15-5PH(ステンレス鋼)化学成分、磁性、機械的性質

15-5PHとは、析出硬化系ステンレス鋼の一種で、強度と耐食性に非常に優れているステンレス鋼です。その優れた特性を活かして、航空機や自動車、化学プラントなどの部品として広く利用されています。

15-5PHの特性、磁性

15-5PHは、析出硬化系ステンレス鋼に分類され、高強度、高硬度で、さらに優れた耐食性を持つステンレス鋼です。析出硬化系ステンレス鋼とは、金属間化合物の析出により、高い強度を得ることを目的としたステンレス鋼で、代表的な鋼種にSUS630があります。15-5PHは、SUS630のδ-フェライトをなくして、機械的特性を改善した鋼種です。

また、15-5PHはSUS630同様、磁性を持つステンレス鋼です。そのため、磁性を嫌う環境においては、トラブルの原因につながる可能性もあるため、注意が必要です。

15-5PHはJIS規格外の析出硬化系ステンレス鋼ですが、航空宇宙材料規格:AMS5659として管理され、ASTMA564 XM-12という呼称も使用されています。

参考:SUS630(ステンレス鋼)磁性、成分、切削性、機械的性質

15-5PHの用途

15-5PHは、その優れた強度及び耐食性を活かして、シャフト類、タービン類、自動車部品、航空機部品、ポンプおよびバルブ部品、圧力容器用部材など、さまざまな用途で使用されています。

15-5PHの化学成分

<15-5PHの成分、組成(単位:%)>

材料記号 C Si Mn P S Ni Cr Mo Cu N その他
15-5PH 0.07以下 1.00以下 1.00以下 0.040以下 0.030以下 3.50~5.50 14.00~15.50 - 2.50~4.50 - Nb 0.15~0.45
SUS630 0.07以下 1.00以下 1.00以下 0.040以下 0.030以下 3.00~5.00 15.00~17.50 - 3.00~5.00 - Nb 0.15~0.45

15-5PHの化学成分を上表に示しました。比較のため、SUS630の化学成分も記載しています。

15-5PHという名前は、クロム(Cr)含有量が約15%、ニッケル(Ni)含有量が約5%という成分含有量に由来しています。また、SUS630は、クロム含有量が約17%、ニッケル含有量が約4%であることから、17-4PHとも呼ばれています。なお、PHとは、precipitation hardening(析出硬化)の頭文字を示しています。

析出硬化系ステンレスでは、冷間圧延後析出硬化熱処理を行うことで、マルテンサイト地に微細な金属間化合物を析出させます。15-5PH及びSUS630では、銅(Cu)、ニオブ(Nb)が含まれており、析出硬化処理によりCu-rich 相及び NbC を析出させ、材料を硬化させています。

15-5PHの機械的性質(耐力、引張強さ、伸び、硬さ)

<15-5PHの機械的性質>

材料記号 熱処理記号 耐力 MPa 引張強さ MPa 伸び (%) 硬さ
HBW HRC
15-5PH H900 1170以上 1310以上 6以上 388以上 40以上
H925 1070以上 1170以上 7以上 375以上 38以上
H1025 1000以上 1070以上 8以上 331以上 38以上
H1075 860以上 1000以上 8以上 311以上 32以上
SUS630 H900 1175以上 1320以上 10以上 388以上 40以上
H925 1070以上 1170以上 10以上 375以上 38以上
H1025 1000以上 1070以上 12以上 331以上 35以上
H1075 725以上 930以上 16以上 277以上 28以上

15-5PHの機械的性質を上表に示しました。比較のため、SUS630の機械的性質も記載しています。15-5PH及びSUS630には、析出硬化熱処理条件の違いによって、H900・H1025・H1075・H1150などのグレードが存在します。

参考記事:ステンレスの焼き入れについて専門家が紹介!

15-5PHは、耐力、引張強さ、伸び、硬さにおいてSUS630とほぼ同等の性質を持つことがわかります。また、オーステナイト系ステンレス鋼の代表的な鋼種であるSUS304と比べると、2倍以上の引張強さを示します。

15-5PHは、SUS630と比較して、横方向の延性に強いという性質も有しています。そのため、部品などに横方向の応力が見込まれる場合には、15-5PHの使用を検討することが勧められます。その他にも、15-5PHは、熱による変形が少ないという特徴も持ちます。

15-5PHの加工性

15-5PHは、析出硬化熱処理をする前のS材と処理後のH材があり、切削性は異なります。粗削りなど、加工量が多い場合には、S材から加工することがお勧めされます。15-5PHは、SUS304と比べて、切削抵抗が低く、粘りも少ないため、SUS304と同じ条件ならば、工具寿命はより長くなります。

 

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