C5191は、りん青銅と呼ばれる金属材料の一種です。
りん青銅は、銅(Cu)とスズ(Sn)の合金である青銅に、りん(P)を加えることで、青銅内部に含まれる酸化銅を脱酸した金属です。
C5191は、りん青銅のなかでもスズの含有量が多く、強度や耐摩耗性を向上させています。
C5191(りん青銅)の特徴(導電性、耐摩耗性、耐応力腐食割れ)
C5191(りん青銅)は、展延性・耐摩耗性・耐食性・耐応力腐食割れに優れており、ばね材に適した材料です。JIS規格の【JIS H 3110:2018】では、高性能のばね性を要求するものは、ばね用りん青銅を用いるのがよいとされています。
C5191は、スズ(Sn)を5.5~7.0%と多く含有している金属材料です。りん青銅はスズを多く含有するほど、強度と耐摩耗性が向上しますが、その一方で導電性や熱伝導率の値は低下する特徴があります。
C5191の用途は、電気機器用ばね・スイッチ・コネクタ・ヒューズグリップ・しゅう動片軸受けなどが代表的です。
参考:応力腐食割れをわかりやすく!3要素と対策方法
参考:銅の加工ならMitsuri!1コ〜お受けいたします!
C5191の化学成分
<C5191 板及び条の化学成分(単位:%)>
合金番号
|
Cu
|
Pb
|
Fe
|
Sn
|
Zn
|
Mn
|
Ni
|
P
|
C5191
|
a)
|
0.02以下
|
0.10以下
|
5.5~7.0a)
|
0.20以下
|
-
|
-
|
0.03~0.35a)
|
a):Cuを分析し、Cu+Sn+P=99.5以上とする。
引用元:JIS H 3110:2018 りん青銅及び洋白の板及び条
C5191の機械的性質
<C5191 板及び条の機械的性質>
質別
|
製品記号
|
引張試験
|
曲げ試験
|
硬さ試験
|
厚さの区分(mm)
|
引張強さ(N/mm2)
|
伸び(%)
|
厚さの区分a)(mm)
|
曲げ角度b)
|
内側半径b)
|
厚さの区分(mm)
|
ビッカース硬さc)(HV)
|
O
|
C5191 P-O C5191 R-O
|
0.10以上 5.0以下
|
315以上
|
42以上
|
0.10以上 1.6以下
|
180° 又はW
|
厚さの0.5倍
|
–
|
–
|
0.10以上 0.50以下
|
1/4H
|
C5191 P-1/4H C5191 R-1/4H
|
0.10以上 5.0以下
|
390~510
|
35以上
|
0.10以上 1.6以下
|
180° 又はW
|
厚さの1倍
|
0.10以上 5.0以下
|
100~160
|
0.10以上 0.50以下
|
1/2H
|
C5191 P-1/2H C5191 R-1/2H
|
0.10以上 5.0以下
|
490~610
|
20以上
|
0.10以上 1.6以下
|
180° 又はW
|
厚さの1.5倍
|
0.10以上 5.0以下
|
150~205
|
0.10以上 0.50以下
|
H
|
C5191 P-H C5191 R-H
|
0.10以上 5.0以下
|
590~685
|
8以上
|
0.10以上 1.6以下
|
180° 又はW
|
厚さの2倍
|
0.10以上 5.0以下
|
180~230
|
0.10以上 0.50以下
|
EH
|
C5191 P-EH C5191 R-EH
|
0.10以上 0.20未満
|
635~720
|
–
|
–
|
–
|
–
|
0.50以上 5.0以下
|
200~240
|
0.20以上 5.0以下
|
5以上
|
SH
|
C5191 P-SH C5191 R-SH
|
0.10以上 5.0以下
|
690以上
|
–
|
–
|
–
|
–
|
0.05以上 5.0以下
|
210以上
|
注記
a):各欄の上段は、試験片を板又は条の圧延方向に取った場合、下段は試験片を板又は条の圧延方向と直角に取った場合を示す。
b):曲げ試験の試験条件を示す。Wは、W曲げ試験を表す。
c):最小試験力は、1.961Nとする。
引用元:JIS H 3110:2018 りん青銅及び洋白の板及び条
C5191の物理的性質
<C5191の物理的性質>
液相融点 (℃)
|
固相融点 (℃)
|
比熱
|
線膨張係数 (20~300℃) [×10-⁶・K]
|
縦弾性係数 [kN/mm²]
|
導電率 [%IACS]
|
体積低効率 [10-3μΩ・m]
|
熱伝導率 [W/(m・K)]
|
比重 (20℃)
|
1045
|
910
|
377
|
18.0
|
105
|
13
|
133.0
|
67
|
8.83
|
引用元:阪根商事株式会社