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切削加工

  • 切削油(クーラント液)の種類、成分、メリット・デメリット

    金属加工の現場では、金属を削る、切断する、など、さまざまな加工が実施されます。そして、その際に「切削油」と呼ばれる油が使用されます。 切削機や加工機を使用する際、ドリルやフライスに放出されている切削油。「水ではダメなの?」「何のために放出されているの?」など、疑問に思われている方も少なくないはず。そこで、今回は切削油について詳しくご紹介します。 切削油(クーラント液)とは 切削油とは、フライス盤や旋盤など、金属にさまざまな加工を施したい時、ドリルに対して放出される液体のことです。主に、切削時の摩擦を抑えたり、工作物の熱を奪い、熱を冷ましたりする効果を持っています。切削時に発生する切り屑を洗い流す効果もあり、加工時に起きる不具合や不良品の発生を軽減させる効果を担っています。 切削油(クーラント液)を使用するメリットとデメリット 切削時に水ではなく油を利用するのは、より精度の高い製品を制作するため。一般的には「水溶性」と「不水溶性」の2種類に大別され、それぞれに異なるメリット・デメリットがあり、目的・用途に合わせて使用されています。 メリット 切削油を使用するメリットは下記の通りです。 切削時の摩擦熱を軽減させ、品質向上と工具の摩耗を軽減させる 切削物との摩擦を減らし、加工面の品質を向上させる 切削時に発生する切り屑を洗い流し、スムーズに切削ができる 加工物の仕上げ面がよりきめ細やかで美しくなる 機械と素材の動作が円滑に行われるため生産性が向上する 切削油は主に「潤滑作用」「冷却効果」「品質向上」を目的に使用されます。使用することで切削された金属の品質が向上し、機械の動きもスムーズになります。結果的に「生産性が向上し、機械の寿命を引き延ばす」効果を持ち合わせています。 デメリット 切削の理想はドライな状態での加工と言われています。なぜなら、潤滑油を使用するデメリットがあるからです。例えば、油によって金属に悪影響を及ぼすケースもあり、すべての金属に対して有用というわけではありません。素材によって変色や錆の原因となる可能性がある点もそのひとつです。さらに、切削油の飛散による作業効率の低下や環境的な問題などもあります。 水溶性切削油の種類 水溶性切削油は一般的に水道水を使って10倍~80倍に希釈して使用します。濃すぎると金属に付着した油による影響が懸念され、逆に薄すぎると水による錆などの原因となるため、適量に薄めて使用する必要があります。 水溶性切削油は冷却性に優れている他、切削時の熱や火花から引火する危険性がなく、無人による作業の自動化が期待できます。 エマルション(A1種) エマルションは10~30倍程度に希釈して使用され、水に溶かすと乳白色になります。水と油、界面活性剤から成り、水溶性切削油の中で最も潤滑性が高い切削油です。鉄やアルミ、銅など、切削加工全般に使用されています。 ソリューブル(A2種) ソリューブルは10~50倍程度に希釈して使用され、水に溶かすと半透明、もしくは透明になります。エマルションに比べて洗浄性や冷却性が高く、潤滑性は劣ります。 ソリューション(A3種) ソリューションは30~80倍程度に希釈して使用され、水に溶かすと透明になります。浸透性と冷却性に優れている一方、潤滑性がなく、被切削物に対するダメージや肌荒れが起こりやすい油種となっています。 不水溶性切削油の種類 不水溶性切削は鉱油や脂肪油を主成分としています。水溶性に比べて冷却性は劣りますが、潤滑性や防錆性に優れており、切れ味の良さや、工具の寿命、加工面の品質向上が期待できます。また、使用する油によって粘度が異なりますが、一般的に低粘度のものほど浸透性に優れており、隙間に浸透し、潤滑や冷却に高い効果を発揮します。 油種は大きく分けて4種類に大別されますが、すべてに引火の危険性があり、消防法によるところの「危険物」に該当します。そのため管理・使用には法律に基づいた予防措置が必要になります。 油性形(N1種) 油性形は鉱物と脂肪油を主成分とし、切削時に局部の焼き付きや切削性の向上を目的に使用される、極圧添加剤を含まないタイプです。非鉄金属の加工や鋳鉄の切削加工に多く用いられます。 不活性極圧形(N2種) N1種の成分に極圧添加剤を含み、銅板腐食が150℃で2未満のものが該当します。不水溶性切削油の中で最もスタンダードなタイプで、一般的な切削加工に幅広く用いられています。 不活性極圧形(N3種) N1種の成分に極圧添加剤として硫黄分を含み、銅板腐食が150℃で2以上のものが該当します。耐溶着効果が高く、仕上げ面を得られやすいため、難素材の加工に多く選ばれます。ただし、硫黄によって変色する金属もあるため使用には注意が必要です。 活性極圧形(N4種) N1種の成分に極圧添加剤として必ず硫黄分を含み、銅板腐食が100℃で3以上のものが該当します。タップ加工やリーマ加工、ブローチ加工をはじめとする低速加工に多く用いられ、難素材の加工に適しています。

  • ボール盤とは?構造、種類、フライス盤との違い

    ボール盤は、様々な素材の穴あけを主要機能とする工作機械です。旋盤やフライス盤、マシニングセンタなどと同じく、切削加工を行うための機械で、機械に取り付けた切削工具によって材料を削り出すことで加工を行います。 金属・樹脂の加工工場や部品工場には、必ずと言ってもいいほど設置されている機械で、材木の成形加工を行う製材所などでも用いられています。他の工作機械と比べると安価で、DIYで使用できるような卓上のものもあります。 この記事では、ボール盤とは何かというところから、その構造や種類、ボール盤で実行できる加工方法や使用されているドリルについて解説していきます。フライス盤や旋盤との違いについても触れているので、参考にしてください。 ボール盤とは ボール盤とは、木材や樹脂材、金属材などに対して、穴あけ加工や中ぐり加工、リーマ加工などを施すことで、材料の不要部分を除去し、材料を所定の形状に成形するための工作機械のことです。 主にツイストドリルやセンタードリル、リーディングドリルなどの各種ドリルを装着して使用しますが、以下のような切削工具も用いられます。 ・リーマ…穴の形状を整えたり、内面を仕上げたりするための切削工具 ・タップ…穴の内面にネジ山を刻む(雌ネジを切る)ための切削工具 ・中ぐりバイト…穴の径を拡張するための切削工具 ・カウンターシンク…面取りやバリ取り、皿モミを行うための切削工具 ・面取りカッター…面取りやバリ取り、皿モミのほか、センタリングや穴あけも可能な切削工具 ・ホールカッター(ホールソー)…板材に大口径の貫通した穴をあけるための切削工具 参考:【面取りカッター】種類、材質、サイズ、角度 ボール盤では、工作物を固定し、回転する切削工具を工作物に向けて垂直に下ろすことで加工を行います。ボール盤は、高精度の穴を容易にあけることができる機械ですが、安全に十分配慮しないと怪我などに繋がりやすいというデメリットもあります。 ボール盤の構造と各部の名称 引用元:機械工学事典 > 生産加工・工作機械「ボール盤」一般社団法人日本機械学会 ボール盤の基本的な構造は、上図のようになっています。 ボール盤は、大まかに、主軸やモーターなどを備える主軸頭、工作物を固定するテーブル、主軸頭とテーブルを支えるコラム、コラムを支えるベースから構成されています。 主軸頭 主軸頭は、ドリルの回転軸となる主軸とその動力源となるモーター、回転数や回転力(トルク)を変えるプーリー、動力をモーターから主軸に伝達するベルト、主軸を操作するハンドルを備え持つ部位のことです。 上図における、右上の樽状のものがモーター、主軸とモーターの上に位置するベルトが掛けられているものがプーリーです。 ●ドリル ドリルは、穴あけを行うための切削工具です。ボール盤では、鉛直軸周りの回転運動を与えられ、鉛直方向に送られて工作物に接触し、工作物を削ります。 ●ドリルチャック ドリルチャックは、主軸に取り付けられて、ドリルのシャンク(柄部)を掴んで保持し、主軸の回転運動をドリルに伝える保持器具です。ただし、主軸の取り付け口の形状によっては、主軸とドリルチャックとの間にアーバーと呼ばれる接続器具を挟むことがあります(下図参照)。 引用元:ビルディマガジン > ツール「卓上ボール盤の特長・選び方とおすすめ機種を分かりやすく解説」ビルディ株式会社 ●主軸 主軸は、ドリルを回転させるための軸のことです。スピンドルとも呼ばれます。 参考:スピンドルとは?構造、原理、種類、用途 ●ベルト…モーターで生成された動力を主軸に伝達するためのシームレスな帯状部品です。通常は安全のため、下図のようにベルトカバーで覆われています。 引用元:基盤整備センター「kaicho_1-9.pdf」独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構職業能力開発総合大学校 ●プーリー プーリーは、ベルトを掛ける滑車として働き、モーターから主軸への動力の伝達を補助する部品です。また、ボール盤のプーリーは、直径が異なる複数の円盤が連なっており、ベルトを異なる直径の円盤に掛け替えることで、自動車のトランスミッションのように、軸の回転速度を変更することができます(下図参照)。 引用元:基盤整備センター「kaicho_1-9.pdf」独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構職業能力開発総合大学校 ベルトの掛け替えは、主軸の回転数を変更する度に必要となり、非常に手間が掛かる作業です。そのため、動力をベルトではなく、歯車で伝達しているものもあり、そのようなボール盤であれば、レバーを引くなどの簡単な操作で主軸の回転速度の変更が可能です。また、インバータによってモーターに供給する電力の周波数を制御して、モーターの回転数を連続的に制御できるようにしたボール盤もあります。それならば、稼働中でも主軸の回転数変更が可能となるため、作業時間の大幅な短縮に繋がります。 ●ハンドル ハンドルは、主軸の上下への送りを操作するためのもので、手動でドリルを鉛直方向に送る手送りと一定の送り速度でドリルを鉛直方向に送る自動送りの双方を行うことができます。 テーブル テーブルは、工作物を固定する台となるもので、通常、バイス(万力)やクランプが備え付けられています。 参考:バイス(万力)種類・材質・用途 テーブル自体を上下、または左右に移動させるハンドルが備わっており、ハンドル操作によって、テーブルを鉛直方向に動かしたり、コラムを中心に回転させたりすることができます(下図参照)。 引用元:基盤整備センター「kaicho_1-9.pdf」独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構職業能力開発総合大学校 コラム コラムは、ベースの上に垂直に固定された機械を構成する柱で、主軸頭とテーブルを支える役割を持ちます。 ベース ベースは、直接的にはコラムを支える、機械全体の土台となる構成部品です。アンカーボルトでコンクリート地面に直接固定したり、ボルトで重量のある台座に固定したりします。 ボール盤の種類 ボール盤には、様々な種類があります。DIYで使えるような小型のものから、大物の加工に向いたもの、流れ作業に適したものなど、工作物の形状やサイズ、作業場の状況などに応じて、適したものを選定する必要があります。ここでは、代表的なボール盤の種類についてご説明します。 直立ボール盤 引用元:機械工学事典 > 生産加工・工作機械「直立ボール盤」一般社団法人日本機械学会 直立ボール盤は、主軸が上下のみに動く、コンクリート床に直接据え付けたり、大型の台座に固定したりして用いるボール盤です(上図参照)。工場などでよく用いられているボール盤で、単にボール盤と言う場合は直立ボール盤のことを指します。 直立ボール盤は、主軸の水平位置が固定されているため、工作物そのものや工作物を固定するテーブルを動かして加工する際の位置決めを行います。そのため、比較的小形の工作物の加工に適しています。 また、テーブルは、加工作業時には固定しますが、上下方向だけでなく、水平方向に移動可能なものやコラムを中心に水平回転が可能なもの、傾斜可能なものなどがあります。 ラジアルボール盤 引用元:製品情報 > 工作機械部門「ラジアルボール盤シリーズ」大鳥機工株式会社 ラジアルボール盤は、主軸が鉛直方向だけでなく、水平面内でも自由に移動可能なボール盤です。テーブルがなく、ベースがテーブルの代わりとなって工作物を固定することになりますが、主軸の自由度が高いため、工作物を動かすことなく、複数箇所を加工できます。 ラジアルボール盤の主軸頭は、コラムを中心に旋回するアームに取り付けられており、アームに沿った移動も可能です。そのため、アームの届く範囲内であれば、主軸を水平面内の任意の位置に配置することができます。 ラジアルボール盤は、主に大型、または重量のある工作物の加工に用いられます。 卓上ボール盤 引用元:電動工具 > 締付・穴あけ・ハツリ > 卓上ボール盤「TB-1131K」京セラインダストリアルツールズ株式会社 卓上ボール盤は、ベンチドリルとも呼ばれる、作業台の上に設置して使用する小型のボール盤です。基本的な構造は直立ボール盤と同様で、主軸が上下にのみ動き、前後左右には動かないため、工作物やテーブルを動かして位置決めをして加工を行います。 小型である分、工作物を固定するテーブルも小さく、小型・軽量である製品の製作やDIYなどに用いられています。 多軸ボール盤 引用元:多軸ボール盤・タップ盤「小型多軸ボール盤・タップ盤シリーズ」東洋精機工業株式会社 多軸ボール盤は、一つの主軸頭に複数の主軸を備え持つ、同時に複数箇所の加工が可能なボール盤です。主軸頭内で主軸の配置を変化できるようになっています。主に8~12軸程度のものが使用されていますが、30以上の軸を持つものもあります。 大量生産に向いており、複数箇所の穴あけを大量の材料に適用する場合などに効果的です。ただし、多数ある主軸の配置変更には時間が掛かるため、少量多品種生産には適していません。 汎用の機種は少なく、特定の製品の専用機として製造され、生産ラインの特定の作業に用いられることが多いボール盤です。 多頭ボール盤 引用元:India | suppliers | manufacturers | Machinery「Gang Drilling Machine」Eifco Machine Tools 多軸ボール盤は、多軸ボール盤と対照的に、一つの主軸を持つ複数の主軸頭を備えたボール盤です。複数の主軸頭で共通のテーブルを使用し、一つの工作物を各主軸頭の直下に順次動かしていくことで、穴あけやねじ切り、座ぐりなど、複数種類の加工を順番に実行できるようにしています。 深穴ボール盤 引用元:「ガンドリル加工とBTA加工の違い」株式会社不二新製作所 深穴ボール盤は、他種のボール盤よりも狭く深い穴を加工する場合に用いられるボール盤です。深穴加工機やガンドリルマシンとも呼ばれ、もともとは、小銃や猟銃などの銃身の穴あけのために開発された工作機械です。 ガンドリルやBTA工具と呼ばれる専用工具を使用し、ドリルを横に向け、ドリルの先端に空いた穴から切削油を供給しながら深穴加工を行います(上図参照)。深穴加工とは、穴の深さが直径の10倍を超える穴あけ加工のことですが、近年では、口径0.5mm以下の穴でも深さが50mm(0.5mmの100倍)程度まで加工可能なガンドリルが数多く登場しています。 精度の要求が高いシリンダーやスピンドル、自動車のクランクシャフトなどにおいて深穴加工の需要は多く、深穴加工機は、自動車や航空機、情報家電などの薄型化・軽量化が進む部品の加工などでも用いられるようになっています。 タレットボール盤 引用元:Product list > Machining Center「Self-Unit V6: #30 Turret/Vertical Compact Machining Unit」SUGINO MACHINE LIMITED タレットボール盤は、複数の切削工具を取り付けられるタレットと呼ばれる回転式の刃物台を備え持つボール盤です。タレットに複数種の工具を予め装着しておくことで、工具交換に掛かる時間を短縮することができます。 例えば、タレットにドリルとタップ、面取りカッターを装着しておけば、穴あけ加工、ねじ切り加工、穴の面取り加工を連続的に実行できます。 NCボール盤 NCボール盤は、NC(数値制御)によって自動的に穴あけ加工などを実行できるボール盤です。最近では、コンピュータを通してNCの設定が可能なCNCボール盤も存在します。 NCボール盤では、加工穴の位置や深さなどを予めプログラムしておくことで、自動的な加工が可能となります。主軸の移動もプログラムすることが可能であることから、複数箇所の連続的な加工も自動化できます。自動送り装置と組み合わせれば、ボール盤による加工を完全に自動化した生産ラインの一工程とすることも可能です。 量産化や工数削減などによるコスト低減のほか、作業員の怪我防止や品質の安定化などのメリットがあります。しかし、導入費用が高かったり、NCのプログラム技術や加工ノウハウが必要となったりするなどのデメリットもあります。 ボール盤でできる加工 ボール盤は、主軸に装着する切削工具を交換することで、多様な加工が可能です。ここでは、ボール盤でできる代表的な加工方法についてご紹介します。 穴あけ加工 穴あけ加工は、ドリルによって円筒形状の穴をあけるという、ボール盤の最も基本的な加工方法です。貫通させる場合(通り穴・貫通穴)もあれば、設定した深さで止める場合(止まり穴)もあります。通常、側面の溝にねじれがあるツイストドリル(上図参照)が用いられます。 穴あけ加工は通常、以下の手順で行います。 1. 穴のセンタリング(位置決め)を行う 2. 下穴をあける(ドリルによる穴あけ加工) 3. 穴の用途に応じて、下穴へ中ぐり加工やリーマ加工、ねじ切り加工、座ぐり加工などを施す 穴あけ加工の前に、まず、実行されるのが穴の中心に窪みなどの位置決め穴をあけるセンタリングです。センタリングは、センターポンチなどのケガキ工具やセンタードリル・リーディングドリルなどの切削工具を用いて行われます。位置決め穴をあける理由は、加工穴の精度確保のためでもありますが、位置決め穴がないとドリルの先端がブレて中心がズレてしまうことがあるからです。ただし、近年、ドリルの性能が向上したことにより、位置決め穴がなくても、十分な精度の穴あけ加工が可能となっています。しかし、高精度な穴あけ加工が要求されている場合には、やはりセンタリングが必須です。 センタリングの後、ドリルを使用して穴をあけます。しかし、ドリルによってあけられる穴の口径は限られます。また、ドリルによる加工穴は、加工面が粗く、精度も十分ではありません。そのため、穴の用途に応じて、さらに中ぐりやリーマなどの加工が施されます。 リーマ加工 引用元:工具の通販モノタロウ > 切削工具の基礎講座「6-4リーマ」株式会社MonotaRO(ものたろう) リーマ加工は、穴の寸法精度を高めたり、穴の内面を滑らかに仕上げたりするために、ドリルであけた穴の内側を薄く削る加工方法です(上図参照)。リーマと呼ばれる切削工具が用いられます。リーマ加工の前にあけた下穴は、リーマの直径から0.1mm~1.0mm程度小さい口径としますが、ドリル径が足りない場合は、リーマ加工の前に中ぐり加工を施して口径を広げます。 リーマは、円筒形状の切れ刃などを備えた本体にシャンクが付いたような構造をしており、円筒側面の先端から、切れ刃、切れ刃に続いてマージンと呼ばれる部位があります。切れ刃は穴の内面を削って寸法精度を高め、マージンは穴の内面を潰すことで表面を滑らかにする役割を担います。 リーマ加工は、精密性を要する作業であるため、主軸の振れやチャックのガタツキなどに注意する必要があります。工作物の水平が取れているかを確認することも重要です。 参考:リーマー(リーマ)の種類、サイズ、下穴径と深さ、ドリルとの違い ねじ切り加工 引用元:製品情報 > タッピンねじ > タップレス「ITM」イワタボルト株式会社 ねじ切り加工は、ドリルであけた穴の内側に、タップと呼ばれる切削工具で、ボルトなどを通すための雌ネジのネジ山を形成する加工方法です。タップ立てやタッピングとも呼ばれます。 タップは、上図中央図に見られるように、側面にネジ山のような鋭利な山が連続的に連なった構造を持ちます。ポイントタップなどの通り穴用とスパイラルタップなどの止まり穴用があり、止まり穴用には、切り屑を排出するための溝があります。 ボール盤でねじ切り加工を行う場合、穴に形成するネジ山の間隔が決まっているので、自動送りによってタップを送ってねじ切りを行います。 ボール盤をタップと工作物の固定具にして、手動でねじ切りを行うこともあります。その場合、まず、タップハンドルと呼ばれる手動工具にタップを取り付け、タップはボール盤に固定された工作物の下穴に合わせます。次に、ボール盤の主軸にセンタと呼ばれる支持具を取り付け、センタをタップの柄のセンタ穴に合わせてタップを保持します(下図参照)。この状態でタップハンドルを回しながらセンタを手動で下方に送ると、タップの曲がりを心配することなく、ねじ切りを行うことができます。 引用元:工具の通販モノタロウ > 加工現場の手仕上げ作業の勘どころ「8-2タップおよびダイスによるねじ立て作業」株式会社MonotaRO(ものたろう) 中ぐり加工 引用元:工具の通販モノタロウ > 切削工具の基礎講座「6-4リーマ」株式会社MonotaRO(ものたろう) 中ぐり加工は、ドリルであけた穴をさらにくり抜いて内径を削り広げる加工方法です。中ぐりバイトと呼ばれる切削工具が用いられます(上図参照)。 中ぐりバイトは、上図のような構造で、先端に備えた超硬合金などから成るチップによって穴の内面を削り出します。チップは通常、交換が可能となっています。 中ぐり加工を止まり穴に適用する場合、切り屑が内部に溜まりやすく、切り屑によって穴の内面がキズつきやすくなっています。定期的に加工を止め、切り屑を排出する必要があります。また、工具が穴の底に強く当たると、欠けなどの原因となるので、穴の深さに余裕を設けるか、工具をゆっくり送るようにしましょう。 座ぐり加工 座ぐり加工は、座ぐり穴を形成するための加工方法です。座ぐりとは、ネジやボルトを締めたとき、それらの頭部が工作物表面の下に沈み込むように、ネジ穴の周辺を凹形状に加工することです。そのネジ穴の周囲にあけた穴が座ぐり穴で、上図に見られるような、座ぐりカッターや後述する座ぐりドリルと呼ばれる特殊なドリルで形成されます。 座ぐり穴にネジ・ボルトを締めると、工作物表面のネジ頭部による出っ張りがなくなり、表面は平らな仕上がりとなります。それによって、美観が良好になるほか、製品をキズつけたり、作業員が引っ掛けたりすることもなくなります。 参考:ザグリの基礎!キリとの違いや関係性、深ザグリについて解説! ボール盤で使われるドリルの種類 ボール盤では、様々な種類のドリルが用いられ、ドリルを使い分けることで、多様な形状の穴の加工を実現しています。ここでは、上記でも触れたツイストドリルと座ぐりドリル、センタードリルについて説明します。 ツイストドリル ツイストドリルは、側面の溝にねじれがある、上図のようなドリルのことです。単にドリルと言う場合、ツイストドリルを指します。 溝のねじれは、ドリルの先端で生じた切り屑をシャンク側に送る役割があり、穴あけ加工の際には、このねじれた溝を通って切り屑が排出されます。また、ねじれは、先端の切れ刃と繋がっており、切れ刃の傾きでもあります。つまり、ねじれ角(下図参照)が大きいほど、切れ刃が鋭利になるとともに、より鋭い角度で工作物表面に入ることになります。それにより、切れ味が良くなって、その結果、切削抵抗も小さくなります。しかし、切れ刃の強度は低下するため、切れ刃に欠けやチッピングが起こりやすくなります。 溝にねじれがない直刃ドリルと呼ばれるものもあります。直刃ドリルは、ツイストドリルに比べて、切れ味は劣りますが、切れ刃の強度は高く、硬い素材の加工や傾斜に対する穴あけ加工に用いられます。 上述したように、ドリルによる穴あけ加工の前には、穴の中心に窪みなどを付けることが推奨されますが、その理由の一つに、ドリルの先端にあるチゼルエッジと呼ばれる切れ刃のない部位の存在が挙げられます(下図左図参照)。チゼルエッジはドリルの剛性を左右するウェブ(ドリルの芯)が先端に表出したものですが、最近のドリルでは、このチゼルエッジを切れ刃に加工するシンニングが施されているドリルがあります(下図右図参照)。このシンニングによって、ドリルは穴あけ開始時の工作物表面への食い付きが良くなり、場合によっては位置決めの窪みも不要となります。 引用元:ダウンロード > メールマガジン「2021年1月号 (第181号)」オーエスジー株式会社 座ぐりドリル 座ぐりドリルは、穴あけ加工と座ぐり加工を同時に実行できる、上図のようなドリルのことです。 その寸法は、ネジやドリルの規格に合わせたものがほとんどであり、先に付いているドリルの直径はネジ・ボルトの呼び径より少し小さく、中央の座ぐり刃の直径はネジ・ボルトの外径より少し大きくなっています。 ただし、ネジ・ドリルを締めるには、さらにタップによるねじ切り加工が必要です。 センタードリル センタードリルは、先端に細いドリル、その細いドリルに続いて、さらに円錐状のドリルを備え持つ、上図のようなドリルのことです。センター穴と呼ばれる、工作物の端の中心にあけられる、センターを差し込んで工作物を支持するための穴の加工に用いられます。 センター穴加工以外にも、先端のドリルのみでセンタリングや薄板の穴あけ加工を行ったり、円錐状のドリルで穴の面取り加工(下図参照)を行ったりと多様な使い方ができるドリルです。 特に、センタードリルは剛性が高いため、位置決めの窪みなしでも工作物表面を滑ってしまうことが少なく、穴あけのセンタリングに有効です。 また、センタードリルの円錐状のドリルは、60°や75°、90°の角度を持ちますが、90°のものであれば、皿頭ネジの頭部の角度(90°)と一致するため、センタードリルを皿モミ加工に使用することができるでしょう。 フライス盤・旋盤との違い ボール盤とフライス盤、旋盤は、共に材料を削り出して所要の形状に成形する切削加工を行うための工作機械です。しかし、ボール盤とフライス盤が転削加工を行うための機械である一方、旋盤は、旋削加工を行うための機械であるという違いがあります。 ・転削加工…回転させた工具を固定した材料に当てることで、材料を削り出す加工方法。 ・旋削加工…回転させた材料に固定した工具を当て、工具の位置を送り装置で調節することで、材料を削り出す加工方法。 転削加工を行うための加工機械であるボール盤とフライス盤ですが、これらの機械は、加工するときの工具の送り方向が異なります。ボール盤は、水平面内で工具の位置を合わせた後、工具を鉛直下方に送ることで加工します。その一方、フライス盤は、3次元空間内で工具の位置を合わせた後、工具を前後、左右、及び上下に送ることで加工します。つまり、フライス盤は、ボール盤の機能を兼ねることが可能です。 しかし、フライス盤では、ボール盤のように、材料をペンチで掴んで穴あけをするといった手軽な取り扱いはできず、工具を手動で大きく(速く)送るようなこともできません。また、ボール盤に比べて、工具交換に時間が掛かります。つまり、穴あけ加工を実行するならば、ボール盤の方がフライス盤より効率的であるということです。 参考:フライス加工について専門家が解説!加工の種類・加工機の種類がこの1記事でわかります! 参考:旋盤加工について専門家が解説!加工の種類・加工機の種類がこの1記事でわかります! 以上で述べたことにそのほかの情報を加えて、ボール盤とフライス盤、旋盤の違いをまとめると下表のようになります。 ボール盤 フライス盤 旋盤 加工方法 転削 転削 旋削 工具の送り方向 上下 前後 左右 上下 前後 左右 材料の動作 固定 固定 軸を中心に回転 使用工具 各種ドリル リーマ タップ 中ぐりバイト カウンターシンク 面取りカッター 正面フライス 溝フライス 平フライス 側フライス エンドミル ドリル サイドカッター 片刃バイト 剣バイト 突切りバイト ねじ切りバイト 中ぐりバイト ドリル 実行可能な加工方法 穴あけ加工 リーマ加工 ねじ切り加工 中ぐり加工 座ぐり加工 外形加工 側面加工 曲面加工 溝加工 段差加工 穴あけ加工 中ぐり加工 外径加工 内径加工 端面加工 ねじ切り加工 穴あけ加工 突切り加工 テーパー加工 精密性 普通とする 高い 高い

  • 【ステンレスの切削加工】工具選定や切削条件、加工時のポイント

    今回はステンレスの種類・特徴や切削加工時の工具選定などのポイントについて解説します。 ステンレスはサビにくく、強度も備えた材料です。その優れた性質から、さまざまな用途で採用されています。しかし難削材とも呼ばれる材料で、被削性に乏しい特徴もあります。 ステンレスの鋼種はJIS規格に記載されているものだけでも豊富にあるほか、メーカーによっては独自で開発した鋼種まであります。鋼種の違いによって特性に違いがあり、それぞれに適した用途で使い分けられます。 ステンレスの切削加工が難しいと言われる理由 ステンレスは耐食性や強度に優れている一方で、難削材とも言われる鋼材です。 その理由は、一般的な鋼に比べて熱伝導性が低いことと、加工硬化が発生しやすい点にあります。熱伝導性が低いと切削加工を行った際に刃先に熱が集中し、切粉が逃げにくくなります。また、熱が溜まった刃物は破損しやすくなってしまいます。 加工硬化とは、金属に負荷をかけると金属が硬くなる現象のことで、ステンレスの切削加工においては、適切な刃物や切削条件を選ぶ必要があります。 参考:加工硬化とはどんな現象?仕組み・影響・扱い方をご紹介! ステンレスの切削加工の工具選定 ステンレスを切削する際の工具材質は、耐摩耗性に優れたコーティング付き超硬合金製のものが有効です。 工具の形状については、エンドミルの場合、強ねじれ刃が熱による負担を軽減できます。剛性があり、刃にかかる負担が少ない多刃やポジティブすくい角などの形状も効果的です。 ドリルで穴あけ加工を行う場合は、ねじれ角が途中で変化したデュアルリードドリルが有効です。デュアルリードドリルを用いることで、切粉の排出性と剛性を両立できます。 ステンレスを切削加工する際のポイント ステンレスは切削加工で一定以上の負荷がかかると硬化してしまう特性があるので、温度が高くなりすぎないようにクーラントを必要とします。クーラントは切削箇所にエアーを供給するので十分ですが、仕上げ切削では、切れ刃の逃げ面側にオイルミストを供給すると、逃げ面の摩耗を抑えられ、切削面精度と工具寿命の向上が期待できます。 エンドミルでステンレスを切削加工する際は、切込み量を少なめ、送り量(mm/刃)を多く設定するのがポイントです。 参考:切削油(クーラント液)の種類、成分、メリット・デメリット ステンレスの種類と特徴 オーステナイト系 オーステナイト系のステンレスは、18クロム-8ニッケルのSUS304が代表的です。延性と靭性に優れており、深絞りや曲げ加工などの冷間加工性や溶接性も良好です。耐食性にも優れた材料なので、幅広い用途で採用されています。製造量は全ステンレスのなかでも多く、薄板・厚板・棒・管・線など、形状も全般的にラインナップされています。 オーステナイト系ステンレスの切削加工については、粘り気があり、加工硬化を起こしやすいことから適していません。 参考:オーステナイト系ステンレス鋼の基礎知識まとめ フェライト系 フェライト系のステンレスは、18クロム系のSUS430が代表的です。 熱処理により硬化することが少なく、主に焼なまし状態で使われています。マルテンサイト系よりも成形加工性・耐食性が優れており、溶接性も乏しくないことから、厨房用品や建築内装、自動車部品などの一般耐食用として採用されています。形状は主に薄板や線がラインナップされています。 フェライト系ステンレスの切削加工は、オーステナイト系に比べて加工硬化しにくく、加工変態(オーステナイトがマルテンサイトに変化すること)も起こらないため、加工難度は低い傾向にあります。 参考:フェライト系ステンレス鋼の基礎知識まとめ 二相系 二相系のステンレスは、オーステナイトとフェライトの2つの金属組織をもちます。 物理的性質については、オーステナイトとフェライトの中間になります。耐海水性と耐応力腐食割れ性に優れているほか、強度も良好です。これらの特性から、海水や工業用水を用いるポンプなどに利用されています。二相系の形状は、主に厚板や管、鋳物が代表的です。 二相系ステンレスは、オーステナイト系に匹敵する加工硬化性を示すため、難削材に該当します。 参考:二相系(オーステナイト・フェライト系)ステンレス鋼の基礎知識まとめ マルテンサイト系 マルテンサイト系のステンレスは、13クロム系のSUS403・SUS410が代表的です。 マルテンサイト系は焼入れにて硬化し、成分と熱処理条件を選ぶことで、さまざまな性質が得られます。フェライト系とオーステナイト系よりも乏しいものの耐食性もあります。そのほかに、耐熱性や耐酸化性に優れているのも特徴です。用途は高強度・耐食性・耐熱性を要する機械構造用部品が挙げられます。 マルテンサイト系ステンレスの形状は、主に棒鋼や平鋼で使われていることがほとんどです。 マルテンサイト系は硬くて加工しにくいため、焼きなましをしてから加工を行うのが一般的です。焼きなまし状態では、フェライト系と同等の被削性になります。 参考:マルテンサイト系ステンレス鋼の基礎知識まとめ Mitsuriではステンレスの切削加工品をWEB上で見積・発注できるサービスを提供しております。部品調達でお困りの方は下記のボタンから加工できる工場に直接依頼できます。

  • 汎用旋盤(普通旋盤)の基礎|旋盤加工の概要、NC旋盤についても併せてご紹介!

    旋盤とは、金属加工で用いられる主要な工作機械の一つです。大根のかつら剥きのように、回転させた素材に刃物を押し当て、不要な部分を取り除き、目的の形状を削り出していく機械のことを指します。 旋盤には、コンピュータ制御によるものなど、様々な種類がありますが、手動で操作する汎用旋盤も製品によってはメリットが多く、まだまだ現役で使用されています。 そこで、今回の記事では、汎用旋盤の基礎的な知識やメリット・デメリットについて説明していきます。旋盤加工の概要、汎用旋盤のNC旋盤との違いについても併せてご紹介しますので、ぜひご覧ください。 汎用旋盤と旋盤加工の概要 汎用旋盤は、旋盤加工に用いられる工作機械です。旋盤加工機には、NC旋盤やタレット旋盤など、いくつかの種類がありますが、特に手動で操作する、標準的な構造を持った旋盤のことを汎用旋盤と言います。 単に「旋盤」と言う場合には、汎用旋盤を指すことが多く、また汎用旋盤を「普通旋盤」と呼ぶこともあります。 旋盤加工は「削る」ことを主眼においた加工 旋盤加工とは、材料を削ることで加工を行う切削加工の一種です。回転させた材料に「バイト」と呼ばれる切削工具を当てて材料の一部を削り取り、目的の形状を削り出していく加工方法のことを指します。 旋盤加工では、このバイトを加工法に合わせて交換することで様々な形状が加工可能となります。材料の外周を円形や先細形状(テーパ)に加工する、材料に内側からバイトを当てて内径を加工する、溝を掘り進めて材料の一部を切断するなど、専用バイトを使用することで多様な形状を実現することができます。 旋盤加工では、回転している材料を削るため、多くの場合材料には円形断面の棒材を用いています。しかし、材料を固定する「チャック」を変えることにより、四角形状の材料や、より歪な形状の材料も加工可能です。なお、下の写真は、4つの爪を持つチャックに四角形状の材料を固定したものです。 また、加工後の形状が回転軸に対して対称となるため、完成品の形状も円筒や円錐、皿形といった対称形になります。ただし、材料を脱着するなどして、材料の回転軸を変えて削れば、より複雑な形状に加工することが可能です。 汎用旋盤は手動で行う旋盤加工機 引用元:機械設計エンジニアの基礎知識 旋盤加工に使用される旋盤加工機の中でも、バイトの移動を「手動」で行うのが汎用旋盤です。 汎用旋盤では、上図のように、バイトの土台にハンドルやレバーなどが存在し、これらを手動操作することでバイトの位置を決定します。このバイトを動かし、固定位置で回転している材料に当てることで、材料を削っていきます。 なお、上図中のバイトの右方にある装置は、「心(芯)押し台」と呼ばれるものです。心押し台により、材料の回転中心を押して支えたり(下図参照)、ドリルやリーマなどを取り付けて穴加工を行ったりすることが可能となります。また、材料の回転中心を決定する「心出し」にも利用可能です。 引用元:国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所 プログラムを利用するNC旋盤加工機との違い 手動で操作する汎用旋盤に対し、予めプログラムした手順通りにバイトを動かし、「自動」で加工していく旋盤加工機がNC旋盤です。 NC旋盤では、縦・横・高さの座標軸を設定してバイトの位置を数値に落とし込み、バイトの移動を機械が制御します。本体付属の操作パネルに数値を入力して操作するのが一般的ですが、現在では、コンピュータに接続して操作するNC旋盤もあります。そのようなNC旋盤は、特に「CNC旋盤」と呼ばれます。 NC旋盤では、プログラムを設定して材料をセットすれば、旋盤加工を全自動で行うことができます。この点、機械に張り付き、手作業で一つ一つ加工していく汎用旋盤とは異なります。また、加工は機械的に行われるため、作業員の技術や調子に依存することなく、高精度の加工を安定して行うことが可能です。 しかし、その一方で、汎用旋盤の場合にはない、事前のプログラム作成という工程が必要となります。そのため、NC旋盤は、特注品の製造には向いておらず、製品のロット数が少ない場合には、汎用旋盤よりも工数や全体としての製造時間が長くなることがあります。また、追加工などへの対応にも、その都度、プログラム作成が必要となることに注意が必要です。 とは言え、NC旋盤のプログラム作成には、バイトの送り量や材料への切り込み量、バイト交換のタイミングなど、汎用旋盤において手作業で行っていた全ての作業手順と操作をプログラムに落とし込まなければなりません。そのため、汎用旋盤は、作業者の技術教育のために現在でも重要な機械であり続けています。 参考:NC旋盤加工とは?NC旋盤加工の構成や工場もご紹介! 汎用旋盤のメリット・デメリット 汎用旋盤 メリット ・試作品や特注品の加工に向いている ・変更や修正、追加工が用意 ・バイト交換時における補正が不要 ・切り屑の状況や削った感触などが分かる 汎用旋盤 デメリット ・作業者の技術によって作業品質が変わる ・作業員が機械に張り付いている必要がある ・大量生産に向かない ・安全面に注意が必要 汎用旋盤のメリット①単品や試作品の加工に向いている 汎用旋盤では、NC旋盤では必要なプログラム作成の工程がないので、設計図さえあればすぐに加工を開始することができます。そのため、単品や特注品の加工に向いています。また、製造手順が定まっていなかったり、製作しながら微調整を繰り返したりする試作品の加工にも向いています。 汎用旋盤のメリット②変更や修正、追加工が容易 汎用旋盤では、一つ一つの加工を全て手作業で行います。そのため、変更があれば、その箇所の加工を変えれば良く、間違いなどがあれば、すぐに修正することができます。その点、NC旋盤を使用する場合には、加工終了までは間違い等を発見するのが難しく、発見しても変更・修正にプログラムの修正が必要となります。 追加工についても、追加工用の手順を加えれば良いだけで、容易に対応することができます。一方、NC旋盤では、追加工用のプログラム作成が必要となります。 汎用旋盤のメリット③バイト交換時における補正が不要 汎用旋盤では、目視しながら加工を行うので、バイトが摩耗した場合でも切り込み量などを調整することで問題なく加工を行うことができます。そのため、バイト交換によって、バイトのサイズが変わった場合でも手動による補正で対応可能です。 しかし、NC旋盤を使用する場合には、バイト交換やバイトの摩耗に合わせて、送り量や切り込み量などの補正値をプログラムに反映する必要があります。ただし、最近のNC旋盤では、このバイト交換に必要となる位置確認とプログラムへの補正値反映を自動で行う機能を持つものが多くなっています。そのため、むしろ汎用旋盤において手作業で行う方が実は手間になっているという側面もあります。 とは言え、超高精度な製品を製造する上では、このような補正調整作業も高度な技術を持つ作業者の手の感覚には敵わない部分があります。 汎用旋盤のメリット④切り屑の状況や削った感触などが分かる 機械に張り付き、手作業で加工を行うので、切り屑の状況や削った感触などをリアルタイムに知ることができます。切り屑がバイトなどに絡まった場合でもすぐに分かりますし、削った感触からバイトの状態などを知ることが可能です。そのため、切り屑が絡まった場合には除去する、バイトが切れなくなった場合には交換するなどの対応をすぐに取ることができます。 汎用旋盤のデメリット①作業者の技術によって作業品質が変わる 手作業で加工を行うため、作業者の技術によって品質や作業スピードに差異が生じてしまいます。 汎用旋盤のデメリット②作業員が機械に張り付いている必要がある 加工の全行程において作業員の手を必要とするため、その分の工数がかかります。 汎用旋盤のデメリット③大量生産に向かない 製品一つ一つに対し、加工はもちろん、バイト交換なども全て手作業で行うため、大量生産には向いていません。 汎用旋盤のデメリット④安全面に注意が必要 汎用旋盤加工の作業員は、常に機械に触っている状態にあります。そのため、作業員の安全面については十分な注意が必要です。重要な注意事項としては、以下のような点が挙げられます。 汎用旋盤 注意事項 ・チャックハンドル(材料・工具をチャックに固定するための工具)は付けたままにしない ・バイト交換や材料の測定は機械を停止してから行う ・材料の固定や工具の取り付けは確実に行う ・繊維が引っかかることがあるので、軍手はつけない 汎用旋盤で対応できる加工 汎用旋盤では、以下のような加工方法に対応することができます。 汎用旋盤で対応できる加工 外径加工 外周に対する加工方法 内径加工 材料に空いた穴の内周に対する加工方法 端面加工 材料の端面を削り、全長を短くする加工方法 溝入れ加工 外周に溝を入れる加工方法 突切り加工 溝入れ加工の溝を深くしていき、切断する加工方法 ねじ切り加工 雄ネジや雌ネジのネジ山を成形する加工方法 穴あけ加工 材料の回転中心に穴を空ける加工方法 テーパ加工 円錐など円周が変化していく形状の加工方法 ローレット加工 外周に凹凸を付ける加工方法 参考:旋盤加工について専門家が解説!加工の種類・加工機の種類がこの1記事でわかります! ただし、ねじ切り加工やテーパ加工を精度良く行うには、バイトの送り速度を一定にする「自動送り」という機能を使用する必要があります。その場合においても、加工形状に合わせた送り速度の計算や調整が必要です。そのため、ねじ切り加工やテーパ加工、また曲面を含む形状の加工には、NC旋盤が向いています。 下の写真は、汎用旋盤による加工事例で、外径・内径加工を施した後、内側に70個の溝入れ加工を施したものです。 汎用旋盤は、手動で操作する旋盤であり、大量生産には向かない工作機械です。しかし、一点物や試作品の製造を得意としており、まだまだ活躍の場はたくさんあります。 また、製作する製品によっては汎用旋盤の取り扱いを得意とする業者にご依頼するのも、製品の複雑性が増し、多品種少量生産が台頭している現在においては、メリットが多いのではないでしょうか。 Mitsuriは、日本全国250社以上の業者と提携しています。そのため、お客様のご要望に合わせた業者をご紹介できます。お見積りは複数社から可能です!旋盤加工でお困りの際は、ぜひMitsuriにご相談ください。

  • フェイスミル(正面フライス)について解説!加工機の選び方についても解説

    「フェイスミルとは何か」「フェイスミルの特徴について知りたい」……このような悩みをお持ちの方は必見です。 フェイスミル(正面フライス)は、フライス加工で多く活用されている加工用の刃物工具です。加工機によりフェイスミルを回転させて、テーブルに固定した被加工材を切削していきます。その加工効率の良さから、工業製品を作るうえで必要不可欠な加工と言えるでしょう。金属加工の設計や、依頼をする際にもフェイスミルの知識を持っておくことで、製品化をスムーズに行えます。 そこで、本記事ではフェイスミルの特徴や、構造について知らない方向けに分かりやすく解説します。また、同じフライス加工で使用されている、加工用刃物工具の選び方についてもご紹介しますので、フェイスミルについて知識を得たい方は、ぜひ参考にしてみてください。 フェイスミル(正面フライス)とは 引用元:モノタロウ フェイスミルとは、別名「正面フライス」とも呼ばれており、フライス盤に使用される上写真に示したような切削工具のことを言います。フェイスミルを加工機に取り付け、高速回転させることで、被加工材を切削できるようになります。 上写真の右側が先端で、5箇所に取り付けられている刃を「チップ」と呼びます。上写真左側は、加工機とドッキングする部分になります。 フェイスミルは、主に平面加工・側面加工・段加工をする際に使用。一度に切削できる面積が広く、切削面も高い精度で加工できます。 しかし、刃を複数搭載しているぶん、刃の状態および角度の管理をきちんと行わなければなりません。刃の角度は「すくい角」と呼ばれており、この角度が変化することで、切れ味や切りくずの排出の仕方などが変化します。 フェイスミル(正面フライス)の構造 アキシャルレーキ 引用元:MISUMI アキシャルレーキとは、フェイスミルを側面から見たときの、チップのすくい角のこと。上図左はフェイスミルの半断面で、丸で囲まれた箇所がチップを表しています。 また、上図右は、チップの拡大図でチップを側面から見た「アキシャルレーキ角」とチップを上から見た「ラジアルレーキ角」を表しています。 上図右の「アキシャルレーキ角」と記述している箇所のように、フェイスミルを回転させた際に、刃先が先行する形を正(+)、刃先が遅れる形を負(-)のすくい角として見ます。この角度によって、切りくずの排出の方向や切削力は変化します。 アキシャルレーキのすくい角が正(+)のときは、切削性が良くなり、溶着も起きにくくなります。 ラジアルレーキ ラジアルレーキとは、フェイスミルの上側、もしくは裏側から見たときの、チップのすくい角のことです。イメージはアキシャルレーキの項目に添付した図を参照してください。被加工面に対して垂直方向の角度がアキシャルレーキ。フェイスミルの回転方向に対しての角度がラジアルレーキを意味します。 ラジアルレーキもアキシャルレーキと同様で、フェイスミルを回転させたときに、刃先が先行する形を正(+)、刃先が遅れる形を負(-)のすくい角として見ます。また、切りくずの排出方向や、切削力に変化がある点も同じです。ラジアルレーキは負(-)のすくい角のとき、切りくずの排出性が良くなります。 引用元:三菱マテリアル アキシャルレーキとラジアルレーキは上図のように、それぞれ正(+)と負(-)の組み合わせによって、加工しやすい材料が異なります。このように、被加工材に合わせて適切なフェイスミルを使うことが大切です。 チップポケット 引用元:astamuse 刃の先端近くにある隙間(上図6の箇所)を「チップポケット」と言います。チップポケットは、切りくずを排出しやすくするために設けられた隙間です。 ここでの「チップ」は切りくずのことを指しますが、チップの元々の意味である「小片」からすると、フェイスミルの刃も、切りくずも同じ「チップ」の意味を表しています。 フェイスミルは、刃の数が多いほど、刃と刃の間隔が短くなり、それに伴いチップポケットのスペースも狭くなります。チップポケットが狭いほど、切削時に発生する切りくずが排出されにくくなります。そのため、切りくずを多く排出する加工では、刃の枚数に注意して加工しなければなりません。 フェイスミル(正面フライス)の加工能率の上げ方 フェイスミルの加工能率を上げるには、刃の枚数が多いものを使いましょう。刃の枚数が多いほど、1回転あたりに削れる量が増えます。 また、1つのチップにかかる負担も軽減されるため、刃先の熱の発生も抑えられます。ただし、刃の枚数を増やすと刃と刃の間隔が狭くなり、切削の際に発生した切りくずが詰まりやすくなるといったデメリットもあります。 外径の大きいフェイスミルを使うと、広い範囲を加工できますが、そのぶん機械もパワーがあるものを必要とするので注意してください。 引用元:サンドビック株式会社 また、加工の仕方によっても、製品の仕上がりやチップの負担に変化があります。 上図左のように、チップの切込みと抜けを繰り返す加工方法だと、刃先に負担がかかるほか、びびりが発生しやすくなります。「びびり」とは、工具と被加工材の間に発生する振動のことで、発生すると仕上げ面に悪影響を及ぼします。しかし、上図右のように、チップを食いついた状態を維持しながら加工すれば、チップにかかる負担と、びびりの発生を軽減できます。 フェイスミル(正面フライス)と工作機械の選び方 切削加工では、フェイスミルのほかにエンドミル・溝フライス・平フライス等が使われています。ここでは、各々の加工用刃物工具の特徴や、どのような切削ができるかを解説します。 エンドミル 引用元:モノタロウ フェイスミルは広い範囲を削るのに適していますが、狭い範囲の加工には向きません。このとき役に立つのがエンドミルです。 エンドミルは、上図に示すようにドリルのような見た目で、工具端部の外周に2枚から4枚程度の刃が付いています。ドリルは軸方向に動かして穴を開けますが、エンドミルは、軸に対して水平方向に動かして切削します。エンドミルは細い形状のため、細かな箇所を削るのに最適。平面加工・側面加工・段加工のほかにも、溝加工や穴加工といった幅広い加工に対応できます。 エンドミルは、太さや長さだけでなく、刃の数や刃の形状など、種類が豊富にありますが、被加工材の材質や精度に合わせて、工具を使い分けなければなりません。 エンドミルは刃の枚数が少ないものだと、刃と刃の間隔は広く、切りくずの排出性は良好です。しかし、芯が細めのため、折れやすい傾向に。一方、刃の枚数が多いと、刃と刃の間隔が狭くなるので、切りくずの排出性に劣りますが、芯は太いため折れにくい傾向にあります。 このことから、大きな切りくずが発生する場合や荒加工では刃数が少ないものを、仕上げ面に高い精度を必要とする場合は刃数の多いものを使います。 溝フライス 引用元:サンドビック株式会社 エンドミルで溝加工は可能ですが、効率よく溝を付けたいのであれば、溝フライスを用います。溝フライスは、円盤のような形状で、外周に多数の刃を搭載。加工スピードが早いため、大量の製品を加工する場合や、深い溝をつけるのに適しています。また、切りくずの排出性と剛性に優れていることから、高い精度で仕上げられるほか、刃物のトラブルも比較的少ないのが特徴です。 平フライス 平フライスは、横型フライス盤を使って平面を削る加工用刃物工具のこと。外周に刃を持ち、回転軸に平行な面を切削できます。平フライスは加工範囲が広いため、切削効率は良好です。しかし、フェイスミルと比べて精度が劣るため、荒削りでの使用や精度を必要としない製品の加工として採用されています。 参考記事 各種のフライス加工については、以下の記事でも詳しく解説しているので、気になる方はぜひチェックしてみてください。 ⇒フライス加工について専門家が解説!加工の種類・加工機の種類がこの1記事でわかります! フェイスミル(正面フライス)についてのまとめ 今回はフェイスミル(正面フライス)について解説しましたが、いかがでしたでしょうか。 フェイスミルは平面を削る加工用刃物工具のことを言い、加工範囲が広く、切削効率に優れているのが特徴です。刃の枚数が多いほど加工能率が高くなりますが、そのぶんサイズは大きくなり、重量も重くなるので、パワーのある工作機械を用いる必要があります。 また、加工する製品の特徴や材質に合わせて、高い精度かつ、生産性を高めるためにも、適切なフェイスミルを選ぶことが大切です。 ぜひこの記事を参考にして、金属加工の依頼の際に役立ててください。

  • 旋盤加工(ターニング加工)のメリット・デメリット!図面記号に関しても解説

    旋盤加工(ターニング加工)には、水平方向の軸を中心に材料を回転させる通常の旋盤加工とは異なる、水平面内で回転するテーブルに材料を乗せて加工する縦旋盤加工があります。 縦旋盤加工は、航空機のエンジンや船舶の部品、発電所のタービンなどの巨大な部品の製作に用いられ、エネルギー効率を上げるために近年ますます需要が高まっています。 今回の記事では、通常の旋盤加工と縦旋盤加工を併せてご紹介すると共に、その違いについても解説してきます。ターニング加工のメリット・デメリットについても説明しますので、ぜひご覧ください。 旋盤加工(ターニング加工)とは 旋盤加工とは、旋盤やNC旋盤と呼ばれる工作機械を用いる加工法です。回転する工作物にバイトと呼ばれる刃物状の工具を当て、工具を送ることで切削します。なお、NC旋盤は、工具の移動距離や送り速度などを数値制御して、自動化した旋盤のことです。 工作物を回転させながら削るため、主に円筒形状の材料が加工対象となり、完成品の形状も回転対称となります。ただし、旋盤から工作物を一度取り外して再度取り付け、軸を変えて削れば、より複雑な形状に加工可能です。また、多軸旋盤では、工作物を取り外すことなく、複雑な形状を実現できます。 横旋盤加工と縦旋盤加工 旋盤加工は、工作物の回転軸の向きにより、横旋盤加工と縦旋盤加工に分けることができます。 横旋盤加工は、回転軸が水平方向の旋盤(普通旋盤)を用いる加工法で、旋盤加工と言われると普通こちらを指します。 一方、垂直方向の回転軸を持った旋盤を用いる方法が縦旋盤加工です。縦旋盤加工では、水平面内で回転するテーブルに工作物を取り付け、テーブルごと工作物を回転させます。これに、上下左右に移動できる工具を当てることで切削します。このような旋盤を縦旋盤や立旋盤などと呼び、これらの加工機を使用した加工法を縦旋盤加工や立旋盤加工、ターニングなどと呼ぶことがあります。 旋盤加工機について 普通旋盤は、主に以下のような部分から構成されています。 普通旋盤を構成している主要要素 主軸(チャック):工作物を固定して回転させる部分 心押し台:主軸の反対側から工作物を保持したり、穴あけ加工などができる工具を取り付けたりする部分 往復台:工具を工作物の軸方向に送る部分 送り台:往復台の上に置かれ、様々な方向に動かして工具を送る部分 刃物台:往復台の上に置かれ、工具を取り付ける部分 ベッド:往復台をスライドさせる部分 主軸の回転数や回転方向を変えたり、往復台や送り台を移動して工具を送ったり、往復台に取り付ける工具を交換したりすることで多様な形状を削り出せるようになっています。 下図では、緑色の部分が心押し台、赤色の部分が送り台と刃物台、青色の部分が往復台に当たります。 続いて、下図右上のタレット旋盤は、タレットと呼ばれる旋回式の刃物台が装着された旋盤です。タレットを旋回させることで工具を切り替えることが可能で、工具交換の時間を短縮することができます。 引用元:コトバンク 一方、縦旋盤は、主に以下のような部分から構成されます。 縦旋盤(上図中で立て旋盤と記載)を構成している主要要素 テーブル:工作物を取り付け回転させる部分 正面刃物台:工作物を保持するセンタを取り付けたり、穴あけ加工などができる工具を取り付けたりする部分 横刃物台:外径加工などができる工具を取り付ける部分 クロスレール:正面刃物台を水平方向にスライドさせる部分 コラム:クロスレールや横刃物台を垂直方向にスライドさせる部分 コラム上でクロスレールをスライドさせたり、クロスレール上で正面刃物台をスライドさせたりすることで、工具の位置決めと送りを行うことができます。また、横刃物台は、コラム上をスライドさせることで垂直方向に移動し、工具を送ることが可能です。 上図では、緑色の部分が正面刃物台、上部に配置された青色の部分がクロスレールです。正面刃物台とクロスレールの間の赤色の部分は、サドルと呼ばれる部品です。下部に配置されている赤色と青色の部分は、横刃物台に当たります。また、正面刃物台と横刃物台のそれぞれに矢印が描かれていますが、これは、これらの刃物台が工具の送り機能も備えていることを示しています。 Mitsuriでは、多様な旋盤加工機を保有しているメーカーをご紹介できます。幅広いニーズにお応えできますので、ぜひご相談ください。 ターニング記号 引用元:株式会社キーエンス 続いて、旋盤加工で用いられる図面記号について説明します。 まず、図面では、面(曲面を含む)について上図の3種類の記号があります。中央の図は加工する必要があることを示しますが、左の記号は加工してもしなくてもよく、右の記号は加工してはならないことを示します。左と右の記号は、素材の面をそのまま残す場合などに用いられる記号です。 加工を要する記号の場合、加工方法や加工による筋目の方向、加工面の粗さなどを以下のように記述します。 引用元:機械設計エンジニアの基礎知識 加工方法には、外丸削りや面削りなどの加工方法の名称をそのまま記述するか、もしくは以下の記号を記述します。 旋盤加工の加工方法の記号 旋削:L 外丸削り:L テーパ削り:LTP 面削り:LFC ねじ切り:LTH 突切り:LCT 心立て:LCN 逃げみぞ切り:LRC 丸み付け:LRN スカイビング仕上げ:LSK 皮むき:LSC 穴あけ:D リーマ仕上げ:DR タップ立て:DT 中ぐり:B 工作機械の種類の種類も示したいときは、加工方法の記号の後にハイフンを用いて以下の工作機械の種類を表す記号を続けます。 旋盤加工機の種類を表す記号 旋盤:L 普通旋盤:LE または L 卓上旋盤:LBN タレット旋盤:LT 倣い旋盤:LCO 自動旋盤:LA 縦旋盤:LV 例えば、縦旋盤で面削りを行う場合は、「LFC-LV」と記述します。 参考記事 そのほか、筋目方向や加工面の粗さなどについては、旋盤加工に限ったものではなく、以下のサイトに詳細がありますので、ぜひご参照ください。 ⇒除去加工について専門家が解説!【製品事例についても掲載】 旋盤加工(ターニング加工)の種類 旋盤加工には、図面記号をご紹介したときに挙げたような様々な加工方法あります。これらの加工法は、工具を交換することで実現できます。例えば、外丸削りには片刃バイトや真剣バイトなどが用いられますし、ねじ切りにはおねじ切りバイトやめねじ切りバイト、穴あけにはドリルなどが使用されます。 参考記事 旋盤加工の種類については、以下のサイトで詳しく解説していますのでご覧ください。 ⇒旋盤加工について専門家が解説!加工の種類・加工機の種類がこの1記事でわかります! ターニング加工のメリット 旋盤には、普通旋盤や縦旋盤など、数種類の加工機がありますが、これらを用いた加工方法にはどのような違いがあるのでしょうか。 普通旋盤などについて詳しく知りたい方は先ほどの参考記事をご参照ください。ここではまず、比較的まだ知られていない縦旋盤加工のメリットを説明していきます。 1.大型の製品の加工に有利 縦旋盤加工は、工作物の自重だけで回転テーブルに密着するので、大型の製品を安定して加工することができます。テーブルの大きさに収まる直径の工作物まで加工可能で、直径20mもの材料を加工できるものがあります。 また、普通旋盤のように、チャックで固定するわけではなく、テーブルに置いて安定させてから固定するため、大物の材料でも安心して着脱することができます。 大型部品を必要とする航空エンジンや発電用タービンなどの加工に引き合いがあります。 2.異形状の製品の加工に有利 異形状の製品の加工にも有利です。バランスの取りづらい形状でも、テーブルと製品の間にシムスペーサーなどを挟めば安定させることができます。 3.加工の精度が良い 重力方向を基準に工作物を固定できるため、重力や遠心力による振れが少なくなり、普通旋盤と比べて加工の精度が良くなります。 4.省スペース 加工機の平面的な大きさは、テーブルの大きさとほぼ同等の加工可能な最大のサイズとなるため、加工対象となる製品の大きさを考慮すると省スペースであると言えるでしょう。 ターニング加工のデメリット 一方で、縦旋盤加工のデメリットは、以下の3点が挙げられます。 1.長物の加工は苦手 長物の加工は、苦手としています。縦旋盤加工では、軸方向に長い加工物ほど、テーブルに設置した際に不安定となります。また、軸方向の工具の送りは、重力に反して行うためにエネルギーを必要とし、垂直方向の工具の移動範囲もそれほど大きくありません。 2.切り屑がはけにくい 加工時、普通旋盤であれば、切り屑は自然とはけてくれますが、縦旋盤ではそうはいきません。特に穴あけや中ぐりなどをするときは、穴に切り屑が溜まっていってしまうため、定期的な切り屑の排出が必要となります。 3.稼働率が悪い 機械が大きく、工作物も大きいものを対象とするため、工具の交換時間や工作物の着脱に時間がかかってしまいます。そのため、機械の稼働率は、どうしても普通旋盤より低くなります。 しかし、最近の縦旋盤では、工具交換に関しては、自動的に交換できたり、複数の工具を取り付け可能であったりするものが多くあります。 ターニング加工の見積りを依頼するならMitsuri 縦旋盤加工は、通常の旋盤加工に比べれば、それほど知られていない加工法です。ですが、その需要は安定的に存在しており、縦旋盤加工機も進化を続けています。コンピュータによる数値制御はもちろん、マシニングセンタの機能も備えた加工機も販売されており、大型かつ高精度な部品製造を実現しているメーカーもあります。 Mitsuriでしたら、最新の縦旋盤を保有し、高度な旋盤加工技術を要したメーカーをご紹介できます。 Mitsuriは、日本全国250社以上の協力企業と提携しており、複数社からの相見積りをご提供できます。 ターニング加工をご依頼したい方は、ぜひMitsuriにお申し付けください!

  • 旋盤加工について専門家が解説!加工の種類・加工機の種類がこの1記事でわかります!

    金属の製品を作るときに欠かせない製造方法でもある旋盤加工。 自動車や機械の部品はもちろん、調理器具やアウトドア用品など、私たちの身の回りにも旋盤加工によって作られた製品はたくさんあります。 旋盤加工はミクロン単位で精度を出すこともできる加工方法ですので、きっちりと寸法が決まっている製品を製作するときに検討したい製造方法でもあります。 そこで本記事では、旋盤加工における加工方法の種類から、加工機の種類まで細かくご紹介しますので、金属加工の方法をお探しであれば、ぜひ読み進めて行ってください! 旋盤加工とは 旋盤加工とは、バイトと呼ばれる切削工具を使用して対象物を削り取る切削加工の一種で、回転する対象物を固定したバイトによって削り取る加工方法のことをそう呼んでいます。 反対に対象物を固定し、回転する切削工具を使って削り取る加工方法のことを「フライス加工」と呼びます。 参考記事 切削加工の種類については以下の記事で詳しく解説していますので、ご覧ください。 ⇒切削加工の種類【専門家が解説】フライス加工、旋盤加工について詳細をお伝えします! 旋盤加工は、加工物を回転する爪に固定するため、丸物の製品を作ることができます。対象物が回転し、ブレることなく製品を作り出せますので、寸法精度が出しやすいという特徴があります。 旋盤を構成している主な部品 主軸(チャック)・・・工作物を固定し、回転させる部分 心押し台・・・工作物を反対側から保持する部分 往復台・・・工具を水平に移動させる部分 ベッド・・・旋盤本体を構成し、往復台をスライドさせる部分 主軸の回転数や回転方向も任意で変えられ、加工したい形状や材料によって切削工具も自由に交換できるようになっています。 そのため様々な加工方法を組み合わせることで、より複雑な形状の製品を作り出せます。 旋盤加工の種類 旋盤加工は専用バイトに交換することによって、様々な形状に加工することができます。 ここでは、旋盤加工でよく用いられる代表的な以下五つの加工方法について順にご紹介します。 代表的な加工方法 外径加工 内径加工 ねじ切り加工 穴あけ加工 突切り加工 1.外径加工 回転している対象物に、外側からバイトを当てて外径を加工していく方法です。 りんごの皮むきのように、表面を綺麗に慣らす仕上げ加工に用いられたり、大きく削り落として任意の形状を成形したりと、最も多く用いられる方法です。 切削加工では必ず発生する「切りくず」は外側に飛ばされ、バイトに絡まってしまうこともあるため、注意が必要です。 切りくずがバイトに絡まると精度が狂う場合もありますので、あらかじめバイトの角度を調整し、切りくずが絡まらないように配慮する必要があります。 2.内径加工 回転している対象物に内側からバイトを当てて内径を加工する方法です。 加工距離に比例してバイトの長さも必要ですが、長い突き出し量のバイトは「たわみ」と「びびり」が発生しやすく、精度が狂いやすい特徴があります。 また、切りくずも内部に溜まりやすい特徴がありますので、頻繁に切りくずを除去しなければ、バイトの刃に詰まって切削できなくなります。 そのため刃の形状や加工速度を変え、切りくずが上手く加工物の外に排出されるような対策も講じられます。 3.ねじ切り加工 回転する対象物にバイトの刃を当て、ねじ山を作る加工のことを言います。 専用のバイトを付け替えることで、おねじとめねじ両方の加工が可能です。 おねじの製作…「おねじ切りバイト」を外側から当て、一定のスピードでバイトを送っていく めねじの製作…「めねじ切りバイト」を内側から当て、一定のスピードでバイトを送っていく ねじのピッチは等間隔であるため、バイトの移動は手送りで行うよりも、「自動送り機能」が用いられることが多いようです。 価格が安くなるねじ切り図面の書き方についてはこちら! 価格が安くなるねじ切り指示の書き方を解説しています! 20〜30%ほどの低減につながる可能性がございますのでぜひご覧ください! 合計8分ほどで視聴可能です! https://youtu.be/JNjOi0ZPUmM 【実は無駄だった!?】タップの指示で切削の見積もり金額こんなに変わるの? https://youtu.be/uKALkTgm1zs 【2分でわかる】高くなる穴加工【切削加工】 4.穴あけ加工 「ドリルチャック」と呼ばれるドリル刃を固定するための工具を用いて穴を開ける加工方法です。 回転する対象物に固定したドリル刃を押し当てて穴を開けます。 穴あけ加工は、内径加工を行う時に必要なバイトの刃が入るスペースを確保するために用いられたり、タップを切る下準備に行ったりと、様々な加工方法と組み合わせられます。 5.突切り加工 回転する対象物に外側から徐々にバイトを押し当て、不要な部分を切り落とす加工です。 陶芸などで最後に粘土から切り落とす工程と同じ方法で、加工面が綺麗に仕上がる特徴があります。 ただし突切りで使用するバイトは刃が細く、切断には手から伝わってくる振動や音などで確認しながら作業をしたりと、ある程度の技術が必要となります。 また、固い金属を切り落とす時は刃が折れないように工夫する必要があります。 例えば靱性(粘り)の高い刃を使用したり、回転数を落として切削油を給油しながら摩擦を小さくするなどの対策があります。 旋盤加工機について 一言で旋盤加工と言っても、たくさんの加工の種類があることがわかりました。 そのため、加工する材料の大きさや、作りたい製品の形状によって最適な加工機を選択する必要があります。 代表的な旋盤加工機は次の6種類があります。 代表的な旋盤加工機 汎用旋盤(普通旋盤) NC旋盤 卓上旋盤 正面旋盤 立旋盤 タレット旋盤 それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。 1.汎用旋盤(普通旋盤) 旋盤加工機の基本的な構造をしており、「旋盤」と言えばこちらを指すことが多いように思います。 工作物を主軸台で固定し、往復台上のバイトを押し当てて削ります。 心押し台にバイトやドリルチャックを取り付けたり、補助工具を組み合わせれば、様々な加工方法が行えます。 様々な加工方法ができる万能な旋盤のようにも見えますが、バイトの脱着を全て手作業で行わなければいけないため、加工に時間がかかる欠点があります。 そのため一つの製品に対して工数が必要な「試作品の製作」や、「オーダーメイド部品の製作」など、少量生産に使われることが多いようです。 2.NC旋盤 縦・横・高さの座標軸を設定し、あらかじめプログラムした手順通りにバイトを動かして自動的に加工する旋盤機です。 コンピュータによって制御管理を行うため、高精度な加工ができるのはもちろんですが、バイトの動きはサーボモーターで制御するため、正確かつ高速で製品を作り出すことができます。 一度材料をセットすれば、簡単に同じ製品を作ることができますので、大量生産の現場で活躍します。 また、加工物の材料や目的の形状に応じて回転速度やバイトを自由に調整できるため、急な形状変更にも迅速に対応できます。 近年工業製品の主流になりつつあるNC旋盤は、車や飛行機の部品をはじめ、ミシンや医療機器など、私たちの生活に関わる幅広い製品を製作しています。 3.卓上旋盤 基本的な構造は汎用旋盤と同じですが、別名「ベンチレース」とも呼ばれるくらいサイズが小さく、作業台の上にも設置できる特徴があります。 サイズ的にボルトの作成などと言った小物部品の加工が中心となります。 また、加工物を固定するチャック部分は、スクロールチャックからコレットチャックに変更すれば、薄肉の製品でも変形させず綺麗に加工できます。 汎用旋盤でも用いられるスクロールチャックを、コレットチャックに交換します。 コレットチャックを使用すれば、加工物をワンタッチで着脱できるため、作業効率が良く、大量生産の現場でも活躍します。さらに金属だけでなく、プラスチックなどの加工も可能であるため、汎用性が高い工作機械とも言えます。 置き場所の自由度も高いことから、個人で購入して設置することも可能ですので、最も手軽に使用できる旋盤機とも言えるでしょう。 4.正面旋盤 汎用旋盤の加工物固定部に面盤を取り付けた旋盤で、大きな製品でも加工することができます。 巨大な加工物をセットする時に精度が出しにくい欠点があるため、代わりに立旋盤の方が多く用いられます。 しかし正面旋盤は切りくずが下方に落ち、加工時に切りくずで傷を付けにくくなるため、立旋盤より連続加工がしやすいというメリットがあります。 5.立旋盤 一般的な旋盤は横向きで加工を行いますが、立旋盤は立向きで垂直方向に加工を行います。チャック部分は面盤になっており、比較的大きな製品でも加工ができます。 また、加工物を下方向に置いてセットするため、重量物や大きなものでも重力によって中心がズレることなく装着できます。 そのため汎用旋盤では加工できないような大型の製品を加工することもできます。 6.タレット旋盤 汎用旋盤でバイトや切削工具の脱着を行う時は、毎回付け替えをしなければいけませんでした。 しかしタレット旋盤では、心押し台の代わりに「タレット」と呼ばれる旋回式の刃物台が装着され、形状や材料によってタレットを回してワンタッチで刃物を変えることができます。 これによって複数の切削工具を使用して加工する時に、工具交換をせずに加工が行えますので、同一製品を複数作る時に活躍します。 現在では工具の交換やバイトの動きも自動で制御できるNC旋盤が普及してきたため、あまり目立たなくなってしまいましたが、試作部品や小ロットの製品を手作業で製作するシーンではまだまだ重宝される旋盤機です。 まとめ 旋盤加工の種類や、製作現場で多く使われる旋盤機についてご紹介しました。 旋盤加工で作られた製品は精度も高く、私たちの生活を支えている身近なものの中にもたくさん使用されています。旋盤加工は図面の読み方や工具の扱い方など、様々な専用知識が必要ですので、熟練した技術者でなければ加工ができません。また、NC旋盤などは特殊な数値制御も使用しているため、知識も持ち合わせていなければいけません。 そのため作りたい製品があっても、「旋盤加工で製作しよう」とすぐに決められないこともあると思います。 そんな時は是非Mitsuriをご活用ください! Mitsuriでは図面をアップロードすると、加工可能な登録工場が最適な加工で見積と加工を行います。図面をお持ちの方は下のボタンからご登録ください!

  • 切削加工の種類【専門家が解説】フライス加工、旋盤加工について詳細をお伝えします!

    皆さんは、切削加工をご存じでしょうか?金属加工メーカー等で働く人以外にはあまり聞きなれないものだと思います。 今回はそんな切削加工についてご紹介させて頂きます。切削加工とはどういう加工なのかという説明はもちろん、その種類まで詳しく紹介させていただくので、「切削加工ってなに?」と疑問に思っている方や興味のある方も是非、ご一読いただきたいと思います。 切削加工とは 切削とは、工具を用いて加工する対象物から、その一部を削り取る加工のことです。この場合、大きくは「切削」と「送り」という二つの動きが必要となります。 切削は対象物から一部を削り取る動きのことを言います。一方、送りとは工具を移動させて、ほかの部分の切削を可能にする動きのことです。 たとえば、ある一直線上で切削を行った後、工具を切削方向と垂直に送ることで、新たな面の切削が可能となり、これを繰り返すと平面を生み出すことが可能になります。 このように、切削加工は切削と送りを繰り返していくことで、工作物を加工していきます。 フライス加工とは フライス加工とは切削加工の一種で、回転軸に取り付けたフライス盤という切削工具を回転させて行う加工です。 設置した工作物に工具を当て続けていく切削を行うので、加工する工作物の表面を平面や曲面に加工できます。また、その他みぞ削りなどの多様な加工が可能です。 フライス盤は、工具を取り付ける主軸の方向によって、横形と立形があるほか、本体が門のような形状をした門形など多数の種類があり、①正面フライス、②エンドミル、③溝フライスなどの工具を使うことによって、目的の形状に工作物を加工していきます。 1.正面フライス 正面フライスとは、フライス加工のなか最もよく使用される加工工具です。そのため、多数の工具が豊富に用意されています。 正面フライスは広い平面を効率よく削るため外径が大きく、円周上に多数の刃(チップ)を等間隔に付けた構造をしています。 複数のチップを取り付けた正面フライスでは、刃が材料を削るときに、1回転で削れる量が増えていきます。つまり、外径が大きいほど、また刃数が増えるほど加工能率が高くなることになります。 2.エンドミル エンドミルはフライス加工の切削工具の一つで、ドリルに類似した外観を持ちます。しかし、ドリルは軸方向に推進して円形の穴を空ける用途であるのに対して、エンドミルは側面の刃で切削し、軸に直交する方向に穴を削り広げる用途に用いられます。 また、エンドミルは端面を平滑に仕上げる際にも用いられます。中心部の切れ刃が不完全であるため、ドリルのような単体での穴あけ加工には本来適しませんが、穴の中心にドリルなどで下穴を開けておくことで、軸方向へ推進して削り込むことも可能です。 3.溝フライス 上記で説明したエンドミルやメタルソー(金属製ののこ刃)の工具で、工作物の側面や端面に、溝を施す加工です。溝削りの場合、他の加工と比べて工作物との接触面が大きくなるため、切削速度・送り量・切り込み量を大きくすることは出来ません。 フライス加工の機械について フライス加工の機械は、主軸の向きによる種別と主軸とテーブルの移動方向による種別に分類されます。ですが、市場に出回っているフライス盤の8割程は立型フライス盤が占め、一般的にフライス盤といえば立型のフライス盤を指します。 1.立型フライス盤 主軸が地面に対して垂直(下向き)のフライス盤を縦型フライス盤といいます。また、縦型のフライス盤には、大きく分けて2種類の方があります。主軸頭が切込み運動を行い、テーブルが前後左右に動く「ベッド型(主軸頭移動型)」と、主軸頭が固定された「ヒザ型(主軸頭固定型)」があります。 ・ベッド型 主軸頭が上下に動き、テーブルが前後左右に動くものを「ベッド型」といいます。「ヒザ型」より剛性があり、同じ製品を大量につくる場合は「ベッド型」が適しています。 ・ヒザ型 フライス盤の中でもっとも汎用な機械が「ヒザ型」です。上下に運動するニーに支えられたテーブルが左右に動きます。「ベッド型」に比べると、目線の高さで加工できるため視認性が良く、軽い素材の加工や加工と測定を繰り返す細かい作業に適していいます。 2.模型フライス盤 主軸が地面に対して水平(横向き)のフライス盤を横型フライス盤といいます。 溝入れや切断加工に適しています。また、板状の工作物の側面加工は、横型でなければ加工することが出来ません。 3.万能フライス盤 万能フライス盤は、膝型フライス盤の一種で構造的には横型フライス盤とほぼ同じですが、旋回台を設けてテーブルが水平面内に回転できる点が異なっています。 主軸が180度動く立横兼用の万能フライス盤等もあります。フライス盤の加工機能に加え、歯車やドリルなどの複雑な加工が可能です。 その他にも、マニシングセンタという目的に合わせてフライス削り、中ぐり、穴あけ、ねじ立てなどの異種の加工を1台で行うことができる数値制御工作機械があります。万能ではありますが、プログラムを設定しなくてはならないので、現物合わせで削りたい時には、やはりフライス(汎用フライス盤)のほうが素早い対応ができます。 旋盤加工 旋盤加工とは、工作物を高速で回転させ、その対象物に刃物を押し当てて削り出していく加工のことを言います。 フライス加工が平面加工などをするのに対して、旋盤加工は棒のねじ切り等を加工します。旋盤加工する形状は基本的に丸モノとなり、マシニング加工に比べて、段取りや加工時間が少ないので素早い対応ができます。 一見するとフライス加工との違いについては分かりにくいと思いますが、特徴は、回転する爪に金属素材を取り付けるということです。その取り付けた金属を回転させて旋削チップなどの機械工具で削っていきます。 フライス盤は金属が回るのではなく、刃物が回転して削っていくという機械です。 また、旋盤加工は製品が回転する事で加工を行うので、外径や内径の寸法が出しやすいという利点があります。通常は同芯で外径と内径を加工する事ができるので、ぶれる事がない製品を作り出す事が可能です。 切削加工の良いところは、難しい依頼もフライス加工と旋盤加工を駆使していくことで、一つの部品を完成させることができる点です。 まとめ 今回は、主にフライス加工についてご紹介しました。 切削加工には種類があり、加工方法も変わってきます。もし今回の記事を読んで、これから金属加工メーカーに依頼をすることを考えている方や切削加工に興味のある方の一助となれば幸いです。

  • 切削油(クーラント液)の種類、成分、メリット・デメリット

    金属加工の現場では、金属を削る、切断する、など、さまざまな加工が実施されます。そして、その際に「切削油」と呼ばれる油が使用されます。 切削機や加工機を使用する際、ドリルやフライスに放出されている切削油。「水ではダメなの?」「何のために放出されているの?」など、疑問に思われている方も少なくないはず。そこで、今回は切削油について詳しくご紹介します。 切削油(クーラント液)とは 切削油とは、フライス盤や旋盤など、金属にさまざまな加工を施したい時、ドリルに対して放出される液体のことです。主に、切削時の摩擦を抑えたり、工作物の熱を奪い、熱を冷ましたりする効果を持っています。切削時に発生する切り屑を洗い流す効果もあり、加工時に起きる不具合や不良品の発生を軽減させる効果を担っています。 切削油(クーラント液)を使用するメリットとデメリット 切削時に水ではなく油を利用するのは、より精度の高い製品を制作するため。一般的には「水溶性」と「不水溶性」の2種類に大別され、それぞれに異なるメリット・デメリットがあり、目的・用途に合わせて使用されています。 メリット 切削油を使用するメリットは下記の通りです。 切削時の摩擦熱を軽減させ、品質向上と工具の摩耗を軽減させる 切削物との摩擦を減らし、加工面の品質を向上させる 切削時に発生する切り屑を洗い流し、スムーズに切削ができる 加工物の仕上げ面がよりきめ細やかで美しくなる 機械と素材の動作が円滑に行われるため生産性が向上する 切削油は主に「潤滑作用」「冷却効果」「品質向上」を目的に使用されます。使用することで切削された金属の品質が向上し、機械の動きもスムーズになります。結果的に「生産性が向上し、機械の寿命を引き延ばす」効果を持ち合わせています。 デメリット 切削の理想はドライな状態での加工と言われています。なぜなら、潤滑油を使用するデメリットがあるからです。例えば、油によって金属に悪影響を及ぼすケースもあり、すべての金属に対して有用というわけではありません。素材によって変色や錆の原因となる可能性がある点もそのひとつです。さらに、切削油の飛散による作業効率の低下や環境的な問題などもあります。 水溶性切削油の種類 水溶性切削油は一般的に水道水を使って10倍~80倍に希釈して使用します。濃すぎると金属に付着した油による影響が懸念され、逆に薄すぎると水による錆などの原因となるため、適量に薄めて使用する必要があります。 水溶性切削油は冷却性に優れている他、切削時の熱や火花から引火する危険性がなく、無人による作業の自動化が期待できます。 エマルション(A1種) エマルションは10~30倍程度に希釈して使用され、水に溶かすと乳白色になります。水と油、界面活性剤から成り、水溶性切削油の中で最も潤滑性が高い切削油です。鉄やアルミ、銅など、切削加工全般に使用されています。 ソリューブル(A2種) ソリューブルは10~50倍程度に希釈して使用され、水に溶かすと半透明、もしくは透明になります。エマルションに比べて洗浄性や冷却性が高く、潤滑性は劣ります。 ソリューション(A3種) ソリューションは30~80倍程度に希釈して使用され、水に溶かすと透明になります。浸透性と冷却性に優れている一方、潤滑性がなく、被切削物に対するダメージや肌荒れが起こりやすい油種となっています。 不水溶性切削油の種類 不水溶性切削は鉱油や脂肪油を主成分としています。水溶性に比べて冷却性は劣りますが、潤滑性や防錆性に優れており、切れ味の良さや、工具の寿命、加工面の品質向上が期待できます。また、使用する油によって粘度が異なりますが、一般的に低粘度のものほど浸透性に優れており、隙間に浸透し、潤滑や冷却に高い効果を発揮します。 油種は大きく分けて4種類に大別されますが、すべてに引火の危険性があり、消防法によるところの「危険物」に該当します。そのため管理・使用には法律に基づいた予防措置が必要になります。 油性形(N1種) 油性形は鉱物と脂肪油を主成分とし、切削時に局部の焼き付きや切削性の向上を目的に使用される、極圧添加剤を含まないタイプです。非鉄金属の加工や鋳鉄の切削加工に多く用いられます。 不活性極圧形(N2種) N1種の成分に極圧添加剤を含み、銅板腐食が150℃で2未満のものが該当します。不水溶性切削油の中で最もスタンダードなタイプで、一般的な切削加工に幅広く用いられています。 不活性極圧形(N3種) N1種の成分に極圧添加剤として硫黄分を含み、銅板腐食が150℃で2以上のものが該当します。耐溶着効果が高く、仕上げ面を得られやすいため、難素材の加工に多く選ばれます。ただし、硫黄によって変色する金属もあるため使用には注意が必要です。 活性極圧形(N4種) N1種の成分に極圧添加剤として必ず硫黄分を含み、銅板腐食が100℃で3以上のものが該当します。タップ加工やリーマ加工、ブローチ加工をはじめとする低速加工に多く用いられ、難素材の加工に適しています。

  • ボール盤とは?構造、種類、フライス盤との違い

    ボール盤は、様々な素材の穴あけを主要機能とする工作機械です。旋盤やフライス盤、マシニングセンタなどと同じく、切削加工を行うための機械で、機械に取り付けた切削工具によって材料を削り出すことで加工を行います。 金属・樹脂の加工工場や部品工場には、必ずと言ってもいいほど設置されている機械で、材木の成形加工を行う製材所などでも用いられています。他の工作機械と比べると安価で、DIYで使用できるような卓上のものもあります。 この記事では、ボール盤とは何かというところから、その構造や種類、ボール盤で実行できる加工方法や使用されているドリルについて解説していきます。フライス盤や旋盤との違いについても触れているので、参考にしてください。 ボール盤とは ボール盤とは、木材や樹脂材、金属材などに対して、穴あけ加工や中ぐり加工、リーマ加工などを施すことで、材料の不要部分を除去し、材料を所定の形状に成形するための工作機械のことです。 主にツイストドリルやセンタードリル、リーディングドリルなどの各種ドリルを装着して使用しますが、以下のような切削工具も用いられます。 ・リーマ…穴の形状を整えたり、内面を仕上げたりするための切削工具 ・タップ…穴の内面にネジ山を刻む(雌ネジを切る)ための切削工具 ・中ぐりバイト…穴の径を拡張するための切削工具 ・カウンターシンク…面取りやバリ取り、皿モミを行うための切削工具 ・面取りカッター…面取りやバリ取り、皿モミのほか、センタリングや穴あけも可能な切削工具 ・ホールカッター(ホールソー)…板材に大口径の貫通した穴をあけるための切削工具 参考:【面取りカッター】種類、材質、サイズ、角度 ボール盤では、工作物を固定し、回転する切削工具を工作物に向けて垂直に下ろすことで加工を行います。ボール盤は、高精度の穴を容易にあけることができる機械ですが、安全に十分配慮しないと怪我などに繋がりやすいというデメリットもあります。 ボール盤の構造と各部の名称 引用元:機械工学事典 > 生産加工・工作機械「ボール盤」一般社団法人日本機械学会 ボール盤の基本的な構造は、上図のようになっています。 ボール盤は、大まかに、主軸やモーターなどを備える主軸頭、工作物を固定するテーブル、主軸頭とテーブルを支えるコラム、コラムを支えるベースから構成されています。 主軸頭 主軸頭は、ドリルの回転軸となる主軸とその動力源となるモーター、回転数や回転力(トルク)を変えるプーリー、動力をモーターから主軸に伝達するベルト、主軸を操作するハンドルを備え持つ部位のことです。 上図における、右上の樽状のものがモーター、主軸とモーターの上に位置するベルトが掛けられているものがプーリーです。 ●ドリル ドリルは、穴あけを行うための切削工具です。ボール盤では、鉛直軸周りの回転運動を与えられ、鉛直方向に送られて工作物に接触し、工作物を削ります。 ●ドリルチャック ドリルチャックは、主軸に取り付けられて、ドリルのシャンク(柄部)を掴んで保持し、主軸の回転運動をドリルに伝える保持器具です。ただし、主軸の取り付け口の形状によっては、主軸とドリルチャックとの間にアーバーと呼ばれる接続器具を挟むことがあります(下図参照)。 引用元:ビルディマガジン > ツール「卓上ボール盤の特長・選び方とおすすめ機種を分かりやすく解説」ビルディ株式会社 ●主軸 主軸は、ドリルを回転させるための軸のことです。スピンドルとも呼ばれます。 参考:スピンドルとは?構造、原理、種類、用途 ●ベルト…モーターで生成された動力を主軸に伝達するためのシームレスな帯状部品です。通常は安全のため、下図のようにベルトカバーで覆われています。 引用元:基盤整備センター「kaicho_1-9.pdf」独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構職業能力開発総合大学校 ●プーリー プーリーは、ベルトを掛ける滑車として働き、モーターから主軸への動力の伝達を補助する部品です。また、ボール盤のプーリーは、直径が異なる複数の円盤が連なっており、ベルトを異なる直径の円盤に掛け替えることで、自動車のトランスミッションのように、軸の回転速度を変更することができます(下図参照)。 引用元:基盤整備センター「kaicho_1-9.pdf」独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構職業能力開発総合大学校 ベルトの掛け替えは、主軸の回転数を変更する度に必要となり、非常に手間が掛かる作業です。そのため、動力をベルトではなく、歯車で伝達しているものもあり、そのようなボール盤であれば、レバーを引くなどの簡単な操作で主軸の回転速度の変更が可能です。また、インバータによってモーターに供給する電力の周波数を制御して、モーターの回転数を連続的に制御できるようにしたボール盤もあります。それならば、稼働中でも主軸の回転数変更が可能となるため、作業時間の大幅な短縮に繋がります。 ●ハンドル ハンドルは、主軸の上下への送りを操作するためのもので、手動でドリルを鉛直方向に送る手送りと一定の送り速度でドリルを鉛直方向に送る自動送りの双方を行うことができます。 テーブル テーブルは、工作物を固定する台となるもので、通常、バイス(万力)やクランプが備え付けられています。 参考:バイス(万力)種類・材質・用途 テーブル自体を上下、または左右に移動させるハンドルが備わっており、ハンドル操作によって、テーブルを鉛直方向に動かしたり、コラムを中心に回転させたりすることができます(下図参照)。 引用元:基盤整備センター「kaicho_1-9.pdf」独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構職業能力開発総合大学校 コラム コラムは、ベースの上に垂直に固定された機械を構成する柱で、主軸頭とテーブルを支える役割を持ちます。 ベース ベースは、直接的にはコラムを支える、機械全体の土台となる構成部品です。アンカーボルトでコンクリート地面に直接固定したり、ボルトで重量のある台座に固定したりします。 ボール盤の種類 ボール盤には、様々な種類があります。DIYで使えるような小型のものから、大物の加工に向いたもの、流れ作業に適したものなど、工作物の形状やサイズ、作業場の状況などに応じて、適したものを選定する必要があります。ここでは、代表的なボール盤の種類についてご説明します。 直立ボール盤 引用元:機械工学事典 > 生産加工・工作機械「直立ボール盤」一般社団法人日本機械学会 直立ボール盤は、主軸が上下のみに動く、コンクリート床に直接据え付けたり、大型の台座に固定したりして用いるボール盤です(上図参照)。工場などでよく用いられているボール盤で、単にボール盤と言う場合は直立ボール盤のことを指します。 直立ボール盤は、主軸の水平位置が固定されているため、工作物そのものや工作物を固定するテーブルを動かして加工する際の位置決めを行います。そのため、比較的小形の工作物の加工に適しています。 また、テーブルは、加工作業時には固定しますが、上下方向だけでなく、水平方向に移動可能なものやコラムを中心に水平回転が可能なもの、傾斜可能なものなどがあります。 ラジアルボール盤 引用元:製品情報 > 工作機械部門「ラジアルボール盤シリーズ」大鳥機工株式会社 ラジアルボール盤は、主軸が鉛直方向だけでなく、水平面内でも自由に移動可能なボール盤です。テーブルがなく、ベースがテーブルの代わりとなって工作物を固定することになりますが、主軸の自由度が高いため、工作物を動かすことなく、複数箇所を加工できます。 ラジアルボール盤の主軸頭は、コラムを中心に旋回するアームに取り付けられており、アームに沿った移動も可能です。そのため、アームの届く範囲内であれば、主軸を水平面内の任意の位置に配置することができます。 ラジアルボール盤は、主に大型、または重量のある工作物の加工に用いられます。 卓上ボール盤 引用元:電動工具 > 締付・穴あけ・ハツリ > 卓上ボール盤「TB-1131K」京セラインダストリアルツールズ株式会社 卓上ボール盤は、ベンチドリルとも呼ばれる、作業台の上に設置して使用する小型のボール盤です。基本的な構造は直立ボール盤と同様で、主軸が上下にのみ動き、前後左右には動かないため、工作物やテーブルを動かして位置決めをして加工を行います。 小型である分、工作物を固定するテーブルも小さく、小型・軽量である製品の製作やDIYなどに用いられています。 多軸ボール盤 引用元:多軸ボール盤・タップ盤「小型多軸ボール盤・タップ盤シリーズ」東洋精機工業株式会社 多軸ボール盤は、一つの主軸頭に複数の主軸を備え持つ、同時に複数箇所の加工が可能なボール盤です。主軸頭内で主軸の配置を変化できるようになっています。主に8~12軸程度のものが使用されていますが、30以上の軸を持つものもあります。 大量生産に向いており、複数箇所の穴あけを大量の材料に適用する場合などに効果的です。ただし、多数ある主軸の配置変更には時間が掛かるため、少量多品種生産には適していません。 汎用の機種は少なく、特定の製品の専用機として製造され、生産ラインの特定の作業に用いられることが多いボール盤です。 多頭ボール盤 引用元:India | suppliers | manufacturers | Machinery「Gang Drilling Machine」Eifco Machine Tools 多軸ボール盤は、多軸ボール盤と対照的に、一つの主軸を持つ複数の主軸頭を備えたボール盤です。複数の主軸頭で共通のテーブルを使用し、一つの工作物を各主軸頭の直下に順次動かしていくことで、穴あけやねじ切り、座ぐりなど、複数種類の加工を順番に実行できるようにしています。 深穴ボール盤 引用元:「ガンドリル加工とBTA加工の違い」株式会社不二新製作所 深穴ボール盤は、他種のボール盤よりも狭く深い穴を加工する場合に用いられるボール盤です。深穴加工機やガンドリルマシンとも呼ばれ、もともとは、小銃や猟銃などの銃身の穴あけのために開発された工作機械です。 ガンドリルやBTA工具と呼ばれる専用工具を使用し、ドリルを横に向け、ドリルの先端に空いた穴から切削油を供給しながら深穴加工を行います(上図参照)。深穴加工とは、穴の深さが直径の10倍を超える穴あけ加工のことですが、近年では、口径0.5mm以下の穴でも深さが50mm(0.5mmの100倍)程度まで加工可能なガンドリルが数多く登場しています。 精度の要求が高いシリンダーやスピンドル、自動車のクランクシャフトなどにおいて深穴加工の需要は多く、深穴加工機は、自動車や航空機、情報家電などの薄型化・軽量化が進む部品の加工などでも用いられるようになっています。 タレットボール盤 引用元:Product list > Machining Center「Self-Unit V6: #30 Turret/Vertical Compact Machining Unit」SUGINO MACHINE LIMITED タレットボール盤は、複数の切削工具を取り付けられるタレットと呼ばれる回転式の刃物台を備え持つボール盤です。タレットに複数種の工具を予め装着しておくことで、工具交換に掛かる時間を短縮することができます。 例えば、タレットにドリルとタップ、面取りカッターを装着しておけば、穴あけ加工、ねじ切り加工、穴の面取り加工を連続的に実行できます。 NCボール盤 NCボール盤は、NC(数値制御)によって自動的に穴あけ加工などを実行できるボール盤です。最近では、コンピュータを通してNCの設定が可能なCNCボール盤も存在します。 NCボール盤では、加工穴の位置や深さなどを予めプログラムしておくことで、自動的な加工が可能となります。主軸の移動もプログラムすることが可能であることから、複数箇所の連続的な加工も自動化できます。自動送り装置と組み合わせれば、ボール盤による加工を完全に自動化した生産ラインの一工程とすることも可能です。 量産化や工数削減などによるコスト低減のほか、作業員の怪我防止や品質の安定化などのメリットがあります。しかし、導入費用が高かったり、NCのプログラム技術や加工ノウハウが必要となったりするなどのデメリットもあります。 ボール盤でできる加工 ボール盤は、主軸に装着する切削工具を交換することで、多様な加工が可能です。ここでは、ボール盤でできる代表的な加工方法についてご紹介します。 穴あけ加工 穴あけ加工は、ドリルによって円筒形状の穴をあけるという、ボール盤の最も基本的な加工方法です。貫通させる場合(通り穴・貫通穴)もあれば、設定した深さで止める場合(止まり穴)もあります。通常、側面の溝にねじれがあるツイストドリル(上図参照)が用いられます。 穴あけ加工は通常、以下の手順で行います。 1. 穴のセンタリング(位置決め)を行う 2. 下穴をあける(ドリルによる穴あけ加工) 3. 穴の用途に応じて、下穴へ中ぐり加工やリーマ加工、ねじ切り加工、座ぐり加工などを施す 穴あけ加工の前に、まず、実行されるのが穴の中心に窪みなどの位置決め穴をあけるセンタリングです。センタリングは、センターポンチなどのケガキ工具やセンタードリル・リーディングドリルなどの切削工具を用いて行われます。位置決め穴をあける理由は、加工穴の精度確保のためでもありますが、位置決め穴がないとドリルの先端がブレて中心がズレてしまうことがあるからです。ただし、近年、ドリルの性能が向上したことにより、位置決め穴がなくても、十分な精度の穴あけ加工が可能となっています。しかし、高精度な穴あけ加工が要求されている場合には、やはりセンタリングが必須です。 センタリングの後、ドリルを使用して穴をあけます。しかし、ドリルによってあけられる穴の口径は限られます。また、ドリルによる加工穴は、加工面が粗く、精度も十分ではありません。そのため、穴の用途に応じて、さらに中ぐりやリーマなどの加工が施されます。 リーマ加工 引用元:工具の通販モノタロウ > 切削工具の基礎講座「6-4リーマ」株式会社MonotaRO(ものたろう) リーマ加工は、穴の寸法精度を高めたり、穴の内面を滑らかに仕上げたりするために、ドリルであけた穴の内側を薄く削る加工方法です(上図参照)。リーマと呼ばれる切削工具が用いられます。リーマ加工の前にあけた下穴は、リーマの直径から0.1mm~1.0mm程度小さい口径としますが、ドリル径が足りない場合は、リーマ加工の前に中ぐり加工を施して口径を広げます。 リーマは、円筒形状の切れ刃などを備えた本体にシャンクが付いたような構造をしており、円筒側面の先端から、切れ刃、切れ刃に続いてマージンと呼ばれる部位があります。切れ刃は穴の内面を削って寸法精度を高め、マージンは穴の内面を潰すことで表面を滑らかにする役割を担います。 リーマ加工は、精密性を要する作業であるため、主軸の振れやチャックのガタツキなどに注意する必要があります。工作物の水平が取れているかを確認することも重要です。 参考:リーマー(リーマ)の種類、サイズ、下穴径と深さ、ドリルとの違い ねじ切り加工 引用元:製品情報 > タッピンねじ > タップレス「ITM」イワタボルト株式会社 ねじ切り加工は、ドリルであけた穴の内側に、タップと呼ばれる切削工具で、ボルトなどを通すための雌ネジのネジ山を形成する加工方法です。タップ立てやタッピングとも呼ばれます。 タップは、上図中央図に見られるように、側面にネジ山のような鋭利な山が連続的に連なった構造を持ちます。ポイントタップなどの通り穴用とスパイラルタップなどの止まり穴用があり、止まり穴用には、切り屑を排出するための溝があります。 ボール盤でねじ切り加工を行う場合、穴に形成するネジ山の間隔が決まっているので、自動送りによってタップを送ってねじ切りを行います。 ボール盤をタップと工作物の固定具にして、手動でねじ切りを行うこともあります。その場合、まず、タップハンドルと呼ばれる手動工具にタップを取り付け、タップはボール盤に固定された工作物の下穴に合わせます。次に、ボール盤の主軸にセンタと呼ばれる支持具を取り付け、センタをタップの柄のセンタ穴に合わせてタップを保持します(下図参照)。この状態でタップハンドルを回しながらセンタを手動で下方に送ると、タップの曲がりを心配することなく、ねじ切りを行うことができます。 引用元:工具の通販モノタロウ > 加工現場の手仕上げ作業の勘どころ「8-2タップおよびダイスによるねじ立て作業」株式会社MonotaRO(ものたろう) 中ぐり加工 引用元:工具の通販モノタロウ > 切削工具の基礎講座「6-4リーマ」株式会社MonotaRO(ものたろう) 中ぐり加工は、ドリルであけた穴をさらにくり抜いて内径を削り広げる加工方法です。中ぐりバイトと呼ばれる切削工具が用いられます(上図参照)。 中ぐりバイトは、上図のような構造で、先端に備えた超硬合金などから成るチップによって穴の内面を削り出します。チップは通常、交換が可能となっています。 中ぐり加工を止まり穴に適用する場合、切り屑が内部に溜まりやすく、切り屑によって穴の内面がキズつきやすくなっています。定期的に加工を止め、切り屑を排出する必要があります。また、工具が穴の底に強く当たると、欠けなどの原因となるので、穴の深さに余裕を設けるか、工具をゆっくり送るようにしましょう。 座ぐり加工 座ぐり加工は、座ぐり穴を形成するための加工方法です。座ぐりとは、ネジやボルトを締めたとき、それらの頭部が工作物表面の下に沈み込むように、ネジ穴の周辺を凹形状に加工することです。そのネジ穴の周囲にあけた穴が座ぐり穴で、上図に見られるような、座ぐりカッターや後述する座ぐりドリルと呼ばれる特殊なドリルで形成されます。 座ぐり穴にネジ・ボルトを締めると、工作物表面のネジ頭部による出っ張りがなくなり、表面は平らな仕上がりとなります。それによって、美観が良好になるほか、製品をキズつけたり、作業員が引っ掛けたりすることもなくなります。 参考:ザグリの基礎!キリとの違いや関係性、深ザグリについて解説! ボール盤で使われるドリルの種類 ボール盤では、様々な種類のドリルが用いられ、ドリルを使い分けることで、多様な形状の穴の加工を実現しています。ここでは、上記でも触れたツイストドリルと座ぐりドリル、センタードリルについて説明します。 ツイストドリル ツイストドリルは、側面の溝にねじれがある、上図のようなドリルのことです。単にドリルと言う場合、ツイストドリルを指します。 溝のねじれは、ドリルの先端で生じた切り屑をシャンク側に送る役割があり、穴あけ加工の際には、このねじれた溝を通って切り屑が排出されます。また、ねじれは、先端の切れ刃と繋がっており、切れ刃の傾きでもあります。つまり、ねじれ角(下図参照)が大きいほど、切れ刃が鋭利になるとともに、より鋭い角度で工作物表面に入ることになります。それにより、切れ味が良くなって、その結果、切削抵抗も小さくなります。しかし、切れ刃の強度は低下するため、切れ刃に欠けやチッピングが起こりやすくなります。 溝にねじれがない直刃ドリルと呼ばれるものもあります。直刃ドリルは、ツイストドリルに比べて、切れ味は劣りますが、切れ刃の強度は高く、硬い素材の加工や傾斜に対する穴あけ加工に用いられます。 上述したように、ドリルによる穴あけ加工の前には、穴の中心に窪みなどを付けることが推奨されますが、その理由の一つに、ドリルの先端にあるチゼルエッジと呼ばれる切れ刃のない部位の存在が挙げられます(下図左図参照)。チゼルエッジはドリルの剛性を左右するウェブ(ドリルの芯)が先端に表出したものですが、最近のドリルでは、このチゼルエッジを切れ刃に加工するシンニングが施されているドリルがあります(下図右図参照)。このシンニングによって、ドリルは穴あけ開始時の工作物表面への食い付きが良くなり、場合によっては位置決めの窪みも不要となります。 引用元:ダウンロード > メールマガジン「2021年1月号 (第181号)」オーエスジー株式会社 座ぐりドリル 座ぐりドリルは、穴あけ加工と座ぐり加工を同時に実行できる、上図のようなドリルのことです。 その寸法は、ネジやドリルの規格に合わせたものがほとんどであり、先に付いているドリルの直径はネジ・ボルトの呼び径より少し小さく、中央の座ぐり刃の直径はネジ・ボルトの外径より少し大きくなっています。 ただし、ネジ・ドリルを締めるには、さらにタップによるねじ切り加工が必要です。 センタードリル センタードリルは、先端に細いドリル、その細いドリルに続いて、さらに円錐状のドリルを備え持つ、上図のようなドリルのことです。センター穴と呼ばれる、工作物の端の中心にあけられる、センターを差し込んで工作物を支持するための穴の加工に用いられます。 センター穴加工以外にも、先端のドリルのみでセンタリングや薄板の穴あけ加工を行ったり、円錐状のドリルで穴の面取り加工(下図参照)を行ったりと多様な使い方ができるドリルです。 特に、センタードリルは剛性が高いため、位置決めの窪みなしでも工作物表面を滑ってしまうことが少なく、穴あけのセンタリングに有効です。 また、センタードリルの円錐状のドリルは、60°や75°、90°の角度を持ちますが、90°のものであれば、皿頭ネジの頭部の角度(90°)と一致するため、センタードリルを皿モミ加工に使用することができるでしょう。 フライス盤・旋盤との違い ボール盤とフライス盤、旋盤は、共に材料を削り出して所要の形状に成形する切削加工を行うための工作機械です。しかし、ボール盤とフライス盤が転削加工を行うための機械である一方、旋盤は、旋削加工を行うための機械であるという違いがあります。 ・転削加工…回転させた工具を固定した材料に当てることで、材料を削り出す加工方法。 ・旋削加工…回転させた材料に固定した工具を当て、工具の位置を送り装置で調節することで、材料を削り出す加工方法。 転削加工を行うための加工機械であるボール盤とフライス盤ですが、これらの機械は、加工するときの工具の送り方向が異なります。ボール盤は、水平面内で工具の位置を合わせた後、工具を鉛直下方に送ることで加工します。その一方、フライス盤は、3次元空間内で工具の位置を合わせた後、工具を前後、左右、及び上下に送ることで加工します。つまり、フライス盤は、ボール盤の機能を兼ねることが可能です。 しかし、フライス盤では、ボール盤のように、材料をペンチで掴んで穴あけをするといった手軽な取り扱いはできず、工具を手動で大きく(速く)送るようなこともできません。また、ボール盤に比べて、工具交換に時間が掛かります。つまり、穴あけ加工を実行するならば、ボール盤の方がフライス盤より効率的であるということです。 参考:フライス加工について専門家が解説!加工の種類・加工機の種類がこの1記事でわかります! 参考:旋盤加工について専門家が解説!加工の種類・加工機の種類がこの1記事でわかります! 以上で述べたことにそのほかの情報を加えて、ボール盤とフライス盤、旋盤の違いをまとめると下表のようになります。 ボール盤 フライス盤 旋盤 加工方法 転削 転削 旋削 工具の送り方向 上下 前後 左右 上下 前後 左右 材料の動作 固定 固定 軸を中心に回転 使用工具 各種ドリル リーマ タップ 中ぐりバイト カウンターシンク 面取りカッター 正面フライス 溝フライス 平フライス 側フライス エンドミル ドリル サイドカッター 片刃バイト 剣バイト 突切りバイト ねじ切りバイト 中ぐりバイト ドリル 実行可能な加工方法 穴あけ加工 リーマ加工 ねじ切り加工 中ぐり加工 座ぐり加工 外形加工 側面加工 曲面加工 溝加工 段差加工 穴あけ加工 中ぐり加工 外径加工 内径加工 端面加工 ねじ切り加工 穴あけ加工 突切り加工 テーパー加工 精密性 普通とする 高い 高い

  • 【ステンレスの切削加工】工具選定や切削条件、加工時のポイント

    今回はステンレスの種類・特徴や切削加工時の工具選定などのポイントについて解説します。 ステンレスはサビにくく、強度も備えた材料です。その優れた性質から、さまざまな用途で採用されています。しかし難削材とも呼ばれる材料で、被削性に乏しい特徴もあります。 ステンレスの鋼種はJIS規格に記載されているものだけでも豊富にあるほか、メーカーによっては独自で開発した鋼種まであります。鋼種の違いによって特性に違いがあり、それぞれに適した用途で使い分けられます。 ステンレスの切削加工が難しいと言われる理由 ステンレスは耐食性や強度に優れている一方で、難削材とも言われる鋼材です。 その理由は、一般的な鋼に比べて熱伝導性が低いことと、加工硬化が発生しやすい点にあります。熱伝導性が低いと切削加工を行った際に刃先に熱が集中し、切粉が逃げにくくなります。また、熱が溜まった刃物は破損しやすくなってしまいます。 加工硬化とは、金属に負荷をかけると金属が硬くなる現象のことで、ステンレスの切削加工においては、適切な刃物や切削条件を選ぶ必要があります。 参考:加工硬化とはどんな現象?仕組み・影響・扱い方をご紹介! ステンレスの切削加工の工具選定 ステンレスを切削する際の工具材質は、耐摩耗性に優れたコーティング付き超硬合金製のものが有効です。 工具の形状については、エンドミルの場合、強ねじれ刃が熱による負担を軽減できます。剛性があり、刃にかかる負担が少ない多刃やポジティブすくい角などの形状も効果的です。 ドリルで穴あけ加工を行う場合は、ねじれ角が途中で変化したデュアルリードドリルが有効です。デュアルリードドリルを用いることで、切粉の排出性と剛性を両立できます。 ステンレスを切削加工する際のポイント ステンレスは切削加工で一定以上の負荷がかかると硬化してしまう特性があるので、温度が高くなりすぎないようにクーラントを必要とします。クーラントは切削箇所にエアーを供給するので十分ですが、仕上げ切削では、切れ刃の逃げ面側にオイルミストを供給すると、逃げ面の摩耗を抑えられ、切削面精度と工具寿命の向上が期待できます。 エンドミルでステンレスを切削加工する際は、切込み量を少なめ、送り量(mm/刃)を多く設定するのがポイントです。 参考:切削油(クーラント液)の種類、成分、メリット・デメリット ステンレスの種類と特徴 オーステナイト系 オーステナイト系のステンレスは、18クロム-8ニッケルのSUS304が代表的です。延性と靭性に優れており、深絞りや曲げ加工などの冷間加工性や溶接性も良好です。耐食性にも優れた材料なので、幅広い用途で採用されています。製造量は全ステンレスのなかでも多く、薄板・厚板・棒・管・線など、形状も全般的にラインナップされています。 オーステナイト系ステンレスの切削加工については、粘り気があり、加工硬化を起こしやすいことから適していません。 参考:オーステナイト系ステンレス鋼の基礎知識まとめ フェライト系 フェライト系のステンレスは、18クロム系のSUS430が代表的です。 熱処理により硬化することが少なく、主に焼なまし状態で使われています。マルテンサイト系よりも成形加工性・耐食性が優れており、溶接性も乏しくないことから、厨房用品や建築内装、自動車部品などの一般耐食用として採用されています。形状は主に薄板や線がラインナップされています。 フェライト系ステンレスの切削加工は、オーステナイト系に比べて加工硬化しにくく、加工変態(オーステナイトがマルテンサイトに変化すること)も起こらないため、加工難度は低い傾向にあります。 参考:フェライト系ステンレス鋼の基礎知識まとめ 二相系 二相系のステンレスは、オーステナイトとフェライトの2つの金属組織をもちます。 物理的性質については、オーステナイトとフェライトの中間になります。耐海水性と耐応力腐食割れ性に優れているほか、強度も良好です。これらの特性から、海水や工業用水を用いるポンプなどに利用されています。二相系の形状は、主に厚板や管、鋳物が代表的です。 二相系ステンレスは、オーステナイト系に匹敵する加工硬化性を示すため、難削材に該当します。 参考:二相系(オーステナイト・フェライト系)ステンレス鋼の基礎知識まとめ マルテンサイト系 マルテンサイト系のステンレスは、13クロム系のSUS403・SUS410が代表的です。 マルテンサイト系は焼入れにて硬化し、成分と熱処理条件を選ぶことで、さまざまな性質が得られます。フェライト系とオーステナイト系よりも乏しいものの耐食性もあります。そのほかに、耐熱性や耐酸化性に優れているのも特徴です。用途は高強度・耐食性・耐熱性を要する機械構造用部品が挙げられます。 マルテンサイト系ステンレスの形状は、主に棒鋼や平鋼で使われていることがほとんどです。 マルテンサイト系は硬くて加工しにくいため、焼きなましをしてから加工を行うのが一般的です。焼きなまし状態では、フェライト系と同等の被削性になります。 参考:マルテンサイト系ステンレス鋼の基礎知識まとめ Mitsuriではステンレスの切削加工品をWEB上で見積・発注できるサービスを提供しております。部品調達でお困りの方は下記のボタンから加工できる工場に直接依頼できます。

  • 汎用旋盤(普通旋盤)の基礎|旋盤加工の概要、NC旋盤についても併せてご紹介!

    旋盤とは、金属加工で用いられる主要な工作機械の一つです。大根のかつら剥きのように、回転させた素材に刃物を押し当て、不要な部分を取り除き、目的の形状を削り出していく機械のことを指します。 旋盤には、コンピュータ制御によるものなど、様々な種類がありますが、手動で操作する汎用旋盤も製品によってはメリットが多く、まだまだ現役で使用されています。 そこで、今回の記事では、汎用旋盤の基礎的な知識やメリット・デメリットについて説明していきます。旋盤加工の概要、汎用旋盤のNC旋盤との違いについても併せてご紹介しますので、ぜひご覧ください。 汎用旋盤と旋盤加工の概要 汎用旋盤は、旋盤加工に用いられる工作機械です。旋盤加工機には、NC旋盤やタレット旋盤など、いくつかの種類がありますが、特に手動で操作する、標準的な構造を持った旋盤のことを汎用旋盤と言います。 単に「旋盤」と言う場合には、汎用旋盤を指すことが多く、また汎用旋盤を「普通旋盤」と呼ぶこともあります。 旋盤加工は「削る」ことを主眼においた加工 旋盤加工とは、材料を削ることで加工を行う切削加工の一種です。回転させた材料に「バイト」と呼ばれる切削工具を当てて材料の一部を削り取り、目的の形状を削り出していく加工方法のことを指します。 旋盤加工では、このバイトを加工法に合わせて交換することで様々な形状が加工可能となります。材料の外周を円形や先細形状(テーパ)に加工する、材料に内側からバイトを当てて内径を加工する、溝を掘り進めて材料の一部を切断するなど、専用バイトを使用することで多様な形状を実現することができます。 旋盤加工では、回転している材料を削るため、多くの場合材料には円形断面の棒材を用いています。しかし、材料を固定する「チャック」を変えることにより、四角形状の材料や、より歪な形状の材料も加工可能です。なお、下の写真は、4つの爪を持つチャックに四角形状の材料を固定したものです。 また、加工後の形状が回転軸に対して対称となるため、完成品の形状も円筒や円錐、皿形といった対称形になります。ただし、材料を脱着するなどして、材料の回転軸を変えて削れば、より複雑な形状に加工することが可能です。 汎用旋盤は手動で行う旋盤加工機 引用元:機械設計エンジニアの基礎知識 旋盤加工に使用される旋盤加工機の中でも、バイトの移動を「手動」で行うのが汎用旋盤です。 汎用旋盤では、上図のように、バイトの土台にハンドルやレバーなどが存在し、これらを手動操作することでバイトの位置を決定します。このバイトを動かし、固定位置で回転している材料に当てることで、材料を削っていきます。 なお、上図中のバイトの右方にある装置は、「心(芯)押し台」と呼ばれるものです。心押し台により、材料の回転中心を押して支えたり(下図参照)、ドリルやリーマなどを取り付けて穴加工を行ったりすることが可能となります。また、材料の回転中心を決定する「心出し」にも利用可能です。 引用元:国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所 プログラムを利用するNC旋盤加工機との違い 手動で操作する汎用旋盤に対し、予めプログラムした手順通りにバイトを動かし、「自動」で加工していく旋盤加工機がNC旋盤です。 NC旋盤では、縦・横・高さの座標軸を設定してバイトの位置を数値に落とし込み、バイトの移動を機械が制御します。本体付属の操作パネルに数値を入力して操作するのが一般的ですが、現在では、コンピュータに接続して操作するNC旋盤もあります。そのようなNC旋盤は、特に「CNC旋盤」と呼ばれます。 NC旋盤では、プログラムを設定して材料をセットすれば、旋盤加工を全自動で行うことができます。この点、機械に張り付き、手作業で一つ一つ加工していく汎用旋盤とは異なります。また、加工は機械的に行われるため、作業員の技術や調子に依存することなく、高精度の加工を安定して行うことが可能です。 しかし、その一方で、汎用旋盤の場合にはない、事前のプログラム作成という工程が必要となります。そのため、NC旋盤は、特注品の製造には向いておらず、製品のロット数が少ない場合には、汎用旋盤よりも工数や全体としての製造時間が長くなることがあります。また、追加工などへの対応にも、その都度、プログラム作成が必要となることに注意が必要です。 とは言え、NC旋盤のプログラム作成には、バイトの送り量や材料への切り込み量、バイト交換のタイミングなど、汎用旋盤において手作業で行っていた全ての作業手順と操作をプログラムに落とし込まなければなりません。そのため、汎用旋盤は、作業者の技術教育のために現在でも重要な機械であり続けています。 参考:NC旋盤加工とは?NC旋盤加工の構成や工場もご紹介! 汎用旋盤のメリット・デメリット 汎用旋盤 メリット ・試作品や特注品の加工に向いている ・変更や修正、追加工が用意 ・バイト交換時における補正が不要 ・切り屑の状況や削った感触などが分かる 汎用旋盤 デメリット ・作業者の技術によって作業品質が変わる ・作業員が機械に張り付いている必要がある ・大量生産に向かない ・安全面に注意が必要 汎用旋盤のメリット①単品や試作品の加工に向いている 汎用旋盤では、NC旋盤では必要なプログラム作成の工程がないので、設計図さえあればすぐに加工を開始することができます。そのため、単品や特注品の加工に向いています。また、製造手順が定まっていなかったり、製作しながら微調整を繰り返したりする試作品の加工にも向いています。 汎用旋盤のメリット②変更や修正、追加工が容易 汎用旋盤では、一つ一つの加工を全て手作業で行います。そのため、変更があれば、その箇所の加工を変えれば良く、間違いなどがあれば、すぐに修正することができます。その点、NC旋盤を使用する場合には、加工終了までは間違い等を発見するのが難しく、発見しても変更・修正にプログラムの修正が必要となります。 追加工についても、追加工用の手順を加えれば良いだけで、容易に対応することができます。一方、NC旋盤では、追加工用のプログラム作成が必要となります。 汎用旋盤のメリット③バイト交換時における補正が不要 汎用旋盤では、目視しながら加工を行うので、バイトが摩耗した場合でも切り込み量などを調整することで問題なく加工を行うことができます。そのため、バイト交換によって、バイトのサイズが変わった場合でも手動による補正で対応可能です。 しかし、NC旋盤を使用する場合には、バイト交換やバイトの摩耗に合わせて、送り量や切り込み量などの補正値をプログラムに反映する必要があります。ただし、最近のNC旋盤では、このバイト交換に必要となる位置確認とプログラムへの補正値反映を自動で行う機能を持つものが多くなっています。そのため、むしろ汎用旋盤において手作業で行う方が実は手間になっているという側面もあります。 とは言え、超高精度な製品を製造する上では、このような補正調整作業も高度な技術を持つ作業者の手の感覚には敵わない部分があります。 汎用旋盤のメリット④切り屑の状況や削った感触などが分かる 機械に張り付き、手作業で加工を行うので、切り屑の状況や削った感触などをリアルタイムに知ることができます。切り屑がバイトなどに絡まった場合でもすぐに分かりますし、削った感触からバイトの状態などを知ることが可能です。そのため、切り屑が絡まった場合には除去する、バイトが切れなくなった場合には交換するなどの対応をすぐに取ることができます。 汎用旋盤のデメリット①作業者の技術によって作業品質が変わる 手作業で加工を行うため、作業者の技術によって品質や作業スピードに差異が生じてしまいます。 汎用旋盤のデメリット②作業員が機械に張り付いている必要がある 加工の全行程において作業員の手を必要とするため、その分の工数がかかります。 汎用旋盤のデメリット③大量生産に向かない 製品一つ一つに対し、加工はもちろん、バイト交換なども全て手作業で行うため、大量生産には向いていません。 汎用旋盤のデメリット④安全面に注意が必要 汎用旋盤加工の作業員は、常に機械に触っている状態にあります。そのため、作業員の安全面については十分な注意が必要です。重要な注意事項としては、以下のような点が挙げられます。 汎用旋盤 注意事項 ・チャックハンドル(材料・工具をチャックに固定するための工具)は付けたままにしない ・バイト交換や材料の測定は機械を停止してから行う ・材料の固定や工具の取り付けは確実に行う ・繊維が引っかかることがあるので、軍手はつけない 汎用旋盤で対応できる加工 汎用旋盤では、以下のような加工方法に対応することができます。 汎用旋盤で対応できる加工 外径加工 外周に対する加工方法 内径加工 材料に空いた穴の内周に対する加工方法 端面加工 材料の端面を削り、全長を短くする加工方法 溝入れ加工 外周に溝を入れる加工方法 突切り加工 溝入れ加工の溝を深くしていき、切断する加工方法 ねじ切り加工 雄ネジや雌ネジのネジ山を成形する加工方法 穴あけ加工 材料の回転中心に穴を空ける加工方法 テーパ加工 円錐など円周が変化していく形状の加工方法 ローレット加工 外周に凹凸を付ける加工方法 参考:旋盤加工について専門家が解説!加工の種類・加工機の種類がこの1記事でわかります! ただし、ねじ切り加工やテーパ加工を精度良く行うには、バイトの送り速度を一定にする「自動送り」という機能を使用する必要があります。その場合においても、加工形状に合わせた送り速度の計算や調整が必要です。そのため、ねじ切り加工やテーパ加工、また曲面を含む形状の加工には、NC旋盤が向いています。 下の写真は、汎用旋盤による加工事例で、外径・内径加工を施した後、内側に70個の溝入れ加工を施したものです。 汎用旋盤は、手動で操作する旋盤であり、大量生産には向かない工作機械です。しかし、一点物や試作品の製造を得意としており、まだまだ活躍の場はたくさんあります。 また、製作する製品によっては汎用旋盤の取り扱いを得意とする業者にご依頼するのも、製品の複雑性が増し、多品種少量生産が台頭している現在においては、メリットが多いのではないでしょうか。 Mitsuriは、日本全国250社以上の業者と提携しています。そのため、お客様のご要望に合わせた業者をご紹介できます。お見積りは複数社から可能です!旋盤加工でお困りの際は、ぜひMitsuriにご相談ください。

  • フェイスミル(正面フライス)について解説!加工機の選び方についても解説

    「フェイスミルとは何か」「フェイスミルの特徴について知りたい」……このような悩みをお持ちの方は必見です。 フェイスミル(正面フライス)は、フライス加工で多く活用されている加工用の刃物工具です。加工機によりフェイスミルを回転させて、テーブルに固定した被加工材を切削していきます。その加工効率の良さから、工業製品を作るうえで必要不可欠な加工と言えるでしょう。金属加工の設計や、依頼をする際にもフェイスミルの知識を持っておくことで、製品化をスムーズに行えます。 そこで、本記事ではフェイスミルの特徴や、構造について知らない方向けに分かりやすく解説します。また、同じフライス加工で使用されている、加工用刃物工具の選び方についてもご紹介しますので、フェイスミルについて知識を得たい方は、ぜひ参考にしてみてください。 フェイスミル(正面フライス)とは 引用元:モノタロウ フェイスミルとは、別名「正面フライス」とも呼ばれており、フライス盤に使用される上写真に示したような切削工具のことを言います。フェイスミルを加工機に取り付け、高速回転させることで、被加工材を切削できるようになります。 上写真の右側が先端で、5箇所に取り付けられている刃を「チップ」と呼びます。上写真左側は、加工機とドッキングする部分になります。 フェイスミルは、主に平面加工・側面加工・段加工をする際に使用。一度に切削できる面積が広く、切削面も高い精度で加工できます。 しかし、刃を複数搭載しているぶん、刃の状態および角度の管理をきちんと行わなければなりません。刃の角度は「すくい角」と呼ばれており、この角度が変化することで、切れ味や切りくずの排出の仕方などが変化します。 フェイスミル(正面フライス)の構造 アキシャルレーキ 引用元:MISUMI アキシャルレーキとは、フェイスミルを側面から見たときの、チップのすくい角のこと。上図左はフェイスミルの半断面で、丸で囲まれた箇所がチップを表しています。 また、上図右は、チップの拡大図でチップを側面から見た「アキシャルレーキ角」とチップを上から見た「ラジアルレーキ角」を表しています。 上図右の「アキシャルレーキ角」と記述している箇所のように、フェイスミルを回転させた際に、刃先が先行する形を正(+)、刃先が遅れる形を負(-)のすくい角として見ます。この角度によって、切りくずの排出の方向や切削力は変化します。 アキシャルレーキのすくい角が正(+)のときは、切削性が良くなり、溶着も起きにくくなります。 ラジアルレーキ ラジアルレーキとは、フェイスミルの上側、もしくは裏側から見たときの、チップのすくい角のことです。イメージはアキシャルレーキの項目に添付した図を参照してください。被加工面に対して垂直方向の角度がアキシャルレーキ。フェイスミルの回転方向に対しての角度がラジアルレーキを意味します。 ラジアルレーキもアキシャルレーキと同様で、フェイスミルを回転させたときに、刃先が先行する形を正(+)、刃先が遅れる形を負(-)のすくい角として見ます。また、切りくずの排出方向や、切削力に変化がある点も同じです。ラジアルレーキは負(-)のすくい角のとき、切りくずの排出性が良くなります。 引用元:三菱マテリアル アキシャルレーキとラジアルレーキは上図のように、それぞれ正(+)と負(-)の組み合わせによって、加工しやすい材料が異なります。このように、被加工材に合わせて適切なフェイスミルを使うことが大切です。 チップポケット 引用元:astamuse 刃の先端近くにある隙間(上図6の箇所)を「チップポケット」と言います。チップポケットは、切りくずを排出しやすくするために設けられた隙間です。 ここでの「チップ」は切りくずのことを指しますが、チップの元々の意味である「小片」からすると、フェイスミルの刃も、切りくずも同じ「チップ」の意味を表しています。 フェイスミルは、刃の数が多いほど、刃と刃の間隔が短くなり、それに伴いチップポケットのスペースも狭くなります。チップポケットが狭いほど、切削時に発生する切りくずが排出されにくくなります。そのため、切りくずを多く排出する加工では、刃の枚数に注意して加工しなければなりません。 フェイスミル(正面フライス)の加工能率の上げ方 フェイスミルの加工能率を上げるには、刃の枚数が多いものを使いましょう。刃の枚数が多いほど、1回転あたりに削れる量が増えます。 また、1つのチップにかかる負担も軽減されるため、刃先の熱の発生も抑えられます。ただし、刃の枚数を増やすと刃と刃の間隔が狭くなり、切削の際に発生した切りくずが詰まりやすくなるといったデメリットもあります。 外径の大きいフェイスミルを使うと、広い範囲を加工できますが、そのぶん機械もパワーがあるものを必要とするので注意してください。 引用元:サンドビック株式会社 また、加工の仕方によっても、製品の仕上がりやチップの負担に変化があります。 上図左のように、チップの切込みと抜けを繰り返す加工方法だと、刃先に負担がかかるほか、びびりが発生しやすくなります。「びびり」とは、工具と被加工材の間に発生する振動のことで、発生すると仕上げ面に悪影響を及ぼします。しかし、上図右のように、チップを食いついた状態を維持しながら加工すれば、チップにかかる負担と、びびりの発生を軽減できます。 フェイスミル(正面フライス)と工作機械の選び方 切削加工では、フェイスミルのほかにエンドミル・溝フライス・平フライス等が使われています。ここでは、各々の加工用刃物工具の特徴や、どのような切削ができるかを解説します。 エンドミル 引用元:モノタロウ フェイスミルは広い範囲を削るのに適していますが、狭い範囲の加工には向きません。このとき役に立つのがエンドミルです。 エンドミルは、上図に示すようにドリルのような見た目で、工具端部の外周に2枚から4枚程度の刃が付いています。ドリルは軸方向に動かして穴を開けますが、エンドミルは、軸に対して水平方向に動かして切削します。エンドミルは細い形状のため、細かな箇所を削るのに最適。平面加工・側面加工・段加工のほかにも、溝加工や穴加工といった幅広い加工に対応できます。 エンドミルは、太さや長さだけでなく、刃の数や刃の形状など、種類が豊富にありますが、被加工材の材質や精度に合わせて、工具を使い分けなければなりません。 エンドミルは刃の枚数が少ないものだと、刃と刃の間隔は広く、切りくずの排出性は良好です。しかし、芯が細めのため、折れやすい傾向に。一方、刃の枚数が多いと、刃と刃の間隔が狭くなるので、切りくずの排出性に劣りますが、芯は太いため折れにくい傾向にあります。 このことから、大きな切りくずが発生する場合や荒加工では刃数が少ないものを、仕上げ面に高い精度を必要とする場合は刃数の多いものを使います。 溝フライス 引用元:サンドビック株式会社 エンドミルで溝加工は可能ですが、効率よく溝を付けたいのであれば、溝フライスを用います。溝フライスは、円盤のような形状で、外周に多数の刃を搭載。加工スピードが早いため、大量の製品を加工する場合や、深い溝をつけるのに適しています。また、切りくずの排出性と剛性に優れていることから、高い精度で仕上げられるほか、刃物のトラブルも比較的少ないのが特徴です。 平フライス 平フライスは、横型フライス盤を使って平面を削る加工用刃物工具のこと。外周に刃を持ち、回転軸に平行な面を切削できます。平フライスは加工範囲が広いため、切削効率は良好です。しかし、フェイスミルと比べて精度が劣るため、荒削りでの使用や精度を必要としない製品の加工として採用されています。 参考記事 各種のフライス加工については、以下の記事でも詳しく解説しているので、気になる方はぜひチェックしてみてください。 ⇒フライス加工について専門家が解説!加工の種類・加工機の種類がこの1記事でわかります! フェイスミル(正面フライス)についてのまとめ 今回はフェイスミル(正面フライス)について解説しましたが、いかがでしたでしょうか。 フェイスミルは平面を削る加工用刃物工具のことを言い、加工範囲が広く、切削効率に優れているのが特徴です。刃の枚数が多いほど加工能率が高くなりますが、そのぶんサイズは大きくなり、重量も重くなるので、パワーのある工作機械を用いる必要があります。 また、加工する製品の特徴や材質に合わせて、高い精度かつ、生産性を高めるためにも、適切なフェイスミルを選ぶことが大切です。 ぜひこの記事を参考にして、金属加工の依頼の際に役立ててください。

  • 旋盤加工(ターニング加工)のメリット・デメリット!図面記号に関しても解説

    旋盤加工(ターニング加工)には、水平方向の軸を中心に材料を回転させる通常の旋盤加工とは異なる、水平面内で回転するテーブルに材料を乗せて加工する縦旋盤加工があります。 縦旋盤加工は、航空機のエンジンや船舶の部品、発電所のタービンなどの巨大な部品の製作に用いられ、エネルギー効率を上げるために近年ますます需要が高まっています。 今回の記事では、通常の旋盤加工と縦旋盤加工を併せてご紹介すると共に、その違いについても解説してきます。ターニング加工のメリット・デメリットについても説明しますので、ぜひご覧ください。 旋盤加工(ターニング加工)とは 旋盤加工とは、旋盤やNC旋盤と呼ばれる工作機械を用いる加工法です。回転する工作物にバイトと呼ばれる刃物状の工具を当て、工具を送ることで切削します。なお、NC旋盤は、工具の移動距離や送り速度などを数値制御して、自動化した旋盤のことです。 工作物を回転させながら削るため、主に円筒形状の材料が加工対象となり、完成品の形状も回転対称となります。ただし、旋盤から工作物を一度取り外して再度取り付け、軸を変えて削れば、より複雑な形状に加工可能です。また、多軸旋盤では、工作物を取り外すことなく、複雑な形状を実現できます。 横旋盤加工と縦旋盤加工 旋盤加工は、工作物の回転軸の向きにより、横旋盤加工と縦旋盤加工に分けることができます。 横旋盤加工は、回転軸が水平方向の旋盤(普通旋盤)を用いる加工法で、旋盤加工と言われると普通こちらを指します。 一方、垂直方向の回転軸を持った旋盤を用いる方法が縦旋盤加工です。縦旋盤加工では、水平面内で回転するテーブルに工作物を取り付け、テーブルごと工作物を回転させます。これに、上下左右に移動できる工具を当てることで切削します。このような旋盤を縦旋盤や立旋盤などと呼び、これらの加工機を使用した加工法を縦旋盤加工や立旋盤加工、ターニングなどと呼ぶことがあります。 旋盤加工機について 普通旋盤は、主に以下のような部分から構成されています。 普通旋盤を構成している主要要素 主軸(チャック):工作物を固定して回転させる部分 心押し台:主軸の反対側から工作物を保持したり、穴あけ加工などができる工具を取り付けたりする部分 往復台:工具を工作物の軸方向に送る部分 送り台:往復台の上に置かれ、様々な方向に動かして工具を送る部分 刃物台:往復台の上に置かれ、工具を取り付ける部分 ベッド:往復台をスライドさせる部分 主軸の回転数や回転方向を変えたり、往復台や送り台を移動して工具を送ったり、往復台に取り付ける工具を交換したりすることで多様な形状を削り出せるようになっています。 下図では、緑色の部分が心押し台、赤色の部分が送り台と刃物台、青色の部分が往復台に当たります。 続いて、下図右上のタレット旋盤は、タレットと呼ばれる旋回式の刃物台が装着された旋盤です。タレットを旋回させることで工具を切り替えることが可能で、工具交換の時間を短縮することができます。 引用元:コトバンク 一方、縦旋盤は、主に以下のような部分から構成されます。 縦旋盤(上図中で立て旋盤と記載)を構成している主要要素 テーブル:工作物を取り付け回転させる部分 正面刃物台:工作物を保持するセンタを取り付けたり、穴あけ加工などができる工具を取り付けたりする部分 横刃物台:外径加工などができる工具を取り付ける部分 クロスレール:正面刃物台を水平方向にスライドさせる部分 コラム:クロスレールや横刃物台を垂直方向にスライドさせる部分 コラム上でクロスレールをスライドさせたり、クロスレール上で正面刃物台をスライドさせたりすることで、工具の位置決めと送りを行うことができます。また、横刃物台は、コラム上をスライドさせることで垂直方向に移動し、工具を送ることが可能です。 上図では、緑色の部分が正面刃物台、上部に配置された青色の部分がクロスレールです。正面刃物台とクロスレールの間の赤色の部分は、サドルと呼ばれる部品です。下部に配置されている赤色と青色の部分は、横刃物台に当たります。また、正面刃物台と横刃物台のそれぞれに矢印が描かれていますが、これは、これらの刃物台が工具の送り機能も備えていることを示しています。 Mitsuriでは、多様な旋盤加工機を保有しているメーカーをご紹介できます。幅広いニーズにお応えできますので、ぜひご相談ください。 ターニング記号 引用元:株式会社キーエンス 続いて、旋盤加工で用いられる図面記号について説明します。 まず、図面では、面(曲面を含む)について上図の3種類の記号があります。中央の図は加工する必要があることを示しますが、左の記号は加工してもしなくてもよく、右の記号は加工してはならないことを示します。左と右の記号は、素材の面をそのまま残す場合などに用いられる記号です。 加工を要する記号の場合、加工方法や加工による筋目の方向、加工面の粗さなどを以下のように記述します。 引用元:機械設計エンジニアの基礎知識 加工方法には、外丸削りや面削りなどの加工方法の名称をそのまま記述するか、もしくは以下の記号を記述します。 旋盤加工の加工方法の記号 旋削:L 外丸削り:L テーパ削り:LTP 面削り:LFC ねじ切り:LTH 突切り:LCT 心立て:LCN 逃げみぞ切り:LRC 丸み付け:LRN スカイビング仕上げ:LSK 皮むき:LSC 穴あけ:D リーマ仕上げ:DR タップ立て:DT 中ぐり:B 工作機械の種類の種類も示したいときは、加工方法の記号の後にハイフンを用いて以下の工作機械の種類を表す記号を続けます。 旋盤加工機の種類を表す記号 旋盤:L 普通旋盤:LE または L 卓上旋盤:LBN タレット旋盤:LT 倣い旋盤:LCO 自動旋盤:LA 縦旋盤:LV 例えば、縦旋盤で面削りを行う場合は、「LFC-LV」と記述します。 参考記事 そのほか、筋目方向や加工面の粗さなどについては、旋盤加工に限ったものではなく、以下のサイトに詳細がありますので、ぜひご参照ください。 ⇒除去加工について専門家が解説!【製品事例についても掲載】 旋盤加工(ターニング加工)の種類 旋盤加工には、図面記号をご紹介したときに挙げたような様々な加工方法あります。これらの加工法は、工具を交換することで実現できます。例えば、外丸削りには片刃バイトや真剣バイトなどが用いられますし、ねじ切りにはおねじ切りバイトやめねじ切りバイト、穴あけにはドリルなどが使用されます。 参考記事 旋盤加工の種類については、以下のサイトで詳しく解説していますのでご覧ください。 ⇒旋盤加工について専門家が解説!加工の種類・加工機の種類がこの1記事でわかります! ターニング加工のメリット 旋盤には、普通旋盤や縦旋盤など、数種類の加工機がありますが、これらを用いた加工方法にはどのような違いがあるのでしょうか。 普通旋盤などについて詳しく知りたい方は先ほどの参考記事をご参照ください。ここではまず、比較的まだ知られていない縦旋盤加工のメリットを説明していきます。 1.大型の製品の加工に有利 縦旋盤加工は、工作物の自重だけで回転テーブルに密着するので、大型の製品を安定して加工することができます。テーブルの大きさに収まる直径の工作物まで加工可能で、直径20mもの材料を加工できるものがあります。 また、普通旋盤のように、チャックで固定するわけではなく、テーブルに置いて安定させてから固定するため、大物の材料でも安心して着脱することができます。 大型部品を必要とする航空エンジンや発電用タービンなどの加工に引き合いがあります。 2.異形状の製品の加工に有利 異形状の製品の加工にも有利です。バランスの取りづらい形状でも、テーブルと製品の間にシムスペーサーなどを挟めば安定させることができます。 3.加工の精度が良い 重力方向を基準に工作物を固定できるため、重力や遠心力による振れが少なくなり、普通旋盤と比べて加工の精度が良くなります。 4.省スペース 加工機の平面的な大きさは、テーブルの大きさとほぼ同等の加工可能な最大のサイズとなるため、加工対象となる製品の大きさを考慮すると省スペースであると言えるでしょう。 ターニング加工のデメリット 一方で、縦旋盤加工のデメリットは、以下の3点が挙げられます。 1.長物の加工は苦手 長物の加工は、苦手としています。縦旋盤加工では、軸方向に長い加工物ほど、テーブルに設置した際に不安定となります。また、軸方向の工具の送りは、重力に反して行うためにエネルギーを必要とし、垂直方向の工具の移動範囲もそれほど大きくありません。 2.切り屑がはけにくい 加工時、普通旋盤であれば、切り屑は自然とはけてくれますが、縦旋盤ではそうはいきません。特に穴あけや中ぐりなどをするときは、穴に切り屑が溜まっていってしまうため、定期的な切り屑の排出が必要となります。 3.稼働率が悪い 機械が大きく、工作物も大きいものを対象とするため、工具の交換時間や工作物の着脱に時間がかかってしまいます。そのため、機械の稼働率は、どうしても普通旋盤より低くなります。 しかし、最近の縦旋盤では、工具交換に関しては、自動的に交換できたり、複数の工具を取り付け可能であったりするものが多くあります。 ターニング加工の見積りを依頼するならMitsuri 縦旋盤加工は、通常の旋盤加工に比べれば、それほど知られていない加工法です。ですが、その需要は安定的に存在しており、縦旋盤加工機も進化を続けています。コンピュータによる数値制御はもちろん、マシニングセンタの機能も備えた加工機も販売されており、大型かつ高精度な部品製造を実現しているメーカーもあります。 Mitsuriでしたら、最新の縦旋盤を保有し、高度な旋盤加工技術を要したメーカーをご紹介できます。 Mitsuriは、日本全国250社以上の協力企業と提携しており、複数社からの相見積りをご提供できます。 ターニング加工をご依頼したい方は、ぜひMitsuriにお申し付けください!

  • 旋盤加工について専門家が解説!加工の種類・加工機の種類がこの1記事でわかります!

    金属の製品を作るときに欠かせない製造方法でもある旋盤加工。 自動車や機械の部品はもちろん、調理器具やアウトドア用品など、私たちの身の回りにも旋盤加工によって作られた製品はたくさんあります。 旋盤加工はミクロン単位で精度を出すこともできる加工方法ですので、きっちりと寸法が決まっている製品を製作するときに検討したい製造方法でもあります。 そこで本記事では、旋盤加工における加工方法の種類から、加工機の種類まで細かくご紹介しますので、金属加工の方法をお探しであれば、ぜひ読み進めて行ってください! 旋盤加工とは 旋盤加工とは、バイトと呼ばれる切削工具を使用して対象物を削り取る切削加工の一種で、回転する対象物を固定したバイトによって削り取る加工方法のことをそう呼んでいます。 反対に対象物を固定し、回転する切削工具を使って削り取る加工方法のことを「フライス加工」と呼びます。 参考記事 切削加工の種類については以下の記事で詳しく解説していますので、ご覧ください。 ⇒切削加工の種類【専門家が解説】フライス加工、旋盤加工について詳細をお伝えします! 旋盤加工は、加工物を回転する爪に固定するため、丸物の製品を作ることができます。対象物が回転し、ブレることなく製品を作り出せますので、寸法精度が出しやすいという特徴があります。 旋盤を構成している主な部品 主軸(チャック)・・・工作物を固定し、回転させる部分 心押し台・・・工作物を反対側から保持する部分 往復台・・・工具を水平に移動させる部分 ベッド・・・旋盤本体を構成し、往復台をスライドさせる部分 主軸の回転数や回転方向も任意で変えられ、加工したい形状や材料によって切削工具も自由に交換できるようになっています。 そのため様々な加工方法を組み合わせることで、より複雑な形状の製品を作り出せます。 旋盤加工の種類 旋盤加工は専用バイトに交換することによって、様々な形状に加工することができます。 ここでは、旋盤加工でよく用いられる代表的な以下五つの加工方法について順にご紹介します。 代表的な加工方法 外径加工 内径加工 ねじ切り加工 穴あけ加工 突切り加工 1.外径加工 回転している対象物に、外側からバイトを当てて外径を加工していく方法です。 りんごの皮むきのように、表面を綺麗に慣らす仕上げ加工に用いられたり、大きく削り落として任意の形状を成形したりと、最も多く用いられる方法です。 切削加工では必ず発生する「切りくず」は外側に飛ばされ、バイトに絡まってしまうこともあるため、注意が必要です。 切りくずがバイトに絡まると精度が狂う場合もありますので、あらかじめバイトの角度を調整し、切りくずが絡まらないように配慮する必要があります。 2.内径加工 回転している対象物に内側からバイトを当てて内径を加工する方法です。 加工距離に比例してバイトの長さも必要ですが、長い突き出し量のバイトは「たわみ」と「びびり」が発生しやすく、精度が狂いやすい特徴があります。 また、切りくずも内部に溜まりやすい特徴がありますので、頻繁に切りくずを除去しなければ、バイトの刃に詰まって切削できなくなります。 そのため刃の形状や加工速度を変え、切りくずが上手く加工物の外に排出されるような対策も講じられます。 3.ねじ切り加工 回転する対象物にバイトの刃を当て、ねじ山を作る加工のことを言います。 専用のバイトを付け替えることで、おねじとめねじ両方の加工が可能です。 おねじの製作…「おねじ切りバイト」を外側から当て、一定のスピードでバイトを送っていく めねじの製作…「めねじ切りバイト」を内側から当て、一定のスピードでバイトを送っていく ねじのピッチは等間隔であるため、バイトの移動は手送りで行うよりも、「自動送り機能」が用いられることが多いようです。 価格が安くなるねじ切り図面の書き方についてはこちら! 価格が安くなるねじ切り指示の書き方を解説しています! 20〜30%ほどの低減につながる可能性がございますのでぜひご覧ください! 合計8分ほどで視聴可能です! https://youtu.be/JNjOi0ZPUmM 【実は無駄だった!?】タップの指示で切削の見積もり金額こんなに変わるの? https://youtu.be/uKALkTgm1zs 【2分でわかる】高くなる穴加工【切削加工】 4.穴あけ加工 「ドリルチャック」と呼ばれるドリル刃を固定するための工具を用いて穴を開ける加工方法です。 回転する対象物に固定したドリル刃を押し当てて穴を開けます。 穴あけ加工は、内径加工を行う時に必要なバイトの刃が入るスペースを確保するために用いられたり、タップを切る下準備に行ったりと、様々な加工方法と組み合わせられます。 5.突切り加工 回転する対象物に外側から徐々にバイトを押し当て、不要な部分を切り落とす加工です。 陶芸などで最後に粘土から切り落とす工程と同じ方法で、加工面が綺麗に仕上がる特徴があります。 ただし突切りで使用するバイトは刃が細く、切断には手から伝わってくる振動や音などで確認しながら作業をしたりと、ある程度の技術が必要となります。 また、固い金属を切り落とす時は刃が折れないように工夫する必要があります。 例えば靱性(粘り)の高い刃を使用したり、回転数を落として切削油を給油しながら摩擦を小さくするなどの対策があります。 旋盤加工機について 一言で旋盤加工と言っても、たくさんの加工の種類があることがわかりました。 そのため、加工する材料の大きさや、作りたい製品の形状によって最適な加工機を選択する必要があります。 代表的な旋盤加工機は次の6種類があります。 代表的な旋盤加工機 汎用旋盤(普通旋盤) NC旋盤 卓上旋盤 正面旋盤 立旋盤 タレット旋盤 それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。 1.汎用旋盤(普通旋盤) 旋盤加工機の基本的な構造をしており、「旋盤」と言えばこちらを指すことが多いように思います。 工作物を主軸台で固定し、往復台上のバイトを押し当てて削ります。 心押し台にバイトやドリルチャックを取り付けたり、補助工具を組み合わせれば、様々な加工方法が行えます。 様々な加工方法ができる万能な旋盤のようにも見えますが、バイトの脱着を全て手作業で行わなければいけないため、加工に時間がかかる欠点があります。 そのため一つの製品に対して工数が必要な「試作品の製作」や、「オーダーメイド部品の製作」など、少量生産に使われることが多いようです。 2.NC旋盤 縦・横・高さの座標軸を設定し、あらかじめプログラムした手順通りにバイトを動かして自動的に加工する旋盤機です。 コンピュータによって制御管理を行うため、高精度な加工ができるのはもちろんですが、バイトの動きはサーボモーターで制御するため、正確かつ高速で製品を作り出すことができます。 一度材料をセットすれば、簡単に同じ製品を作ることができますので、大量生産の現場で活躍します。 また、加工物の材料や目的の形状に応じて回転速度やバイトを自由に調整できるため、急な形状変更にも迅速に対応できます。 近年工業製品の主流になりつつあるNC旋盤は、車や飛行機の部品をはじめ、ミシンや医療機器など、私たちの生活に関わる幅広い製品を製作しています。 3.卓上旋盤 基本的な構造は汎用旋盤と同じですが、別名「ベンチレース」とも呼ばれるくらいサイズが小さく、作業台の上にも設置できる特徴があります。 サイズ的にボルトの作成などと言った小物部品の加工が中心となります。 また、加工物を固定するチャック部分は、スクロールチャックからコレットチャックに変更すれば、薄肉の製品でも変形させず綺麗に加工できます。 汎用旋盤でも用いられるスクロールチャックを、コレットチャックに交換します。 コレットチャックを使用すれば、加工物をワンタッチで着脱できるため、作業効率が良く、大量生産の現場でも活躍します。さらに金属だけでなく、プラスチックなどの加工も可能であるため、汎用性が高い工作機械とも言えます。 置き場所の自由度も高いことから、個人で購入して設置することも可能ですので、最も手軽に使用できる旋盤機とも言えるでしょう。 4.正面旋盤 汎用旋盤の加工物固定部に面盤を取り付けた旋盤で、大きな製品でも加工することができます。 巨大な加工物をセットする時に精度が出しにくい欠点があるため、代わりに立旋盤の方が多く用いられます。 しかし正面旋盤は切りくずが下方に落ち、加工時に切りくずで傷を付けにくくなるため、立旋盤より連続加工がしやすいというメリットがあります。 5.立旋盤 一般的な旋盤は横向きで加工を行いますが、立旋盤は立向きで垂直方向に加工を行います。チャック部分は面盤になっており、比較的大きな製品でも加工ができます。 また、加工物を下方向に置いてセットするため、重量物や大きなものでも重力によって中心がズレることなく装着できます。 そのため汎用旋盤では加工できないような大型の製品を加工することもできます。 6.タレット旋盤 汎用旋盤でバイトや切削工具の脱着を行う時は、毎回付け替えをしなければいけませんでした。 しかしタレット旋盤では、心押し台の代わりに「タレット」と呼ばれる旋回式の刃物台が装着され、形状や材料によってタレットを回してワンタッチで刃物を変えることができます。 これによって複数の切削工具を使用して加工する時に、工具交換をせずに加工が行えますので、同一製品を複数作る時に活躍します。 現在では工具の交換やバイトの動きも自動で制御できるNC旋盤が普及してきたため、あまり目立たなくなってしまいましたが、試作部品や小ロットの製品を手作業で製作するシーンではまだまだ重宝される旋盤機です。 まとめ 旋盤加工の種類や、製作現場で多く使われる旋盤機についてご紹介しました。 旋盤加工で作られた製品は精度も高く、私たちの生活を支えている身近なものの中にもたくさん使用されています。旋盤加工は図面の読み方や工具の扱い方など、様々な専用知識が必要ですので、熟練した技術者でなければ加工ができません。また、NC旋盤などは特殊な数値制御も使用しているため、知識も持ち合わせていなければいけません。 そのため作りたい製品があっても、「旋盤加工で製作しよう」とすぐに決められないこともあると思います。 そんな時は是非Mitsuriをご活用ください! Mitsuriでは図面をアップロードすると、加工可能な登録工場が最適な加工で見積と加工を行います。図面をお持ちの方は下のボタンからご登録ください!

  • 切削加工の種類【専門家が解説】フライス加工、旋盤加工について詳細をお伝えします!

    皆さんは、切削加工をご存じでしょうか?金属加工メーカー等で働く人以外にはあまり聞きなれないものだと思います。 今回はそんな切削加工についてご紹介させて頂きます。切削加工とはどういう加工なのかという説明はもちろん、その種類まで詳しく紹介させていただくので、「切削加工ってなに?」と疑問に思っている方や興味のある方も是非、ご一読いただきたいと思います。 切削加工とは 切削とは、工具を用いて加工する対象物から、その一部を削り取る加工のことです。この場合、大きくは「切削」と「送り」という二つの動きが必要となります。 切削は対象物から一部を削り取る動きのことを言います。一方、送りとは工具を移動させて、ほかの部分の切削を可能にする動きのことです。 たとえば、ある一直線上で切削を行った後、工具を切削方向と垂直に送ることで、新たな面の切削が可能となり、これを繰り返すと平面を生み出すことが可能になります。 このように、切削加工は切削と送りを繰り返していくことで、工作物を加工していきます。 フライス加工とは フライス加工とは切削加工の一種で、回転軸に取り付けたフライス盤という切削工具を回転させて行う加工です。 設置した工作物に工具を当て続けていく切削を行うので、加工する工作物の表面を平面や曲面に加工できます。また、その他みぞ削りなどの多様な加工が可能です。 フライス盤は、工具を取り付ける主軸の方向によって、横形と立形があるほか、本体が門のような形状をした門形など多数の種類があり、①正面フライス、②エンドミル、③溝フライスなどの工具を使うことによって、目的の形状に工作物を加工していきます。 1.正面フライス 正面フライスとは、フライス加工のなか最もよく使用される加工工具です。そのため、多数の工具が豊富に用意されています。 正面フライスは広い平面を効率よく削るため外径が大きく、円周上に多数の刃(チップ)を等間隔に付けた構造をしています。 複数のチップを取り付けた正面フライスでは、刃が材料を削るときに、1回転で削れる量が増えていきます。つまり、外径が大きいほど、また刃数が増えるほど加工能率が高くなることになります。 2.エンドミル エンドミルはフライス加工の切削工具の一つで、ドリルに類似した外観を持ちます。しかし、ドリルは軸方向に推進して円形の穴を空ける用途であるのに対して、エンドミルは側面の刃で切削し、軸に直交する方向に穴を削り広げる用途に用いられます。 また、エンドミルは端面を平滑に仕上げる際にも用いられます。中心部の切れ刃が不完全であるため、ドリルのような単体での穴あけ加工には本来適しませんが、穴の中心にドリルなどで下穴を開けておくことで、軸方向へ推進して削り込むことも可能です。 3.溝フライス 上記で説明したエンドミルやメタルソー(金属製ののこ刃)の工具で、工作物の側面や端面に、溝を施す加工です。溝削りの場合、他の加工と比べて工作物との接触面が大きくなるため、切削速度・送り量・切り込み量を大きくすることは出来ません。 フライス加工の機械について フライス加工の機械は、主軸の向きによる種別と主軸とテーブルの移動方向による種別に分類されます。ですが、市場に出回っているフライス盤の8割程は立型フライス盤が占め、一般的にフライス盤といえば立型のフライス盤を指します。 1.立型フライス盤 主軸が地面に対して垂直(下向き)のフライス盤を縦型フライス盤といいます。また、縦型のフライス盤には、大きく分けて2種類の方があります。主軸頭が切込み運動を行い、テーブルが前後左右に動く「ベッド型(主軸頭移動型)」と、主軸頭が固定された「ヒザ型(主軸頭固定型)」があります。 ・ベッド型 主軸頭が上下に動き、テーブルが前後左右に動くものを「ベッド型」といいます。「ヒザ型」より剛性があり、同じ製品を大量につくる場合は「ベッド型」が適しています。 ・ヒザ型 フライス盤の中でもっとも汎用な機械が「ヒザ型」です。上下に運動するニーに支えられたテーブルが左右に動きます。「ベッド型」に比べると、目線の高さで加工できるため視認性が良く、軽い素材の加工や加工と測定を繰り返す細かい作業に適していいます。 2.模型フライス盤 主軸が地面に対して水平(横向き)のフライス盤を横型フライス盤といいます。 溝入れや切断加工に適しています。また、板状の工作物の側面加工は、横型でなければ加工することが出来ません。 3.万能フライス盤 万能フライス盤は、膝型フライス盤の一種で構造的には横型フライス盤とほぼ同じですが、旋回台を設けてテーブルが水平面内に回転できる点が異なっています。 主軸が180度動く立横兼用の万能フライス盤等もあります。フライス盤の加工機能に加え、歯車やドリルなどの複雑な加工が可能です。 その他にも、マニシングセンタという目的に合わせてフライス削り、中ぐり、穴あけ、ねじ立てなどの異種の加工を1台で行うことができる数値制御工作機械があります。万能ではありますが、プログラムを設定しなくてはならないので、現物合わせで削りたい時には、やはりフライス(汎用フライス盤)のほうが素早い対応ができます。 旋盤加工 旋盤加工とは、工作物を高速で回転させ、その対象物に刃物を押し当てて削り出していく加工のことを言います。 フライス加工が平面加工などをするのに対して、旋盤加工は棒のねじ切り等を加工します。旋盤加工する形状は基本的に丸モノとなり、マシニング加工に比べて、段取りや加工時間が少ないので素早い対応ができます。 一見するとフライス加工との違いについては分かりにくいと思いますが、特徴は、回転する爪に金属素材を取り付けるということです。その取り付けた金属を回転させて旋削チップなどの機械工具で削っていきます。 フライス盤は金属が回るのではなく、刃物が回転して削っていくという機械です。 また、旋盤加工は製品が回転する事で加工を行うので、外径や内径の寸法が出しやすいという利点があります。通常は同芯で外径と内径を加工する事ができるので、ぶれる事がない製品を作り出す事が可能です。 切削加工の良いところは、難しい依頼もフライス加工と旋盤加工を駆使していくことで、一つの部品を完成させることができる点です。 まとめ 今回は、主にフライス加工についてご紹介しました。 切削加工には種類があり、加工方法も変わってきます。もし今回の記事を読んで、これから金属加工メーカーに依頼をすることを考えている方や切削加工に興味のある方の一助となれば幸いです。