です。そのためできるだけコストと時間を抑え、効率的な製造方法が求められるのです。 まとめ 今回の記事はねじ切りの方法やおねじ・めねじについてなど、ねじを加工する中でのギザギザを付ける部分に焦点をあてた内容でした。 他の部分やねじ全体の解説はまた別の記事で紹介させていただきます。 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

  • 転造ネジ・切削ネジとは?デメリット・メリットや加工法の違いを解説!

    ネジには、加工方法が異なる「転造ネジ」と「切削ネジ」があります。これらは強度面での違いのみならず、生産性も異なります。また、それぞれの加工方法には、得意・不得意なネジ形状があります。 そのため、ネジの製作をご依頼される場合には、希望の強度や生産数、ネジの形状によって、どちらの加工方法でネジを製作するかを検討する必要があります。 今回の記事では、転造ネジと切削ネジ、それぞれの加工法の詳細について解説します。希望や状況に合わせた選定方法もご紹介していますので、参考にしてください。 転造ネジと切削ネジの違い|強度と生産性 転造ネジ 切削ネジ 強度 転造ネジの方が強度が強い (最大1.5倍) 金型が必要か 必要 不要 生産性 転造ネジの方が生産性が高い (ただし、金型の初期コストがかかる) 得意・不得意 大量生産 少量生産・多様な形状に対応できる 転造ネジと切削ネジの大きな違いは強度です。転造ネジの方が強度が高く、その強度の違いは最大で1.5倍にもなります。 また、生産性も異なります。転造ネジの方が生産性が高いものの、製作に金型が必要となるため、その分の初期コストがかかります。 一方、切削ネジの製作には、金型が不要です。少量生産で多様な形状のネジを製作する場合にコストメリットがあります。 転造加工によるネジ製作!転造加工とは? 図1:転造盤とダイス 転造加工とは、素材を転がしながら圧縮して成形する塑性加工の一つあり、鍛造加工の一種です。「ダイス」という工具を備えた工作機械である「転造盤」を使用します(図1)。主に円筒状の素材が加工対象です。素材をダイスで挟み込んで圧力をかけ、同時にダイスを動かして素材を転がし、円筒表面を加工します。ネジ、歯車、スプライン・セレーションシャフト(動力伝達用の軸状部品)など、回転対称の部品を製造するときに用いられる加工方法です。 転造加工には、ダイスの形状や動かし方の異なる数種類の加工方式があります。 転造加工の種類(平ダイス転造方式・丸ダイス転造方式・プラネタリ転造方式) 平ダイス転造方式 丸ダイス転造方式 プラネタリ転造方式  2枚の板状ダイス(平ダイス)で素材を挟み、片方もしくは両方のダイスを平行に動かして加工する転造方式。  2つ又は3つの円筒状のダイス(丸ダイス)で素材を挟み、全てのダイスを一方向に回転させて加工する転造方式。  アーチ状のダイス(セグメントダイス)と丸ダイスで素材を挟み、丸ダイスのみを回転させて加工する転造方式。 平ダイス転造盤 カウンターフロー転造盤 丸ダイス転造盤 ロータリー転造盤 プラネタリ転造方式は多様な形状に対応可 プラネタリ転造方式は、雄ネジ加工に適した加工方法です。使用するダイスによって、多様な形状を製作可能です。 図2:転造加工で作れるネジの種類 E溝加工・尖り先加工・球面加工は、その形状を写し取った板状のダイス(ダイプレート)を使用し、平ダイス転造方式で金型形状を転写するように成形します。また、ローレット加工は転造加工などで素材表面に施された細かい凹凸状の加工のことです。 参考:転造加工とは?加工可能な金属やメリット・デメリットを解説! 転造ネジ製作の流れ 転造加工を採用した場合のネジ製作は(1)頭部圧造→(2)転造加工→(3)熱処理→(4)表面処理の流れで進みます。 (1)頭部圧造 頭部圧造は、ネジの頭部を鍛造加工によって成形する工程です(図3)。ヘッダーマシンと呼ばれる工作機械で線材や丸材を切断し、材料の一端を以下の順序で加工して頭部を成形します。 図3:転造ネジ製作・頭部圧造の流れ  ①前方押出し加工(絞り)  ネジ部の原形を材料を絞って成形する加工  ②据込み加工(仕上げ)  材料の一端を潰して頭部を成形する加工  ③後方押出し加工(穴あけ)  ネジの駆動部を成形する加工、材料を押し込んで駆動部の穴を形作る 図4:前方押し出し加工(絞り加工) 図5:仕上げ加工(据込み加工) (2)転造加工 ネジ製作の転造加工は、転造盤でネジ山を成形する工程です。平ダイス転造方式では、ネジ山の形状を写し取った固定側と移動側の2枚の平ダイスを使用します。加工品を平ダイスで挟み、一定の圧力をかけながら転がすことで、表面にネジ山を成形します。移動側のダイスが1往復する毎にネジ1本が製作できます。 図6:ネジ山部とネジ谷部の形成 図6のように、平ダイスのネジ山部が押し付けられることでネジ谷部が形成されます。同時に金属が流動して盛り上がることで、ネジ山部が形作られます。 (3)熱処理 成形が完了したネジを強く・硬く、または軟らかくしたい場合には、熱処理を施します。素材が鋼材であれば、多くの場合「焼入れ」「焼戻し」を行います。焼入れは強度を与えるため、加熱後に急冷する熱処理です。ただし、脆くなることから靭性を回復させるために焼戻しを行います。焼戻しは、焼入れよりも低温で加熱して保持する熱処理です。 図7:焼入れと焼き戻し タッピンネジやドリルネジなどは、ネジ山の硬度をより上げるため、浸炭焼入れを行うことがあります。浸炭焼入れは、素材表面を硬化させるため、焼入れ時に炭素を素材表面に浸入させて表面を硬化させる熱処理です。そのほか、追加工がしやすいように軟化させる焼なまし(焼鈍)や強度・延性を向上させる焼ならしを行うことがあります。 (4)表面処理 ネジ製作では、ほとんどのケースで表面処理を施します。ただし、材質がステンレスの場合には表面処理を行わないことがあります。メッキが最も多く採用されます。耐食性や表面の硬度、装飾性などを向上させるために亜鉛やニッケル、クロムなどのメッキを施します。 鋼鉄製のネジでは、メッキの代わりに黒染めやパーカーと呼ばれる化成処理を施すことがあります。黒染めは、表面を酸化させて四三酸化鉄の酸化皮膜を形成させる表面処理です。耐食性の向上が見込める上、光沢のある黒い色が得られます。 パーカーは、リン酸塩皮膜を形成させる表面処理です。耐食性と耐摩耗性が向上するとともに、艶なしのマッドな黒色が得られます。 転造加工によるネジ製作の特徴とメリット 転造加工によるネジ製作の特徴 メリット1 強度に優れる メリット2 平滑な仕上げ面が得られる メリット3 工具の寿命が長い メリット4 切り屑が出ないので経済的 メリット5 加工速度が速い メリット6 生産性が高い (1)強度に優れる ネジを転造加工で製作すると、高い強度が得られます。転造加工の材料となる線材・棒材は、長さ方向にファイバーフローと呼ばれる繊維状に結びついた金属組織を形成しています。 図8:転造加工のファイバーフローは切断されない 図8は転造加工によって製作したネジ山のファイバーフローを示したものです。転造加工ではファイバーフローが切断されずに残ります。鍛造加工品に共通しますが、ファイバーフローが表面に沿っていると衝撃値や疲労強度が高くなるとともに、表面に生じる引張応力に対して強靭です。 また、転造加工では強い圧力をかけてネジを成形する塑性変形です。塑性変形では加工硬化が起こり、硬度も高まります。 (2)平滑な仕上げ面が得られる 転造加工では、切削加工で生じるようなバリが発生せず、また研削された滑らかなダイスで圧縮するため、平滑な仕上げ面が得られます。従って、材質にもよりますが、ねじ面は光沢を帯びた鏡面仕上げとなります。 (3)工具の寿命が長い 転造加工で使用される工具(ダイス)は材料と面で接するため、点で接する切削加工と比べて寿命が長くなります。 (4)切り屑が出ないので経済的 転造加工は材料歩留まり率が悪い切削加工と異なり、材料を圧縮して成形するため、切り屑を排出しません。 (5)加工速度が速い 転造加工は鍛造加工でもあります。切削加工と比べて、短い時間で加工することができます。 (6)生産性が高い 転造加工は工具寿命が長いです。工具が長持ちするので工具の交換頻度が少なくなり、工作機械の稼働率が上がります。さらに切り屑も出ないため、材料の歩留まり率が高いです。そして短時間で加工ができます。 転造加工は生産性が高く、大量生産に適した加工方法です。 切削加工によるネジ製作!切削加工とは? 図9:切削加工の種類 切削加工とは、素材の一部を削り取って成形する加工方法です。回転させた材料に工具を当てて削る旋削加工と、材料に回転させた工具を当てて削る転削加工に分類されます。 雄ネジの製作には、円筒状素材の加工を得意とする旋削加工が適しています。旋盤やネジ製作に特化したねじ切り盤と呼ばれる工作機械が使われます。 旋盤を使用する旋盤加工には、ネジ山を成形する「ねじ切り加工」があり、その加工法の専用工具である「ネジ切りバイト」があります。転造加工とは異なり、工具を付け替えれば雄ネジだけでなく、雌ネジの加工もできます。 図10:雄ネジと雌ネジの切削加工 参考:切削加工の種類【専門家が解説】フライス加工、旋盤加工について詳細をお伝えします! 切削ネジ製作の流れ 切削加工を採用した場合のネジ製作の流れは、(1)切削加工→(2)熱処理→(3)表面処理です。熱処理・表面処理は転造加工と同じ内容なので、(1)切削加工のみ説明します。 切削加工 切削ネジは通常、切削加工だけでネジの全ての成形を完了させます。切削加工では、ネジの頭部など直径が最大の部分と同等もしくはより大きい直径を持つ丸材からネジを削り出します。 ネジの切削加工 ①旋盤に片刃バイトなどを取り付け、外形を仕上げる ②ネジの逃げ(ネジ部のネジ山がない部分)を突切りバイトで作る ③旋盤のバイト自動送り機能を利用してネジ山を成形する(ねじ切り加工) ※NC旋盤を用いれば、プログラムした形状通りにネジ全体を成形できます。 六角ボルトなどは、ネジの頭部や駆動部は回転対称でないことが多いため、これらの部分はフライス加工などで加工します。また、頭部が六角形の場合、六角棒の外形をそのまま利用することもあります。 切削加工によるネジ製作の特徴|メリットとデメリット 切削加工によるネジ加工の特徴 メリット1 複雑な形状を成形しやすい メリット2 多様な形状を成形しやすい デメリット1 強度が弱い デメリット2 削り屑は発生する (1)強度が弱い 切削加工ではファイバーフローを切断してネジを成形するので、転造加工で製作したネジに比べて強度が劣ります。 図11:切削ネジのファイバーフローは切断される (2)複雑な形状を成形しやすい 切削加工では工具を取り替えるだけで、多様な形状の加工が実現できます。フライス加工も併用すれば、回転対称でない形状の加工も可能です。そのため、転造加工に比べて複雑な形状のネジを成形できます。 (3)多様な形状を成形しやすい 切削加工では、転造加工のように完成品の形状が工具(ダイス)の形状で決まるわけではありません。加工の仕方を変える自由度があり、工具を取り替えることもできるので、多様な形状のネジを製作することができます。 (4)削り屑が発生する 切削加工では加工中に削り屑が発生するため、切削した分の金属が無駄になってしまいます。 転造ネジと切削ネジの選び方 転造ネジと切削ネジには様々なメリット・デメリットがあります。それぞれの特徴から、希望や状況に合わせた選定方法をご紹介します。 Point!転造ネジ・切削ネジの選び方 ① 強度が必要な場合は転造ネジ ② 形状が複雑な場合は切削ネジ ③ 大量生産品は転造ネジ ④ 多品種少量生産品は切削ネジ ① 強度が必要な場合は転造ネジ ファイバーフロー(フローライン)形成と強度の違い 転造ネジ 切削ネジ 高強度 転造ネジより弱い強度 転造ネジと切削ネジでは、ファイバーフロー(フローライン)の形成する様子が異なり、転造ネジは切削ネジよりも高強度です。これを要因とする強度の差は約20%にも達します。さらに転造ネジは加工硬化を起こすことから、さらなる高い強度が見込めます。強度を必要とする場合は、転造ネジを選びましょう。 ② 形状が複雑な場合は切削ネジ 転造ネジは回転させながら圧縮して加工するため、完成品の形状は回転対称に近い形状になります。一方、切削ネジではタレット旋盤を用いたり、フライス加工を併用したりすれば、複雑な形状を実現できます。ネジの形状が複雑な場合は、切削ネジしか選択肢がない可能性があります。 ③ 大量生産品は転造ネジ 転造ネジの加工は、初回に金型となるダイスを製作してしまえば高い生産性が見込めます。一方、切削ネジの加工は、NC(CNC)加工機による自動化が可能ではあるものの、ほとんどの場合で加工速度が転造加工に劣ります。 また、転造加工では切り屑を排出せず、絞り加工によって材料を引き伸ばすため、より少ない量の材料で同寸法のネジを製作可能です。よって、大量生産品には転造ネジが適しています。 ④ 多品種少量生産品は切削ネジ 転造ネジの加工では、1種類のネジの形状に対して1つのダイスが必要となります。一方、切削ネジの加工では金型を必要とせず、1つのネジの製作ごとに形状を変えられます。多品種少量生産の場合は、切削ネジが適しています。 ネジの製作は、強度や形状によって加工方法を選定する必要があり、ネジの生産量も加工方法の選択に影響があります。ネジの製作をご依頼する際は、これらを参考にして最適な加工方法を選定してください。

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    転造加工とは?種類とデメリット、加工可能な金属を解説!

    転造加工は雄ねじの加工用に開発された加工方法で、今ではネジ生産に欠かせない技術です。ネジ転造は100年以上の歴史を持ち、日本でも50年間使用されてきた加工方法です。転造加工は雄ねじの加工の他にも、ギア(歯車)などの部品加工にも広く用いられています。本記事では転造加工について、基本的な知識に加え転造加工の種類、加工可能な金属、転造加工のメリット・デメリットなど幅広く解説しています。転造加工とは?転造とは強い力を加えることで、素材を変形させる塑性加工の一つです。材料の可塑性(材料を変形させても元に戻らない性質)を利用して、転造ダイス(断面がねじ山の形をした工具)を回転している加工対象物に押し当て、盛り上げることで成形(塑性変形)させます。転造という言葉は「転がして(形を)造る」と書きますが、加工物を回転させながら加工を行うことに由来しており、英語ではローリング(Rolling)と呼ばれています。転造加工で施すことができる形状のバリエーションは、以下のようにさまざまな種類があります。図1:転造加工で作れる形状バリエーション  転造加工で施す形状の一つには、ローレットと呼ばれる金属表面に細かい凹凸状の形状が施されているものもあります。参考:ローレット加工とは?適した素材や転造と切削の特徴に関しても解説!転造加工の種類平面ダイス転造加工丸ダイス転造加工プラネタリ転造加工汎用ねじの大量生産ねじ以外の部品加工 汎用ねじの大量生産転造では、転造盤と呼ばれる加工装置を使います。転造盤は、使用する転造ダイス(工具)の種類やその加工法の違いによって、数種類に分類されます。代表的なものとして「平面ダイス転造方式」「丸ダイス転造方式」「プラネタリ転造方式」が挙げられます。(1)平面ダイス転造加工図2:平面ダイス転造方式 平面ダイス転造方式は、板状の平ダイスを用いる加工方法です。2枚の平面ダイスで加工物をはさみ、一方のダイスは固定させたまま、もう一方のダイスを平行方向に動かして加工を行います。生産性の高い加工方法であるため、汎用ねじの大量生産に用いられます。2枚の平ダイスで加工物をはさみ、両者のダイスを同じ速度で反対方向に運動させる加工方法もあります。(2)丸ダイス転造加工図3:丸ダイス転造加工 丸ダイス転造加工は、円筒状の丸ダイス(ローラーダイス)を用いる加工方法です。2~3つの丸ダイスで加工物をはさみ、ダイスを同一方向へ、同じ速度で回転させながら加工を行います。ダイス間の距離を自由に変更できるため、加工の応用性に優れており、ねじ転造以外の部品加工にも幅広く用いられています。他の2種類の加工方法とは異なり、加工時の材料の供給と排出が同じ場所で行われることから、生産性は平面ダイス転造加工やプラネタリ転造加工よりも劣ります。(3)プラネタリ転造加工図4:プラネタリ転造加工プラネタリ転造加工は、アーチ形状のセグメントダイスと丸ダイスを用いる加工方法です。固定されたセグメントダイスの内側で丸ダイスを回転させ、この間に加工物を送り込んで加工を行います。加工中にダイス間の距離の変更ができず、加工の応用性は少ないですが生産性は高く、平ダイス転造加工と同様に汎用ねじの大量生産の現場でよく用いられている加工方法です。転造加工で加工可能な金属転造加工で加工可能な金属には、鉄、アルミニウム、真鍮、ステンレスなどがあります。転造加工に用いる材料は、材質の弾性と塑性の性質が重要です。材料の特性には、伸び率(弾性)や張力(塑性のしやすさ)の項目があります。転造加工には、伸び率が5%以上で、張力が最高1700N/mm2までの材料が適しています。さらに、押込み硬さを表す尺度であるHRC硬度(ロックウェル硬さ)が20以下の材質はより向いている材質です。転造加工のメリット!切削加工と比較して学ぶ転造加工は、よく切削加工と比較されます。切削加工とは、加工物を切って削る加工方法です。転造加工のメリットは以下の5点です。転造加工のメリット(1)工具を長く使用できる(2)切削加工よりも精密な仕上げ(3)生産性が高い(4)強度が高い(5)環境にやさしい転造加工のメリット(1)工具を長く使用できる転造加工に用いられる工具(転造ダイス)は、切削加工に使用される工具と比較して、工具寿命が長いです。そのためコスト低減につながるほか、工具の交換頻度が少なくなって生産性の向上も期待できます。転造加工のメリット(2)切削加工よりも精密な仕上げ転造加工が施された被加工面は、研削されたダイスによって押し当てられて成形されるため、切削加工品と比較して非常に面粗度が良好です。光沢を帯びた仕上がりが得られます。転造加工のメリット(3)生産性が高い転造加工は切削加工と比べて加工時間が短く、工具の交換頻度も少ないため、生産性が非常に高く大量生産に最適な加工方法です。転造加工のメリット(4)加工硬化による高強度転造加工のファイバーフロー切削加工のファイバーフロー転造加工では、切削加工とは異なりファイバーフロー(繊維状金属組織)が切断されません。連続したファイバーフローを持ち、かつ強い力で押し込まれた金属繊維は、圧縮されることでさらに密度が高くなり加工硬化を起こします。塑性変形の加工硬化によって、転造加工品は切削加工品と比較して高い強度を持ちます。転造加工のメリット(5)環境にやさしい転造加工は切削加工のように切り屑を排出せず、比較的少ない動力でかつ短時間で加工できることから消費電力も少ないです。そのため環境にやさしい加工方法と言われています。参考:【切削加工とは?】特徴・種類・注意点を動画と一緒にご紹介します!転造加工のデメリット!転造加工のデメリットは以下の2点です。転造加工のデメリット(1)設備投資の費用が高額(2)少量加工や試作に不向き転造加工のデメリット(1)設備投資の費用が高額転造加工では、転造ダイスなどの初期投資が必要です。さらに一般的なねじ用のダイスなどは流通していますが、特殊なサイズや形状などになると、販売しているメーカーなども少なく、初期投資が高額になる可能性があります。転造加工のデメリット(2)少量加工や試作に不向き加工物のサイズや形状に合わせて転造ダイスをその都度購入する必要があるため、転造加工は少量生産には向いていません。試作などの極小ロットの場合には、切削加工のほうが加工時間が短くて済む場合もあります。転造加工まとめ転造加工をメーカーに依頼する際には、各メーカーによって対応できる材質や加工方法などが異なるため、事前に確認してから依頼することが重要です。

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    ローレット加工(ナーリング加工)とは?転造と切削の特徴に関しても解説!

    金属の加工方法の一つに「ローレット加工」があります。ローレットとは、フランス語を起源とする言葉でギザギザの形状を表します。つまり、ローレット加工とは金属表面に、細かい凹凸の加工を施す方法を指します。実は、このローレット加工ですが、私たちの身近なところでもよく使われている技術なのです。例えば、ライターのローラーやダンベルのシャフト、シャープペンのグリップなどに使用されており、滑り止めとしての役割を果たしています。今回は、ローレット加工について、その加工の種類やメリット・デメリット、ローレット加工に適した素材、加工事例など幅広く解説していきます。ローレット加工についてさらに知識を深めたい方や、ローレット加工でお悩みの方は、ぜひご一読ください。ローレット加工(ナーリング加工)とはローレット加工とは、金属に細かい凹凸状の加工を施す加工方法を指します。その加工方法には、ワークの表面を削り取る切削加工とワークを転がしながら圧力を加えて変形させる転造加工があります。切削加工では、主に旋盤で回転させているワークにローレット工具を押し付け、等間隔の溝を形成するように削り、表面に凹凸を付けます。一方、転造加工では、施したい凹凸と同じ模様の工具をワークに押し付け、工具の形状を転写することで成形します。ローレットには主に二つの役割があります。一つは、滑り止めとしての役割です。手や指が使用中に滑らない様に、ハンドル部品やネジの頭などで使用されます。もう一つは、抜け止め、回り止めとしての役割です。圧入する部品の接合部分にローレット加工を施すことで、摩擦や食い付きによる作用を付加することができます。他にも、模様をつけるという点で、意匠性の役割としても用いられます。このように、ローレット加工は私たちの生活の中の様々なところで使用されている技術なのです。一般的に、ローレット加工では、平目、あや目という2種類の模様が用いられますが、他にも斜目、四角目などの特殊な形状もあります。<ローレット加工の代表的な模様の例>平目、あや目引用元:株式会社大塚商会斜目引用元:有限会社アドバンス産業四角目引用元:山田マシンツール株式会社ナーリングとも言うまた、ローレット加工は、主に日本の金属加工で使われている言葉で、英語圏などではナーリング加工と呼ばれます。これは、ローレットが単にフランス語のルレット(roulette)に由来し、ローレット加工と同様の加工法が英語圏ではナーリング加工と呼ばれているだけのことです。このフランス語のルレットは、「小さい輪」や「小さくて回るもの」を語源とし、洋裁におけるギザギザの付いたローラで布地に刻み目を入れる道具を指す言葉です。この道具の形状や使用法から、ローレット加工という言葉が生まれたと考えられます。一方、英語のナーリング(knurling)は、つまみネジなどに付けられたギザギザ形状などの模様を指し、日本で使われているローレットとほぼ同じ意味を持ちます。ローレット加工の種類ローレット加工は、加工方法によって切削・転造の2種類に分けられます。それでは、それぞれの加工方法の特徴について見ていきましょう。ローレット加工①【切削】切削タイプのローレット加工では、被削材にローレット駒を押し付けて削ることで加工を施します。金属を削るので、切りくずを排出します。主に、ツマミネジやインサートナットなどの加工に使用されます。加工には、必要な模様に応じて、下図のような工具を用います。<切削ローレット加工用工具>引用元:株式会社ミスミローレット加工②【転造】転造タイプのローレット加工では、ワークを削らず、工具を押しつけて圧力を加え、塑性変形を施すことで加工を行います。押し付けて盛り上げることから、盛り上げ加工と呼ばれることもあります。切削加工とは異なり、切りくずは排出されません。主に、熱圧入用インサートナットやインサートカラーなどの加工に使用されます。加工には、必要な模様に応じて、下図のような工具を用います。<転造ローレット加工用工具>引用元:株式会社ミスミ参考:【板金加工】専門家が教える板金加工の「特徴・種類・材料」について!ローレット加工のメリットここからは、切削・転造の両加工方法について、それぞれのメリットを挙げていきます。ローレット加工のメリット【切削】●転造式に比べて機械への負荷が少ない切りくずを排出する削りのため、抵抗が抑制され、工作機械への負担は小さくなります。●細長材・中空材の加工に適しているこれは、工作機械への負担が少ないこととも関係しており、切削加工では、ワークの盛り上がりがほとんど生じないため、薄肉や長物、細物の加工に適しています。●長尺ワークの加工に適している工具の幅分しか加工を施すことができない転造加工とは異なり、連続して削り加工を行うことができる切削加工では、特に長尺ワークへの加工に向いています。ローレット加工のメリット【転造】●短時間で加工することができる削らず押しつけて圧力をかける加工なので、切削加工と比べて短時間で加工することが可能です。●ツールコストを抑えられる切削加工の工具と比較して、部品点数が少ないため工具が安価です。●被削材に段差があっても、段差際まで加工できる切削加工では被削材に段差がある場合は、工具の干渉により段差の際まで加工することは難しいですが、転造加工では可能となります。ローレット加工のデメリットここからは、切削・転造の両加工方法について、それぞれのデメリットを挙げていきます。ローレット加工のデメリット【切削】●素材径より小さくなる切削加工では、金属を削り切りくずを排出するため、素材径より小さくなってしまいます。●フランジの際まで加工できない工具が干渉するため、フランジ(円筒形あるいは部材からはみ出すように出っ張った部分)の際まで加工を施すことはできません。●管理が難しい量産時には、工具摩耗によって切れが低下してしまうため、品質を保証するために工具の交換など管理を行う必要があります。ローレット加工のデメリット【転造】●工具の幅分のみの加工となる転造加工では押し付けて圧力をかけることで加工を施すため、工具の幅分しか掛けられず、長尺ワークの加工などには不向きです。●工作機械への負担が大きい大きな抵抗が作用するため、工作機械への負担が大きく、塑性変形によって工作物の盛り上がりも大きくなります。ローレット加工の素材について次は、ローレット加工に適している素材について見ていきましょう。下表に、切削・転造の両加工方法について、対応可能な材質をまとめています。材質銅・真鍮アルミSS材SSM材鋳鉄チタン樹脂転造〇〇〇△△△NG切削〇〇〇〇〇△〇切削加工では、ほとんどの材質に対応可能ですが、難削材であるチタンの加工は対応が難しくなります。一方、転造加工では塑性変形によって加工が行われるため、チタンや鋳鉄のような硬い材料への加工は難しく、さらに金属ではありませんが、樹脂などのもろい材料には加工ができません。ローレット加工の加工事例ここでは、ローレット加工の加工事例についてご紹介していきます。<熱圧入用インサートナット(転造ローレット加工、材質:アルミ)>引用元:大森精密工業株式会社<ツマミネジ(切削ローレット加工、材質:画像左からアルマイト、SUS303、アルミ)>引用元:大森精密工業株式会社<熱圧入用インサートナット(転造ローレット加工、材質:快削鋼)>引用元:大森精密工業株式会社ローレット加工(ナーリング加工)まとめ今回は、ローレット加工(ナーリング加工)の詳細やその加工方法である切削加工と転造加工についてご説明しました。これらの加工法は、それぞれ異なる特徴を持ち、得意とする素材や形状も違います。ローレット加工をご依頼する際は、解説した異なる点を考慮した上で適切な加工方法を選択しますが、ローレット加工に対応しているメーカーの多くは、得意とする加工法があるため、メーカー選びも重要となってきます。

  • ねじ切り加工とは?意外と知らないねじの作り方を分かりやすく解説!

    価格が安くなるねじ切り図面の書き方についてはこちら! 価格が安くなるねじ切り指示の書き方を解説しています! 20〜30%ほどの低減につながる可能性がございますのでぜひご覧ください! 5分ほどで視聴可能です! Youtubeにて、金属加工Mitsuriチャンネルを運営中!こちらからご覧ください! 皆さんは「ねじを切る」と言う言葉を知っていますか。 「ねじを切る」とは金属を削ってねじのギザギザしたところを掘ることを言います。つまりねじの下の部分を作ることですね。 今回のテーマである「ねじ切り加工」では、そのねじ切りの方法や工具の種類などを金属加工のことを何も知らない方でも分かりやすいように解説していきます。普段何気なく使っているねじがどのようにして作られているのか、この記事をきっかけに知る良い機会になればと思います。 ねじ切り加工の長所・短所 冒頭でも話した通り、ねじ切り加工とはねじのギザギザを作る加工のことです。ねじのギザギザのことをねじ山と言います。ねじ山とは頭部の出っ張ったところではないんですね。 ねじ山のギザギザは切削加工や塑性加工などの方法で、金属の棒を削ったり変形させたりすることで作られます。 keyword ①切削(せっさく)加工… 素材を切ったり削ったりする加工のこと。 ②塑性(そせい)加工… 素材に大きな力を加えることで、目的の形に変化させる加工のこと。 曲げたり押し潰したりします。 ではまず、ねじ切りがどういうものか手っ取り早く知るために、実際に加工の様子を動画で見てみましょう。 一概にねじ切り加工とは言ってもその方法は様々あるので、今回の動画はあくまで一例です。 動画のねじ切りの方法は金属を削って作る切削加工ですね。 切削加工によるねじ切りの長所・短所 切削加工は塑性加工よりも多くの種類のねじを作ることができ、その削ったり切ったりする作り方から元の金属よりも小さなねじを製造します。 短所としては素材を削って作るため切りくず大量に出る点と、刃物を多用するので新しい刃に変えるたびにコストがかかる点です。 塑性加工によるねじ切りの長所・短所 一方、塑性加工は切りくずが出ない方法で、削らないぶん素材の太さを確保したままのねじができます。 ただし、短所としては金型を用意する必要があるため、金型の費用と金型作成の時間がかかります。 金型とは画像のような製品を一定の形にするためのものです。 引用元:金型って何? 切削加工で作るねじも塑性加工で作るねじも、上記の通り長所・短所があるため、作るねじの大きさや種類に応じて加工の方法を選びます。 それぞれの加工の仕方は後ほどの項目で説明しますが、どちらも安価かつ短時間で製造でき、大量生産が可能になっています。 おねじとめねじ ねじにはおねじとめねじというのがあります。 ねじと言えば、一般的に使う種類ではドライバーで締めるタイプのものをみなさん思い浮かべるでしょうか。部品を組み立てる時に固定したりや機械の調子が悪くなって解体する時に外すものですね。適当に床に置いてしまい、なくして探すのに苦労した経験は誰にでもあるかと思います。 その一般的なねじの方をおねじと言い、めねじはそのおねじに組み入れるねじのことを言います。めねじの方もそれほど珍しいものではありません。 画像をご覧いただけると分かるように、おねじは外側に線状を作り、めねじは中をくり抜いて作られます。 引用元:amazon Narse ☆ Yome  また、ボルトとナットもおねじとめねじにあたります。ナットもねじの種類の一つなんですね。形状からはあまりねじとは言えない形をしているので、少々意外に思う方もいるかもしれません。 おねじとめねじを作る方法 おねじとめねじを比較的簡単に作る工具にダイスとタップという道具があります。おねじを作るときはダイスとダイスハンドルという工具を使い、めねじを作るときはタップとタップハンドルいう工具を使います。 ダイスとタップを使ったねじ切り加工は、一つの道具で一つの寸法しかできないので他の寸法のねじを作りたい時は複数の工具が必要になります。 下の動画は、おねじとめねじを作っている様子です。 ねじ切りは工場で大掛かりな機械を使わないとできない印象がありますが、やり方さえ覚えれば誰でも日曜大工の感覚でねじを作ることができるのです。 手順や工具の種類の多さなど少し取っつきにくいところがありますが、職人芸並みの難しい技術は必要なさそうですね。 とは言え、動画ほどの手際のよさは初めてですとなかなか再現できないと思いますので、上手く加工できるようになるには何度もやって慣れていく必要があるでしょう。 なお、加工の時に過度に力を入れ過ぎるとねじがつぶれたり工具が折れてしまうことがあるので、実際にねじ切りをする場合は切削油を使いながら行い、無理に回したり押し込まないように注意してください。 いろいろなねじ切りの方法 先ほどの紹介は手作業による加工でしたが、ねじ切り加工にはもちろん機械を使った方法もあります。 主な方法としては、最初の項目で説明した金属を削って作る切削(せっさく)加工と金属の形を変えて作る塑性(そせい)加工の2パターン。 ねじの材料には金属だけではなくプラスチックスや樹脂などもありますが、今回は金属で広く使われている方法をいくつか紹介していきます。 機械を使用した方法 ①旋盤を使ったねじ切り加工 ②ねじ切り盤を使ったねじ切り加工 ③塑性加工によるねじ作り ①旋盤を使ったねじ切り加工 旋盤という機械による方法はねじ作りの中でも代表的な加工方法で、工業高校の機械実習でも入門編として使われます。 記事の最初の方で見た動画が旋盤を使ったねじ切り加工ですね。 おねじを作る時は金属の外側を削る外径ねじ切り旋削(せんさく)で、めねじを作る時は内側を削る内径ねじ切り旋削で行います。 引用元:モノタロウ 旋盤でのねじ切りは自動で加工する機能があるため、加工の様子を見ることができる外径ねじ切りは比較的容易にできます。 内径ねじ切りも基本的には外径ねじ切りと同じ方法ですが、金属の中を見ることができないので多少加工の難易度が上がります。 この実習でも使われるほど容易にできる旋盤を使った加工ですが、実はこの方法には欠点があり、旋盤によるねじ切りは機械加工ではあるものの、加工の仕方から大量生産向きではありません。ねじという、どの製品にも必要な部品が大量に生産できないのは、困りものですね。 そこで登場したのが下の画像のNC旋盤というハイテクな機械。 引用元:NC network これを使えば回転速度の設定や加工中の工具の移動などが自動で行われるので、一度設定すれば人の手を介することなく大量生産ができます。 プログラムさえ作成してしまえば加工の開始から終了まで全自動なので、非常に効率的にねじが作れるのです。 加工中に出る金属の切りくずの処理もしなくてよいので面倒がなく楽ですね。 ②ねじ切り盤を使ったねじ切り加工 ねじ切り盤はねじ切り加工に特化した機械です。 旋盤はねじ切り加工専用の機械というわけではなく他にも様々な使い道があります。一方、ねじ切り盤は特化しているだけあって、この方法では日常でよく見かけるねじとは異なる大型のねじを製造します。 ねじ切り盤で作られるねじは、橋やコンクリートの建物に埋め込まれる耐震補強用のアンカーボルトや水道・ガスで使用される配管などに使われます。画像で見る大きな鉄の棒やナットは、もはやねじと言えるか怪しいほどですね。 ねじ切り加工の技術は土木や建築、はたまた水道の分野でも活かされているのです。 ③塑性加工によるねじ作り 大きなねじの作り方の次は小さなねじの作り方です。 子ねじと呼ばれる小型のねじは、旋盤などで削って作ることはせず、圧造という塑性加工の方法で作られることが多くなります。 もし小さなねじを作るために削ろうとすると、当然小さな金属から生成することになるため、普通の大きさのねじよりも素材となる金属を多く削り取ってしまうことになります。それでは明らかにコストの無駄になってしまうので、切りくずを出さずに製造できる塑性加工が用いられるのです。 前の項目でも説明した通り、塑性加工は金属を潰して変形させる加工方法です。潰して変形させると言うとイマイチ作られる様子が想像できませんが、次のgifを見ていただくと分かりやすいかと思います。 引用元:森岡産業株式会社 上の動きの作り方はダブルヘッダー加工と言います。 パンチと呼ばれる赤色の部分の金型で、素材となる金属の棒を押し潰してねじの頭とドライバーを入れるくぼみの部分を成形します。 ねじの頭部ができたら、次は肝心のねじ山の部分を作っていきます。ねじ山を付けるには、下の画像のようにねじを工具の間に挟み、ギザギザの跡を付けるように押し込みながら回転させていきます。 引用元:モノタロウ この方法を転造と言い、その転造のタイプには平らな工具を使う平ダイス転造や丸い工具を使う丸ダイス転造、平ダイスや丸ダイスよりも生産能力が高いセグメントダイス転造などがあります。圧造は金属を圧縮させて作り、転造は転がして作るという漢字の通りの方法なので覚えやすいですね。 塑性加工による製造は、小ねじだけでなく大きめのねじや太いボルトなどのねじも製造が可能です。金属内部の繊維を切断しないため、ファイバーフローという耐摩耗性に優れたねじができるというメリットもあります。 また、塑性加工は金属を数回加工するだけででき、しかも機械で自動的に作ることができるため、切削加工よりも短い時間で加工できます。非常に大量生産向きの方法なんですね。 ねじはどんな分野のどんな製品でも使われる部品なので大量生産が必須です。そのためできるだけコストと時間を抑え、効率的な製造方法が求められるのです。 まとめ 今回の記事はねじ切りの方法やおねじ・めねじについてなど、ねじを加工する中でのギザギザを付ける部分に焦点をあてた内容でした。 他の部分やねじ全体の解説はまた別の記事で紹介させていただきます。 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。